特許第6237487号(P6237487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237487
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両のルーフ接合構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/07 20060101AFI20171120BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B62D25/07
   B62D25/06 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-123609(P2014-123609)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-2842(P2016-2842A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年8月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Ha:mo RIDE(ハーもライド)走行体験会にて展示(平成26年2月11日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西本 岳史
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−061783(JP,U)
【文献】 特開2009−214561(JP,A)
【文献】 特開2008−189231(JP,A)
【文献】 特開昭63−235176(JP,A)
【文献】 実開平04−112175(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0020060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/07
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースルーフと、
前記ベースルーフの後端部と上下方向に重ね合わされて接合された前端部を有する延長ルーフと、
前記ベースルーフの後端部と前記延長ルーフの前端部との重ね合わせ部の下方に設けられたインナパネルと、を備え、
前記インナパネルには、車幅方向に沿って延びるとともに前記ベースルーフと前記延長ルーフとの間を通じて浸入した水を受けるとともに車幅方向外側に向けて排出する樋部が形成され
前記樋部は、車幅方向外側ほど下方に位置し、該樋部の車幅方向外側の端部と前記ベースルーフの後端部との間には、水を排出する隙間が形成されている
車両のルーフ接合構造。
【請求項2】
前記ベースルーフの後端部と前記延長ルーフの前端部との間には車幅方向に沿って延びるシール部材が設けられている、
請求項1に記載の車両のルーフ接合構造。
【請求項3】
前記ベースルーフの後端部及び前記延長ルーフの前端部には締結部材が挿通される複数の挿通孔が車幅方向に間隔をおいて形成され、
前記重ね合わせ部には、前記締結部材を上方から覆うアウタパネルが設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の車両のルーフ接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一人乗り用の電気自動車を利用して二人乗り用の電気自動車を開発するためにベースルーフに延長ルーフを接合する車両のルーフ接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転席の上方を覆い、雨水が乗員に当たらないようにするルーフモジュールを備えた一人乗り用の電気自動車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−104806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両を利用して二人乗り用の車両を開発する場合に、運転席の後方に後席を追加し、その後席の上方を覆うように前記ルーフモジュールに対して延長ルーフを接合すると、同ルーフモジュールと延長ルーフとの隙間を通じて雨水などの水が車内に浸入し、こうして浸入した水が落下して乗員に当たるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、車内に浸入した水を適切に排出することができる車両のルーフ接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための車両のルーフ接合構造は、ベースルーフと、前記ベースルーフの後端部と上下方向に重ね合わされて接合された前端部を有する延長ルーフと、前記ベースルーフの後端部と前記延長ルーフの前端部との重ね合わせ部の下方に設けられたインナパネルと、を備え、前記インナパネルには、車幅方向に沿って延びるとともに前記ベースルーフと前記延長ルーフとの間を通じて浸入した水を受けるとともに車幅方向外側に向けて排出する樋部が形成され、前記樋部は、車幅方向外側ほど下方に位置し、該樋部の車幅方向外側の端部と前記ベースルーフの後端部との間には、水を排出する隙間が形成されている
【0007】
同構成によれば、ベースルーフの後端部と延長ルーフの前端部との重ね合わせ部の隙間を通じて雨水などの水が車内に浸入すると、同水はインナパネルの樋部によって受け止められるとともに同樋部を伝って車幅方向外側に向けて排出される。このため、前記重ね合わせ部の隙間を通じて浸入した水が落下して乗員に当たることを適切に回避することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車内に浸入した水を適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の二人乗り用の電気自動車を斜め後方から視た斜視図。
図2】同実施形態のルーフモジュールを斜め前方から見た斜視図。
図3】同実施形態のルーフモジュールの分解斜視図。
図4図2の4−4線に沿った断面図。
図5図2の5−5線に沿った断面図。
図6図4の6−6線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図6に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、二人乗り用の電気自動車(以下、車両11と称する。)は、一人乗り用の自動車がベースとされたものであり、同車両11には、運転席12と後席13とが前後に設けられている。車両11の上部には、運転席12及び後席13の上方を覆い、雨水が乗員に当たらないようにするルーフモジュール14が設けられている。
【0011】
図1及び図2に示すように、ルーフモジュール14は、樹脂材料よりなり、左右一対の前ピラー155が一体成形されたベースルーフ15、及びベースルーフ15の後端部151の上方に位置するとともに同後端部151と重ね合わされて接合された前端部161を有する延長ルーフ16を備えている。なお、ベースルーフ15及び延長ルーフ16は、車両11の上部において前後方向に延びるルーフレール61(図6参照)にクリップなどにより固設されている。また、図6に示すように、ベースルーフ15及び延長ルーフ16の側端部の車幅方向外側には、サイドパネル51が設けられている。
【0012】
図3に示すように、ベースルーフ15の後端部151には、複数の挿通孔152が車幅方向に間隔をおいて形成されている。なお、ベースルーフ15の後端部151は、一人乗り用の自動車のルーフモジュールの後端部を含む部位が車幅方向に沿って切り取られることにより形成されている。
【0013】
延長ルーフ16の前端部161には、前記ベースルーフ15の後端部151の各挿通孔152に対応して複数の挿通孔162が形成されている。
図4及び図5に示すように、延長ルーフ16の前端部161には、前記挿通孔162が形成された部位の後方に位置し、後方に向かって高くなる第1段差部17が形成され、第1段差部17の後方に位置し、後方に向かって一段高くなる第2段差部18が形成されている。
【0014】
そして、図4及び図6に示すように、延長ルーフ16の前端部161とベースルーフ15の後端部151とが上下に重ね合わせられた状態で、上方からボルト22が延長ルーフ16の挿通孔162及びベースルーフ15の挿通孔152の順に挿通され、同ボルト22がナット25に螺入されている。なお、図4に示すように、ボルト22と延長ルーフ16の挿通孔162の周縁との間には、パッキン23及び座金24が介設されている。
【0015】
図4に示すように、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との間における前記締結部26よりも前方には、車幅方向に沿って延びる止水用のシール部材19が設けられている。図4及び図5に示すように、シール部材19は、前後に間隔をおいて配置された第1シール部材191及び第2シール部材192よりなり、第1シール部材191及び第2シール部材192はベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との重ね合わせ部20の車幅方向全体にわたって延びている。
【0016】
第1シール部材191はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)を主成分とする弾性材料により形成され、このEPDMはゴム弾性を有している。EPDMは、機械的特性のほか、耐候性、耐寒性などの特性に優れている。
【0017】
第2シール部材192はEPDMの発泡体を主成分とする弾性材料により形成され、粘着剤によってベースルーフ15と延長ルーフ16とに接合される。このEPDM発泡体は独立気泡構造又は半連続気泡構造を有し、耐熱性、耐候性、耐久性などの特性に優れている。
【0018】
図4図6に示すように、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との重ね合わせ部20の下方には、車幅方向に沿って延びるとともに前記締結部26、延長ルーフ16の第1段差部17及び第2段差部18を下方から覆うインナパネル27が設けられている。
【0019】
図4及び図5に示すように、インナパネル27には、ベースルーフ15の後端部151の下面に両面粘着テープ28を介して貼着される前縁部271、及び延長ルーフ16の下面に当接される後縁部272を備えている。前縁部271と後縁部272との間には、下方に向けて膨出するとともに、ベースルーフ15と延長ルーフ16との間を通じて車外から浸入した水を受けるとともに車幅方向外側に向けて排出する樋部273が形成されている。
【0020】
図3及び図6に示すように、前記樋部273の上面は車幅方向外側ほど下方に位置するように湾曲されている。また、図6に示すように、樋部273の車幅方向外側の端部と、ベースルーフ15の後端部151との間には、樋部273を伝ってきた水を下方に排出するための隙間41が形成されている。
【0021】
図2図4図6に示すように、延長ルーフ16の前端部161には、車幅方向に沿って延びるとともにボルト22を上方から覆うアウタパネル30が設けられている。図4及び図5に示すように、アウタパネル30の後端部の下面が両面粘着テープ28を介して延長ルーフ16の第1段差部17と第2段差部18との間の面に貼着されている。アウタパネル30は、延長ルーフ16の前端部161よりも前方まで延びている。また、アウタパネル30の前端部は下方に向けて屈曲されており、ベースルーフ15の上面に対向している。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との間における前記締結部26よりも前方には、第1シール部材191及び第2シール部材192よりなるシール部材19が設けられている。このため、アウタパネル30の前端部とベースルーフ15との間の隙間を通じてアウタパネル30内へ雨水などの水が浸入したとしても、その水が、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との間を通じて車内に浸入することがシール部材19によって遮られる。
【0023】
しかも、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との重ね合わせ部20の下方には樋部273を有するインナパネル27が設けられているため、仮に前記シール部材19のシール性能が低下するなどして車内に水が浸入したとしても、その水がインナパネル27の樋部273によって受け止められる。そして、樋部273内の水は自重により樋部273を伝って車幅方向外側に向けて移動し、樋部273の車幅方向外側の端部と、ベースルーフ15の後端部151との間の隙間41を通じて排出される。このため、前記重ね合わせ部20から車内に浸入した水が落下して乗員に当たることを適切に回避することができる。
【0024】
以上説明した本実施形態に係る車両のルーフ接合構造によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車両のルーフ接合構造は、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との重ね合わせ部20の下方に設けられたインナパネル27を備えている。インナパネル27には、車幅方向に沿って延びるとともにベースルーフ15と延長ルーフ16との間を通じて浸入した水を受けるとともに車幅方向外側に向けて排出する樋部273が形成されている。
【0025】
こうした構成によれば、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との重ね合わせ部20の隙間を通じて雨水などの水が車内に浸入すると、その水はインナパネル27の樋部273によって受けとめられるとともに樋部273を伝って車幅方向外側に移動して排出される。このため、重ね合わせ部20から水が落下して乗員に当たることを適切に回避することができる。
【0026】
また、インナパネル27によって重ね合わせ部20を下方から覆い隠すことができ、天井の見栄えを良くすることができる。
(2)樋部273は車幅方向外側ほど下方に位置しているため、水が自重により樋部273を伝って車幅方向外側に移動する。従って、樋部273を通じて水を円滑に排出することができる。
【0027】
(3)ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との間には車幅方向に沿って延びるシール部材19が設けられている。このため、ベースルーフ15の後端部151と延長ルーフ16の前端部161との間を通じて水が浸入することをシール部材19によって遮ることができる。
【0028】
(4)ベースルーフ15の後端部151及び延長ルーフ16の前端部161には締結部材としてのボルト22が挿通される複数の挿通孔152,162が車幅方向に間隔をおいて形成されている。重ね合わせ部20には、ボルト22を上方から覆うアウタパネル30が設けられている。
【0029】
こうした構成によれば、ボルト22及びベースルーフ15及び延長ルーフ16の挿通孔152,162がアウタパネル30によって上方から覆われるため、挿通孔152,162の周縁に水が付着することを抑制することができ、同挿通孔152,162を通じて水が車内に浸入することを抑制することができる。
【0030】
また、アウタパネル30によってベースルーフ15と延長ルーフ16の締結部26を上方から覆い隠すことができ、ルーフの見栄えをよくすることができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0031】
・ベースルーフの後端部が延長ルーフの前端部の上方に位置するようにベースルーフの後端部と延長ルーフの前端部とを重ね合わせるようにしてもよい。
・前記アウタパネル30の前端部とベースルーフ15との間を両面粘着テープ28で接着してもよい。この場合、アウタパネル30の前端部とベースルーフ15との間の隙間からアウタパネル30内への水の浸入を、前記実施形態の場合に比べて抑制することができる。
【0032】
・第1シール部材191及び第2シール部材192のいずれか一方を省略することもできる。この場合、シール部材の前後方向の幅を広げて止水性能を高めることが好ましい。
・シール部材を前後に間隔をおいて3つ以上設けることもできる。
【0033】
・ボルト22及びナット25に代えて、クリップなどの他の締結部材を用いることもできる。
・アウタパネル30を省略することもできる。
【符号の説明】
【0034】
11…車両、15…ベースルーフ、151…後端部、152…挿通孔、16…延長ルーフ、161…前端部、162…挿通孔、19…シール部材、191…第1シール部材、192…第2シール部材、20…重ね合わせ部、22…ボルト(締結部材)、25…ナット、27…インナパネル、273…樋部、30…アウタパネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6