特許第6237489号(P6237489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237489
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L29/78 658F
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 652L
   H01L29/78 655Z
   H01L21/28 301B
   H01L21/28 A
   H01L21/28 B
   H01L21/68 N
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-128202(P2014-128202)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-9713(P2016-9713A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北林 弘之
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−011224(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0004696(US,A1)
【文献】 特開2013−026247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0017671(US,A1)
【文献】 特開2007−109758(JP,A)
【文献】 特開2006−013000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する炭化珪素基板を準備する工程と、
前記炭化珪素基板の前記第1の主面に接して表面電極を形成する工程と、
前記表面電極を覆うように前記表面電極上に粘着テープを貼り付ける工程と、
大気圧よりも低い第1の圧力において、前記粘着テープが前記表面電極上に貼り付いた状態で前記炭化珪素基板を加熱する工程と、
前記炭化珪素基板を加熱する工程後、前記炭化珪素基板の前記第2の主面を研削する工程と、
前記第2の主面を研削する工程後、大気圧よりも低い第2の圧力において、前記粘着テープが前記表面電極上に貼り付いた状態で前記炭化珪素基板の前記第2の主面に対して処理を行う工程とを備えた、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の圧力は、1×10−5Pa以上1×10−2Pa以下である、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の圧力は、前記第2の圧力以下である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記炭化珪素基板を加熱する工程における前記炭化珪素基板の温度は、100℃以上200℃以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記炭化珪素基板の前記第2の主面に対して処理を行う工程は、前記第2の主面を研削する工程において前記第2の主面に形成された加工変質層をプラズマエッチングにより除去する工程を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記炭化珪素基板の前記第2の主面に対して処理を行う工程は、前記炭化珪素基板の前記第2の主面に裏面電極を形成する工程を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記炭化珪素基板の前記第2の主面に対して処理を行う工程は、前記裏面電極に対してレーザーアニールを行う工程を含む、請求項6項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記炭化珪素基板の前記第1の主面の最大径は、100mm以上である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記炭化珪素基板の前記第2の主面を研削する工程後において、前記炭化珪素基板の厚みは、50μm以上200μm以下である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記炭化珪素基板の前記第2の主面に対して処理を行う工程後、前記粘着テープを前記表面電極上から除去する工程をさらに備えた、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記炭化珪素基板を加熱する工程は、加熱部を含む基板保持部から前記炭化珪素基板が離間した状態で前記炭化珪素基板を加熱する工程を含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記炭化珪素基板を加熱する工程は、前記基板保持部から前記炭化珪素基板が離間した状態で前記炭化珪素基板を加熱する工程後、前記炭化珪素基板が前記基板保持部に接触した状態で前記炭化珪素基板を加熱する工程をさらに含む、請求項11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものであり、特定的には、炭化珪素基板を加熱する工程を有する炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高耐圧化、低損失化などを可能とするため、半導体装置を構成する材料としての炭化珪素の採用が進められている。炭化珪素は、従来より半導体装置を構成する材料として広く用いられている珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体である。そのため、半導体装置を構成する材料として炭化珪素を採用することにより、半導体装置の高耐圧化、オン抵抗の低減などを達成することができる。また、炭化珪素を材料として採用した半導体装置は、珪素を材料として採用した半導体装置に比べて、高温環境下で使用された場合の特性の低下が小さいという利点も有している。
【0003】
たとえば、特開2014−11224号(特許文献1)には、粘着テープを用いた炭化珪素半導体装置の製造方法が記載されている。上記炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、炭化珪素基板が粘着テープに固定された状態で、炭化珪素基板の裏面が研削される。炭化珪素基板の裏面が研削された後、粘着テープを100℃以上に加熱することにより、粘着テープに付着または含有している水分を蒸発させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−11224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、炭化珪素基板の裏面が研削されて薄くなった後に、高真空条件下において炭化珪素基板の主面に対して処理を行う際に、粘着テープと炭化珪素基板との間に閉じ込められていた空気または水蒸気などの気体が、粘着テープと炭化珪素基板とに囲まれた空間から外部に放出される。気体が当該空間から外部に放出される際に炭化珪素基板に強い応力が加わることで、炭化珪素基板が割れる場合があった。
【0006】
本発明の一形態の目的は、炭化珪素基板が割れることを抑制可能な炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面と、第1の主面と反対側の第2の主面とを有する炭化珪素基板が準備される。炭化珪素基板の第1の主面に接して表面電極が形成される。表面電極を覆うように表面電極上に粘着テープが貼り付けられる。大気圧よりも低い第1の圧力において、粘着テープが表面電極上に貼り付いた状態で炭化珪素基板が加熱される。炭化珪素基板が加熱された後、炭化珪素基板の第2の主面が研削される。第2の主面を研削する工程後、大気圧よりも低い第2の圧力において、粘着テープが表面電極上に貼り付いた状態で炭化珪素基板の第2の主面に対して処理が行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態によれば、炭化珪素基板が割れることを抑制可能な炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の脱ガス加熱処理工程を概略的に示すフロー図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の上面素子構造形成工程を概略的に示すフロー図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第3の工程を概略的説明するための断面模式図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第4の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第5の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第6の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第7の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第8の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第8の工程を概略的に説明するための斜視模式図である。
図14】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第9の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図15】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第10の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第11の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図17】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第12の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図18】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第13の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図19】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第14の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図20】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第15の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図21】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第16の工程を概略的に説明するための断面模式図である。
図22】本発明の一実施の形態に係る炭化珪素半導体装置の製造装置の構成を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
(1)本発明の一形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。第1の主面10aと、第1の主面10aと反対側の第2の主面10bとを有する炭化珪素基板10が準備される。炭化珪素基板10の第1の主面10aに接して表面電極50が形成される。表面電極を覆うように表面電極上に粘着テープ1が貼り付けられる。大気圧よりも低い第1の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10が加熱される。炭化珪素基板10が加熱された後、炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削される。第2の主面10bを研削する工程後、大気圧よりも低い第2の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる。
【0011】
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削される前に、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10が加熱される。これにより、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体の大部分を、当該空間の外部に排出することができる。炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削されて炭化珪素基板が薄くなっている場合と比較して、炭化珪素基板10の厚みが大きいので、炭化珪素基板10が加熱される際に、炭化珪素基板10が割れることを抑制することができる。また第2の主面10bを研削する工程後、大気圧よりも低い第2の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる。炭化珪素基板10の第2の主面10bを研削する前に、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体の大部分が、当該空間の外部に排出されているので、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して研削が行われた後においては、粘着テープ1と表面電極50との間の空間には、ほとんど気体が残っていない。そのため、大気圧よりも低い第2の圧力において、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる場合において、炭化珪素基板10が割れること効果的に抑制することができる。また炭化珪素基板は珪素基板と比較して固く割れやすいので、基板の割れを防止する方策がより必要とされる。
【0012】
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、第1の圧力は、1×10−5Pa以上1×10−2Pa以下である。第1の圧力を1×10−5Pa以上とすることにより、特別な高真空設備や長時間の真空引きを実施することなく容易に処理することができる。第1の圧力を1×10−2Pa以下とすることにより、粘着テープ1と表面電極50との間に閉じ込められた気体を効果的に排出することができる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、第1の圧力は、第2の圧力以下である。これにより、研削前において、粘着テープ1と表面電極50との間に閉じ込められた気体を十分排出することができるため、研削後において炭化珪素基板10が割れることを効果的に抑制することができる。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板を加熱する工程における炭化珪素基板10の温度は、100℃以上200℃以下である。炭化珪素基板10を100℃以上とすることにより、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められていた水を蒸発させて水蒸気とし、当該水蒸気を当該空間から効果的に排出することができる。炭化珪素基板10を200℃以下とすることにより、粘着テープ1に対してダメージを与えることを効果的に防止することができる。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、第2の主面10bを研削する工程において第2の主面10bに形成された加工変質層10cをプラズマエッチングにより除去する工程を含む。粘着テープ1と表面電極50との間の空間に気体が残っていると、加工変質層10cをプラズマエッチングにより除去する工程において、気体が粘着テープ1と表面電極50との間から外部に放出される際に局所的な圧力変動が起こることで異常放電が発生し、粘着テープ1が炭化珪素基板10に焼き付いてしまい、粘着テープ1を剥がすことが困難となる。そのため、プラズマエッチングの前に粘着テープ1と表面電極50との間の空間に存在する気体を排出することにより、プラズマエッチング中に異常放電が発生することを抑制することができる。
【0016】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、炭化珪素基板10の第2の主面10bに裏面電極15を形成する工程を含む。粘着テープ1と表面電極50との間の空間に水蒸気などの気体が残っていると、第2の主面10bに裏面電極15を形成する際に、水蒸気などの気体が発生して、裏面電極15の膜質が低下する場合がある。裏面電極15を形成する前に粘着テープ1と表面電極50との間の空間に存在する気体を排出することにより、裏面電極15の膜質が低下することを抑制することができる。
【0017】
(7)上記(6)に係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、裏面電極15に対してレーザーアニールを行う工程を含む。レーザーアニールで裏面電極15を局所的に加熱するため、粘着テープ1が高温になって粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体が発生することを効果的に抑制することができる。
【0018】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径は、100mm以上である。炭化珪素基板の第1の主面10aの最大径が大きくなると、粘着テープ1を表面電極50上に貼り付ける際に、粘着テープ1と表面電極50との間に気体が残りやすくなる。上記炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径が100mm以上である場合においてより好適に用いられる。
【0019】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板の第2の主面を研削する工程後において、炭化珪素基板10の厚みTは、50μm以上200μm以下である。炭化珪素基板10の厚みが小さくなると、炭化珪素基板10が割れやすくなる。上記炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板10の厚みが50μm以上200μm以下である場合においてより好適に用いられる。
【0020】
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程後、粘着テープ1を表面電極50上から除去する工程をさらに備えている。これにより、粘着テープ1が炭化珪素基板10から剥離される。
【0021】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板を加熱する工程は、加熱部3bを含む基板保持部3から炭化珪素基板10が離間した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程を含む。それゆえ、比較的柔らかい粘着テープが膨らみやすくなることで、粘着テープ1と表面電極50との間から気体を排出することができる。結果として、炭化珪素基板10が割れることを効果的に抑制することができる。
【0022】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置の製造方法において好ましくは、炭化珪素基板を加熱する工程は、基板保持部3から炭化珪素基板10が離間した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程後、炭化珪素基板10が基板保持部3に接触した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程をさらに含む。炭化珪素基板10が基板保持部3に押し付けられることにより、粘着テープ1と表面電極50との間に残っていた気体が押し出されて排出される。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0023】
まず、本発明の一実施の形態に係る製造方法によって製造される半導体装置100の一例としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成について説明する。
【0024】
図1を参照して、実施の形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、上面素子構造80と、ドレイン電極15と、裏面保護電極17とを主に有している。基板10は、たとえば炭化珪素からなる炭化珪素基板10である。炭化珪素基板10は、たとえば炭化珪素単結晶基板11と、炭化珪素エピタキシャル層20とを有している。炭化珪素単結晶基板11は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素単結晶からなる。炭化珪素単結晶基板11は、たとえば窒素などの不純物を含んでおり、n型(第1導電型)の導電型を有する。
【0025】
炭化珪素基板10は、第1の主面10aと、第1の主面10aとは反対側の第2の主面10bとを有している。炭化珪素基板10の第1の主面10aは、{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面である。好ましくは、炭化珪素基板10の第1の主面10aは、(0001)面または(0001)面から8°以下程度オフした面であり、かつ裏面は(000−1)面または(000−1)面から8°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板11は、炭化珪素基板10の第2の主面10bを構成し、かつ炭化珪素エピタキシャル層20は、炭化珪素基板10の第1の主面10aを構成する。
【0026】
炭化珪素エピタキシャル層20は、炭化珪素単結晶基板11上に設けられ、炭化珪素から構成される。炭化珪素エピタキシャル層20は、ドリフト領域21と、ボディ領域22と、ソース領域23と、コンタクト領域24とを有している。ドリフト領域21は、たとえば窒素などの不純物を含んでおり、導電型がn型の領域である。ドリフト領域21における不純物濃度は、炭化珪素単結晶基板11の不純物濃度よりも低い。ボディ領域22はp型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域22に含まれる不純物は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などである。ボディ領域22が含むアルミニウムなどの不純物濃度は、たとえば1×1017cm-3である。
【0027】
ソース領域23はn型の導電型を有する。ソース領域23は、ボディ領域22によってドリフト領域21と隔てられている。ソース領域23は、炭化珪素基板10の第1の主面10aの一部を形成し、かつボディ領域22に取り囲まれるように設けられている。ソース領域23は、たとえばP(リン)などの不純物を含んでいる。ソース領域23の不純物濃度は、ドリフト領域21の不純物濃度よりも高い。ソース領域23が含むリンなどの不純物の濃度は、たとえば1×1020cm-3である。
【0028】
コンタクト領域24はp型の導電型を有する。コンタクト領域24は、ソース領域23を貫通して炭化珪素基板10の第1の主面10aおよびボディ領域22の双方に接するように設けられている。コンタクト領域24は、たとえばAlまたはBなどの不純物を含んでいる。コンタクト領域24の不純物濃度は、ボディ領域22の不純物濃度よりも高い。コンタクト領域24が含むAlまたはBなどの不純物の濃度は、たとえば1×1020cm-3である。
【0029】
上面素子構造80は、ゲート酸化膜30と、ゲート電極40と、表面電極50と、層間絶縁膜60とを主に有している。ゲート酸化膜30は、一方のソース領域23の上部表面から他方のソース領域23の上部表面にまで延在するように炭化珪素基板10の第1の主面10a上に形成されている。ゲート酸化膜30は、ソース領域23、ボディ領域22およびドリフト領域21の各々に接して形成されている。ゲート酸化膜30は、たとえば二酸化珪素から構成されている。
【0030】
ゲート電極40は、一方のソース領域23上から他方のソース領域23上にまで延在するように、ゲート酸化膜30に接触して配置されている。ゲート電極40は、ソース領域23、ボディ領域22およびドリフト領域21の各々に対向する位置においてゲート酸化膜30と接して設けられている。ゲート電極40は、不純物が導入されたポリシリコンまたはAlなどの導電体からなっている。
【0031】
表面電極50は、ソース電極50aと、ソース電極50a上に設けられた表面保護電極50bとを含む。ソース電極50aは、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ソース領域23およびコンタクト領域24に接して設けられている。ソース電極50aは、ゲート酸化膜30に接し、かつゲート酸化膜30から離れる向きにコンタクト領域24上にまで延在するように設けられている。ソース電極50aは、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料からなり、炭化珪素基板10のソース領域23とオーミック接合している。表面保護電極50bは、たとえばAlを含む材料から構成されており、ソース電極50aと電気的に接続されている。
【0032】
層間絶縁膜60は、ゲート電極40を覆うように、ゲート電極40およびゲート酸化膜30と接して設けられている。層間絶縁膜60は、ゲート電極40とソース電極50aとを電気的に絶縁している。表面保護電極50bは、層間絶縁膜60を覆い、かつソース電極50aに接して設けられている。
【0033】
ドレイン電極15は、炭化珪素基板10の第2の主面10bに接して設けられている。ドレイン電極15は、たとえばNiSiを含む材料からなり、炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合している。ドレイン電極15は、炭化珪素単結晶基板11と電気的に接続されている。裏面保護電極17は、炭化珪素単結晶基板11とは反対側のドレイン電極15の主面に接して形成されている。裏面保護電極17は、たとえばAlを含む材料により構成されている。裏面保護電極17は、ドレイン電極15と電気的に接続されている。
【0034】
次に、本発明の一実施の形態に係るMOSFETの製造方法について説明する。
まず、基板準備工程(S10:図2)が実施される。具体的には、たとえばポリタイプ4Hを有する炭化珪素単結晶からなるインゴット(図示しない)をスライスすることにより、六方晶炭化珪素単結晶からなり、かつ導電型がn型の炭化珪素単結晶基板11が準備される。次に、炭化珪素単結晶基板11上にエピタキシャル成長によりn型の炭化珪素エピタキシャル層20が形成される。炭化珪素エピタキシャル層20にはたとえば窒素イオンなどの不純物が含まれている。炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径は100mm以上であり、好ましくは150mm以上であり、より好ましくは200mm以上である。炭化珪素基板10の第1の主面10aは、たとえば{0001}面または{0001}面から8°以下程度オフした面であってもよい。炭化珪素単結晶基板11は、炭化珪素基板10の第2の主面10bを構成し、かつ炭化珪素エピタキシャル層20は、炭化珪素基板10の第1の主面10aを構成する(図5参照)。
【0035】
次に、上面素子構造形成工程(S20:図2)が実施される。上面素子構造は、たとえば以下の工程を実施することにより行われる。
【0036】
まず、イオン注入工程(S21:図4)が実施される。図6を参照して、まず、たとえばAl(アルミニウム)イオンが、炭化珪素基板10の第1の主面10aに対して注入されることにより、炭化珪素エピタキシャル層20内に導電型がp型のボディ領域22が形成される。次に、たとえばP(リン)イオンが、上記Alイオンの注入深さよりも浅い深さでボディ領域22内に注入されることにより、導電型がn型のソース領域23が形成される。次に、たとえばAlイオンが、ソース領域23に対してさらに注入されることにより、ソース領域23を貫通してボディ領域22に達し、かつ導電型がp型のコンタクト領域24が形成される。炭化珪素エピタキシャル層20において、ボディ領域22、ソース領域23およびコンタクト領域24のいずれも形成されない領域は、ドリフト領域21となる。
【0037】
次に、活性化アニール工程(S22:図4)が実施される。具体的には、炭化珪素基板10を、たとえば1700℃の温度下で30分間程度加熱することにより、イオン注入工程(S21:図4)にて導入された不純物が活性化される。これにより、不純物が導入された領域において所望のキャリアが生成する。
【0038】
次に、ゲート酸化膜形成工程(S23:図4)が実施される。図7を参照して、たとえば酸素を含む雰囲気中において炭化珪素基板10を加熱することにより、炭化珪素基板10の第1の主面10aに接して二酸化珪素からなるゲート酸化膜30が形成される。炭化珪素基板10は、たとえば1300℃程度の温度下において60分程度加熱される。ゲート酸化膜30は、炭化珪素基板10の第1の主面10aにおいて、ドリフト領域21、ボディ領域22、ソース領域23およびコンタクト領域24の各々と接するように形成される。
【0039】
次に、ゲート電極形成工程(S24:図4)が実施される。図8を参照して、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート酸化膜30上に不純物を含むポリシリコンからなるゲート電極40が形成される。ゲート電極40は、ゲート酸化膜30を介してソース領域23、ボディ領域22およびドリフト領域21の各々と対向する位置に形成される。
【0040】
次に、層間絶縁膜形成工程(S25:図4)が実施される。図9を参照して、たとえばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート電極40を覆い、かつゲート酸化膜30に接する層間絶縁膜60が形成される。層間絶縁膜60は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成される。
【0041】
次に、表面電極形成工程(S26:図4)が実施される。具体的には、たとえばエッチングにより、ソース電極50aを形成すべき領域における層間絶縁膜60およびゲート酸化膜30が除去され、ソース領域23およびコンタクト領域24が露出した領域が形成される。次に、図10を参照して、たとえばスパッタリングにより、ソース領域23およびコンタクト領域24が露出した領域において、たとえばTiAlSi(チタンアルミニウムシリコン)を含む金属層が形成される。上記金属層がたとえば1000℃程度に加熱されることにより、上記金属層の少なくとも一部がシリサイド化し、ソース領域23とオーミック接合するソース電極50aが形成される。
【0042】
次に、表面保護電極形成工程(S27:図4)が実施される。具体的には、たとえばスパッタリング法により、ソース電極50aに接し、かつ層間絶縁膜60を覆うように表面保護電極50bが形成される。表面保護電極50bは、たとえばアルミニウムを含む材料から構成される。以上により、ソース電極50aと、表面保護電極50bとを含み、かつ炭化珪素基板10の第1の主面10aに接する表面電極50が形成される。
【0043】
次に、パッシベーション膜形成工程(S28:図4)が実施される。具体的には、たとえばCVD法により、表面保護電極50bの一部を覆うようにパッシベーション膜(図示せず)が形成される。パッシベーション膜は、たとえば二酸化珪素からなる。以上により、上面素子構造形成工程(S20:図2)が完了する。これにより、第3の主面16aおよび第3の主面16aと反対側の第2の主面10bと有する中間基板16が準備される。中間基板16は、炭化珪素基板10と、炭化珪素基板10上に設けられた上面素子構造80とを含む(図11参照)。上面素子構造80は、中間基板16の第3の主面16aを構成する。
【0044】
次に、粘着テープ貼付け工程(S30:図2)が実施される。粘着テープ1は、第4の主面1aと、第4の主面1aと反対側の第5の主面1bとを有している。粘着テープ1は、たとえば、第4の主面1aを構成する粘着部と、第5の主面1bを構成するベース部とを含んでいる。粘着部としては、たとえば、粘着性を有するアクリル粘着剤が使用可能である。ベース部としては、たとえばポリエステルなどの有機化合物が使用可能である。粘着部として、紫外線などのエネルギー線を照射することにより粘着力が低下する材料が用いられる。紫外線などのエネルギー線を照射することにより粘着力が低下する材料としては、たとえば紫外線硬化型樹脂が挙げられる。また、粘着部として、加熱されることにより粘着力が低下する材料が用いられても構わない。加熱されることにより粘着力が低下する材料としては、たとえば熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0045】
次に、図12および図13を参照して、中間基板16の上面素子構造80側の第3の主面16aが粘着テープ1の第4の主面1aに貼り付けられることにより、中間基板16が粘着テープ1によって支持される。粘着テープ1は、たとえば30Pa以上100Pa以下程度の圧力可において、中間基板16の第3の主面16aに貼り付けられる。粘着テープ1は、表面電極50を覆うように表面電極50上に貼り付けられる。粘着テープ1と、表面電極50との間の一部に、パッシベーション膜などが配置されていてもよい。粘着テープ1は、表面電極50と、パッシベーション膜との双方に接していてもよいし、表面電極50の一部が粘着テープ1と離間し、かつ粘着テープ1がパッシベーション膜と接した状態で、粘着テープ1が表面電極50の上方に配置されていてもよい。好ましくは、粘着テープ1は、炭化珪素基板10の第1の主面10aの全面を覆うように表面電極50上に貼り付けられる。粘着テープ1の第4の主面1aに上面素子構造80側の第3の主面16aが接触するように中間基板16が粘着テープ1に貼り付けられる。表面電極50は、第3の主面16aの少なくとも一部を構成している。以上のようにして、中間基板16の第3の主面16aが粘着テープ1の第4の主面1aに固定される。なお、中間基板16の第3の主面16aには、表面電極50およびパッシベーション膜などが露出している。そのため、中間基板16の第3の主面16aは、凹凸を有しているので、粘着テープ1を表面電極50上に貼り付ける際に、粘着テープ1と表面電極50との間に気体が閉じ込められやすい。
【0046】
次に、脱ガス加熱処理工程(S40:図2)が実施される。第1の脱ガス加熱処理工程(S40:図2)は、離間加熱処理工程(S41:図3)と、接触加熱処理工程(S42:図3)とを含んでいる。
【0047】
まず、離間加熱処理工程(S41:図3)が実施される。具体的には、図22を参照して、粘着テープ1の第4の主面1aに固定された中間基板16が収容室31内に配置される。収容室31にはたとえば真空ポンプが接続されており、収容室31内は真空状態になっている。真空状態を保ちながら、粘着テープ1が貼り付いた中間基板16が、接続部33を通って加熱処理室32に移動される。
【0048】
図14を参照して、粘着テープ1の第5の主面1bと、基板保持部3との間に隙間を設けた状態で、粘着テープ1の第4の主面1aに固定された中間基板16が基板保持部3の基板保持面3aに対向して配置される。基板保持部3は、中間基板16および粘着テープ1を昇温可能に設けられた加熱部3bを含む。加熱部3bを起動することにより、粘着テープ1の第5の主面1bと、基板保持部3との間に隙間を設けた状態で、中間基板16および粘着テープ1の温度を100℃以上に保持しながら加熱処理室32が排気される。隙間tは、たとえば1mm程度である。好ましくは、隙間tは、0.5mm以上2.0mm以下程度に維持される。中間基板16が含む炭化珪素基板10の温度は、たとえば放射温度計により測定可能である。
【0049】
加熱処理室32において、粘着テープ1が貼り付けられた中間基板16は、たとえば基板保持部3の内部に配置された加熱部3bによって100℃以上に加熱される。好ましくは、加熱処理室32内の圧力(第1の圧力)はたとえば1.5×10-4Pa以下まで低減される。炭化珪素基板1を加熱する工程における加熱処理室32内の第1の圧力は、1×10−5Pa以上1×10−2Pa以下であり、さらに好ましくは1×10−5Pa以上5×10−4Pa以下である。なお、加熱処理室32内の第1の圧力は、中間基板16を加熱し始めてから一定時間経過後(たとえば10分から30分程度経過後)における圧力である。好ましくは、粘着テープ1および中間基板16の温度は100℃以上200℃以下に保持されることが好ましく、120℃以上200℃以下に保持されることがより好ましく、140℃以上180℃以下に保持されることがさらに好ましい。以上のように、大気圧よりも低い第1の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10が加熱される。
【0050】
次に、接触加熱処理工程(S42:図3)が実施される。具体的には、図15を参照して、粘着テープ1の第5の主面1bが基板保持部3の基板保持面3aに接するように、粘着テープ1の第4の主面1aに固定された中間基板16が基板保持部3の基板保持面3aに対向して配置される。中間基板16は、粘着テープ1を介して基板保持部3の基板保持面3aにたとえば静電吸着により固定される。離間加熱処理工程(S41:図3)において、粘着テープ1の第4の主面1aおよび中間基板16の第3の主面16aの間の気体の大部分は抜けている。粘着テープ1を介して中間基板16を基板保持部3の基板保持面3aに吸着させることにより、粘着テープ1が中間基板16および基板保持部3の両側からプレスされる。これにより、粘着テープ1の第4の主面1aおよび中間基板16の第3の主面16aの間に残っていた気体が粘着テープ1の第4の主面1aおよび中間基板16の第3の主面16aの間から排出される。加熱部3bを起動することにより、粘着テープ1の第5の主面1bが基板保持部3の基板保持面3aに吸着された状態で、炭化珪素基板10および粘着テープ1の温度をたとえば100℃以上200℃以下に保持しながら加熱処理室32が排気される。炭化珪素基板10および粘着テープ1の温度は120℃以上200℃以下に保持されることが好ましく、140℃以上180℃以下に保持されることがより好ましい。
【0051】
次に、裏面研削工程(S50:図2)が実施される。具体的には、中間基板16が粘着テープ1にて保持されつつ、中間基板16の炭化珪素単結晶基板11側の第2の主面10bが研削される。図16を参照して、粘着テープ1の第5の主面1bが基板保持部3に対向するようにして中間基板16が基板保持部3に配置される。次に、研削部(図示しない)により炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削される。図17を参照して、中間基板16の第2の主面10bが研削されることで、炭化珪素単結晶基板11が薄板化される。炭化珪素基板10の炭化珪素単結晶基板11は、たとえば200μm以上の厚みから200μm未満の厚みにまで研削される。研削前の炭化珪素基板10の厚みは、たとえば500μmであり、研削後の炭化珪素基板10の厚みTはたとえば100μmである。好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bを研削した後における、炭化珪素基板10の厚みTは、50μm以上200μm以下である。より好ましくは、炭化珪素基板10の第2の主面10bを研削した後における、炭化珪素基板10の厚みTは、80μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは、90μm以上110μm以下である。炭化珪素基板10を研削することにより、炭化珪素基板10の第2の主面10bに加工変質層10cが形成される。加工変質層10cと上面素子構造80との間は炭化珪素単結晶層10dである。
【0052】
次に、加工変質層除去工程(S60:図2)が実施される。具体的には、粘着テープ1が貼り付けられた中間基板16が、大気圧よりも低い圧力を有する真空チャンバに配置された後、中間基板16に対してドライエッチングが実施される。たとえば、真空チャンバ―に対してSF6などの反応性ガスが導入された状態で、真空チャンバ内にプラズマを発生させることにより、粘着テープ1が中間基板16の第3の主面16aに貼り付いた状態で、炭化珪素基板10の第2の主面10bに形成された加工変質層10cがプラズマを利用してエッチングされる。以上のように、炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削された後、大気圧よりも低い第2の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる。炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程において、加工変質層10cがプラズマエッチングにより除去される(図18参照)。エッチングが行われている間における真空チャンバの圧力(第2の圧力)は、たとえば1Pa以上5Pa以下である。好ましくは、裏面研削前に炭化珪素基板10が減圧処理される場合における第1の圧力は、裏面研削後に炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる第2の圧力以下である。
【0053】
次に、逆スパッタ工程(S70:図2)が実施される。具体的には、加工変質層10cが除去された炭化珪素基板10を有する中間基板16が真空チャンバに配置される。真空チャンバの圧力は、たとえば1.5×10-4Pa程度である。真空チャンバに対して、たとえばアルゴンガスが導入された状態においてプラズマを発生させることにより、炭化珪素基板10の第2の主面10b上の付着物が除去される。具体的には、たとえば5〜10Paの圧力(第2の圧力)のAr雰囲気下において、800WのRFパワーが印加された条件で、中間基板16の第2の主面10bに対して逆スパッタリングが実施される。
【0054】
次に、裏面電極形成工程(S80:図2)が実施される。具体的には、図19を参照して、中間基板16が粘着テープ1にて支持された状態で、中間基板16を冷却しながら、中間基板16の第2の主面10b上に、たとえばNiSiを含む材料から構成される裏面電極15が形成される。裏面電極15の形成は、大気圧よりも低い第2の圧力において、たとえばスパッタリング法により実施される。スパッタが行われている間における真空チャンバの圧力(第2の圧力)は、たとえば0.3Pa以上1Pa以下である。裏面電極15の形成は蒸着法により実施されても構わない。つまり、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、大気圧よりも低い第2の圧力において、炭化珪素基板10の第2の主面10bに裏面電極15を形成する工程を含んでいてもよい。
【0055】
次に、レーザーアニール工程(S90:図2)が実施される。中間基板16の第2の主面10bに接して形成された裏面電極15を加熱することにより、裏面電極15が合金化する。たとえばレーザー照射を用いて裏面電極15を局所的に加熱することにより、裏面電極15の少なくとも一部がシリサイド化する。これにより、中間基板16の炭化珪素単結晶基板11とオーミック接合する裏面電極15が形成される。以上のように、裏面電極15に対してレーザーアニールが行われる。なお、裏面電極15に対するレーザーアニールは、たとえば大気圧において行われる。
【0056】
次に、逆スパッタ工程(S100:図2)が実施される。具体的には、裏面電極15が第2の主面10b上に形成された中間基板16が真空チャンバに配置される。真空チャンバの圧力は、たとえば1.5×10-4Pa程度である。真空チャンバに対して、たとえばアルゴンガスが導入された状態においてプラズマを発生させることにより、裏面電極15上の付着物が除去される。具体的には、数Pa程度のAr雰囲気下において、800WのRFパワーが印加された条件で、裏面電極15に対して逆スパッタリングが実施される。
【0057】
次に、裏面保護電極形成工程(S110:図2)が実施される。図20を参照して、中間基板16が粘着テープ1によって支持された状態において、裏面電極15に接する裏面保護電極17が形成される。裏面保護電極17は、たとえば、Ti、NiおよびAuを含む材料から構成されている。具体的には、裏面電極15に接してTiを含む層が形成される。次に、Tiを含む層に接してNiを含む層が形成される。次に、Niを含む層に接してAuを含む層が形成される。以上のように、裏面電極15に接して裏面保護電極17が形成される。
【0058】
次に、粘着テープ剥離工程(S120:図2)が実施される。具体的には、中間基板16の第3の主面16aに貼り付けられている粘着テープ1が剥離される(図21参照)。具体的には、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われた後、粘着テープ1が表面電極50上から除去される。次に、中間基板16が厚み方向に切断されることにより、複数個のMOSFET100(図1参照)が得られる。
【0059】
なお、上記実施の形態において、第1導電型がn型であり、かつ第2導電型がp型である場合について説明したが、第1導電型がp型であり、かつ第2導電型がn型であってもよい。また上記においては、炭化珪素半導体装置がプレーナ型のMOSFETについて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえばトレンチ型のMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであっても構わない。なお、炭化珪素半導体装置が、IGBTである場合、表面電極がエミッタ電極であり、かつ裏面電極がコレクタ電極であってもよい。
【0060】
次に、本実施の形態に係るMOSFETの製造方法の作用効果について説明する。
本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削される前に、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10が加熱される。これにより、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体の大部分を、当該空間の外部に排出することができる。炭化珪素基板10の第2の主面10bが研削されて炭化珪素基板が薄くなっている場合と比較して、炭化珪素基板10の厚みが大きいので、炭化珪素基板10が加熱される際に、炭化珪素基板10が割れることを抑制することができる。また第2の主面10bを研削する工程後、大気圧よりも低い第2の圧力において、粘着テープ1が表面電極50上に貼り付いた状態で炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる。炭化珪素基板10の第2の主面10bを研削する前に、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体の大部分が、当該空間の外部に排出されているので、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して研削が行われた後においては、粘着テープ1と表面電極50との間の空間には、ほとんど気体が残っていない。そのため、大気圧よりも低い第2の圧力において、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理が行われる場合において、炭化珪素基板10が割れること効果的に抑制することができる。
【0061】
また本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、第1の圧力は、1×10−5Pa以上1×10−2Pa以下である。第1の圧力を1×10−5Pa以上とすることにより、特別な高真空設備や長時間の真空引きを実施することなく容易に処理することができる。第1の圧力を1×10−2Pa以下とすることにより、粘着テープ1と表面電極50との間に閉じ込められた気体を効果的に排出することができる。
【0062】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、第1の圧力は、第2の圧力以下である。これにより、研削前において、粘着テープ1と表面電極50との間に閉じ込められた気体を十分排出することができるため、研削後において炭化珪素基板10が割れることを効果的に抑制することができる。
【0063】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板を加熱する工程における炭化珪素基板10の温度は、100℃以上200℃以下である。炭化珪素基板10を100℃以上とすることにより、粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められていた水を蒸発させて水蒸気とし、当該水蒸気を当該空間から効果的に排出することができる。炭化珪素基板10を200℃以下とすることにより、粘着テープ1に対してダメージを与えることを効果的に防止することができる。
【0064】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、第2の主面10bを研削する工程において第2の主面10bに形成された加工変質層10cをプラズマエッチングにより除去する工程を含む。粘着テープ1と表面電極50との間の空間に気体が残っていると、加工変質層10cをプラズマエッチングにより除去する工程において、気体が粘着テープ1と表面電極50との間から外部に放出される際に局所的な圧力変動が起こることで異常放電が発生し、粘着テープ1が炭化珪素基板10に焼き付いてしまい、粘着テープ1を剥がすことが困難となる。そのため、プラズマエッチングの前に粘着テープ1と表面電極50との間の空間に存在する気体を排出することにより、プラズマエッチング中に異常放電が発生することを抑制することができる。
【0065】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、炭化珪素基板10の第2の主面10bに裏面電極15を形成する工程を含む。粘着テープ1と表面電極50との間の空間に水蒸気などの気体が残っていると、第2の主面10bに裏面電極15を形成する際に、水蒸気などの気体が発生して、裏面電極15の膜質が低下する場合がある。裏面電極15を形成する前に粘着テープ1と表面電極50との間の空間に存在する気体を排出することにより、裏面電極15の膜質が低下することを抑制することができる。
【0066】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程は、裏面電極15に対してレーザーアニールを行う工程を含む。レーザーアニールで裏面電極15を局所的に加熱するため、粘着テープ1が高温になって粘着テープ1と表面電極50との間の空間に閉じ込められた気体が発生することを効果的に抑制することができる。
【0067】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径は、100mm以上である。炭化珪素基板の第1の主面10aの最大径が大きくなると、粘着テープ1を表面電極50上に貼り付ける際に、粘着テープ1と表面電極50との間に気体が残りやすくなる。上記炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板10の第1の主面10aの最大径が100mm以上である場合においてより好適に用いられる。
【0068】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板の第2の主面を研削する工程後において、炭化珪素基板10の厚みTは、50μm以上200μm以下である。炭化珪素基板10の厚みが小さくなると、炭化珪素基板10が割れやすくなる。上記炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板10の厚みが50μm以上200μm以下である場合においてより好適に用いられる。
【0069】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板10の第2の主面10bに対して処理を行う工程後、粘着テープ1を表面電極50上から除去する工程をさらに備えている。これにより、粘着テープ1が炭化珪素基板10から剥離される。
【0070】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板を加熱する工程は、加熱部3bを含む基板保持部3から炭化珪素基板10が離間した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程を含む。それゆえ、炭化珪素基板10が撓んで、粘着テープ1と表面電極50との間から気体を排出することができる。結果として、炭化珪素基板10が割れることを効果的に抑制することができる。
【0071】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、炭化珪素基板を加熱する工程は、基板保持部3から炭化珪素基板10が離間した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程後、炭化珪素基板10が基板保持部3に接触した状態で炭化珪素基板10を加熱する工程をさらに含む。炭化珪素基板10が基板保持部3に押し付けられることにより、粘着テープ1と表面電極50との間に残っていた気体が押し出されて排出される。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 粘着テープ
1a 第4の主面
1b 第5の主面
3 基板保持部
3a 基板保持面
3b 加熱部
10 炭化珪素基板
10a 第1の主面
10b 第2の主面
10c 加工変質層
10d 単結晶層
11 炭化珪素単結晶基板
15 ドレイン電極
15 裏面電極
16 中間基板
16a 第3の主面
17 裏面保護電極
20 炭化珪素エピタキシャル層
21 ドリフト領域
22 ボディ領域
23 ソース領域
24 コンタクト領域
30 ゲート酸化膜
31 収容室
32 加熱処理室
33 接続部
40 ゲート電極
50 表面電極
50a ソース電極
50b 表面保護電極
60 層間絶縁膜
80 上面素子構造
100 炭化珪素半導体装置(MOSFET)
T 厚み
t 隙間
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