(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性化された前記送受電管理部は、前記直流電力線による送受電の対象の前記DC−DCコンバータを制御する前記送受電制御部に対して前記第1の通信チャネルを通じて各前記DC−DCコンバータの制御を依頼する、請求項1に記載の送受電制御装置。
前記送受電制御部、前記送受電管理部、及び前記送受電調停部は、他の全ての送受電制御装置との間で共通のポリシ情報に基づいて動作する、請求項1または2に記載の送受電制御装置。
前記送受電調停部は、前記制御権の取得について、前記ポリシ情報に基づいて他の送受電制御装置との間で前記第2の通信チャネルを通じて調停する、請求項3に記載の送受電制御装置。
前記送受電制御部は、前記DC−DCコンバータに接続された二次電池の充放電を前記DC−DCコンバータを通じて制御する、請求項1〜11のいずれかに記載の送受電制御装置。
前記送受電制御部は、前記送受電管理部からの依頼があるかを周期的に確認し、前記送受電管理部からの依頼が所定時間以上発生しなかった場合は前記DC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を停止する、請求項1〜12のいずれかに記載の送受電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本開示の一実施形態
1.1.概要
1.2.システム構成例
1.3.動作例
2.まとめ
【0014】
<1.本開示の一実施形態>
[1.1.概要]
本開示の一実施形態について説明する前に、本開示の一実施形態の概要について説明する。
【0015】
各需要家に蓄電池を有するバッテリサーバを備え、商用電源や、太陽光、風力、地熱等の自然エネルギーにより発生した電力を用いて蓄電池に電力を蓄えておき、その蓄電池に蓄えた電力を使って電気製品を動作させる仕組みが、今後ますます普及していくことが想定される。そのような仕組みの普及を踏まえ、上述したように、ある需要家のバッテリサーバにおいて電力が不足した場合に、電力に余裕のある需要家のバッテリサーバから、その電力が不足している需要家のバッテリサーバに電力を融通するシステムが考案されている。電力を需要家同士で供給しあう際は、蓄電池からの電力供給を考慮すると、直流電力による供給が行われることが、効率面を考えると望ましい。
【0016】
しかし、各需要家が好き勝手にバッテリサーバから直流電力を送電すると、目的の相手に正しく送電できなくなる。従ってバッテリサーバからの直流電力の送電やバッテリサーバへの受電を制御する制御権を管理することが望ましい。制御権の管理という観点から、需要家から直流電力を送電する直流のグリッドに接続される全てのバッテリサーバの動作を制御するマスタと、マスタの指示に従って動作するスレーブとにバッテリサーバの役割を分担することで、需要家間で直流電力を融通しあう方法が考えられる。
【0017】
マスタとなるバッテリサーバは、直流のグリッドの電圧を設定し、マスタから直流の電力を送電したり、スレーブに対して直流の電力の送電を依頼したりすることで、目的の相手に直流電力を送電することができる。このようにマスタとスレーブとに役割を分担する場合、例えばマスタとなるバッテリサーバを常に固定したり、電力が不足している需要家からの要求に最初に応答したバッテリサーバをマスタにしたりする方法が考えられる。
【0018】
しかし、マスタとなるバッテリサーバを常に固定してしまうと、そのバッテリサーバに負担が集中して不公平となる。また、そのマスタとなったバッテリサーバが何らかの理由で停止してしまった場合に、需要家間で直流電力の送受信が出来なくなってしまう。またマスタとなるバッテリサーバが、スレーブとなるバッテリサーバからマスタとなるバッテリサーバへ電力の送電を依頼した後に、そのスレーブが送電することを約束したにもかかわらず、そのスレーブの需要家におけるユーザの心変わり等の理由で、そのスレーブが送電をやめて、逆に受電を開始してしまうと、マスタとなるバッテリサーバから蓄えていた電力がその受電を開始してしまったスレーブに取られてしまったり、直流グリッドの電圧が大きく変動してしまったりする現象が想定され得る。
【0019】
またマスタとなるバッテリサーバから、スレーブとなるバッテリサーバ間での電力の送受電を依頼した場合も、同様にユーザの心変わり等の理由で、スレーブとなるバッテリサーバにおいて、送電量や受電量の変更が発生したり、送電から受電へ切り替わったりすると、その偏差を全てマスタとなるバッテリサーバが引き受けることになり、マスタとなるバッテリサーバの負担が著しく重くなるという現象が想定され得る。
【0020】
またスレーブとなるバッテリサーバが故障等の理由で停止した場合に、その停止をマスタとなるバッテリサーバが認識しなかった場合、スレーブに対する指示が不可能になって直流グリッドを制御できなくなったり、またマスタとなるバッテリサーバから蓄えていた電力が取られてしまったりする現象が想定され得る。
【0021】
また、グリッドに接続が許可されていない、または接続されることが想定されていない機器が接続された場合、その機器はマスタからの制御対象外となるので、その機器が勝手に電力をグリッドから受電したり、また制御のためのコマンドを他のバッテリサーバに勝手に送信することでグリッドを混乱させたりする現象が想定され得る。
【0022】
また、各バッテリサーバのユーザが、グリッドに接続された全ての装置の状態を知りたい場合、各バッテリサーバからそれぞれ情報の要求を個別にネットワークに送出してしまうと、ネットワークが混雑し、システムの適切な可動に支障をきたす現象が想定され得る。
【0023】
そこで本件開示者は、上述したような現象の発生を回避しつつ、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能な技術について鋭意検討を行なった。その結果、本件開示者は、上述したような現象の発生を回避しつつ、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能な技術を考案するに至った。
【0024】
以上、本開示の一実施形態の概要について説明した。続いて、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0025】
[1.2.システム構成例]
図1は、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例を示す説明図である。
図1に示したのは、蓄電池を有するバッテリサーバ間で直流電力を融通しあう送受電制御システムの全体構成例である。以下、
図1を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例について説明する。
【0026】
図1に示した送受電制御システム1は、各需要家(
図1では4つ)に設けられるバッテリサーバ同士で、必要に応じて直流電力を供給しあうことを目的として構築されたシステムである。需要家10aにはバッテリサーバ100aが設けられる。同様に需要家10bにはバッテリサーバ100bが、需要家10cにはバッテリサーバ100cが、需要家10dにはバッテリサーバ100dが、それぞれ設けられる。バッテリサーバ100a〜100dは、いずれも内部に、または外付けで、充放電可能なバッテリを備えている。
【0027】
またバッテリサーバ100a〜100dは、直流バスライン20に接続されて、必要に応じて直流電力を供給しあう。バッテリサーバ100a〜100dは、バッテリの電圧と直流バスライン20の電圧とを変換する双方向DC−DCコンバータを備えている。またバッテリサーバ100a〜100dは、通信線30に接続されて、直流バスライン20を通じて直流電力を供給しあう際に、通信線30を通じて情報の送受信を行なう。なお
図1では通信線30は有線であるとして示しているが、通信線30は無線であっても良い。
【0028】
各需要家10a〜10dは、それぞれ太陽光パネル200a〜200dを備えていても良い。太陽光パネル200a〜200dは、いずれも太陽光の照射を受けて発電するパネルであり、発電した電力を、それぞれバッテリサーバ100a〜100dに備えられるバッテリに蓄えることが出来るよう構成されている。なおバッテリサーバ100a〜100dに蓄えられる電力は、太陽光の他に、風力や地熱その他の自然エネルギーにより発生した電力であってもよい。
【0029】
そして本実施形態に係る送受電制御システム1は、直流バスライン20に接続されているバッテリサーバ100a〜100dの中の1つだけが、直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御する制御権を有するように、バッテリサーバ100a〜100d間で調停する仕組みを備えたことを特徴としている。すなわち本実施形態に係る送受電制御システム1は、バッテリサーバ100a〜100dの中で制御権を有しているバッテリサーバだけが、他のバッテリサーバに対して、バッテリに蓄えた電力の送電や、バッテリへ充電するための電力の受電を指示し、制御権を有していないバッテリサーバは、勝手に電力の送受電を行なうことが出来ないようにする仕組みを備えている。
【0030】
このように、直流バスライン20に接続されているバッテリサーバ100a〜100dの中の1つだけが制御権を有して、他のバッテリサーバに対して直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御することで、本実施形態に係る送受電制御システム1は、上述したような単にマスタとスレーブとに役割を分担する場合に生じ得る現象を回避し、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能になる。そして本実施形態に係る送受電制御システム1は、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0031】
以上、
図1を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例について説明した。続いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0032】
図2は、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例を示す説明図である。以下、
図2を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0033】
図2に示したように、バッテリサーバ100aは、U−Agnet110aと、M−Agent120aと、GM−Agent130aと、C−Agent140aと、DC−DCコンバータ150aと、バッテリ160aと、を含んで構成される。バッテリサーバ100b、100c、100dについても、バッテリサーバ100aと同等の構成を有する。以下では、バッテリサーバ100aを構成する各要素についての説明を行う。
【0034】
図2に示したように、通信線30は通信線30a、30bの2つの経路(チャネル)に分かれている。通信線30a、30bは、物理的に異なる有線の通信線であってもよく、物理的には同一の有線または無線の通信線であって、認証や暗号化等によって論理的に分かれていてもよい。そして
図2に示したように、U−Agnet110a及びM−Agent120aは通信線30aで他のU−Agnet110b〜110d及びM−Agent120b〜120dと通信し、GM−Agent130a及びC−Agent140aは通信線30bで他のGM−Agent130b〜130d及びC−Agent140b〜140dと通信する。
【0035】
本実施形態に係る送受電制御システム1は、このようにU−Agnet110a及びM−Agent120aと、GM−Agent130a及びC−Agent140aとで通信経路を分けることで、U−Agnet110a及びM−Agent120aがGM−Agent130a及びC−Agent140aへ直接指示を送出することを防ぎ、またGM−Agent130a及びC−Agent140aがU−Agnet110a及びM−Agent120aへ直接指示を送出することも防いでいる。
【0036】
U−Agnet110aは、本開示の送受電要求部の一例である。U−Agnet110aは、バッテリ160aの充電状態(SOC;State of Charge)を定期的に確認する。そしてU−Agnet110aは、バッテリ160aの充電状態が所定の条件を満たした場合に、M−Agent120aへ受電を依頼する。U−Agnet110aがM−Agent120aへ送出する依頼の内容は、受電の際の電圧値や電流値、受電する時間(例えば、開始時刻、終了時刻、継続時間等)、受電を停止するバッテリ160aの充電状態、などが含まれ得る。
【0037】
U−Agnet110aは、バッテリ160の充電状態が所定の条件を満たしたかどうかの判断に、シナリオ170aを参照する。シナリオ170aには、U−Agnet110aがM−Agent120aへ受電を依頼するためのバッテリ160aの充電状態の条件が記述されている。シナリオ170aに記述される条件としては、例えば、バッテリ160aの充電状態が20%以下になるとU−Agnet110aがM−Agent120aへ受電を依頼する、という内容があり得る。
【0038】
U−Agnet110aは、ユーザからの要求に基づき、シナリオ170aの内容を編集する機能を有していても良い。シナリオ170aの内容は例えばテキストで記述されてもよく、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述されてもよく、Lisp、Perl、PHP等のスクリプト言語として記述されていてもよい。シナリオ170aの内容がスクリプト言語で記述されている場合は、シナリオ170aの内容は、例えば関数の塊として記述され得る。
【0039】
またシナリオ170aの編集には、例えばテキストエディタが用いられてもよく、専用のエディタが用いられてもよく、Webブラウザが用いられてもよい。U−Agnet110aは、これらのシナリオ170aの内容を編集することが可能なツールが動作可能に構成され得る。
【0040】
またシナリオ170aには、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、どのような条件を満たしていればその要求に応えて送電を許可するか、についても記述され得る。シナリオ170aに記述される条件としては、例えば、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、バッテリ160aの充電状態が80%以上であればその要求に応えて送電を許可する、という内容があり得る。またシナリオ170aに記述される条件としては、例えば、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、バッテリ160aの充電状態が80%以上であり、かつ、電力の1時間あたりの使用率が10%以下であればその要求に応えて送電を許可する、という内容があり得る。すなわち、バッテリ160aの充電状態だけでなく、バッテリ160aに蓄えられた電力の使用状態も、シナリオ170aに記述される条件に含まれ得る。
【0041】
シナリオの内容は、各バッテリサーバで独自に定められることが出来る。従って、上述の受電を依頼するための条件や、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合にその要求に応えて送電を許可するための条件は、各バッテリサーバでそれぞれ異なり得る。また各バッテリサーバで定められるシナリオは、1つだけに限定されず、状況に応じてU−Agnet110aが参照するシナリオが切り替えられても良い。
【0042】
M−Agent120aは、本開示の送受電調停部の一例である。M−Agent120aは、U−Agnet110aから受電の依頼が発生した場合に、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dとの間で通信線30aを通じて通信を行なって、送電可能かどうかを問い合わせる。またM−Agent120aは、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能、または送電不可能の回答を返答する。
【0043】
またM−Agent120aは、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能であると回答する時は、GM−Agent130aが起動されていなければ、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dへ、GM−Agent130b、130c、130dが起動中かどうか、通信線30aを通じて問い合わせる。詳細は後述するが、GM−Agent130aは、M−Agent120aからの起動指示に基づいて起動して、各バッテリサーバのDC−DCコンバータ150a〜150dの動作を制御する。
【0044】
本実施形態に係る送受電制御システム1では、GM−Agent130a〜130dの中のいずれか1つだけが起動を許可される。従ってM−Agent120aは、GM−Agent130aが起動されていなければ、バッテリサーバ100aは送受電の制御権を有していないと判断して、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dへ、送受電の制御権を有しているか、すなわち、GM−Agent130b、130c、130dが起動中かどうかを通信線30aを通じて問い合わせる。起動中のGM−Agentがあれば、M−Agent120aは、その起動中のGM−Agentに、そのGM−Agentを起動させているM−Agentを介して送受電を依頼する。例えばGM−Agent130bが起動中であれば、M−Agent120aは、M−Agent120bを介して、GM−Agent130bへ電力の送受電を依頼する。
【0045】
一方、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能であると回答する時は、GM−Agent130aが起動されていれば、GM−Agent130aが起動中である旨を併せて回答する。
【0046】
M−Agent120aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentのみからの指示に従うようにC−Agent140aに通知する。例えばM−Agent120aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentを識別する識別情報をC−Agent140aに通知する。C−Agent140aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentを識別する識別情報の通知を受けることで、その識別情報以外の識別情報を有するGM−Agentからの指示を無視することが出来る。
【0047】
GM−Agent130aは、本開示の送受電管理部の一例である。GM−Agent130aは、M−Agent120aからの起動指示によって起動されて活性化され、M−Agent120aからの停止指示によって停止されて不活性化される。活性化されたGM−Agent130aは、M−Agent120a〜120dからの電力の送受電の依頼に基づき、C−Agent140a〜140dを介してDC−DCコンバータ150a〜150dによる電力の送受電を、通信線30bを通じて制御する。そしてGM−Agent130aは、依頼された全ての電力の送受電が終了すると、制御権を開放する手続きを実行する。制御権を開放すると、GM−Agent130aはM−Agent120aからの停止指示によって停止されて不活性化される。
【0048】
GM−Agent130aは、M−Agent120a〜120dから電力の送受電の依頼があると、各バッテリサーバ100a〜100dの送電能力及び受電能力をC−Agent140a〜140dから通信線30bを通じて取得する。またGM−Agent130aは、加えて直流バスライン20の総送電電流量から、送電可能な電流量を算出する。GM−Agent130aは、送電開始後に、累積送電量が要求された送電量に達すると、その送電を停止するようC−Agent140a〜140dに通信線30bを通じて指示する。
【0049】
C−Agent140aは、本開示の送受電制御部の一例である。C−Agent140aは、GM−Agent130a〜130dの中の、活性化された(すなわち、制御権を有する)GM−Agentからの指示に基づいてDC−DCコンバータ150aを制御する。C−Agent140aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentのみからの指示に従うようにM−Agent120aから通知を受けているので、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの指示のみに従ってDC−DCコンバータ150aを制御する。
【0050】
C−Agent140aは、定期的にDC−DCコンバータ150aのパラメータをチェックする。DC−DCコンバータ150aのパラメータに異常が生じると、送電または受電相手に警告を通知する。
【0051】
DC−DCコンバータ150aは、バッテリ160aや太陽光パネル200aとローカルバスライン21aで接続されるとともに、他のバッテリサーバ100b〜100dのDC−DCコンバータ150b〜150dと直流バスライン20で接続されている。DC−DCコンバータ150aは、C−Agent140aの制御に基づき、直流バスライン20とローカルバスライン21aとの間の直流電力の変換を行なう。
【0052】
U−Agnet110aは、各バッテリサーバ100a〜100dで独立のシナリオ170aに従って動作する。M−Agent120a、GM−Agent130a及びC−Agent140aは、全てのバッテリサーバ100a〜100dで共通のポリシ180に従って動作する。従って、M−Agent120a、GM−Agent130a及びC−Agent140aは、他のバッテリサーバ100b〜100dと異なるルールで動作することは許されない。
【0053】
ポリシ180の内容は例えばテキストで記述されてもよく、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述されてもよく、Lisp、Perl、PHP等のスクリプト言語として記述されていてもよい。ポリシ180の内容がスクリプト言語で記述されている場合は、ポリシ180の内容は、例えば関数の塊として記述され得る。
【0054】
またポリシ180の編集には、例えばテキストエディタが用いられてもよく、専用のエディタが用いられてもよく、Webブラウザが用いられてもよい。上述したように、ポリシ180は全てのバッテリサーバ100a〜100dで共通のものが参照されるので、ユーザが簡単に編集できないようにされていることが望ましいが、必要に応じて編集されることも有り得る。M−Agent120a、GM−Agent130aまたはC−Agent140aは、ポリシ180に定められたルールに基づいて、ポリシ180の編集を実行し得る。
【0055】
シナリオ170aに記述される内容としては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・電力供給を依頼するSOCレベル
・電力提供可能と判断するSOCレベル
・1日の消費サイクルによるバッテリ残存量予測計算手法
・気象情報取得に依る一週間の発電量予測計算手法
・電力融通に依るAC電力利用削減計算
【0056】
ポリシ180に記述される内容としては、例えば、ドキュメントのバージョン、変更日時、記述内容を変更する際のルール、M−Agent120a〜120d、GM−Agent130a〜130d、C−Agent140a〜140dのそれぞれに対して定められるルールが含まれ得る。
【0057】
M−Agent120a〜120dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・制御権獲得のための判断条件や判定手順
・他の装置からの異議申立てに対する判定手順
・送受電制御システム1に参加するバッテリサーバの生存確認手順
・送受電制御システム1に参加していたバッテリサーバの登録削除手順
・送受電制御システム1に参加するメンバーのリスト及びメンバーの認証情報
【0058】
制御権獲得のための判断条件の例としては、賛成したM−Agentが1つでもあれば制御権を獲得できる、過半数が賛成すれば制御権を獲得できる、等が考えられる。制御権獲得のための判定手順の例としては、制御権獲得のために他のM−Agentにコマンドをブロードキャスト送信し、所定時間内に返答を返した他のM−Agentからの返答に基づいて制御権の獲得の是非を判定する、などが考えられる。同様に、他の装置からの異議申立てに対する判定手順の例としては、制御権獲得のために他のM−Agentにコマンドを送信し、所定時間内に返答を返した他のM−Agentからの異議申立ての内容に基づいて制御権の獲得の是非を判定する、などが考えられる。
【0059】
送受電制御システム1に参加するバッテリサーバの生存確認手順の例としては、最後に制御権を獲得したバッテリサーバのM−Agentが他のバッテリサーバの生存確認を確認する、等が考えられる。
【0060】
送受電制御システム1に参加していたバッテリサーバの登録削除手順の例としては、例えば削除を要求するコマンドに基づき、ポリシ180に記述されている登録情報を削除する、等が考えられる。
【0061】
またポリシ180に送受電制御システム1に参加するメンバーのリスト及びメンバーの認証情報が記述されていることで、M−Agentは、そのメンバーに対してのみ各種コマンドを送信したり、コマンドの送信の際に認証情報を付加したりすることが出来る。メンバーの認証情報としては、例えば各バッテリサーバのアドレス情報や、共通の認証鍵等が考えられる。
【0062】
GM−Agent130a〜130dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・自分の位置から見た各バッテリサーバの接続状態の情報
・各バッテリサーバの接続状態の情報に基づく電流容量の計算手法
・DC−DCコンバータの制御手順及び制限事項
・各バッテリサーバに対する電力送電、受電に関する開始から終了までの手順
・電力供給が停止したことによる制御権の放棄または委譲手順
・異常が通知された場合の処理手順
【0063】
直流バスライン20には直流の電力が流れるので、GM−Agent130a〜130dは、バッテリサーバ100a〜100dの直流バスライン20への接続状態を把握しておき、そのバッテリサーバ100a〜100dの位置情報に基づき、どのように電力を供給するかを決定することが求められる。ポリシ180には、バッテリサーバ100a〜100dの直流バスライン20への接続状態を記述しておくことで、GM−Agent130a〜130dは、その接続状態を参照し、DC−DCコンバータ150a〜150dを制御する。
【0064】
DC−DCコンバータの制御手順の例としては、例えば直流電圧を変換する際にDC−DCコンバータに送出する指示の内容等が考えられる。またDC−DCコンバータの制限事項としては、例えば電圧の変換可能範囲等が考えられる。
【0065】
各バッテリサーバに対する電力送電、受電に関する開始から終了までの手順の例としては、電力送電や受電の開始時の電流の上げ方の手順、電力送電や受電の終了時の電流の下げ方の手順等が考えられる。
【0066】
電力供給が停止したことによる制御権の放棄または委譲手順としては、例えば、他に電力を供給しているバッテリサーバがあれば、そのバッテリサーバに制御権を委譲する等の手順が考えられる。
【0067】
異常が通知された場合の処理手順としては、例えば、あるバッテリサーバが故障したら、そのバッテリサーバは無視して処理を進める等の手順が考えられる。
【0068】
C−Agent140a〜140dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられる。
・制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの制御が続いているか確認する手順及び異常処理手順
・複数のGM−Agentから同時に制御されていないかどうかを確認する手順
・複数のGM−Agentから同時に制御されていた場合の処理手順
・DC−DCコンバータの動作を確認し制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに適宜通知するモニタリング手順
【0069】
制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの制御が続いているか確認する手順としては、例えば所定間隔毎にGM−Agentからの制御が発生したかどうかを確認する等が考えられる。また異常処理手順としては、GM−Agentからの制御が所定の時間以上途絶えたら制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentにその旨を通知する等が考えられる。
【0070】
複数のGM−Agentから同時に制御されていないかどうかを確認する手順としては、M−Agentから通知された識別情報とは異なる識別情報を有するGM−Agentからの制御が発生しているかどうかを確認するなどが考えられる。そして複数のGM−Agentから同時に制御されていた場合の処理手順としては、例えばM−Agentから通知された識別情報とは異なる識別情報を有するGM−Agentからの制御は無視する、全てのGM−Agentからの制御をエラーとして扱って、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに複数のGM−Agentから同時に制御されている旨を通知する、等が考えられる。
【0071】
DC−DCコンバータの動作を確認し制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに適宜通知するモニタリング手順の例としては、所定間隔毎にDC−DCコンバータのパラメータを確認し、制御権を有しているバッテリサーバのGM−AgentにDC−DCコンバータのパラメータを通知する、等が考えられる。
【0072】
ポリシ180が上述のように規定されていることで、C−Agent140a〜140dは、GM−Agentからの指示がポリシ180の内容に違反していれば、即座にDC−DCコンバータ150a〜150dに送受電の停止指示を送出することが可能になる。
【0073】
もちろん、上述したシナリオ170aやポリシ180の記述内容及びシナリオ170aやポリシ180の記述内容の例は、上述したものに限定されるものではない。シナリオ170aやポリシ180の記述内容は、送受電制御システム1の構成や各バッテリサーバ100a〜100dの構成に応じて適宜変更され得る。
【0074】
バッテリ160aは、充放電可能な二次電池で構成される。バッテリ160aは、太陽光パネル200aが発電した電力や、商用電源(図示せず)から供給される電力によって充電され得る。またバッテリ160aは、必要に応じて他のバッテリサーバ100b〜100dから供給される電力によって充電され得る。またバッテリ160aに蓄えられた電力は、需要家10aにおいて設けられるエアーコンディショナー、冷蔵庫、洗濯機、テレビ受像機、電子レンジその他の電化製品に供給され得る。さらにバッテリ160aに蓄えられた電力は、他のバッテリサーバ100b〜100dからの求めに応じて、DC−DCコンバータ150aから他のバッテリサーバ100b〜100dへ供給され得る。
【0075】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図2に示したような構成を有することで、1つのバッテリサーバだけが制御権を有して、他のバッテリサーバに対して直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御することができる。本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図2に示したような構成を有することで、上述したような単にマスタとスレーブとに役割を分担する場合に生じ得る現象を回避し、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能になる。そして本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図2に示したような構成を有することで、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0076】
なお、直流バスライン20やローカルバスライン21a〜21dの形態は特定の構成に限定されるものではない。例えば直流バスライン20やローカルバスライン21a〜21dは、2つのラインで正電圧及び負電圧を供給し、もう1つのラインでグランドに接続される直流単相3線式のバスラインとして構成されていても良い。
【0077】
以上、
図2を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明した。続いて、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの動作例について説明する。
【0078】
[1.3.動作例]
まず、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110a、M−Agent120a、GM−Agnet130a、及びC−Agent140aのタスクについて整理して説明する。
【0079】
図3は、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110a、M−Agent120a、GM−Agnet130a、及びC−Agent140aのタスクを示す説明図である。
【0080】
U−Agnet110aは、タイマによって周期的にシナリオ170aを参照し、バッテリサーバ100aの状態(例えばバッテリ160aのSOC)がシナリオ170aで規定されている条件を満たしているかどうかを判断する。U−Agnet110aは、バッテリサーバ100aの状態(例えばバッテリ160aのSOC)がシナリオ170aで規定されている条件を満たしていれば、M−Agent120aに電力の受電を依頼する。
【0081】
M−Agent120aは、U−Agnet110aから電力の受電の依頼を受けると、直流電力の送受電を制御する制御権に関する調停を他のM−Agent120b〜120dとの間で行なう。またM−Agent120aは、他のバッテリサーバ100b〜100dで受電の依頼が発生した場合も、同じく直流電力の送受電を制御する制御権に関する調停を他のM−Agent120b〜120dとの間で行なう。
【0082】
調停の結果、例えばバッテリサーバ100aが制御権を得られたとする。M−Agent120aは、GM−Agnet130aを起動して、GM−Agnet130aを活性化させる。またM−Agent120aは、GM−Agnet130aを識別する識別情報をC−Agent140aに通知する。活性化されたGM−Agnet130aは、ポリシ180を参照して、タイマによって周期的に、電力を送受電するための情報をC−Agent140a〜140dに通知する。
【0083】
C−Agent140aは、M−Agent120aから通知された識別情報を有するGM−Agnet(ここで示した例ではGM−Agnet130a)からの通知に基づいてDC−DCコンバータ150aを制御して、直流バスライン20を通じた電力の送受電を行なう。C−Agent140aはタイマによって周期的にDC−DCコンバータ150aのパラメータを参照し、異常が発生していないかどうかを確認する。
【0084】
もしDC−DCコンバータ150aに異常が発生していれば、C−Agent140aは、DC−DCコンバータ150aに異常が発生したことをGM−Agnet130aに通知する。またC−Agent140aは、GM−Agnet130aからの通知の発生の有無をタイマによって周期的に確認する。GM−Agnet130aからの通知が所定時間以上発生しなかった場合は、C−Agent140aは、GM−Agnet130aからの通知が所定時間以上発生しなかったことをGM−Agnet130aに通知する。C−Agent140aは、GM−Agnet130aからの通知が所定時間以上発生しなかったことをGM−Agnet130aに通知した後で、DC−DCコンバータ150aによる直流電力の送受電を停止してもよい。
【0085】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110a、M−Agent120a、GM−Agnet130a、及びC−Agent140aは、
図3に示したようなタスクをそれぞれ実行することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0086】
続いて、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110a、M−Agent120a、GM−Agnet130a、及びC−Agent140aのそれぞれの動作について詳細に説明する。
【0087】
図4は、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110aの動作例について示す流れ図である。
図5は、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、M−Agent120aの動作例について示す流れ図である。
図6は、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、GM−Agnet130aの動作例について示す流れ図である。そして
図7は、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、C−Agent140aの動作例について示す流れ図である。
【0088】
まずU−Agnet110aの動作例について
図4を参照して説明する。U−Agnet110aは、バッテリサーバ100aに設定されているシナリオ170aを読み込み(ステップS101)、シナリオ170aの内容に変更があるかどうか判断する(ステップS102)。U−Agnet110aは、シナリオ170aの内容に変更が無いと判断した場合は(ステップS102、No)、シナリオ170aの内容に変更があるまで待機する。一方U−Agnet110aは、シナリオ170aの内容に変更があると判断した場合は(ステップS102、Yes)、シナリオ170aの内容に基づいてM−Agent120aに制御要求を送出する(ステップS103)。U−Agnet110aは、制御要求として、例えば上述したようにバッテリ160aの充電状態が20%以下になるとM−Agent120aへ受電を依頼する。
【0089】
続いてM−Agent120aの動作例について
図5を参照して説明する。M−Agent120aは、バッテリサーバ100aに設定されているポリシ180を読み込み(ステップS111)、U−Agnet110aから制御要求が送られたかどうかを確認する(ステップS112)。M−Agent120aは、U−Agnet110aからの制御要求があったかどうかを判断し(ステップS113)、U−Agnet110aからの制御要求が無いと判断した場合は(ステップS113、No)、U−Agnet110aからの制御要求が送られてくるまで待機する。一方M−Agent120aは、U−Agnet110aからの制御要求があったと判断した場合は(ステップS113、Yes)、そのU−Agnet110aからの制御要求が受け入れ可能かどうか判断する(ステップS114)。M−Agent120aは、受け入れ可能かどうかの判断を、ポリシ180に記述された内容に基づいて判断してもよい。
【0090】
M−Agent120aは、U−Agnet110aからの制御要求が受け入れ不可能と判断した場合は(ステップS114,No)、U−Agnet110aからの別の制御要求が送られてくるまで待機する。一方M−Agent120aは、U−Agnet110aからの制御要求が受け入れ可能と判断した場合は(ステップS114,Yes)、他のバッテリサーバ100b〜100dのM−Agent120b〜120dとの間で制御権の獲得についての調停を実行する(ステップS115)。
【0091】
他のバッテリサーバ100b〜100dのM−Agent120b〜120dとの間で制御権の獲得についての調停を実行し、調停の結果、例えばバッテリサーバ100aが制御権を獲得できたとすると、M−Agent120aは、GM−Agent130aを活性化させて、GM−Agent130aに電力の送受電のための制御指示を送出する(ステップS116)。またM−Agent120aは、ステップS116でのGM−Agent130aへの電力の送受電のための制御指示の送出にあわせて、C−Agent140aに、制御権を獲得したGM−Agent130aの識別情報を通知する。この制御権を獲得したGM−Agent130aの識別情報の通知は、他のバッテリサーバ100b〜100dのM−Agent120b〜120dも、C−Agent140b〜140dのそれぞれに対して実行する。
【0092】
続いてGM−Agent130aの動作例について
図6を参照して説明する。M−Agent120aによって活性化されたGM−Agent120aは、バッテリサーバ100aに設定されているポリシ180及び送受電制御システム1を構成するバッテリサーバのリストを読み込み(ステップS121)、M−Agent120aからの制御指示が送られたかどうかを確認する(ステップS122)。
【0093】
GM−Agent130aは、M−Agent120aからの制御指示があったかどうかを判断し(ステップS123)、M−Agent120aからの制御指示があったと判断した場合は(ステップS123、Yes)、その制御指示に基づいて、送受電制御の対象となる(ステップS121で読み込んだリストに記述されている)C−Agent140a〜140dに対する送受電制御を実行する(ステップS124)。一方GM−Agent130aは、M−Agent120aからの制御指示が無いと判断した場合は(ステップS123、No)、C−Agent140a〜140dに対する送受電制御が全て終了したかどうかを判断する(ステップS125)。
【0094】
GM−Agent130aは、C−Agent140a〜140dに対する送受電制御が全て終了してないと判断した場合は(ステップS125、No)、C−Agent140a〜140dに対する送受電制御を実行する(ステップS124)。一方GM−Agent130aは、C−Agent140a〜140dに対する送受電制御が全て終了したと判断した場合は(ステップS125、Yes)、全てのC−Agent140a〜140dに送受電制御が終了したことを通知して(ステップS126)、一連の送受電制御を終了する。
【0095】
制御権を得ていたGM−Agent130aは、一連の送受電制御を終了すると、ポリシ180の内容に基づいて制御権の移譲や放棄を行なう。またGM−Agent130aは、制御権を手放すと、M−Agent120aによって非活性化される。
【0096】
続いてC−Agent140aの動作例について
図7を参照して説明する。C−Agent140aは、バッテリサーバ100aに設定されているポリシ180を読み込むと共に、タイマを起動する(ステップS131)。C−Agent140aがステップS131で起動させるタイマは、(制御権を得ている)GM−Agent130aからの送受電制御が行われているかを確認するためのタイマである。
【0097】
続いてC−Agent140aは、(制御権を得ている)GM−Agent130aからの送受電制御が送られたかどうかを確認する(ステップS132)。C−Agent140aは、GM−Agent130aからの送受電制御があったかどうかを判断し(ステップS133)、GM−Agent130aからの送受電制御があったと判断した場合は(ステップS133、Yes)、GM−Agent130aからの送受電制御に基づいてDC−DCコンバータ150aの制御を実行する(ステップS134)。具体的には、C−Agent140aは、DC−DCコンバータ150aの制御として、DC−DCコンバータ150aのパラメータを設定して、直流バスライン20への直流電力の送電や、直流バスライン20からの直流電力の受電を行なう。
【0098】
そしてC−Agent140aは、GM−Agent130aからの送受電制御に基づいてDC−DCコンバータ150aの制御を実行すると、ステップS131で起動させたタイマをリセットし(ステップS135)、ステップS132のGM−Agent130aからの送受電制御が送られたかどうかの確認処理に戻る。
【0099】
一方C−Agent140aは、GM−Agent130aからの送受電制御が無いと判断した場合は(ステップS133、No)、タイマの値が所定時間以上経過したかどうかを判断する(ステップS136)。C−Agent140aは、タイマの値が所定時間以上経過していないと判断すると(ステップS136、No)、ステップS132のGM−Agent130aからの送受電制御が送られたかどうかの確認処理に戻る。一方C−Agent140aは、タイマの値が所定時間以上経過したと判断すると(ステップS136、Yes)、DC−DCコンバータ150aの設定をリセットして(ステップS137)、ステップS132のGM−Agent130aからの送受電制御が送られたかどうかの確認処理に戻る。
【0100】
以上、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが有する、U−Agnet110a、M−Agent120a、GM−Agnet130a、及びC−Agent140aのそれぞれの動作について詳細に説明した。
【0101】
このように本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100aが動作する場合、バッテリサーバ100aの状態を収集し、ユーザに提示することが求められる場合がある。バッテリサーバ100aは、システム状態を表示するためのデータ収集作業を実行するデータ収集権を、制御権と同様にして、他のバッテリサーバ100b〜100dとの間の調停によって得ることができる。GM−Agentが起動していない場合は、調停による制御権の選定と同様のプロセスでデータ収集権を得ることができる。データ収集作業を行う候補が見つからない場合は、バッテリサーバ100aは、自ら志願してデータ収集権を得る事が出来る。
【0102】
データ収集権を得たバッテリサーバ100aは、そのデータ収集権を得た事を、接続されている他の全てのバッテリサーバ100b〜100dに知らせ、情報を入手する場合の問い合わせ先としてバッテリサーバ100aを設定してもらう。具体的手順は、例えば以下のように決められ得る。
【0103】
バッテリサーバ100aのユーザが、U−Agent110aに対しシステム全体の情報を要求すると、その要求はM−Agent120aに伝わり、M−Agent120aは、制御権を有しているバッテリサーバ(例えばバッテリサーバ100bとする)に対して情報収集の要求を出す。もしユーザからの要求が出された時点で制御権を持っているバッテリサーバが存在しない場合は、データ収集権を持っているバッテリサーバ(例えばバッテリサーバ100cとする)に要求を出す。データ収集権を持っているバッテリサーバもいない場合は、バッテリサーバ100aは、自らがデータ収集装置として宣言し、他の各装置からの可否のレスポンスを所定の時間待機する。そして否定応答が無ければ、バッテリサーバ100aは、データ収集権を得て、GM−Agent130aをデータ収集権限のみの制約で起動する。
【0104】
データ収集権を得たGM−Agent130aは、全てのC−Agent140a〜140dに対して、GM−Agent130aがデータ収集作業を行っている事を知らせる。C−Agent140a〜140dは、データ収集装置として動作するバッテリサーバ100aのIPアドレスを記憶する。U−Agent110a〜110dからのデータ表示要求があれば、データ収集権を得ていない各バッテリサーバ100b〜100dは、代理サーバとなって、データ収集装置として動作するバッテリサーバ100aにその要求を転送する。データ収集装置として動作するバッテリサーバ100aに要求を転送することで、データ収集権を得ていない各バッテリサーバ100b〜100dは、あたかも自装置がデータ収集を行っているようにユーザに見せることが可能になる。
【0105】
データ収集装置として動作するバッテリサーバ100aによるデータ収集作業は、バッテリサーバ100aに搭載されるCPUを使うために若干ではあるが電力消費が増える。しかし、データ収集装置として動作するバッテリサーバ100aによるデータ収集作業の際に、電力が実際に電送される事は無い。
【0106】
なお、電力伝送制御権を持つGM−Agentが別途起動されると、データ収集権は、電力伝送制御権を持つGM−Agentに取って代わられ、その電力伝送制御権を持つGM−Agentを有するバッテリサーバが、DCグリッド(直流バスラインによる直流電力供給が行われるグリッド)から離脱するか、次のGM−Agentが決まるまでデータ収集装置として継続動作することができる。
【0107】
図8は、GM−Agentのモード遷移例を示す説明図である。すなわち、GM−Agentは、
図8に示したように、アイドルモード、データ収集モード、DCグリッド制御モードの3つのモードを遷移しつつ動作することになる。GM−Agentは、通常はアイドルモードとなっており、バッテリサーバ間の調停によって制御権を得るとアイドルモードからDCグリッド制御モードに遷移する。またGM−Agentは、バッテリサーバ間の調停によってデータ収集の権限を取得するとデータ収集モードに遷移し、バッテリサーバ間の調停によって制御権を得るとデータ収集モードからDCグリッド制御モードに遷移する。
【0108】
DCグリッド制御モードにあるGM−Agentは、送受電制御を終了すると、DCグリッド制御モードからデータ収集モードに遷移する。またDCグリッド制御モードにあるGM−Agentは、DCグリッドから離脱すると、DCグリッド制御モードからアイドルモードに遷移する。データ収集モードにあるGM−Agentは、同様にDCグリッドから離脱すると、データ収集モードからアイドルモードに遷移する。
【0109】
<2.まとめ>
以上説明したように、本開示の一実施形態によれば、複数のバッテリサーバが直流バスラインに接続されて、直流バスラインを通じてバッテリサーバ間で直流の電力の送受電を行なう送受電制御システム1が提供される。また本開示の一実施形態によれば、1つのバッテリサーバだけが制御権を有して、他のバッテリサーバに対して直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御することができる、バッテリサーバ100a〜100dが提供される。
【0110】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、機能を4つのタスクに分けて、下位のタスク(受電を依頼するタスク)から上位のタスク(DC−DCコンバータを制御するタスク)へ直接指示が送れないような構成としている。
【0111】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、上述したような単にマスタとスレーブとに役割を分担する場合に生じ得る現象を回避し、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能になる。そして本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0112】
本明細書の各装置が実行する処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、各装置が実行する処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0113】
また、各装置に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した各装置の構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供されることが可能である。また、機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【0114】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0115】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0116】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
直流電力線に接続されたDC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を制御する送受電制御部と、
前記送受電制御部を制御できる制御権が得られている場合に活性化され、前記送受電制御部に前記DC−DCコンバータの制御を依頼する送受電管理部と、
前記送受電管理部に前記DC−DCコンバータによる送受電を依頼する送受電調停部と、
を備え、
前記送受電制御部及び前記送受電管理部は、第1の通信チャネルを通じて他の送受電制御装置と通信し、
前記送受電調停部は、前記第1の通信チャネルと異なる第2の通信チャネルを通じて他の送受電制御装置と通信し、前記制御権の取得について、他の送受電制御装置との間で前記第2の通信チャネルを通じて調停し、前記制御権が獲得された場合に前記送受電管理部を活性化する、送受電制御装置。
(2)
活性化された前記送受電管理部は、前記直流電力線による送受電の対象の前記DC−DCコンバータを制御する前記送受電制御部に対して前記第1の通信チャネルを通じて各前記DC−DCコンバータの制御を依頼する、前記(1)に記載の送受電制御装置。
(3)
前記送受電制御部、前記送受電管理部、及び前記送受電調停部は、他の全ての送受電制御装置との間で共通のポリシ情報に基づいて動作する、前記(1)または(2)に記載の送受電制御装置。
(4)
前記送受電調停部は、前記制御権の取得について、前記ポリシ情報に基づいて他の送受電制御装置との間で前記第2の通信チャネルを通じて調停する、前記(3)に記載の送受電制御装置。
(5)
前記送受電調停部は、活性化させた前記送受電管理部の識別情報を前記送受電制御部に通知し、
活性化された前記送受電管理部は、自身の識別情報を付加して前記送受電制御部へ前記DC−DCコンバータの制御を依頼し、
前記送受電制御部は、前記送受電
調停部から通知された識別情報とは異なる識別情報が付加された前記DC−DCコンバータの制御の依頼を受けた場合に、前記ポリシ情報に基づいて該依頼に対して処理する、前記(3)または(4)に記載の送受電制御装置。
(6)
前記ポリシ情報は、スクリプト言語として記述される、前記(3)〜(5)のいずれかに記載の送受電制御装置。
(7)
所定の条件を満たした場合に前記送受電調停部へ前記制御権の調停を要求する送受電要求部をさらに備える、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の送受電制御装置。
(8)
前記送受電要求部は、前記第2の通信チャネルに接続して他の送受電制御装置と通信する、前記(7)に記載の送受電制御装置。
(9)
前記送受電要求部は、他の全ての送受電制御装置とは独立に規定されたシナリオ情報に基づいて動作する、前記(7)または(8)に記載の送受電制御装置。
(10)
前記シナリオ情報は、スクリプト言語として記述される、前記(9)に記載の送受電制御装置。
(11)
前記第1の通信チャネルと前記第2の通信チャネルとは、いずれも無線通信のチャネルである、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の送受電制御装置。
(12)
前記送受電制御部は、前記DC−DCコンバータに接続された二次電池の充放電を前記DC−DCコンバータを通じて制御する、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の送受電制御装置。
(13)
前記送受電制御部は、前記送受電管理部からの依頼があるかを周期的に確認し、前記送受電管理部からの依頼が所定時間以上発生しなかった場合は前記DC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を停止する、前記(1)〜(12)のいずれかに記載の送受電制御装置。
(14)
直流電力線に接続されたDC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を送受電制御部で制御することと、
前記送受電制御部へ前記DC−DCコンバータの制御を、前記送受電制御部を制御できる制御権が得られている場合に活性化される送受電管理部で依頼することと、
前記送受電管理部へ前記DC−DCコンバータによる送受電を送受電調停部で依頼することと、
を含み、
前記送受電制御部及び前記送受電管理部は、第1の通信チャネルを通じて他の送受電制御装置と通信し、
前記送受電調停部は、前記第1の通信チャネルと異なる第2の通信チャネルを通じて他の送受電制御装置と通信し、
他の送受電制御装置との間で前記制御権を前記第2の通信チャネルを通じて前記送受電調停部で調停することをさらに含む、送受電制御装置の制御方法。
(15)
直流電力線に接続されたDC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を制御する複数の送受電制御装置を備え、
各前記送受電制御装置は、
前記DC−DCコンバータによる前記直流電力線を通じた直流電力の送受電を制御する送受電制御部と、
前記送受電制御部を制御できる制御権が得られている場合に活性化され、前記送受電制御部に前記DC−DCコンバータの制御を依頼する送受電管理部と、
前記送受電管理部に前記DC−DCコンバータによる送受電を依頼する送受電調停部と、
を備え、
前記送受電制御部及び前記送受電管理部は、第1の通信チャネルを通じて他の前記送受電制御部及び前記送受電管理部と通信し、
前記送受電調停部は、前記第1の通信チャネルと異なる第2の通信チャネルを通じて他の前記送受電調停部と通信し、
前記送受電調停部は他の送受電制御装置との間で前記制御権を前記第2の通信チャネルを通じて調停する、送受電制御システム。