(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
床面上を移動可能に形成された台車部と、当該台車部に立設された支柱部と、当該支柱部から前方向へ延設されたフレーム部と、当該フレーム部の前端部に上下動可能に支持されたシート把持部とを備え、当該シート把持部に各種シートを把持し、車両の開口部から前記車両内へ投入するシート投入補助装置であって、
前記台車部には、複数の走行車輪を有し、当該走行車輪の内少なくとも1つの走行車輪が、前記シート把持部の下方に配設されたこと、
前記シート把持部は、前記フレーム部の前端部に締結されたガイド部材に沿って上下方向へ移動可能な基台部と、当該基台部に支持された複数のシート係止部とを備え、少なくとも1つの前記シート係止部が、前記シートの幅方向へ移動可能に形成されたこと、
前記シート把持部の下方に配設された前記走行車輪は、前記シート係止部の移動方向と略同一の方向へ移動可能、かつ他の走行車輪との間隔が伸縮可能であり、移動させるシート係止部の位置と、前記シート把持部に作用する前記シートの荷重を支持する前記走行車輪の位置とを、略一致させることが可能なこと、を特徴とするシート投入補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の自動車用後部シート搬入補助装置100では、本体102が組立てラインと平行に敷設されたレール101上を移動する構造であるので、工程配置が制約され、生産台数の変動時における作業編成替えの障害となる問題があった。
また、特許文献1の自動車用後部シート搬入補助装置100は、レール101、本体102、基台103、案内柱104、枠体105、中間に水平方向の屈曲部をもつ腕部材106、107等からなる大型設備のため、取り回しが悪く、小型シートを含めた各種バリエーションのシートに対応することが困難であった。
また、シート載荷用フォーク108は、シートを載置するフォーク幅が固定されているので、着座数の異なる各種シートをバランスよく把持することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに容易に対応でき、各種シートを搬送できるコンパクトなシート投入補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るシート投入補助装置は、次のような構成を有している。
(1)床面上を移動可能に形成された台車部と、当該台車部に立設された支柱部と、当該支柱部から前方向へ延設されたフレーム部と、当該フレーム部の前端部に上下動可能に支持されたシート把持部とを備え、当該シート把持部に各種シートを把持し、車両の開口部から前記車両内へ投入するシート投入補助装置であって、
前記台車部には、複数の走行車輪を有し、当該走行車輪の内少なくとも1つの走行車輪が、前記シート把持部の下方に配設されたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、台車部には、複数の走行車輪を有し、当該走行車輪の内少なくとも1つの走行車輪が、シート把持部の下方に配設されたので、シート把持部に作用するシートの荷重を、シート把持部の下方に配設した走行車輪によって支持させることができる。そのため、シート把持部が把持するシートの重心位置と台車部の走行車輪の位置とを略合致させることができる。したがって、台車部と支柱部とフレーム部とシート把持部とからなる全体としてコンパクトな構造でありながら、重量物である各種シートを安定して搬送することができる。
また、台車部には、複数の走行車輪を有するので、シート投入補助装置を床面上の任意な方向へ移動させることができる。そのため、床面上にレールを敷設する必要がない。したがって、本発明に係るシート投入補助装置は、設定した工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えにも、容易に対応することができる。
よって、本発明によれば、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに容易に対応でき、各種シートを搬送できるコンパクトなシート投入補助装置を提供することができる。
【0010】
(2)(1)に記載されたシート投入補助装置において、
前記シート把持部は、上下方向へ移動可能な基台部と、当該基台部に支持された複数のシート係止部とを備え、少なくとも1つの前記シート係止部が、前記シートの幅方向へ移動可能に形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、シート把持部には、上下方向へ移動可能な基台部と、当該基台部に支持された複数のシート係止部とを備え、少なくとも1つのシート係止部が、シートの幅方向へ移動可能に形成されたので、シートの幅寸法に応じてシート係止部の係止位置を移動させることができる。そのため、シート把持部は、シートの種類(例えば、着座数)に応じてシートの幅寸法が大きく変化しても、シート係止部の係止ピッチを変更させることによって、バランスよく把持し搬送することができる。
その結果、同一のシート投入補助装置によって、シートの幅寸法が異なる複数種類のシートを把持し、安定して搬送することができる。
【0012】
(3)(2)に記載されたシート投入補助装置において、
前記シート把持部の下方に配設された前記走行車輪は、前記シート係止部の移動方向と略同一の方向へ移動可能に形成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、シート把持部の下方に配設された走行車輪は、シート係止部の移動方向と略同一の方向へ移動可能に形成されたので、シートの種類(例えば、着座数)に応じて移動させるシート係止部の位置と、シート把持部に作用するシートの荷重を支持する走行車輪の位置とを、略一致させることができる。そのため、シートの種類(例えば、着座数)に応じてシートの幅寸法が大きく変化しても、シート係止部の係止ピッチと走行車輪のホイールベースとを同じ方向へ伸縮させることによって、各種シートの重心ズレを補正して搬送することができる。
その結果、同一のシート投入補助装置によって、シートの幅寸法が異なる複数種類のシートを把持し、より一層安定して搬送することができる。
【0014】
(4)(2)又は(3)に記載されたシート投入補助装置において、
前記シート係止部には、前記シートを構成するシートバックとシートクッションとの隙間に、前記シート正面側から挿入可能な爪部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、シート係止部には、シートを構成するシートバックとシートクッションとの隙間にシート正面側から挿入可能な爪部を有するので、各種シートを共通の爪部によって係止することができる。そのため、シートの種類が変化しても、シート係止部を取り替える必要はない。
その結果、シート係止部の爪部をシートバックとシートクッションとの隙間に挿入する簡単な操作で、シートを把持することができ、操作性が大きく向上する。
【0016】
(5)(4)に記載されたシート投入補助装置において、
前記爪部には、前記シートバックの正面から背面まで延伸する基端部と起立したとき前記シートバックの背面に沿って延伸する先端部とが略L字状に形成されたことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、爪部には、シートバックの正面から背面まで延伸する基端部と起立したときシートバックの背面に沿って延伸する先端部とが略L字状に形成されたので、先端部が起立した状態ではシートバックの背面を起立した先端部によって規制でき、シートが爪部から脱落することはない。一方、先端部を倒伏した状態では、爪部をシートバックとシートクッションの隙間にシート正面から簡単に挿入することができる。そのため、爪部の先端部を倒伏した状態でシートバックとシートクッションの隙間にシート正面から挿入し、爪部の先端部を起立した状態でシートを把持すれば、シートの脱落を心配することなく、搬送することができる。
その結果、爪部の先端部を倒伏状態から起立状態に操作するだけで、各種シートを安心して搬送することができる。
【0018】
(6)(5)に記載されたシート投入補助装置において、
前記シート係止部には、前記基端部に連結された回動機構を備え、前記爪部は、前記シートを係止して前記シート把持部を上昇させるとき、前記回動機構が前記基端部に作用するシート荷重によって作動して、前記先端部が倒伏状態から起立状態に回動可能に形成されたことを特徴とする。
【0019】
本発明においては、シート係止部には、基端部に連結された回動機構を備え、爪部は、シートを係止してシート把持部を上昇させるとき、回動機構が基端部に作用するシート荷重によって作動して、先端部が倒伏状態から起立状態に回動可能に形成されたので、爪部をシートに係止して上昇させるときに合わせ、シートの自重を利用して、先端部が倒伏状態から起立状態に回動して、シートの爪部からの脱落を防止することができる。そのため、特別の駆動装置や操作を要することなく、シートの搬送中に爪部からシートが脱落するのを防止することができる。
一方、シート把持部を下降させてシートを車両の装着部に当接させるときには、回動機構が逆方向に作動するので、先端部を起立状態から倒伏状態に回動させることができる。そのため、特別の駆動装置や操作を要することなく、シートから爪部を抜き出すことができる。
その結果、シートに対する先端部の倒伏動作及び起立動作が容易となり、シート投入補助装置における作業性が向上する。なお、回動機構としては、カム機構又はクランク機構などが好ましい。
【0020】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載されたシート投入補助装置において、
前記台車部と前記支柱部と前記フレーム部とが、傾斜補強部材で連結されて側面視で略C字状に形成されたことを特徴とする。
【0021】
本発明においては、台車部と支柱部とフレーム部とが、傾斜補強部材で連結されて側面視で略C字状に形成されたので、台車部と支柱部とフレーム部との各交差部に掛かる応力が補強部材で分散され、各部を構成する部材の軽量化が可能となる。
その結果、各種シートを搬送できるシート投入補助装置を、より一層軽量かつコンパクトに形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えに容易に対応でき、各種シートを搬送できるコンパクトなシート投入補助装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る実施形態であるシート投入補助装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、第1実施形態のシート投入補助装置の全体構成を説明する。次に、シート係止部における爪部の回動構造について説明し、各種シートの搬送方法を説明する。また、第2実施形態のシート投入補助装置における特徴について説明する。
【0025】
(第1実施形態)
<シート投入補助装置の全体構成>
まず、第1実施形態のシート投入補助装置の全体構成を、
図1、
図2を用いて説明する。
図1に、本発明の第1実施形態に係るシート投入補助装置の斜視図を示す。
図2に、
図1に示すシート係止部の係止ピッチを短縮した状態を表す詳細斜視図を示す。
【0026】
図1、
図2に示すように、第1実施形態のシート投入補助装置10は、床面上を移動可能に形成された台車部1と、当該台車部1に立設された支柱部2と、当該支柱部2から前方向へ延設されたフレーム部3と、当該フレーム部3の前端部31に上下動可能に支持されたシート把持部4とを備えている。
【0027】
台車部1は、床面からの高さが異なる低床枠台12と高床枠台13とを傾斜補強部材14で連結した階段状矩形体の下面四隅に4つの走行車輪11(111、112、113、113)を装着して形成されている。高床枠台13には、大径の走行車輪113、113が左右に2つ装着され、低床枠台12には、小径の走行車輪111、112が左右に2つ装着されている。低床枠台12に装着された小径の走行車輪111、112は、シート把持部4の下方に位置するように形成されている。小径の走行車輪111、112は、走行方向を変更できる自在車輪である。
なお、低床枠台12の床面からの高さは、車両のボディ下面と干渉しない高さ寸法で形成されている。また、低床枠台12の左右幅は、車両の前輪及び後輪の間に挿入できる幅寸法で形成されている。
【0028】
低床枠台12に装着された小径の走行車輪の内、右側に配置された1つの走行車輪111は、前後方向(矢印qの方向)へ移動可能に装着されている。この走行車輪111は、低床枠台12に前後方向へ移動可能に装着された可動枠16の先端部161に締結されている。可動枠16は、低床枠台12に固定された伸縮用電動アクチュエータ15のシリンダロッド151に連結されている。シリンダロッド151が伸縮することによって、可動枠16は、前後方向へ移動する。可動枠16の移動方向(矢印qの方向)及び移動量QAは、後述するシート把持部4のシート係止部42A(42)の移動方向(矢印pの方向)及び移動量と略同一である。
【0029】
支柱部2は、高床枠台13の左後隅に垂直状に立設された角柱体である。支柱部2の下端部22には、傾斜補強部材221、222が前後方向と左右方向に三角補強部材として高床枠台13と連結されている。支柱部2には、シート把持部4を上下方向(矢印vの方向)へ駆動させる駆動部5が装着されている。駆動部5は、直流電動モータ51がワイヤガイド52に沿って牽引ワイヤ53を矢印hの方向へ巻取り又は巻戻す構造である。駆動部5には、蓄電池が内蔵されている。
【0030】
フレーム部3は、上下方向で互いに離間しながら前方向へ延設された2つの筒状フレーム32、33と、当該筒状フレーム32、33の前端に連結された板状の前端部31とを備えている。筒状フレーム32、33は、支柱部2との連結部位では、共に上方へ傾斜しながら、徐々に互いの距離が近接するように形成されている。また、筒状フレーム32、33は、前後方向の中間部で互いに平行になるように折れ曲げ形成され、前端部31の裏面側に平行に連結されている。下方に位置する筒状フレーム33は、傾斜補強部材(33)の役割を果たしている。
前端部31の表面側には、シート把持部4を上下方向へ案内する2つのガイド部材311が締結されている。2つのガイド部材311の間には、牽引ワイヤ53が前端部31に軸支されたプーリ54を経由して上下方向に配設されている。
【0031】
シート把持部4は、ガイド部材311に沿って上下方向(矢印uの方向)へ移動可能な基台部41と、当該基台部41に支持された2つのシート係止部42(42A、42B)とを備えている。基台部41の裏面側には、ガイド部材311に係合される被ガイド部材411が締結されている。
基台部41は、牽引ワイヤ53と連結され、直流電動モータ51が牽引ワイヤ53を巻き取ることによって上昇し、直流電動モータ51が牽引ワイヤ53を巻き戻すことによって自重で下降する。
【0032】
2つのシート係止部42(42A、42B)は、同一の高さで前後方向に配列されている。後方に配置されたシート係止部42Bは、連結ブロック47を介して基台部41に固定されている。前方に配置されたシート係止部42Aは、スライドブロック46を介して基台部41にシートの幅方向(矢印pの方向)へ移動可能に連結されている。ここでは、シートの幅方向(矢印pの方向)は、前後方向と一致する。スライドブロック46の後端には、操作ハンドル461が立設されている。
【0033】
シート係止部42(42A、42B)の上端部には、右方向へ突出しシートバックの正面と当接するシートバック当接部45を備えている。
また、シート係止部42(42A、42B)の下端部には、シートバックの正面から背面まで延伸する基端部431と、起立したときシートバックの背面に沿って延伸する先端部432とが、略L字状に形成された爪部43を備えている。爪部43の先端部432は、基端部431に連結されたカム機構(回動機構)44によって矢印rの方向へ回動する。前方に配置されたシート係止部42A及び後方に配置されたシート係止部42Bにおける各爪部43は、線対称に配置され、先端部432が互いに反対向へ起立するように回動する。先端部432の起立する角度は、30〜60度程度が好ましい。起立角度が大きすぎると、シートバックの背面に食い込み、変形させ易くなるからである。
【0034】
<爪部の回動構造>
次に、シート係止部42における爪部43の回動構造について、
図3〜
図5を用いて説明する。
図3に、
図1に示すシート係止部の詳細斜視図を示す。
図4に、
図3に示す爪部のカム機構による回動動作説明図を示す。
図5に、
図4に示すカム機構の変形例の部分側面図を示す。
【0035】
図3、
図4に示すように、シート把持部4におけるシート係止部42(42A)は、長尺基板421に爪部43とカム機構(回動機構)44とシートバック当接部45とが装着されている。なお、基台部41に固定されたシート係止部42(42B)は、前後方向へ移動できるシート係止部42(42A)と対称に形成されているだけで、爪部43の回動構造は同様であるので、ここでは移動タイプのシート係止部42(42A)の例で説明する。
【0036】
爪部43は、シートを係止していない状態では、先端部432が略水平状に倒伏して配置されている。基端部431は、カム機構44に回動可能に軸支されている。カム機構44は、カム駒441とカム案内部442と圧縮バネ443とバネリテーナピン444と基端保持板445と可動ガイド部材446とを備えている。
【0037】
カム駒441は、回動中心が基端部431に係止され、外周に偏心凸部4411を有する卵型カム部材である。カム案内部442は、偏心凸部4411と当接しカム駒441を傾斜位置へ回動させる傾斜部4421と、水平位置にあるカム駒441の偏心凸部4411と当接する垂直部4422とを備え、カム駒441を水平位置と傾斜位置との間で回動案内させる略矩形状の案内部材である。
【0038】
基端保持板445は、爪部43の基端部431を面直状に保持する保持部材である。基端部431は、基端保持板445の略垂直軸上で回動する。基端保持板445には、長尺基板421に上下方向へ延設された固定ガイド部材422と摺接する可動ガイド部材446が固定されている。また、基端保持板445には、可動ガイド部材446の側端部から上方へ延伸するバネリテーナピン444が立設されている。バネリテーナピン444の上端部には、圧縮バネ443が嵌装されている。圧縮バネ443の下端は、長尺基板421の側端側に固定されたバネ受け板423と当接している。バネリテーナピン444及び圧縮バネ443等は、シートバックとの干渉を回避する位置に形成されている。なお、シートバック当接部45は、ウレタンゴム等からなるパッド部材451が長尺基板421に締結された固定座452に固定されたものである。
【0039】
図3、
図4(a)に示すように、シート係止部42A(42)にシートが係止されていない状態では、バネリテーナピン444が圧縮バネ443に押圧されて、基端保持板445は上方へ移動し、カム駒441は、水平位置に保持されている。このとき、爪部43の先端部432は、水平状に倒伏した状態にある。そのため、爪部43をシートバックとシートクッションの隙間に挿入することができる。
【0040】
次に、爪部43にシートを係止した状態で、シート把持部4を上方へ移動させると、
図4(b)に示すように、シートの荷重が爪部43の基端部431に矢印u1の方向へ作用し、圧縮バネ443が短縮する方向に撓むので、カム駒441の偏心凸部4411がカム案内部442の傾斜部4421と当接し、カム駒441は、傾斜位置へ回動する。このとき、爪部43の先端部432は、矢印rの方向へ回動し起立状態となる。そのため、爪部43の先端部432が、シートバックの背面に当接して、シートの落下を規制することができる。したがって、シート把持部4を上方へ移動させるだけで、特別の操作を要することなく、シートの搬送中に爪部43からシートが脱落するのを防止することができる。
【0041】
なお、シート把持部4を下降させてシートを車両の装着部に当接させるときには、カム機構44(回動機構)が逆方向に作動するので、先端部432を起立状態から倒伏状態に回動させることができる。そのため、特別の操作を要することなく、シートから爪部43を抜き出すことができる。
【0042】
また、
図5に示すように、カム駒441B及びカム案内部442B、442Cを構造変更することができる。すなわち、カム案内部442B、442Cを上下に離間して配置された2つの円柱体とし、2つの円柱体間に矩形状凸部4411Bを有するカム駒441Bを配置する構造でも良い。この場合、シートの荷重が基端部431に矢印u1の方向へ作用すると、カム駒441Bは、矢印rの方向へ回動し、先端部432が水平位置から傾斜位置へ変化する。
【0043】
<シート投入補助装置による各種シートの搬送方法>
次に、本実施形態に係るシート投入補助装置10による各種シートの搬送方法を、
図6〜
図8を用いて説明する。
図6に、
図1に示すシート投入補助装置が1人用シートを把持したときの斜視図を示す。
図7に、
図1に示すシート投入補助装置が3人用シートを把持したときの斜視図を示す。
図8に、
図7に示すシート投入補助装置が車両の開口部(スライドドア開口部)から車両内へシートを投入するときの背面図を示す。
【0044】
図6に示すように、シート投入補助装置10は、1人用のシートW1を把持し搬送することができる。その手順は、以下のようである。
まず、移動タイプのシート係止部42Aを、固定タイプのシート係止部42Bに近接した位置に移動させる。シート係止部42Aの移動は、操作ハンドル461を矢印p1の方向へ引くことによって行う。爪部の基端部431をシートバックW11とシートクッションW12との隙間W13に挿入し、駆動部5の牽引ワイヤ53を巻き取り、シート把持部4を上昇させる。シート把持部4の上昇に伴い、爪部43の先端部432が起立する。
【0045】
シートバックW11は、シートクッションW12の重量によって、基端部431を支点にシート正面側へ倒れようとするが、シートバック当接部45がシートバック正面と当接して、シートW1の姿勢を安定させている。シート把持部4の下方には、低床枠台12の走行車輪111、112が配設されているので、シートW1の荷重(F1)を当該走行車輪111、112が支持することができる。支柱部2及び前端部31には、それぞれ取手部23、312が設けられている。作業者は、取手部23、312を把持して、シートWを車両の所定位置に搬送する。
【0046】
図7に示すように、シート投入補助装置10は、3人用のシートW3を把持し搬送することができる。その手順は、以下のようである。
まず、移動タイプのシート係止部42Aを、固定タイプのシート係止部42Bから離間した位置に移動させる。シート係止部42Aの移動は、操作ハンドル461を矢印p2の方向へ押すことによって行う。爪部の基端部431をシートバックW31とシートクッションW12との隙間W13に挿入し、駆動部5の牽引ワイヤ53を巻き取り、シート把持部4を上昇させる。シート把持部4の上昇に伴い、爪部の先端部432が起立する。
【0047】
シートバックW31は、シートクッションW32の重量によって、基端部431を支点にシート正面側へ倒れようとするが、シートバック当接部45がシートバック正面と当接して、シートW3の姿勢を安定させている。シート把持部4の下方には、低床枠台12の走行車輪111、112が配設されているので、シートW3の荷重(F2)を当該走行車輪111、112が支持することができる。3人用のシートW3は、シート幅方向(矢印wの方向)の寸法が大きく、シートW3の重心位置が前方にズレている。そのため、伸縮用電動アクチュエータ15のシリンダロッド151を伸長させて、走行車輪111の位置を前方(矢印q1の方向)へ移動させる。これによって、幅広シートの重心ズレを補正する。支柱部2及び前端部31には、それぞれ取手部23、312が設けられているので、作業者は、取手部23、312を把持して、シートW3を車両の所定位置に搬送する。
【0048】
図8に示すように、シート投入補助装置10は、シートW3を車両Sの開口部SK(例えば、フロントドアやスライドドアなどの開口部)から投入する。このとき、台車部1の低床枠台12を車両ボディの下面へもぐり込ませる。その後、シート把持部4を下降させて、シートW3を装着部に着地させる。その結果、車両内の装着部までシートW3の姿勢を維持した状態で、投入することができる。よって、車両内でシートW3を旋回させたり、傾斜させたりする必要もない。
【0049】
(第2実施形態)
<シート投入補助装置の全体構成>
次に、第2実施形態のシート投入補助装置の全体構成を、
図9を用いて説明する。
図9に、本発明の第2実施形態に係るシート投入補助装置の斜視図を示す。
【0050】
図9に示すように、第2実施形態のシート投入補助装置20は、床面上を移動可能に形成された台車部1Bと、当該台車部1Bに立設された支柱部2と、当該支柱部2から前方向へ延設されたフレーム部3と、当該フレーム部3の前端部31に上下動可能に支持されたシート把持部4Bとを備えている。第2実施形態のシート投入補助装置20は、前述した第1実施形態のシート投入補助装置10と全体構成を概ね共通にしているが、よりコンパクトな構造とすべく、主に台車部1Bとシート把持部4Bとを改良している。ここでは、第1実施形態との共通部分については、同一の符号を付して、原則としてその説明を割愛し、第2実施形態の特徴部分である台車部1Bとシート把持部4Bについて、詳細に説明する。
【0051】
台車部1Bは、角筒材を接合又は折り曲げて骨格部材のみで構成して、より一層の軽量化を図っている。すなわち、2つの低床骨格部12B、12Bを左右平行に配置し、その中間部で上方へ傾斜状に折り曲げた傾斜骨格部(傾斜補強部材)14B、14Bを一体で形成する。各低床骨格部12B、12Bの前端には、それぞれ小径の走行車輪111、112を締結する。一方(右側)の走行車輪111は、伸縮用電動アクチュエータ15及び可動枠16を介して前後方向(矢印qの方向)へ移動可能に連結されている。伸縮用電動アクチュエータ15は、駆動部5の操作スイッチ55によって一括で操作することができるように、配線されている。
また、傾斜骨格部14B、14Bの後端には、直交する高床骨格部13Bが連結されている。高床骨格部13Bの左右端には、大径の走行車輪113、113が締結されている。高床骨格部13Bの中間部には、同幅で垂直状に支柱部2Bが形成されている。支柱部2Bには、伸縮用電動アクチュエータ15及び駆動部5用の蓄電池56が固定されている。
【0052】
シート把持部4Bは、ガイド部材311に沿って上下方向(矢印uの方向)へ移動可能な基台部41Bと、当該基台部41Bに支持された2つのシート係止部42(42C、42D)とを備えている。
基台部41Bは、牽引ワイヤ53と連結され、直流電動モータ51が牽引ワイヤ53を巻き取ることによって上昇し、直流電動モータ51が牽引ワイヤ53を巻き戻すことによって自重で下降する。
【0053】
2つのシート係止部42(42C、42D)は、同一の高さで前後方向に配列されている。後方に配置されたシート係止部42Dは、基台部41Bに固定されている。前方に配置されたシート係止部42Cは、L字状レール材46Bを介して基台部41BにシートW3(W)の幅方向(矢印pの方向)へ移動可能に連結されている。ここでは、シートの幅方向(矢印pの方向)は、前後方向と一致する。
【0054】
シート係止部42(42C、42D)は、水平状に配設された板状爪部42C1、42D1と、当該板状爪部42C1、42D1の基端から上方へ延伸する保持板42C2、42D2とから構成されている。板状爪部42C1、42D1は、シートバックW31とシートクッションW32との隙間W33に挿入可能な厚さで形成されている。板状爪部42C1、42D1は、シートバックW31の正面側から挿入すると、先端がシートバックの背面側まで貫通できる長さで形成されている。
【0055】
保持板42C2、42D2の上端には、シートバック当接部45が装着されている。シートバックW31は、シートクッションW32の重量によって、板状爪部42C1、42D1の基端を支点にシート正面側へ倒れようとするが、シートバック当接部45がシートバック正面と当接して、シートW3の姿勢を安定させている。
なお、シート係止部42C、42Dは、板状爪部42C1、42D1と保持板42C2、42D2とから構成されたシンプルな構造であるので、カム機構は不要である。
【0056】
<シート投入補助装置による各種シートの搬送方法>
次に、本実施形態に係るシート投入補助装置20による各種シートの搬送方法を、
図10、
図11を用いて説明する。
図10に、
図9に示すシート投入補助装置が車両内へ3人用シートを投入するときの側面図を示す。
図11に、
図9に示すシート投入補助装置が車両内へ1人用シートを投入するときの側面図を示す。
【0057】
図10に示すように、シート投入補助装置20は、3人用のシートW3を把持する場合には、前方に配置されたシート係止部42Cを前方へ移動させて、シート係止部42C、42D同士のシート幅方向(矢印pの方向)における間隔を拡大させて搬送する。この場合、小径の走行車輪111の位置も同方向(矢印qの方向)へ移動させて、シート重心のズレに対応させておく。
また、
図11に示すように、シート投入補助装置20は、1人用のシートW1を把持する場合には、シート係止部42C、42D同士のシート幅方向(矢印pの方向)における間隔を短縮させて搬送する。この場合、小径の走行車輪111、112は、シートW1の下方に位置して、車両Sの中央部まで到達していないので、2台のシート投入補助装置20に、それぞれ1人用のシートW1を把持させて、車両Sの両側から同時に投入することもできる。
【0058】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るシート投入補助装置10、20によれば、台車部1、1Bには、複数の走行車輪11(111、112、113、113)を有し、当該走行車輪の内少なくとも1つの走行車輪111、112が、シート把持部4、4Bの下方に配設されたので、シート把持部4、4Bに作用するシートWの荷重を、シート把持部4、4Bの下方に配設した走行車輪111、112によって支持させることができる。そのため、シート把持部4、4Bが把持するシートWの重心位置と台車部1、1Bの走行車輪111、112の位置とを略合致させることができる。したがって、台車部1、1Bと支柱部2、2Bとフレーム部3とシート把持部4、4Bとからなる全体としてコンパクトな構造でありながら、重量物である各種シートWを安定して搬送することができる。
また、台車部1、1Bには、複数の走行車輪11を有するので、シート投入補助装置10、20を床面6上の任意な方向へ移動させることができる。そのため、床面6上にレールを敷設する必要がない。したがって、本実施形態に係るシート投入補助装置10、20は、設定した工程配置の制約を受けることなく、生産台数の変動時における作業編成替えにも、容易に対応することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、シート把持部4、4Bには、上下方向へ移動可能な基台部41、41Bと、当該基台部41、41Bに支持された2つのシート係止部42A、42B、42C、42Dとを備え、少なくとも1つのシート係止部42A、42Cが、シートWの幅方向へ移動可能に形成されたので、シートWの幅寸法に応じてシート係止部42A、42B、42C、42Dの係止位置を移動させることができる。そのため、シート把持部4、4Bは、シートWの種類(例えば、着座数)に応じてシートの幅寸法が大きく変化しても、シート係止部42A、42B、42C、42Dの係止ピッチPを変更させることによって、バランスよく把持し搬送することができる。
その結果、同一のシート投入補助装置10、20によって、シートの幅寸法が異なる複数種類のシートを把持し、安定して搬送することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、シート把持部4、4Bの下方に配設された走行車輪111は、シート係止部42A、42Cの移動方向(矢印pの方向)と略同一の方向(矢印qの方向)へ移動可能に形成されたので、シートWの種類(例えば、着座数)に応じて移動させるシート係止部42A、42Cの位置と、シート把持部4、4Bに作用するシートWの荷重を支持する走行車輪111の位置とを、略一致させることができる。そのため、シートWの種類(例えば、着座数)に応じてシートの幅寸法が大きく変化しても、シート係止部の係止ピッチPと走行車輪のホイールベースQ(Q+QA)とを同じ方向へ伸縮させることによって、各種シートの重心ズレを補正して搬送することができる。
その結果、同一のシート投入補助装置10、20によって、シートWの幅寸法が異なる複数種類のシートを把持し、より一層安定して搬送することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、シート係止部42A、42B、42C、42Dには、シートWを構成するシートバックW11、W31とシートクッションW12、W32との隙間W13、W33にシート正面側から挿入可能な爪部43、42C1、42D1を有するので、各種シートを共通の爪部によって係止することができる。そのため、シートWの種類が変化しても、シート係止部42A、42B、42C、42Dを取り替える必要はない。
その結果、シート係止部42A、42B、42C、42Dの爪部43、42C1、42D1をシートバックW11、W31とシートクッションW12、W32との隙間W13、W33に挿入する簡単な操作で、シートWを把持することができ、操作性が大きく向上する。
【0062】
また、本第1実施形態によれば、爪部43には、シートバックW11、W31の正面から背面まで延伸する基端部431と起立したときシートバックW11、W31の背面に沿って延伸する先端部432とが略L字状に形成されたので、先端部432が起立した状態ではシートバックW11の背面を起立した先端部432によって規制でき、シートWが爪部43から脱落することはない。一方、先端部432を倒伏した状態では、爪部43をシートバックW11、W31とシートクッションW12、W32の隙間W13、W33にシート正面から簡単に挿入することができる。そのため、爪部43の先端部432を倒伏した状態でシートバックW11、W31とシートクッションW12、W32の隙間W13、W33にシート正面から挿入し、爪部43の先端部432を起立した状態でシートWを把持すれば、シートの脱落を心配することなく、搬送することができる。
その結果、爪部43の先端部432を倒伏状態から起立状態に操作するだけで、各種シートを安心して搬送することができる。
【0063】
また、本第1実施形態によれば、シート係止部42A、42Bには、基端部431に連結されたカム機構(回動機構)44を備え、爪部43は、シートWを係止してシート把持部4を上昇させるとき、カム機構(回動機構)44が基端部431に作用するシート荷重によって作動して、先端部432が倒伏状態から起立状態に回動可能に形成されたので、爪部43をシートWに係止して上昇させるときに合わせ、シートWの自重を利用して、先端部432が倒伏状態から起立状態に回動して、シートWの爪部43からの脱落を防止することができる。そのため、特別の駆動装置や操作を要することなく、シートWの搬送中に爪部からシートが脱落するのを防止することができる。
一方、シート把持部4を下降させてシートWを車両の装着部に当接させるときには、カム機構(回動機構)44が逆方向に作動するので、先端部を起立状態から倒伏状態に回動させることができる。そのため、特別の駆動装置や操作を要することなく、シートから爪部を抜き出すことができる。
その結果、シートに対する先端部の倒伏動作及び起立動作が容易となり、シート投入補助装置における作業性が向上する。
【0064】
また、本実施形態によれば、台車部1、1Bと支柱部2、2Bとフレーム部3とが、傾斜補強部材14、14B、221、33で連結されて略C字状に形成されたので、台車部1、1Bと支柱部2、2Bとフレーム部3との各交差部に掛かる応力が傾斜補強部材14、14B、221、33で分散され、各部を構成する部材の軽量化が可能となる。
その結果、各種シートを搬送できるシート投入補助装置10、20を、より一層軽量かつコンパクトに形成することができる。
【0065】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更することができる。
(1)例えば、第1実施形態では、シート把持部4におけるシート係止部42(42A)は、長尺基板421に爪部43とカム機構(回動機構)44とシートバック当接部45とが装着されていて、爪部43の基端部431は、カム機構44に回動可能に軸支されている。しかし、爪部43の回動機構は、カム機構44に限る必要はない。
例えば、
図12、
図13に示すように、爪部43の基端部431をクランク機構44Cに回動可能に軸支してもよい。この場合、クランク機構44Cは、基端保持板445Cに軸支されたクランク軸部434と、クランク軸部434の一端と基端部431とを偏心して連結する偏心連結部433と、クランク軸部434の他端から鉛直方向へ延伸するクランクアーム部441Cと、クランクアーム部441Cの先端と基端保持板445Cの上端から水平方向に突出したばね止め部423Cとの間に係止された引張りばね443Cと、クランクアーム部441Cの回動角度を規制するストッパピン442D、442Eとを備えている。基端保持板445Cは、長尺基板421に固定されている。このクランク機構44Cによれば、シートWを係止しない無負荷状態では、クランクアーム部441Cが引張りばね443Cによって上方のストッパピン442Dまで引かれ、爪部43の先端部432は、水平な倒伏状態に保持されている(
図13(a)参照)。また、シートを係止して基端部431にシート荷重が作用した状態では、クランク機構44Cにシート荷重による回転モーメントが働くので、クランク軸部434を中心に基端部431及び先端部432が矢印r2の方向へ回動する。このときは、クランクアーム部441Cが、下方のストッパピン442Eと当接し、先端部432の起立状態が保持される(
図13(b)参照)。
なお、シート把持部4を下降させてシートを車両の装着部に当接させるときには、クランク機構44C(回動機構)が逆方向に作動するので、先端部432を起立状態から倒伏状態に回動させることができる。そのため、特別の駆動装置や操作を要することなく、シートWから爪部43を抜き出すことができる。
【0066】
(2)例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、シート把持部4、4Bにおける2つのシート係止部42A、42B(42C、42D)を前後方向に配列したが、シート係止部42A、42B(42C、42D)を左右方向に配列してもよい。この場合には、2つのシート係止部42A、42B(42C、42D)が、シート幅に応じてそれぞれ逆方向へ移動可能に形成することが好ましい。