(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周縁部に設けた主周縁結合部により相互に結合された一対の主布部と、前記両主布部の間に配置され、かつ周縁部に設けた一対の副周縁結合部により前記各主布部に結合された副布部とにより袋状に構成され、乗員に接近した箇所で膨張用ガスにより展開及び膨張する膨張部を備え、
前記副布部は、前記膨張部の内圧を調整する調圧弁を自身の一部に備え、
前記調圧弁は、前記副布部の一部により構成され、かつ同副布部の厚み方向に互いに重ね合わされた複数の重ね合わせ部と、隣り合う前記重ね合わせ部に設けられて前記膨張部の内外を連通させる連通部とを備え、前記膨張部による乗員の拘束前、又は前記膨張部への膨張用ガスの供給初期には、前記重ね合わせ部で前記連通部を塞ぐことで膨張用ガスの流通を制限し、前記膨張部による乗員拘束に伴い加わる外力に応じて、又は前記膨張部の内圧上昇に応じて、前記重ね合わせ部を変形させて前記連通部を開くことで前記制限を解除するものであり、
前記副布部は単一の副布片により構成され、
前記複数の重ね合わせ部は、前記副布片の一部を複数回折り返すことにより形成され、
前記連通部は、隣り合う前記重ね合わせ部の折り返し部分に設けられており、
前記複数の重ね合わせ部は、前記副周縁結合部により前記主布部に結合されることのみをもって相互に結合されているエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第1実施形態について、
図1〜
図10を参照して説明する。
【0039】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)についての中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とするものとする。また、車両用シートには、乗員として、標準的な体格を有する大人が、予め定められた適正な姿勢で着座しているものとする。
【0040】
図1〜
図3に示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側の近傍には、乗物用シートとして車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
【0041】
車両用シート12は、シートクッション13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されたシートバック14とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0042】
次に、シートバック14における車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14の内部には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、
図4に示すように、シートバック14内の車外側部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部15」という)は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。サイドフレーム部15を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド16が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード17が配置されている。なお、シートパッド16は表皮によって被覆されているが、
図4ではその表皮の図示が省略されている。後述する
図9についても同様である。
【0043】
シートパッド16内において、サイドフレーム部15の車外側近傍には収納部18が設けられている。この収納部18には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。
【0044】
収納部18の角部からは、斜め前かつ車外側に向けてスリット19が延びている。シートパッド16の前側の角部16cとスリット19とによって挟まれた箇所(
図4において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部21を構成している。
【0045】
エアバッグモジュールAMは、ガス発生器30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器30>
図4及び
図6に示すように、ガス発生器30は、インフレータ31と、そのインフレータ31を覆うリテーナ32とを備えている。ここでは、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤が収容されている。インフレータ31は、その上端部にガス噴出部(図示略)を有している。また、インフレータ31の下端部には、作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0046】
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0047】
一方、リテーナ32は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ31をエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部15に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ32には、これをサイドフレーム部15に取付けるための係止部材として、複数本のボルト33が固定されている。なお、ガス発生器30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。
【0048】
<エアバッグ40>
図1及び
図2に示すように、エアバッグ40は、その外殻部分を構成するエアバッグ本体41と、エアバッグ本体41内に設けられた縦区画部60とを備えている。
【0049】
<エアバッグ本体41>
図5は、エアバッグ本体41及び縦区画部60をそれぞれ展開させた状態で示している。また、
図6は、エアバッグ本体41が非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールAMの内部構造を示している。ここで、非膨張展開状態とは、エアバッグ本体41が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態をいうものとする。
【0050】
図5及び
図6に示すように、エアバッグ本体41は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線42に沿って前方へ二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ本体41について上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを主布部43といい、車外側に位置するものを主布部44というものとする。両主布部43,44は車幅方向に沿って配列されている。表現を変えると、両主布部43,44の配列方向と車幅方向とは合致している。
【0051】
なお、第1実施形態では、布片が折り線42に沿って二つ折りされることによりエアバッグ本体41が形成されているが、エアバッグ本体41は折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ本体41は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片を、袋状となるように結合させることにより形成される。さらに、主布部43,44の少なくとも一方は、複数枚の布片によって構成されてもよい。
【0052】
エアバッグ本体41においては、両主布部43,44の外形形状が、折り線42を対称軸として互いに線対称の関係にある。各主布部43,44は、エアバッグ本体41が車両用シート12とボディサイド部11との間で展開及び膨張したときに、その車両用シート12に着座している乗員Pの胸部PTの側方の領域を占有し得る形状及び大きさに形成されている。
【0053】
上記両主布部43,44としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0054】
両主布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた主周縁結合部45においてなされている。第1実施形態では、主周縁結合部45の大部分は、両主布部43,44の周縁部のうち、後端部(折り線42の近傍部分)を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。この点は、後述する副周縁結合部62についても同様である。
【0055】
上記縫製に関し、
図6では、2つの線種によって縫製部分が表現されている。一方の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(副周縁結合部62参照)。他方の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線であり、これは、縫製部分を通る断面に沿った縫糸の断面を示している(主周縁結合部45参照)。
【0056】
なお、主周縁結合部45及び副周縁結合部62は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
図1及び
図6に示すように、両主布部43,44の間であって、主周縁結合部45及び折り線42によって囲まれた箇所は、膨張用ガスによって乗員Pの胸部PTの側方で展開及び膨張することにより、同胸部PTを拘束して衝撃から保護するための膨張室46となっている。
【0057】
図5及び
図6に示すように、二つ折りされたエアバッグ本体41の後端下部には、折り線42に直交する方向へ延びるスリット47が形成されている。両主布部43,44においてスリット47よりも下側部分は、他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられた内折り部48となっている。内折り部48の下端部は、主周縁結合部45によって両主布部43,44の他の部分に対し、共縫いにより結合されている。また、内折り部48の形成に伴いスリット47が開かれて、ガス発生器30の挿入口49が形成されている。
【0058】
また、主布部43においてスリット47の上方近傍となる複数箇所には、ガス発生器30のボルト33(
図4参照)を挿通させるためのボルト孔51があけられている。
膨張室46は、縦区画部60によって2つに区画されている。縦区画部60は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。縦区画部60は特許請求の範囲における副布部に相当する部材であり、上記両主布部43,44の間に配置されている。
【0059】
<縦区画部60>
エアバッグ本体41が非膨張展開状態(
図6参照)にされているときには、縦区画部60は、両主布部43,44の間において、略上下方向に延びる折り線61に沿って前方へ二つ折りされている。二つ折り状態の縦区画部60の上端部及び下端部は、上述した主周縁結合部45によって両主布部43,44に対し、共縫いにより結合されている。
【0060】
図5に示すように、縦区画部60は、展開させられた状態では、上下方向の寸法が車幅方向の寸法よりも長くなる縦長の形状を有している。
そして、
図6及び
図9に示すように、縦区画部60は、自身の車幅方向両側の周縁部に沿って略上下方向へ延びるように設けられた一対の副周縁結合部62によって、対応する主布部43,44に結合されている。縦区画部60は、上記の結合により、両主布部43,44間に架け渡されている。膨張室46において、縦区画部60よりも後側の部分は、乗員Pの胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する上流側膨張部63を構成している。また、膨張室46において、縦区画部60よりも前側の部分は、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する下流側膨張部64を構成している。
【0061】
表現を変えると、縦区画部60は、主布部43,44の各一部(後部)とともに上流側膨張部63の壁部を構成する副布部として機能している。また、縦区画部60は、主布部43,44の各一部(前部)とともに下流側膨張部64の壁部を構成する副布部として機能している。
【0062】
縦区画部60は、上流側膨張部63及び下流側膨張部64の各内圧を調整する調圧弁70を備えている。より詳しくは、
図5及び
図7に示すように、縦区画部60は、主布部43,44と同様の素材からなり、かつ上下方向に並べられた2つの副布片71,76によって構成されている。
【0063】
上側の副布片71の下端部と、下側の副布片76の上端部とは、縦区画部60の厚み方向である前後方向に互いに重ね合わされている。副布片71の下端部は重ね合わせ部72を構成し、副布片76の上端部は重ね合わせ部77を構成している。
【0064】
両重ね合わせ部72,77の間であって、両副周縁結合部62によって挟まれた箇所は、上流側膨張部63の内外を連通させる、第1実施形態では上流側膨張部63と下流側膨張部64とを連通させる連通部81を構成している。
【0065】
そして、両重ね合わせ部72,77及び連通部81によって調圧弁70が構成されている。この調圧弁70は、上流側膨張部63による乗員Pの拘束前には、重ね合わせ部72,77を互いに接触させて連通部81を塞ぐことで、同連通部81での膨張用ガスの流通を制限する(
図10(a))。また、調圧弁70は、上流側膨張部63による乗員拘束に伴い加わる外力に応じて、両重ね合わせ部72,77を変形させて連通部81を開くことで上記流通制限を解除する(
図10(c))。
【0066】
図5及び
図8に示すように、両重ね合わせ部72,77には、易開部73,78と、易開部73,78よりも多くの量重ね合わされることで同易開部73,78よりも開きにくく構成された一対の難開部74,79とが、車幅方向に沿って並べられた状態で設けられている。
【0067】
第1実施形態では、易開部73,78は、両重ね合わせ部72,77のうち、車幅方向の中央部を含む部分に設けられ、難開部74,79は、車幅方向について易開部73,78の両側部に設けられている。
【0068】
より詳しくは、上側の副布片71の重ね合わせ部72には、その下端縁から上方へ凹む円弧状の凹部72aが形成されている。凹部72aの凹みの度合いは、車幅方向の中央部で最大であり、中央部から車幅方向の両側へ遠ざかるに従い小さくなる。また、下側の副布片76の重ね合わせ部77には、その上端縁から下方へ凹む円弧状の凹部77aが形成されている。凹部77aの凹みの度合いは、車幅方向の中央部で最大であり、中央部から車幅方向の両側へ遠ざかるに従い小さくなる。
【0069】
ここで、両重ね合わせ部72,77において、重ね合わされた箇所の上下方向の寸法を重ね合わせ量とする。すると、上記のように重ね合わせ部72,77に凹部72a,77aが形成されることにより、易開部73,78の重ね合わせ量は、車幅方向の中央部で最少であり、同中央部から車幅方向の両側へ離れるに従い多くなっている。また、難開部74,79の重ね合わせ量は、車幅方向の両端部で最大であり、同端部から同車幅方向の中央部側へ遠ざかるに従い少なくなっている。
【0070】
縦区画部60の一部を構成する両重ね合わせ部72,77の一対の周縁部は、両副周縁結合部62によって両主布部43,44に結合されていることについては上述した通りである。両重ね合わせ部72,77は、これらの副周縁結合部62によって相互に連結されている。両重ね合わせ部72,77は、特許文献1及び特許文献2とは異なり、他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。
【0071】
そして、
図6に示すように、ガス発生器30が略上下方向へ延びる姿勢にされたうえで、同ガス発生器30の下部を除く多くの部分が、略下方から挿入口49を通じて上流側膨張部63内の後端部に挿入されている。さらに、ボルト33が主布部43のボルト孔51(
図5参照)に挿通されることにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0072】
なお、ガス発生器30の全体が上流側膨張部63内の後端部に配置され、ボルト33が主布部43のボルト孔51に挿通されてもよい。
ところで、エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41(
図6参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部18に対し、収納に適したものとするためである。
【0073】
図4に示すように、エアバッグモジュールAMでは、ガス発生器30から延びて主布部43のボルト孔51に挿通されたボルト33がサイドフレーム部15に挿通され、その挿通状態のボルト33にナット34が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41と一緒にサイドフレーム部15に取付けられている。
【0074】
なお、ガス発生器30は、上述したボルト33及びナット34とは異なる部材によってサイドフレーム部15に取付けられてもよい。また、リテーナ32が用いられることなくインフレータ31がサイドフレーム部15に直接取付けられてもよい。
【0075】
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに、
図1に示す衝撃センサ98及び制御装置99を備えている。衝撃センサ98は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11に設けられており、同ボディサイド部11に外側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置99は、衝撃センサ98の検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
【0076】
さらに、車室内には、車両用シート12に着座している乗員Pをその車両用シート12に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、
図1〜
図3等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
【0077】
上記のようにして、第1実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、このサイドエアバッグ装置の作用として、代表的な動作の態様(モード)について説明する。
【0078】
図10(a)〜(c)は、縦区画部60における調圧弁70及びその周辺部分の形態が、膨張用ガスの供給開始後、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については図示が省略及び簡略化されている。
【0079】
第1実施形態のサイドエアバッグ装置では、ボディサイド部11に対し側方から衝撃が加わったことが衝撃センサ98によって検出されないときには、制御装置99からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ本体41は、収納用形態で収納部18に収納され続ける。
【0080】
これに対し、車両10の走行中等に、側突等によりボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ98によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置99からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ31から膨張用ガスが噴出される。膨張用ガスが、収納用形態のエアバッグ本体41の上流側膨張部63に供給されることで、同上流側膨張部63が展開及び膨張を開始する。
【0081】
縦区画部60が、展開及び膨張する上流側膨張部63によって、車幅方向の両側へ引っ張られる。重ね合わせ部72,77が易開部73,78でも難開部74,79でも互いに重ね合わされる。連通部81は、両重ね合わせ部72,77によって塞がれた状態となる。また、
図10(a)に示すように、両重ね合わせ部72,77に対しては、その重なり方向(厚み方向)から内圧PIが加わる。そのため、両重ね合わせ部72,77は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、連通部81での膨張用ガスの流通を規制する自己シール状態となる。
【0082】
ここで、縦区画部60が、車幅方向よりも上下方向に長く形成されている(
図5参照)ことから、縦区画部60では、車幅方向に対し、上下方向に対するよりも強いテンションがかかりやすい。両重ね合わせ部72,77は、この強いテンションのかかりやすい車幅方向に延びているため、閉じられやすい。
【0083】
そのため、上流側膨張部63内の膨張用ガスは、両重ね合わせ部72,77間の連通部81を通って下流側膨張部64へ流出することを制限される。膨張用ガスが上流側膨張部63に溜まり、同上流側膨張部63の内圧が上昇する。
【0084】
上記内圧の上昇により、上流側膨張部63が折り状態を解消(展開)しながら膨張していくと、シートバック14のシートパッド16が、上流側膨張部63によって押圧され、破断予定部21(
図4参照)において破断される。上流側膨張部63は、
図9に示すように、一部を収納部18に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から前方へ飛び出す。
【0085】
図1及び
図2に示すように、その後も膨張用ガスの供給される上流側膨張部63は、乗員Pの胸部PTの後半部とボディサイド部11との間を前方へ向けて展開及び膨張する。乗員Pの胸部PTの後半部は上流側膨張部63によって拘束され、側方から加わる衝撃から保護される。
【0086】
なお、
図9に示すように、車幅方向の両側へ引っ張られた縦区画部60は緊張した状態となって、上流側膨張部63の同方向の膨張厚みを規制する。
ボディサイド部11がさらに車内側へ進入することで、乗員Pの胸部PTの後半部が上流側膨張部63によって車内側へ押圧され始める。上流側膨張部63内に膨張用ガスが供給され続ける一方、ボディサイド部11から加わる外力により、調圧弁70が開き始める。
【0087】
すなわち、上流側膨張部63への膨張用ガスの供給期間の途中からは、胸部PTの後半部の拘束に伴う外力が側方から加わって上流側膨張部63が押圧されて変形する。これに伴い、縦区画部60に対し車幅方向に強くかかっていたテンションが減少する。
【0088】
また、上記変形に伴い上流側膨張部63の内圧PIがさらに上昇して、縦区画部60が下流側膨張部64側へ押圧されて(
図10(b)参照)、同縦区画部60にかかるテンションが変化し、上下方向及び車幅方向のテンションの差が小さくなる。重ね合わせ部72,77の上下方向の変形が許容されるようになる。
【0089】
この上下方向の変形により、両重ね合わせ部72,77では重ね合わせ量が減少する。そして、重ね合わせ量がなくなると、両重ね合わせ部72,77が開く(
図10(c))。第1実施形態では、
図8に示すように、重ね合わせ量が少なく難開部74,79よりも開きやすい易開部73,78が、重ね合わせ量が多く易開部73,78よりも開きにくい難開部74,79よりも先に開く。
【0090】
ここで、両重ね合わせ部72,77が、車幅方向の両側の周縁部に設けた副周縁結合部62により各主布部43,44に結合されていることから、重ね合わせ部72,77において副周縁結合部62に近い部分では、重ね合わせられた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、副周縁結合部62から遠ざかるに従い小さくなり、車幅方向の中央部分において最小となる。
【0091】
この点、上述したように、易開部73,78が、両重ね合わせ部72,77のうち、車幅方向の中央部を含む部分に設けられることで、一層開きやすくなる。また、難開部74,79は、上記車幅方向について易開部73,78の両側部に設けられることで、一層開きにくくなる。
【0092】
連通部81において車幅方向の中央部分が開放されると、上流側膨張部63内の膨張用ガスがその開放部分から下流側膨張部64へ流出し始める。易開部73,78に遅れて難開部74,79が開くと、易開部73,78のみが開いた場合よりも連通部81が多く開放され、上流側膨張部63内のより多くの量の膨張用ガスが連通部81を通じて下流側膨張部64へ流出する。そして、膨張用ガスの上記流出により、上流側膨張部63の内圧が低下し、下流側膨張部64の内圧が上昇する。
【0093】
下流側膨張部64は、車内側へ進入するボディサイド部11により、乗員Pの胸部PTの前半部に押し付けられ始める。上流側膨張部63による胸部PTの後半部の拘束に加え、胸部PTの前半部が下流側膨張部64によって拘束される。
【0094】
ここで、
図5及び
図8に示すように、上記調圧弁70では、一対の重ね合わせ部72,77は、一対の副周縁結合部62により主布部43,44に結合されているにすぎない。両重ね合わせ部72,77は、両副周縁結合部62とは別に設けられた他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。それにも拘わらず、調圧弁70は、両重ね合わせ部72,77が副周縁結合部62及び他の結合部(内結合部)によって結合されたものと同様の動作を行なう。従って、乗員Pの拘束性能が維持される。また、他の結合部(内結合部111)による結合がなくなる分、調圧弁70の構造が簡単になる。
【0095】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)縦区画部60(副布部)を両主布部43,44の間に配置し、同縦区画部60の周縁部に設けた一対の副周縁結合部62により各主布部43,44に結合する。縦区画部60の一部により構成される調圧弁70として、縦区画部60の厚み方向に互いに重ね合わされた一対の重ね合わせ部72,77と、それらの間に設けられて上流側膨張部63の内外を連通させる連通部81とを備えるものを採用する。この調圧弁70において、両重ね合わせ部72,77を、両副周縁結合部62により主布部43,44に結合させることのみをもって相互に結合させている(
図5)。
【0096】
そのため、副周縁結合部62とは別に他の結合部(
図20中の内結合部111)を設けた場合と同等の乗員拘束性能を、サイドエアバッグ装置に発揮させることができる。また、他の結合部(内結合部111)による結合をなくすことで、調圧弁70の構造を簡略化することができる。
【0097】
(2)縦区画部60(副布部)を一対の副布片71,76によって構成する。一対の重ね合わせ部72,77を、両副布片71,76であって、縦区画部60の厚み方向に互いに重ね合わされた端部により構成する。そして、両重ね合わせ部72,77の間において両副周縁結合部62によって挟まれた箇所を連通部81としている(
図5)。
【0098】
そのため、上流側膨張部63による乗員拘束前には、両重ね合わせ部72,77を互いに重ね合わせて、連通部81を塞がれた状態にし、膨張用ガスの流通を制限することができる(
図10(a))。
【0099】
また、上流側膨張部63による乗員拘束時には、両重ね合わせ部72,77を変形させることで、重ね合わせ量をなくして連通部81を開放させ、上流側膨張部63内の膨張用ガスを連通部81の開放部分から流出させることができる(
図10(c))。
【0100】
(3)縦区画部60(副布部)を挟んで上流側膨張部63よりも下流側には、調圧弁70を通じて上流側膨張部63から流出した膨張用ガスにより展開及び膨張する下流側膨張部64を設けている(
図6)。
【0101】
そのため、上流側膨張部63による乗員拘束前には、連通部81を塞ぐことで、膨張室46のうち専ら上流側膨張部63を展開及び膨張させ、同上流側膨張部63によって乗員Pにおける胸部PTの後半部を拘束して衝撃から保護することができる。
【0102】
また、上流側膨張部63による乗員拘束時には、連通部81を開放させることで、上流側膨張部63に加え下流側膨張部64を展開及び膨張させ、両膨張部63,64によって乗員Pを拘束し、衝撃から保護することができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第2実施形態について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0104】
第2実施形態では、縦区画部60(副布部)が副本体布部82及び副補助布部83によって構成されている。副本体布部82において、上下方向の中央部付近には、車幅方向に延びる長孔からなる連通部84が設けられている。副本体布部82は、第1実施形態での縦区画部60(副布部)と同様の外形形状を有している。
【0105】
副補助布部83では、上下方向の寸法が上記連通部84よりも大きく設定され、車幅方向の寸法が副本体布部82と同程度に設定されている。副補助布部83は、連通部84を塞ぎ、かつ一対の周縁部を副本体布部82の両周縁部に合致させた状態で、副本体布部82の一部に対し前方から重ね合わされている。副補助布部83の両周縁部は、両副周縁結合部62により副本体布部82とともに両主布部43,44に結合されている。副本体布部82及び副補助布部83は、両副周縁結合部62によって相互に連結されている。副本体布部82及び副補助布部83は、特許文献1及び特許文献2とは異なり、他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。
【0106】
調圧弁70の一部をなす複数の重ね合わせ部は、副補助布部83と、副本体布部82のうち副補助布部83が重ね合わされた部分とによって構成されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0107】
次に、第2実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
図12(a)〜(c)は、縦区画部60における調圧弁70及びその周辺部分の形態が、膨張用ガスの供給により、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については図示が省略及び簡略化されている。
【0108】
上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、調圧弁70では、
図12(a)に示すように、副補助布部83が副本体布部82において連通部84の設けられた箇所に重ね合わされる。副本体布部82の連通部84が副補助布部83によって塞がれた状態となり、上流側膨張部63から下流側膨張部64への膨張用ガスの流出が制限される。
【0109】
上流側膨張部63による乗員拘束に伴い同上流側膨張部63に外力が加わると、
図12(b)に示すように少なくとも副本体布部82が変形させられる。副本体布部82の上下方向の変形に伴い連通部84が同方向へ変形させられる。副本体布部82と副補助布部83との重ね合わせ量が少なくなる。そして、
図12(c)に示すように、重ね合わせ量がなくなって連通部84が開放されると、すなわち、連通部84のうち副補助布部83によって塞がれなくなった部分が生ずると、その開放部分から上流側膨張部63内の膨張用ガスが流出する。
【0110】
従って、第2実施形態によると、上記(1),(3)と同様の効果が得られるほか、上記(2)に代えて、次の効果が得られる。
(4)縦区画部60(副布部)を、連通部84の設けられた副本体布部82と、連通部84を塞いだ状態で副本体布部82の一部に重ね合わされた副補助布部83とによって構成する。副補助布部83の一対の周縁部を、両副周縁結合部62により副本体布部82とともに主布部43,44に結合する。複数の重ね合わせ部を、副補助布部83と、副本体布部82のうち副補助布部83が重ね合わされた部分とによって構成している(
図11)。
【0111】
そのため、上流側膨張部63による乗員拘束前には、副補助布部83を副本体布部82に重ね合わせて連通部84を塞ぎ、膨張用ガスの流通を制限することができる。
また、上流側膨張部63による乗員拘束時には、少なくとも副本体布部82を上下方向へ変形させて連通部84を同方向へ変形させる。副本体布部82と副補助布部83との重ね合わせ量をなくして連通部84を開放させ、上流側膨張部63内の膨張用ガスを連通部84の開放部分から流出させることができる。
【0112】
(第3実施形態)
次に、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第3実施形態について、
図13を参照して説明する。
【0113】
第3実施形態では、縦区画部60(副布部)が一対の副本体布部82a,82bと、副補助布部83とによって構成されている。両副本体布部82a,82bは、一定間隔をおいて上下方向へ離間している。両副本体布部82a,82bの間は、連通部85を構成している。連通部85は、縦区画部60(副布部)において車幅方向の全幅にわたって設けられており、第2実施形態での連通部84よりも車幅方向に長い。
【0114】
副補助布部83では、上下方向の寸法が上記連通部84よりも大きく設定され、車幅方向の寸法が連通部85と同程度に設定されている。副補助布部83は、連通部85を塞ぎ、かつ一対の周縁部を副本体布部82a,82bの両周縁部に合致させた状態で、副本体布部82a,82bに対し前方から重ね合わされている。副補助布部83の両周縁部は、両副周縁結合部62により副本体布部82a,82bとともに両主布部43,44に結合されている。副本体布部82a,82b及び副補助布部83は、両副周縁結合部62によって相互に連結されている。副本体布部82a,82b及び副補助布部83は、特許文献1及び特許文献2とは異なり、他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。
【0115】
調圧弁70の一部をなす複数の重ね合わせ部は、副補助布部83と、各副本体布部82a,82bのうち副補助布部83が重ね合わされた部分とによって構成されている。
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0116】
従って、第3実施形態のサイドエアバッグ装置は、上述した第2実施形態のサイドエアバッグ装置と同様に作動する。
すなわち、上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、調圧弁70では、副補助布部83が、一対の副本体布部82a,82bの対向する各端部に重ね合わされる。連通部85が副補助布部83によって塞がれた状態となり、上流側膨張部63から下流側膨張部64への膨張用ガスの流出が制限される。
【0117】
上流側膨張部63による乗員拘束に伴い同上流側膨張部63に外力が加わると、少なくとも両副本体布部82a,82bが変形させられる。両副本体布部82a,82bの上下方向の変形に伴い連通部85が同方向へ変形させられる。両副本体布部82a,82bと副補助布部83との重ね合わせ量が少なくなる。そして、重ね合わせ量がなくなって連通部85が開放されると、すなわち、連通部85のうち副補助布部83によって塞がれなくなった部分が生ずると、その開放部分から上流側膨張部63内の膨張用ガスが流出する。
【0118】
従って、第3実施形態によると、上記(1),(3),(4)と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
次に、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第4実施形態について、
図14及び
図15を参照して説明する。
【0119】
第4実施形態では、縦区画部60(副布部)が単一の副布片86によって構成されている。副布片86の上下方向の中央部付近において、互いに上下方向へ離間した2箇所には、それぞれ車幅方向へ延びる一対の折り線87,88が設定されており、副布片86の中間部分は、これらの折り線87,88に沿って、2回にわたり折り返されている。副布片86において、両折り線87,88によって囲まれた部分は重ね合わせ部86bを構成している。副布片86の折り線87よりも上側部分であって、上記重ね合わせ部86bの後方となる部分は、重ね合わせ部86aを構成している。副布片86の折り線88よりも下側部分であって、上記重ね合わせ部86bの前方となる部分は、重ね合わせ部86cを構成している。
【0120】
連通部89は、隣り合う重ね合わせ部86a,86bの折り返し部分に設けられている。第4実施形態では、折り線87に沿って設けられたスリットによって連通部89が構成されている。
【0121】
各重ね合わせ部86a,86b,86cの車幅方向の両周縁部は、副布片86の他の部分と同様、両副周縁結合部62により両主布部43,44に結合されている。重ね合わせ部86a,86b,86cは、両副周縁結合部62によって相互に連結されている。重ね合わせ部86a,86b,86cは、特許文献1及び特許文献2とは異なり、他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。
【0122】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第4実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
図15(a)〜(c)は、縦区画部60における調圧弁70及びその周辺部分の形態が、膨張用ガスの供給により、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については図示が省略及び簡略化されている。
【0123】
上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、調圧弁70では、
図15(a)に示すように、複数(3つ)の重ね合わせ部86a,86b,86cが互いに重ね合わされる。隣り合う重ね合わせ部86a,86bの折り返し部分に設けられた連通部89が、互いに重ね合わされた重ね合わせ部86a,86bによって塞がれた状態となり、上流側膨張部63から下流側膨張部64への膨張用ガスの流出が制限される。
【0124】
上流側膨張部63による乗員拘束に伴い同上流側膨張部63に外力が加わると、
図15(b)に示すように、縦区画部60(副布部)が下流側膨張部64側へ押圧される。
各重ね合わせ部86a,86b,86cが変形させられ、それに伴って連通部89が変形させられる。連通部89が上下方向へある程度開くと、重ね合わせ部86a,86bの一部(車幅方向の中央部及びその付近)が、
図15(c)に示すように、連通部89を通って下流側膨張部64へ押し出される(反転される)。上流側膨張部63内の膨張用ガスは、上記のように反転された両重ね合わせ部86a,86bの間の開放された連通部89を通って下流側膨張部64へ流出する。
【0125】
従って、第4実施形態によると、上記(1),(3)と同様の効果が得られるほか、上記(2)に代えて、次の効果が得られる。
(5)縦区画部60(副布部)を単一の副布片86によって構成する。この副布片86の中間部分を複数回折り返すことにより複数の重ね合わせ部86a,86b,86cを形成し、連通部89を隣り合う重ね合わせ部86a,86bの折り返し部分に設けている(
図14)。
そのため、上流側膨張部63による乗員拘束前には、両重ね合わせ部86a,86bを互いに重ね合わせることによって、それらの間の連通部89を塞ぎ、膨張用ガスの流通を制限することができる。
【0126】
また、上流側膨張部63による乗員拘束時には、両重ね合わせ部86a,86bを変形させて連通部89を変形させる。両重ね合わせ部86a,86bを、連通部89を通って下流側膨張部64へ押し出させ(反転させ)、連通部89の開放部分から上流側膨張部63内の膨張用ガスを流出させることができる。
【0127】
(第5実施形態)
次に、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第5実施形態について、
図16及び
図17を参照して説明する。
【0128】
第5実施形態では、縦区画部60(副布部)が、単一の副布片91によって構成されている。副布片91の上下方向の中央部付近において、互いに上下方向へ離間した4箇所には、それぞれ車幅方向へ延びる4本の折り線92,93,94,95が設定されており、副布片91の中間部分は、これらの折り線92〜95に沿って、4回にわたり折り返されている。副布片91において、隣り合う一対の折り線92,93によって囲まれた部分は重ね合わせ部91bを構成し、隣り合う一対の折り線93,94によって囲まれた部分は重ね合わせ部91cを構成し、隣り合う一対の折り線94,95によって囲まれた部分は重ね合わせ部91dを構成している。副布片91の折り線92よりも上側部分であって、上記重ね合わせ部91bの後側となる部分は、重ね合わせ部91aを構成している。副布片91の折り線95よりも下側部分であって、上記重ね合わせ部91dの後側となる部分は、重ね合わせ部91eを構成している。
【0129】
連通部96は、複数の重ね合わせ部91a〜91eのうち、副布片91において重ね合わされていない箇所から前方へ最も遠ざかったもの(重ね合わせ部91c)に設けられている。第5実施形態では、連通部96は、重ね合わせ部91cにおいて車幅方向の中央部分に設けられた円形の孔によって構成されているが、この孔の位置、数、形状等は適宜に変更可能である。
【0130】
各重ね合わせ部91a〜91eの車幅方向の両周縁部は、両副周縁結合部62により両主布部43,44に結合されている。重ね合わせ部91a〜91eは、両副周縁結合部62によって相互に連結されている。重ね合わせ部91a〜91eは、特許文献1及び特許文献2とは異なり、他の結合部(
図20中の内結合部111)によっては相互に結合されていない。
【0131】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第5実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
図17(a)〜(c)は、縦区画部60における調圧弁70及びその周辺部分の形態が、膨張用ガスの供給により、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については図示が省略及び簡略化されている。
【0132】
上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、調圧弁70では、
図17(a)に示すように、複数の重ね合わせ部91a〜91eのうち、重ね合わせ部91cに対し、重ね合わせ部91a,91bが後方から重なるとともに、重ね合わせ部91d,91eが後方から重なっている。表現を変えると、インフレータ31と重ね合わせ部91cとの間に、重ね合わせ部91a,91bが位置するとともに、その直下で重ね合わせ部91d,91eが位置している。上記重ね合わせ部91cに設けられた連通部96は、これらの重ね合わせ部91a,91b,91d,91eによって塞がれた状態となり、上流側膨張部63から下流側膨張部64への膨張用ガスの流出が制限される。
【0133】
上流側膨張部63による乗員拘束に伴い同上流側膨張部63に外力が加わると、
図17(b)に示すように、縦区画部60(副布部)が下流側膨張部64側へ押圧される。各重ね合わせ部91a〜91eが上下方向へ変形させられる。この変形により、重ね合わせ部91a,91bが上方へ退避し、重ね合わせ部91d,91eが下方へ退避する。連通部96の設けられた重ね合わせ部91cに対する他の重ね合わせ部91a,91b,91d,91eの重ね合わせ量が少なくなる。
図17(c)に示すように、連通部96のうち重ね合わせ部91a,91b,91d,91eによって塞がれなくなった部分が生ずると、上流側膨張部63内の膨張用ガスが連通部96の開放部分を通って下流側膨張部64へ流出する。
【0134】
従って、第5実施形態によると、上記(1),(3)と同様の効果が得られるほか、上記(2)に代えて、次の効果が得られる。
(6)縦区画部60(副布部)を単一の副布片91によって構成する。この副布片91の一部を複数回折り返すことにより、複数の重ね合わせ部91a〜91eを形成する。そして、連通部96を、複数の重ね合わせ部91a〜91eのうち、副布片91において重ね合わされていない箇所から最も遠ざかった重ね合わせ部91cに設けている(
図16)。
【0135】
そのため、上流側膨張部63による乗員拘束前には、重ね合わせ部91cに設けられた連通部96を、他の重ね合わせ部91a,91b,91d,91eによって塞ぎ、上流側膨張部63内の膨張用ガスが連通部96を通って下流側膨張部64へ流出するのを制限することができる。
【0136】
また、上流側膨張部63による乗員拘束時には、各重ね合わせ部91a〜91eを変形させることで、連通部96の設けられた重ね合わせ部91cに対する他の重ね合わせ部91a,91b,91d,91eの重ね合わせ量を少なくする。連通部96のうち重ね合わせ部91a,91b,91d,91eによって塞がれない部分を生じさせ、その開放部分から上流側膨張部63内の膨張用ガスを流出させることができる。
【0137】
(第6実施形態)
次に、エアバッグ装置を車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第6実施形態について、
図18及び
図19を参照して説明する。
【0138】
第6実施形態では、重ね合わせ部91d,91eの折り返し部分が、重ね合わせ部91a,91bの折り返し部分に対し、後方から重ね合わされている。表現を変えると、少なくとも1つの折り返し部分が他の少なくとも1つの折り返し部分に対し重ね合わされている。
【0139】
上記以外の構成は第5実施形態と同様である。そのため、第5実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第6実施形態によれば、調圧弁70は基本的に第5実施形態と同様に作動する。すなわち、上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、調圧弁70では、
図19(a)に示すように、重ね合わせ部91d,91eの折り返し部分が、重ね合わせ部91a,91bの折り返し部分に対し後方から重ね合わされる。そのため、上流側膨張部63内の膨張用ガスは、上記両折り返し部分の間を通過しにくく、連通部96に到達しにくくなり、同連通部96を通じた膨張用ガスの流出が良好に制限される。
【0140】
上流側膨張部63による乗員拘束に伴い同上流側膨張部63に外力が加わると、
図19(b)に示すように、縦区画部60(副布部)が下流側膨張部64側へ押圧される。各重ね合わせ部91a〜91eが上下方向へ変形させられる。この変形により、重ね合わせ部91a,91bが上方へ退避し、重ね合わせ部91d,91eが下方へ退避する。これらの退避により、両折り返し部分の重ね合わせ量が少なくなる。
【0141】
連通部96の設けられた重ね合わせ部91cに対する他の重ね合わせ部91a,91b,91d,91eの重ね合わせ量が少なくなって、
図19(c)に示すように、連通部96のうち重ね合わせ部91a,91b,91d,91eによって塞がれなくなった部分が生ずる。すると、上流側膨張部63内の膨張用ガスが連通部96の開放部分を通って下流側膨張部64へ流出する。
【0142】
従って、第6実施形態によると、上記(1),(3),(6)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
(7)少なくとも1つの折り返し部分(重ね合わせ部91d,91eの折り返し部分)を他の少なくとも1つの折り返し部分(重ね合わせ部91a,91bの折り返し部分)に対し重ね合わせている(
図18)。
【0143】
そのため、上流側膨張部63によって乗員Pが拘束される前には、両折り返し部分同士を重ね合わせた状態にし、それらの間での膨張用ガスの流通を制限し、上流側膨張部63内の膨張用ガスを連通部96に到達しにくくし、同連通部96を通じた膨張用ガスの流出を良好に制限することができる。
【0144】
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<膨張室46について>
・エアバッグ本体41は、その略全体が上記各実施形態のように膨張室46からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0145】
・各実施形態における膨張室46は、上流側膨張部63のみによって構成されてもよい。この場合、副布部は、膨張室46を上流側膨張部63と下流側膨張部64とに区画する縦区画部60として機能せず、上流側膨張部63の前壁部として機能するのみである。また、この場合、調圧弁70は、膨張用ガスを上流側膨張部63の外部へ排出させる排気弁として機能する。
【0146】
<縦区画部60について>
・各実施形態における縦区画部60の車幅方向の両方の周縁部は、主布部43,44に対し、ともに上流側膨張部63内で結合されてもよいし、下流側膨張部64内で結合(
図6参照)されてもよい。
【0147】
また、一方の周縁部が主布部43,44に対し上流側膨張部63内で結合され、他方の周縁部が下流側膨張部64内で結合されてもよい。
・各実施形態における二つ折り状態の縦区画部60は、折り線61を副周縁結合部62よりも下流側膨張部64側に位置させた状態で非膨張展開状態のエアバッグ本体41内に配設されてもよい。
【0148】
<調圧弁70について>
・各実施形態における調圧弁70として、上記実施形態で説明したものに代え、上流側膨張部63の内圧が所定値を越えることを条件とし、その条件が満たされるまでは実質的に閉じ(若干開いているものを含む)、同条件が満たされることにより開くものが用いられてもよい。
【0149】
この場合、例えば第1実施形態では、上流側膨張部63への膨張用ガスの供給初期には、調圧弁70では、両重ね合わせ部72,77が互いに重ね合わされる。連通部81が両重ね合わせ部72,77によって塞がれた状態となり、上流側膨張部63内の膨張用ガスが連通部81を通じて下流側膨張部64に流出することが制限される。そのため、膨張用ガスが上流側膨張部63に溜まり、同上流側膨張部63の内圧が高くなる。乗員Pは、このように内圧の高くなった上流側膨張部63によって拘束され、衝撃から保護される。
【0150】
膨張用ガスにより上流側膨張部63の内圧が上昇すると、両重ね合わせ部72,77が変形させられる。この変形に伴い、両重ね合わせ部72,77の重ね合わせ量が少なくなる。そして、両重ね合わせ部72,77の重ね合わせ量がなくなって連通部81が開放されると、上記流通制限が解除され、上流側膨張部63内の膨張用ガスが、連通部81の開放部分から流出し、上流側膨張部63の内圧が低下する。
【0151】
この膨張用ガスが下流側膨張部64に流入することで、上流側膨張部63に続けて、下流側膨張部64が展開及び膨張する。その結果、乗員Pが上流側膨張部63に加え下流側膨張部64によっても拘束され、衝撃から保護される。
【0152】
調圧弁70の上記動作は、第2〜第6実施形態においても同様に行なわれる。
・調圧弁70の形成に際し、第1実施形態とは逆に、上側の副布片71の下端部が、下側の副布片76の上端部に対し前方から重ね合わされてもよい。この場合、重ね合わせ部72が重ね合わせ部77の前側に位置する。
【0153】
・調圧弁70の形成に際し、第2実施形態とは逆に、副補助布部83が副本体布部82に対し後方から重ね合わされてもよい。
・調圧弁70の形成に際し、第3実施形態とは逆に、副補助布部83が両副本体布部82a,82bに対し後方から重ね合わされてもよい。
【0154】
・第4実施形態において、連通部89は、隣り合う重ね合わせ部86a,86bに代えて、隣り合う重ね合わせ部86b,86cの折り返し部分に設けられてもよい。
・第4実施形態とは逆に、重ね合わせ部86aが重ね合わせ部86cよりも前方に位置するように、重ね合わせ部86a〜86cが形成されてもよい。
【0155】
・第4実施形態では、重ね合わせ部が4以上形成されるように、副布片86が3回以上折り返されてもよい。
・第5及び第6実施形態において、重ね合わせ部91a〜91eが上流側膨張部63側に形成されてもよい。
【0156】
・第5及び第6実施形態において、折り返し部分が5以上生ずるように重ね合わせ部が、6以上形成されてもよい。この場合にも、上記第6実施形態と同様に、少なくとも1つの折り返し部分が他の少なくとも1つの折り返し部分に対し重ね合わされることが好ましい。
【0157】
・第6実施形態とは逆に、重ね合わせ部91a,91bの折り返し部分が、重ね合わせ部91d,91eの折り返し部分に対し、後方から重ね合わされてもよい。
<エアバッグモジュールAMの収納部18について>
・車両用シート12のシートバック14に代えてボディサイド部11に収納部18が設けられ、ここにエアバッグモジュールAMが組み込まれてもよい。
【0158】
<その他>
・上記サイドエアバッグ装置は、シートバック14が車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート12が配置された車両において、その車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員Pを保護するタイプのサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0159】
・乗員Pの上半身について上流側膨張部63及び下流側膨張部64によって拘束及び保護される部位が、上記実施形態とは異なる部位に変更されてもよい。
・上記エアバッグ装置は、上述したサイドエアバッグ装置とは異なるタイプのエアバッグ装置にも適用可能である。
【0160】
・上記エアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記エアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等に装備されて、乗物用シートに着座している乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置にも適用可能である。