特許第6237545号(P6237545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237545
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】フィールド機器
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/02 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G08C19/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-182514(P2014-182514)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-57771(P2016-57771A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩野 陽一
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−156997(JP,A)
【文献】 特公昭46−040230(JP,B1)
【文献】 実開昭54−044541(JP,U)
【文献】 特表平10−503039(JP,A)
【文献】 特表平10−501355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2線式ループ配線に、物理量を測定するセンサ回路と、前記センサ回路の測定結果に応じた電流を前記2線式ループ配線に流す電流出力回路とが端子部を介して直列に接続されるフィールド機器であって、
前記センサ回路側の端子部にのみ整流素子が接続されたことを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記端子部は、前記整流素子と前記センサ回路との間に接地コンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記センサ回路は基準点が接地されている接地型であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記端子部は、前記整流素子と直列にインダクタが接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式フィールド機器に係り、特に、センサ部を有する2線式フィールド機器のノイズ耐性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物理量を測定するセンサ部を有する2線式フィールド機器は、直流電源装置からループ配線を介して供給される一定電圧で動作し、センサ部の測定結果を直流の電流値に変換してループ配線に出力する。近年では、直流信号にデジタルデータを重畳して送受信することも広く行なわれている。
【0003】
特許文献1には、図6に示すように、実効容量Ceffを有するフィールド機器において、容量に蓄積された電荷がループ配線に放電することを防ぐために、整流素子であるダイオードDを入力側に直列接続したり(図6(a))、プラス側およびマイナス側に直列接続すること(図6(b))が記載されている。また、ループ配線を流れる高周波ノイズを接地に逃がすために、コンデンサCh、Clをプラス側マイナス側それぞれに接続することも記載されている。なお、ダイオードDは冗長構造のため3段としているが、1段であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第95/34027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7は、実効容量Ceffを含んだインピーダンス回路を実際のフィールド機器の回路ブロックで簡略的に表わした図である。すなわち、フィールド機器は、電流出力回路310、電源回路・制御回路等320、センサ回路330を備えている。なお、ループ配線に接続される直流電源系の素子は省略している。
【0006】
図7(a)は、図6(a)に対応し、プラス側の端子部に整流素子であるダイオード340を接続した場合であり、図7(b)は、図6(b)に対応し、プラス側の端子部にダイオード340を接続し、かつマイナス側の端子部にダイオード350を接続した場合である。
【0007】
電流出力回路310は、ループ配線に流す電流を制御する。電源回路・制御回路等320は、ループ配線を介して供給される電源を各回路に供給する電源回路と、センサ回路330からの信号を演算し、ループ配線に流す電流を決定する制御回路とを含んでいる。電流出力回路310のインピーダンスをZa、電源回路・制御回路等320のインピーダンスをZbとする。
【0008】
センサ回路330は、物理量を測定し、制御回路に伝送する。センサ回路330は、基準点が接地されている接地型であるとする。このため、接地との間に浮遊容量などによるインピーダンスZsh(プラス側)、Zsl(マイナス側)が存在する。
【0009】
一般に、フィールド機器では、電源回路・制御回路等320とセンサ回路330との並列回路が、電流出力回路310と直列でループ配線に接続されており、電流出力回路310がプラス側に配置されている。
【0010】
このようなフィールド機器のループ配線に、プラス側マイナス側同位相の接地に対するノイズであるコモンモードノイズVnが混入する場合を想定する。コモンモードノイズVnは、例えば、不要輻射等の電波障害により生じる。
【0011】
コモンモードノイズVnは、ループ配線から電流出力回路310、センサ回路330のプラス側を通る経路Aにより、センサ回路330のプラス側に影響を与え、ループ配線からセンサ回路330のマイナス側を通る経路Bにより、センサ回路330のマイナス側に影響を与える。
【0012】
図7(a)の回路の経路Aでは、ダイオード340とコンデンサChによりコモンモードノイズVnが整流され、さらに、電流出力回路310のインピーダンスZaとセンサ回路330のプラス側のインピーダンスZshとで分圧されたノイズがセンサ回路330のプラス側に印加される。電流出力回路310のインピーダンスZaは一般に大きいため、センサ回路330に与える影響は比較的小さい。
【0013】
一方、図7(a)の回路の経路Bでは、コモンモードノイズVnのコンデンサClで除けない成分が直接センサ回路330のマイナス側に印加される。このため、センサ回路330のノイズ耐性が悪化してしまう。
【0014】
これに対し、図7(b)の回路では、経路Aは、図7(a)と同様であり、経路Bは、ダイオード350とコンデンサClにより整流されたノイズがセンサ回路330のマイナス側に印加される。このため、ノイズ成分がセンサ回路330に直接印加することはないので、ノイズ耐性の悪化を防ぐことができる。
【0015】
センサ回路330に印加されるノイズの大きさに着目した場合、図7(b)に示すように、プラス側の経路A、マイナス側の経路Bの両方にダイオードを接続することが好ましい。
【0016】
しかしながら、プラス側の経路A、マイナス側の経路Bの両方にダイオードを接続すると、ダイオードの順方向降下電圧がプラス側マイナス側の両方に加わるため、フィールド機器の最低動作電圧が上がってしまう。また、プラス側、マイナス側とも整流されるため、図中のnA点−nB点間に直流電圧が発生することになり、フィールド機器内の回路の耐圧を高くする必要があるといった弊害が生じる。
【0017】
そこで、本発明は、プラス側、マイナス側の双方の端子部に整流素子を接続することなく、2線式フィールド機器のノイズ耐性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明のフィールド機器は、2線式ループ配線に電流出力回路とセンサ回路とが端子部を介して直列に接続されるフィールド機器であって、前記センサ回路側の端子部にのみ整流素子が接続されたことを特徴とする。
ここで、前記端子部は、前記整流素子と前記センサ回路との間に接地コンデンサが接続されているようにしてもよい。
また、前記センサ回路は基準点が接地されている接地型とすることができる。
また、前記端子部は、前記整流素子と直列にインダクタが接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プラス側、マイナス側の双方の端子部に整流素子を接続することなく、2線式フィールド機器のノイズ耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るフィールド機器の回路構成を概略的に表わしたブロック図である。
図2】ダイオードを用いない場合のノイズを説明する図である。
図3】ダイオードを用いた場合のノイズを説明する図である。
図4】本実施形態に係るフィールド機器の回路構成の別例を概略的に表わしたブロック図である。
図5】ダイオードと直列にインダクタを接続した回路を示す図である。
図6】実効容量の放電を防ぐためにダイオードを接続した回路を示す図である。
図7】実効容量を含んだインピーダンス回路を実際のフィールド機器の回路ブロックで簡略的に表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るフィールド機器100の回路構成を概略的に表わしたブロック図である。本図に示すようにフィールド機器100は、2線式のループ配線に接続され、本体部として、電流出力回路110、電源回路・制御回路等120、センサ回路130を備え、端子部として整流素子のダイオード140、コンデンサCh、Clを備えている。なお、本図は、ループ配線に混入するコモンモードノイズに着目しているため、ループ配線に接続される直流電源系の素子は省略している。
【0022】
電流出力回路110は、ループ配線に流す電流を制御する。電源回路・制御回路等120は、ループ配線を介して供給される電源を各回路に供給する電源回路と、センサ回路130からの信号を演算し、ループ配線に流す電流を決定する制御回路とを含んでいる。電流出力回路110のインピーダンスをZa、電源回路・制御回路等120のインピーダンスをZbとする。
【0023】
コンデンサCh、Clは、ループ配線を流れる高周波ノイズを接地に逃がすためのコンデンサであり、それぞれ、プラス側マイナス側に接続されている。具体的には、端子部と本体部とのプラス側の接続点と接地との間にコンデンサChが接続され、端子部と本体部とのマイナス側の接続点と接地との間にコンデンサClが接続される。
【0024】
センサ回路130は、物理量を測定し、制御回路に伝送する。センサ回路130は、基準点が接地されている接地型であるとする。このため、接地との間に浮遊容量などによるインピーダンスZsh(プラス側)、Zsl(マイナス側)が存在する。
【0025】
フィールド機器100では、電源回路・制御回路等120とセンサ回路130との並列回路が、電流出力回路110と直列で端子部を介してループ配線に接続されており、電流出力回路110がプラス側に配置されている。
【0026】
本実施形態では、ダイオード140は、センサ回路130が配置されているマイナス側の端子部だけに接続する。具体的には、端子部内のセンサ回路130と直接接続する配線経路上にダイオード140を配置する。このとき、ダイオード140は、コンデンサClよりもノイズ発生側に接続する。すなわち、ダイオード140で整流されたノイズがコンデンサClに印加されるようにする。
【0027】
このようなフィールド機器100のループ配線に、コモンモードノイズVnが混入すると、経路Aについては、コンデンサChで除けないノイズ成分のうち、電流出力回路110のインピーダンスZaとセンサ回路130のプラス側のインピーダンスZshとで分圧されたノイズ成分がセンサ回路130のプラス側に印加される。
【0028】
すなわち、センサ回路130のプラス側に印加されるノイズをVnoizeとすると、Vnoize≒Zsh/(Zsh+Za)・Vnとなる。
【0029】
通常、電流出力回路110は、カレントミラー回路や定電流回路で実現され、一般に、Zaは100kΩ〜10kΩ程度のインピーダンスとなる。また、センサ回路130のプラス側のインピーダンスZshは、100kΩ程度であるため、センサ回路130に印加されるノイズは1/2程度になり、センサ回路130に与える影響は比較的小さくなる。
【0030】
経路Bについては、ダイオード140とコンデンサClにより整流されたノイズがセンサ回路130のマイナス側に印加される。すなわち、経路A、経路Bともノイズが直接センサ回路130に印加されることはない。
【0031】
例えば、図2(a)に示すように、コモンモードノイズVnを5Vpp、10kHzとし、コンデンサClを1μFの場合に、経路Bにダイオード140を接続しないときには、図2(b)に示すような振幅5Vのノイズがセンサ回路130に印加されるため、大きなノイズ電流が流れる。
【0032】
一方、図3(a)に示すように、経路Bにダイオード140を接続した場合には、センサ回路130に印加されるのは、図3(b)に示すような振幅の小さい交流ノイズとなるため、センサ回路130に与える影響は小さくなる。
【0033】
本図の例では、コモンモードノイズVnを5Vpp、10kHzとし、コンデンサClを1μF、ダイオード140の飽和電流を100nAとしている。ダイオード140の順方向電流は大きいため、コンデンサClの充電時間はごく短時間で、周期のほとんどは放電時間となり、このときに流れる電流は飽和電流となる。コモンモードノイズの周期は10kHzとしたため、飽和電流が流れる時間はほぼ100usとなる。コンデンサに一定の電流iがt時間流れるときのコンデンサの電圧変化Vは、V=1/C・i・tで得られるため、この場合、ノイズ振幅は0.15Vとなる。
【0034】
このように、本実施形態のフィールド機器100では、電流出力回路110とセンサ回路130とが直列に接続されている内部回路において、センサ回路130側の端子部にのみ整流素子を接続している。このため、一方の経路では、センサ回路130と電流出力回路110とで分圧されたノイズがセンサ回路130に印加され、他方の経路では、整流素子で整流されたノイズがセンサ回路130に印加されることになり、最低動作電圧を高くしたり、内部回路の耐圧を高くすることなくフィールド機器100のノイズ耐性を向上させることができる。整流素子は、ダイオードのみならず、バイポーラトランジスタやCMOSトランジスタを用いて構成してもよい。
【0035】
なお、図1に示した例では、電流出力回路110がプラス側に配置されていたため、マイナス側の端子部にダイオード140を接続していたが、図4に示すように、電流出力回路110がマイナス側に配置されている場合には、プラス側の端子部にダイオード140を接続すればよい。具体的には、端子部内のセンサ回路130と直接接続する配線経路上にダイオード140を配置する。
【0036】
また、図5に示すようにダイオード140と直列にインダクタを接続したり、フェライトビーズを接続するようにしてもよい。これにより、ノイズを低減する帯域を拡げ、ノイズ耐性を一層向上させることができる。具体的には、高い周波数帯域のノイズをインダクタで制限し、それより低い周波数帯域のノイズをダイオード140で制限する。また、ダイオード140とインダクタとを組み合わせることにより、大きなインダクタを用いることなくノイズを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
100…フィールド機器、110…電流出力回路、120…電源回路・制御回路等、130…センサ回路、140…ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7