(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フィルム表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が、0.15μm以下、かつヘーズが30%以下である、請求項1又は2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
プロピレン系重合体が、アイソタクチックメソペンタッド分率が92%以上、かつ灰分が50ppm以下のアイソタクチックポリプロピレンホモポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
1.二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、A層とB層が積層されてなる二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、A層が、プロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1系重合体20〜50質量%、及び1−ブテン系重合体0.1〜5質量%を含む樹脂組成物から形成され、B層が、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0020】
1−1.A層
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるA層は、フィルム表面層(スキン層)であって、剥離性を付与するために設けられる層である。
【0021】
A層は、プロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1系重合体、及び1−ブテン系重合体を含む樹脂組成物から形成される。
【0022】
(1)プロピレン系重合体
プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、少量のエチレンを共重合成分とするプロピレン−エチレン共重合体等が挙げられる。
【0023】
ホモポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーが好ましい。中でも、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が92%以上であることが好ましく、93%以上であるとより好ましい。さらに好ましくは、94%以上である。アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度である。アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が92%以上であれば、高い立体規則性成分により、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械特性を奏することができる。
【0024】
前記アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により測定できる。具体的には、高温型核磁気共鳴(NMR)装置、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500等を用いて、観測核
13C(125MH)、測定温度135℃、溶媒として、オルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))を用いて測定することができる。
【0025】
立体規則性度を表すアイソタクチックペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載が参照される。
【0026】
プロピレン−エチレン共重合体におけるエチレンの共重合比率としては、5質量%以下であることが好ましい。また、プロピレン−エチレン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、核剤(結晶化核剤)を含んでいても良い。核剤としては、特に限定されず、各種無機化合物、各種カルボン酸又はその金属塩、ジベンジリデンソルビトール系化合物、アリールフォスフェート系化合物、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と脂肪族モノカルボン酸アルカリ金属塩又は塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物、各種高分子化合物等のα晶核剤等が挙げられる。これらの結晶化核剤は単独の材料でも使用でき、また二種以上の材料を併用することもできる。
【0027】
上記プロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210に準じて測定できる。具体的には、温度230℃、荷重21.18Nの測定条件で、0.5〜25g/10分であることが好ましく、1〜15g/10分であることがより好ましく、2〜10g/10分であることがさらに好ましい。プロピレン系重合体のMFRが前記範囲にあると、押出成形に好適である。
【0028】
プロピレン系重合体中に含まれる重合触媒残渣等に起因する灰分は、微小異物(フィッシュアイ)を低減するため、可能な限り少ないことが好ましく、50ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、40ppm以下である。50ppm以下とすることにより、微小異物・欠点が顕著に低減され、電子部品用途に用いた際の汚染を低減できる。
【0029】
プロピレン系重合体の含有割合としては、A層を形成する重合体組成物(100質量%)中、45〜69.9質量%が好ましく、48〜69.5質量%がより好ましい。
【0030】
(2)4−メチルペンテン−1系重合体
4−メチルペンテン−1系重合体としては、例えば、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1を80〜92モル%程度と炭素数8、10、12又は20等の任意の長さのアルキル基を有するビニル系単量体2〜20モル%程度とを共重合させた、4−メチルペンテン−1共重合体等が挙げられる。具体的には、TPX(登録商標)RT31(三井化学(株)製)、TPX(登録商標)DX845(三井化学(株)製)、TPX(登録商標) MX004(三井化学(株)製)、TPX(登録商標)MX002(三井化学(株)製)等を挙げることができる。
【0031】
前記4−メチルペンテン−1系重合体の260℃におけるメルトフローレートの範囲は、5〜50g/10分(JIS K7210に準じ、温度260℃、荷重49.05N)であることが好ましい。より好ましくは、8〜30g/10分である。4−メチルペンテン−1系重合体のメルトフローレートは、例えば4−メチルペンテン−1と共重合させる4−メチルペンテン−1以外の単量体の種類や量によって、上記好ましい範囲に調整することができる。
【0032】
また、4−メチルペンテン−1系重合体の融点は、プロピレン系重合体との混合性の観点から、200〜240℃(DSC法)であることが好ましい。より好ましくは、210〜230℃である。4−メチルペンテン−1系重合体の融点は、例えば4−メチルペンテン−1と共重合させる4−メチルペンテン−1以外の単量体の種類や量によって、上記好ましい範囲に調整することができる。
【0033】
4−メチルペンテン−1系重合体の含有割合としては、A層を形成する重合体組成物(100質量%)中、20〜50質量%であり、25〜50質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。4−メチルペンテン−1系重合体の含有割合は、A層を形成する重合体組成物(100質量%)中、48質量%以下であることがより好ましい。4−メチルペンテン−1系重合体を、20〜50質量%含有させることにより、本発明のフィルムは、優れた剥離性を達成することができる。
【0034】
(3)1−ブテン系重合体
1−ブテン系重合体としては、例えば、1−ブテンの単独重合体、1−ブテンと他の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。他の炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等を挙げることができる。これらの他のα−オレフィンは、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、エチレン及び/又はプロピレンである。1−ブテン系重合体としては、1−ブテン由来の構成単位が30〜90%の共重合体が好ましい。具体的には、タフマーBL3450(三井化学(株)製)、タフマーBL3450M(三井化学(株)製)、タフマーXM7070(三井化学(株)製)等を挙げることができる。
【0035】
本発明における1−ブテン系重合体は、JIS K7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、5〜15g/10分の範囲にあるものが好ましく、6〜13g/10分の範囲にあるものが、より好ましい。
【0036】
1−ブテン系重合体の含有割合としては、A層を形成する重合体組成物(100質量%)中、0.1〜5質量%であり、好ましくは、0.5〜4質量%である。1−ブテン系重合体を0.1〜5質量%含有させることにより、得られるフィルムの層間剥離を防止することができる。
【0037】
また、A層を形成する樹脂組成物には、化学的な安定性を付与するため、熱安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。例えば、フェノール系、ヒンダードアミン系、フォスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系の熱安定剤及び酸化防止剤が挙げられる。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシ)ベンゼン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等を挙げることができる。より具体的には、Irganox(登録商標)1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))、Irganox(登録商標)1330(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)、Irgafos(登録商標)168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))が挙げられる。中でも、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、フェノール系とフォスファイト系との組み合わせ、フェノール系とラクトン系との組み合わせ、フェノール系とフォスファイト系とラクトン系の組み合わせが、プロピレン系重合体に化学的な安定性を付与する観点から好ましい。
【0038】
さらに、A層を形成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、有機及び/又は無機のすべり剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0039】
すべり剤としては、具体的には、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等脂肪族アミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、脂肪族モノグリセライド、脂肪族ジグリセライド、シリカ、アルミナ、シリコーン架橋ポリマー等が挙げられる。
【0040】
塩素捕獲剤としては、具体的には、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0041】
帯電防止剤としては、具体的には、アルキルメチルジベタイン、アルキルアミンジエタノール及び/又はアルキルアミンエタノールエステル及び/又はアルキルアミンジエタノールジエステル等が挙げられる。
【0042】
1−2.B層
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるB層は、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに優れた機械特性を付与するために設けられる層である。
【0043】
B層は、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される。当該プロピレン系重合体としては、例えば、A層と同様のプロピレン系重合体が挙げられる。A層を形成するために用いられるプロピレン系重合体と、B層を形成するために用いられるプロプレン系重合体は、同一でも異なってもよいが、接着性の観点から、同一であることが好ましい。
【0044】
また、B層を形成する樹脂組成物には、A層を形成する樹脂組成物に配合するものと同様の熱安定剤、酸化防止剤、すべり剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0045】
1−3.層構成
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層構成としては、A層とB層が積層された2層構造、A層/B層/A層の順に積層されてなる3層構造、A層及びB層のいずれとも異なるC層(例えば、エチレン変性アイソタクティックポリプロピレン樹脂(ランダムコポリマーやブロックコポリマー)、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピン等を含む組成物から形成される層)が、A層/B層/C層の順に積層されてなる3層構造等が挙げられる。積層時における成形性の観点からは、A層/B層/A層の3層構造が好ましい。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムがA層/B層/A層の順に積層されてなる3層構造を含む本発明の一態様において、B層の両側のA層は同一の組成物から形成されていてもよいし、上記の組成物の範疇に属するものの、成分組成において互いに異なる組成物から形成されていてもよい。
【0046】
1−4.フィルムの物性
本発明の二軸延伸ポプロピレンフィルムの総厚みは、3〜60μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは20〜50μmである。フィルムの総厚みが3〜60μmであることにより、機械特性及び延伸性に優れたフィルムを得ることができる。A層1層の厚みは、B層1層の厚みに対し、2〜10%であることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが2つ以上のA層を含有する場合、各A層の厚みは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0047】
本発明のフィルムの、剥離速度1000mm/分におけるテープ剥離力は、95mN/mm以下であることが好ましい。より好ましくは10〜90mN/mmである。当該テープ剥離力は、4−メチルペンテン−1系重合体の配合量により調節できる。
【0048】
また、本発明のフィルムは、フィルム表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が、0.15μm以下、0.005μm以上、かつヘーズが30%以下であることが好ましい。
【0049】
突出山部高さ(Rpk)とは、JIS B−0671−2:2002で、線形負荷曲線による高さ特性より計算される、粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さであって、フィルム表面の連続した起伏の影響を取り除きながら、被着体との接触に影響が大きい、突出した凸部、すなわち異常突出部の状態を、正確に判定することを可能とする指標である。
【0050】
当該突出山部高さ(Rpk)は、触針による接触式や可視光反射、レーザー光干渉による非接触式、走査プローブ顕微鏡(SPM/AFM)等による原子間力位相差測定等により測定することができる。
【0051】
このようなRpk値は、粗さ曲線のコア部の外にはみ出る異常突出部の平均高さを意味し、この値が大きいほど、フィルム表面の異常突出部が多い、すなわち、被着体に対する食いつきが大きく、剥離力が重くなる原因の固着が生じやすい形状であることを表す。この値が小さいと、異常突出部が少なく被着体への固着生じにくい突起山部が平滑なプラトー(丘陵)構造となり、セパレーターの表面として好ましい。
【0052】
ヘーズ値(曇り度)は、公知のヘーズメーター等を用いて測定することができる。ヘーズ値(曇り度)が高いフィルムは(一般的に内部ヘーズが低い薄いフィルムの場合には)、表面の粗さが粗い状態を示す。
【0053】
2.二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、A層とB層を積層し、二軸延伸することにより得られる。
【0054】
各層を形成する樹脂組成物は、公知の方法で混合して得ることができる。プロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1系重合体及び1−ブテン系重合体を混合する方法に特に制限はないが、例えば、上記重合体の重合粉又はペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法、上記重合体系の重合粉又はペレットを、混練機に供給し溶融混練してブレンド樹脂を得る方法等が挙げられる。ミキサー等にも特に制限はなく、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでも良い。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のいずれも用いることができる。溶融混練によるブレンド(メルトブレンド)法の方が、異なる樹脂を相溶混合させる効果が高いため、好ましい。溶融混練温度についても、良好な混練さえ得られれば、特に制限はないが、一般的には、200〜300℃の範囲が好ましく、230〜270℃がより好ましい。混練時の劣化を抑制するため、混練機に窒素等の不活性ガスをパージしてもよい。
得られたブレンド物を、公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることにより、各層を形成する樹脂組成物が得られる。
【0055】
二軸延伸方法としては、厚み斑・平面性が良好であるテンター法が好ましい。例えば、テンター法でも更に同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法とがあるが、いずれの方法でもよい。以下、逐次二軸延伸法を用いて、A層/B層/A層の層構成を有するポリプロピレンフィルムを製造する方法を例に取り、説明する。
【0056】
まず、前記のように調製した樹脂組成物を、230〜270℃で押出機にて溶融し、Tダイよりシート状に溶融押出する。A層及びB層を形成する樹脂組成物を、それぞれ押出機内にて溶融混練し、樹脂の合流装置を用いてA層/B層/A層の構成を形成する。該合流装置としては、樹脂を口金前のポリマー管内で合流する方法、口金の樹脂導入部に設けられた積層ユニットで合流するフィードブロック法、口金内で拡幅後に両樹脂を積層するマニホールド積層法等が例示されるが、特に限定されない。
【0057】
以上のようにして得られたA層/B層/A層の構成を有する積層シートを、20〜60℃にコントロールした、少なくとも1個以上の金属ドラム上に、エアーナイフにより密着させてシート状に成形し、キャスト原反シートを得る。
【0058】
次に、得られたキャスト原反シートに、逐次二軸延伸を施す。キャスト原反シートを100〜160℃に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4〜5倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。次いで、当該フィルムをテンターに導き、160℃以上の温度で幅方向に8〜10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取る。
【0059】
巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁して、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとすることができる。
【0060】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上述のとおり、剥離性に優れているため、剥離用のフィルムとして優れている。本発明の二軸延伸フィルムは、表面保護フィルム及び粘着テープ等に使用する剥離フィルム、剥離ライナー又はセパレータフィルム、ならびに複合材料製造時のキャリアー等として好適に使用される。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0062】
[測定方法及び評価方法]
実施例及び比較例における、各種測定方法及び評価方法は、次のとおりである。
【0063】
(1)プロピレン系重合体の230℃におけるメルトフローレート(MFR)
JIS K7210(1999)に従い測定した。
【0064】
(2)4−メチルペンテン−1系重合体の260℃におけるメルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従い測定した。
【0065】
(3)アイソタクチックメソペンタッド分率([mmmm])
プロピレン系重合体を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、アイソタクチックメソペンタッド分率([mmmm])を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:
13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH
3(mmmm)=21.7ppm
【0066】
(4)灰分
プロピレン系重合体の灰分は、ISO3451−1に準拠し、樹脂 1kgをるつぼに入れ、マッフル炉にて750℃で1時間溶融加熱した前後の重量より算出した。
【0067】
(5)融点
4−メチルペンテン−1系重合体の融点は、パーキン・エルマー社製、入力補償型DSC Diamond DSCを用い、以下の手順により算出した。
まず、4−メチルペンテン−1系重合体を2mg量りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットし、窒素流下0℃から280℃まで10℃/分の速度で昇温し、280℃で5分間保持、10℃/分で30℃まで冷却後、再び10℃/分で280℃まで昇温する際の吸熱ピークを融点とした。
【0068】
(6)フィルム厚みの評価
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの総厚みは、マイクロメーター(JIS B−7502)を用いて、JIS C−2151に準拠して測定した。
【0069】
(7)テープ剥離力
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに 日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNO.31B をローラーで貼付した後、25mm幅にカットしてサンプルを作製した。そのサンプルを、引っ張り試験機を用いて1000mm/minの速度で剥離し、剥離力を計測した。測定数は3とし、その平均値を採用した。
【0070】
(8)層間接着性
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに 日東電工(株)製ポリエステル粘着テープNO.31B をローラーで貼付し、荷重:5g/mm
2、温度:100℃の条件で30分エージングした後、それを25mm幅にカットしてサンプルを作製した。得られたサンプルを、引っ張り試験機を用いて1000mm/minの速度で剥離し、サンプルの剥離状態を以下の基準で評価した。
○:層間剥離なし
×:一部以上層間剥離
【0071】
(9)突出山部高さ(Rpk)
測定機:菱化システム社製 光干渉方式表面・層断面形状計測器 VertScan(登録商標)2.0
JIS B−0671-2:2002に規定されるコア部のレベル差(Rk)、突出山部高さRpk、突出谷部深さ(Rvk)のうち、コア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)を指標とした。
【0072】
(10)ヘーズ(曇り)度
日本電色社製 ヘーズメーター NDH−5000を用い、50mm×100mmにカットしたサンプルを測定した。測定数は3とし、その平均値を採用した。
【0073】
実施例1
プロピレン系重合体(プライムポリマー社製 RF1342B(MFR=3g/10分(荷重21.18N、230℃)、[mmmm]=94%、総灰分=25ppm))68部、4−メチルペンテン−1系重合体(三井化学(株)製 TPX(登録商標)MX002o(MFR=21g/10分 荷重49.05N 260℃、融点:224℃))30部、および及び1−ブテン系重合体(三井化学(株)製 タフマー(登録商標)BL3450(MFR=12g/10分 荷重21.18N 230℃、1−ブテン由来の構成単位:87%))2部をドライブレンドした。
【0074】
東洋精機社製ラボプラストミル(モデル4C150)に2軸押出機(ストランドダイ装備、L/D=25)を接続した試験機構成にて、得られたドライブレンド物をホッパーから投入し、最高温度250℃にて溶融混合した後、樹脂ストランドを生成させ、連続して水冷後ストランドカッターにてペレットを作製し、メルトブレンド(溶融混合)ペレットを得た。
【0075】
得られたメルトブレンドペレットを、直径50mmのGMエンジニアリング社製 単軸押出機 GM50にホッパーから投入し(A層)、一方、上記プロピレン系重合体のみを直径65mmのGMエンジニアリング社製 単軸押出機 GM65に投入して(B層)、250℃にて、マルチマニホールドダイ(幅300mm)からA層/B層/A層の構成となるようにシートとして押出したのち、冷却ドラム上でエアーナイフを用い空気圧で押しつけながら、冷却固化させ、キャスト原反シートを得た。
【0076】
次いで、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機 KARO IVを用いて、予熱温度162℃、予熱時間2分、延伸温度162℃、延伸速度100%/secの延伸条件、熱セット条件162℃、30secにて、得られたキャスト原反シートを、流れ方向(MD)に5倍、幅方向の延伸倍率を9倍延伸し、フィルム総厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0077】
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの各種物性を表1に示した。
【0078】
実施例2
A層を形成する樹脂組成物における各種重合体の配合量を、表1に示したとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0079】
得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0080】
実施例3
A層を形成する樹脂組成物における各種重合体の配合量を、表1に示したとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0081】
得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0082】
実施例4
1−ブテン系重合体として、三井化学(株)製 タフマー(登録商標)XM7070(MFR=7g/10分 荷重21.18N 230℃、1−ブテン由来の構成単位:34%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0083】
実施例5
4−メチルペンテン−1系重合体として、三井化学(株)製 TPX(登録商標)MX004(MFR=25g/10分 荷重49.05N 260℃、融点:228℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0084】
比較例1
A層を形成する樹脂組成物として、プロピレン系重合体を52部、4−メチルペンテン−1系重合体を48部とし、1−ブテン系重合体を使用しない以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0085】
比較例2
A層を形成する樹脂組成物における各種重合体の配合量を、表1に示したとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0086】
比較例3
A層を形成する樹脂組成物における各種重合体の配合量を、表1に示したとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0087】
比較例4
A層を形成する樹脂組成物における各種重合体の配合量を、表1に示したとおりに変えた以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの各種物性を表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例1〜5より、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、層間で剥がれることなく、剥離性に優れることが理解できる。
【0090】
一方、1−ブテン系重合体を配合しないと、得られたフィルムは、層間接着性に劣り(比較例1)、さらに、その配合量が過剰の場合は、剥離性に劣り、実用に耐えない(比較例2)。
【0091】
また、4−メチルペンテン−1系重合体の配合量が過剰の場合、表面性が悪化し、層間接着性に劣っていた(比較例3)。