【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動車用エアーホースは、NBR組成物よりなる内管と、CSM組成物よりなる外皮との2層構造である自動車用エアーホースにおいて、NBR組成物が次の(ア)及び(イ)を満たすものであることを特徴とする。
(ア)AN量が30〜50でありムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が50〜90である未加硫NBRが、該未加硫NBR100質量部に対して、加硫促進剤としてのチウラム系化合物0.5〜7.0質量部、4, 4' −ジチオジモルホリン0〜2.5質量部及びチアゾール系化合物2.0〜7.0質量部の存在下で加硫されたものである。
(イ)未加硫NBR100質量部に対して、分子量700〜2000の可塑剤が5〜50質量部配合されたものである。
【0010】
本発明によれば、加硫促進剤を上記のとおり特定することにより、NBR組成物よりなる内管の耐熱性の向上、特に熱による伸び減少の抑制を図ることができる。
また、可塑剤を上記のとおり特定することにより、NBR組成物よりなる内管の耐熱性の向上、特に熱による硬さ増大の抑制を図ることができる。
【0011】
本発明は、NBR組成物がさらに次の(ウ)を満たすものであることが好ましい。
(ウ)空気中での120℃×20日の熱老化試験後の物性として、硬さHS90以下、切断時伸びEB140%以上である。
【0012】
本発明における各要素の詳細、態様等を以下に説明する。なお、NBR以外の材料の配合量について記すときは、未加硫NBR100質量部に対する質量部である。
【0013】
<NBR組成物よりなる内管>
1.NBR
未加硫NBRのAN(アクリロニトリル)量を30〜50とするのは、30未満になると要求特性の耐油性に劣り、50を超えるとゴムとしての特性に劣るからである。AN量は、NBRの全体質量を100質量%としたときのアクリロニトリルの質量割合である。
未加硫NBRのムーニー粘度を50〜90とするのは、ホース製造時の押し出し性の観点からであり、50未満になると押し出し速度が速くなりすぎ、90を超えると押し出し速度が遅くなりすぎるからである。
【0014】
2.加硫薬品
2−1.加硫剤
加硫剤は、特に限定されず、硫黄、硫黄化合物、マレイミド類、有機加硫剤等を例示することができる。これらの一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。例えば、硫黄を用いる場合、その配合量は0.1〜1.0質量部が好ましい。
【0015】
2−2.加硫促進剤
加硫促進剤は、上記のとおり、チウラム系化合物と、チアゾール系化合物とを併用し、4, 4' −ジチオジモルホリンは併用しないか又は配合量を抑制して併用する。
【0016】
(1)チウラム系化合物としては、特に限定はされないが、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等を例示することができる。
チウラム系化合物の配合量を0.5〜7.0質量部とするのは、0.5質量部未満になると加硫不足となり、7.0質量部を超えるとブルームを起こして外観不良となるおそれがあるからである。より好ましくは0.5〜5.0質量部である。
【0017】
(2)4, 4' −ジチオジモルホリンの配合量を2.5質量部以下とするのは、2.5質量部を超えると耐熱性が劣るようになるからである。
【0018】
(3)チアゾール系化合物としては、特に限定はされないが、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N’−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等を例示することができる。
チアゾール系化合物の配合量を1.5〜7.0質量部とするのは、1.5質量部未満になると耐熱性が劣るようになり、7.0質量部を超えるとブルームを起こして外観不良となるおそれがあるからである。より好ましくは2.0〜5.0質量部である。
【0019】
3.可塑剤
可塑剤に分子量700〜2000のものを用いるのは、700未満になると可塑剤の揮発性が大きくなり、2000を超えると可塑剤の粘度が高くなり混練加工性等に劣るようになるからである。
可塑剤の配合量を5〜50質量部とするのは、5質量部未満になると硬さが過剰になり、50質量部を超えるとブルームを起こして外観不良となるおそれがあるからである。より好ましくは15〜40質量部である。
可塑剤の種類は、特に限定されないが、NBRに適応するSP値8.5〜10.5のアジピン酸系、エーテル系、エステル系、フォスフェート系等の組成からなるものを例示することができる。
【0020】
4.その他の配合材料
NBR組成物には、上記の配合材料に加えて、カーボンブラック、フィラー、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、充填材、軟化剤、受酸剤、着色剤、スコーチ防止剤等を適宜配合してもよい。
【0021】
5.120℃×20日の熱老化試験後の物性
「耐熱性が良い」とは、すなわち、熱老化後の硬さの変化(増大)や伸びの変化(減少)が小さいということである。空気中での120℃×20日の熱老化試験後の物性として、硬さHS90以下、切断時伸びEB140%以上であれば、十分に耐熱性が良いと評価することができ、好ましくは硬さHS60〜90、伸びEB150〜300%である。
より好ましくは、120℃×20日の熱老化試験において、硬さHSが試験前に50〜70、試験後に75〜90であり、切断時伸びEBが試験前に300〜800%、試験後に150〜250%である。
【0022】
<CSM組成物よりなる外皮>
CSM組成物の配合材料や物性については、特に限定されない。
【0023】
<自動車用エアーホースの製造方法>
自動車用エアーホースの製造方法は、特に限定されず、一般的に用いられている製造方法によることができる。例えば、NBR組成物よりなる内管を押出成形し、その内管の外周にCSM組成物よりなる外皮を押出成形した後、蒸気加硫、熱風加硫、電子線加硫等の各種加硫方法により加硫することができる。
【0024】
<自動車用エアーホース>
自動車用エアーホースとしては、PCVホース、ターボエアーホース、エミッションコントロールホース、バキュームブレーキホース等を例示することができる。