(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付手段(40)は,前記カバー本体(30)の前記一方の端部側において前記連結手段(15)が露出するように,前記カバー本体(30)を前記継手部(20)に固定する
請求項1に記載の配管継手カバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の配管継手カバーのように,配管の継手部の周囲を密閉することにより,この継手部からの流体の飛散を一応防止することができる。しかしながら,配管内を高圧流体(例えば1.0MPa以上)が流通している場合に,配管継手カバーによって継手部の周囲を密閉してしまうと,継手部が破壊されて流体が噴出すると同時に,このカバー自体も破壊されてしまうおそれがある。その結果,大きな衝撃を伴って,配管内の流体がその周囲全方位に飛散するという大事故に繋がる危険性があった。特に,配管内の流体が化学薬品であり,しかも高圧状態且つ高温状態にある場合には,配管継手カバーが損壊又は破壊されてしまったときの被害は極めて甚大なものとなる。また,特許文献1の配管継手カバーのように,カバー本体自体に小孔を設けてしまうと,高圧流体が継手部から噴出して配管継手カバーが衝撃を受けた際に,その小孔が損壊又は破壊の起点となる恐れもある。
【0007】
このように,従来の配管継手カバーは,配管の継手部の周囲を密閉することで,継手部から流体が飛散することをある程度抑制することができるが,配管内を高圧の流体が流通する場合に,カバー自体が損壊又は破壊されしまう危険があるという問題があった。
【0008】
また,配管の継手部はボルトとナットを用いて締め合わされているが,時間経過に伴ってボルトに緩みが生じることがある。このため,配管の継手部からの流体の漏洩や噴出を防止するために,定期的にボルトを締め直す必要がある。このような作業は,増し締めとも呼ばれる。しかしながら,従来の配管継手カバーは,配管の継手部全体を密閉するものであるため,ボルトの増し締めを行う際には,一旦,配管の継手部から配管継手カバーを取り外して,ボルト又はナットを露出させる必要があった。また,ボルトの増し締めが完了した後,配管継手カバーを配管の継手部を覆うように再度取り付け直す必要があった。このような配管継手カバーの付け外しの作業は非常に手間であり,ボルトの増し締め作業の負担を大きくするものである。また,ボルトの増し締め作業の負担が大きくなると,ボルトの緩み具合を確認する点検作業を行う頻度が低下するため,上述したように,継手部から流体が漏洩したり噴出したりする可能性が高まるという懸念もあった。
【0009】
このように,従来の配管継手カバーは,配管のフランジ部同士を連結しているボルトの増し締めを行う度に,取り外したり着け直したりする必要があり,増し締め作業の負担が大きくなるという問題があった。
【0010】
そこで,本発明は,配管の継手部から流体が漏洩・噴出した場合であっても,少なくとも配管継手カバーが損壊又は破壊されることを防止し,流体の飛散状態をコントロールして,流体の漏洩・噴出時の被害を最小限に抑えることを第1の目的とする。また,本発明は,配管の継手部の増し締めを簡単に行うことができるようにすることを第2の目的とする。本発明は,上記目的の少なくとも一つを達成するための手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは,従来発明の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,筒状のカバー本体によって配管同士の継手部の周囲を覆うとともに,このカバー本体の一端部を配管の継手部に固定するという構造を発案した。つまり,本発明では,筒状のカバー本体の一端部を,配管の管部ではなく,配管のフランジ部同士が連結した継手部に固定する。これにより,筒状のカバー本体の他端には,配管の管部から漏出した流体を排出可能な開口が形成される。このため,万が一,配管同士の継手部から流体が漏洩・噴出してしまった場合であっても,カバー本体の開口から,漏洩・噴出した流体が外部へと排出されることとなる。また,配管の継手部から高圧流体が漏洩・噴出した場合でも,配管継手カバー内の内圧を外部へと逃すことができるため,少なくとも配管継手カバーが損壊したり破壊されたりすることを防止できる。さらに,配管継手カバーが破壊されずに配管の継手部の周囲に留まり続けることで,流体の漏洩・噴出時の被害を最小限に抑えることが可能である。また,筒状のカバー本体の一端部を配管の継手部に固定することで,この端部側において,フランジ部同士を連結しているボルトやナットなどの連結手段を露出させることができる。従って,カバー本体を配管の継手部から取り外さなくても,ボルトの増し締めを行うことができるようになる。これにより,増し締め作業の負担が軽減される。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば,従来発明の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0012】
本発明の第1の側面は,配管継手カバー100に関する。
本発明の配管継手カバー100は,複数の配管10を連結した継手部20を覆うことができる。
配管10は,流体が流通する管部11と,管部11の先端に形成されたフランジ部12と,を有している。また,継手部20は,配管10のフランジ部12を突き合わせた状態で,ボルト13とナット14を含む連結手段15を介してフランジ部12同士を締め合わせることにより形成されたものである。
ここで,配管継手カバー100は,カバー本体30と取付手段40とを備える。
カバー本体30は,継手部20を収容可能な筒状の部材である。また,取付手段40は,カバー本体30の一方の端部を継手部20に固定するための手段である。取付手段40は,単一の部材によって構成することとしてもよいいし,複数の部材によって構成することとしてもよい。
そして,カバー本体30の他方の端部には,継手部20から漏出した流体を外部へと排出可能な開口50が形成されている。
【0013】
上記構成のように,本発明の配管継手カバーは,カバー本体30によって配管10同士の継手部20の周囲を覆うものであり,且つ,カバー本体30に開口50が形成されている。これにより,配管10の継手部20から高圧流体が漏洩・噴出した場合でも,配管継手カバー内の内圧を外部へと逃すことができるため,少なくとも配管継手カバーが欠損したり破壊されたりすることを防止できる。その結果,高圧流体が配管10の継手部20の周囲全方位に飛散するという事態を防止できる。また,カバー本体30に開口50を形成することで,漏洩又は噴出した高圧流体の排出方向を最も被害が少ない安全な方向にコントロールすることができる。つまり,配管10の管部11が延びる方向には,工場内の作業員が存在している可能性は低いと考えられるため,この管部11の延伸方向に沿って高圧流体が排出されるようにすることで,作業員に及ぶ危険を最小限に留めることができる。さらに,高圧流体の排出方向が予め判っていれば,作業員に対して注意喚起を行うことができるとともに,流体の漏洩・噴出時の対策を取りやすくなる。従って,本発明の配管継手カバーによれば,配管10同士の継手部20から流体の漏洩・噴出した際の被害を最小限に抑えることができる。
【0014】
本発明の配管継手カバーにおいて,取付手段40は,カバー本体30の一方の端部側において連結手段15が露出するように,カバー本体30を継手部20に固定することが好ましい。ここで,連結手段15が露出した状態とは,配管10の継手部20にカバー本体30を取り付けた後であっても,トルクレンチなどの道具を利用してボルト13やナット14の増し締めを行うことができる状態を意味する。
【0015】
上記の構成のように,連結手段15が露出するようにカバー本体30が継手部20に固定されているため,カバー本体30を継手部20から取り外さなくても,ボルト13やナット14の増し締めを行うことができるようになる。従って,逐一,カバー本体30を継手部20から取り外す必要がなくなるため,増し締め作業の負担を軽減することができる。
【0016】
本発明の配管継手カバーにおいて,取付手段40は,側面当接部41,中継部42,起立部43,44,及びカバー取付部45を有することが好ましい。
側面当接部41は,連結手段15が嵌め込まれる嵌合孔41aを有する。この側面当接部41は,嵌合孔41aに連結手段15が嵌め込まれた状態で,フランジ部12の側面12aに当接する部分である。中継部42は,側面当接部41に連結しており,フランジ部12の周面12bに沿って延出する部分である。起立部43,44は,中継部42に連結しており,フランジ部12の周面12bに対して起立する部分である。カバー取付部45は,起立部43,44に連結しており,配管10の管部11が延びる方向に向かって延出する部分である。カバー取付部45には,カバー本体30の一方の端部が固定される。
【0017】
上記構成のように取付手段40を構成することで,カバー本体30の一方の端部側において連結手段15を露出させつつ,カバー本体30の他方の端部に開口50を形成することができる。特に上記構成によれば,取付手段40によって,カバー本体30を一方の端部のみにおいて配管10の管部11に固定させることができるため,カバー本体30の他方の端部に形成される開口50を広く開放することができる。これにより,配管継手カバーが欠損したり破壊されたりすることをより確実に防止できる。さらに,連結手段15(ボルト又はナットの一方)は,前記側面当接部41の嵌合孔41aに嵌め込まれて拘束されているため,増し締めの際に回転することがない。これにより,連結手段15(ボルトとナット)の空回りが防止されるため,より確実に増し締め作業を行うことができる。
【0018】
本発明の第2の側面は,配管継手部の流体飛散防止装置に関する。
本発明の流体飛散防止装置は,複数の配管10を連結した継手部20から流体が飛散することを防止するための装置である。
本発明の流体飛散防止装置は,継手部20を覆う配管継手カバー100と,流体を吸い込んで外部へと排出可能な局所排気装置200と,を備える。
配管継手カバー100は,継手部20を内部に収容可能なカバー本体30を有する。配管継手カバー100は,継手部20を収容可能な筒状のカバー本体30と,このカバー本体30の一方の端部を継手部20に固定するための取付手段40と,を備える。また,カバー本体30の他方の端部には,継手部20から漏出した流体を外部へと排出可能な開口50が形成されている。
また,局所排気装置200は,配管継手カバー100の開口50から排出された流体を吸い込むことのできる位置に配置されている。
【0019】
上記構成のように,配管継手カバー100のカバー本体30に開口50を形成することで,漏洩又は噴出した高圧流体の排出方向を,最も被害が少ない安全な方向にコントロールすることができる。また,高圧流体の排出方向をコントロールすることで,高圧流体の排出される方向を容易に把握できるため,その開口50の先に局所排気装置200を配置するという対策を取りやすくなる。従って,配管10の継手部20から高圧流体が漏洩・噴出した場合であっても,開口50から排出される流体のほぼ全量を局所排気装置200によって吸い込んで外部へと排出することできるようになる。これにより,漏洩事故時の危険性をさらに低くすることができる。
【0020】
本発明の第3の側面は,配管継手カバーの取付方法に関する。
本発明の取付方法は,複数の配管10を連結した継手部20を覆うように,配管継手カバー100を取り付ける方法である。
本発明の取付方法は,筒状のカバー本体30の一方の端部側において連結手段15が露出するように,カバー本体30の一方の端部を,取付手段40を介して,継手部20に固定する工程を含む。
【0021】
上記のようにして,配管継手カバー100を配管10の継手部20に取り付けることで,この継手部20から流体の漏洩・噴出した際の被害を最小限に抑えることができる。また,上記のようにして,カバー本体30を配管10の継手部20に取り付けることで,カバー本体30を継手部20から取り外さなくても,ボルト13やナット14の増し締めを行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,配管の継手部から流体が漏洩・噴出した場合であっても,少なくとも配管継手カバーが損壊又は破壊されることを防止し,流体の飛散状態をコントロールして,流体の漏洩・噴出時の被害を最小限に抑えることができる。また,本発明によれば,配管の継手部の増し締め作業を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0025】
[1.配管継手カバー]
図1〜
図3を参照して,本発明の配管継手カバーの実施形態について説明する。
図1は,配管継手カバーを取り付ける前の配管の状態を示している。また,
図2は,複数の配管の継手部に配管継手カバーを取り付けた状態を示している。また,
図3は,配管継手カバーの取付手段の具体的構造を示した模式図である。
【0026】
図1及び
図2に示されるように,配管継手カバー100は,2つの配管10同士を連結した継手部20を覆って保護するためのカバーとして用いられる。本発明の配管継手カバー100は,流体が流通する一般的な配管10に取り付けることができる。配管10の形状は特に限定されない。配管10は,直線状のものであってもよいし,曲線的に折れ曲がっているものであってもよい。
図1に示されるように,配管10は,それぞれ,流体が流通する管状の管部11と,その管部11の先端に形成されたフランジ部12とを有している。フランジ部12は,管部11よりもその直径が大きく形成されている部分である。
【0027】
2つの配管10は,それぞれのフランジ部12の端面を突き合わせた状態で,連結手段15によって連結される。具体的に説明すると,連結手段15は,ボルト13とナット14とを含む。連結手段15は,その他にワッシャなどの公知の部材を含んでいてもよい。また,各フランジ部12には,複数のネジ孔16が形成されている。このため,フランジ部12のネジ孔16の位置を合わせた状態で,各フランジ部12の各ネジ孔16にボルト13を差し込み,ボルト13の端部にナット14を螺合させる。これにより,ボルト13とナット14とによるネジ作用(締め付け作用)によって,フランジ部12同士が連結される。なお,連結手段15としては,公知のものを用いることができる。例えば,
図1に示した一例では,ボルト13は,六角形状の頭部と,この頭部から延出するネジ山とから構成されており,このネジ山の先端にナット14を螺合させることができるようになっている。また,
図1に示した他の例では,ボルト13は,ネジ山からなる棒状に形成されている。このため,棒状のボルト13の両端に,それぞれ,ナット14を螺合させることができるようなっている。このように,連結手段15は,ボルト13とナット14とによるネジ作用(締め付け作用)によって,フランジ部12同士が連結させることが可能なものであればよい。
【0028】
連結手段15を介して配管10同士を連結すると,それぞれの管部11内を連続的に流体が流れるようになる。
図1において,流体の流れ方向は,実線の矢印Fで示している。
図1に示されるように,2つのフランジ部12を合掌状態で連結した部分が,配管10同士の継手部20となる。
【0029】
配管10内を流通する流体は,特に制限されない。流体は,気体であってもよいし,液体や,微粉体などであってもよい。ただし,配管10を流通する流体が高圧状態のものである場合,2つのフランジ部12を連結して形成した継手部20から,流体が漏洩したり噴出したりする可能性が高まる。具体的には,ボルト13とナット14の締め付け状態が緩んだときに,フランジ部12同士の隙間から,流体が漏洩・噴出しやすくなっている。例えば,
図1では,配管10同士の継手部20から流体が噴出する可能性のある方向を,破線の矢印Sで示している。
図1に示した矢印Sの方向には,作業員などが存在している可能性があるため,流体が飛散した場合の危険性が非常に高い。特に,流体が高圧状態且つ高温状態にある場合には,危険性がさらに増加する。このため,少なくとも,矢印Sの方向に向かって流体が飛散することを防止する必要がある。そこで,このような方向への流体の飛散を防止するために,本発明の配管継手カバー100が用いられる。
【0030】
図2及び
図3に示されるように,配管継手カバー100は,カバー本体30と取付手段40とを備えている。カバー本体30は,配管10同士の継手部20を内部に収容可能な筒状の部材である。また,取付手段40は,筒状のカバー本体30の一方の端部を,配管10の継手部20に固定して取り付けることが可能な構造を有している。すなわち,取付手段40は,筒状のカバー本体30の一方の端部を,配管10の管部11ではなく,配管10の継手部20に対して固定することのできる構造となっている。
【0031】
図2及び
図3に示されるように,筒状のカバー本体30を,一方の端部において配管10の継手部20に固定することで,他方の端部には開口50が形成される。つまり,カバー本体30の内径は,配管10の管部11の外径,及びフランジ部12の外径よりも大きくなっている。このため,カバー本体30と配管10との間に,開口50が形成されることとなる。配管10同士の継手部20から流体が漏洩・噴出した場合,この流体は,カバー本体30の開口50を通って外部へと排出される。
【0032】
図2には,配管継手カバー100を配管10に装着した状態において,この配管10の継手部20から噴出した流体が外部へと排出される経路の例が,破線の矢印Sで示されている。
図2に示されるように,継手部20から噴出した流体は,開口50を通じて外部へと排出される。このときの流体の排出経路(飛散方向)は,配管10の管部11の延伸方向と同じ方向となる。この配管10の延伸方向は,作業員などが存在しにくい方向である。このため,流体が開口50から排出されたとしても,作業員などに対して被害が及びにくい。従って,開口50を有する配管継手カバー100を配管10に装着することで,
図1に示した矢印Sのように,流体が作業員の存在する方向に向かって直接的に噴出するような事態を効果的に防止できる。
【0033】
また,
図2に示されるように,配管継手カバー100を配管10に取り付けた状態において,配管10のフランジ部12同士を連結している連結手段15(ボルト13及び/又はナット14)は露出している。このため,作業員は,配管継手カバー100を取り外さなくても,この連結手段15に容易にアクセスすることができる。これにより,作業員は,配管継手カバー100を配管10に取り付けた状態においても,トルクレンチなどの道具を利用して,ボルト13やナット14の増し締めを簡単に行うことができる。また,ボルト13等の増し締め作業を行う頻度を増やすことができるため,ボルト13等の緩みを原因とした流体の漏出・噴出事故をより確実に防止できる。
【0034】
続いて,
図2及び
図3を参照して,配管継手カバー100の具体的な構成について説明する。
図3は,配管継手カバー100の断面形状を示している。ただし,
図3において,配管10については断面ではなくその外観形状を概念的に示している。
【0035】
図2及び
図3に示されるように,配管継手カバー100は,筒状のカバー本体30を備える。
図2に示した例において,カバー本体30は,略円筒状に形成されている。カバー本体30の形状は,円筒状に限られず,四角筒状や,五角筒状,その他多角筒状に形成することも可能である。ただし,内部の圧力を均等に分散することができるという観点から,カバー本体30は,円筒状であることが特に好ましい。筒状のカバー本体30の内部には,配管10の管部11及びフランジ部12が収容される。このため,少なくとも,カバー本体30の内径は,配管10の管部11及びフランジ部12の外径よりも大きく設定されている。
【0036】
また,本発明の配管継手カバー100は,高圧(例えば1.0MPa以上)且つ高温(例えば100℃以上)の流体の飛散を防止するための用途で用いることが好ましい。このため,カバー本体30は,少なくとも1.0MPaの圧力及び100℃の温度に耐えることのできる耐圧性(耐衝撃性)及び耐熱性を有する部材で構成されていることが好ましい。例えば,カバー本体30は,合成樹脂(プラスチック)製,金属製,又はガラス製とすることができる。
図2に示された例において,カバー本体30は,透明(又は半透明)な剛性の高い合成樹脂材料によって形成されている。例えば,カバー本体30は,ポリカーボネート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリプロピレン系樹脂,ポリアセタール系樹脂,及びフッ素系樹脂などから選択された材料によって形成することができる。特に,透明性が高く耐圧性及び耐熱性に優れているという観点から,カバー本体30をポリカーボネート系樹脂によって形成することが好ましい。カバー本体30が,その内部を視認可能な程度に透明(又は半透明)であることにより,配管10から漏出した流体の状況を目視で確認しやすくなる。また,カバー本体30は,例えば,鋼鈑製,銅製,ステンレス製,アルミニウム製,又はその他合金製などの金属製とすることも可能である。
【0037】
なお,図示は省略するが,筒状のカバー本体30は,配管10への取り付けやすさを考慮して,一端から他端に亘ってスリット(切り込み)が形成されていてもよい。また,カバー本体30は,半割筒体に二分割されており,2つの半割筒体を連結させて,一つのカバー本体30を形成するものであってもよい。また,カバー本体30にスリットを形成したりカバー本体30を2つの半割筒体から構成する場合,カバー本体30にラグやフランジを形成して,このラグやフランジをネジ止めするようにしてもよい。このように,カバー本体30は,配管10の継手部20に取り付けられた状態において,筒状をなすものであればよい。これにより,既存に配管10の継手部20に対して,カバー本体30を取り付けやすくなる。
【0038】
図3に示されるように,筒状のカバー本体30は,取付手段40を介して,配管10同士の継手部20に固定されている。
図3に示されるように,取付手段40は,側面当接部41と,中継部42と,起立部43,44と,カバー取付部45とを有している。本実施形態において,「側面当接部」は,押えリング41に相当する。また,「中継部」は,複数の継ぎ板42に相当する。また,「起立部」は,ベースリング43と継ぎリング44に相当する。さらに,「カバー取付部」は,パンチングプレート45に相当する。さらに,取付手段40は,ボルト46,ナット47,固定用プレート48,押えボルト49を有するものであってもよい。以下では,取付手段40の構成について,具体的な部材を例に挙げて説明する。
【0039】
図3に示されるように,押えリング41は,連結された2つのフランジ部12のうち,一方のフランジ部12の側面12aに当接される部材である。押えリング41は,フランジ部12の側面12aに当接するものであり,略リング状(輪状)に形成されている。押えリング41の中央孔には,配管10の管部11が挿通される。さらに,押えリング41には,フランジ部12の側面12aに取り付けられた連結手段15(ボルト13又はナット14)に対応する位置に,この連結手段15が嵌め込まれる複数の嵌合孔41aが形成されている。例えば,フランジ部12の側面12aに六角形状のナット14が取り付けられている場合,押えリング41に形成された嵌合孔41aも六角形状となる。そして,六角形状のナット14は,押えリング41の嵌合孔12aに嵌め込まれた状態において,回転不能であることが好ましい。このように,ナット14を押えリング41の嵌合孔41aによって回転不能に拘束することで,反対側のボルト13を回転させた際に,このボルト13の回転に伴ってナット14が回転してしまうことを防止できる。これにより,連結手段15(ボルトとナット)の空回りが防止されるため,より確実に増し締め作業を行うことができる。なお,押えリング41の嵌合孔41aは,ボルト13やナット14などの連結手段15に対応する形状であればよく,例えばナット14が五角形であれば嵌合孔41aも五角形とすればよい。押えリング41は,金属材料やプラスチック材料によって形成することができる。
【0040】
図3に示されるように,押えリング41には,複数の継ぎ板42が連結されている。継ぎ板42は,前述した押えリング41と後述するベースリング43とを中継するための板部材である。継ぎ板42は,押えリング41とベースリング43とに対し,溶接などによって一体的に接合されていることが好ましい。複数の継ぎ板42は,フランジ部12の周面12bに沿って延出している。継ぎ板42は,フランジ部12の周面12bに当接していてもよいし,直接接触していなくてもよい。なお,
図3では,複数の継ぎ板42の一部を点線で示している。本実施形態において,複数の継ぎ板42は,フランジ部12の周面12bの周方向に間隔を空けて配置されている。このように,継ぎ板42は,フランジ部12同士の隙間を完全に覆うものでないことが好ましい。複数の継ぎ板42が,周方向に間隔をおいて間欠的に配置されていることで,各継ぎ板42の間を,フランジ部12同士の隙間から噴出した流体が通過するようになる。これにより,フランジ部12同士の隙間から噴出した流体が,筒状のカバー本体30の内部へと流れこむようになる。継ぎ板42は,押えリング41と同様に,金属材料やプラスチック材料によって形成することができる。
【0041】
図3に示されるように,複数の継ぎ板42には,ベースリング43が連結されている。ベースリング43は,カバー本体30を取り付けるスペース(空間)を確保するための部材である。ベースリング43は,略リング状(輪状)に形成された部材であり,その中央孔には配管10のフランジ部12が挿通される。このため,ベースリング43は,フランジ部12の周面12bに対して起立した状態となる。ベースリング43の中央孔の内周部分は,フランジ部12の周面12bに当接していることが好ましい。ベースリング43の内周部分がフランジ部12の周面12bに当接していることで,カバー本体30の一方の端部側の開口を塞ぐことができる。これにより,カバー本体30は,他方の端部側の開口50のみが開放されることとなる。従って,フランジ部12同士の隙間から流体が噴出した場合であっても,カバー本体30の一方の端部側からは流体が排出されにくくなり,カバー本体30の他方の端部側の開口50を通って流体が排出されやすくなる。このような観点から,ベースリング43の内周部分は,フランジ部12の周面12b全体に亘って当接していることが好ましい。ベースリング43は,金属材料やプラスチック材料によって形成すればよい。
【0042】
また,
図2及び
図3に示されるように,ベースリング43には,複数の固定用プレート48が連結されている。この固定用プレート48は,
図3に示されるように,継ぎ板42とは反対の方向に向かって,ベースリング43から延出するものである。例えば,固定用プレート48は,ベースリング43に溶接などによって一体的に接合されている。各固定用プレート48には,ネジ孔が形成されており,このネジ孔に押えボルト49が差し込まれる。
図3に示されるように,押えボルト49は,フランジ部12の周面12bに対して垂直となるように,固定用プレート48のネジ孔に差し込まれるものである。そして,押えボルト49は,固定用プレート48に保持された状態で,その先端がフランジ部12の周面12bに当接する。これにより,押えボルト49による押圧力によって,ベースリング43を,フランジ部12の周面12bに対して安定的に固定することができる。固定用プレート48と押えボルト49は,それぞれ2対以上設けられていればよいが,例えばフランジ部12の円周に対して90度間隔で4対設けられていることが好ましい。なお,固定用プレート48と押えボルト49は,取付手段40を継手部20に固定するのを補助するための部材であり,必須の部材ではない。このため,固定用プレート48と押えボルト49は省略することも可能である。
【0043】
このように,本実施形態では,押えリング41,複数の継ぎ板42,ベースリング43,及び複数の固定用プレート48が溶接されることで,1つの一体的な部材として構成されている。ここで,
図3に示されるように,互いに連結された2つのフランジ部12のうち,一方のフランジ部12の側面12aに押えリング41が固定されている。そして,複数の継ぎ板42は,一方のフランジ部12から,フランジ部12同士の継ぎ目を越えて,他方のフランジ部12まで延びるように形成されている。このため,ベースリング43は,互いに連結された2つのフランジ部12のうち,押えリング41が固定されていない他方のフランジ部12の周面12b上に位置している。このように継ぎ板42の長さを調節することで,フランジ部12同士の継ぎ目から流体が噴出した場合であっても,この流体が複数の継ぎ板42の間を通過して,カバー本体30の内部に流れ込み,カバー本体30の開口50から適切に排出されるようになる。
【0044】
また,
図3に示されるように,ベースリング43は,フランジ部12の周面12bに当接するものであり,フランジ部12の周面12bを越えて連結手段15(ボルト13及び/又はナット14)側に突出したものではないことが好ましい。ベースリング43が連結手段15側に突出していると,トルクレンチなどの道具を利用して連結手段15の増し締め作業が行いにくくなる。これに対し,
図3に示されるように,ベースリング43が連結手段15側に突出しないように,継ぎ板42の長さを調節することで,作業員が連結手段15にアクセスしやすくなり,増し締め作業が容易になる。
【0045】
図3に示されるように,ベースリング43には,継ぎリング44が重ねて連結されている。継ぎリング44は,ベースリング43と同様に,カバー本体30を取り付けるスペース(空間)を確保するための部材である。継ぎリング44は,略リング状(輪状)に形成された部材であり,その中央孔には配管10のフランジ部12が挿通される。このため,継ぎリング44は,ベースリング43と同様に,フランジ部12の周面12bに対して起立した状態となる。継ぎリング44は,ベースリング43の内側(押えリング41が存在している側)に重ね合わされていてもよいし,ベースリング43の外側(押えリング41が存在していない側)に重ね合わされていてもよい。継ぎリング44とベースリング43の連結には,例えば,ボルト46とナット47を利用すればよい。具体的には,継ぎリング44とベースリング43には,互いに対応する複数の位置に,ボルト46の差込孔を形成しておけばよい。これにより,ボルト46とナット47を利用して,継ぎリング44とベースリング43を連結できる。このように,本実施形態において,継ぎリング44とベースリング43は,分離可能な別部材として構成されている。
【0046】
図3に示されるように,継ぎリング44には,筒状のパンチングプレート45が連結されている。例えば,継ぎリング44とパンチングプレート45は,溶接によって一体的に接合されていることが好ましい。パンチングプレート45は,カバー本体30を取り付けるための部材である。このため,パンチングプレート45は,カバー本体30と同様に,筒状に構成される。
図3に示されるように,パンチングプレート45は,配管10の管部11が延びる方向に向かって延出している。より具体的には,パンチングプレート45は,押えリング41が取り付けられた配管10の管部11が延びる方向と同じ方向に延出するものである。このため,パンチングプレート45も,押えリング41が取り付けられていない配管10側には突出しないようになっている。パンチングプレート45は,金属材料やプラスチック材料によって形成すればよい。
【0047】
図2の斜視図に示されるように,パンチングプレート45には,規則的に並ぶ多数の小孔を形成するパンチング加工が施されている。このように,カバー本体30を取り付ける部材(カバー取付部)としてパンチング加工が施されたパンチングプレート45を採用することで,カバー本体30を取り付けやすくなると同時に,カバー本体30内部の状態を視認しやすくなる。つまり,
図3に示されるように,パンチングプレート45に対してカバー本体30を取り付ける際には,パンチングプレート45の小孔とカバー本体30に形成された差込孔とにボルト46を差し込み,このボルト46にナット47を螺合させればよい。これにより,ボルト46とナット47を利用して,パンチングプレート45とカバー本体30を簡単に連結することができる。また,パンチングプレート45には多数の小孔が形成されているため,カバー本体30の取り付け位置を適宜調節しやすくなる。さらに,カバー本体30が透明部材で形成されている場合,パンチングプレート45の小孔を通じて,カバー本体30内部の様子を視認しやすくなる。
【0048】
また,
図3に示されるように,カバー本体30をパンチングプレート45に取り付ける際には,カバー本体30がフランジ部12同士の継ぎ目(隙間)の延長線上に位置するように取り付けることが好ましい。つまり,配管10内の流体はフランジ部12同士の継ぎ目から噴出しやすい。このため,フランジ部12の継ぎ目の延長線上にカバー本体30を設置することで,この継ぎ目から噴出した流体がカバー本体30に適切に流れ込むようになる。
【0049】
上記した構成のように,本実施形態において,取付手段40は,押えリング41,複数の継ぎ板42,ベースリング43,継ぎリング44,及びパンチングプレート45を含んで構成される。
図3に示されるように,取付手段40は,互いに連結された2つのフランジ部12のうち,一方のフランジ部12に対して固定され,他方のフランジ部12側に向かって一旦延出し,再び,一方のフランジ部12側に向かって戻ってくるような形状となっている。このため,
図2及び
図3に示されるように,取付手段40を介して,カバー本体30を配管10の継手部20に取り付けることで,フランジ部12同士を連結している連結手段15(ボルト13及び/又はナット14)が露出するようになる。
【0050】
なお,図示は省略するが,取付手段40を構成する各種部材41〜45は,配管10への取り付けやすさを考慮して,一端から他端に亘ってスリット(切り込み)が形成されていてもよい。また,各種部材41〜45は,二以上の部材に分割されており,複数の部材を連結して構成されていてもよい。また,例えば,複数の部材を連結する場合,ラグやフランジを形成して,このラグやフランジをネジ止めするようにしてもよい。
【0051】
以上,取付手段40の構成について,好ましい実施形態を例に挙げて説明した。ただし,取付手段40は,カバー本体30の一方の端部側において連結手段15が露出するように,カバー本体30を配管10の継手部20に固定可能なものであれば,上記した構成に限定されない。また,
図2及び
図3に示されるように,カバー本体30及び取付手段40は,配管10のフランジ部12から突出しないものであることが好ましい。ただし,カバー本体30を配管10に取り付けた状態において,トルクレンチなどの道具を利用してボルト13やナット14の増し締めを行うことができれば,カバー本体30及び取付手段40は,配管10のフランジ部12から多少突出していてもよい。
【0052】
[2.流体飛散防止装置]
図4は,配管継手部の流体飛散防止装置の概要を示している。
図4に示されるように,流体飛散防止装置は,配管継手カバー100と局所排気装置200とを備えている。ここで,配管継手カバー100は,
図2及び
図3を参照して説明したものと同じ構造となっている。また,局所排気装置200は,配管継手カバー100の開口50から排出された流体を吸い込むことのできる位置に配置されている。例えば,局所排気装置200は,配管継手カバー100の開口50付近に,少なくとも1機設けられる。また,局所排気装置200は,配管継手カバー100の開口50付近に,複数機設けることも可能である。
【0053】
局所排気装置200は,例えば,気体や微粉体をフード210などから吸い込んで,ダクト220などを通じて外部へと排気することのできる換気装置である。
図4に示されるように,局所排気装置200は,配管継手カバー100の開口50の近傍に配置されており,この開口50から排出された流体を吸引可能なものであることが好ましい。このように,配管継手カバー100から排出された流体を局所排気装置200によって吸引して,例えば工場の外部へと排出することで,配管10から漏洩・噴出した流体によって,工場内部の環境が汚染されることを未然に防止できる。
【0054】
局所排気装置200は,
図4に示したようなキャノピー型のものに限られず,例えば,スロット型や,ルーバ型,グリット型などの公知のタイプのものを採用することができる。
【0055】
流体飛散防止装置は,その他に,配管継手カバー100の開口50からの流体の排出を検出するためのセンサ(図示省略)を備えていてもよい。この場合,このセンサによって流体排出が検出されたときに,局所排気装置200を作動させるか,若しくは既に作動している局所排気装置200の吸気能力をハイパワーとすることが好ましい。これにより,配管10から流体が漏洩・噴出した緊急時に,その流体が飛散することがないように迅速に対応することができる。
【0056】
本発明の流体飛散防止装置においては,配管継手カバー100の構造によって,配管10から漏洩・噴出した流体の排出方向及び排出位置がコントロールされている。このため,漏洩・噴出した流体を吸引するために,局所排気装置200やそのセンサ(図示省略)を設ける位置を特定しやすい。つまり,配管継手カバー100に開口50が形成されているため,この配管継手カバー100は損壊や破壊されにくくなっており,しかもこの開口50から流体が排出されることを容易に把握できる。従って,配管継手カバー100の開口50の先に,局所排気装置200の吸引部(フード210)やその起動センサを設けておくことで,この開口50から排出される流体を,迅速かつ効率的に吸引して外部へと排出することができる。
【0057】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。