(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るハイブリッド自動車の車両制御装置100の構成を
図1に示す。車両制御装置100は、内燃機関であるディーゼルエンジン10と、三相交流電力によって動作する回転電機であるダブルロータモータ20とを動力源として備えている。ダブルロータモータ20は、ディーゼルエンジン10の駆動軸11に機械的に連結されて駆動軸11と一体的に回転する第1回転子のインナーロータ21と、インナーロータ21の径方向外側に配置されてアーム12及びディファレンシャル13を介して車軸14に機械的に連結される第2回転子のアウターロータ22と、アウターロータ22の径方向外側に配置されてモータケーシング24に固定されるステータ23とを有している。尚、インナーロータ21は円柱状の形状を有し、アウターロータ22及びステータ23は円環状の形状を有し、
図1にはそれらの断面が模式的に示されている。
【0011】
インナーロータ21には第1コイル25が設けられており、ステータ23には第2コイル26が設けられている。また、アウターロータ22の内周側には、インナーロータ21の第1コイル25と対向するように第1磁石27が設けられており、アウターロータ22の外周側には、ステータ23の第2コイル26と対向するように第2磁石28が設けられている。
【0012】
また、車両制御装置100は、直流電力を充放電可能な電力供給手段であるバッテリ30と、バッテリ30から出力される直流電力を三相交流電力に変換可能であると共に三相交流電力を直流電力に変換可能な第1電力変換器31及び第2電力変換器32とを備えている。第1電力変換器31から出力される三相交流電力は、ステータ23の第2コイル26に供給される。一方、第2電力変換器32から出力される三相交流電力は、固定ブラシ41及び回転リング42によって構成されるスリップリング機構40を介して駆動軸11に沿って配線される図示しない導電線に伝達され、この導電線を通ってインナーロータ21の第1コイル25に供給される。第1電力変換器31及び第2電力変換器32と、スリップリング機構40とはそれぞれ、制御手段であるコントロールユニット60によって制御される。
【0013】
ディーゼルエンジン10には、ディーゼルエンジン10から排出される排気ガスが流通する排気管50が接続されており、排気管50には、排気ガスに含まれるPMを捕捉するとともに炭化水素及び一酸化炭素を酸化するPt触媒が担持されたフィルタ部材であるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)51と、DPF51の前後の差圧を検出するための差圧検出手段である差圧センサ52とが設けられている。また、排気管50には、ディーゼルエンジン10とDPF51との間に、酸化触媒54が設けられている。さらに、排気管50には、酸化触媒54よりも上流側に、燃料である軽油を排気ガス中に噴射する噴射ノズル55が設けられている。差圧センサ52は、コントロールユニット60に電気的に接続され、噴射ノズル55による軽油の噴射動作は、コントロールユニット60により制御される。
【0014】
次に、この実施の形態1に係る車両制御装置100を搭載したハイブリッド自動車の動作について説明する。
このハイブリッド自動車がディーゼルエンジン10によって走行する場合、ディーゼルエンジン10の動力によってインナーロータ21が回転し、インナーロータ21とアウターロータ22との間に回転速度差が生じると、アウターロータ22の第1磁石27が発生させる磁界がインナーロータ21の第1コイル25に作用することによって第1コイル25中に誘導電流が流れ、この誘導電流と第1磁石27の磁界との相互作用によって、インナーロータ21とアウターロータ22との間にトルクが発生する。このトルクを受けてアウターロータ22が回転すると、アウターロータ22に連結されている車軸14が駆動されてハイブリッド自動車の走行が行われる。
【0015】
ハイブリッド自動車がディーゼルエンジン10によって走行する場合、ディーゼルエンジン10から排出された排気ガスは、排気管50を流通する。排気管50を流通する排気ガスがDPF51に流入すると、排気ガス中の被捕集物であるPMがDPF51に捕集されて、PMが除去された排気ガスがDPF51から流出する。DPF51に捕集されたPMの量が増加するとDPF51の前後の差圧が上昇するが、この差圧を差圧センサ52が検出し、この検出結果をコントロールユニット60に伝送する。コントロールユニット60には、DPF51の前後の差圧について上限値が予め設定されており、コントロールユニット60は、差圧センサ52による検出値と上限値とを比較する。差圧センサ52による検出値が上限値以上となったら、コントロールユニット60は、DPF51の再生を開始する。ここで、DPF51に捕集されたPMの量が増加するとDPF51の前後の差圧が上昇する相関関係があるので、差圧センサ52は、DPF51に捕集されたPMの量を推定する推定手段を構成する。
【0016】
差圧センサ52による検出値が上限値以上となったら、コントロールユニット60は、噴射ノズル55から軽油を適当なタイミング及び量で噴射する。噴射された軽油は排気ガスに同伴されて、酸化触媒54に流入する。酸化触媒54によって軽油が燃焼し、その燃焼熱によって排気ガスの温度が上昇する。このため、噴射ノズル55及び酸化触媒54は、排気ガスを昇温する昇温手段を構成する。高温となった排気ガスがDPF51に流入すると、その熱によって、DPF51に捕集されているPMが燃焼する。このようにして、PMが燃焼除去されることにより、DPF51が再生される。DPF51に捕集されているPMが燃焼する間、燃焼熱が発生するが、排気ガスがDPF51を流通する際にその燃焼熱を持ち去ることにより熱収支がバランスし、DPF51の再生中におけるDPF51の温度の過度な上昇が防止される。
【0017】
ここで、例えば、DPF51の再生中にハイブリッド自動車が急減速してディーゼルエンジン10の回転数が急低下した場合を考える。この場合、排気管50を流通する排気ガスの流量も急低下してしまうので、排気ガスが持ち去ることのできるPMの燃焼熱も低下してしまい、DPF51の過度な昇温が生じてしまう。このようなDPF51の過度な昇温を防止するために、以下の動作を行う。
【0018】
まず、当該動作が開始されるためにディーゼルエンジン10の回転数がどの程度低下する必要があるか、すなわち排気管50を流れる排気ガスの流量がどの程度低下する必要があるかについて説明する。
DPF51に捕集されて燃焼除去されていないPM、すなわちPMの燃え残り量が多いほど、瞬間的な燃焼量も多く、発熱量も多く、さらに、DPF51におけるPMの燃焼の継続時間が長くなるので、排気ガス流量の低下による影響が大きくなる。そうすると、PMの燃え残り量が多くなるほど、排気ガス流量の低下、すなわちディーゼルエンジン10の回転数の低下が小さくても、当該動作を開始する必要がある。当該動作を開始する起点となるディーゼルエンジン10の要求された回転数の閾値は、
図2に示されるように、PMの燃え残り量の推定値を横軸にとるとともにディーゼルエンジン10の要求された回転数を縦軸にとった座標平面における曲線で表される。ここで、ディーゼルエンジンの回転数に応じて排気ガスの流量が変化するので、この閾値は、当該動作を開始する起点となる排気管50を流れる排気ガスの流量の閾値に相当すると言える。このような閾値のマップをコントロールユニット60に予め記憶させておく。尚、横軸のPMの燃え残り量の推定値は、差圧センサ52による検出値に基づいてコントロールユニット60が推定する。また、縦軸のディーゼルエンジン10の要求された回転数は、例えばアクセル開度の変化から、コントロールユニット60が要求された回転数を推定する。
【0019】
次に、DPF51の過度な昇温を防止するための当該動作を説明する。
図1に示されるように、ディーゼルエンジン10の要求された回転数が閾値を超えたことをコントロールユニット60が検知したら、コントロールユニット60は、噴射ノズル55からの軽油の噴射を停止する。これにより、排気ガスの昇温が停止される。次に、ディーゼルエンジン10の回転数を低下していく。しかし、コントロールユニット60が推定したディーゼルエンジン10の要求された回転数にディーゼルエンジン10の回転数を低下してしまうと、DPF51に流入する排気ガスの流量が急低下してしまい、DPF51の過度な昇温につながってしまう。
【0020】
そこで、DPF51において、PMの捕集量とその捕集量に対して排気ガス流量を低下してもDPF51が過度に昇温しない低下率との関係を予め実験で求めておき、
図3に示されるような、PMの燃え残り量の推定値とディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きとの関係を示すマップをコントロールユニット60に予め記憶させておく。ここで、ディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きの大小関係は、傾きが小さいほどディーゼルエンジン10の回転数を緩やかに低下していくことを意味している。
【0021】
図1に示されるように、コントロールユニット60は、噴射ノズル55からの軽油の噴射を停止後、差圧センサ52による検出値から、DPF51におけるPMの燃え残り量を推定し、この推定値から
図3のマップに基づいて、ディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きを決定する。コントロールユニット60は、この傾きに従ってディーゼルエンジン10の回転数を低下していく。
【0022】
図4は、ディーゼルエンジン10の回転数の低下の経過を模式的に示している。
図4では、コントロールユニット60が推定したディーゼルエンジン10の要求された回転数にディーゼルエンジン10の回転数を低下した場合が破線で描かれており、上記動作でディーゼルエンジン10の回転数を低下した場合が実線で描かれている。この実施の形態では、ディーゼルエンジン10の回転数の実際の低下が、コントロールユニット60が推定したディーゼルエンジン10の要求された回転数に低下した場合よりも緩やかに行われるので、DPF51に流入する排気ガスの流量の低下も緩やかとなる。このため、DPF51における熱収支のバランスが大きく崩れることがなく、DPF51の過度な昇温が防止される。
【0023】
ここでは、ハイブリッド自動車が減速しているので、
図1に示されるように、車軸14の回転数が低下し、ディファレンシャル13を介してアーム12の回転数も低下する。その結果、アウターロータ22の回転数も低下する。これに対し、ディーゼルエンジン10の回転数の低下は、上述したように緩やかであるので、駆動軸11を介してディーゼルエンジン10に連結されるインナーロータ21の回転数の低下も緩やかになる。このため、インナーロータ21とアウターロータ22との間に回転速度差が生じ、アウターロータ22の第1磁石27が発生させる磁界がインナーロータ21の第1コイル25に作用することによって第1コイル25中に誘導電流が生じる。第1コイル25中に生じた誘導電流は、駆動軸11に沿って配線される図示しない導電線を通り、第2電力変換器32によって直流電力に変換され、バッテリ30に充電される。すなわち、この場合では、ディーゼルエンジン10による動力の一部をダブルロータモータ20における発電に用いることによって、ディーゼルエンジン10とダブルロータモータ20との間で互いの動力を調整している。
【0024】
次に、DPF51の再生中にハイブリッド自動車の駆動がディーゼルエンジン10による動力からダブルロータモータ20による動力に切り替わる動作について説明する。
コントロールユニット60は、ディーゼルエンジン10の回転数を低下していき最終的に停止すると同時に、第1電力変換器31及び第2電力変換器32を制御することによって、バッテリ30からインナーロータ21の第1コイル25及びステータ23の第2コイル26に三相交流電力を供給する。この際、インナーロータ21の第1コイル25とアウターロータ22の第1磁石27との間にトルクが発生すると共に、ステータ23の第2コイル26とアウターロータ22の第2磁石28との間にもトルクが発生する。これらのトルクを受けてアウターロータ22が回転すると、この回転がアーム12及びディファレンシャル13を介して車軸14に伝達され、車両の走行が行われる。しかし、ディーゼルエンジン10の回転数の低下が急であると、DPF51に流入する排気ガスの流量が急低下してしまい、DPF51の過度な昇温につながってしまう。
【0025】
そこで、この場合も、ハイブリッド自動車の前述した減速時の動作と同様に、コントロールユニット60は、噴射ノズル55からの軽油の噴射を停止後、通常のダブルロータモータ20による動力への切り替え時に比べて小さい傾きで、ディーゼルエンジン10の回転数を低下する。しかしながら、ディーゼルエンジン10の回転数を低下するだけでは、ハイブリッド自動車の駆動力が低下してしまうので、ディーゼルエンジン10の回転数を低下するに伴い、ダブルロータモータ20による動力を増加していき、ハイブリッド自動車の駆動におけるダブルロータモータ20による動力の割合を増加していく。すなわち、この場合では、ディーゼルエンジン10の回転数を低下したことによりハイブリッド自動車の駆動力が低下した分をダブルロータモータ20による動力で補完することによって、ディーゼルエンジン10とダブルロータモータ20との間で互いの動力を調整している。
【0026】
ハイブリッド自動車の駆動におけるディーゼルエンジン10による動力とダブルロータモータ20による動力との割合の経過を、
図5に模式的に示す。
図5は、動力の切り替え時にハイブリッド自動車に必要な駆動力(実線で描かれている)が変化しない場合を例にして示している。ディーゼルエンジン10による動力の経過は一点鎖線で描かれており、ダブルロータモータ20による動力の経過は破線で描かれている。それぞれの経過を表す線において、コントロールユニット60が推定したディーゼルエンジン10の回転数の低下率通りにディーゼルエンジン10の回転数を低下した場合が細線で描かれており、上記動作でディーゼルエンジン10の回転数を低下した場合が太線で描かれている。
【0027】
上記動作では、ディーゼルエンジン10の回転数の実際の低下が、コントロールユニット60が推定したディーゼルエンジン10の要求された回転数に低下した場合よりも緩やかに行われるので、DPF51に流入する排気ガスの流量の低下も緩やかとなる。このため、DPF51における熱収支のバランスが大きく崩れることがなく、DPF51の過度な昇温が防止される。
【0028】
尚、
図5では、ハイブリッド自動車の駆動力が一定であったが、動力の切り替え時にハイブリッド自動車の駆動力が変化する場合には、当該駆動力の変化に応じてダブルロータモータ20による動力の増加を調整すればよい。この場合でも、ディーゼルエンジン10の回転数を低下するに伴い、ダブルロータモータ20による動力を増加していくことに変わりはない。
【0029】
次に、DPF51の再生中にディーゼルエンジン10を停止する場合の動作について説明する。
ディーゼルエンジン10が停止すると排気ガスが発生しないので、DPF51に排気ガスが流通しなくなり、DPF51の過度な昇温につながってしまう。そこで、ディーゼルエンジン10において着火動作を停止しても、ダブルロータモータ20による動力によってディーゼルエンジン10の回転動作を継続する。具体的には、ディーゼルエンジン10を停止すると同時に、第2電力変換器32を制御することによって、バッテリ30からインナーロータ21の第1コイル25に三相交流電力を供給する。この際、インナーロータ21の第1コイル25とアウターロータ22の第1磁石27との間にトルクが発生する。このトルクを受けてインナーロータ21が回転すると、この回転が駆動軸11を介してディーゼルエンジン10に伝達され、ディーゼルエンジン10の回転動作が行われる。すなわち、この場合では、ダブルロータモータ20がディーゼルエンジン10の回転動作を行うことによって、ディーゼルエンジン10とダブルロータモータ20との間で互いの動力を調整している。
【0030】
ディーゼルエンジン10において着火動作が行われなくても回転動作が行われれば、ディーゼルエンジン10の各シリンダへの吸気・排気が行われ、各シリンダから排気された空気が排気管50を流通する。排気管50を流通する空気は、DPF51に流入して、DPF51におけるPMの燃焼熱を持ち去ることにより熱収支がバランスする。その後、ハイブリッド自動車の前述した減速時の動作及びDPF51の再生中にハイブリッド自動車の駆動がディーゼルエンジン10による動力からダブルロータモータ20による動力に切り替わる動作と同様の方法で、噴射ノズル55からの軽油の噴射を停止後、ディーゼルエンジン10の回転数を徐々に低下していくことにより、DPF51における熱収支のバランスが大きく崩れないので、DPF51の再生中における温度の過度な上昇が防止される。
【0031】
このように、DPF51を再生するためにコントロールユニット60が噴射ノズル55を作動させている間に、予め設定された閾値以下にディーゼルエンジン10の要求された回転数が低下するという要求をコントロールユニット60が受け取った場合に、コントロールユニット60は、噴射ノズル55からの軽油の噴射動作を停止し、DPF51に捕集されているPMの量に基づいて、ディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きを決定し、内燃機関の回転数をその傾きで低下していくことにより、DPF51を流通する排気ガスの流量を維持してDPF51の冷却を行うので、DPF51を再生する際に、ハイブリッド自動車の運転状況に応じた適切な制御ができる。
【0032】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る車両制御装置について説明する。尚、実施の形態2において、
図1〜5の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る車両制御装置は、実施の形態1に対して、回転電機の形態を変更したものである。
【0033】
この発明の実施の形態2に係るハイブリッド自動車の車両制御装置200の構成を
図6に示す。車両制御装置200は、内燃機関であるディーゼルエンジン10と、三相交流電力によって動作する回転電機であるモータジェネレータ220とを動力源として備えている。モータジェネレータ220は、第1モータジェネレータ221と第2モータジェネレータ222とから構成されている。これらはいずれも、1つのロータ及び1つのステータを有するモータである。第1モータジェネレータ221は、公知の遊星歯車機構のような動力分割機構223を介してディーゼルエンジン10の駆動軸11に機械的に連結されている。動力分割機構223及び第2モータジェネレータ222はそれぞれ、伝達部212及びディファレンシャル13を介して車軸14に機械的に連結されている。また、第1モータジェネレータ221及び第2モータジェネレータ222はそれぞれ、コントロールユニット60に電気的に接続された電力変換器230を介してバッテリ30に電気的に接続されている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0034】
次に、この実施の形態2に係る車両制御装置200を搭載したハイブリッド自動車の動作について説明する。
このハイブリッド自動車がディーゼルエンジン10によって走行する場合、ディーゼルエンジン10の動力は主に、動力分割機構223によって伝達部212に伝わり、ディファレンシャル13を介して車軸14に伝わって駆動輪を駆動させる。また、ハイブリッド自動車の走行状態により、ディーゼルエンジン10の動力の一部が動力分割機構223によって第1モータジェネレータ221にも伝達されて、第1モータジェネレータ221が発電機として駆動する。
【0035】
また、第1モータジェネレータ221がモータとして働く場合、その動力を、動力分割機構223を介して駆動軸11に出力することにより、ディーゼルエンジン10において燃料噴射を行わずに、ディーゼルエンジン10の回転動作を行うことができる。一方、第2モータジェネレータ222は、バッテリ30から電力変換器230を介して供給された三相交流電力によって駆動され、その動力が伝達部212に伝わり、ディファレンシャル13を介して車軸14に伝わって駆動輪を駆動させることができる。
【0036】
実施の形態2においても、ハイブリッド自動車がディーゼルエンジン10によって走行している間にDPF51の再生を行い、その最中にディーゼルエンジン10の回転数が急低下すると、実施の形態1で説明したように、DPF51の過度な昇温が生じてしまう。そこで、実施の形態2においても、ディーゼルエンジン10の回転数について、実施の形態1と同様の制御を行う。
【0037】
具体的には、例えば、DPF51の再生中にハイブリッド自動車が急減速してディーゼルエンジン10の回転数が急低下した場合、ディーゼルエンジン10の回転数について、実施の形態1と同じ制御を行い、動力分割機構223がディーゼルエンジン10の動力の一部を第1モータジェネレータ221に伝達して、第1モータジェネレータ221に発電を行わせる。すなわち、この場合では、ディーゼルエンジン10の動力の一部を第1モータジェネレータ221における発電に用いることによって、ディーゼルエンジン10と第1モータジェネレータ221との間で互いの動力を調整している。
【0038】
また、DPF51の再生中にハイブリッド自動車の駆動がディーゼルエンジン10による動力から第2モータジェネレータ222による動力に切り替わる場合、ディーゼルエンジン10の回転数について、実施の形態1と同じ制御を行い、ディーゼルエンジン10の回転数を低下するに伴い、第2モータジェネレータ222による動力を増加していき、ハイブリッド自動車の駆動における第2モータジェネレータ222による動力の割合を増加していく。すなわち、この場合では、ディーゼルエンジン10の回転数を低下したことによりハイブリッド自動車の駆動力が低下した分を第2モータジェネレータ222による動力で補完することによって、ディーゼルエンジン10と第2モータジェネレータ222との間で互いの動力を調整している。
【0039】
さらに、DPF51の再生中にディーゼルエンジン10を停止する場合、コントロールユニット60は、バッテリ30から電力変換器230を介して第1モータジェネレータ221に三相交流電力を供給し、第1モータジェネレータ221の動力を、動力分割機構223を介して駆動軸11に出力することで、ディーゼルエンジン10において燃料噴射が停止されても、ディーゼルエンジン10の回転動作を継続する。その後のディーゼルエンジン10の回転数を低下する動作は、実施の形態1と同じである。すなわち、この場合では、第1モータジェネレータ221がディーゼルエンジン10の回転動作を行うことによって、ディーゼルエンジン10と第1モータジェネレータ221との間で互いの動力を調整している。
【0040】
このように、回転電機として、1つのロータ及び1つのステータを有する通常のモータを用いても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
実施の形態1及び2では、差圧センサ52による検出値からPMの燃え残り量の推定値を算出し、この推定値とディーゼルエンジンの回転数を低下する傾きとの関係を示すマップに基づいてディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きを決定していたが、この形態に限定するものではない。DPF51の再生開始からの時間が短いほど、PMの燃え残り量は多い、すなわち、DPF51の再生開始からの時間と、PMの燃え残り量との間にはある程度関連があると考えられるので、DPF51の再生開始からの時間とディーゼルエンジンの回転数を低下する傾きとの関係を示すマップをコントロールユニット60に予め記憶しておき、コントロールユニット60がDPF51の再生開始からの時間を測定し、その時間とマップとから、ディーゼルエンジン10の回転数を低下する傾きを算出してもよい。
【0042】
実施の形態1及び2では、排気ガスを昇温する昇温手段は、酸化触媒54と噴射ノズル55とであったが、この形態に限定するものではない。排気管50に噴射ノズル55を別途設けなくても、ディーゼルエンジン10の図示しないシリンダ内に軽油を噴射するノズルから、図示しない燃焼室での燃焼後にシリンダに軽油を噴射するポスト噴射による軽油を用いてもよい。この場合には、昇温手段の動作の停止とは、ポスト噴射の停止を意味する。また、酸化触媒54における軽油の燃焼の燃焼熱を利用して排気ガスの昇温を行う形態でなく、排気管50に巻かれた電熱線等の加熱手段であってもよい。この場合、昇温手段の動作の停止とは、電熱線等への電力供給の停止を意味する。
【0043】
実施の形態1及び2では、DPF51に捕集されたPMの量を推定する推定手段は、DPF51の前後の差圧を検出する差圧センサ52であったが、この形態に限定するものではない。ディーゼルエンジン10の稼働条件と稼働時間とからコントロールユニット60が推定してもよい。この場合には、コントロールユニット60が推定手段を構成する。
【0044】
実施の形態1及び2では、内燃機関はディーゼルエンジン10であったが、ガソリンを燃料とするリーンバーンエンジンであってもよい。この場合、フィルタ部材は、排気ガス中の窒素酸化物を浄化する触媒等が担持されたDPF51ではなく、排気管50に設けられたPMを捕捉する機能のみのフィルタであってもよい。
【0045】
実施の形態1及び2では、予め設定された閾値以下に排気管50を流れる排気ガスの流量が低下するという要求を、予め設定された閾値以下にディーゼルエンジン10の要求された回転数が低下するという要求としているが、この形態に限定するものではない。排気管50を流れる排気ガスの流量が実際に閾値以下に低下する前に、そうなることを判断できればよく、例えば、EGR流量の変化やターボの回転数の変化等について閾値を予め設定しておき、当該変化と当該閾値との関係から判断してもよい。