(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乗員が乗り込む車室部の上部に開閉自在な開閉ルーフを有する自動車、所謂、オープンカーにおいて、開閉ルーフが閉じた状態(クローズ状態)では、車両前方からの走行風が車体表面に沿って車両後方へ流動する。
【0003】
一方、開閉ルーフが開いた状態(オープン状態)では、車両上部の開口によって走行風が車両後方へ安定して流れ難くなるため、開閉ルーフが閉じた状態に比べて、車両上部を流れる走行風の流れが変化する。
【0004】
このため、開閉ルーフが開いた状態では、車室内へ巻き込むように走行風が流動することによる騒音(所謂、巻込み音)や、フロントウインドウガラスを支持するウインドウ枠材と走行風との衝突による騒音(所謂、風切り音)などが発生するおそれがある。このように開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音は、乗員に不快感を与える要因となる。
そこで、開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音を抑制する様々な技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ルーフ部分を取り外して開閉する開閉ルーフを有する自動車において、開閉ルーフで閉塞される開口部の前縁に設けたエアデフレクタを、開閉ルーフを開いた際、車両上方、かつ車幅方向内側へ向けて略平行移動させる昇降式支持手段を備えたエアデフレクタ装置が提案されている。これにより、特許文献1は、簡素な構成でエアデフレクタを昇降でき、開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音を抑制できるとされている。
【0006】
ところで、左右一対のフロントピラーと、フロントピラーの上端を連結する連結部材とで構成されたウインドウ枠材において、フロントピラーと連結部材との接合部分は、車幅方向から車両前方下方へ向けて三次元的に湾曲した形状に形成されている。このため、車両前方からの走行風が接合部分近傍に衝突すると、意図しない方向に走行風が流動する、あるいは意図しない乱流が発生するおそれがある。
【0007】
この際、特許文献1のように車幅方向に長いデフレクタで、接合部分近傍を流れる走行風を整流すると、所望する整流箇所である接合部分近傍以外を流れる走行風もデフレクタで偏向されるため、意図しない新たな騒音が発生するおそれがある。
【0008】
例えば、乗員の頭部を保護するロールバーやラジオアンテナのような車両上方に突出する突出物が、乗員よりも車両後方に配設された車両において、車幅方向に長いデフレクタで整流すると、所望する整流箇所以外を流れる走行風と車両後方の突出物との衝突による騒音が発生するという新たな問題が生じるおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、ウインドウ枠材の上方において、走行風の整流が所望される所定範囲に対してデフレクタを突出できる
開閉ルーフ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車両の上部を開閉自在に覆う開閉ルーフと、該開閉ルーフの前端が当接するとともに、フロントウインドウガラスを支持するウインドウ枠材と、該ウインドウ枠材よりも上方へ出没可能に支持されたデフレクタと、該デフレクタを付勢する付勢手段とを備え、前記開閉ルーフが開いた際、前記付勢手段によって前記デフレクタが上昇する
開閉ルーフ車であって、前記ウインドウ枠材に、車両後方へ向けて突出するとともに、前記デフレクタにおける車幅方向の一端近傍を回転自在に軸支する軸部を備え、前記デフレクタにおける車幅方向の他端近傍に、前記開閉ルーフが開いた状態において、前記ウインドウ枠材の上方における所定範囲と対向する受風部を備え
、前記開閉ルーフの前端に、前記ウインドウ枠材の上部に対する相対位置を合わせる位置決め手段、または前記ウインドウ枠材の上部と係合する係合手段を備え、前記開閉ルーフが閉じた状態において、前記デフレクタにおける前記位置決め手段または前記係合手段と対向する部分に、少なくとも車両下方側が開口する形状に切欠いた切欠き部分を設けたことを特徴とする。
【0012】
上記開閉ルーフは、車両後方へ折り畳むように格納される開閉ルーフ、あるいはルーフ部分を取り外し可能な開閉ルーフであって、幌布や幌骨で構成したソフトトップ、あるいは金属製ルーフで構成したハードトップとすることができる。
上記ウインドウ枠材は、鋼板で構成した枠材、あるいは鋼板で構成した枠材にトリムやガーニッシュを装着した枠材などとすることができる。
【0013】
上記開閉ルーフが開いた際とは、例えば車両後部に折り畳むように格納される開閉ルーフにおいて、ウインドウ枠材から開閉ルーフの前端が離間開始した状態をいう。
上記所定範囲は、車幅方向に所定長さを有するとともに、走行風の整流が所望される範囲であって、例えば、ウインドウ枠材における車幅方向外側の端部近傍の上方などとすることができる。
【0014】
上記位置決め手段は、例えば、ウインドウ枠材に設けた開口に挿入される位置決め部材、あるいはウインドウ部材に設けた位置決め部材の挿入を許容する開口孔や凹部などとすることができる。
【0015】
上記係合手段は、例えば、ウインドウ枠材に設けたストライカーに係止されるロック部材を有するロック機構部、あるいはウインドウ部材に設けたロック機構部のロック部材が係止されるストライカーなどとすることができる。
【0016】
この発明により、ウインドウ枠材の上方において、走行風の整流が所望される所定範囲に対してデフレクタを突出することができる。
具体的には、軸部によって回転自在に軸支されているため、デフレクタは、開閉ルーフが開いた際、付勢手段の付勢力によって、軸部を回転中心として車両上方に回転することができる。
【0017】
すなわち、開閉ルーフが閉じた状態におけるデフレクタの位置である格納位置から、開閉ルーフが開いた状態におけるデフレクタの位置である展開位置へ向けて、デフレクタは、回転することができる。
【0018】
このため、デフレクタの受風部は、ウインドウ枠材の上方に突出した際、所定範囲と確実に対向することができる。さらに、回動によって受風部がウインドウ枠材の上方に突出するため、開閉ルーフの整流構造は、所定範囲の広さが狭い場合であっても、受風部だけを所定範囲に対して確実に、かつ容易に対向させることができる。
【0019】
これにより、例えば、ウインドウ枠材の車幅方向外側における端部近傍の上方を所定範囲とし、ウインドウ枠材の車幅方向内側に軸部を備えた場合、デフレクタは、ウインドウ枠材の車幅方向外側における端部近傍の上方を流れる走行風を整流することができる。
【0020】
あるいは、ウインドウ枠材における乗員と略対向する部分の上方を所定範囲とし、ウインドウ枠材の車幅方向外側に軸部を備えた場合、デフレクタは、ウインドウ枠材における乗員と略対向する部分の上方を流れる走行風を整流することができる。
【0021】
つまり、
開閉ルーフ車は、整流が所望される空間を流れる走行風を、軸部を回転中心として回動するデフレクタによって、容易に整流することができる。
従って、
開閉ルーフ車は、ウインドウ枠材の上方における所定範囲に対してデフレクタを突出することができ、走行風を確実に整流することができる。
【0022】
加えて、この発明は、前記開閉ルーフの前端に、前記ウインドウ枠材の上部に対する相対位置を合わせる位置決め手段、または前記ウインドウ枠材の上部と係合する係合手段を備え、前記開閉ルーフが閉じた状態において、前記デフレクタにおける前記位置決め手段または前記係合手段と対向する部分に、少なくとも車両下方側が開口する形状に切欠いた切欠き部分を設け
たことを特徴とする。
【0023】
この発明により、
開閉ルーフ車は、位置決め手段または係合手段とデフレクタとの干渉を防止することができる。
具体的には、例えば、デフレクタの形状が車幅方向に長い正面視略帯状の場合、開閉ルーフを閉じると、位置決め手段または係合手段の車両前方にデフレクタが位置することになる。このため、開閉ルーフの位置決め手段または係合手段とデフレクタとが干渉して、開閉ルーフを正常に閉じることができないおそれがある。
【0024】
そこで、切欠き部分をデフレクタに備えたことにより、
開閉ルーフ車は、開閉ルーフが閉じた状態であっても、位置決め手段または係合手段とウインドウ枠材との間にデフレクタが介在することがない。
【0025】
これにより、
開閉ルーフ車は、開閉ルーフを閉じた際、位置決め手段または係合手段と、デフレクタとの干渉を防止することができる。
従って、
開閉ルーフ車は、デフレクタの切欠き部分によって、開閉ルーフが閉じた際、位置決め手段または係合手段とデフレクタとの干渉を防止でき、開閉ルーフを正常に閉じることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記ウインドウ枠材に対して所定間隔を隔てた車両後方の位置に、前記ウインドウ枠材の上部における車幅方向外側近傍と略対向するとともに、車両上方へ向けて突出した対向突出部を配置することができる。
【0027】
上記対向突起部としては、例えば、車両後部に格納した開閉ルーフを覆うデッキカバーにおいて、車両上方に突出するとともに、乗員の頭部を保護するような突出部、ドライバーシート後方に配設されたロールバー、車両後部に配置したアンテナ、クォータガラス、センターピラー、ドライバーシート、パッセンジャーシート、あるいはドライバーなどとすることができる。
【0028】
この発明により、
開閉ルーフ車は、車両後方へ流れる走行風による騒音の発生をより抑制することができる。
具体的には、開閉ルーフが閉じた状態では、走行風が車両表面に沿って車両後方へ流動するが、開閉ルーフが開いた状態では、車両上部の開口や車室内との圧力差によって走行風が車両後方へスムーズに案内されず、開閉ルーフが閉じた場合に比べて走行風の流れが乱れ易い。
【0029】
このため、例えば、車両後方に配設したデッキカバーが、乗員の頭部を保護するように車両上方に突出するとともに、ウインドウ枠材と略対向する略門型形状の場合、開閉ルーフが開いた状態では、車両上部の開口を飛び越えるように車両後方へ流動した走行風が、デッキカバーと衝突して、風切り音などの騒音が発生することがある。
【0030】
そこで、開閉ルーフが開いた際、ウインドウ枠材の上方における所定範囲に突出するデフレクタを備えたことにより、
開閉ルーフ車は、走行風を偏向してより車両後方へ流動させることができる。
【0031】
これにより、
開閉ルーフ車は、車両上部の開口を超えて車両後方へ流動する走行風が、対向突出部に衝突することを防止できる。このため、
開閉ルーフ車は、車両後方において、乗員を保護する形状のデッキカバーやロールバーなどを容易に配設することができ、デザイン性の向上や安全性の向上を図ることができる。
【0032】
従って、
開閉ルーフ車は、ウインドウ枠材と略対向する対向突出部が車両後方に配設された場合であっても、車両後方へ流れる走行風による騒音の発生をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、ウインドウ枠材の上方において、走行風の整流が所望される所定範囲に対してデフレクタを突出できる
開閉ルーフ車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
まず、本実施形態における車両1について、
図1から
図5を用いて詳しく説明する。
【0036】
なお、
図1は開閉ルーフ20を閉じた状態における車両1の外観斜視図を示し、
図2は開閉ルーフ20を開いた状態における車両1の外観斜視図を示し、
図3は開閉ルーフ20を格納開始した状態における車両1の左側面図を示し、
図4は開閉ルーフ20における車両左側前端の外観斜視図を示し、
図5はウインドウ枠材10における上部を車両後方から見た外観斜視図を示している。
また、
図3中において図示を簡略化するために開閉ルーフ20の格納リンク機構の図示を省略している。
【0037】
また、図中において、矢印Fr及びRrは車両前後方向を示しており、矢印Frは車両前方を示し、矢印Rrは車両後方を示している。さらに、矢印Rh及びLhは車幅方向を示しており、矢印Rhは車両右方向を示し、矢印Lhは車両左方向を示している。加えて、図中の上方を車両上方とし、図中の下方を車両下方とする。
【0038】
本実施形態における車両1は、
図1及び
図2に示すように、前輪2やボンネット3が配設された車両前部4と、後輪5やトランクリッド6が配設された車両後部7と、車両前部4及び車両後部7との間に位置するとともに、乗員が乗り込む車室部8とで構成している。そして、車両1は、車室部8の車両上方を覆うルーフ部分が開閉自在に構成された、所謂、オープンカーである。
【0039】
車両1における開閉ルーフ20は、
図1及び
図2に示すように、車室部8の上部において、フロントウインドウガラス9を支持するウインドウ枠材10の上部に着脱自在に連結されるルーフ前部21と、ルーフ前部21の後方に位置するルーフ後部22とで構成している。
【0040】
この開閉ルーフ20は、車室部8の後方に位置するデッキカバー23の下方に設けた格納空間(図示省略)に折り畳むようにして格納される構成とする。より詳しくは、開閉ルーフ20は、
図3に示すように、乗員の操作によって、車両後方上方へデッキカバー23が移動したのち、車両前後方向に分離したルーフ前部21、及びルーフ後部22が、リアウインドウガラス24とともに折り畳まれるようにして車両後方の格納空間に格納される構成である。
【0041】
なお、本実施形態におけるデッキカバー23は、
図1及び
図2に示すように、車室部8の後方において、乗員の頭部を保護するように車両上方へ突出した形状に形成している。より詳しくは、デッキカバー23は、側面視において、開閉ルーフ20におけるルーフ後部22の上面とトランクリッド6の上面とが車両前後方向で連続するように車両上方へ突出するとともに、正面視において、ウインドウ枠材10と車両前後方向で略対向する正面視略門型形状に形成している。
【0042】
さらに、開閉ルーフ20におけるルーフ前部21には、
図4に示すように、車幅方向外側の両端に車両前方へ突出する位置決め部材25を備えるとともに、車幅方向略中央にロック機構(図示省略)を備えている。
【0043】
位置決め部材25は、ルーフ前部21に対してボルトによって装着固定されるベースプレート25a(
図9参照)と、ベースプレート25aの先端を覆うアルミダイキャスト製の先端部分25b(
図9参照)とで一体的に構成している。この位置決め部材25は、開閉ルーフ20を閉じる際、後述する位置決め台座142に挿入することで、開閉ルーフ20の車幅方向への移動を規制するものである。
【0044】
ロック機構は、開閉ルーフ20の車幅方向への移動が規制された状態において、ウインドウ枠材10に設けたロック受け部141(
図5参照)に係合する、あるいはロック受け部141との係合を解放する機能を有している。これにより、ロック機構は、ウインドウ枠材10と開閉ルーフ20とを連結する、あるは連結を解除することができる。
【0045】
ウインドウ枠材10は、
図1、
図2、及び
図5に示すように、左右一対のフロントピラー110と、フロントピラー110の上部を車幅方向で連結するフロントヘッダ120とで構成している。
フロントピラー110は、図示を省略した鋼板製のピラーパネルと、車両の意匠面を構成するピラーガーニッシュ111と、車室部8側の意匠部分であるピラートリム112とで構成している。なお、ピラーガーニッシュ111がピラーパネルの車幅方向外側に装着され、ピラートリム112がピラーパネルの車幅方向内側に装着されている。
【0046】
フロントヘッダ120は、車両上方に位置するヘッダアウタパネル121(
図7参照)、及び車両下方に位置するヘッダインナパネル122(
図7参照)を一体的に接合したヘッダパネル123(
図7参照)と、車両の意匠面を構成するヘッダガーニッシュ124と、車室部8側の意匠部分であるヘッダトリム125とで構成している。なお、ヘッダガーニッシュ124が、ヘッダアウタパネル121の車両上方側に装着され、ヘッダトリム125がヘッダインナパネル122の車両下方側に装着される。
【0047】
加えて、ウインドウ枠材10のピラーパネルにおける後端には、
図5に示すように、ドアガラス11(
図1参照)との隙間を閉塞するウェザストリップゴム131を装着している。さらに、ウインドウ枠材10のヘッダパネル123における後端には、
図5に示すように、開閉ルーフ20の前端との隙間を閉塞するウェザストリップゴム132を装着している。
【0048】
このようなウインドウ枠材10の上部(ヘッダパネル123)には、
図5に示すように、開閉ルーフ20のロック機構が係止するロック受け部141が車幅方向略中央に配設され、位置決め台座142が車幅方向外側の両端に装着されている。
【0049】
位置決め台座142は、アルミダイキャスト製であって、開閉ルーフ20の位置決め部材25の挿入を許容する凹部142aが形成されている。この位置決め台座142は、ヘッダインナパネル122の下面に対してボルト止めによって固定されている。
【0050】
さらに、車両1には、ウインドウ枠材10の車幅方向外側における端部近傍の上方を流れる走行風を整流して、デッキカバー23の車幅方向外側部分と走行風との衝突を回避するデフレクタ装置30を、ウインドウ枠材10の上部における車幅方向両端に備えている。具体的には、デフレクタ装置30は、ウインドウ枠材10に装着した位置決め台座142よりも車幅方向内側で、乗員の略正面に位置する部分に配置している。
【0051】
引き続き、デフレクタ装置30について、
図6から
図11を用いて詳しく説明する。なお、車両左側に配設されるデフレクタ装置30と、車両右側に配設されるデフレクタ装置30とは左右対称の構成であるため、本実施形態では車両左側に配設されるデフレクタ装置30について説明する。
【0052】
図6は開閉ルーフ20が開いた状態におけるデフレクタ装置30の背面図を示し、
図7は
図6中のA−A矢視断面図を示し、
図8は開閉ルーフ20が閉じた状態におけるデフレクタ装置30の背面図を示し、
図9は
図8中のA−A矢視断面図を示し、
図10は
図8中のB−B矢視断面図を示し、
図11は開閉ルーフ20を閉じる過程におけるA−A矢視断面図を示している。
なお、
図8において図示を明確にするため、位置決め部材25を除く開閉ルーフ20の図示を省略している。
【0053】
デフレクタ装置30は、
図6及び
図7に示すように、開閉ルーフ20が開いた状態において、ウェザストリップゴム132の上部よりも車両上方にデフレクタ32の上端が位置する展開位置と、
図8及び
図9に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、ウェザストリップゴム132の上部よりも車両下方にデフレクタ32の上端が位置する格納位置とに、デフレクタ32を昇降させる機構を有している。
【0054】
より詳しくは、デフレクタ装置30は、
図6、
図7、及び
図10に示すように、ウェザストリップゴム132よりも車両後方において、ヘッダトリム125の下部を車両後方に延設して形成したトリム延設部126に固定されている。
【0055】
なお、トリム延設部126は、ヘッダトリム125の下部から車両後方に延設した延設底部126aと、延設底部126aの後端から車両上方に立設した後方壁部126bと、後方壁部126bに対して車両前方側で対向する前方壁部126cとで一体形成している。
【0056】
延設底部126aは、
図6及び
図10に示すように、位置決め台座142よりも車幅方向内側から、ウインドウ枠材10における車幅方向略中央近傍に至る車幅方向の長さを有するとともに、ヘッダトリム125の下部後端からデフレクタ32に至る前後方向の長さを有する略平板状に形成している。
【0057】
後方壁部126bは、
図10に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、開閉ルーフ20における内装部材であるルーフトリム26と、デフレクタ32との間で、延設底部126aの後端から車両上方に向けて立設している。この後方壁部126bには、後述するデフレクタ装置30の軸部31における後端を支持する軸孔(図示省略)を、車幅方向内側の端部近傍に開口形成している。
【0058】
前方壁部126cは、
図10に示すように、ヘッダトリム125と後方壁部126bとの間において、車両上方へ向けて立設している。この前方壁部126cには、後方壁部126bの軸孔と車両前後方向で対向する位置に、後述するデフレクタ装置30の軸部31における前端を支持する軸孔(図示省略)を開口形成している。なお、前方壁部126cは、後方壁部126bの車幅方向内側における端部近傍と対向する範囲に立設している。
【0059】
デフレクタ装置30は、
図6及び
図7に示すように、トリム延設部126における車幅方向の内側端部近傍に装着された軸部31と、ウェザストリップゴム132の車両後方側において軸部31に回転自在に軸支されたデフレクタ32と、軸部31に巻着されたトーションスプリング33とで構成している。
【0060】
軸部31は、
図6及び
図10に示すように、車両前後方向を軸方向とする略円柱状体であって、後方壁部126bの軸孔、及び前方壁部126cの軸孔を介して、後方壁部126b、及び前方壁部126cに装着されている。
【0061】
この軸部31としては、例えば、一端近傍にねじ山を有し、他端に頭部を有するボルトと、ネジ山に螺合するナットとで構成した軸部、あるいは一端にフランジを有し、他端に径方向に貫通孔を有する柱状部材と、貫通孔に挿着される抜け止めピンとで構成した軸部などとする。
【0062】
デフレクタ32は、
図6から
図9に示すように、車両前後方向に所定の厚みを有するとともに、車両上下方向の長さに対して、車幅方向の長さが長い背面視略矩形に形成している。このデフレクタ32は、
図6及び
図8に示すように、ウインドウ枠材10の車幅方向外側における端部近傍において、位置決め台座142、及びウインドウ枠材10の上方の空間である整流範囲Wを流れる走行風を整流可能に形成している。
【0063】
より詳しくは、デフレクタ32は、車幅方向外側の端部であるデフレクタ先端部321と、軸部31に回転自在に軸支されるデフレクタ中間部322と、車幅方向内側の端部であるストッパ部323とを、車幅方向外側からこの順番で一体形成している。
【0064】
なお、デフレクタ32における車幅方向の長さは、
図8に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、位置決め台座142の車幅方向外側端部よりも車幅方向外側から、ウインドウ枠材10における車幅方向略中央近傍に至る長さに形成している。
【0065】
一方、デフレクタ32における上下方向の長さは、
図9に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、開閉ルーフ20の前端下面と、トリム延設部126の延設底部126aとの上下方向間隔よりも短い長さで形成している。
【0066】
デフレクタ先端部321は、
図6及び
図8に示すように、開閉ルーフ20が開いた状態において、ウェザストリップゴム132の上端よりも車両上方に突出するとともに、デフレクタ先端部321の上方部分が整流範囲Wと対向する形状に形成している。なお、デフレクタ先端部321の上方部分は、
図7に示すように、車両後方へ向けて湾曲するように傾斜した形状に形成している。
【0067】
さらに、このデフレクタ先端部321は、
図8及び
図9に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、位置決め台座142における車幅方向の長さと略同等の車幅方向の長さを有するとともに、位置決め部材25の先端部分25bにおける上端よりも車両上方に下端が位置する形状に形成している。
【0068】
デフレクタ中間部322は、
図8に示すように、背面視において車幅方向に長く、車幅方向内側ほど上下方向の長さが短い略平板状に形成している。さらに、デフレクタ中間部322の車幅方向外側における上下方向の長さは、デフレクタ先端部321の車幅方向内側における上下方向の長さよりも長く形成している。このデフレクタ中間部322における車幅方向内側には、軸部31の挿通を許容する開口孔(図示省略)を開口形成している。
【0069】
ストッパ部323は、
図6、
図8、及び
図10に示すように、デフレクタ中間部322における車幅方向内側の端部を延設して略平板状に形成している。さらに、ストッパ部323の下面は、開閉ルーフ20が閉じた状態において、トリム延設部126の延設底部126aと当接する当接面323aとして形成している。
【0070】
このような構成のデフレクタ32は、背面視において、デフレクタ先端部321の上端、デフレクタ中間部322の上端、及びストッパ部323の上端が車幅方向に沿って連続するとともに、デフレクタ中間部322の下端、及びストッパ部323の下端が車幅方向に沿って連続する形状に形成している。
【0071】
このため、デフレクタ32は、背面視において、デフレクタ中間部322の下端に対して、デフレクタ先端部321の下端が車両上方に位置する段付き形状に形成している。換言すると、デフレクタ32は、位置決め部材25と対向する部分を切り欠いた形状に形成している。この切り欠いた部分を、デフレクタ先端部321における切欠き部分321aとする。
【0072】
トーションスプリング33は、弾性を有する金属製丸棒材を軸部31の外径よりも大径でコイル状に巻き回すとともに、両端を略直線状に延設した形状に形成している。なお、トーションスプリング33は、軸部31を回転中心として、デフレクタ32が車両下方に回転すると、回転方向とは逆方向に付勢力が生じる構成とする。
【0073】
このトーションスプリング33は、
図10に示すように、コイル状に巻き回した一端から延設した部分をデフレクタ32の上端に係止し、コイル状に巻き回した他端から延設した部分をトリム延設部126の前方壁部126cに係止している。
【0074】
次に、上述した構成のデフレクタ装置30において、展開位置から格納位置にデフレクタ32が移動する際の動作、及び格納位置から展開位置にデフレクタ32が移動する際の動作について説明する。
【0075】
まず、開閉ルーフ20が開いた状態において、乗員の操作によって開閉ルーフ20が閉じられると、開閉ルーフ20は、折り畳まれていたルーフ前部21、及びルーフ後部22を展開しながら、車室部8の上方へ移動する。
【0076】
その後、車室部8の上方において、開閉ルーフ20は、
図11に示すように、その前端がウインドウ枠材10と車両前後方向で対向する位置まで、車両上方から車両下方に向けて移動しながら、デフレクタ32の上端と当接してデフレクタ32を車両下方に押圧する。
【0077】
この際、デフレクタ32は、
図6及び
図8に示すように、軸部31の軸方向を回転中心として、トーションスプリング33の付勢力に抗しながら、車両下方へ向けて回転開始する。そして、ウインドウ枠材10と車両前後方向で対向する位置まで開閉ルーフ20が移動すると、デフレクタ32が格納位置に移動完了する。
【0078】
一方、開閉ルーフ20が開くと、開閉ルーフ20による押圧が解放されるため、トーションスプリング33の付勢力によって、デフレクタ32は、
図6及び
図8に示すように、軸部31を中心に車両上方へ回転開始する。そして、デフレクタ32のストッパ部323における当接面323aが、トリム延設部126の延設底部126aと回転方向で当接すると、デフレクタ32が所望する展開位置に移動完了する。
【0079】
以上のような動作を実現する車両1の整流構造は、ウインドウ枠材10の上方において、走行風の整流が所望される整流範囲Wに対してデフレクタ32を突出することができる。
具体的には、軸部31によって回転自在に軸支されているため、デフレクタ32は、開閉ルーフ20が開いた際、トーションスプリング33の付勢力によって、軸部31を回転中心として車両上方に回転することができる。
【0080】
すなわち、格納位置から展開位置へ向けて、デフレクタ32は、回転することができる。このため、デフレクタ32のデフレクタ先端部321は、ウインドウ枠材10の上方に突出した際、整流範囲Wと確実に対向することができる。
【0081】
さらに、回動によってデフレクタ先端部321がウインドウ枠材10の上方に突出するため、車両1の整流構造は、整流範囲Wの広さが狭い場合であっても、デフレクタ先端部321だけを整流範囲Wに対して確実に、かつ容易に対向させることができる。
【0082】
これにより、デフレクタ32は、ウインドウ枠材10の車幅方向外側における端部近傍の上方を流れる走行風を整流することができる。つまり、車両1の整流構造は、整流が所望される空間を流れる走行風を、軸部31を回転中心として回動するデフレクタ32によって、容易に整流することができる。
従って、車両1の整流構造は、ウインドウ枠材10の上方における整流範囲Wに対してデフレクタ32を突出することができ、走行風を確実に整流することができる。
【0083】
また、開閉ルーフ20が閉じた状態において、デフレクタ32における位置決め部材25と対向する部分に切欠き部分321aを、デフレクタ32に設けたことにより、車両1の整流構造は、位置決め部材25とデフレクタ32との干渉を防止することができる。
【0084】
具体的には、例えば、デフレクタ32の形状が車幅方向に長い正面視略帯状の場合、開閉ルーフ20を閉じると、位置決め部材25の車両前方にデフレクタ32が位置することになる。このため、開閉ルーフ20の位置決め部材25とデフレクタ32とが干渉して、開閉ルーフ20を正常に閉じることができないおそれがある。
【0085】
そこで、切欠き部分321aをデフレクタ32に備えたことにより、車両1の整流構造は、開閉ルーフ20が閉じた状態であっても、位置決め部材25とウインドウ枠材10との間にデフレクタ32が介在することがない。
【0086】
これにより、車両1の整流構造は、開閉ルーフ20を閉じた際、位置決め部材25と、デフレクタ32との干渉を防止することができる。
従って、車両1の整流構造は、デフレクタ32の切欠き部分321aによって、開閉ルーフ20が閉じた際、位置決め部材25とデフレクタ32との干渉を防止でき、開閉ルーフ20を正常に閉じることができる。
【0087】
また、ウインドウ枠材10と略対向する形状のデッキカバー23を配置した場合であっても、車両1の整流構造は、車両後方へ流れる走行風による騒音の発生をより抑制することができる。
【0088】
具体的には、開閉ルーフ20が閉じた状態では、走行風が車両表面に沿って車両後方へ流動するが、開閉ルーフ20が開いた状態では、車両上部の開口や車室内との圧力差によって走行風が車両後方へスムーズに案内されず、開閉ルーフ20が閉じた場合に比べて走行風の流れが乱れ易い。
【0089】
このため、略門型形状のデッキカバー23を車両後方に配設した場合、開閉ルーフ20が開いた状態では、車両上部の開口を飛び越えるように車両後方へ流動した走行風が、デッキカバー23の車幅方向外側部分と衝突して、風切り音などの騒音が発生することがある。
【0090】
そこで、開閉ルーフ20が開いた際、ウインドウ枠材10の上方における整流範囲Wに突出するデフレクタ32を備えたことにより、車両1の整流構造は、走行風を偏向してより車両後方へ流動させることができる。
【0091】
これにより、車両1の整流構造は、車両上部の開口を超えて車両後方へ流動する走行風が、デッキカバー23に衝突することを防止できる。このため、車両1の整流構造は、車両後方において、乗員を保護する形状のデッキカバーやロールバーなどを容易に配設することができ、デザイン性の向上や安全性の向上を図ることができる。
【0092】
従って、車両1の整流構造は、ウインドウ枠材10と略対向するデッキカバー23が車両後方に配設された場合であっても、車両後方へ流れる走行風による騒音の発生をより抑制することができる。
【0093】
なお、上述の実施形態において、ルーフ前部21とルーフ後部22とで構成したハードトップ型の車両1を用いて説明したが、これに限定せず、幌布や幌骨で構成したソフトトップ型の車両1であってもよい。
また、車両後方への格納空間に向けて折り畳むように格納される開閉ルーフ20としたが、これに限定せず、車両上部のルーフ部分が取り外し可能な開閉ルーフであってもよい。
【0094】
また、車両上方へ突出したデッキカバー23への走行風の衝突を回避するデフレクタ32としたが、これに限定せず、ドライバーシート後方に配設されたロールバー、車両後部7に配置したアンテナ、クォータガラス、センターピラー、ドライバーシート、あるいはドライバーなどと走行風との衝突を回避するデフレクタ32としてもよい。この際、車両前後方向におけるデフレクタ32の断面形状は、所望する走行風の偏向方向に応じて適宜の形状に形成してもよい。
【0095】
また、位置決め台座142の上方の空間を整流範囲Wとしたが、これに限定せず、ウインドウ枠材10の上方であれば、適宜の範囲を整流範囲としてもよい。例えば、ウインドウ枠材10における乗員と対向する部分の上方を整流範囲としてもよい。
【0096】
また、ウインドウ枠材10における車幅方向略中央近傍に軸部31を配置したが、これに限定せず、整流範囲Wにデフレクタ先端部321が突出する構成であれば、適宜の位置に軸部31を設けてもよい。例えば、ウインドウ枠材10における乗員と対向する部分に軸部31を設けて、ウインドウ枠材10における車幅方向外側の上方、または車幅方向内側の上方の空間である整流範囲Wに対して、デフレクタ32が突出するようにしてもよい。
【0097】
また、開閉ルーフ20の車幅方向外側両端に位置決め部材25を配置したが、これに限定せず、例えば、ウインドウ枠材10の車幅方向外側両端にロック受け部141を配置し、開閉ルーフ20の車幅方向外側両端にロック機構部を配置してもよい。この場合であっても、車両1の整流構造は、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0098】
また、ウインドウ枠材10に位置決め台座142を装着固定し、開閉ルーフ20に位置決め部材25を装着固定した構成としたが、これに限定せず、ウインドウ枠材10に位置決め部材を装着固定し、開閉ルーフ20に位置決め台座を装着固定した構成としてもよい。
また、デフレクタ32を付勢する付勢手段としてトーションスプリング33を用いて説明したが、これに限定せず、デフレクタ32を昇降可能であれば適宜の付勢手段であってもよい。
【0099】
また、デフレクタ先端部321に切欠き部分321aを設けたが、これに限定せず、少なくとも車両下方側が開口した切欠き部分を、開閉ルーフ20の位置決め部材25などの位置に応じて設けてもよい。例えば、格納位置にデフレクタ32が位置する状態において、開閉ルーフ20におけるデフレクタ中間部322と対向する位置に、位置決め部材25を備えている場合、デフレクタ中間部322に切欠き部分321aを設けてもよい。
【0100】
また、トリム延設部126にデフレクタ装置30を配置する構成としたが、これに限定せず、ウインドウ枠材10に配設される構成であれば、適宜の構成としてもよい。例えば、ヘッダパネル123とは別体で構成した取付け部材を、ヘッダパネル123に装着するとともに、取付け部材に軸部31、デフレクタ32、及びトーションスプリング33を装着する構成としてもよい。あるいは軸部を一体形成した取付け部材に、デフレクタ32、及びトーションスプリング33を装着する構成としてもよい。
【0101】
また、デフレクタ32における車幅方向内側にストッパ部323を設けたが、これに限定せず、デフレクタ32の回転を規制することができれば、適宜の構成としてもよい。例えば、ヘッダトリム125、あるいはトリム延設部126から膨出して形成するとともに、デフレクタ32と当接するストッパ部としてもよい。
【0102】
また、軸部31として、例えば、一端近傍にねじ山を有し、他端に頭部を有するボルトと、ネジ山に螺合するナットとで構成した軸部、あるいは一端にフランジを有し、他端に径方向に貫通孔を有する柱状部材と、貫通孔に挿着される抜け止めピンとで構成した軸部としたが、これに限定せず、デフレクタ32を回転自在に軸支可能であれば適宜の構成としてもよい。
【0103】
また、車両後方へ向けて湾曲するように傾斜したデフレクタ先端部321を有するデフレクタ32としたが、これに限定せず、適宜の形状のデフレクタとしてもよい。例えば、所定の厚みを有する略平板状のデフレクタであってもよい。あるいは、ヘッダトリム125の後面に沿うように形成したデフレクタであってもよい。
【0104】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の付勢手段は、実施形態のトーションスプリング33に対応し、
以下同様に、
開閉ルーフ車は、車両1に対応し、
所定範囲は、整流範囲Wに対応し、
受風部は、デフレクタ先端部321の上方部分に対応し、
位置決め手段は、位置決め部材25に対応し、
切欠き部分は、切欠き部分321aに対応し、
対向突出部は、デッキカバー23に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。