特許第6237599号(P6237599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237599
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】開閉ルーフ車
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/22 20060101AFI20171120BHJP
   B60J 7/12 20060101ALI20171120BHJP
   B60J 1/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60J7/22
   B60J7/12 F
   B60J1/18 J
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-247629(P2014-247629)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-107855(P2016-107855A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大平 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】久文 陽子
(72)【発明者】
【氏名】鯉渕 達夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】望月 政徳
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−213066(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011056729(DE,A1)
【文献】 実開昭58−089420(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/18
7/12
7/22
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、
開閉可能な開閉ルーフと、
左右ピラー部間に有するバックウインド開口を覆うバックウインドと、
上記フロントヘッダの車幅方向略中央に対して車幅方向両外側に備えた一対のデフレクタと
上記デフレクタを上記フロントヘッダ上端より上方に位置する展開位置と、下方に位置する格納位置との間で昇降させる昇降装置と、を備え、
上記開閉ルーフおよび上記バックウインドは、互いに連動して夫々車室上部、上記バックウインド開口を開閉可能に構成し、
上記一対のデフレクタは、上記開閉ルーフ開時に上記バックウインド開口の幅の少なくとも一部をカバーする幅に配され
上記開閉ルーフに設けたロック機構が係止するロック受け部が上記フロントヘッダの車幅方向略中央に配設され、
上記昇降装置は、
上記一対のデフレクタが、上記ロック受け部に対して車幅方向の外側の上記格納位置から上記ロック受け部の直上にて互いに近接する上記展開位置まで略中央側に移動しながら上昇するとともに、上記展開位置から上記格納位置まで車幅方向の外側に移動しながら降下することを特徴とする
開閉ルーフ
【請求項2】
車両の上記フロントヘッダよりも後部に、上記左右ピラー部を車幅方向に締結するリヤヘッダ部を備えた
請求項1に記載の開閉ルーフ
【請求項3】
上記バックウインド開口の車両前後方向の開口面積が車両後方から前方に向けて徐々に小さくなるよう構成した
請求項1、又は2に記載の開閉ルーフ車。
【請求項4】
フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、
開閉可能な開閉ルーフと、
左右ピラー部間に有するバックウインド開口を覆うバックウインドと、
上記フロントヘッダに備えたデフレクタと、
上記デフレクタを上記フロントヘッダ上端より上方に位置する展開位置と、下方に位置する格納位置との間で昇降させる昇降装置と、を備え、
上記開閉ルーフおよび上記バックウインドは、互いに連動して夫々車室上部、上記バックウインド開口を開閉可能に構成し、
上記デフレクタは、上記開閉ルーフ開時に上記展開位置となり、上記バックウインド開口の幅の少なくとも一部をカバーする幅を有してフロントヘッダの車幅方向略中央に配される一方、
上記開閉ルーフ閉時に上記格納位置となり、上記フロントヘッダの車幅方向略中央に対して左右いずれか一方に配される構成とし、
上記開閉ルーフに設けたロック機構が係止するロック受け部が上記フロントヘッダの車幅方向略中央に配設され、
上記昇降装置は、
上記デフレクタが、上記ロック受け部に対して車幅方向の外側の上記格納位置から上記ロック受け部の直上に位置する上記展開位置まで略中央側に移動しながら上昇するとともに、上記展開位置から上記格納位置まで車幅方向の外側に移動しながら降下することを特徴とする
開閉ルーフ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、開閉可能な開閉ルーフと、該フロントヘッダに固定され、少なくとも開閉ルーフ開時にはフロントヘッダ上端より上方へ突出するデフレクタと、を有する開閉ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
乗員が乗り込む車室部の上部に開閉自在な開閉ルーフを有する自動車、所謂、オープンカーにおいて、開閉ルーフが閉じた状態(クローズ状態)では、車両前方からの走行風が車体表面に沿って車両後方へ流動する。
【0003】
一方、開閉ルーフが開いた状態(オープン状態)では、車両上部の開口によって走行風が車両後方へ安定して流れ難くなるため、開閉ルーフが閉じた状態に比べて、車両上部を流れる走行風の流れが変化する。
【0004】
このため、開閉ルーフが開いた状態では、車室部内へ巻き込むように走行風が流動することによって発生する騒音(所謂、巻込み音)や、フロントウインドガラスを支持するウインド枠材と走行風との衝突によって発生する騒音(所謂、風切り音)などが発生するおそれがある。このように開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音は、乗員に不快感を与える要因となる。
そこで、開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音を抑制する様々な技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、車室部上方で開口する開口部を開閉する開閉ルーフを有する車両において、該開口部の前縁に有する前部固定屋根(フロントヘッダ)にエアデフレクタと、開閉ルーフを開いた際、エアデフレクタを車両上方、かつ車幅方向内側へ向けて略平行移動させる昇降式支持手段とを備えたエアデフレクタ装置が提案されている。
【0006】
特許文献1によれば、エアデフレクタにより、フロントヘッダの車幅方向両外方部にから斜後上方へ突出するよう上昇させて整流し、開閉ルーフを開いた状態における特有の騒音を抑制できるとされている。
【0007】
しかし、特許文献1に例示されるような従来の車両では、車室部の上方に配置された開閉ルーフを開いた状態としても車室部の後方に配置されたバックウインドが開くものではないため、デフレクタは開口部の車幅方向外方部を整流する機能を有するもので足りるものの、バックウインドも開く構造とした際には、フロントヘッダや車室部を越えた後流の一部が降下してバックウインド開口を通じて車室部内へ巻き込まれ、車室部内側の快適性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−55125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこでこの発明は、フロントヘッダを越えた走行風の一部がバックウインド開口を通じて車室部内へ巻き込まれることを抑制できる開閉ルーフの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、開閉可能な開閉ルーフと、左右ピラー部間に有するバックウインド開口を覆うバックウインドと、上記フロントヘッダの車幅方向略中央に対して車幅方向両外側に備えた一対のデフレクタと、上記デフレクタを上記フロントヘッダ上端より上方に位置する展開位置と、下方に位置する格納位置との間で昇降させる昇降装置と、を備え、上記開閉ルーフおよび上記バックウインドは、互いに連動して夫々車室上部、上記バックウインド開口を開閉可能に構成し、上記一対のデフレクタは、上記開閉ルーフ開時に上記バックウインド開口の幅の少なくとも一部をカバーする幅に配され、上記開閉ルーフに設けたロック機構が係止するロック受け部が上記フロントヘッダの車幅方向略中央に配設され、上記昇降装置は、上記一対のデフレクタが、上記ロック受け部に対して車幅方向の外側の上記格納位置から上記ロック受け部の直上にて互いに近接する上記展開位置まで略中央側に移動しながら上昇するとともに、上記展開位置から上記格納位置まで車幅方向の外側に移動しながら降下することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、フロントヘッダを越えた走行風の一部がバックウインド開口を通じて車室部内へ巻き込まれることを抑制できる。
【0012】
具体的には、車両走行中においては、フロントヘッダよりも後方が負圧になるため、フロントヘッダを越えた走行風の一部は、車室部の後方辺りで車両側に引き寄せられて降下し、その降下した風は、バックウインドが開く構成においては、巻き込み風としてバックウインド開口から車室部内側へ流入し易くなる。
【0013】
これに対して、本発明は、デフレクタを、平面視で車幅方向中央を中心に、左右ピラー部間に有するバックウインド開口幅の少なくとも一部をカバーする幅に配されるよう構成したため、上記デフレクタによって、該デフレクタを乗り越えた走行風を、バックウインド開口から巻き込まれない後方遠方まで流すことができる。
従って、該バックウインド開口から車室部内側へ流入する巻き込み風の発生を抑制することができ、車室部内側の快適性を確保することができる。
【0014】
この発明の態様として、車両の上記フロントヘッダよりも後部に、上記左右ピラー部を車幅方向に締結するリヤヘッダ部を備えたものである。
【0015】
上記構成によれば、リヤヘッダは、上記左右ピラーとともに前方視門型形状を構成するため、フロントヘッダを越え、さらにリヤヘッダを越えた走行風の一部が、車室部の後方のデッキカバー側に負圧により引き込まれて降下した際に、その引き込まれた風は、フロントヘッダ、及び左右ピラーの内側に構成される上記バックウインド開口を通じて車室部内に巻き込まれ易くなる。
【0016】
これに対して、本発明は、上述したように、デフレクタによって、車室部の後方のデッキカバー側への走行風の引き込みを抑制できるため、該バックウインド開口から車室部内側へ流入する巻き込み風の発生を抑制することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、上記バックウインド開口の車両前後方向の開口面積が車両後方から前方に向けて徐々に小さくなるよう構成したものである。
【0018】
上記構成によれば、上記バックウインド開口は車両後方から前方に向けて先細り形状、すなわち先すぼまり形状となるため、フロントヘッダを越え、さらにリヤヘッダを越えた走行風の一部が、車室部の後方のデッキカバー側に引き込まれて降下した際に、その引き込まれた風は、フロントヘッダ、及び左右ピラーの内側に構成される上記バックウインド開口を通じて車室部内により一層、巻き込まれ易くなる。
【0019】
これに対して、本発明は、上述したように、デフレクタによって、車室部の後方のデッキカバー側への走行風の引き込みを抑制できるため、該バックウインド開口から車室部内側への巻き込み風の発生を抑制することができる。
【0020】
なお、上述したように、上記バックウインド開口の開口面積が車両後方から前方に向けて徐々に小さくなる構成としては、例えば、平面視または後面視で、上記左右ピラー間の幅が上記バックウインドに向けて徐々に小さくなる構成も含むものとする。
この発明は、フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、開閉可能な開閉ルーフと、左右ピラー部間に有するバックウインド開口を覆うバックウインドと、上記フロントヘッダに備えたデフレクタと、上記デフレクタを上記フロントヘッダ上端より上方に位置する展開位置と、下方に位置する格納位置との間で昇降させる昇降装置と、を備え、上記開閉ルーフおよび上記バックウインドは、互いに連動して夫々車室上部、上記バックウインド開口を開閉可能に構成し、上記デフレクタは、上記開閉ルーフ開時に上記展開位置となり、上記バックウインド開口の幅の少なくとも一部をカバーする幅を有してフロントヘッダの車幅方向略中央に配される一方、上記開閉ルーフ閉時に上記格納位置となり、上記フロントヘッダの車幅方向略中央に対して左右いずれか一方に配される構成とし、上記開閉ルーフに設けたロック機構が係止するロック受け部が上記フロントヘッダの車幅方向略中央に配設され、上記昇降装置は、上記デフレクタが、上記ロック受け部に対して車幅方向の外側の上記格納位置から上記ロック受け部の直上に位置する上記展開位置まで略中央側に移動しながら上昇するとともに、上記展開位置から上記格納位置まで車幅方向の外側に移動しながら降下することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、フロントヘッダを越えた走行風の一部がバックウインド開口を通じて車室部内へ巻き込まれることを抑制できる開閉ルーフを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態のルーフ開放状態のオープンカーの斜視図。
図2】本実施形態のルーフ閉鎖状態のオープンカーの斜視図。
図3】開閉ルーフを格納開始した状態における車両の左側面を示す左側面図。
図4】ルーフ開放状態の車両を後方上方から視た斜視図。
図5】本実施形態のルーフ開放状態のオープンカーの平面図。
図6】車両後方から見たウインド枠材上部の構成説明図。
図7】デフレクタ上昇状態における図6(a)中のA−A線矢視断面図。
図8】デフレクタ降下状態における図6(a)中のA−A線矢視断面図。
図9】デフレクタ降下状態におけるデフレクタ装置の底面を示す底面図。
図10】本実施形態の場合の走行風の流れを示す作用説明図。
図11】従来構造の場合の走行風の流れを示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印Uは車両上方を示す。
【0024】
図1図9は本実施形態のオープンカー1を示し、図1は本実施形態のルーフ開放状態のオープンカー1の右斜め前方から視た斜視図、図2は本実施形態のルーフ閉鎖状態のオープンカー1の右斜め前方から視た斜視図を示し、図3は開閉ルーフ20を格納開始した状態におけるオープンカー1の左側面を示す左側面図を示し、図4はルーフ開放状態とし、且つデフレクタ31を上昇させた状態の本実施形態のオープンカー1を後方上方から視た斜視図を示し、図5はルーフ開放状態とし、且つデフレクタ31を上昇させた状態の本実施形態のオープンカー1の平面図を示し、図6(a)はウインド枠材10における上部を車両後方から見た背面図を示し、図6(b)は図6(a)中の領域Zの拡大図を示す。図7はデフレクタ31上昇状態における図6(a)中のA−A線矢視断面図を示し、図8はデフレクタ31降下状態における図6(a)中のA−A線矢視断面図を示し、図9はデフレクタ31降下状態におけるデフレクタ装置30の底面を示す底面図を示す。また、図10は本実施形態の場合の走行風の流れを示す作用説明図を示し、図11は従来構造の場合の走行風の流れを示す作用説明図を示す。
なお、図3中において図示を簡略化するために開閉ルーフ20の格納リンク機構の図示を省略している。図3図5は車両の前部を省略して図示し、図10、及び図11中のデッキカバー71部分については車幅方向の中間部分を車両前後方向に沿った断面で示している。
【0025】
本実施形態におけるオープンカー1は、図1及び図2に示すように、前輪2やボンネット3が配設された車両前部4と、後輪5、トランクルーム213を閉塞するトランクリッド6、及びリヤフェンダ216等が配設された車両後部7と、車両前部4及び車両後部7との間に位置するとともに、乗員が乗り込む車室部8とで構成している。そして、オープンカー1は、車室部8の車両上方を覆うルーフ部分が開閉自在に構成された車両である。
【0026】
オープンカー1における開閉ルーフ20は、図1及び図2に示すように、車室部8の上部において、フロントウインドガラス9を支持するウインド枠材10の上部に着脱自在に連結されるルーフ前部21と、ルーフ前部21の後方に位置するルーフ後部22とで構成している。
【0027】
この開閉ルーフ20は、車室部8の後方に位置するデッキカバー71の下方に設けた格納空間(図示省略)に折り畳むようにして格納される構成とする。より詳しくは、開閉ルーフ20は、図3に示すように、乗員の操作によって、車両後方上方へデッキカバー71が移動したのち、車両前後方向に分離したルーフ前部21、及びルーフ後部22が、バックウインドガラス24とともに折り畳まれるようにして車両後方の格納空間に格納される構成である。
【0028】
さらに、開閉ルーフ20におけるルーフ前部21には、車幅方向外側の両端に車両前方へ突出する位置決め部材(図示省略)を備えるとともに、車幅方向略中央に、ロック機構21a(図6(a)参照)を備えている。
【0029】
ロック機構21aは、図6(a)に示すように、開閉ルーフ20の車幅方向への移動が規制された状態において、ウインド枠材10に設けたロック受け部141(図6(a)参照)に係合する、あるいはロック受け部141との係合を解放する機能を有している。
なお、図6(a)中のロック機構21aは、ウインド枠材10に設けた後述するロック受け部141に係合している状態を示す。
【0030】
位置決め部材は、詳細な図示を省略するが、ルーフ前部21に装着固定されるベースプレートと、ベースプレートの先端を覆うように形成したアルミダイキャスト製の先端部分とで構成している。この位置決め部材は、開閉ルーフ20を閉じる際、ウインド枠材10の上部における車幅方向左右両側に設けた後述する位置決め台座142(図6(a)参照)に挿入することで、開閉ルーフ20の車幅方向への移動を規制するものである。
【0031】
ウインド枠材10は、図1及び図5に示すように、左右一対のフロントピラー110と、フロントピラー110の上部を車幅方向で連結するフロントヘッダ120とで構成している。
フロントピラー110は、ピラーパネルと、車両の意匠面を構成するピラーガーニッシュと、車室部8側の意匠部分であるピラートリムとで構成している(図示省略)。
【0032】
フロントヘッダ120は、図7に示すように、車両上方に位置するヘッダアウタパネル121(図7参照)、及び車両下方に位置するヘッダインナパネル122(図7参照)を一体的に接合したヘッダパネル123(図7参照)と、車両の意匠面を構成するヘッダガーニッシュ124(図7参照)と、車室部8側の意匠部分であるヘッダトリム125(図6(a)参照)とで構成している。
【0033】
加えて、ウインド枠材10のヘッダパネル123における後端には、図6(a)、及び図7に示すように、開閉ルーフ20の前端との隙間を閉塞するウェザストリップゴム132を装着している。
【0034】
このようなウインド枠材10の上部(ヘッダパネル123)には、図6(a)に示すように、開閉ルーフ20のロック機構21aが係止するロック受け部141が車幅方向略中央に配設され、位置決め台座142が車幅方向外側の両端に装着されている。
上述したロック機構21a、及びロック受け部141により、ウインド枠材10と開閉ルーフ20とを連結する、あるは連結を解除することができる。
【0035】
位置決め台座142は、アルミダイキャスト製であって、開閉ルーフ20の図示省略する上記位置決め部材の挿入を許容する凹部(図示省略)が形成されている。この位置決め台座142は、ヘッダインナパネル122の下面に対してボルト止めによって固定されている。
【0036】
さらに、ウインド枠材10の上部には、車両前方からフロントヘッダ120を越えた走行風の一部がバックウインド開口19を通じて車室部8内へ巻き込まれることを抑制するデフレクタ装置30を備えている。
【0037】
また、図1図5に示すように、サイドドア210のドアガラス211後端よりも僅かに後側には、ルーフ閉鎖状態、或いはルーフ開放状態に関わらず、リヤフェンダ216の上端部よりも上方へ突出するようにBピラー50を車体本体200から立設している。
【0038】
Bピラー50は、その基端部(下部)が車両本体200の図示しないピラーインナーパネルにブラケット(図示省略)を介して固定され、図1図5に示すように、サイドドア210のドア本体部から上昇させたドガラス211の後端に当接するピラー前側ウェザーストリップ60Fと、後述する突出部75の前端に当接するピラー後側ウェザーストリップ60Rを前後各側に保持し、さらに、外面に外観意匠面を構成するガーニッシュ62を装着している。
【0039】
このような車幅方向の左右両側の一対のBピラー50は、車両平面視、及び後面視で、該一対のBピラー50の間隔、すなわちバックウインド開口19の幅が車両後方から前方に向けて小さくなる先細り形状、すなわち、先すぼまり形状に形成している。
【0040】
また、上記デッキカバー71は、図1図5に示すように、車室部8とトランクルーム213との間の車両外面を構成し、幅方向に延びて格納空間(図示省略)を閉塞するプレート状のデッキカバーベース部72と、該デッキカバーベース部72の車幅方向の両側において、閉止時には車両本体200の上部外観面を形成するようにデッキカバー71の主に前部側が上方に突出する突出部75と、該突出部75間に架設したデッキカバーヘッダ76とで一体に形成している。
【0041】
デッキカバーベース部72は、図1図2に示すように、デッキカバー71が定位置において、トランクリッド6の上面と略フラットになる略平坦な上面を有する。
【0042】
図1図2図4及び図5に示すように、突出部75の後部は、デッキカバーベース部72から後方に至るまで延設し、格納空間の前後方向の長さよりも長く形成している。突出部75は、その前端がデッキカバーヘッダ76と略同じ高さまで突出し、後端がトランクリッド6の上面と略同じ高さとなるまで前高後低状に緩やかに傾斜する上方への突出形状で形成している(同図参照)。
デッキカバーヘッダ76は、幅方向に直線状に延びる閉断面構造で構成し、幅方向の両側の突出部75の前部上端の間、すなわち車幅方向の左右各側に備えた一対のBピラー50に横架している(図1図5参照)。
すなわち、デッキカバー71は、一対の突出部75、及び一対のBピラー50と、デッキカバーヘッダ76とで前方視門型形状に構成している。
【0043】
図4、及び図5に示すように、車両本体200の車室部8の後側部分には、デッキカバーベース部72と、幅方向の両側のBピラー50、及び突出部75と、デッキカバーヘッダ76とで囲まれて車両後方から前方視略四角形状に開口して、バックウインドガラス24が取り外し可能に配設されるバックウインド開口19を形成し、該バックウインド開口19は、車室部8側と車室部8外側とに車両前後方向に連通する。
【0044】
突出部75は、その前端がBピラー50に備えたピラー後側ウェザーストリップ60Rに当接するように該Bピラー50の後側に配置され(図1図2図4図5参照)、車幅方向内側側面が車両後方から車両前方(すなわちバックウインド開口19)に向けて車幅方向内側へ徐々に下方広がり状に形成し、車幅方向の両側に配置した一対の突出部75の間隔が車両後方から車両前方に向けて徐々に幅小になるように形成している。
すなわち、このようなBピラー50、及び突出部75と、Bピラー50間に横架したデッキカバーヘッダ76とにより、デッキカバー71は、バックウインド開口19に向かって開口面積が小さくなる先細り形状、換言すると、先すぼまり形状に形成している。
【0045】
本実施形態のオープンカー1は、ルーフ開放状態としたとき、開閉ルーフ20、及びバックウインドガラス24が格納空間に格納され、車室部8の上方、及び後方が開口し、車両本体200における車室部8よりも上方及び後方には、幅方向に横架したデッキカバーヘッダ76と、車幅方向の両側から上方に突出するBピラー50、及び突出部75とが残った状態となる(図1図4、及び図5参照)。
【0046】
引き続き、上記デフレクタ装置30について、図6から図9を用いて詳しく説明する。
【0047】
なお、図7、及び図8中においてヘッダトリム125(図6(a)参照)の図示を省略している。さらに、図6(a),(b)中において、格納位置におけるデフレクタ31を二点鎖線で示している。加えて、図6(a),(b)、及び図9において図示を明確にするため、開閉ルーフ20の図示を省略している。
【0048】
デフレクタ装置30は、図1図4図6(a)及び図7に示すように、開閉ルーフ20が開いた状態において、フロントヘッダ120上端よりも、詳しくは、ウェザストリップゴム132の上部よりもデフレクタ31が上昇した展開位置と、図2及び図8に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、フロントヘッダ120上端よりも、詳しくは、ウェザストリップゴム132の上部よりもデフレクタ31が下降した格納位置とに、デフレクタ31を昇降させる機構を有している。
【0049】
より詳しくは、デフレクタ装置30は、図6(a),(b)、図7、及び図9に示すように、ウェザストリップゴム132の車両後方側に位置するデフレクタ31と、デフレクタ31の下部に上端が連結された連結部材32と、ヘッダインナパネル122とで連結部材32を挟持する挟持部材33とで構成している。デフレクタ装置30は、ウインド枠材10の車幅方向の中間部分に設けたロック受け部14に対して車幅方向の両外側にそれぞれ左右対称形状で配設している。
なお、連結部材32、及び挟持部材33は、デフレクタ31を昇降させる昇降支持手段として機能する。
【0050】
デフレクタ31は、図6(a),(b)、図7図9に示すように、開閉ルーフ20が開いた状態において、ウェザストリップゴム132よりも車両上方へ突出するデフレクタ本体部311と、デフレクタ本体部311における車幅方向略中央近傍を車両下方に延設したデフレクタ基部312とを一体形成して構成している。
【0051】
デフレクタ本体部311は、図6(a)に示すように、車両上下方向の長さに対して、車幅方向の長さが長い背面視略矩形に形成している。
デフレクタ本体部311における車幅方向の長さは、開閉ルーフ20が開いた状態とし、且つ、展開位置に配置されるとともにウインド枠材10の車幅方向の左右各側に備えた一対のデフレクタ31によって、平面視で車幅方向中央を中心に、車幅方向の左右各側に配設したBピラー50の間に相当するバックウインド開口19の少なくとも一部をカバーする幅に配される長さで形成している。
すなわち、デフレクタ本体部311は、車幅方向の左右各側において位置決め台座142の車幅方向内側端部よりも車幅方向内側から、ウインド枠材10における車幅方向略中央近傍に至る長さに形成している。
【0052】
さらに、デフレクタ本体部311は、図7に示すように、車両前後方向に沿った断面において、下端に対して上端が車両後方側に位置するとともに、車両斜め後方下方に凸するように僅かに湾曲した断面形状に形成している。
【0053】
デフレクタ基部312は、図6(a),(b)、及び図7に示すように、デフレクタ本体部311における車幅方向略中央近傍において、車両下方に向けて垂設した背面視略矩形の平板状に形成している。このデフレクタ基部312には、車幅方向に所定間隔を隔てて貫通形成するとともに、後述する連結部材32を回転自在に支持する連結孔312aを2つ形成している(図7、及び図9参照)。
【0054】
なお、デフレクタ31の上下方向の長さは、フロントヘッダ120の上下長さよりも短い長さであり、且つ、開閉ルーフ20が閉じた状態において、開閉ルーフ20の前端下面21dと、挟持部材33(後述する挟持部材33の底部331)との上下方向間隔よりも短い長さで形成している(図8参照)。
【0055】
連結部材32は、図6(a),(b)〜図9に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てて、デフレクタ31の下部から車両上下方向に延びる一対の連結支持部321と、ヘッダパネル123の下面に沿って車両前後方向に延びる一対の延設部322と、延設部322の前端から車幅方向に延びる横架部323とを、弾性を有する1本の金属製丸棒材を折り曲げることで、弾性変形(撓み変形)していない状態で側面視倒位の略L字形状で形成するとともに(図7参照)、平面視略コの字形状で形成している。
【0056】
より詳しくは、連結支持部321は、図7及び図9に示すように、車両前方へ向けて延びる先端部分321aを上端に有するとともに、先端部分321aの後端を車両下方へ所定長さ延設した形状に形成している。なお、連結支持部321は、図7及び図9に示すように、デフレクタ31の連結孔312aに挿入した先端部分321aを、略直角に屈曲させることでデフレクタ31に連結している。
【0057】
延設部322は、図7及び図9に示すように、ヘッダパネル123の前端近傍からデフレクタ31に至る車両前後方向の長さを有する形状に形成している。
横架部323は、図6(b)及び図9に示すように、一対の延設部322における前端を略直角に折り曲げて、延設部322の前端同士をそれぞれ連結するように形成している。
【0058】
挟持部材33は、図6(a),(b)及び図7に示すように、車幅方向に所定長さを有するとともに、車両前後方向の断面形状が断面視略L字状であって、ヘッダインナパネル122の下面に位置する底部331と、底部331の後端から車両上方へ立設した後方壁部332とで一体形成している。
【0059】
底部331は、ヘッダインナパネル122の前端からデフレクタ31に至る前後方向の長さを有する底面視略矩形の平板状に形成している。この底部331は、上述した位置決め台座142と一体で形成されており、ヘッダインナパネル122の下面に対してボルト止めによって固定されている。
【0060】
さらに、底部331には、図9に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てて、車両前後方向に延びるとともに、車両下方に向けて凹設した2つの溝部分333を形成している。この溝部分333は、ヘッダインナパネル122とで、連結部材32における一対の延設部322を挟持可能な大きさの溝形状に形成している。
【0061】
後方壁部332は、図8に示すように、開閉ルーフ20が閉じた状態において、開閉ルーフ20における内装部材であるルーフトリム26と、デフレクタ31との間で、底部331の後端から車両上方に向けて立設している。
【0062】
この後方壁部332における連結部材32よりも車幅方向内側には、車両前方へ膨出するとともに、図6(b)に示すように、連結部材32における一方、例えば、展開位置に位置する車幅方向内側の連結支持部321と当接するストッパ部分334を形成している。
【0063】
ストッパ部分334は、格納位置に位置するデフレクタ31が展開位置に移動する際、連結部材32における延設部322の軸中心を回転中心として連結支持部321が展開位置まで回転した時、それ以上回転しないように、デフレクタ31を規制可能に車幅方向の内側に上下方向に沿った端面を形成している(図6(b)参照)。
【0064】
なお、格納位置に位置するデフレクタ31が展開位置に移動する際に、連結部材32における延設部322の軸中心を回転中心として連結支持部321は、フロントヘッダ120の車幅方向右側に配設したデフレクタ装置30であれば、背面視反時計回りに略90度回転するとともに、車幅方向左側のデフレクタ装置30であれば、背面視時計回りに略90度回動する。
【0065】
次に、上述した構成のデフレクタ装置30において、展開位置から格納位置にデフレクタ31が移動する際の動作、及び格納位置から展開位置にデフレクタ31が移動する際の動作について説明する。
但し、デフレクタ装置30は、上述したように、ウインド枠材10の車幅方向の中間部分に設けたロック受け部14に対して車幅方向の両外側にそれぞれ左右対称形状で配設しているため、背面視左側に備えたデフレクタ装置30を基に説明する。
【0066】
まず、開閉ルーフ20が開いた状態において、乗員の操作によって開閉ルーフ20が閉じられると、開閉ルーフ20は、折り畳まれていたルーフ前部21、及びルーフ後部22を展開しながら、車室部8の上方へ移動する。
【0067】
その後、車室部8の上方において、開閉ルーフ20は、図8に示すように、その前端がウインド枠材10と車両前後方向で対向する位置まで、車両上方から車両下方に向けて移動しながら、デフレクタ31の上端と当接してデフレクタ31を車両下方に押圧する。
【0068】
この際、一対の連結支持部321は、図6(a)に示すように、連結部材32における延設部322の軸中心を回転中心として、背面視反時計回りに回動するように撓みながらそれぞれ弾性変形する。加えて、一対の延設部322が、連結支持部321によって、それぞれ背面視反時計回りに捩じられるように弾性変形する(図6(a),(b)中の仮想線で示した連結支持部321参照)。
【0069】
このため、デフレクタ31は、展開位置から車両下方、かつ車幅方向外側に向けて略平行移動する(図6(a),(b)、図9参照)。そして、ウインド枠材10と車両前後方向で対向する位置まで開閉ルーフ20が移動すると、デフレクタ31が格納位置に移動完了する。
【0070】
一方、開閉ルーフ20が開くと、開閉ルーフ20による押圧が解放されるため、連結支持部321の撓みによる付勢力と、延設部322の捩れによる付勢力によって、デフレクタ31は、図6(a),(b)及び図7に示すように、格納位置から車両上方、かつ車幅方向内側に向けて略平行移動する。
【0071】
この際、連結部材32における延設部322の軸中心を回転中心として、背面視時計回りに略90度回動する連結支持部321が、ストッパ部分334(図6(b)参照)の端面に当接することで、デフレクタ31は、所望する展開位置に移動する。
【0072】
以上のような動作を実現するオープンカー1は、フロントウインドとしてのフロントウインドガラス9上部が固定されるフロントヘッダ120と、開閉可能な開閉ルーフ20と、該フロントヘッダ120に固定され、少なくとも開閉ルーフ20開時にはフロントヘッダ120上端より上方へ突出するデフレクタ31と、を有する車両において、開閉ルーフ20の開閉に関わらず車両のフロントヘッダ120よりも後部に残る左右ピラーとしてのBピラー50間にバックウインドガラス24が開閉可能に構成され(図3参照)、デフレクタ31は、平面視で車幅方向中央を中心に、Bピラー50間に有するバックウインド開口19幅の少なくとも一部をカバーする幅に配されるよう構成したものである(図4、及び図5参照)。
【0073】
上記構成により、フロントヘッダ120を越えた走行風の一部がバックウインド開口19を通じて車室部8内へ巻き込まれることを抑制できる。
【0074】
具体的には、車両走行中においては、フロントヘッダ120よりも後方が負圧になるため、バックウインドガラス24が開く構成であり、且つフロントヘッダ120にデフレクタ31を備えていない図11に例示されるような従来のオープンカー100の場合、フロントヘッダ120を越えた走行風Wの一部が、車室部8の後方のデッキカバー71側、すなわちデッキカバー71の一対の突出部75間の空間に降下することで、その降下した風が巻き込み風W1としてバックウインド開口19から車室部8内側へ流入し易くなる。
【0075】
これに対して、本実施形態のオープンカー1は、デフレクタ31を上述したようにフロントヘッダ120に構成することで、図10に示すように、フロントヘッダ120を越えた走行風Wの一部がバックウインド開口19から巻き込まれないように該走行風Wを後方遠方まで流すことができる。
【0076】
換言すると、本実施形態のオープンカー1は、デフレクタ31を上述したようにフロントヘッダ120に構成することで、例えば、デフレクタ31備えずに、走行風Wが単純にフロントヘッダ120を乗り越える場合(図11参照)と比較して、走行風Wをより後方上方へと乗り越えさせることができるため、乗り越えた走行風Wが降下する位置を車両におけるデッキカバー71よりも後方遠方とすることができる(図10参照)。
【0077】
従って、フロントヘッダ120を越えた走行風Wが、負圧により車室部8の後方のデッキカバー71側に引き込まれることを抑制できるため、バックウインド開口19から車室部8内側への巻き込み風の流入を抑制し、車室部8内側の快適性を確保することができる。
【0078】
この発明の一態様として、車両のフロントヘッダ120よりも後部に、Bピラー50を車幅方向に締結するリヤヘッダ部としてのデッキカバーヘッダ76を備えたものである(図4、及び図5参照)。
【0079】
上記構成によれば、デッキカバーヘッダ76は、Bピラー50とともに背面視門型形状に構成されるため、フロントヘッダ120を越え、さらにデッキカバーヘッダ76を越えた走行風Wの一部が、車室部8の後方のデッキカバー71に備えた一対の突出部25間の空間に引き込まれた際に、その引き込まれた風は、フロントヘッダ120、及びBピラー50で構成されるバックウインド開口19を通じて車室部8内により一層、巻き込まれ易くなる(図11参照)。
【0080】
これに対して、本実施形態のオープンカー1は、上述したように、フロントヘッダ120に備えたデフレクタ31によって走行風Wを後方遠方に流すことで、車室部8の後方のデッキカバー71の突出部25間の空間への走行風Wの引き込みを抑制できるため、該バックウインド開口19から車室部8内側への巻き込み風の流入を抑制することができる(図10参照)。
【0081】
この発明の一態様として、バックウインド開口19の車両前後方向の開口面積が車両後方から前方に向けて徐々に小さくなるよう構成したものである。
【0082】
上記構成によれば、バックウインド開口19は車両後方から前方に向けて先細り形状となるため、フロントヘッダ120を越え、さらにデッキカバーヘッダ76を越えた走行風Wの一部が、車室部8の後方のデッキカバー71に備えた一対の突出部25間の空間に引き込まれた際に、その引き込まれた風は、フロントヘッダ120、及びBピラー50の内側に構成されるバックウインド開口19を通じて車室部8内により一層、巻き込まれ易くなる(図11参照)。
【0083】
これに対して、本実施形態のオープンカー1は、上述したように、デフレクタ31によって、車室部8の後方のデッキカバー71に備えた一対の突出部25間の空間への走行風Wの引き込みを抑制できるため、該バックウインド開口19を通じてデッキカバー71側から車室部8内側への巻き込み風の流入を抑制することができる(図10参照)。
【0084】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のリヤヘッダ部は、実施例のデッキカバーヘッダ76に対応し、
以下、同様に、
フロントウインドは、フロントウインドガラス9に対応し、
バックウインドは、バックウインドガラス24に対応し、
左右ピラー部は、Bピラー50に対応し、
車両は、オープンカー1に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0085】
具体的には、デフレクタ装置30は、上述したように、ウインド枠材10の上部(フロントヘッダ120)の車幅方向の中間部分に設けたロック受け部14に対して車幅方向の両外側にそれぞれ左右対称形状で配設した一対のデフレクタ31を、車幅方向の外側から中央側に移動しながら上昇するとともに、車幅方向の中央側から外側に移動しながら降下するデフレクタ昇降構造で構成している。
【0086】
ここでウインド枠材10の上部の車幅方向略中央には、図6(a)に示すように、ロック受け部141が配設されているが、上述したデフレクタ昇降構造であれば、デフレクタ31を展開位置にしたとき、車幅方向の中央側において左右一対のデフレクタ31を車幅方向において互いに略隙間なく近接した状態で配置することができ、バックウインド開口19の開口幅の特に中央部分から車室部8内側への巻き込み風の流入を効果的に抑制できるため有効である。
【0087】
その一方で、デフレクタ31を格納位置にした状態においても、該デフレクタ31がロック受け部141やロック機構21aと干渉することがなく、ロック受け部141とロック機構21aとの係合、又は係合解除を確実に行うことができる。
【0088】
但し、本発明は、上述したデフレクタ昇降構造に限定せず、例えば、デフレクタ31が車幅方向に移動せずに略真直ぐに上昇する構成、車幅方向の内側から外側に移動しながら上昇する構成、或いはフロントヘッダ120の車幅方向略中央に対して左右いずれか一方のみに配設したデフレクタ31を昇降さる構成などを採用してもよく、平面視で車幅方向中央を中心に、Bピラー50間に有するバックウインド開口19幅の少なくとも一部をカバーする幅に配されるよう構成したものであれば特に限定しない。
【0089】
さらに本発明は、フロントヘッダ120に対して上述したデフレクタ昇降構造でデフレクタ31を昇降させるに限らず、例えば、フロントヘッダ120の上部に、デフレクタ31におけるデフレクタ基部312を車幅方向に延びる軸を回転軸として枢着したデフレクタ昇降構造とすることができる(図示省略)。
【0090】
具体的には、図示しないが、他の実施形態のデフレクタ昇降構造として、格納位置において、デフレクタ31をフロントヘッダ120に対して折り曲げてフロントヘッダ120の背面側と対向する対向姿勢となるように降下させるとともに、展開位置において、車幅方向に延びる回転軸回りに略180度反転させてフロントヘッダ120に対して上方へ起立した起立姿勢となるように上昇させる昇降構造とすることができる。
【0091】
その他にも、デフレクタ31は、フロントヘッダ120の上端から上方へ突出するようにフロントヘッダ120に対して装着する、又はフロントヘッダ120から取り外しが可能な着脱式としてもよい(図示省略)。
【0092】
さらにまた、デフレクタ31を昇降支持する手段としては、一対の連結支持部321を備えた連結部材32に限らず、例えば、図示しないが、デフレクタ31を支持するリンクと、該リンクを展開位置に付勢する捩じりコイルばねを備えた構成とするなど、他の昇降支持手段を採用してもよい。
【0093】
また、この実施形態のオープンカー1は、車両のフロントヘッダ120よりも後部に、Bピラー50を車幅方向に締結するリヤヘッダ部としてのデッキカバーヘッダ76を備えたものであるが、本発明のデフレクタは、この実施形態に適用するに限定せず、例えば、デッキカバーヘッダ76を備えずにフロントヘッダ120よりも後部に残るBピラー50のみによって、該Bピラー50間にバックウインド開口19を構成したものに適用してもよい。
【0094】
また、本発明は、上述したように一対のBピラー50間や一対の突出部25間を車両後方から前方に向けて幅小となる先細り形状に形成したものに適用するに限らず、デッキカバーヘッダ76のみを、或いはデッキカバーヘッダ76についても、例えば、該デッキカバーヘッダ76下面を、後高前低状に逆R形状(孤形状)とするなどして、バックウインド開口19の開口面積が車両後方から前方に向けて小さくなる形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、例えば、フロントウインド上部が固定されるフロントヘッダと、開閉可能な開閉ルーフと、該フロントヘッダに固定され、少なくとも開閉ルーフ開時にはフロントヘッダ上端より上方へ突出するデフレクタと、を有する開閉ルーフについて有用である。
【符号の説明】
【0096】
1…オープンカー(車両)
9…フロントウインドガラス(フロントウインド)
19…バックウインド開口
20…開閉ルーフ
24…バックウインドガラス(バックウインド)
31…デフレクタ
50…Bピラー(左右ピラー部)
76…デッキカバーヘッダ(リヤヘッダ部)
120…フロントヘッダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11