特許第6237617号(P6237617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237617正極活物質−グラフェン複合体粒子およびリチウムイオン電池用正極材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237617
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】正極活物質−グラフェン複合体粒子およびリチウムイオン電池用正極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/36 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-509547(P2014-509547)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2014050914
(87)【国際公開番号】WO2014115670
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-9841(P2013-9841)
(32)【優先日】2013年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川村 博昭
(72)【発明者】
【氏名】久保田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】玉木 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 未幸
(72)【発明者】
【氏名】楊 含霄
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/141486(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0315550(US,A1)
【文献】 特開2012−099468(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/031401(WO,A1)
【文献】 特開2012−219010(JP,A)
【文献】 特開2011−076931(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102683697(CN,A)
【文献】 特開2004−014340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子と、グラフェンを含有するマトリックスとが複合化した複合体粒子状のリチウムイオン電池用正極材料であって、前記正極活物質粒子が前記マトリックス中に分散して分布するとともに、エックス線光電子測定によって測定される材料表面における炭素元素割合(%)が5%以上50%以下であり、材料全体における炭素元素割合(%)が2%以上20%以下であり、かつ前記材料表面における炭素元素割合(%)を材料全体における炭素元素割合(%)で除した値が、1.5以上7以下である、正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項2】
ラマン分光測定におけるGバンドピークのピーク半値幅が90cm−1以下である、請求項1に記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項3】
前記正極活物質粒子の平均粒子径が100nm以下であり、複合体粒子自体の平均粒子径が0.5μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項4】
前記マトリックスが空隙を有する、請求項1〜のいずれかに記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項5】
前記マトリックスの空隙率が10%以上50%以下である、請求項に記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項6】
前記正極活物質粒子がオリビン系活物質粒子である、請求項1〜のいずれかに記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の正極活物質−グラフェン複合体粒子からなるリチウムイオン電池用正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンとリチウムイオン電池用正極活物質を複合化してなる正極活物質−グラフェン複合体粒子および該正極活物質−グラフェン複合体粒子からなるリチウムイオン電池用正極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、従来のニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べて、高電圧・高エネルギー密度が得られる電池として、携帯電話やラップトップパソコンなど情報関連のモバイル通信電子機器に広く用いられている。今後、環境問題を解決する一つの手段として、電気自動車・ハイブリッド自動車などに搭載する車載用途あるいは電動工具などの産業用途に利用拡大が進むと期待される。
【0003】
リチウムイオン二次電池において、容量と出力を決める重要な要素となるのが正極活物質と負極活物質である。従来のリチウムイオン二次電池では、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極活物質として炭素が用いられることが多かった。しかし、近年のハイブリット自動車や電気自動車といったリチウムイオン電池の用途拡大に伴い、リチウムイオン電池には、容量の向上だけではなく、短時間にどれだけの容量が取り出せるかという出力の向上が求められるようになってきている。電池の高出力のためには、活物質の電子伝導性を高めると同時に、リチウムイオンの伝導性も高める必要がある。特に正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)およびその派生の3元系とよばれる層状酸化物系活物質(Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O)、あるいはマンガン酸リチウム(LiMn)といった物質が実用化されているものの、電子伝導性が低いため、現状ではアセチレンブラックなどの導電助剤を添加することで電子伝導性を補っている。
【0004】
一方でリチウムイオン二次電池の高容量化と高出力化に向けて次世代の活物質の探索も盛んに行われている。正極活物質においてはオリビン系材料、すなわちリン酸鉄リチウム(LiFePO)やリン酸マンガンリチウム(LiMnPO)といった活物質が次世代活物質として注目されている。リン酸鉄リチウムやリン酸マンガンリチウムの容量はコバルト酸リチウムに対して2割程度の増加にとどまるため高容量化への効果は限定的であるが、レアメタルであるコバルトを含有しないため、安定供給及び価格の面で大きなメリットを有する。さらに、オリビン系活物質では酸素がリンと共有結合しているため、酸素が放出されにくく、安全性が高いという特徴も併せ持つ。その中でもリン酸マンガンリチウムはリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合に放電電位が高いため、高出力化に寄与することが期待できる。しかしながら、オリビン系の正極活物質はコバルト酸リチウム(LiCoO)などと異なり、単にアセチレンブラックと混合しただけでは本来の容量を取り出すことはむずかしい。特にリン酸マンガンリチウムについてはオリビン系の中でもさらに電子伝導性が低いため実用化には至っていない。
【0005】
以上のように、実用化している活物質においても、次世代と期待される活物質においても、正極活物質においては電子伝導性の低さが課題となっている。しかしながら、従来のようにアセチレンブラックのような導電助剤を単に添加、混合するだけでは活物質と導電助剤がナノオーダーで均一にはまざらないために活物質粒子1つ1つについて電子伝導性を向上させることは困難であり、さらなる電子伝導性向上を目指して様々な試みが報告されている。
【0006】
その試みの1つは、活物質と導電助剤を均一に分散させた溶液を噴霧して造粒するというものである(例えば特許文献1)。この方法に従えば、二次粒子中に一定の割合で導電助剤が含まれ、さらに活物質同士が導電助剤を介して接するような構造を作ることが出来る。従って活物質と導電助剤を混合するだけの場合と比較して、導電助剤が効率的に機能することが期待できる。また、同様な二次粒子は、ミキサーで若干の溶剤と共に活物質と導電助剤を混合する方法で製造することも提案されている(例えば特許文献2)。
【0007】
また別な試みとして、活物質と糖などの炭素源を混合し、加熱時に炭素を得ることによって活物質をカーボンコーティングするという手法が報告されている(例えば特許文献3)。この方法によれば活物質に均一にカーボンがコーティングされることにより、活物質の電子伝導性が向上することが期待される。
【0008】
またさらに別な試みとして、活物質に繊維状の炭素を巻き付けさせるという手法が報告されている(例えば特許文献4)。該手法によれば、活物質に繊維状炭素が巻き付くことで活物質の電子伝導性が向上することが期待できる。
【0009】
その他にも活物質を二次元カーボンで被覆するという手法も提案されている(例えば特許文献5から特許文献7)。この手法では二次元カーボンの厚さが数nm以下であるために重量当たりの表面積が大きく、活物質当たりに必要な導電助剤の量を抑えながらも電子伝導性が向上することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−14340号公報
【特許文献2】特開2004−39538号公報
【特許文献3】特開2012−216473号公報
【特許文献4】特開2012−48963号公報
【特許文献5】特開2012−99467号公報
【特許文献6】特表2013−513904号公報
【特許文献7】特表2013−538933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1もしくは2の方法を用いれば活物質に電子伝導性を付与することは可能であるが、二次粒子として得られる活物質粒子と炭素の正極材料は、表面を炭素が覆う形になり、二次粒子の電子伝導性を向上させる一方で、活物質粒子へのリチウムイオンの脱挿入を阻害し、イオン伝導性を低下させるという問題が生じてしまう。
【0012】
特許文献3の方法を用いれば、活物質粒子を均一に炭素でコーティングすることが可能であるが、コーティングは活物質粒子全面に施されるために、やはり、活物質粒子へのリチウムイオンの脱挿入を阻害することが懸念される。さらに、コバルト酸リチウム(LiCoO)のような金属酸化物に同様の処理を施そうとすれば、炭素によって金属酸化物が還元されてしまうおそれもある。
【0013】
特許文献4の方法では活物質粒子と電解液との接触を妨げることなく導電処理が可能であるため、イオン伝導性を低下させることなく、電子伝導性を向上させることが可能であるように思われる。しかしながら、どれくらい活物質粒子を炭素が覆えば、イオン伝導性と電子伝導性の両立が図れるのか、またそもそも両立できるかどうかも不明である。さらに、繊維状炭素の直径は10nm以上あるため、活物質粒子が直径100nm以下となるような粒子径の小さいナノ粒子活物質の場合には、活物質粒子に沿って巻き付き、活物質粒子を覆うような複合構造はとれず、その結果、活物質に十分な電子伝導性を付与できないものであった。一方で粒子径の大きい活物質粒子を用いることは、活物質内でのリチウムイオンの移動距離が長くなり、結果としてイオン伝導性を低下させるために好ましくない。
【0014】
特許文献5の方法ではアセトン中で正極活物質と酸化グラフェンとボールミルにて混合しているが、アセトンは沸点が56℃程度と低いためにボールミル時の発熱で揮発しやすく、酸化グラフェンの極性溶媒への高分散性が生かすことが難しく、結果として酸化グラフェンが凝集しやすい。また、酸化グラフェンを500℃〜800℃の高温焼成によって還元すると、同時に存在する粒子もまた成長しやすく、粒子が成長して粒子径が大きくなればリチウムイオンの粒子内移動距離が増加し、イオン伝導性を低下させるため好ましくない。
【0015】
特許文献6の方法では酸化グラフェンとリン酸鉄リチウムの混合物を乾燥させてからボールミルによって破砕するが、乾燥状態の酸化グラフェンでは極性溶媒への高分散性が発揮されないため、ボールミル中に凝集しやすい。また酸化グラフェンを還元するのに4000〜700℃の高温焼成を用いているため、活物質粒子が成長しやすく、イオン伝導性が低下しやすい。
【0016】
特許文献7の方法では、活物質ナノ粒子を酸化グラフェンで被覆・カプセル化する方法が開示されているが、カプセル化すると電池化した際に活物質が電解液と接触するのをグラフェンが妨げ、リチウムイオンの活物質への出入りの障害となり、イオン伝導性を低下させるため好ましくない。
【0017】
上述のように、リチウムイオン二次電池の出力を向上させるには、正極活物質については、電子伝導性とイオン伝導性を向上させることが求められる。しかしながら、従来の技術ではイオン伝導性を十分に保ちつつ電子伝導性を向上させることは困難であった。
【0018】
本発明の目的は、活物質粒子へのリチウムイオンの脱挿入を阻害することを抑えながらも電子伝導性を向上させたリチウムイオン電池用正極材料、該正極材料を用いてなる電極、更には該電極を用いてなるリチウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らはナノ粒子サイズの活物質とグラフェンとを複合化させて二次粒子を形成させた際に、グラフェンを二次粒子内部にとどめることで、二次粒子表面で活物質が露出し、イオン伝導性の低下を抑制しつつも電子伝導性が向上するような構造について鋭意検討を重ねたものである。
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用するものである。
正極活物質粒子と、グラフェンを含有するマトリックスとが複合化した複合体粒子状のリチウムイオン電池用正極材料であって、エックス線光電子測定によって測定される材料表面における炭素元素割合(%)を、材料全体における炭素元素割合(%)で除した値が、1.5以上7以下である、正極活物質−グラフェン複合体粒子。
【発明の効果】
【0021】
本発明の正極活物質−グラフェン複合体粒子によれば、活物質粒子へのリチウムイオンの脱挿入の阻害を抑制しつつ、電子伝導性を向上させることができる。また、本発明の正極材料を用いることで、高容量・高出力のリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<正極活物質−グラフェン複合体粒子>
本発明の正極活物質−グラフェン複合体粒子(以下、単に「複合体粒子」という場合がある。)は、正極活物質粒子とグラフェンを含有するマトリックス(以下、単に「マトリックス」という場合がある。)とが複合した粒子であり、主としてリチウムイオン電池用正極材料としての用途を持つものである。
【0023】
本発明に用いることのできる正極活物質は特に限定されないが、容量と出力、リチウムイオン電池用正極材料としての実績から、層状岩塩型として知られているLiCoO、LiNiO、Li(NiCoAl)O(ただしx+y+z=1)、Li(NiMnCo)O(ただしx+y+z=1)、Li(NiMn)O(ただしx+y=1)、LiMnO−Li(NiMnCo)O(ただしx+y+z=1)、あるいはスピネル型として知られているLiMn,Li(MnxNiy)(ただしx+y=1)、Li(MnxAly)(ただしx+y=1)、あるいはオリビン系の正極活物質が適する。特に本発明は、電子伝導性とイオン伝導性が大きく容量と出力に影響する、オリビン系の正極活物質を用いる場合に好適である。
【0024】
本発明において、オリビン系正極活物質とは、LiMPO、LiMPOF、LiMSiO(ただし何れもMはNi,Co,Fe,Mnより1つ以上選ばれる金属元素)、あるいはこれらの混合物を指す。
【0025】
正極活物質には、ドーピング元素として、Na,Mg、K、Ca,Sc,Ti、V、Cr,Cu,Zn、Rb,Sr,Y、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag、Cd,In、Sn、Cs,Baからなる群より選択される1または2以上の金属元素が、活物質に対して10%未満の重量割合で含まれていてもよい。
【0026】
本発明の複合体粒子は、材料表面における炭素元素割合(%)を、材料全体における炭素元素割合(%)で除した値が、1.5以上7以下であることを特徴とする。当該値は、グラフェンを含有するマトリックスがどの程度複合体粒子内部へ偏在しているかを示す。すなわち該値が1.5以上7以下とは、マトリックスが複合化粒子内部に偏在しているために表面にはあまり表れていない状態であることを意味する。当該値が1.5より小さいと、マトリックスは複合体粒子内部に過度に偏在しており、複合体粒子外部との電子のやり取りが困難な状態となるために好ましくない。複合体粒子がより外部と電子のやり取りを容易に行えるようにするために、当該値は2以上であるとより好ましい。また、当該値が7よりも大きい場合にはマトリックスは複合体粒子表面に偏在しており、複合体粒子内部へのリチウムイオンの出入りが阻害されるため好ましくない。複合体粒子内部へ容易にリチウムイオンが出入りできるように、該値は6以下であることがより好ましい。
【0027】
さらに、本発明においては、表面における炭素元素割合、すなわち複合体粒子の表面原子に占める炭素原子の数の割合が50%以下であることが好ましい。表面における炭素元素割合が小さいことは、より多くの活物質粒子が複合粒子表面で露出していることを意味しており、結果としてマトリックスにより阻害されることなくリチウムイオンを活物質へ脱挿入することが可能となり、イオン導電性の向上が期待できる。複合体粒子の表面における炭素元素割合は30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。また、複合体粒子表面の炭素が少なすぎると、外部と電子をやりとりすることが困難となるため、表面における炭素元素割合は5%以上であることが好ましい。複合体粒子表面における炭素元素割合は、X線光電子分光法により測定することが可能である。X線光電子分光において、検出される全ての元素組成のうち炭素原子の占める割合を表面炭素の割合とする。X線光電子分光測定において、励起X 線は、monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6 eV)であり、X 線径は200μm、光電子脱出角度は45°である。 また、本発明においては、複合体粒子全体における炭素元素割合が2%以上10%以下であることが好ましい。複合体粒子全体における炭素元素割合が2%以上であれば、十分な電子伝導性を得ることができる。一方、10%よりも大きいと、電子伝導性は向上するが、リチウムイオンの移動を妨げるためにイオン伝導性が低下する傾向にある。なお、本発明の複合体粒子中に含まれる炭素元素の質量割合は、炭素-硫黄分析装置によって定量することが可能である。炭素-硫黄分析装置では、高周波によって複合化を空気中で加熱し、含有する炭素を完全に酸化させ、発生した二酸化炭素を赤外線により検出する。測定装置としては、HORIBA社製炭素-硫黄分析装置EMIA-810Wが挙げられる。
【0028】
本発明の複合体粒子は、平均粒子径が100nm以下であることが好ましい。粒子径が100nm以下であることで、リチウムイオンが複合体粒子内を移動する距離が短縮され、結果としてイオン伝導性が向上する場合がある。リチウムイオンの移動距離をさらに短くでき、イオン導電性をより向上できる点で、平均粒子径は50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。 また、本発明の複合体粒子の平均粒子径は、リチウムイオン二次電池の正極塗膜として用いたときに、塗膜の厚みが10μm以上100μm以下程度であることに鑑みて、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。複合体粒子の平均粒子径が0.5μm未満になると、粒子同士の凝集力が強まり、塗工性が低下する場合があるので好ましくなく、20μmより大きくなると、塗膜の厚みムラの原因となる場合があるので好ましくない。
【0029】
本発明における複合体粒子に含まれている正極活物質粒子の粒子径は、透過電子顕微鏡により測定することができる。イオンミリング装置を用いて複合体粒子の断面を出し、透過型電子顕微鏡により断面観察することで、複合体粒子内にある正極活物質粒子の形状を観察できる。この手法により正極活物質粒子が50個以上200個以下視野内に入る倍率で観察したとき、視野内のすべての粒子の粒子径の平均を、正極活物質粒子の平均粒子径とする。一個の粒子の粒子径は、粒子の最大径と最小径の平均を粒子径とする。本発明における複合体粒子の平均粒子径はレーザー回折・散乱装置によって測定されたメジアン径である。レーザー回折・散乱装置の測定は水分散系で、透過度75%〜95%に調整して測定される。
【0030】
本発明の複合体粒子におけるマトリックスは、活物質粒子の少なくとも一部を包埋するとともに、活物質粒子同士を結合して複合化粒子を形成する機能を有するものであり、構造的に見れば複合化粒子中における活物質粒子以外の部分を指す。すなわち、複合化粒子の側から見れば、活物質粒子がマトリックス中に分散して分布している。
【0031】
グラフェンの高導電性によってマトリックスの導電性をより上げられるという点において、マトリックスは本質的にグラフェンのみからなることが好ましい。本質的にグラフェンのみからなる、とは、グラフェンのみによってマトリックスが形成されていることが好ましいが、本発明の効果が失われない限度において、それ以外の物質が少量含まれることを許容することを意味する。具体的には、マトリックスはグラフェンを90重量%以上含有することが好ましい。しかしながら、マトリックスのうち50重量%未満であれば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブらグラフェン以外の導電性炭素材料が混ざっていても良い。
【0032】
なお、グラフェンとは、一般には1原子の厚さのsp2結合炭素原子のシート(単層グラフェン)を指すが、本発明においては、単層グラフェンが積層した薄片上の形態を持つ物質も含めてグラフェンと呼ぶ。また、炭素のグラファイト構造のうちの一部が水酸基又はカルボキシル基又はケトン基又はエポキシ基等によって修飾された状態のものも、グラフェンと呼ぶものとする。
【0033】
また、効率的な電子伝導性・イオン導電性を保持させるために、グラフェンの結晶子サイズの均一性が高いことが好ましい。そのため、本発明の複合体粒子は、ラマン分光測定におけるGバンドピークのピーク半値幅が90cm−1以下であることが好ましく、80cm−1以下であることがより好ましい。本発明におけるラマン測定は、励起レーザーにアルゴンイオンレーザーを用い、励起波長514.5nmで測定したときのものである。グラフェンの結晶子サイズの均一性が高いほど、Gバンドピークのピーク半値幅は小さくなる。
【0034】
本発明の複合体粒子において、マトリックスは空隙を有していることが好ましい。マトリックスが適度に空隙を有することで、複合体粒子中の電解液移動がスムーズになり、イオン導電性が向上する。空隙率が高すぎると、マトリックスと正極活物質の接触が悪くなり、電子伝導性が悪くなる傾向があるため、空隙率は50%以下であることが好ましい。より好ましい空隙率は40%以下、さらに好ましい空隙率は30%以下である。一方、空隙率が低すぎると、電解液の移動が遅くなり、イオン導電性が悪くなる傾向があるため、空隙率は10%以上であることが好ましい。より好ましい空隙率は15%以上、さらに好ましい空隙率は20%以上である。グラフェンを含む導電性マトリックスの空隙率は、下記実施例E.に記載の方法により測定する。
【0035】
<正極活物質―グラフェン複合体粒子の製造方法>
本発明の複合体粒子は、一例として、酸化グラフェンとリチウムイオン電池用正極活物質粒子を混合・粉砕する工程、及び酸化グラフェンを還元する工程により製造することができる。その他にも、酸化グラフェンとリチウムイオン電池用正極活物質粒子前駆体を混合・粉砕する工程、及び酸化グラフェンを還元し、正極活物質粒子前駆体より正極活物質粒子を生成させる工程によっても製造することができる。
【0036】
酸化グラフェンは公知の方法で作製することができる。また市販の酸化グラフェンを購入してもよい。酸化グラフェンの原料となる黒鉛は、人造黒鉛・天然黒鉛のどちらでも良いが、天然黒鉛が好ましく用いられる。原料黒鉛のメッシュ数は20000以下が好ましく、5000以下がさらに好ましい。
【0037】
酸化グラフェンの作製法は改良ハマーズ法が好ましい。その例を下記する。黒鉛(例えば石墨粉など)を原料にして、濃硫酸、硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムを入れて、25〜50℃下、0.2〜5時間攪拌しながら反応させる。その後脱イオン水を加えて希釈し、懸濁液を得て、これを引き続き80〜100℃で5〜50分間反応させる。最後に過酸化水素と脱イオン水を加え1〜30分間反応させて、酸化グラフェン分散液を得る。得られた酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄し、酸化グラフェン分散液を得る。
【0038】
各反応物の比の例としては、石墨粉、濃硫酸、硝酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムと過酸化水素の比が10g:150〜300ml:2〜8g:10〜40g:40〜80gである。濃硫酸、硝酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムを加える時は氷浴を利用して温度を制御する。過酸化水素と脱イオン水を加える時、脱イオン水の質量は過酸化水素の質量の10〜20倍である。
【0039】
酸化グラフェンは、過度に酸化されていると還元後も高導電性が発揮されないため、適度な酸化度であることが好ましい。具体的には酸化グラフェン中の、酸素原子の炭素原子に対する元素割合が0.3以上1以下であることが好ましい。酸化グラフェン中の酸素原子の炭素原子に対する割合はX線光電子分光法により測定することが可能である。
【0040】
酸化グラフェンの酸化度は、黒鉛の酸化反応に用いる酸化剤の量を変化させることで調整することができる。具体的には、酸化反応の際に用いる、黒鉛に対する硝酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムの量が多いほど高い酸化度になり、少ないほど低い酸化度になる。黒鉛に対する硝酸ナトリウムの重量比は特に限定されるものではないが、0.2以上0.8以下であることが好ましい。黒鉛に対する過マンガン酸カリウムの比は特に限定されるものではないが、1以上4以下であることが好ましい。
【0041】
なお、本発明の複合体粒子において、マトリックスは必ずしもグラフェンのみからなるとは限らないが、以下ではグラフェンのみからなる場合を例に説明する。なお、マトリックスにグラフェン以外の物質を含有させる場合には、以下の説明における「酸化グラフェン」は当該物質を含むものとする。
【0042】
本発明において、正極活物質粒子と酸化グラフェンとを複合化するための方法及び正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンとを複合化するための方法は特に限定されず、公知のミキサー・混練機を用いて複合化することができる。具体的には、自動乳鉢・三本ロール・ビーズミル・遊星ボールミル・ホモジェナイザー・プラネタリーミキサー・湿式ジェットミル・乾式ジェットミル、二軸混練機などを用いることが出来るが、中でも、正極活物質もしくは正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンをナノレベルで複合化できる点で遊星ボールミルが好適である。
【0043】
活物質粒子もしくは正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンの複合化を遊星ボールミルにて行う場合には、純水を添加して処理を行うことが好ましい。酸化グラフェンは粉体状態のものを用いるが、極性溶媒の中でもとりわけ水への親和性が高いため、少量の水を添加することで、遊星ボールミル処理中に酸化グラフェンが正極活物質粒子間によく分散し、電池に用いた際に放電容量が向上する傾向がある。水の添加量は正極活物質粒子と酸化グラフェン、もしくは正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンの合計質量の5〜15質量%程度が好適である。5%よりも少ないと水の添加効果が低くなる傾向があり、15%よりも多いと酸化グラフェンが水へ分配され酸化グラフェンが正極活物質粒子もしくは正極活物質粒子前駆体と複合化がされにくくなる傾向がある。
【0044】
上記のように酸化グラフェンと正極活物質粒子等を複合化した後、加熱等によって酸化グラフェンを還元することで、本発明の複合体粒子を得ることができる。正極活物質存在下で酸化グラフェンを加熱還元する際は、粒子の成長を抑える必要があるため、加熱温度は400℃以下が好ましく、より粒子成長を抑えるためには200℃以下がさらに好ましい。また酸化グラフェンを十分に還元し、導電性を発現させるために加熱温度は150℃以上が好ましい。加熱の雰囲気は200℃以下であれば大気雰囲気でよいが、200℃より高い温度ではグラフェンの燃焼を避けるため不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0045】
酸化グラフェンと正極活物質粒子前駆体を複合化した後、酸化グラフェンの還元工程及び該前駆体からの正極活物質粒子の生成工程によって本発明の複合体粒子を得る場合は、これらの工程は加熱によって同時に行っても良いが、還元剤を用いて酸化グラフェンをグラフェン化し、次いで加熱によって正極活物質粒子を生成させても良い。
【0046】
酸化グラフェンの還元手法としては還元剤を用いても良い。ここでいう還元剤とは、常温で液体または固体の状態で存在する物質に限られ、還元性ガスは含まれない。還元剤を使用する還元法では、雰囲気制御した熱還元ほどには還元が進まないので、グラフェン中の官能基化率を保つのに好適である。
【0047】
還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤があげられる。有機還元剤としてはアルデヒド系還元剤、ヒドラジン誘導体還元剤、アルコール系還元剤があげられ、有機還元剤の中でもアルコール系還元剤は比較的穏やかに還元することができるため、特に好適である。アルコール系還元剤として挙げられるのは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、カテコール、エタノールアミン、ドーパミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、などが挙げられ、特にベンジルアルコール、カテコール、ドーパミンが好適である。
【0048】
無機還元剤としては亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜リン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどがあげられ、無機還元剤の中でも亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムは、官能基を比較的保持しながら還元できるので、好適に用いられる。
【0049】
マトリックスに空隙を設けるためには、酸化グラフェンと正極活物質粒子等を複合化する際に添加剤を添加しておき、複合化粒子形成後に当該添加剤を除去する方法が好ましく用いられる。添加剤の除去は、上記酸化グラフェンの還元と同時に完了するようにすることが好ましい。
【0050】
本発明における添加剤としては、加熱又は溶解により除去できる物質であれば特に制限はないが、可塑性を持つことが好ましく、また、酸化グラフェンと良く混合できることが好ましい。ここでいう可塑性を持つとは、物理的な力を加えたときに変形しやすく、また変形した形を維持しやすい性質を持つことを指す。特に、高温で流動性を持ち、常温では流動性を持たない熱可塑性を持つ材料が好ましい。可塑性を持つことにより、酸化グラフェンの内部に入り込みやすくなり、空隙を作製しやすい。酸化グラフェンと良く混合できる添加剤とは、具体的には水またはN-メチルピロリドンなどの酸化グラフェンを1重量%以上溶解できる溶媒に可溶である添加剤である。また、活物質粒子と酸化グラフェンを遊星ボールミルによって複合化する際には、酸化グラフェンと添加剤が良く混合するように、添加剤を水溶液として添加するのが好ましい。
【0051】
加熱又は溶解により除去できる物質としては、水溶性の無機塩、硫黄、ポリマー、及びこれらの溶液が挙げられる。加熱により除去できる物質としては、400℃以下の不活性雰囲気で除去できる物質が好ましい。
【0052】
中でもポリマーは、可塑性を持つものが多く、酸化グラフェン内部に入り込みやすく空隙を作製しやすいため好適に用いることができる。特に、熱可塑性ポリマーが好ましく、ガラス転移温度が低いものが好ましい。添加剤に使用するポリマーのガラス転移温度は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。
【0053】
水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
【0054】
ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、デキストラン及びこれらの共重合体などが上げられる。特にポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールは、水溶性であり酸化グラフェンと混合しやすい上に、加熱のみにより除去可能であるため、好ましく用いられる。
【0055】
溶液を使用する場合、特に溶媒に制限は無いが水またはN-メチルピロリドンなどの酸化グラフェンを溶解できる溶媒が好ましい。酸化グラフェンは、極性溶剤との親和性が高く、特に水、N-メチルピロリドンへの溶解性が非常に高いため、これらの溶剤に溶解できる添加剤であれば、酸化グラフェンと混合しやすいため好適である。
【0056】
酸化グラフェンに対する添加剤の量により、マトリックスの空隙率をコントロールすることが可能である。そのため、空隙率を10%以上50%以下にするように添加剤の量を調整することが好ましい。
【0057】
添加剤の種類によって、添加剤の量と空隙率の関係は異なるので、好ましい添加剤の量は一意には決まらないが、例えばポリマーを使用する場合は、酸化グラフェンに対する添加剤の量の重量比は、0.3以上3以下であることが好ましい。また、上記の異なる添加剤を混合して用いても良い。当業者であれば、添加剤の種類や量を調整し、得られるマトリックスの空隙率を所定の範囲に制御することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例中のポリフッ化ビニリデンにはアルケマ株式会社 Kynar HSV900を、アセチレンブラックには電気化学工業株式会社製 デンカブラック(登録商標)を用いた。また、実施例中の物性値は、下記の方法によって測定した。実施例中の「部」は特に具体的な記載のない限り重量部を意味する。
【0059】
A.正極活物質粒子と複合体粒子の平均粒子径の算出
正極活物質粒子の平均粒子径は、イオンミリング装置(日立ハイテク社製、IM4000)にて複合体粒子の断面を出し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテク社製 H−9000UHR III)にて測定した。粒子径粒子径粒子径粒子径複合体粒子の平均粒子径にはレーザー回折・散乱装置(日機装株式会社製 MT3200II)によって得られるメジアン径を用いた。
【0060】
B.複合体粒子表面における炭素元素割合の測定
複合体粒子表面における炭素元素割合は複合体粒子のエックス線光電子測定によって測定した。測定にはQuantera SXM(PHI社製)を使用した。励起X線は、momochromatic Al Kα1,2線(1486.6eV)、X線径は200μm、光電子脱出角度は45°である。
【0061】
C.複合体粒子に含まれる導電性炭素の質量割合の測定
複合体粒子中に含まれる導電性炭素の質量割合の測定には、炭素・硫黄同時定量分析装置(堀場製作所製 EMIA−920V)を用いた。
【0062】
D.ラマン測定
ラマン測定はRamanor t−64000(Jobin Yvon/愛宕物産)を用いて測定した。ビーム径は100μm、光源はアルゴンイオンレーザー(波長:514.5nm)を用いた。
【0063】
E.空隙率の測定
空隙率は走査電子顕微鏡によって測定した。具体的にはイオンミリング装置(日立ハイテク社製、IM4000)により複合体粒子の断面を出し、断面を走査電子顕微鏡により倍率10,000倍で粒子の断面を測定することにより空隙率を測定した。複合体断面のうち、グラフェンマトリックスの占める部分と活物質一次粒子を占める部分は、コントラストにより識別した。グラフェンマトリックスの占める面積のうち、空隙の面積の割合を画像処理により求め、空隙率とした。
【0064】
F.充放電特性の測定
下記実施例で作製した電極板を直径15.9mmに切り出して正極とし、直径16.1mm厚さ0.2mmに切り出したリチウム箔を負極とし、直径17mmに切り出したセルガード#2400(セルガード社製)セパレータとして、LiPFを1M含有するエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の溶媒を電解液として、2032型コイン電池を作製し、電気化学評価を行った。測定は充電と放電を交互に繰り返すがすべての充電は上限電圧に達するまでレート0.1Cの定電流で行い、上限電圧に達した後は、電圧を維持したまま充電電流が0.01Cとなるまで充電することとした。放電測定は下限電圧に達するまで定電流にて放電することで測定し、レート0.1Cで3回行った後続けて3Cで3回行い、各レートの3回目の放電時の容量を放電容量とした。
また、充放電時の上限及び下限電圧は活物質に応じて変化させ、具体的には
活物質がLiMnPO4の場合、上限電圧4.4V、下限電圧2.7V、
活物質がLiFePO4の場合、上限電圧4.0V、下限電圧2.5V、
活物質がLiMn2O4の場合、上限電圧4.3V、下限電圧2.7V、
活物質がLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の場合、上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vとした。
【0065】
[実施例1−1](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
85%リン酸水溶液、硫酸マンガン五水和物(MnSO・5HO)をモル比でMn:P=1:1となるように純水に添加し撹拌した。次いで、アスコルビン酸水溶液をアスコルビン酸とマンガンのモル比が0.01:1になるように添加した。次いで、水酸化リチウム(LiOH)をモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように添加した。得られた溶液について200℃で40時間水熱処理を行い、水洗してLiMnPO粒子を得た。
【0066】
2000メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間機械攪拌し、混合液の温度は20℃以下で保持した。上述混合液を氷浴から取り出し、35℃水浴中で4時間攪拌反応し、その後イオン交換水500mlを入れて得られた懸濁液を90℃で更に15分反応を行った。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間の反応を行い、酸化グラフェン分散液を得た。これを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返し、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。得られた酸化グラフェン粉末の酸素原子の炭素原子に対する元素組成比を測定例1により測定したところ、0.53であった。
【0067】
得られたLiMnPO粒子1gと酸化グラフェン粉末0.06gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。さらに 複合体粒子前駆体を、オーブンを用いて200℃空気中で6時間加熱することにより酸化グラフェンを還元してグラフェンとし、複合体粒子を得た。上記A.に従い正極活物質粒子と複合体粒子の平均粒子径を測定すると正極活物質の平均粒子径は27nm、複合体粒子の平均粒子径は5.2μmであった。
【0068】
上記B.に従い得られた複合体粒子の表面における炭素元素割合を測定すると15.0%であり、上記C.に従い複合体粒子中に含まれ炭素元素の質量割合を測定すると2.8%であった。したがって、複合体粒子表面における炭素元素割合を複合体粒子全体に含まれる炭素元素の質量割合で除した値は5.4であり、炭素元素が複合体粒子表面よりも内部に存在することがわかった。また、上記D.に従いラマン測定を行ったところ、ピーク半値幅は75cm−1であった。
【0069】
得られた複合体粒子を用いて電極を以下のように作製した。得られた複合体粒子を700重量部導電助剤としてアセチレンブラックを40重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン60重量部、溶剤としてN-メチルピロリドンを800重量部、を加えたものをプラネタリーミキサーで混合して電極ペーストを得た。電極ペーストをアルミニウム箔(厚さ18μm)にドクターブレード(300μm)を用いて塗布し、80℃30分間乾燥して電極板を得た。
【0070】
上記F.に従い、放電容量を測定したところ、レート0.1Cで149mAh/g,レート3Cで、124mAh/gであった。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例1−2](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
LiMnPOと複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.12gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0072】
[実施例1−3](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造3)
LiMnPOと複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.24gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0073】
[実施例1−4](リン酸鉄リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
85%リン酸水溶液、硫酸鉄七水和物(FeSO・7HO)をモル比でFe:P=1:1となるように純水に添加し撹拌した。次いで、アスコルビン酸水溶液をアスコルビン酸と鉄のモル比が0.01:1になるように添加した。次いで、水酸化リチウム(LiOH)をモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように添加した。得られた溶液について200℃40時間水熱処理を行い、水洗してLiFePO粒子を得た。
【0074】
リン酸マンガンリチウムを得られたリン酸鉄リチウムに替えた以外は実施例1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0075】
[実施例1−5](マンガン酸リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
リン酸マンガンリチウムを市販のマンガン酸リチウム(LMO:LiMn 宝泉社)に替えた以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0076】
[実施例1−6](3元系活物質とグラフェンの複合体粒子の製造1)
リン酸マンガンリチウムを市販の3元系活物質(NMC:LiNi1/3Mn1/3Co1/3 宝泉社)に替えた以外は実施例1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2−1](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造4)
LiMnPOと酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2−2](リン酸鉄リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
LiFePOと酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−4と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2−3](マンガン酸リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
リン酸マンガンリチウムと酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−5と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2−4](3元系活物質とグラフェンの複合体粒子の製造2)
3元系活物質と酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−6と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3−1](還元剤を用いて酸化グラフェンをグラフェン化する工程を用いた複合体粒子の製造)
実施例2−1において、遊星ボールミルによる複合化によって得られた複合体粒子前駆体を熱還元するのではなく、複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させた。還元によって得られた複合体粒子を水洗後、実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3−2](正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンを複合化する工程を経る複合体粒子の製造)
正極活物質原料として、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸第一マンガン(MnSO4)、リン酸(H3PO4)をモル比1:1:1、溶液濃度0.1mol/kgとなる水溶液を作製した。この水溶液を、噴霧乾燥し、正極活物質であるリン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)の活物質前駆体ゲルを作製した。
【0083】
得られた活物質前駆体ゲル1gと酸化グラフェン粉末0.06gと純水0.1gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。
【0084】
得られた複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させた。還元によって得られた複合体粒子前駆体を水洗後、窒素雰囲気下600℃空気中で6時間加熱することにより、正極活物質前駆体から正極活物質を生成させ、複合体粒子を得た。得られた正極活物質について実施例1−1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0085】
[実施例3−3](空隙を有する複合体粒子の製造)
実施例2−1において、遊星ボールミルによる複合化時に、20%ポリエチレングリコール(分子量10万)水溶液0.5gを添加して複合体粒子前駆体を得た。
【0086】
得られた複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させ、さらに水洗することでポリエチレングリコールを含有する複合体粒子を得た。
【0087】
さらに、ポリエチレングリコールを含有する複合体粒子を400℃窒素中で6時間加熱することにより、添加剤のポリエチレングリコールの除去を行い、空隙のある複合体粒子を得た。上記E.に従い得られた複合体粒子の空隙率を測定すると、35%であった。また、実施例1−1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1]
LiMnPOと複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.02gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例同様に評価した結果を表1に示す。
【0089】
[比較例2]
実施例1−1と同様の方法によってLiMnPO粒子を得た後、得られたLiMnPO粒子1.0gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間粉砕し、LiMnPOナノ粒子を得た。得られたLiMnPOナノ粒子と実施例1と同様にして作成した酸化グラフェン0.06gとを乳鉢で混合し、オーブンを用いて200℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元して複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0090】
[比較例3]
LiMnPOと複合化するために添加する炭素を酸化グラフェンではなくアセチレンブラック0.2gとし、オーブンでの加熱を行わなかった以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0091】
[比較例4]
LiMnPOと複合化するために添加する炭素を酸化グラフェンではなく気相成長炭素繊維(VGCF−H 昭和電工株式会社製)0.2gとし、オーブンでの加熱を行わなかった以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得たが、複合体粒子は球状でなく、造粒されていない不均一性の高い混合物であった。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0092】
[比較例5]
実施例1−4と同様の方法によってLiFePO粒子を得た後、得られたLiFePO粒子1gと10g/リットルのスクロース水溶液10ミリリットルをジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。さらに 得られた複合体粒子前駆体を3%の水素を混合した窒素中にて700℃1時間加熱することにより、カーボンコートを有する複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0093】
【表1】