【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例中のポリフッ化ビニリデンにはアルケマ株式会社 Kynar HSV900を、アセチレンブラックには電気化学工業株式会社製 デンカブラック(登録商標)を用いた。また、実施例中の物性値は、下記の方法によって測定した。実施例中の「部」は特に具体的な記載のない限り重量部を意味する。
【0059】
A.正極活物質粒子と複合体粒子の平均粒子径の算出
正極活物質粒子の平均粒子径は、イオンミリング装置(日立ハイテク社製、IM4000)にて複合体粒子の断面を出し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテク社製 H−9000UHR III)にて測定した。粒子径粒子径粒子径粒子径複合体粒子の平均粒子径にはレーザー回折・散乱装置(日機装株式会社製 MT3200II)によって得られるメジアン径を用いた。
【0060】
B.複合体粒子表面における炭素元素割合の測定
複合体粒子表面における炭素元素割合は複合体粒子のエックス線光電子測定によって測定した。測定にはQuantera SXM(PHI社製)を使用した。励起X線は、momochromatic Al Kα1,2線(1486.6eV)、X線径は200μm、光電子脱出角度は45°である。
【0061】
C.複合体粒子に含まれる導電性炭素の質量割合の測定
複合体粒子中に含まれる導電性炭素の質量割合の測定には、炭素・硫黄同時定量分析装置(堀場製作所製 EMIA−920V)を用いた。
【0062】
D.ラマン測定
ラマン測定はRamanor t−64000(Jobin Yvon/愛宕物産)を用いて測定した。ビーム径は100μm、光源はアルゴンイオンレーザー(波長:514.5nm)を用いた。
【0063】
E.空隙率の測定
空隙率は走査電子顕微鏡によって測定した。具体的にはイオンミリング装置(日立ハイテク社製、IM4000)により複合体粒子の断面を出し、断面を走査電子顕微鏡により倍率10,000倍で粒子の断面を測定することにより空隙率を測定した。複合体断面のうち、グラフェンマトリックスの占める部分と活物質一次粒子を占める部分は、コントラストにより識別した。グラフェンマトリックスの占める面積のうち、空隙の面積の割合を画像処理により求め、空隙率とした。
【0064】
F.充放電特性の測定
下記実施例で作製した電極板を直径15.9mmに切り出して正極とし、直径16.1mm厚さ0.2mmに切り出したリチウム箔を負極とし、直径17mmに切り出したセルガード#2400(セルガード社製)セパレータとして、LiPF
6を1M含有するエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の溶媒を電解液として、2032型コイン電池を作製し、電気化学評価を行った。測定は充電と放電を交互に繰り返すがすべての充電は上限電圧に達するまでレート0.1Cの定電流で行い、上限電圧に達した後は、電圧を維持したまま充電電流が0.01Cとなるまで充電することとした。放電測定は下限電圧に達するまで定電流にて放電することで測定し、レート0.1Cで3回行った後続けて3Cで3回行い、各レートの3回目の放電時の容量を放電容量とした。
また、充放電時の上限及び下限電圧は活物質に応じて変化させ、具体的には
活物質がLiMnPO
4の場合、上限電圧4.4V、下限電圧2.7V、
活物質がLiFePO
4の場合、上限電圧4.0V、下限電圧2.5V、
活物質がLiMn
2O
4の場合、上限電圧4.3V、下限電圧2.7V、
活物質がLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2の場合、上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vとした。
【0065】
[実施例1−1](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
85%リン酸水溶液、硫酸マンガン五水和物(MnSO
4・5H
2O)をモル比でMn:P=1:1となるように純水に添加し撹拌した。次いで、アスコルビン酸水溶液をアスコルビン酸とマンガンのモル比が0.01:1になるように添加した。次いで、水酸化リチウム(LiOH)をモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように添加した。得られた溶液について200℃で40時間水熱処理を行い、水洗してLiMnPO
4粒子を得た。
【0066】
2000メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間機械攪拌し、混合液の温度は20℃以下で保持した。上述混合液を氷浴から取り出し、35℃水浴中で4時間攪拌反応し、その後イオン交換水500mlを入れて得られた懸濁液を90℃で更に15分反応を行った。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間の反応を行い、酸化グラフェン分散液を得た。これを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返し、酸化グラフェンゲルを作製した。酸化グラフェンゲルを凍結乾燥することにより、酸化グラフェン粉末を得た。得られた酸化グラフェン粉末の酸素原子の炭素原子に対する元素組成比を測定例1により測定したところ、0.53であった。
【0067】
得られたLiMnPO
4粒子1gと酸化グラフェン粉末0.06gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。さらに 複合体粒子前駆体を、オーブンを用いて200℃空気中で6時間加熱することにより酸化グラフェンを還元してグラフェンとし、複合体粒子を得た。上記A.に従い正極活物質粒子と複合体粒子の平均粒子径を測定すると正極活物質の平均粒子径は27nm、複合体粒子の平均粒子径は5.2μmであった。
【0068】
上記B.に従い得られた複合体粒子の表面における炭素元素割合を測定すると15.0%であり、上記C.に従い複合体粒子中に含まれ炭素元素の質量割合を測定すると2.8%であった。したがって、複合体粒子表面における炭素元素割合を複合体粒子全体に含まれる炭素元素の質量割合で除した値は5.4であり、炭素元素が複合体粒子表面よりも内部に存在することがわかった。また、上記D.に従いラマン測定を行ったところ、ピーク半値幅は75cm
−1であった。
【0069】
得られた複合体粒子を用いて電極を以下のように作製した。得られた複合体粒子を700重量部導電助剤としてアセチレンブラックを40重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン60重量部、溶剤としてN-メチルピロリドンを800重量部、を加えたものをプラネタリーミキサーで混合して電極ペーストを得た。電極ペーストをアルミニウム箔(厚さ18μm)にドクターブレード(300μm)を用いて塗布し、80℃30分間乾燥して電極板を得た。
【0070】
上記F.に従い、放電容量を測定したところ、レート0.1Cで149mAh/g,レート3Cで、124mAh/gであった。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例1−2](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
LiMnPO
4と複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.12gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0072】
[実施例1−3](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造3)
LiMnPO
4と複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.24gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0073】
[実施例1−4](リン酸鉄リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
85%リン酸水溶液、硫酸鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)をモル比でFe:P=1:1となるように純水に添加し撹拌した。次いで、アスコルビン酸水溶液をアスコルビン酸と鉄のモル比が0.01:1になるように添加した。次いで、水酸化リチウム(LiOH)をモル比でLi:Mn:P=3:1:1となるように添加した。得られた溶液について200℃40時間水熱処理を行い、水洗してLiFePO
4粒子を得た。
【0074】
リン酸マンガンリチウムを得られたリン酸鉄リチウムに替えた以外は実施例1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0075】
[実施例1−5](マンガン酸リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造1)
リン酸マンガンリチウムを市販のマンガン酸リチウム(LMO:LiMn
2O
4 宝泉社)に替えた以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0076】
[実施例1−6](3元系活物質とグラフェンの複合体粒子の製造1)
リン酸マンガンリチウムを市販の3元系活物質(NMC:LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2 宝泉社)に替えた以外は実施例1と同様にして複合体粒子を作製し、さらに得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2−1](リン酸マンガンリチウムとグラフェンの複合体粒子の製造4)
LiMnPO
4と酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2−2](リン酸鉄リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
LiFePO
4と酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−4と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2−3](マンガン酸リチウムとグラフェンの複合体粒子の製造2)
リン酸マンガンリチウムと酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−5と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2−4](3元系活物質とグラフェンの複合体粒子の製造2)
3元系活物質と酸化グラフェンを遊星ボールミルにて複合化する際に、純水0.1gを添加した以外は実施例1−6と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3−1](還元剤を用いて酸化グラフェンをグラフェン化する工程を用いた複合体粒子の製造)
実施例2−1において、遊星ボールミルによる複合化によって得られた複合体粒子前駆体を熱還元するのではなく、複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させた。還元によって得られた複合体粒子を水洗後、実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3−2](正極活物質粒子前駆体と酸化グラフェンを複合化する工程を経る複合体粒子の製造)
正極活物質原料として、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸第一マンガン(MnSO
4)、リン酸(H
3PO
4)をモル比1:1:1、溶液濃度0.1mol/kgとなる水溶液を作製した。この水溶液を、噴霧乾燥し、正極活物質であるリン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)の活物質前駆体ゲルを作製した。
【0083】
得られた活物質前駆体ゲル1gと酸化グラフェン粉末0.06gと純水0.1gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。
【0084】
得られた複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させた。還元によって得られた複合体粒子前駆体を水洗後、窒素雰囲気下600℃空気中で6時間加熱することにより、正極活物質前駆体から正極活物質を生成させ、複合体粒子を得た。得られた正極活物質について実施例1−1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0085】
[実施例3−3](空隙を有する複合体粒子の製造)
実施例2−1において、遊星ボールミルによる複合化時に、20%ポリエチレングリコール(分子量10万)水溶液0.5gを添加して複合体粒子前駆体を得た。
【0086】
得られた複合体粒子前駆体を純水100gに分散させ、亜ジチオン酸ナトリウム1gを添加し撹拌しながら40℃に1時間保つことで酸化グラフェンを還元させ、さらに水洗することでポリエチレングリコールを含有する複合体粒子を得た。
【0087】
さらに、ポリエチレングリコールを含有する複合体粒子を400℃窒素中で6時間加熱することにより、添加剤のポリエチレングリコールの除去を行い、空隙のある複合体粒子を得た。上記E.に従い得られた複合体粒子の空隙率を測定すると、35%であった。また、実施例1−1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1]
LiMnPO
4と複合化するために添加する酸化グラフェン粉末の量を0.02gとした以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例同様に評価した結果を表1に示す。
【0089】
[比較例2]
実施例1−1と同様の方法によってLiMnPO
4粒子を得た後、得られたLiMnPO
4粒子1.0gとジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間粉砕し、LiMnPO
4ナノ粒子を得た。得られたLiMnPO
4ナノ粒子と実施例1と同様にして作成した酸化グラフェン0.06gとを乳鉢で混合し、オーブンを用いて200℃空気中で6時間加熱することにより、酸化グラフェンを還元して複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0090】
[比較例3]
LiMnPO
4と複合化するために添加する炭素を酸化グラフェンではなくアセチレンブラック0.2gとし、オーブンでの加熱を行わなかった以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0091】
[比較例4]
LiMnPO
4と複合化するために添加する炭素を酸化グラフェンではなく気相成長炭素繊維(VGCF−H 昭和電工株式会社製)0.2gとし、オーブンでの加熱を行わなかった以外は実施例1−1と同様にして複合体粒子を得たが、複合体粒子は球状でなく、造粒されていない不均一性の高い混合物であった。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0092】
[比較例5]
実施例1−4と同様の方法によってLiFePO
4粒子を得た後、得られたLiFePO
4粒子1gと10g/リットルのスクロース水溶液10ミリリットルをジルコニアボール(直径1cm)7個をジルコニア容器(12ml)内に入れて、遊星ボールミル(フリッチュ社製、型式P−5)で300rpm6時間混合し、複合体粒子前駆体を得た。さらに 得られた複合体粒子前駆体を3%の水素を混合した窒素中にて700℃1時間加熱することにより、カーボンコートを有する複合体粒子を得た。得られた複合体粒子を実施例1−1同様に評価した結果を表1に示す。
【0093】
【表1】