特許第6237621号(P6237621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237621
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】針状体及び針状体製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171120BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61M37/00 505
   A61M37/00 530
   A61K9/70 401
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61L15/44
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-521324(P2014-521324)
(86)(22)【出願日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2013065984
(87)【国際公開番号】WO2013191025
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-140736(P2012-140736)
(32)【優先日】2012年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田上 英恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋行
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/140274(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/105508(WO,A1)
【文献】 特開2010−233674(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/048607(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/135531(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/143689(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/095456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 9/70
A61L 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体の製造方法であって、
前記突起部に対応した凹部を有する凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程と、
前記凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程と、
前記凹版内の水溶液を乾燥し、針状体とする工程と、
前記凹版から針状体を剥離する工程とを備え、かつ、
前記突起部側層形成材料の水溶液と、支持基板側層形成材料の水溶液が液液分散系であることを特徴とする針状体の製造方法。
【請求項2】
前記突起部側層及び前記支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法。
【請求項3】
前記凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後、前記凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程の前に、前記凹版内の突起部側層形成材料の水溶液を乾燥する工程を備えることを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法。
【請求項4】
前記突起部側層形成材料の水溶液の比重が、前記支持基板側層形成材料の水溶液の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法。
【請求項5】
前記突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、前記支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法。
【請求項6】
針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体であって、
突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、
突起部側層を形成する材料と支持基板側層を形成する材料が水溶液とした際に液液分散系を示す材料であり、
前記突起部側層及び前記支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする針状体。
【請求項7】
針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体であって、
突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、
前記突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、前記支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことを特徴とする針状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状体の製造方法および針状体に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚上から薬剤などの送達物を浸透させ体内に送達物を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に送達物を投与することが出来る方法として用いられている。
【0003】
経皮投与の分野において、μmオーダーの針が形成された針状体を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に薬剤などを投与する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、針状体の製造方法として、機械加工を用いて原版を作成し、該原版から転写版を形成し、該転写版を用いた転写加工成型をおこなうことが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、針状体の製造方法として、エッチング法を用いて原版を作成し、該原版から転写版を形成し、該転写版を用いた転写加工成型をおこなうことが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
また、針状体を構成する材料としては、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが望ましく、このような材料としてはキチン・キトサン等の生体適合材料が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48−93192号公報
【特許文献2】国際公開第2008/013282号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/004597号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/020632号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような生体適合性材料を用いて針状体を作製する場合、材料の溶液から溶媒を乾燥などの方法で除去することによって作製することが一般的である。針状体を皮膚に穿刺後、送達物を含有した針部分が皮膚内部で溶解する溶解型の針状体にあっては、針状体を一定時間皮膚に貼付しておく必要があり、外観上の課題があった。特に、針状体を顔に穿刺する場合には大きな課題となっていた。
【0009】
本発明は、本課題を解決するための針状体の製造方法および針状体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体の製造方法であって、前記突起部に対応した凹部を有する凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程と、前記凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程と、前記凹版内の水溶液を乾燥し、針状体とする工程と、前記凹版から針状体を剥離する工程とを備え、かつ、前記突起部側層形成材料の水溶液と、支持基板側層形成材料の水溶液が液液分散系であることを特徴とする針状体の製造方法とした。
また、請求項2に係る発明としては、前記突起部側層及び前記支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法とした。
また、請求項3に係る発明としては、前記凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後、前記凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程の前に、前記凹版内の突起部側層形成材料の水溶液を乾燥する工程を備えることを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法とした。
また、請求項4に係る発明としては、前記突起部側層形成材料の水溶液の比重が、前記支持基板側層形成材料の水溶液の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法とした。
また、請求項5に係る発明としては、前記突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、前記支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことを特徴とする請求項1記載の針状体の製造方法とした。
また、請求項6に係る発明としては、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体であって、突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、突起部側層を形成する材料と支持基板側層を形成する材料が水溶液とした際に液液分散系を示す材料であり、前記突起部側層及び前記支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする針状体とした。
また、請求項7にかかる発明としては、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備え、皮膚に穿刺する針状体であって、突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、前記突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、前記支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことを特徴とする針状体とした。


【発明の効果】
【0011】
本発明の針状体の製造方法によって得られる2層構成の針状体では、突起部側層と支持基板側層を剥離容易にすることにより、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができ、皮膚に穿刺している針状体を目立たなくすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の針状体の斜視図である。
図2図2は本発明の針状体の模式断面図である。
図3図3は本発明の針状体の模式断面図である。
図4図4は本発明の針状体の製造方法の説明図であり、図3(a)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図である。
図5図5は本発明の針状体の製造方法の説明図であり、図3(b)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図である。
図6図6は本発明の針状体の製造方法の説明図であり、図3(d)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図である。
図7図7は本発明の針状体の皮膚への穿刺方法の説明図である。
図8図8は本発明の針状体の皮膚への穿刺方法(別の態様)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の針状体の製造方法は、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備えた針状体の製造方法であって、突起部に対応した凹部を有する凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程と、凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程と、前記凹版内の水溶液を乾燥し、針状体とする工程と、前記凹版から針状体を剥離する工程とを備え、かつ、突起部側層形成材料の水溶液と、支持基板側層形成材料の水溶液が液液分散系であることを特徴とする。
本構成の針状体の製造方法とすることにより、得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができ、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができる。
【0014】
さらには、本発明の針状体の製造方法は、突起部側層及び支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であるとすることが好ましい。剥離強度を上記範囲内とすることにより、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができる。
【0015】
さらには、本発明の針状体の製造方法は、凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後、凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程の前に、凹版内の突起部側層形成材料の水溶液を乾燥する工程を備えることが好ましい。
突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後、一旦乾燥工程を設けることにより、針状体の製造方法は、凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後に乾燥をおこなうことなく凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程をおこなった針状体の製造方法と比較して、得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができる。
【0016】
さらには、本発明の針状体の製造方法は、突起部側層形成材料の水溶液の比重が、前記支持基板側層形成材料の水溶液の比重よりも大きいことが好ましい。上記大小関係とすることにより、得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができる。特に、凹版に突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後に乾燥をおこなうことなく凹版に支持基板側層形成材料の水溶液を供給する工程をおこない針状体を製造する場合には、2つの水溶液の比重関係を上記大小関係とすることが好ましい。一方、突起部側層形成材料の水溶液を供給する工程の後、一旦乾燥工程を設ける場合には、2つの水溶液の比重が上記大小関係を満たさなくても得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができる。
【0017】
さらには、本発明の針状体の製造方法は、突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことが好ましい。各層の形成材料を上記材料から選択することにより、突起部側層形成材料の水溶液と、支持基板側層形成材料の水溶液を液液分散系とすることができ、得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができる。
【0018】
また、本発明の針状体は、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備えた針状体であって、突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、前記突起部側層及び前記支持基板側層の剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする。剥離強度を上記範囲内とすることにより、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から容易に剥離することができる。
【0019】
また、本発明の針状体は、針状形状を有する突起部と、前記突起部を支持する支持基板とを備えた針状体であって、突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、前記突起部側層形成材料がプルラン、デキストランから選択される材料を含み、前記支持基板側層形成材料がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を含むことを特徴とする。これらの材料より選択され形成される針状体は、得られる針状体の突起部側層と支持基板側層の剥離強度を小さなものとすることができ、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができる。
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。まず、本発明の針状体の構造及び材料について説明し、次に当該針状体の製造方法について説明する。
【0021】
図1に本発明の針状体の斜視図を示した。図2に本発明の針状体の模式図を示した。なお、本発明の針状体は突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備えることを特徴とするものであるが、図1および図2に示した針状体にあっては突起部側層と支持基板側層を図示していない。
【0022】
本発明の針状体は、支持基板32と突起部34から成る成形体を指す。突起部の形状は、皮膚を穿刺するのに適した形状であれば良く、適宜設計してよい。突起部の形状として、具体的には、円錐、角錐、円柱、角柱、鉛筆形状(胴体部が柱状であり、先端部が錐形状のもの)などであっても良い。また、(1)支持基板上に突起部が一本の形状、(2)支持基板上に突起部が複数本林立した形状のいずれでも良い。
【0023】
また、支持基板上に突起部が複数林立した場合、各突起部は、アレイ状に配列していることが好ましい。ここで、「アレイ状」とは、各単位針状体が並んでいる状態を示すものであり、例えば、格子配列、最密充填配列、同心円状に配列、ランダムに配列、などのパターンを含むものとする。
【0024】
図2(a)は、針状体の突起部側からの上面図であり、図2(b)は、図2(a)における針状体のI−I´面における断面図である。
本発明の針状体1において、針状の突起部34の寸法は皮膚に穿刺孔を形成するのに適した細さと長さを有することが好ましい。具体的には、図2に示す突起部34の高さHは10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。突起部の高さHは、支持基板32から突起部34の先端までの距離である。
突起部の高さHは、前記範囲内で針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するかを考慮して決定することが好ましい。
特に、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層内」に留める場合、針状体の突起部の高さHは例えば10μm以上300μm以下、より好ましくは30μm以上200μm以下、の範囲内にすることが望ましい。
また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ」に留める場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上700μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下、さらに好ましくは200μm以上300μm以下、の範囲内にすることが望ましい。
さらに、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が真皮に到達する長さ」とする場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が表皮に到達する長さ」の場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上300μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0025】
突起部の幅Dは、1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。突起部の幅Dは、前記範囲内で針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するか等を考慮して決定することが好ましい。
突起部の幅Dは、突起部を基板面と平行に投影した際の支持基板と接している突起部の長さのうち最大の長さである。例えば、突起部が円錐状である場合、突起部と支持基板と接している面の円の直径が幅Dとなる。突起部が正四角錐である場合、突起部と支持基板と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。また、突起部が円柱である場合、突起部と支持基板と接している面の円の直径が幅Dとなる。突起部が正四角柱である場合、突起部と支持基板と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。
【0026】
アスペクト比は、1以上10以下の範囲内であることが好ましい。アスペクト比Aとは、突起部の長さHと幅Dを用い、A=H/Dにより定義される。
実施形態に係る針状体において、突起部が錐形状のように先端角を有し、角質層を貫通させる場合、突起部の先端角θは5°以上30°以下、より好ましくは10°以上20°以下、の範囲内であることが望ましい。なお、先端角θは突起部を支持基板面と平行に投影した際の角度(頂角)のうち最大のものを指す。
【0027】
図3に本発明の針状体の模式断面図を示した。本発明の針状体にあっては、突起部側層と支持基板側層の少なくとも2層を備え、該突起部側層、該支持基板側層が異なる成分からなることを特徴とする。
図3(a)に記載の本発明の針状体にあっては、支持基板32内で突起部側層16と支持基板側層18が分離している。
図3(b)に記載の本発明の針状体にあっては、支持基板32内で突起部側層16と支持基板側層18が分離しており、さらに、支持基板32内における突起部側層16が支持基板の外形よりも小さい面積で形成されている。
図3(c)に記載の本発明の針状体にあっては、支持基板32と突起部34の接合位置で、突起部側層16と支持基板側層18が分離している。
図3(d)に記載の本発明の針状体にあっては、突起部34内で、突起部側層16と支持基板側層18が分離している。
【0028】
本発明の針状体にあっては、突起部側層16と支持基板側層18は日本工業規格 JIS K6854−1(1999)「接着剤―はく離接着強さ試験方法―第1部:90度はく離試験」により測定したその剥離強度が8N/15mm巾以下であることを特徴とする。突起部側層と支持基板側層の間の剥離強度を8N/15mm巾以下とし両層を剥離容易にすることにより、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができ、皮膚に穿刺している針状体を目立たなくすることができる。したがって、使用時の外観上の問題を改善することができる。特に、図3(b)、(c)、(d)の針状体にあっては、本発明の効果を大きなものとすることができる。
【0029】
さらには、本発明の針状体において、突起部側層16と支持基板側層18の剥離強度は0.5N/15mm巾以上8N/15mm巾以下であることが好ましい。剥離強度が0.5N/15mm巾を下回る際には凹版から針状体を剥離する際に良好に剥離できない場合がある。なお、さらに好ましくは、突起部側層16と支持基板側層18の剥離強度は、1N/15mm巾以上3N/15mm巾以下であることが好ましい。
【0030】
本発明における針状体において、突起部側層16を構成する材料は、生分解性の多糖類が望ましく、例えばデキストラン、デキストリン、ペクチン、プルラン、コンドロイチン硫酸塩、アルギン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどがある。また、これら生分解性の多糖類の混合であってもよい。突起部側層16として生分解性の多糖類を用いることにより、針状体を皮膚に穿刺後に皮膚内で突起部側層16を溶解させることができる。したがって、突起部側層に薬効成分を含有させた場合には、皮膚内に送達物を速やかに導入することができる。
【0031】
支持基板側層18を構成する材料は、多糖類でかつ柔軟性を有する材料が望ましく、例えばデキストラン、デキストリン、ペクチン、プルラン、コンドロイチン硫酸塩、アルギン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどがある。また、これら生分解性の多糖類の混合であってもよい。
【0032】
中でも、突起部側層16を構成する材料としてプルラン、デキストランを用い、支持基板側層18を構成する材料としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される材料を用いることが好ましい。理由としては、突起部側層と支持基板側層の剥離強度を8N/15mm巾以下に容易にすることができるためである。これは、本材料の水溶液の組み合わせは液液分散系となること、及び、突起部側層16を構成する材料の水溶液のほうが支持基板側層18を構成する材料の水溶液と比較して比重が大きいことによる。
【0033】
本発明の針状体にあっては、皮膚内へ送達するための送達物を含むことができる。送達物としては、薬理活性物質や、化粧品送達物を含むことができる。このとき、送達物として芳香を有する材料を用いた場合、使用に際して匂いを付与することができ、美容品として用いるのに好ましいものとすることができる。
【0034】
前記薬理活性物質は、用途に応じて適宜選択してよい。例えば、インフルエンザなどのワクチン、癌患者の痛止め向け薬、インスリン、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、経口剤、皮膚適用製剤等であっても良い。本発明の針状体は皮膚を穿刺することから、従来の経皮投与に用いられる薬理活性物質以外にも、皮下注射が必要な薬理活性物質にも適用することが出来る。特に、注射剤であるワクチンなどは、針状体を用いた場合、投与に際し痛みがないため、小児への適用に適している。また、従来の経口剤の投与では、小児は経口剤を飲むのが困難であるが、針状体を用いた場合、投与に際し薬剤を飲む必要がないため、小児への適用に適している。
【0035】
穿刺した針が皮膚内部に溶出するとともに送達物を体内に送達させる溶解型の針状体では、針状体の内部に送達物を含有させる。しかしながら、皮膚内部には溶出せずに針状体の支持基板に残存する薬剤が無駄になるという問題があった。送達物を突起部側層にのみ含有させることにより、薬剤の無駄を解決することができる。
【0036】
前記化粧品組成物は、化粧品および美容品として用いられる組成物である。例えば、保湿剤、色料、香料、美容効果(しわ、にきび、妊娠線などに対する改善効果、脱毛に対する改善効果など)を示す生理活性物質、などが挙げられる。
【0037】
また、特に、穿刺孔の深さを「角質層内」に留める場合、送達物を、角質層内に滞留させることが出来る。角質層はたえず新陳代謝により新規に生成されるため、角質層内の送達物は時間と共に体外へ排出される。このため、皮膚の洗浄や皮膚をピーリングすることなどにより、送達物を排除することができる。
【0038】
また、「穿刺孔を、角質層を貫通しかつ神経層へ到達しない長さ」に留める場合、送達物を、角質層より深い位置に送達することが出来る。角質層に形成された穿刺孔は時間と共に塞がるため、角質層下に送達された送達物は外界から角質層にバリアされた状態で生体内に保持される。このため、送達物は、角質層の新陳代謝や、スキンケアなどの洗浄により剥落することを低減でき、長期間、保持することができる。
【0039】
このため、美容用途に用いた場合、長期間の化粧状態を維持することが出来ることから、特に、眉、目の周囲、口唇の周囲、など、長期間の色味の保持が求められる部位における化粧品組成物の送達に好適に用いることができる。
【0040】
また、角質層以下の部位に原因がある皮膚の異常(スポット状の斑点など)に対応する処方(化粧、治療など)として好適に用いることができる。
【0041】
本発明の針状体にあっては、突起部側層、支持基板側層が異なる成分からなることを特徴とする。「異なる成分からなる」とは、突起部側層と支持基板側層で用いる多糖類が異なる材料であってもよく、突起部側層と支持基板側層で用いる多糖類は同一であって送達物といったその他の成分が異なる材料であってもよい。
【0042】
なお、本発明の針状体にあっては、突起部側層と支持基板側層が明確に分離せず、突起部側層と支持基板側層の間に、突起部側層と支持基板側層の混合層を備える針状体を排除しない。突起部側層と支持基板側層の混合層を備える針状体にあっては、後述する突起部側層と支持基板側層の剥離強度を高いものとすることができる。
【0043】
本発明の針状体にあっては、送達物を突起部側層のみに含有させ、支持基板側層に含有させないものとすることができる。送達物を突起部側層のみに含有させることにより、送達物の効率的利用を可能とすることができる。
【0044】
一方、送達物を針状体で投与するにあたり、針状体が皮膚に穿刺される前あるいは皮膚に穿刺される後に、送達物を対象となる皮膚上に塗布してもよい。このとき、針状体に送達物を配置し、かつ、対象となる皮膚表面にも送達物を塗布してもよい。
【0045】
また、本発明の針状体は、前記突起部の表面に、送達物を備えていても良い。
【0046】
また、本発明の針状体にあっては、支持基板は可撓性を有しても良い。可撓性を有する支持基板とすることにより、曲面や生体皮膚などの可撓性を有する対象に対して好適に穿刺することが出来る。また、可撓性を有する場合、ロール状にすることで、突起部が林立したローラーを形成することができる。
【0047】
また、本発明の針状体を用いた処方にあっては、挿入の位置および方向を固定するためのアプリケータを用いても良い。
【0048】
次に、当該針状体の製造方法について説明する。
【0049】
図4に、本発明の針状体の製造方法の説明図を示した。図4は、図3(a)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図を示している。
【0050】
<水溶液を調製する工程>
突起部側層16と支持基板側層18を形成する材料の水溶液をそれぞれ調製する。
【0051】
<凹版を作製する工程>
次に、針状パターンを有する凹版10を用意する(図4(a))。針状体の形状を決定する原版の製造方法としては、針状体の形状に応じて適宜公知の製造方法を用いてよい。このとき、微細加工技術を用いて原版を形成してよく、微細加工技術として、例えば、リソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、精密機械加工法などを用いても良い。原版から凹版を形成する方法としては、適宜公知の形状転写法を用いてよい。例えば、(1)Ni電鋳法により、Niの凹版を形成、(2)溶融した樹脂を用いた転写成形、など、が挙げられる。
【0052】
<針状体材料を充填する工程>
次に、図4(b)に示すように、前記凹版10に突起部側層を形成する材料の水溶液16´を供給する。突起部側層を形成する材料の水溶液16´の溶媒は針状体材料を溶解する溶媒であればよく、水を用いる。なお、水とあわせアルコール等の他の溶媒成分を添加しても良い。
【0053】
水溶液を供給後、場合によっては加熱乾燥をおこなってもよい。加熱乾燥をおこなうことにより、次に充填する支持基板側層を形成する材料の水溶液18´との界面付近での混合を抑制することができる。特に、突起部側層を形成する材料の水溶液16´よりも支持基板側層を形成する材料の水溶液18´の方が比重が大きい場合は、加熱乾燥をおこなった方がよい。
【0054】
次に、図4(c)に示すように、突起部側層16の上に支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を供給する。支持基板側層を形成する材料の水溶液18´の溶媒は針状体材料を溶解する溶媒であればよく、水を用いる。なお、水とあわせアルコール等の他の溶媒成分を添加しても良い。特に、突起部側層を形成する材料の水溶液16´と支持基板側層を形成する材料の水溶液18´は互いに混ざり合わない液液分散系とすることが望ましい。また、突起部側層を形成する材料の水溶液16´の比重が支持基板側層を形成する材料の水溶液18´よりも大きいことが望ましい。
【0055】
例えば、突起部側層を形成する材料の水溶液16´と支持基板側層を形成する材料の水溶液18´は互いに混ざり合わない液液分散系であり、かつ、突起部側層を形成する材料の水溶液16´の比重が支持基板側層を形成する材料の水溶液18´よりも大きくすることができるものとして、突起部側層を形成する材料の水溶液16´はプルラン水溶液、デキストラン水溶液、支持基板側層を形成する材料の水溶液18´は、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液、ヒドロキシエルセルロース水溶液、メチルセルロース水溶液、ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液の組み合わせを選択することができる。
【0056】
水溶液の供給方法については、凹版の形状・寸法に応じ適宜公知の方法を選択してよい。例えば、水溶液供給方法として、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサーを用いる方法、キャスティング法などを用いて良い。また、充填に際し、凹版の周囲の環境を、減圧下、あるいは、真空下としても良い。
【0057】
<針状体材料を乾燥する工程>
次に、支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を乾燥し、固化する。乾燥方法は、自然乾燥、ホットプレートを用いた底面加熱、熱風乾燥による乾燥など環境に応じて適宜選択してよい。ただし、乾燥温度は、水溶液が沸騰しない温度でおこなう必要がある。乾燥温度は、少なくとも110℃以下の温度でおこなうことが好ましい。
【0058】
<針状体を凹版から剥離する工程>
乾燥終了後に凹版10から剥離すると針状体1を得ることができる。突起部側層を形成する材料の水溶液16´と支持基板側層を形成する材料の水溶液18´が互いに混ざり合わない液液分散系を形成することから、突起部側層を形成する材料の水溶液16´と支持基板側層を形成する材料の水溶液18´が2層状態を保ちながら乾燥し、2層構造を有する針状体を得ることができる。
【0059】
図5に、本発明の針状体の製造方法の説明図を示した。図5は、図3(b)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図を示している。
【0060】
図5にあっては、針状パターンを有する凹版10を用意する(図5(a))際に、取り外し可能であり、かつ、凹版の支持基板対応部分の外縁部を取り囲むことが可能な第2の版11を用意している。
【0061】
次に、図5(b)に示すように、前記凹版10に突起部側層を形成する材料の水溶液16´を供給する。次に、凹版内の水溶液に対し、乾燥をおこなう。乾燥としては加熱乾燥が好ましく、乾燥をおこなうことにより、次に充填する支持基板側層を形成する材料の水溶液18´との界面付近での混合を抑制することができる。次に、第2の版11を凹版から取り外す。第2の版を凹版から取り除いたあと、図5(c)に示すように、突起部側層16の上に支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を供給する。次に、支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を乾燥し、固化する。乾燥終了後に凹版10から剥離すると図5(d)に示す針状体を得る。
【0062】
図6に、本発明の針状体の製造方法の説明図を示した。図6は、図3(d)記載の針状体を製造する場合の製造方法の説明図を示している。
【0063】
図6にあっては、針状パターンを有する凹版10を用意する(図6(a))。次に、図6(b)に示すように、前記凹版10に突起部側層を形成する材料の水溶液16´を供給する。このとき、凹版の突起部対応部分にインクジェット法により突起部側層を形成する材料の水溶液16´を供給している。図6(b)にあってはインクジェットノズル14から突起部側層を形成する材料の水溶液16´が吐出されている。次に、凹版内の水溶液に対し、乾燥をおこなう。乾燥としては加熱乾燥が好ましく、乾燥をおこなうことにより、次に充填する支持基板側層を形成する材料の水溶液18´との界面付近での混合を抑制することができる。次に、図6(c)に示すように、突起部側層16の上に支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を供給する。次に、支持基板側層を形成する材料の水溶液18´を乾燥し、固化する。乾燥終了後に凹版10から剥離し、図6(d)に示す針状体を得る。
【0064】
図3の(c)、(d)に示すような、突起部のみに突起部側層を備える針状体を製造する場合には、凹版10に突起部側層を形成する材料の水溶液16´を供給する手段として、インクジェット法を好適に用いることができる。インクジェット法を使用することにより、高価な送達物の使用量を大幅に削減することができる。
【0065】
次に、本発明の針状体を用いた皮膚への穿刺方法について説明する。
【0066】
図7に、本発明の針状体の皮膚への穿刺方法の説明図を示した。
まず、本発明の突起部側層16と支持基板側層18を備える針状体を用意する(図7(a))。次に、本発明の針状体を皮膚Sに穿刺する(図7(b))。最後に、本発明の針状体を突起部側層16と支持基板側層18界面で剥離する(図7(c))。以上のように、本発明の針状体では、突起部側層と支持基板側層を剥離容易にすることにより、針状体を皮膚に穿刺後に突起部側層を皮膚に接触させた状態で支持基板側層のみを皮膚から剥離することができ、皮膚に穿刺している針状体を目立たなくすることができる。
【0067】
図8に、本発明の針状体の皮膚への穿刺方法の説明図(別の態様)を示した。
まず、本発明の突起部側層16と支持基板側層18を備える針状体の支持基板側に粘着テープ2を貼着させる。粘着テープ2は、基材22上に粘着層21を備える。図8(a))。次に、粘着テープ2に固定された針状体を皮膚Sに穿刺する(図8(b))。最後に、本発明の針状体を突起部側層16と支持基板側層18界面で剥離する(図8(c))。
【0068】
なお、本発明の針状体を用いた皮膚への穿刺方法にあっては、針状体を皮膚Sに穿刺したあと(図8(b))、当該針状体を皮膚に穿刺した状態で粘着テープの粘着層により皮膚に貼付し、保持した後、本発明の針状体を突起部側層16と支持基板側層18界面で剥離する(図8(c))ことも可能である。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
以下の方法により図3(a)に示す針状体を作製した。
(1)まず、シリコン基板に精密機械加工を用いて正四角錐(底面38μm×38μm、高さ120μm)が1mm間隔で、6列6行の格子状に36本配列した針状体原版を形成した。次に、前記シリコン基板で形成された針状体原版に、メッキ法によりニッケル膜を500μmの厚さに形成し、90℃に加熱した重量パーセント濃度30%の水酸化カリウム水溶液によって前記シリコン基板をウェットエッチングして除去し、ニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び10重量%のヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にプルラン水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、プルランからなる層が形成された凹版に、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0071】
[実施例2]
以下の方法により図3(a)に示す針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び1重量%のメチルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にプルラン水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、プルランからなる層が形成された凹版に、メチルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0072】
[実施例3]
以下の方法により図3(a)に示す針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び10重量%のヒドロキシエチルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)インクジェット法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にプルラン水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、プルランからなる層が形成された凹版に、ヒドロキシエチルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0073】
[実施例4]
以下の方法により図3(a)に示す針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び10重量%のヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)凹版に充填されたプルラン水溶液を乾燥することなく、スピンコート法を用いてプルラン水溶液が充填された凹版に対し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させた。
(7)(6)の凹版から針状体を剥離した。
【0074】
[実施例5]
以下の方法により図3(a)に示す針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のデキストラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び10重量%のヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にデキストラン水溶液を充填した。
(4)凹版に充填されたデキストラン水溶液を乾燥することなく、スピンコート法を用いてデキストラン水溶液が充填された凹版に対し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させた。
(7)(6)の凹版から針状体を剥離した。
【0075】
[比較例1]
以下の方法により針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にヒドロキシプロピルセルロース水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にヒドロキシプロピルセルロース水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、ヒドロキシプロピルセルロースからなる層が形成された凹版に、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0076】
[比較例2]
以下の方法により針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にプルラン水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、プルランからなる層が形成された凹版に、プルラン水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0077】
[比較例3]
以下の方法により針状体を作製した。
(1)まず、実施例1と同じニッケルから成る凹版を作製した。
(2)10重量%のプルラン(東京化成工業株式会社)水溶液、及び10重量%のアルギン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社)水溶液を調製した。
(3)スピンコート法を用いて、作製した凹版にプルラン水溶液を充填した。
(4)90℃に設定したホットプレート上にプルラン水溶液が充填された凹版を置き、30分乾燥させて水分を蒸発させた。
(5)スピンコート法を用いて、プルランからなる層が形成された凹版に、アルギン酸ナトリウム水溶液を塗布した。
(6)室温で乾燥させ、針状体とした。
(7)凹版から針状体を剥離した。
【0078】
(結果)
<液液分散系及び比重の確認>
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例3の針状体の製造方法に用いた2つの水溶液をビーカーに入れ5分放置した後、ビーカ内の水溶液の状態を確認した。実施例1〜5の水溶液にあっては、各水溶液がビーカー内の上部と下部に分離している様子(界面)が確認され、液液分散系であることが確認された。一方、比較例1〜3の水溶液にあっては、ビーカー内の上部と下部に分離している様子(界面)は確認されなかった。
また、実施例1〜5の水溶液にあっては、ビーカー下部にプルラン水溶液あるいはデキストラン水溶液が存在し、ビーカーの上部にヒドロキシプロピルセルロース水溶液、メチルセルロース水溶液あるいはヒドロキシエチルセルロース水溶液が存在している様子が確認され、プルラン水溶液あるいはデキストラン水溶液のほうが、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液、メチルセルロース水溶液あるいはヒドロキシエチルセルロース水溶液と比較して比重が大きいことが確認された。
<針状体の構造比較>
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例3の針状体を支持基板に対して垂直に切断し、その断面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、実施例1〜5は2層構造を有していた。比較例3は、突起部側層と支持基板側層との界面において、アルギン酸ナトリウムとプルランが混ざり合っている様子が観察された。実施例4は2層構造が確認されたものの、突起部側層と支持基板側層との界面においてヒドロキシプロピルセルロースとプルランが一部混ざり合っている様子が観察された。比較例1及び比較例2は、単層構成であり界面は確認されなかった。
<針状体の90度剥離強度測定>
日本工業規格 JIS K6854−1(1999)「接着剤―はく離接着強さ試験方法―第1部:90度はく離試験」を参考に、突起部側層と支持基板側層の密着強度を測定した。凹版から剥離した針状体を、巾15mmの短冊状に切り出した。短冊状に切り出した針状体の一部を突起部側層と支持基板側層に剥離し、端部を引っ張り試験機のつかみ部分に固定した。このとき、90度剥離となるように端部を固定した。上記状態からつかみ移動速度50mm/minで引張試験をおこない、最大力を剥離強度とした。針状体の強度測定結果を表1に示す。なお、比較例1及び比較例2では、突起部側層と支持基板側層の接着強度が高く、突起部側層と支持基板側層の界面で剥離させることができなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜実施例3及び実施例5は、凹版に充填された突起部側層水溶液を一旦乾燥させたため、成形した針状体が界面がはっきりと確認される2層構造となった。突起部側層溶液充填後の乾燥をおこなわなかった実施例4では、2層構造であるものの、突起部側層と支持基板側層との界面において材料が一部混ざり合っていている様子が確認され、2層の剥離強度が実施例1と比較してやや強く、1.5N/15mm巾の力が必要であった。
【0081】
一方、比較例3では、突起部側層と支持基板側層との界面において、アルギン酸ナトリウムとプルランが混ざり合っていたため、2層の接着力が強く、9.5N/15mm巾の力が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の針状体は、微細な針状体を必要とする様々な分野に利用可能である。例えば、MEMSデバイス、光学部材、試料治具、創薬、医療用途、化粧品、美容用途などに用いる針状体として応用が期待できる。
【符号の説明】
【0083】
1・・・針状体
34・・・突起部
32・・・支持基板
16・・・突起部側層
18・・・支持基板側層
10・・・凹版
11・・・第2の版
16´・・突起部側層を形成する材料の水溶液
18´・・支持基板側層を形成する材料の水溶液
14・・・インクジェットノズル
2・・・粘着テープ
21・・・粘着層
22・・・基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8