(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シール性を付与することが必要な部位にホットメルト型シール材からなるシール層が設けられており、シール層を構成するシール材の容積X(mL)と、シール層と構造体との接触面積Y(mm2)との比率X/Yが1.0×10-4mL/mm2以上であり、
上記ホットメルト型シール材は、ポリエステル系樹脂と、分散助剤と、該ポリエステル系樹脂に非相溶な応力緩和材とを含有し、シール層中においてポリエステル系樹脂が海、応力緩和材が島である海島構造を採っており、
上記ポリエステル系樹脂を構成するグリコール成分は1,4−ブタンジオールを含み、さらにエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオール以外の脂肪族グリコールまたは脂環族グリコールを含み、上記分散助剤はフェノール変性アルキルベンゼン樹脂であり、上記応力緩和材はポリオレフィン系樹脂である
ことを特徴とするシール層含有構造体。
請求項2に記載のシール層含有構造体の製造方法であって、第1部品と第2部品がシール層を介さずに接触している複合体Iを型内に装入した後、ホットメルト型シール材を樹脂導入部から型内に射出または押出し、保圧することによりシール層を形成することを特徴とするシール層含有構造体の製造方法。
請求項2に記載のシール層含有構造体の製造方法であって、第1部品のみを型内に装入した後、ホットメルト型シール材を樹脂導入部から型内に射出または押出し、保圧することにより、第1部品とシール層が接合した複合体IIを形成した後、この複合体IIと第2部品とを接合することを特徴とするシール層含有構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[シール層含有構造体]
本発明のシール層含有構造体は、シール性を付与することが必要な部位にホットメルト型シール材からなるシール層が設けられており、シール層を構成するシール材の容積X(mL)とシール層と構造体との接触面積Y(mm
2)との比率X/Yが1.0×10
-4mL/mm
2以上であるところに特徴を有する。X/Yを1.0×10
-4mL/mm
2以上とすることにより、構造体(部品)とシール層との密着性が良好となり、後述する冷熱サイクルを100回繰り返しても優れたシール性が確保できる。X/Yが1.0×10
-4mL/mm
2よりも小さいと、シール性を付与することが必要な部位とシール層との密着性が不充分となって、優れたシール性を確保することができない。X/Yの上限は特に限定されず、成型品の形状に応じて適宜選択できるが、シール性が飽和することを考慮すると、1.0×10
-2mL/mm
2以下が好ましく、1.0×10
-3mL/mm
2以下がより好ましく、5.0×10
-4mL/mm
2以下がさらに好ましい。
【0014】
なお、シール層と構造体との接触面積Y(mm
2)とは、シール層の底部の面積のみならず、シール層の側部と構造体とが接触している部分の面積も含まれ、文字通り、構造体とシール層とが接触している面積を意味する。
【0015】
本発明において、「シール性を付与することが必要な部位」とは、シール層を形成すべき部位であって、例えば、微細な貫通孔を有する円柱状の構造体の貫通孔をシールすべきときは、貫通孔がシール性を付与することが必要な部位となるが、通常は、2つの部品(第1部品と第2部品)の間の空隙が、シール性を付与することが必要な部位となる。すなわち、本発明のシール層含有構造体は、第1部品と第2部品とシール層とで構成されていることが好ましい。
【0016】
第1部品と第2部品の素材は、特に限定されず、金属、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、セラミックス等が挙げられる。樹脂には、フィラー、ガラス繊維、ガラスクロス等が含まれていてもよい。また、第1部品と第2部品は、同種のものであっても、異種のものであっても構わない。特に、金属とエンジニアリングプラスチックとは接着性に劣るため、これらの部品をシールする際には、本発明の高性能シール材が優れた効果を発揮する。各部品には表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、イトロ処理、プラズマ処理、ブラスト処理、プライマー処理、アンカー剤処理等が挙げられる。
【0017】
シール層は、型内で形成される。型は、金型でも樹脂製の型でも構わず、樹脂製の型の場合はホットメルト型シール材の溶融温度に応じて素材を選択すればよい。上記のような円柱状の構造体の貫通孔をシールするときは、インサート成型によってシール材を貫通孔に注入して、貫通孔の一部または全部をシールする方法を採用できる。
【0018】
[ホットメルト型シール材]
本発明のシール層含有構造体は、ホットメルト型シール材からなるシール層を有していることも特徴の一つである。ホットメルト型シール材としては、射出成型または押出成型が可能であれば特に限定されないが、例えば、自動車部品等に用いられる構造体等では、低温から高温までの幅広い温度領域で優れたシール性を示すことが要求されるため、本発明では、ポリエステル系ホットメルト型シール材、ポリアミド系ホットメルト型シール材およびポリオレフィン系ホットメルト型シール材のうちのいずれか1種または2種以上を用いることが好ましい。これらは、金属およびプラスチックの両方に対して優れた接着性を示すため、シール材としての性能が優れているからである。
【0019】
[ポリエステル系ホットメルト型シール材]
本発明で用いるポリエステル系ホットメルト型シール材としては、特に限定されないが、ダイマー酸、長鎖脂肪族酸またはグリコール、あるいはポリアルキレンエーテルグリコール等が共重合されたポリエステルが好ましい。これらのソフトセグメントを共重合することで、得られるポリエステル系ホットメルト型シール材は良好な柔軟性を示し、幅広い温度環境下で、変形応力を緩和することができ、良好なシール性を発揮する。また、結晶性ポリエステル樹脂に、分散助剤としてエポキシ樹脂やフェノール変性アルキルベンゼン樹脂等を配合したり、応力緩和材としてポリオレフィンやポリアミドエラストマー、フッ素樹脂等を配合することも好ましい実施態様である。分散助剤を配合すると、良好な初期接着性、冷熱サイクル後にも優れたシール性を示す(冷熱サイクル性)といった優れた特性を付与することができる。また、分散助剤は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を遅延させることで応力緩和効果を発揮し、結晶性ポリエステル樹脂と応力緩和材との相溶化剤として寄与し、応力緩和材をポリエステル樹脂中へ微分散させる効果を発揮し、さらには官能基導入による基材への濡れ性向上の効果を発揮するものと考えられる。また、応力緩和材を配合すると、良好な接着性と冷熱サイクルや高温高湿環境負荷に対する接着耐久性といった優れた特性を発揮する。応力緩和材は、ポリエステル樹脂の結晶化やエンタルピー緩和によるひずみエネルギーの緩和効果を発揮するものと考えられる。以下、ポリエステル系ホットメルト型シール材の好適成分について、説明する。
【0020】
[応力緩和材]
ポリエステル系ホットメルト型シール材の中でも、本発明では、ポリエステル系樹脂と、該ポリエステル系樹脂に非相溶な応力緩和材とを含有し、シール層中においてポリエステル系樹脂が海、応力緩和材が島である海島構造を採っているホットメルト型シール材を用いることが好ましい。応力緩和材が島となってマトリックスであるポリエステル系樹脂の海の中に微細に分散していることにより、冷熱サイクル中の冷却下でポリエステル系樹脂が収縮した場合でも、応力緩和材が膨張してシール層全体の応力を緩和し、シール層が部品から剥離するのを防いで、良好な密着性を維持するのである。また、応力緩和材は、ポリエステル系樹脂の結晶化やエンタルピー緩和によるひずみエネルギーの緩和効果を発揮するものと考えられる。その結果、後述する冷熱サイクルを100回繰り返しても優れたシール性が確保できる。また、低温から高温までの幅広い温度領域で優れたシール性を示す上に、高温高湿環境負荷に対する接着耐久性も良好となる。
【0021】
本発明のポリエステル系ホットメルト型シール材に用いる応力緩和材は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、その密度が0.75g/cm
3以上0.91g/cm
3未満であることが好ましい。このような超低密度のポリオレフィンを応力緩和材として使用することによって、非相溶のポリエステル系樹脂に対して、応力緩和材を容易に微分散・混合することができ、特別な混練設備を必要とせず、海島構造のシール材を得ることができる。また、低密度で結晶性も低いことで、ポリエステル系樹脂に生じた成型時の残存応力の経時的な緩和にも適切に作用し、シール材として長期接着耐久性付与や環境負荷による発生応力の軽減といった好ましい特性を発揮する。このような特性を有する応力緩和材としては、入手容易で安価であり、金属やプラスチックへの接着性に悪影響を及ぼさず、ポリエチレンおよびエチレン共重合体が、特に好ましい。
【0022】
具体的には低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンエラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂にはカルボキシル基、グリシジル基等のポリエステル系樹脂と反応しうる極性基を含まないものが好ましい。極性基が存在すると、ポリエステル系樹脂との相溶性が変化し、ポリエステル樹脂の結晶化時のひずみエネルギーをかえって緩和できないことがある。一般に極性基を有するポリオレフィンは、極性基を有しないポリオレフィンに比べてポリエステル樹脂に対する相溶性が高い傾向にあるが、本発明では相溶性が高くなると、海と島との密着性が上がりすぎて、かえって経時的な密着性低下が大きくなる傾向にある。
【0023】
応力緩和材としては、上記のポリオレフィン系樹脂以外に、ポリアミドエラストマーやフッ素樹脂等も、好適に使用することができる。
【0024】
本発明のホットメルト型シール材の応力緩和材に用いられるポリアミドエラストマーとしては、特に限定されず、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66等のナイロン樹脂、アラミド樹脂、これらの共重合体および混合物や、これらとポリエーテルやポリカーボネート、脂肪族ポリエステル等を共重合したものが好ましい。ダイセル・エボニック(株)から販売されているVESTAMID(登録商標)Eシリーズおよびアルケマ(株)から販売されているPEBAX(登録商標)シリーズのポリエーテルブロックアミド系エラストマーは、入手が容易である点で、本発明のポリアミドエラストマーとして好ましい。
【0025】
ポリアミドエラストマーの融点は220℃以下が好ましく、さらに好ましくは210℃以下である。融点が高すぎると、本発明のホットメルト型シール材を用いてシール層を製造する際に、シール材の溶融粘度が大幅に増加し、低圧成形が困難になるおそれがあり、またマトリックス樹脂(海)であるポリエステル系樹脂との相溶性が小さすぎて、島としてうまく分散できず、シール層の密着性が充分に発現しないおそれがある。融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。融点が低すぎると、シール層の耐熱性が不足するおそれがある。
【0026】
また、本発明のホットメルト型シール材に用いられるフッ素樹脂とは、ポリオレフィンの水素の一部または全部がフッ素に置換された構造からなるもの、または、ポリオレフィンの水素の一部がフッ素で他の一部がパーフルオロアルキルエーテル基で置換された構造からなるもの、のことである。本発明に用いるフッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体およびポリクロロトリフルオロエチレンを挙げることができる。その中でも、分散性等を考慮し、エチレンやプロピレンが共重合されて、融点が220℃以下になっているフッ素樹脂を用いることが好ましく、さらに好ましくは210℃以下である。フッ素樹脂の融点が高すぎると、本発明のホットメルト型シール材を用いてシール層を製造する際に、シール材の溶融粘度が大幅に増加し、低圧成形が困難になるおそれがあり、またマトリックス樹脂(海)であるポリエステル系樹脂との相溶性が小さすぎて、島としてうまく分散できず、シール層の密着性が充分に発現しないおそれがある。
【0027】
応力緩和材の配合量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましい。応力緩和材が0.5質量部未満の場合、ポリエステル系樹脂の結晶化やエンタルピー緩和によるひずみエネルギーの緩和が難しいため、接着強度が低下する傾向がある。また、応力緩和材を50質量部を超えて配合しても、接着性やシール性を低下させてしまう傾向がある。さらに、ポリエステル樹脂と応力緩和材が、ミクロな海島構造的相分離ではなく、マクロな相分離を起こして破断伸度が低下し、平滑な表面を得られない等、成型性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0028】
[ポリエステル系樹脂]
本発明で用いるポリエステル系ホットメルト型シール材のマトリックスであるポリエステル系樹脂は、射出成型または押出成型が可能な低溶融粘度と、良好な耐熱性や冷熱サイクル性等を発現させるために、ポリエステル系樹脂の構成成分において、脂肪族成分および/または脂環族成分と芳香族成分の組成比率を調整したものであることが好ましい。例えば、150℃以上の高い耐熱性を保持するためには、酸成分としてテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましく、成型時に速やかに結晶化して固化する組成が生産性の観点から望ましいので、グリコール成分が結晶化の速い1,4−ブタンジオールを主成分とすることが好ましい。
【0029】
具体的には、ポリエステル系樹脂を構成する酸成分として、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸を含有し、テレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸の合計量が酸成分100モル%中、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。60モル%より少ないと、耐熱性が不足することがある。
【0030】
また、ポリエステル系樹脂を構成するグリコール成分として、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの両方または一方を含有し、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの合計量がグリコール成分100モル%中、40モル%以上であることが好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、55モル%以上が特に好ましい。40モル%より少ないと、結晶化速度が不足し、金型離型性の悪化や、成型時間が長くなる等成型性が損なわれる上、結晶性も不足し、耐熱性が不足することがある。
【0031】
すなわち、本発明では、シール材のマトリックス樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を用いる。なお、本発明における結晶性ポリエステル樹脂とは、例えばセイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミニウム製パンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度220℃で5分ホールドして試料を完全に溶融させた後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで20℃/minの昇温速度で測定したときに、融点を示すものを指す。
【0032】
ポリエステル系樹脂においては、高い耐熱性を与える上述した酸成分およびグリコール成分からなる基本組成に、接着性等を付与するための共重合成分として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸や、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等の脂肪族または脂環族グリコールを用いることが好ましい。
【0033】
また、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の炭素数10以上の脂肪族または脂環族ジカルボン酸およびそれらの誘導体、またはダイマージオール、水添ダイマージオール等の炭素数10以上の脂肪族および/または脂環族ジオールを共重合すると、高融点を維持したままガラス転移温度を低下させることができるため、ポリエステル系樹脂の耐熱性とシール性を両立させることができる。なお、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸の誘導体とは、カルボン酸の誘導体であって共重合成分となり得るもの、例えばエステル、酸塩化物等をいう。
【0034】
ここでダイマー酸とは、不飽和脂肪酸が重合またはDiels−Alder反応等によって二量化して生じる脂肪族または脂環族ジカルボン酸(大部分の2量体の他、3量体、モノマー等を数モル%含有するものが多い)をいい、水添ダイマー酸とは前記ダイマー酸の不飽和結合部に水素を付加させたものをいう。また、ダイマージオール、水添ダイマージオールとは、ダイマー酸または水添ダイマー酸の二つのカルボキシル基を水酸基に還元したものをいう。ダイマー酸またはダイマージオールとしてはコグニス社のエンポール(登録商標)やソバモール(登録商標)、またはユニケマ社のプリポール等が挙げられる。
【0035】
低い溶融粘度を保持する範囲内であれば、少量の芳香族系共重合成分も使用できる。好ましい芳香族系共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等の芳香族系グリコールが挙げられる。
【0036】
特に、金型離型性の観点から、成型時に素速い結晶固化挙動を示す、ダイマー酸、ダイマージオール、ポリテトラメチレングリコールといった分子量の比較的高い脂肪族系成分を導入することが好ましい。
【0037】
ダイマー酸、ダイマージオール、ポリテトラメチレングリコールのような分子量の比較的高い脂肪族系成分に代表されるブロック的なセグメントを導入すると、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が低くなることにより冷熱サイクル性が、エステル基濃度が低下することにより耐加水分解性が、それぞれ向上するので、シール層の耐久性が重要な場合はより好ましい方策である。ここで言う冷熱サイクル性とは、高温と低温の間を何度も昇降温させても、線膨張係数の異なる部品とシール層との界面部分の剥離や、シール層自体の亀裂が起こりにくいという性能である。冷却時にシール材の弾性率が著しく上がると、剥離や亀裂が起こりやすくなる。冷熱サイクル性が良好な素材を提供するため、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は−10℃以下が好ましい。より好ましくは−20℃以下、さらに好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。下限は特に限定されないが、−100℃が現実的である。
【0038】
ブロック的なポリマー導入のためのダイマー酸、水添ダイマー酸、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ポリテトラメチレングリコールは、ポリエステル系樹脂の全酸成分と全グリコール成分の合計200モル%中、2モル%以上であることが好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上が最も好ましい。また、耐熱性等を考慮すると、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。また、ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量は400以上であることが好ましく、500以上がより好ましく、600以上がさらに好ましく、700以上が特に好ましい。上限は、10000が好ましく、6000がより好ましく、4000がさらに好ましく、3000が特に好ましい。ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が400未満であると、冷熱サイクル性等が低下することがある。一方10000を超えると、ポリエステル部分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
【0039】
本発明で用いるポリエステル系樹脂の数平均分子量は3000以上であることが好ましく、5000以上がより好ましく、7000以上がさらに好ましく、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、30000以下がさらに好ましい。数平均分子量が3000未満であると、冷熱サイクル性が不足することがあり、50000を超えると、成型時の溶融粘度が高くなることがある。
【0040】
本発明で用いるポリエステル系樹脂の製造方法としては、公知の方法を採用すればよい。例えば、上記のジカルボン酸及びジオール成分を150〜250℃でエステル化反応後、減圧しながら230〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステル樹脂を得ることができる。あるいは、上記のジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とジオール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応後、減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0041】
[分散助剤]
本発明のポリエステル系ホットメルト型シール材には、ポリエステル系樹脂と応力緩和材といった必須成分以外に、海であるポリエステル系樹脂中に、微細に応力緩和材を分散させるための分散助剤を配合してもよい。分散助剤としては、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。エポキシ樹脂を配合すると、良好な初期接着性、冷熱サイクル後にも優れたシール性を示すといった優れた特性を付与することができる。また、エポキシ樹脂は、ポリエステル系樹脂の結晶化遅延による応力緩和効果、ポリエステル系樹脂と応力緩和材の分散助剤としての効果、さらには官能基導入による基材への濡れ性向上の効果を発揮するものと考えられる。
【0042】
エポキシ樹脂としては、好ましくは数平均分子量450〜40000の範囲にある、分子中に平均で少なくとも1.1個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂である。例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルタイプ、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステルタイプ、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン、あるいは3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等が挙げられる。これらのうち、特に、高い接着力を発揮させるためにはポリエステル樹脂に対して相溶性が良いものが好ましい。エポキシ樹脂の好ましい数平均分子量は450〜40000である。数平均分子量が450未満ではシール材が極めて軟化し易く、機械的物性が劣ることがあり、40000超では、ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、部品との接着性が損なわれて、シール性が低下するおそれがある。
【0043】
ホットメルト型シール材におけるエポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましい。エポキシ樹脂の配合量が0.1質量部未満の場合、結晶化遅延による応力緩和効果が発現できない上、応力緩和材とエポキシ樹脂の分散助剤としての働きも発現できないことがある。また、エポキシ樹脂を50質量部を超えて配合した場合、生産性に劣り、さらにはシール層の耐熱性等の特性が劣ることがある。
【0044】
[ポリエステル系ホットメルト型シール材の特性]
本発明で用いるポリエステル系ホットメルト型シール材は、220℃での溶融粘度が5〜4000dPa・sであることが望ましい。ここで220℃での溶融粘度は以下のようにして測定した値である。すなわち、ポリエステル系ホットメルト型シール材を水分率0.1%以下に乾燥し、次いで株式会社島津製作所社製フローテスター(型番CFT−500C)にて、220℃に加温安定したポリエステル系ホットメルト型シール材を、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cm
2の圧力で通過させたときの粘度の測定値である。4000dPa・sを超える高溶融粘度になると、高い凝集力や耐久性が得られるが、複雑な形状のシール層を形成する際には、高圧の射出成型や押出成型が必要となるため好ましくない。1000dPa・s以下、好ましくは500dPa・s以下の溶融粘度を有するシール材を使用すると、0.1〜100MPaの比較的低い射出圧力で、シール性に優れた構造体が得られる。また、シール材注入操作の観点からは220℃での溶融粘度は低いほうが好ましいが、シール層の接着性や凝集力を考慮すると、溶融粘度は5dPa・s以上が好ましく、10dPa・s以上がより好ましく、50dPa・s以上がさらに好ましく、100dPa・s以上が最も好ましい。
【0045】
また、ポリエステル樹脂の熱劣化を出来るだけ生じさせずにシール層を成型するためには、210〜240℃での速やかな溶融が求められるため、ポリエステル樹脂の融点の上限は210℃が望ましい。好ましくは200℃、より好ましくは190℃である。下限は、該当する用途で求められる耐熱温度より5〜10℃以上高くすると良い。常温での取り扱い性と通常の耐熱性を考慮すると、融点は、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、140℃以上が特に好ましく、150℃以上が最も好ましい。
【0046】
ポリエステル系ホットメルト型シール材には、ポリエステル樹脂の他に、前記した分散助剤や応力緩和材を添加してもよく、さらに、イソシアネート化合物、メラミン等の硬化剤;酸化防止剤;タルクや雲母等の充填材;カーボンブラック、酸化チタン等の顔料;三酸化アンチモン、臭素化ポリスチレン等の難燃剤等を配合しても全く差し支えない。その際のポリエステル樹脂は、シール材全体に対して50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。ポリエステル樹脂の含有量が50質量%未満であると、ポリエステル樹脂自身が有する優れた接着性等の特性が低下するおそれがある。
【0047】
[ポリアミド系ホットメルト型シール材]
本発明では、ポリアミド系ホットメルト型シール材を用いてもよく、ポリアミド系ホットメルト型シール材としては、特に限定されないが、ダイマー酸を共重合したポリアミドや、長鎖脂肪酸を共重合したポリアミドであって、融点が130℃以上、ガラス転移温度が20℃未満のものが好ましい。
【0048】
[ポリオレフィン系ホットメルト型シール材]
本発明では、ポリオレフィン系ホットメルト型シール材を用いてもよく、ポリオレフィン系ホットメルト型シール材としては特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレン等の汎用ポリオレフィンや、ポリ(α−オレフィン)等を単独で用いることができるし、これらをブレンドすることもできる。さらにはプロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン等のα−オレフィンの共重合体や、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸、グリシジルアクリレート、マレイン酸やフマル酸等の不飽和酸、酢酸ビニル等とオレフィンとの共重合体(例えば、酸変性ポリエチレン等)でもよい。また、これらの共重合体とオレフィンのホモポリマーとのブレンドも有効である。
【0049】
ポリオレフィンには、エチレン鎖を主成分とするブロックポリマーおよび/またはプロピレン鎖を主成分とするブロックポリマーが含まれていてもよい。ここで、エチレン鎖を主成分とするブロックポリマーとはブロック状のエチレン成分を50質量%以上含むものを指し、またプロピレン鎖を主成分とするブロックポリマーとはブロック状のプロピレン成分を主成分として50質量%以上含むものを指す。ブロック状のエチレン成分もしくはプロピレン成分を主成分とすることにより、結晶性を確保できるとともに耐熱性等を有することができる。エチレン鎖またはプロピレン鎖を主成分とするブロックポリマーには、前記したα−オレフィンや不飽和酸、酢酸ビニル等を共重合することができるが、(メタ)アクリル酸エステルが接着性付与の観点から好ましい。
【0050】
本発明に用いられるポリオレフィンとしてはポリエチレンが望ましい。ポリエチレンを用いることにより架橋ポリエチレンとの接着強度を上げることができる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(略称:HDPE)や低密度ポリエチレン(略称:LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(略称:LLDPE)等が挙げられるが、耐熱性の観点からLLDPEもしくはHDPEが望ましい。
【0051】
一方、酸変性ポリオレフィンの元となる被酸変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられるが、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体であることが、耐熱性や他の樹脂との相溶性の点で望ましい。被酸変性ポリオレフィンがポリエチレンでは融点が低くなって樹脂組成物としての耐熱性が低下する場合がある。被酸変性ポリオレフィンとしては、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸、不飽和酸、酢酸ビニル、エチレンやα−オレフィン等を共重合したものも使用することができる。
【0052】
酸変性ポリオレフィンは、炭素数3〜10の不飽和カルボン酸、その酸無水物およびそのエステルからなる群より選択される少なくとも1種が、グラフト重合されたものであることが好ましい。酸変性ポリオレフィン全体に対するグラフト鎖の質量は、好ましくは0.5〜10質量%である。より好ましくは、1〜6質量%グラフト重合したものである。グラフト鎖の質量分率が少なすぎると、基材に対する接着性が低下し、多すぎると吸湿性が高くなるとの問題を生じる傾向にある。
【0053】
炭素数3〜10の不飽和カルボン酸、その酸無水物およびそのエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸の酸無水物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。これらの中でもマレイン酸、イタコン酸およびこれらの酸無水物が反応性の点で好ましい。
【0054】
酸変性ポリオレフィンを製造する際のグラフト重合は、公知の方法で実施することができ、特にその方法は限定されない。例えば、前記ポリオレフィンと前記不飽和カルボン酸成分との溶融混合物に、または、前記ポリオレフィンと前記不飽和カルボン酸成分にトルエン、キシレン等の溶媒を用いた混合物溶液に、有機過酸化物を添加して行うことができる。グラフト重合を行う際には、空気および酸素の混入を避けるのが好ましく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。前記有機過酸化物の例としては、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等が挙げられる。
【0055】
ポリオレフィン系ホットメルト型シール材は、190℃で荷重2160gfでのMFRが60g/10分以上であることが好ましい。ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンおよび結晶性共重合ポリエステルのいずれもが、60g/10分以上のMFRであることが、成型後の低分子量体のブリードアウトを抑制できる点で望ましい。より好ましいMFRは80g/10分以上である。MFRが60g/10分未満では、第1および/または第2部品にダメージを与えない程度の温度では溶融粘度が高くなりすぎて、良好な成型性を確保するために成型時の温度や圧力を上げざるを得ず、基材にダメージを与えてしまう。
【0056】
本発明のポリオレフィン系ホットメルト型シール材には、前記したポリエステル系ホットメルト型シール材のところで説明した各種樹脂や各種添加剤を添加してもよい。
【0057】
[シール層含有構造体の製造方法]
以下、第1部品と第2部品との間の空隙をシールするためのシール層を型内で製造するための好適な方法を説明する。この好適な製造方法は2つある。
【0058】
第1の方法は、予め、第1部品と第2部品とがシール層を介さずに接触している複合体を成型しておき、この複合体を用いる方法である。例えば、
図1に示した横断面図においては、第1部品2が第2部品3を貫通している複合体Iを用いる。第1部品が第2部品から突き抜けて出たところがシール性が必要な部位である。金型としては、この複合体Iが嵌合可能で、シール層に相当する部分4aと樹脂導入部4bとが空間となっている金型1を用いる。金型1内に複合体Iを装入した後、樹脂導入部4bからホットメルト型シール材HMを射出または押し出して金型1内に注入する。所定時間保圧した後、金型1から得られた成型品を取り出して、樹脂導入部相当部分5bをカットすれば、シール層5aを備えた本発明の構造体ができあがる。
【0059】
第2の方法は、まず、第1部品の周囲のみにシール層を形成する方法である。
図2に示したように、金型6は、第1部品7が嵌合可能に、また、シール層に相当する部分8aと樹脂導入部8bが空間となるように形成されている。第1部品7を金型6に装入した後、樹脂導入部8bからホットメルト型シール材HMを射出または押し出して金型6内に注入する。所定時間保圧した後、得られた成型品から樹脂導入部相当部分9bをカットすることで、第1部品7とシール層9aとが複合された複合体IIが得られる。別途、第2部品成型用の金型10を用意する。この金型10は、複合体IIが嵌合可能に、また、第2部品に相当する部分11aと樹脂導入部11bとが空間となるよう形成されている。この金型10に複合体IIを装入し、樹脂導入部11bから第2部品用の樹脂Rを射出または押し出して金型10内に注入する。第2部品12aと樹脂導入部相当部分12bとが複合体IIと一体化した成型品が得られるので、樹脂導入部相当部分12bをカットすることで、シール層9aを備えた本発明の構造体ができあがる。
【0060】
本発明の構造体の製造方法は、上記第1および第2の方法に限定されず、成型体の形状や、第1部品と第2部品の複合化の状態に応じて、適宜変更可能である。また、射出成型や押出成型の条件も特に限定されないが、ホットメルトシール材の注入温度:130〜280℃、注入および保持圧力:0.1〜20MPa、冷却時間1秒以上5分以下、射出速度0.5〜50mm/secであると、部品へダメージを与えないため好ましい。
【0061】
本発明のシール層含有構造体は、優れたシール性を有する。シール性の目安は、エアーリーク試験で評価する。エアーリーク試験方法の手順を
図3に示した。まず、シール層含有構造体(
図1や
図2と同じ構造体であり、符号は省略した)を、シール層の上に水を入れることができるようにシール層を上にして、エアーリーク試験用の金型13に固定する。固定の際に、シール層含有構造体と金型13の隙間からエアー漏れが起こらないように、ガスケット14でシールする。このエアーリーク試験用金型13には、エアー導入口15が設けられている。そして、シール層の上に水(符号16)を適量入れた後、0.1kPaのエアーを導入し、30秒間保持する。水の中に気泡が上がってきたら、エアーリーク有り(シール性不良)となる。エアーリークがない場合は、エアーの圧力を0.1kPaから、段階的に高めていき、エアーリークが起きたときのエアーの圧力でシール性を評価する。
図3(b)にシール層近傍の拡大図を示したが、●部分は元々接着されていないためシール性はなく、○部分がしっかりとシールされていないと、エアーリークが起きてしまう。
【0062】
本発明では、冷熱サイクルを受ける前(初期)と、0℃で30分保持した後、60℃で30分保持するサイクルを1サイクルとする冷熱サイクルを100サイクル行った後で、エアーリーク試験を行い、いずれもが0.1kPa以上であることを合格の目安としている。また、後述する実施例では、0.1kPa未満のエアーでもリークが起こったものをP(Poor)、0.1〜10kPaのエアーになるまでリークが起こらなかったものをG(Good)、10超〜100kPaのエアーになるまでリークが起こらなかったものをVG(Very Good)、100kPaを超えるエアーになるまでリークが起こらなかったものをE(Excellent)として評価した。
【0063】
本願は、2012年7月18日に出願された日本国特許出願第2012−160046号および同日に出願された日本国特許出願第2012−160047号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2012−160046号の明細書および日本国特許出願第2012−160047号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0064】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
【0065】
[特性評価方法]
<接着性>
表1に示した素材の板状の第1部品と第2部品を2枚用い、シール材で接着面積が幅25mm×長さ18mmとなるように、また、シール材の厚さが1mmとなるように、接着させた試験片(接着試験片1)を作製した。試験片の作製は、金型を用いた射出成型で行った。射出成型条件は、成型温度220℃、成型圧力3MPa、保圧圧力3MPa、冷却時間15秒、射出速度50%設定とした。
【0066】
それぞれの接着試験片を、23℃、50%RHの雰囲気下で3時間以上100時間以内放置した後、試験片を長手方向に引っ張って剪断力を付加し、破断時の強力を測定した。引張速度は50mm/分とした。接着面積450mm
2当たりの強力を接着強度とした。
【0067】
接着強度が2.0MPaを超える場合をE(Excellent)、1.0MPa超〜2.0MPaをVG(Very Good)、0.2〜1.0MPaをG(Good)、0.2MPa未満をP(Poor)として評価した。
【0068】
<エアーリーク試験>
図1に示した方法で得られたシール層含有構造体、または、
図2に示した方法で得られたシール層含有構造体を用い、前記した方法および評価基準で評価した。シール層の体積と、シール層と構造体との接触面積の比率X/Yは、表1に示したように各例で変更した。
【0069】
<溶融粘度>
島津製作所社製、フローテスター(CFT−500C型)にて、220℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂を充填し、充填して1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重を加え、圧力1MPaで、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)から溶融した試料を98N/cm
2の圧力で押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。
【0070】
製造例1(ポリエステル系ホットメルト型シール材Iの調製)
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸と、テレフタル酸100モル%に対し、グリコール成分100モル%のうちの60モル%に相当する1,4−ブタンジオールを仕込み、全仕込み量100部としたときに、0.25部に相当するテトラブチルチタネートをさらに加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール「PTMG1000」(三菱化学社製)を残り40モル%に相当する量と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス(登録商標)1330」(チバ社製)を0.5部(全仕込み原料量を100部としたときの量)投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしていき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂の融点は165℃で、溶融粘度は250dPa・sであった。
【0071】
このポリエステル樹脂100部に、分散助剤としてフェノール変性アルキルベンゼン樹脂(「ニカノール(登録商標)」;フドー社製;フェノール変性キシレン樹脂;水酸基価3035当量/10
6g)20部と、応力緩和材としてポリα−オレフィン(「エクセレン(登録商標)EUL731」;住友化学社製;エチレン/α−オレフィン共重合体;密度0.90g/cm
3;MFR10g/10分)20部を添加して2軸混練機で混合し、ポリエステル系ホットメルト型シール材Iを得た。
【0072】
製造例2(ポリエステル系ホットメルト型シール材IIの調製)
テレフタル酸80モル%、ダイマー酸20モル%、1,4-ブタンジオール100モル%を用いて、製造例1と同様の反応により、ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂100部に、製造例1と同じ分散助剤と応力緩和材を、製造例1と同量加え、2軸混練機で混合して、ポリエステル系ホットメルト型シール材IIを得た。
【0073】
製造例3(ポリエステル系ホットメルト型シール材IIIの調製)
製造例1と同様の反応により、ポリブチレンテレフタレートを得た。このポリブチレンテレフタレートの融点は220℃で、240℃でのMFRは40g/10分)であった。このポリブチレンテレフタレート100部に、製造例1と同じ分散助剤と応力緩和材を、製造例1と同量加え、2軸混練機で混合して、ポリエステル系ホットメルト型シール材IIIを得た。
【0074】
実施例1〜12および比較例1〜3で用いた他のホットメルト型シール材を以下に示す。
【0075】
ポリアミド系ホットメルト型シール材I:
ダイマー酸/セバシン酸//ピペラジン/エチレンジアミン/ポリプロピレングリコール末端アミン変性物=45/55/60/30/10(モル%)の共重合体
ポリアミド系ホットメルト型シール材II:
グラマイド(登録商標)T−602(東洋紡社製;MFR55g/10分;融点225℃)
ポリオレフィン系ホットメルト型シール材I:
トーヨータック(登録商標)M−300(東洋紡社製;酸変性ポリオレフィン;MFR13g/10min、融点160℃)
ポリオレフィン系ホットメルト型シール材II:
ハイゼックス(登録商標)2100J(三井化学社製;高密度ポリエチレン;MFR5.8g/10min、融点131℃)
実施例1〜12および比較例1〜3で使用した部品を以下に示す。
【0076】
スズメッキ鋼板:東洋紡社加工品
ニッケルメッキ鋼板:東洋紡社加工品
アルミニウム板:A5052板
PBT:ポリブチレンテレフタレート(東洋紡社製、バイロペット(登録商標)EMC532、融点255℃)
PPS:ポリフェニレンサルファイド(東洋紡社製、東洋紡PPS樹脂TS301、荷重たわみ温度(18.6kgf/mm
2)260℃以上)
66ナイロン:ポリアミド66(東洋紡社製、グラマイド(登録商標)T−663G30、ガラス繊維30%含有、メルトインデックス7g/10min)
【0077】
実施例1〜12および比較例1〜3
表1に示したシール材を用いて、X/Yが表1に示した値となるように、
図1または
図2に示した方法で、サンプルを作製し、接着性試験と、エアーリーク試験を行った。エアーリーク試験では、冷熱サイクル前(初期)と、冷熱サイクルを100サイクル繰り返した後の結果を表1に示した。なお、0.1kPa未満のエアーでもリークが起こったものをP(Poor)、0.1〜10kPaのエアーになるまでリークが起こらなかったものをG(Good)、10超〜100kPaのエアーになるまでリークが起こらなかったものをVG(Very Good)、100kPaを超えるエアーになるまでリークが起こらなかったものをE(Excellent)として評価した。
【0078】
実施例9〜12では、ブラスト表面処理を施した第1部品を用いた。
【0079】
【表1】
【0080】
製造例4
製造例1で得られたポリエステル樹脂をポリエステル樹脂IVとした。
【0081】
製造例5
製造例2で得られたポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Vとした。
【0082】
製造例6
数平均分子量20000のポリブチレンテレフタレート100部と、上記と同様の方法で調製した数平均分子量13000の脂肪族6−ポリカーボネートジオール150部を、230℃〜245℃、130Pa下で1時間撹拌し、樹脂が透明になったことを確認し、ポリエステル樹脂VIを得た。
【0083】
実施例13〜21と参考例1〜4
表2に示したように、ポリエステル樹脂IV〜VIのそれぞれ100部に対し、応力緩和材を30部と分散助剤を10部加えて、2軸混練機を用いて混合した。前記と同様にして、シール層含有構造体を作製し、接着性試験とエアーリーク試験を行い、評価した。なお、XとYの比率は20(×10
-4)mL/mm
2と一定にした。
【0084】
表2に示した応力緩和材として用いた樹脂、ゴムの種類と、分散助剤としてのエポキシ樹脂の種類を以下に示す。
ポリオレフィン:エクセレン(登録商標)EUL731(住友化学社製;エチレン/α−オレフィン共重合体;密度0.90g/cm
3;MFR10g/10分)
ポリアミド:Pebax(登録商標)MX1205(アルケマ社製;ポリエーテルブロックアミド(ポリアミド系エラストマー);融点147℃;MFR9g/10min)
フッ素樹脂:ネオフロン(登録商標)EFEP RP−4020(ダイキン工業社製;変性フッ素樹脂)
エポキシ樹脂A:JER(登録商標)1007(ジャパンエポキシレジン(現三菱化学)社製;ビスフェノール型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂B:UG4070(東亞合成社製、多官能エポキシ樹脂)
【0085】
【表2】