(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プロジェクタに代表される投射型表示装置においては、高輝度、低消費電力、長寿命な光源が求められている。このような要求を満たす光源として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD:Laser Diode)がある。
【0003】
図13は、光源としてLEDを用いた投射型表示装置100Aの構成図である。緑LED101G、青LED101B、赤LED101Rからの光は、それぞれレンズ107a〜107f、光変調部102G、102B、102Rを透過する。その後、各光は、クロスダイクロイックプリズム103で合成され、投射レンズ108に入射する。そして、投射レンズ108から図示しないスクリーン等に投射される。
【0004】
なお、光変調部102G、102B、102Rは、偏光子、液晶セル及び検光子を含み、入射した光を空間的に変調して出射する。
【0005】
クロスダイクロイックプリズム103は、青色の波長帯域の光のみを反射するダイクロイック膜と、赤色の波長帯域の光のみを反射するダイクロイック膜とを含んでいる。そして、3方向からクロスダイクロイックプリズム103に入射した緑色光、青色光、赤色光が合成されて、投射レンズ108に投射される。
【0006】
このような、LEDは半導体からなり、InGaN系の半導体材料を用いることで青色光を発光でき、AlGaInP系の半導体材料を用いることで赤色光を発光できることが知られている。しかし、InGaN系とAlGaInP系との半導体材料を用いて形成された緑色光を発光するLEDは、発光効率が低いという課題がある。この課題は、グリーンギャップと呼ばれている。
【0007】
このグリーンギャップにおける緑色光の光量不足を解決する方法として、LEDやLDの光源と、蛍光体の光源とを組み合わせた光源が提案されている。蛍光体を用いた光源として、例えば、青LEDと蛍光体とを組み合わせた構成(所謂、蛍光体LED)が知られている。この構成では、青LEDが出射した青色光が蛍光体に緑色光を発生させるための励起光として利用される。
【0008】
励起光源として使用する青LEDは、緑LEDよりも大きな出力を持つ。従って、蛍光体LEDを用いることで、緑LEDが発光する緑色光よりも高輝度の緑色光が得られる。
【0009】
一方、複数個の緑LEDを用いて高輝度の緑色光を発光する方法が、特許文献1に開示されている。
図14に、特許文献1に記載の投射型表示装置100Bの構成を示す。
【0010】
この投射型表示装置100Bは、緑LED101G、複合LED110B、赤LED101Rを有する。なお、複合LED110Bは、青LED101B及び緑LED111Gを含んでいる。そして、複合LED110Bから青色光と緑色光が合成された光が出射される。
【0011】
各LEDからの光は、レンズ107a〜107f、光変調部102G、102B、102Rを透過し、クロスダイクロイックプリズム103に入射する。
【0012】
クロスダイクロイックプリズム103は、波長依存性及び偏光依存性を有しており、緑色光、青色光、赤色光を合成すると同時に、偏光を利用して緑LED101Gから出射した緑色光と複合LED110Bの緑LED111Gから出射した緑色光とを合成する。
【0013】
このように、複合LED110Bにおいて、青色光と緑色光とが出射されることにより、投射レンズ108から出射される緑色光の強度を増大させることができる。
【0014】
なお、緑色光の強度をさらに増大させる方法として、蛍光体LEDを特許文献1の投射型表示装置に用いることが考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態にかかる投射型表示装置は、後述するように緑色光を発光する緑光源、青色光を発光する青光源、赤色光を発光する赤光源を用いる。このとき、特許請求の範囲における第1光源を緑光源、第2光源を青光源、第3光源を赤光源に対応付けることもできるが、本発明はかかる対応関係に限定するものではないことを予め付言する。従って、例えば第1光源を赤光源に対応付けてもよい。そして、第1光源を緑光源に対応させた場合には、第1光は緑色光であり、第1光源を赤光源に対応させた場合には第1光は赤色光であり、出射光の波長帯域も光源の色に対応する。以下の説明では、第1光源を緑光源、第2光源を青光源、第3光源を赤光源として説明する。
【0024】
また、以下の説明では、光の偏光方向を特定して説明するが、本発明は係る特定に限定されない。即ち、以下の説明において、第1方向の偏光成分を有する光をS偏光、第2方向の偏光成分を有する光をP偏光とした場合について説明するが、S偏光とP偏光とが入れ替わった場合についても適用可能である。
【0025】
図1は投射型表示装置2の構成図であり、
図2は光路を透過する光の偏光状態と進行方向を追記した構成図である。
【0026】
投射型表示装置2は、光源11、レンズ12、光路分離部13、ミラー15、光変調部16、シャッタ(遮蔽部)17、光路分離合成部18、光路合成部19、投射レンズ20、反射部22を備える。
【0027】
光源11は、緑色光(第1光)を出射する緑光源(第1光源)11G、青色光(第6光)を出射する青光源(第2光源)11B、赤色光(第7光)を出射する赤光源(第3光源)11Rを備える。このような光源11は、発光ダイオードや面発光レーザ等の面発光型の固体光源、又は、光源と導光板からなる面発光デバイスが適用可能である。
【0028】
なお、緑光源11Gとしては、少なくとも励起光源と蛍光体とから構成される光源が利用できる。励起光源には、紫色から青色までの波長帯域のうち任意の波長帯域の光を出射するLEDやLDが用いられる。蛍光体は蛍光材料そのもの、あるいは蛍光体材料を透明材料に分散させたり、積層させたりしたものが用いられる。励起光源と蛍光体は密着して配置するか、間隙を設けて配置しても良い。間隙にレンズや導光体、あるいはその他の透明材料からなる光学素子やミラーなどを配置しても良い。青光源11Bと赤光源11Rについても、LEDやLDが用いられ、レンズや導光体などの光学素子を構成要素として含んでも良い。以下では、緑光源11Gとして蛍光体を密着配置した蛍光体LED、青光源11Bとして青色LED、赤光源11Rとして赤色LEDを用いた場合について説明する。
【0029】
図3は、各光源11から出射された光のスペクトル分布を示す図である。青光源11Bから出射する青色光は、400nm〜500nmの波長帯域(第2波長帯域)に光強度のピークを持つ。また、緑光源11Gから出射する緑色光は、500nm〜600nmの波長帯域(第1波長帯域)に光強度のピークを持つ。赤光源11Rから出射する赤色光は、600nm〜700nmの波長帯域(第3波長帯域)に光強度のピークを持つ。そして、緑光源11Gから出射した緑色光のスペクトル分布は、青光源11Bまたは赤光源11Rからの出射光とスペクトルが部分的に重なっている。
【0030】
レンズ12(12a〜12h)は、入射した光を集光または発散して、出射する。
【0031】
光路分離部13は、入射した光のうち、P偏光を透過させ、S偏光を反射する特性を有する。
光路分離部13は、偏光子により形成されている。なお、光路分離部13として、アルミニウムや銀、金などの金属を用いたワイヤグリッド偏光子、フォトニック結晶、誘電体多層膜などを用いることが可能である。
【0032】
ミラー15は、入射した光を反射する。
【0033】
光変調部16は、各光源11(11R、11G、11B)に対応して設けられた光変調部16R、光変調部16G、光変調部16Bを含んで、入射した光を空間的に変調して出射する。
【0034】
図4は、光変調部16の構成図である。各光変調部16R、16G、16Bは、偏光子16Ra、16Ga、16Baと、偏光変調素子である液晶セル16Rb、16Gb、16Gbと、検光子16Rc、16Gc、16Bcとから構成されている。ここで、紙面に対し垂直な偏光成分をS偏光、紙面に対し平行な偏光成分をP偏光と定義すると、偏光子16Ba、16Ra、検光子16Gcは、P偏光のみを透過させ、偏光子16Ga、検光子16Bc、16Rcは、S偏光のみを透過させる。
【0035】
光変調部16に偏光子16Ra、16Ga、16Baの側から入射した光は、液晶セル16Rb、16Gb、16Bbで偏光方向が回転した光のうち、検光子16Rc、16Gc、16Bcを透過する偏光成分の光が検光子16Rc、16Gc、16Bcから出射される。なお、偏光変調素子として、液晶セルである必要はなく、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、SBN(ニオブ酸ストロンチウムバリウム)などの電気光学効果を有する材料からなる素子を用いても良い。
【0036】
なお、偏光子16Ra、16Ga、16Ba、検光子16Rc、16Gc、16Bcとして、アルミニウムや銀、金などの金属を用いたワイヤグリッド偏光子、フォトニック結晶、誘電体多層膜などを用いることが可能である。また、検光子16Rc、16Gc、16Bcとして、ポリマーを用いた吸収型偏光子を用いることが可能である。
【0037】
シャッタ17は、吸収板を備え、この吸収板を光路に出し入れすることにより入射した光を透過させるか吸収させるかを切替える構成が適用できる。シャッタ17は吸収板を機械的に開閉する構成が適用できる。
【0038】
光路分離合成部18は、入射した波長帯域の異なる2つの光を合成、または、入射した光を波長帯域の異なる2つの光に分離する。
図5は、光路分離合成部18の透過率の波長依存性および各光源のスペクトル分布図である。光路分離合成部18は、波長帯域が550nm近傍の光を反射し、それ以外の波長帯域の光を透過させる特性を有し、反射する波長帯域は緑光源11Gからの出射光の波長帯域よりも狭く設定されている。
【0039】
なお、光路分離合成部18は、緑光源11Gのスペクトル分布が狭い場合は、波長550nm近傍の光のみを反射させる必要はない。即ち、緑光源11Gからの光のスペクトル分布と赤光源からの光のスペクトル分布とが重なっている波長領域が狭い場合は、光路分離合成部18は550nmより長波長側の波長領域の光も反射するように設定しても良い。
【0040】
反射部22は、光路分離合成部18を透過した光を反射する。反射部22で反射された光は光路分離合成部18に再度入射する。
【0041】
図6は、光LG_1〜LG_6のスペクトル分布を示した図である。
光LG_1(第1光)は緑光源11Gから出射された光である。
光LG_2(第2光)は光LG_1のうち光路分離部13を透過したP偏光の光である。光LG_3(第3光)は光LG_1のうち光路分離部13で反射されたS偏光の光である。
光LG_4(第4光)は光LG_2のうち光路分離合成部18で反射された光である。
光LG_5(第5光)は光LG_2のうち光路分離合成部18を透過した光である。
光LG_6は、光LG_5のうち反射部22で反射され、光路分離合成部18を透過した光である。
【0042】
図6に示すように、光LG_1、LG_2、LG_3は同じスペクトル分布を持っている。一方、光LG_4は、光路分離合成部18の反射特性のために、光LG_2より狭い波長帯域を持つと共に、波長550nm近傍でピークを持つ。
【0043】
さらに、光LG_5と光LG_6は、光路分離合成部18の透過特性のために、波長550nm近傍の波長帯域の光強度が低下し、この波長帯域より短波長側と長波長側とにピークを有する示すスペクトル分布を持っている。なお、光LG_6の光強度及び波長帯域は、光路分離合成部18を二度透過するため、光LG_5より狭くなっている。
【0044】
光路合成部19は、複数の方向から入射した光を合成して、投射レンズ20に出射する。光路合成部19としてクロスダイクロイックプリズムを使用できる。
【0045】
図7は、光路合成部19の上面図である。この光路合成部19は、直交して配置された第1ダイクロイック膜19aと第2ダイクロイック膜19bとを含んでいる。光路合成部19は、第1入射面19cから入射した光LG_3、第2入射面19dから入射した光LG_4、青色光、第3入射面19eから入射した赤色光を合成し、出射面19fから出射する。
【0046】
図8に第1ダイクロイック膜19aの透過率の波長依存性及び、光路合成部19に入射する光のスペクトル分布を示し、
図9に第2ダイクロイック膜19bの透過率の波長依存性及び、光路合成部19に入射する光のスペクトル分布を示す。
図8(a)及び
図9(a)は、P偏光(第2方向の偏光成分を有する光)の光に対する特性を示し、
図8(b)及び
図9(b)は、S偏光(第1方向の偏光成分を有する光)の光に対する特性を示している。
【0047】
図7に示すように、光路合成部19には、P偏光成分(第2方向の偏光成分)の光LG_3、S偏光成分(第1方向の偏光成分)の青色光及び光LG_4、S偏光成分(第1方向の偏光成分)の赤色光が入射する。
【0048】
そして、第1ダイクロイック膜19aは、P偏光の光LG_3を透過させる。また、S偏光の赤色光を透過させる。さらに、第1ダイクロイック膜19aは、S偏光の青色光及び光LG_4を反射する。
【0049】
一方、第2ダイクロイック膜19bは、P偏光の光LG_3を透過させる。また、S偏光の青色光及び光LG_4を透過させ、S偏光の赤色光を反射する。
【0050】
従って、
図7に示すように、P偏光の光LG_3は、第1ダイクロイック膜19a、第2ダイクロイック膜19bを透過して投射レンズ20の側に出射される。また、S偏光の青色光及び光LG_4は、第1ダイクロイック膜19aにより反射され、S偏光の赤色光は第2ダイクロイック膜19bで反射されて、それぞれ投射レンズ20の側に出射される。これにより、光路合成部19は入射した光をほとんど損失させることなく合成して出射できる。
【0051】
なお、上述した光路分離合成部18や第1ダイクロイック膜19a及び第2ダイクロイック膜19bとして、例えば、誘電体多層膜やホログラフィック素子、フォトニック結晶などを使用して、特定の波長帯域の光を透過させ、それ以外の波長帯域の光を反射する特性を有するものを用いることが可能である。
なお、ダイクロイック膜19aとダイクロイック膜19bとは直交して配置されている必要はなく、90度以外の角度で交差していても良い。また、ダイクロイック膜19aとダイクロイック膜19bとは交差している必要はない。すなわち、
図10に示すプリズム19Bのように、ダイクロイック膜19aを有するプリズムとダイクロイック膜19bを有するプリズムの2つから構成されていても良い。
【0052】
投射レンズ20は、光路合成部19から出射した光を図示しないスクリーン上に投射する。
【0053】
次に、各光源11からの光の光路を説明する。
図11は光の分離合成手順を示したフローチャートである。ステップS1は、各光源11から光を出射するステップである。ステップS10、ステップS40、ステップS12は、それぞれ、緑光源11Gから出射した光が、光路分離部13、シャッタ17、光変調部16Gを通過するステップである。ステップS20は、青光源11B及びシャッタ17を透過した光LG_4が、光路分離合成部18を通過するステップである。ステップ21は、光路分離合成部18を透過した光LG_5が反射部22、光路分離合成部18、緑光源11Gを通過するステップである。ステップS22は、光路分離合成部18を通過した光が光変調部16Bを通過するステップである。ステップS30は、赤光源11Rから出射した光が、光変調部16Rを通過するステップである。ステップS2は、光変調部16を透過した光が光路合成部19に入射して合成されて出射するステップである。ステップS3は、投射レンズ20に入射した光をスクリーン上に投射するステップである。
【0054】
ステップS1: 赤光源11R、緑光源11G、青光源11Bからそれぞれ光が出射される。
【0055】
ステップS10: 緑光源11Gから出射した光LG_1は、レンズ12aを透過して光路分離部13に入射する。そして、光LG_1のP偏光成分は光路分離部13を透過し、S偏光成分は光路分離部13で反射される。即ち、光LG_1は偏光方向に応じて透過光LG_2と反射光LG_3の2つに分離される。このとき光路分離部13を透過したP偏光成分の光LG_2は、シャッタ17に入射、光路分離部13で反射されたS偏光成分の光LG_3は、ミラー15に入射する。
【0056】
ステップS12: ミラー15に入射し、反射されて光変調部16Gに入射したS偏光の光LG_3は、光変調部16Gで空間的に変調されると共にP偏光の光に変換され、光路合成部19の第1入射面19cに入射する。
【0057】
ステップS40: シャッタ17が入射した光を透過させるように設定されている場合(シャッタ17が開いている場合)には、ステップS10において光路分離部13を透過した光LG_2はシャッタ17を透過して光路分離合成部18に入射する。一方、シャッタ17が入射した光を吸収するように設定されている場合(シャッタ17が閉じている場合)には、ステップS10において光路分離部13を透過した光LG_2はシャッタ17で吸収される。
【0058】
ステップS20: シャッタ17が開いている場合、青光源11Bから出射した光と光LG_4とが光路分離合成部18に入射する。光路分離合成部18は、
図5に示したように、波長帯域が550nm近傍の光を反射し、それ以外の波長帯域の光を透過する特性を持っている。従って、青光源11Bからの青色光は、光路分離合成部18を透過する。また、光LG_2の内、波長帯域が550nm近傍の光LG_4は光路分離合成部18で反射され、それ以外の波長帯域の光LG_5は光路分離合成部18を透過する。一方、シャッタ17が閉じている場合は、青色光のみが光路合成部18に入射して光路合成部18を透過する。
【0059】
ステップS21: 光路分離合成部18を透過した波長帯域が550nm近傍以外の光LG_5は、レンズ12hを透過し、反射部22で反射され、更にレンズ12hを透過して光路分離合成部18に入射する。
【0060】
反射部22で反射された光LG_5は光路分離合成部18を透過し、この透過した光LG_6は、光路分離部13を透過して緑光源11Gに入射する。緑色光源11Gに入射した光LG_6は、緑光源11Gで偏光方向がランダムに変換されて反射される。即ち、光LG_6は、緑光源11Gから出射された光のように振舞い、ステップS20からステップS10に戻る。従って、光路分離部13を透過した緑色光の有効利用が可能になっている。これにより、光路分離合成部18で緑色光の光LG_4と青色光との合成が行われて光変調部16Bに入射する。
【0061】
ステップS22: 光変調部16Bに入射したP偏光の青色光、光LG_4は、光変調部16Bで空間的に変調されると共にS偏光の光に変換され、光路合成部19の第2入射面19dに入射する。
【0062】
ステップS30: 光変調部16Rに入射した赤色光は、光変調部16Rで空間的に変調されると共にS偏光の光に変換され、光路合成部19の第3入射面19eに入射する。
【0063】
以上により、光路合成部19の第1入射面19cにP偏光の光LG_3が入射し、第2入射面19dにS偏光の光LG_4と青色光とが入射し、入射面19eにS偏光の赤色光が入射する。
【0064】
ステップS2: 光路合成部19は、光路合成部19に入射した光を合成して出射面19fから投射レンズ20に出射する。
ステップS3: 光路合成部19から出射した光は、投射レンズ20によりスクリーン上に投射される。
【0065】
ところで、シャッタ17が開いている場合は、光変調部16Bを透過して光路合成部19に入射する光は、波長500nmから600nmの間に強度のピークを有する光LG_4と、波長400nmから500nmの間に強度のピークを有する青色光とが合成された光である。このため、色度座標上で青色光よりも白色光に近い光となり、投射型表示装置2からの出射光の色再現範囲は狭くなる。
【0066】
これに対し、シャッタ17が閉じている場合は、光変調部16Bを透過して光路合成部19に入射する光は青色光のみであるため、投射型表示装置2からの出射光の色度範囲は、シャッタ17が開いている場合よりも広くなる。
【0067】
即ち、シャッタ17の開閉により、投射型表示装置2の出力を上げて色再現範囲を狭めるか、出力を下げて色再現範囲を広げるかを切り替えられる。
【0068】
なお、シャッタ17として吸収板ではなくミラーを光路に出し入れすることにより入射した光を透過させるか反射するかを切替える構成を用いても良い。シャッタ17としてミラーを用いた場合の光路分離部13や光変調部16等の各要素を光が透過する際の透過状態を説明するフローチャートを
図12に示す。
図12のフローチャートは、
図11のフローチャートのステップS40の代わりにステップS41を有していることと、ステップS42を有していること以外は、
図11に示すフローチャートと同じである。
【0069】
ステップS41: シャッタ17がミラーを光路に出し入れすることにより、入射した光を透過させるか反射するかを切替える構成で、かつ、シャッタ17が入射した光を透過させるように設定されている場合(シャッタ17が開いている場合)には、ステップS10において光路分離部13を透過した光LG_2はシャッタ17を透過して光路分離合成部18に入射する。一方、シャッタ17が入射した光を反射するように設定されている場合(シャッタ17が閉じている場合)には、ステップS10において光路分離部13を透過した光LG_2はシャッタ17で反射されて光路分離部13に入射する。
ステップS42: シャッタ17で反射され、光路分離部13に入射した光LG_2は、光路分離部13を透過して、緑光源11Gに入射する。緑色光源11Gに入射した光LG_2は、緑光源11Gで偏光方向がランダムに変換されて反射される。即ち、光LG_2は、緑光源11Gから出射された光のように振舞い、ステップS42からステップS10に戻る。
【0070】
このように、シャッタ17としてミラーを用いることで、吸収板を用いる場合に比べ、光変調部16Gを透過して光路合成部19に入射する光の光量を増やすことが出来る。
【0071】
また、シャッタ17のミラーとしてハーフミラーを用いても良い。ハーフミラーを用いることにより、色再現範囲と光出力との関係を任意に設定することが可能である。
【0072】
以上説明したように、光路分離部13で光路分離されたS偏光の光LG_3は、光路合成部19で光量損失することなく投射レンズ20に入射させることができる。また、シャッタ17が開いている場合、P偏光の光LG_2のうち波長550nm近傍の波長帯域の光LG_4は、光路合成部19で光量損失することなく投射レンズ20に入射させることができる。さらに、P偏光の光LG_2のうち波長550nm近傍以外の波長帯域の光LG_5は、反射部22と緑光源11Gの間で偏光状態が変化しながら反射を繰り返すことで、最終的にS偏光として光路分離部13で反射され、投射レンズ20に入射させることができる。
【0073】
従って、1つの緑色光源から出射した光を2つに分離し、そのうち片方の光を青色光に合成することで、赤色光や青色光の強度を低下させること無く、緑色光の光量を増加させることが可能になる。
【0074】
ここで、光路分離合成部18で青色光と緑色光LG_2を合成混合する時に、光LG_2のうち、波長帯域が青色光の波長帯域と重なっている光は合成されない。しかし、光路分離合成部18で合成されなかった光LG_5は反射部22で反射され、緑光源11Gに入射し、偏光方向がランダムに変換されて再度緑光源11Gから出射する。この再度緑光源11Gから出射した光LG_6の一部は、光LG_3と共に光変調部16Gを透過して光路合成部19に入射する。このように、緑色光のうち波長帯域が青色光の波長帯域と重なっている光も効率よく光を利用できるようになる。
【0075】
なお、上記構成においては、緑光源11Gと光路分離部13との間にはレンズ12aのみを設けていたが、この間に1/4波長板を設けても良い。
【0076】
1/4波長板は、透過する光に90度の位相差を与える作用を持つ。従って、反射部22で反射され、光路分離合成部18を透過したP偏光の光LG_6のうち、光路分離部13を透過して緑光源11Gで偏光方向がランダムに変換されずに鏡面反射された光は、再度光路分離部13に入射する間に、この1/4波長板を2度透過して180度の位相差が与えられ、S偏光の光に変換される。これにより、光LG_6の反射部22と緑光源11Gにおける反射回数を減らすことができると共に、光路分離部13や緑光源11G等における吸収損失、光路分離合成部18、レンズ12a、レンズ12g、レンズ12hを透過する際の表面反射やケラレによる光量損失を抑制できる。
【0077】
この出願は、2012年8月2日に出願された日本出願特願2012−172193を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
上記実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
<付記1>
複数の波長帯域の光を発生して投射する投射型表示装置であって、
第1波長帯域の第1光を出射する第1光源と、
該第1光を互いに偏光方向が直交する第3光と第2光とに分離する光路分離部と、
該第2光を互いに波長帯域の異なる第4光と第5光とに分離する光路分離合成部と、
該第5光を該光路分離合成部の方向に反射する反射部と、
該第3光と該第2光とを合成する光路合成部と、を備え、
該第4光は、該第1波長帯域における所定帯域を第4波長帯域とした際に、該第4波長帯域の光であり、
該第5光は、該第1波長帯域から該第4波長帯域を除いてなる第5波長帯域の光である、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記2>
付記1に記載の投射型表示装置であって、
第2波長帯域を有する第6光を出射する第2光源と、
第3波長帯域を有する第7光を出射する第3光源と、
を備え、
前記光路分離合成部は、該第6光と前記第4光とを合成し、
前記光路合成部は、該第6光と該第7光と前記第3光と前記第4光とを合成する、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記3>
付記2に記載の投射型表示装置であって、
前記光路合成部は、
前記第3光が入射する第1入射面と、
前記第6光及び前記第4光が入射する第2入射面と、
前記第7光が入射する第3入射面と、
入射した前記第3光〜前記第7光を合成して出射する出射面と、
を備えることを特徴とする投射型表示装置。
<付記4>
付記3に記載の投射型表示装置であって、
前記光路合成部は、
少なくとも前記第2波長帯域の光又は前記第4波長帯域の光のうち、第1方向の偏光成分を有する光を反射すると共に、少なくとも前記第1波長帯域の光のうち、該第1方向と直交する第2方向の偏光成分の光を透過させる第1膜と、
少なくとも前記第3波長帯域の光のうち、該第1方向の偏光成分を有する光を反射すると共に、少なくとも前記第1波長帯域の光のうち、該第2方向の偏光成分を有する光を透過させる第2膜と、
を含むことを特徴とする投射型表示装置。
<付記5>
付記3又は4に記載の投射型表示装置であって、
前記光路合成部の前記第1入射面〜前記第3入射面の各入射面に対応して、前記入射面に入射する光を変調する第1光変調部〜第3光変調部が設けられ、かつ、前記第1光変調部〜第3光変調部は、入射光側から偏光子、偏光変調素子、検光子を配置して形成されている、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記6>
付記1乃至5のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記光路分離部と前記第1光源との間に1/4波長板を設けた
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記7>
付記2乃至5のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記第1光は、波長が500nm〜600nmの間で強度のピークを有し、
前記第6光は、波長が400nm〜500nmの間で強度のピークを有し、
前記第7光は、波長が600nm〜700nmの間で強度のピークを有する
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記8>
付記1乃至7のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記第1光源は、
波長が300nm〜500nmの間に光強度のピークを持つ第8光を出射する第4光源と、
前記第4光源からの光を吸収して、第1光を出射する蛍光体と、を備える
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記9>
付記1乃至8のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記光路分離部と前記光路分離合成部との間に、入射した光を透過させるか遮蔽するかを切り替える第1遮蔽部を設けた、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記10>
付記1乃至8のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記光路分離部と前記光路分離合成部との間に、入射した光を透過させるか反射するかを切り替える第2遮蔽部を設けた、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記11>
付記1乃至8のいずれか1項に記載の投射型表示装置であって、
前記光路分離部と前記光路分離合成部との間に、入射した光を透過させるか一部を透過させ一部を反射するかを切り替える第3遮蔽部を設けた、
ことを特徴とする投射型表示装置。
<付記12>
複数の波長帯域の光を発生して投射する投射光発生方法であって、
第1波長帯域の第1光を出射する第1光出射手段と、
該第1光を互いに偏光方向が直交する第3光と第2光とに分離する第1光路分離手順と、
該第2光を互いに波長帯域の異なる第4光と第5光とに分離する光路分離合成手順と、
該第5光を該光路分離合成手順の方向に反射する反射手順と、
該第3光と該第2光とを合成する光路合成手順と、を含み、
該第4光は、該第1波長帯域における所定帯域を第4波長帯域とした際に、該第4波長帯域の光であり、
該第5光は、該第1波長帯域から該第4波長帯域を除いてなる第5波長帯域の光である、
ことを特徴とする投射光発生方法。
<付記13>
付記12に記載の投射光発生方法であって、
第2波長帯域を有する第6光を出射する第6光出射手段と、
第3波長帯域を有する第7光を出射する第7光出射手段と、
を含み、
前記光路分離合成手順は、該第6光と前記第4光とを合成し、
前記光路合成手順は、該第6光と該第7光と前記第3光と前記第4光とを合成する、
ことを特徴とする投射光発生方法。
<付記14>
付記13に記載の投射光発生方法であって、
前記光路合成手順は、
前記第3光が入射する第1入射面と、
前記第6光及び前記第4光が入射する第2入射面と、
前記第7光が入射する第3入射面と、
入射した前記第3光〜前記第7光を合成して出射する出射面と、
を含むことを特徴とする投射光発生方法。
<付記15>
付記14に記載の投射光発生方法であって、
前記光路合成手順は、
少なくとも前記第2波長帯域の光又は前記第4波長帯域の光のうち、第1方向の偏光成分を有する光を反射すると共に、少なくとも該第1波長帯域の光のうち、該第1方向と直交する第2方向の偏光成分の光を透過させる第1膜と、
少なくとも該第3波長帯域の光のうち、該第1方向の偏光成分を有する光を反射すると共に、少なくとも前記第1波長帯域の光のうち、該第2方向の偏光成分を有する光を透過させる第2膜と、
を含むことを特徴とする投射光発生方法。
<付記16>
付記12乃至15に記載の投射光発生方法であって、
前記第1光出射手段は、
波長が300nm〜500nmの間に光強度のピークを持つ前記第8光を出射する第8光出射手段と、
前記第8光出射手段からの光を吸収して、第1光を出射する蛍光出射手段と、を含む
ことを特徴とする投射光発生方法。
<付記17>
付記12乃至16のいずれか1項に記載の投射光発生方法であって、
前記光路分離手順で分離した前記第2光を透過させるか遮蔽するかを切り替える第1遮蔽手順を含む、
ことを特徴とする投射光発生方法。
<付記18>
付記12乃至16のいずれか1項に記載の投射光発生方法であって、
前記光路分離手順で分離した前記第2光を透過させるか反射するかを切り替える第2遮蔽手順を含む、
ことを特徴とする投射光発生方法。
<付記19>
付記12乃至16のいずれか1項に記載の投射光発生方法であって、
前記光路分離手順で分離した前記第2光を透過させるか一部を透過させ一部を反射するかを切り替える第3遮蔽手順を含む、
ことを特徴とする投射光発生方法。