(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分波信号のうち、所定の周波数の信号の電力総和と、所定の基準電力との比較結果に基づいて、前記第1の周波数、及び前記第2の周波数を決定するキャリア選択部を備える請求項1に記載の送信装置。
前記信号発生器は、前記電力増幅器の電力増幅度に基づいて、前記入力信号の増幅電力の総和を、増幅総和電力として推定し、前記増幅総和電力に応じて、前記入力信号の電力を制御する請求項1乃至6のいずれか一に記載の送信装置。
【背景技術】
【0002】
無線通信機に用いられる送信用の電力増幅器は、無線通信機の構成要素の中でも特に電力を消費する。そのため、電力増幅器(Power Amplifier、PA)の消費電力の低減が、無線通信機開発の重要課題とされている。
【0003】
近年の通信規格は、スペクトル効率改善のために線形変調方式が主流になっている。線形変調方式では、信号振幅は時間的な変動を示す。信号振幅が一定の周波数変調方式と異なり、線形変調方式では送信する信号の歪に対する要求が厳しい。この対策として、送信信号の瞬時最大出力(ピーク)電力が電力増幅器の飽和出力以下になるように、送信信号の平均出力電力を低い値に設定する事で、送信信号の歪を低く抑える事ができる。
【0004】
しかしながら一般に、平均出力電力を飽和出力電力から低い比率に下げるほど(バックオフ量を取るほど)、電力増幅器の電力効率が低下する。電力増幅器の電力効率は、電力増幅器から出力される送信電力と、電源から電力増幅器に供給される電力(消費電力)の比率で定められる。電力効率の低下は、所望の送信電力に比べて消費電力を不要に増加させる。そこで、バックオフ量を取った場合においても、電力増幅器の消費電力を抑制する手法が開発されている。
【0005】
線形変調信号の振幅の時間変動によらず、電力増幅器の電力効率を高く維持し、電力増幅器の消費電力を抑制する手法の一例が、特許文献1において開示されている。
図30は、特許文献1に記載の送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図30の送信装置では、直列並列変換器12と、フィルタ13及び14と、演算回路15を介して、端子11に入力された線形変調信号を、2つの周波数変調信号V
1及びV
2に変換する。周波数変調信号V
1及びV
2は、それぞれ電力増幅器16及び17に入力される。周波数変調信号V
1及びV
2の振幅は時間変動しない一定値であるため、電力増幅器16及び17はバックオフを取る必要がなく、高い電力効率が維持される。電力増幅器16及び17で増幅及び出力された周波数変調信号S
1及びS
2は、端子2及び3を経由して電力合成器18に入力される。電力合成器18は、信号S
1及びS
2を合成し、端子11に入力された線形変調信号の増幅信号を再生して端子4及び負荷9に出力する。
【0006】
電力合成器18において、周波数変調信号S1及びS2の差分信号が端子5に出力される。通常の場合、端子5は抵抗によって終端され、差分信号の電力は抵抗終端によって損失となる。そこで、
図30の方式では、端子5の先に、整流回路20とフィルタ19及び21を設置し、端子5に出力された差分信号を直流電力に変換し、端子22に出力する。端子22に出力された直流電力は、電力増幅器16及び17への供給電力として再利用する事で、無駄な電力消費が抑制される。上記の手法により、PAの省電力化が実現されている。
【0007】
また、線形変調信号の振幅の時間変動によらず、電力増幅器の電力効率を高く維持し、電力増幅器の消費電力を抑制する手法の一例が、特許文献2において開示されている。
図31は、特許文献2に記載の送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
【0008】
図31の送信装置では、信号生成部31と角度変調部32において、送信信号から振幅成分を除いた位相変調信号が生成され、位相変調信号は方向性結合器61を経由して電力増幅器551及び552に入力される。位相変調信号は振幅一定であるため、電力増幅器551及び552はバックオフを取る必要がなく、高い電力効率が維持される。また、送信信号から位相成分を除いた振幅信号が、可変利得増幅器28及びレギュレータ34において増幅され、振幅信号は電力増幅器551及び552の電源端子に入力される。電力増幅器551及び552には、位相変調信号が入力され、かつ電源端子が振幅信号により変調されるため、振幅成分と位相成分を備えた送信信号が再生され、方向性結合器62を経由して出力端子37へと出力される。送信信号電力が大きい場合は、スイッチ53をオンにする事で電力増幅器551に電力を供給し、電力増幅器551及び552をともに動作させる。また、送信信号電力が小さい場合は、スイッチ53をオフにする事で電力増幅器551への電力供給を止め、電力増幅器552を動作させる事で、省電力化が図られる。
【0009】
図31の送信装置では、電力増幅器551及び552の出力の差分信号が、方向性結合器62から電力再利用部63へ出力される。通常、電力増幅器551及び552の出力の差分信号の電力は無駄に消費される。そこで、
図31の方式では、電力再利用部63において差分信号を直流電力に変換し、端子33に出力する。端子33に出力された直流電力は、レギュレータ34を介して電力増幅器551及び552への供給電力として再利用する事で、無駄な電力消費が抑制される。上記の手法により、PAの省電力化が実現されている。
【0010】
また、線形変調信号の振幅の時間変動によらず、電力増幅器の電力効率を高く維持し、電力増幅器の消費電力を抑制する手法の一例が、特許文献3において開示されている。
図32は、特許文献3に記載の送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
【0011】
図32の送信装置では、データ生成器101からベースバンドが出力され、ベースバンド信号はベクトルデータ変換器102及び変調器103を通じてデジタル信号に変換されて電力増幅器104へ入力される。デジタル信号は振幅一定であるため、電力増幅器104はバックオフを取る必要がなく、高い電力効率が維持される。デジタル信号は電力増幅器104において増幅かつ出力された後、アイソレータ105を経由してフィルタ108に入力される。フィルタ108はデジタル信号の量子化誤差を除いてベースバンド信号を重畳したRF信号に変換し、端子109にRF信号を出力する。
【0012】
図32の送信装置において、フィルタ108において除去された量子化誤差はアイソレータ105の端子cに出力される。通常、アイソレータ105の端子cは抵抗によって終端され、量子化誤差の電力は抵抗終端において損失となる。そこで、
図32の方式では、アイソレータ105の端子cに電力再利用部106を接続し、電力再利用部106において量子化誤差の電力を直流電力に変換し、電力供給部107から電力増幅器104に供給される直流電力の一部として再利用する事で、電力損失を抑制している。
【0013】
また、損失電力の再利用により送信装置の省電力化を実現する手法の一例が、特許文献4において開示されている。
図33は、特許文献4に記載の送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
【0014】
図33の送信装置では、信号270から出力したRF信号が電力増幅器220において増幅され、RF信号はアイソレータ240を経由してアンテナ210に出力される。整合のずれにより、アンテナ210に入力されたRF信号の電力の一部は反射される。アイソレータ240を設置していない場合、RF信号の反射電力は電力増幅器220の出力端子で損失となる。そこで、
図33の送信装置では、アイソレータ240を設置し、RF信号の反射電力をアイソレータ240経由で回収部230に出力し、RF信号の反射電力は回収部230において直流電力に変換される。切替部260は、回収部230もしくは電池部250を選択し、回収部230もしくは電池部250から出力される直流電力を、電力増幅器220と信号源270と構成部280に供給する。構成部280は、無線装置の構成に必要な回路一般である。上記のように、
図33の送信装置では、通常は損失となるアンテナからの反射電力を回路への供給電力として再利用する事で、送信装置の省電力化が実現されている。
【0015】
また、損失電力の再利用により送信装置の省電力化を実現する手法の一例が、特許文献5において開示されている。
図34は、特許文献5に記載の送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
【0016】
図34の送信装置では、通信処理部324は電力供給部320からの電力供給を受けて動作し、通信処理部324は制御部316から受けたデータ信号を送信する。通信処理部324は、送信用のRF信号を送信用アンテナ328に向けて出力する。送信用アンテナ328から空中に放出されたRF信号の一部は、電力回収アンテナ304に入力される。電力回収アンテナ304に入力されたRF信号は整流回路308において直流電力に変換され、電力利用部312に直流電力が供給される。電力利用部312は、電力を使用する回路一般である。上記のように、
図34の送信装置では、送信用アンテナ328から空中に放出されるRF信号の電力の一部を再利用する事で、送信装置の省電力化を図っている。
【0017】
近年の無線技術では、送信装置の省電力化が重要な課題である一方で、さらなる高速無線通信の実現も求められている。このような高速無線通信の実現に向けて、非特許文献1において示されているように、断片化した複数の帯域を集めて利用するCarrier Aggregation技術(以下、CA技術と呼ぶ)が用いられている。このCA技術においては、複数の帯域を束ねることによって、広帯域を確保し、伝送速度を高速化することができる。
【0018】
また、各キャリア周波数が大きく離れた(各キャリア周波数の差Δfが各キャリアのRF信号の変調帯域幅fBBよりも十分に大きい)Inter-band Non-contiguous CAモードにおいては、伝播特性の異なる複数のキャリア周波数で同時に通信することによって、通信の安定性を向上させることができる。また、CA技術を適用することによって、複数の事業者の帯域割当が断続的な場合や、帯域共用する場合にも対応した通信を行うことができる。
【0019】
CA技術を用いた通信システムでは、複数の帯域(バンド)のRF信号を送信する送信装置及び送信方法が必要となる。そのような送信装置においても、電力効率の改善が求められる。
【0020】
図35は、特許文献6に記載された、技術における送信機の機能構成図である。
図35の送信機は、複数の帯域のRF信号を送信する機能とともに、ポーラ変調技術の適用により電力効率を改善する機能も備えている。
【0021】
具体的には、
図35に示された送信機において、変調信号発生器461により発生させた変調信号は、ポーラ制御部462において直行座標系の信号から極座標系の信号に変換され、位相情報を持つPM信号と振幅情報を持つAM信号とに分離される。分離されたPM信号は、PM制御部463により、周波数発生器411に対する位相変調に用いられる。同様にAM信号は、電源変調器464により、PA421及び431に対する電源変調に用いられる。すなわち、PA421及びPA431の出力電力の増減に応じて、電源変調器464からPA421及びPA431への供給電力も増減させるポーラ変調技術が適用される事で、平均出力電力を低く取った高バックオフ状態においても電力効率の低下が抑制される。
【0022】
また、
図35に示された送信機において、PA421が設けられたGSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)信号経路420と、PA431が設けられたUMTS信号経路430を切り替えるパス選択スイッチ414及び441を備えている。PA421はキャリア周波数fc1の通信システム(GSM)のRF信号を、PA431はキャリア周波数fc2の通信システム(Universal Mobile Telecommunications System、UMTS)のRF信号を、それぞれ増幅する。キャリア周波数fc1の通信システムで通信を行なう場合は、コントローラ415からの制御信号により、PA421にRF信号が入力及び出力されるようにパス選択スイッチ414及び441が切り替えられる。また、キャリア周波数fc2の通信システムで通信を行なう場合は、コントローラ415からの制御信号により、PA431にRF信号が入力及び出力されるようにパス選択スイッチ414及び441が切り替えられる。
【0023】
図35に示された送信機では、2つの所望周波数成分fc1及びfc2を同時に出力するCA技術に対応していないが、時間的に周波数成分fc1及びfc2を切り替えて片方の周波数を動作させるマルチバンド動作の機能を備えている。
【0024】
図35に示された送信機と同じく、使用バンド数と同数のPAを用意し、バンド毎に各PAを割り当て、PAの入力もしくは出力にバンド選択スイッチを設置し、使用中のバンドに対応するPAにRF信号が入力ないし出力されるようにスイッチが切り替えられ、電源からの供給電力を制御するポーラ変調技術を各PAに適用し、平均出力電力を低く設定した場合でも電力効率を高く維持するようにした技術は、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10においても開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本願開示の送信装置及び送信方法の好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。また、以降に示す各図面において、同一または相当部分の部位については、同一符号を付して示すこととし、その説明は繰り返さないことにする。
【0041】
詳細な実施形態の説明に先立って、本実施形態についてその概要をまず説明する。上述のとおり、出力電力の変動によらず消費電力を抑制することに貢献でき、且つ複数の周波数の信号を同時に送信するCA技術にも対応して消費電力を抑制することに貢献できる、小型かつ低コストの送信装置が、望まれる。
【0042】
そこで、一例として
図1に示す送信装置を提供する。
図1に示す送信装置は、2以上の周波数帯の入力信号を生成し、出力する信号発生器2001と、入力信号を増幅し、増幅信号を出力する電力増幅器2002と、増幅信号から、周波数毎の分波信号を出力する分波器2003と、分波信号のうち、第1の周波数の信号に基づいて、データを送信するデータ送信器2004と、分波信号のうち、第2の周波数の信号を再生電力に変換し、再生電力を出力する電力再生器2005と、再生電力と、電圧源2006の出力する電源電力と、を合成電力として合成し、合成電力を、電力増幅器2002に入力する電力合成器2007と、を備える。
【0043】
まず、信号発生器2001は、2以上の周波数帯の入力信号を生成する。ここで、入力信号は、第1の周波数の信号と、第2の周波数の信号を含む。具体的には、第1の周波数の信号とは、外部に出力する周波数の信号を意味する。一方、第2の周波数の信号とは、再生電力に変換する周波数の信号を意味する。
【0044】
そして、電力増幅器2002は、生成された入力信号を増幅し、増幅された信号(以下、増幅信号と呼ぶ)を出力する。その後、分波器2003は、増幅信号から、周波数毎の信号を抽出する。具体的には、分波器2003は、増幅信号から、第1の周波数の信号と、第2の周波数の信号を抽出する。そして、データ送信器2004は、第1の周波数の信号を外部に出力する。
【0045】
また、電力再生器2005は、第2の周波数の信号を再生電力に変換する。電力合成器2007は、再生電力と、電圧源2006の出力する電源電力を合成する。そして、電力合成器は、合成された電力を電力増幅器2002に入力する。
【0046】
つまり、
図1に示す送信装置は、電力増幅器2002から出力した電力再生用の周波数帯の信号を電力再生器において電力に再生し、電力増幅器2002の供給電力として再利用する。そのため、
図1に示す送信装置は、出力電力の変動によらず電力増幅器2002の消費電力を低減できる。従って、
図1に示す送信装置は、複数の周波数の信号を同時に送信するCA技術に対応した小型かつ低コストの送信装置を実現できる。
【0047】
以下に詳細な実施形態について、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0048】
[第一の実施形態]
第一の実施形態について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0049】
図2は、第一の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図2に示す第一の実施形態に係る送信装置は、信号発生器1001と、電力増幅器1002と、分波器1003と、直流電圧源1004と、電力再生器1005と、送信用アンテナ1006と、電力合成器1007とを少なくとも含んで構成される。信号発生器1001の出力、及び電力増幅器1002の入力は、端子1008を介して接続されている。電力増幅器1002の出力、及び分波器1003の入力は、端子1009を介して接続されている。分波器1003の出力の一つ、及び電力再生器1005の入力は、端子1010を介して接続されている。分波器1003の出力の他の一つ、及び送信用アンテナ1006は、端子1011を介して接続されている。直流電圧源1004の出力は、端子1012を介して電力合成器1007の入力に接続されている。電力再生器1005の出力は、端子1013を介して電力合成器1007の入力に接続されている。電力合成器1007の出力は、電力増幅器1002の電力供給用の端子1014に接続されている。
【0050】
信号発生器1001は、2以上の周波数帯の入力信号を生成し、出力する。具体的には、信号発生器1001は、キャリア周波数f
c(上述の第1の周波数に相当)のデータ送信用RF信号(上述の第1の周波数の信号に相当)1124及びキャリア周波数f
r(上述の第2の周波数に相当)の電力再生用RF信号(上述の第2の周波数の信号に相当)1123を同時に電力増幅器1002に入力する。
【0051】
電力増幅器1002は、信号発生器が生成する入力信号を増幅し、その増幅信号を出力する。具体的には、電力増幅器1002は、入力されたデータ送信用RF信号1124、及び電力再生用RF信号1123を増幅して、それぞれデータ送信用RF信号1022、及び電力再生用RF信号1021として端子1009に同時に出力する。
【0052】
分波器1003は、増幅信号から周波数毎の分波信号を出力する。具体的には、分波器1003は入力されたRF信号をキャリア周波数毎に異なる出力端子に出力する。分波器1003は、キャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1022を端子1011経由で送信用アンテナ1006に出力し、キャリア周波数frの電力再生用RF信号1021を端子1010経由で電力再生器1005に出力する。
【0053】
電力再生器1005は、分波信号のうち、キャリア周波数frの信号を再生電力に変換する。そして、電力再生器1005は、再生電力を出力する。具体的には、電力再生器1005は、入力された電力再生用RF信号1021を低周波の電力(上述の再生電力に相当)に変換して、端子1013を経由して電力合成器1007へ出力する。
【0054】
直流電圧源1004は、一定の電圧V
DCを端子1012に印加しつつ、端子1012経由で電力を電力合成器1007へ出力する。
【0055】
電力合成器1007は、再生電力と、直流電圧源の出力する電力と、を合成電力として合成する。そして、電力合成器1007は、合成電力を電力増幅器1002に入力する。つまり、電力合成器1007は、電力再生器1005及び直流電圧源1004から入力された電力を合成して得られる合成電力を、電力増幅器1002の電力供給用の端子1014へ出力する。
【0056】
電力増幅器の電力効率は、出力電力が上がるほど向上する。そこで、
図2の送信装置で示した本実施形態では、データ送信用RF信号1022と同時に電力再生用RF信号1021を電力増幅器1002から出力する事で、データ送信用RF信号1022を出力する動作よりも、電力増幅器1002の出力電力及び電力効率を高める。さらに、電力増幅器1002から出力される電力再生用RF信号1021の電力を、電力再生器1005を介して電力増幅器1002への供給電力として再利用する事で、データ送信用RF信号1022を出力する動作よりも電力増幅器1002の消費電力が低減される。
【0057】
本実施形態において、データ送信用RF信号1124のキャリア周波数fcは使用する通信規格によって定められる。一方、電力再生用RF信号1123のキャリア周波数frは任意に定めてもよい。
【0058】
図3は、信号発生器1001の内部構成の例を示すブロック構成図である。信号発生器1001は、電力再生制御データ発生器1101と、送信データ発生器1102と、ミキサ1103及び1104と、局部発振(LO)信号発生器1105及び1106と、RF信号合成器1107とを少なくとも含んで構成される。
【0059】
信号発生器1001において、電力再生制御データ発生器1101は、電力再生制御用ベースバンド信号1121をミキサ1103へ出力する。LO信号発生器1105は、電力再生用のキャリア周波数f
rのLO信号をミキサ1103へ出力する。ミキサ1103において、電力再生制御用ベースバンド信号1121と電力再生用のキャリア周波数f
rのLO信号がミキシングされ、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1123がRF信号合成器1107へと出力される。また、送信データ発生器1102は、データ送信用ベースバンド信号1122をミキサ1104へ出力する。また、LO信号発生器1106は、データ送信用のキャリア周波数f
cのLO信号をミキサ1104へ出力する。ミキサ1104において、データ送信用ベースバンド信号1122とデータ送信用のキャリア周波数f
cのLO信号がミキシングされ、キャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1124がRF信号合成器1107へと出力される。RF信号合成器1107は、入力された電力再生用RF信号1123とデータ送信用RF信号1124を合成して、端子1008へと出力する。
【0060】
図4は、電力増幅器1002の内部構成の例を示すブロック構成図である。電力増幅器1002は、トランジスタ1031と、整合回路1032及び1033と、入力バイアス回路1034と、出力バイアス回路1035と、入力バイアス回路1034のバイアス端子1036とを少なくとも備えている。
【0061】
電力増幅器1002において、トランジスタ1031の種類は任意で良く、電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタのいずれを用いてもよい。出力バイアス回路1035は、トランジスタ1031から出力されたRF信号が電力供給用の端子1014へ出力される事を防ぐ機能を持ち、チョークインダクタやλ/4線で実装する事が望ましい。入力バイアス回路1034は、バイアス端子1036に印加された電圧を、所望の電圧に変換して、トランジスタ1031の入力端子に出力するレギュレータのバイアス端子1036には、
図2内の直流電圧源1004の出力電圧V
DCを印加する事が望ましい。
【0062】
電力増幅器1002において、整合回路1032は、トランジスタ1031の入力と信号発生器1001の出力との間でインピーダンス整合を取る回路である。また、整合回路1033は、トランジスタ1031の出力と分波器1003の入力との間でインピーダンス整合を取る回路である。端子1008に入力されたRF信号1123及び1124は、整合回路1032を経由してトランジスタ1031に入力される。RF信号1123及び1124は、トランジスタ1031において増幅され、整合回路1033を経由してRF信号1021及び1022として端子1009に出力される。
【0063】
図2ないし
図4に示す第一の実施形態において、電力増幅器1002は、電力再生用のキャリア周波数f
r及びデータ送信用のキャリア周波数f
cの2つのRF信号を増幅する必要がある。そのため、整合回路1032及び1033は、少なくとも2つのキャリア周波数f
r及びf
cを含む周波数範囲に対応した設計を行う事が望ましいとなる。このような広帯域に対応した整合回路の構成として、例えば、非特許文献2に開示されているトランス素子を用いた構成、または非特許文献3に開示されている伝送線路を用いた構成、等を採用しても良い。なお、整合回路の構成は、各種あるが、その詳細は問わない。
【0064】
図5は、分波器1003の内部構成の例を示すブロック構成図である。分波器1003は、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021を通過させキャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1022を除去するフィルタ1091と、キャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1022を通過させキャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021を除去するフィルタ1092とを少なくとも備えている。
【0065】
フィルタ1091は、分波器1003の入力端子1012と、電力再生器1005の入力に接続される端子1010との間に設置される。フィルタ1092は、分波器1003の入力端子1012と、送信用アンテナ1005の入力に接続される端子1011との間に設置される。上記の構成により、キャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1022は送信用アンテナ1006に出力され、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021は電力再生器1005に出力される。
【0066】
図6は、電力再生器1005の内部構成を示すブロック構成図である。電力再生器1005は、整合回路1041と、整流回路1042とを少なくとも備えている。
【0067】
電力再生器1002において、整合回路1041は、電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rにおいて、整流回路1042の入力と分波器1003の出力との間でインピーダンス整合を取る回路である。分波器1003の出力から端子1010に入力された電力再生用RF信号1021は、整合回路1041および端子1043を経由して整流回路1042に入力される。電力再生用RF信号1021は、整流回路1042において低周波の電力に変換され、端子1013へと出力される。
【0068】
図7および
図8は、整合回路1041の内部構成の例を示す回路図である。電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rにおいて整合が取れればよい。そのため、整合回路1041は、
図7で示すようなインダクタ素子1061と容量素子1062とで構成された低域通過フィルタ型の回路や、
図8で示すようなインダクタ素子1063と容量素子1064とで構成された高域通過フィルタ型の回路により実装できる。
【0069】
図9および
図10は、整流回路1042の内部構成の例を示す回路図である。整流回路1042は、
図9で示すようにシャント接続のダイオード素子1051で構成してもよく、もしくは
図10で示すようにシャント接続のダイオード素子1052と直列接続のダイオード素子1053とで構成してもよい。
図9および
図10のいずれの回路においても、端子1043に入力された電力再生用RF信号1021が、ダイオード素子1051ないし1053の2次非線形性でミキシングされた結果、低周波の電力に周波数変換されて端子1013へと出力される。
【0070】
電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rが低いほど、より高耐圧のダイオード素子1051ないし1053を用いる事ができるため、
図6ないし
図10で示した電力再生器1005は、より大きな電力を扱う事ができる。従って、電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rは、データ送信用RF信号1022のキャリア周波数f
cより低く設定する事が望ましい。
【0071】
図11は、電力合成器1007の内部構成の例を示す回路図である。電力合成器1007は、
図11で示すように、端子1012ないし1014の3つの端子を直結する構成であってもよい。
図11の構成では、入力端子に相当する1012及び1013が並列合成され、端子1012及び1013に入力された電力の合計が端子1014に出力される。
図11の構成において、端子1012ないし1014の3つの端子の間で高周波ノイズが伝播する事を防ぐため、容量素子1071ないし1073で図示されるように、端子1012ないし1014の少なくとも一つに容量素子をシャント接続する事が望ましい。
【0072】
図12は、電力合成器1007の内部構成の他の例を示す回路図である。電力合成器1007は、
図12で示すように、トランス素子1081の1次側の一端を端子1012に接続し、トランス素子1082の1次側の一端を端子1013に接続し、トランス素子1081及び1082の1次側の他の一端を接地し、トランス素子1081の2次側の一端を端子1014に接続し、トランス素子1081の2次側の他の一端とトランス素子1082の一端を接続し、トランス素子1082の他の一端を接地する構成であってもよい。
図12の構成では、入力端子に相当する1012及び1013が直列合成され、端子1012及び1013に入力された電力の合計が端子1014に出力される。
図12の構成において、端子1012ないし1014の3つの端子の間で高周波ノイズが伝播する事を防ぐため、容量素子1083ないし1085で図示されるように、端子1012ないし1014の少なくとも一つに容量素子をシャント接続する事が望ましい。
【0073】
図2で示した本実施形態における省電力化の定量的な効果について、以下の議論を通じて開示する。
【0074】
図13は、
図2内の電力増幅器1002の一例であるデュアルバンド電力増幅器(PA)にキャリア周波数が異なる2つのRF信号を同時に入力した場合の飽和時における出力信号を示す特性図である。すなわち、
図2内の電力増幅器1002の一例であるデュアルバンド電力増幅器(PA)において、電力再生用のキャリア周波数f
rのRF信号1123とデータ送信用のキャリア周波数fcのRF信号1124とを同時に入力した場合の、飽和時における電力再生用RF信号1021の電力Prと、データ送信用RF信号1022の出力電力P
outとをプロットしたグラフである。なお、
図13の特性図においては、電力増幅器1002に入力される電力再生用RF信号1123の電力P
inrとデータ送信用RF信号1124の電力P
incとの電力差分ΔP
in=P
inr−P
inc(dB)を変えて、電力増幅器1002の飽和時の出力電力をプロットしている。
【0075】
電力増幅器1002に入力される各キャリア周波数の電力比ΔP
inを変えた場合、該比率の変化に応じて、電力増幅器1002から出力される電力再生用RF信号1021の電力P
rと、データ送信用RF信号1022の電力P
outも変化する。ここで、この事例における電力増幅器1002は、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1123を入力した場合と、キャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1124を入力した場合との双方において、電力増幅器1002の飽和動作時における出力電力がほぼ同一値の飽和出力電力P
satを取るように設計されている。
【0076】
かくのごとく、単一のRF信号入力時の飽和出力電力がキャリア周波数の如何によらず同一値P
satを取る電力増幅器の場合は、
図13に示すように、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1123およびキャリア周波数f
cのデータ送信用RF信号1124の双方を同時入力し、その入力電力の比率ΔP
inを変えた場合においても、飽和時のRF信号の出力電力合計値(P
out+P
r)は飽和出力電力P
satになって、単一RF信号入力時からは変動しない、という結果が得られる。この結果は、RF信号の出力電力の合計値が電力増幅器(PA)の飽和条件を定めるということ、すなわち、RF信号の出力電力合計値(P
out+P
r)が飽和出力電力P
satに達した時点で電力増幅器が飽和すること、を示している。
【0077】
図14は、
図2の電力増幅器1002の一例であるデュアルバンド電力増幅器(PA)にキャリア周波数が異なる2つのRF信号を同時に入力した場合の電力効率を示す特性図である。すなわち、
図2の電力増幅器1002の一例であるデュアルバンド電力増幅器(PA)において、電力再生用のキャリア周波数f
rのRF信号1123とデータ送信用のキャリア周波数f
cのRF信号1124とを同時に入力した場合の、電力増幅器1002の電力効率η
PAをプロットしたグラフである。この場合の電力効率η
PAは、電力増幅器1002から出力された電力再生用RF信号1021の電力P
rおよびデータ送信用RF信号1022の電力P
outの合計値(P
out+P
r)と、電力合成器1007から供給され電力増幅器1002が消費する電力PPAとの比によって定義されている。なお、
図14に示す電力効率η
PAは、電力再生用RF信号1021の電力P
rと、データ送信用RF信号1022の電力P
outとの双方を変化させてプロットしている。
【0078】
図14の特性図から、出力電力P
rと出力電力P
outとの取り方の如何によらず、電力効率η
PAは、各キャリア周波数のRF信号1021ないし1022の合計出力電力(P
out+P
r)の一価関数になることが分かる。一つのキャリア周波数のRF信号を入力した場合のB級動作の電力増幅器の電力効率η
PAは、出力電力の1/2乗に比例することが知られている。
図9には、合計出力電力(P
out+P
r)の1/2乗に比例する曲線を理論特性として破線によって示しているが、該理論特性が
図2の電力増幅器1002の一例としたデュアルバンド電力増幅器(PA)における実際の電力効率η
PAに関する実特性(実線によって示す)に良く合っていることを示している。つまり、複数のキャリア周波数のRF信号を同時に電力増幅器に入力する場合においても、各キャリア周波数のRF信号の入力電力の比率によらず、電力増幅器の電力効率η
PAは、RF信号の出力電力の合計値によって決まる。上記の結果から、キャリア周波数が異なる2つのRF信号を同時に入力した場合の電力増幅器1002の電力効率η
PAは、以下の式(1)で表す事ができる。
【0079】
【数1】
ここで、η
satは電力増幅器が飽和状態になった時に得られる電力効率である。飽和時の出力電力P
sat及び効率η
satは、電力増幅器毎に決まる固有の定数である。電力効率ηPAの出力電力P
out+P
rに対する依存性を考えた場合、式(1)から、電力増幅器が飽和状態(P
out+P
r=P
sat)になった時に電力効率η
PAは最大になり、飽和時効率η
satとなる。
【0080】
データ送信用RF信号1022の電力P
out(t)の時間変動は、送信するデータによって決定される。そこで、本実施形態では、以下の式(2)を満たすように、電力増幅器1002から出力される電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)を設定する。
【0081】
【数2】
電力増幅器1002に入力される電力再生用RF信号1123の電力の時間変化の設定により、式(2)を満たすように電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)が設定される。式(2)の条件を満たす設定において、電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)と、データ送信用RF信号1022の電力P
out(t)の状態は、
図15のように図示される。式(2)の条件を満たす設定により、電力増幅器1002は常に飽和状態(P
out(t)+P
r(t)=P
sat)で動作し、常に最大の効率(η
sat)を維持できる。
【0082】
式(2)の条件を満たす設定において、電力合成器1007から供給され電力増幅器1002が消費する電力P
PA(t)は、式(1)から以下の式(3)のように計算される。
【0083】
【数3】
図2の送信装置において、電力再生器1005の電力効率をη
r(0<η
r<1)とした場合、電力再生器1005に入力される電力再生用RF信号1021の電力Pr(t)に対し、電力再生器1005からはη
rP
r(t)の電力が電力合成器1007に出力される。
【0084】
図2の送信装置で消費される電力、すなわち直流電圧源1004から電力合成器1007へ入力される電力P
D(r_on)(t)は、電力合成器1007から電力増幅器1002へ出力される電力P
PA(=P
sat/η
sat)と、電力再生器1005から電力合成器1007へ入力される電力η
rP
r(t)の差分によって与えられる。
【0085】
従って、式(2)の条件を満たす設定において、
図2の送信装置で消費される電力P
D(r_on)(t)は、以下の式(4)のように計算される。
【0086】
【数4】
比較対象として、
図2の送信装置において、電力増幅器1002から出力される電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)を0にした場合について議論する。電力P
r(t)を0にした状態は、
図16において図示されているとおり、電力再生用のキャリア周波数f
rのRF信号1123を信号発生器1001から出力しないオフ状態にする事で容易に実現される。
【0087】
図16で示した送信装置の状態において、分波器1003を経由して電力再生器1005に入力されるRF信号1021がオフにされ、また電力再生器1005から電力合成器1007に向けて出力される電力もオフになる。そのため、
図16で示した送信装置の状態は、分波器1003と、電力再生器1005と、電力合成器1007とを省いた、
図17で図示された電力増幅器と等価である。
【0088】
図16および
図17の送信装置において、直流電圧源1004から出力される電力P
D(r_off)(t)と、電力増幅器1002へ供給される電力P
PA(t)は同じになる。従って、直流電圧源1004の出力電力P
D(r_off)(t)ないし電力増幅器1002への供給電力P
PA(t)は、式(1)を用い、以下の式(5)のように計算される。
【0089】
【数5】
図2で示した本実施形態の送信装置の消費電力P
D(r_on)(t)と、
図16および
図17で示した送信装置の消費電力P
D(r_off)(t)とを比較するため、両者の比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)を計算する。比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)は、式(4)と式(5)を用いて、以下の式(6)のように計算される。
【0090】
【数6】
ここで、r
p(t)は、
図2の送信装置における電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)と飽和出力P
satの比(=P
r(t)/P
sat)である。比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)が1以下であれば、本実施形態の送信装置の消費電力P
D(r_on)(t)が消費電力P
D(r_off)(t)よりも小さく、本実施形態の送信装置の省電力化が示された事になる。
【0091】
図18は、本実施形態の送信装置において電力再生器を用いる場合と用いない場合における消費電力の比較を示す特性図である。
図18では、縦軸に電力再生用RF信号1021と電力増幅器1002の飽和出力の電力比r
p(t)、横軸に電力再生器1005の電力効率と電力増幅器1002の最大効率の積η
satη
rを取り、式(6)で計算される電力比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)を等高線状にプロットしたものである。
図18の結果から、横軸に電力再生器1005の電力効率と電力増幅器1002の最大効率の積η
satη
rが大きく(特に50%以上)、電力再生用RF信号1021と電力増幅器1002の飽和出力の電力比r
p(t)が小さい場合に、比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)が1以下となり、本実施形態で送信装置の省電力化を実現できる事が示される。
【0092】
現状の技術では、電力増幅器1002の最大効率η
satと電力再生器1005の電力効率η
rは、ともに80%は実現可能であり、両者の積η
satη
rにおいて64%を実現できる。例として、両者の積η
satη
rが64%である時、電力比r
p(t)が0.8以下の時に、本実施形態の電力再生用RF信号1021の使用による省電力化が可能となる。
【0093】
[第二の実施形態]
続いて、第二の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0094】
図19は、第二の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置は、データ送信用RF信号のバンド数が一つから複数になった事を除いて、
図2に示す第一の実施形態に係る送信装置と同一の機能と構成を持つ。
【0095】
第2の実施形態に係る送信装置において、信号発生器1201は、電力増幅器1002の電力増幅度に基づいて、増幅電力の総和を増幅総和電力として推定する。そして、信号発生器1201は、増幅総和電力に応じて、信号発生器1201の出力を制御する。
【0096】
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置は、複数のキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのデータ送信用RF信号1124
1、・・・、1124
(n−1)、1124
n、およびキャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1123を同時に信号発生器1201から電力増幅器1002に向けて出力する。電力増幅器1002は入力されたRF信号を増幅してキャリア周波数f
ciのデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nおよびキャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021として分波器1202に出力する。分波器1202は、キャリア周波数f
c1〜f
cnのデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nを端子1011経由で送信用アンテナ1006に出力し、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021を端子1010経由で電力再生器1005に出力する。第二の実施形態においても、第一の実施形態と同じく、電力再生用RF信号1021が電力再生器1005において低周波の電力に変換され、電力増幅器1002への供給電力として再利用される。
【0097】
本実施形態において、データ送信用RF信号1124
1、・・・、1124
(n−1)、1124
nのキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnは使用する通信規格によって定められる。一方、キャリア周波数f
rは任意に定めてもよい。
【0098】
第一の実施形態と同じく、第二の実施形態においても、電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rが低いほど、電力再生器1005は、より大きな電力を扱う事ができる。従って、電力再生用RF信号1021のキャリア周波数f
rは、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nのキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnより低く設定する事が望ましい。
【0099】
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置において、信号発生器1201は複数のデータ送信用RF信号1124
1、・・・、1124
(n−1)、1124
nを出力する。上記機能を実現するため、信号発生器1201は、例として
図20のブロック構成図において開示される内部構成を持つ。
図20に示した信号発生器1201では、データ送信に用いるバンドと同数の送信データ発生器1102
1、・・・、1102
(n−1)、1102
nとミキサ1104
1、・・・、1104
(n−1)、1104
nとLO信号発生器1106
1、・・・、1106
(n−1)、1106
nを備えている。
【0100】
信号発生器1201において、送信データ発生器1102
1、・・・、1102
(n−1)、1102
nは、データ送信用ベースバンド信号1122
1、・・・、1122
(n−1)、1122
nをミキサ1104
1、・・・、1104
(n−1)、1104
nへそれぞれ出力する。
【0101】
また、LO信号発生器1106
1、・・・、1106
(n−1)、1106
nは、データ送信用のキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのLO信号をミキサ1104
1、・・・、1104
(n−1)、1104
nへそれぞれ出力する。ミキサ1104
1、・・・、1104
(n−1)、1104
nにおいて、データ送信用ベースバンド信号1122
1、・・・、1122
(n−1)、1122
nとデータ送信用のキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのLO信号がそれぞれミキシングされる。そして、キャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのデータ送信用RF信号1124
1、・・・、1124
(n−1)、1124
nが、RF信号合成器1107へと出力される。
【0102】
RF信号合成器1107は、入力された電力再生用RF信号1123とデータ送信用RF信号1124
1、・・・、1124
(n−1)、1124
nを合成して、端子1008へと出力する。
【0103】
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置において、分波器1202は、例として
図21のブロック構成図において開示される内部構成を持つ。
図21に示した分波器1202は、端子1009と端子1010の間にキャリア周波数frのRF信号を通過させキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのRF信号を遮断するフィルタ1211が設置され、端子1009と端子1011の間にキャリア周波数frのRF信号を遮断しキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのRF信号を通過させるフィルタ1212が設置された構成を持つ。上記の構成により、端子1009を経由して入力されたRF信号に対し、キャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nを端子1011に出力し、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021を端子1010に出力する機能が分波器1202において実現される。
【0104】
また、信号発生器1201は、上述の増幅総和電力と、所定の基準電力との比較結果に応じて、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号を出力するか否かを決定してもよい。
【0105】
図22は、電力増幅器1002から出力されたデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)と、電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)の時間変動の例を示す図である。データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)の時間変動は、送信するデータによって決定される。そこで、本実施形態では、以下の式(7)を満たすように、電力増幅器1002から出力される電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)を設定する。
【0106】
【数7】
電力増幅器1002に入力される電力再生用RF信号1123の電力の時間変化の設定により、式(7)を満たすように電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)が設定される。式(7)の条件を満たす設定により、電力増幅器1002は常に飽和状態(P
OUT1(t)+・・・+P
OUT(n−1)(t)+P
OUT(n)(t)+P
r(t)=P
sat)で動作し、常に最大の効率(η
sat)を維持できる。
【0107】
図19で示した第二の実施形態の送信装置の消費電力P
D(r_on)(t)と、
図16および
図17で示した送信装置の消費電力P
D(r_off)(t)とを比較するため、両者の比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)を計算する。第二の実施形態における消費電力比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)は、第一の実施形態と同じく、式(6)で与えられる。従って、電力再生用RF信号1021と電力増幅器1002の飽和出力の電力比r
p(t)と、電力再生器1005の電力効率と電力増幅器1002の最大効率の積η
satη
rと、消費電力比率P
D(r_on)(t)/P
D(r_off)(t)の関係は、第二の実施形態と第一の実施形態ともに
図18によって図示される。上記の議論から、第二の実施形態においても、第一の実施形態と同じく、送信装置の省電力化が実現可能である。
【0108】
また、信号発生器1201は、上述の増幅総和電力が所定の基準電力である信号を出力してもよい。
【0109】
具体的には、電力増幅器1002から出力されたデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)と、電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)の時間変動の例として、
図23のように設定してもよい。
図23では、飽和出力電力Psatからバックオフ量を取った基準出力電力Prefが設定される。そして、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力合計値P
OUT1(t)+・・・+P
OUT(n−1)(t)+P
OUT(n)(t)が基準出力電力P
refより小さい場合、電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)は以下の式(8)のように設定する。
【0110】
【数8】
また、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力合計値P
OUT1(t)+・・・+P
OUT(n−1)(t)+P
OUT(n)(t)が基準出力電力P
ref以上の場合、電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)は0に設定する。
図23の設定において、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nのバンド数nは一つでも良く、もしくは複数でもよい。
【0111】
式(8)の設定の場合、電力増幅器1002から出力されるRF信号の電力合計値はP
refとなり、飽和出力P
satよりも低い電力に設定される。電力増幅器1002の出力電力合計値を飽和出力P
satより低い電力に設定する事で、電力増幅器1002が強い非線形特性を示す飽和出力近傍の動作を避ける事ができ、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nに発生する信号歪を低減できる。
【0112】
[第三の実施形態]
続いて、第三の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0113】
図24は、第三の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図24に示す第三の実施形態に係る送信装置は、
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置に、電力検出器1301と電流プローブ1304が追加されている。
【0114】
電流プローブ1304は、直流電圧源1004が端子1012に出力する電流量を測定する。電流プローブ1304は、ホール素子を備えホール効果で該電流量を測定する方式のプローブでも良く、直流電圧源1004と端子1012との間に抵抗素子を直列に挿入しその抵抗素子間の電圧と抵抗値の比から該電流量を測定する方式のプローブでも良い。電流プローブ1304が測定した直流電圧源1004が出力する電流量の情報は端子1302を経由して電力検出器1301に送られる。
【0115】
電力検出器1301はマイコン(microcontroller)で実装されており、該電流量と直流電圧源1004が出力する直流電圧V
DCとの積から電力量P
D(r_on)(t)を算出する機能と、電力量P
D(r_on)(t)の情報に基づいて、端子1303を経由して信号発生器1201の制御を行う。
【0116】
電力検出器1301が行う信号発生器1201の制御の一つの例として、キャリア周波数f
rの設定がある。第一ないし第二の実施形態と同じく、第三の実施形態でもキャリア周波数f
rは通信規格で定められる事は無く、任意に設定してよい。そこで第三の実施形態では、電流プローブ1304および電力検出器1301で、電力再生用RF信号1123のキャリア周波数frを変化させた場合の直流電圧源1004の出力電力量P
D(r_on)(t)を測定する。そして、信号発生器1201は、電力検出器1301の検出結果に基づいて、キャリア周波数f
rを決定する。
【0117】
具体的には、信号発生器1201が出力する電力再生用RF信号1123のキャリア周波数f
rは、直流電圧源1004の出力電力量P
D(r_on)(t)が最小になる周波数に設定する。電力再生用RF信号1123のキャリア周波数f
rの変更は、
図20内のLO信号発生器1105の発振周波数の変更で行う。LO信号発生器1105の発振周波数の変更および制御は、LO信号発生器1105を例えばシンセサイザで実装する事で可能となる。従って、電力検出器1301による信号発生器1201の制御により、送信装置の省電力化が実現される。
【0118】
電力検出器1301が行う信号発生器1201の制御の他の例として、電力再生用RF信号1123のon/off制御がある。つまり、信号発生器1201は、電力検出器1301の検出結果に基づいて、キャリア周波数frを出力するか否かを決定する。
【0119】
図18の特性図で示したとおり、電力再生用RF信号1021を用いた場合の送信装置の消費電力P
D(r_on)(t)と、電力再生用RF信号1021を用いない場合の送信装置の消費電力P
D(r_off)(t)の大小関係は、条件によって変化する。
【0120】
そこで、データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)と電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)とを任意の値に設定した状態で、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力した場合の送信装置の消費電力P
D(r_on)(t)と、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力しない場合の送信装置の消費電力P
D(r_off)(t)とを、電流プローブ1304および電力検出器1301で測定する。
【0121】
上記の測定結果に基づき、P
D(r_on)(t)<P
D(r_off)(t)となる電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)およびP
r(t)の状態においては、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力し、電力再生用RF信号1021を電力再生に用いる。また、P
D(r_on)(t)>P
D(r_off)(t)となる電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)およびP
r(t)の状態においては、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力せず電力再生用RF信号1021を電力再生に用いないようにする。従って、電力検出器1301による信号発生器1201の制御、すなわち電力再生用RF信号1123のon/off制御により、送信装置の省電力化が実現される。
【0122】
[第四の実施形態]
続いて、第四の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0123】
図25は、第四の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図25に示す第四の実施形態に係る送信装置は、
図19に示す第二の実施形態に係る送信装置に、信号歪検出器1311とカプラ1314が追加されている。カプラ1314は、端子1011におけるRF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nを取り出し、端子1312を経由して信号歪検出器1311に出力する。
【0124】
端子1011におけるRF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力の大部分が送信用アンテナ1006に出力される。ここで、信号歪検出器1311に入力される電力量は、送信用アンテナ1006に入力される電力量に比べて、十分に小さくなる結合度のカプラを用いる事が望ましい。
【0125】
信号歪検出器1311は、RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量を検出する。そして、信号歪検出器1311は、RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量の情報に基づいて、端子1303を経由して信号発生器1201の制御を行う。具体的には、信号発生器1201は、信号歪検出器1311の検出結果に基づいて、キャリア周波数f
rを出力するか否かを決定する。
【0126】
ここで、信号歪量としては、隣接チャネル漏洩電力(Adjacent Channel Leakage Power Ratio, ACPR)、変調精度(Error Vector Magnitude, EVM)、相互変調歪(Inter-Modulation Distortion, IMD)、変調誤差比(Modulation Error Ratio, MER)を用いてもよい。また、信号歪検出器1311は、スペクトラムアナライザーやベクトルシグナルアナライザーで実装してもよい。
【0127】
信号歪検出器1311が行う信号発生器1201の制御の一つの例として、電力再生用RF信号1021のキャリア周波数frの設定がある。つまり、信号発生器1201は、信号歪検出器1311の検出結果に基づいて、キャリア周波数frを決定する。
【0128】
具体的には、カプラ1314および信号歪検出器1311を用いて、電力再生用RF信号1123のキャリア周波数f
rを変化させた場合のRF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量を測定する。そして、信号発生器1201が出力する電力再生用RF信号1123のキャリア周波数f
rは、RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量が最小になる周波数に設定する。従って、信号歪検出器1311による信号発生器1201の制御により、送信装置から出力される送信信号の精度が改善される。
【0129】
信号歪検出器1311が行う信号発生器1201の制御の他の例として、電力再生用RF信号1123のon/off制御がある。データ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)と電力再生用RF信号1021の電力P
r(t)とを任意の値に設定した状態で、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力した場合と、電力再生用RF信号1123を信号発生器1201から出力しない場合との、RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量を、カプラ1314および信号歪検出器1311を用いて測定する。
【0130】
電力P
OUT1(t)、・・・、P
OUT(n−1)(t)、P
OUT(n)(t)およびP
r(t)の各状態において、RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nの信号歪量が改善するように、信号発生器1201からの電力再生用RF信号1123の出力の有無を選択する。従って、信号歪検出器1311による信号発生器1201の制御、すなわち電力再生用RF信号1123のon/off制御により、送信装置の送信信号の精度が改善される。
【0131】
[第五の実施形態]
続いて、第五の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0132】
図26は、第五の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図26に示す第五の実施形態に係る送信装置は、
図19に示す第二の実施形態に対して、複数の送信用アンテナ1006
1、・・・、1006
(n−1)、1006
nと、分波器1203の複数のデータ送信用RF信号の出力端子1011
1、・・・、1011
(n−1)、1011
nが追加されている。送信用アンテナ1006
1、・・・、1006
(n−1)、1006
nと、分波器1203の複数のデータ送信用RF信号の出力端子1011
1、・・・、1011
(n−1)、1011
n以外の要素は、
図19に示す第二の実施形態と
図26に示す第五の実施形態に係る送信装置とで、同一の機能と構成を持つ。
【0133】
図26に示す第五の実施形態において、分波器1203は、端子1009を経由して入力されたRF信号の内、キャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのデータ送信用RF信号1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nをそれぞれ端子1011
1、・・・、1011
(n−1)、1011
n経由で送信用アンテナ1006
1、・・・、1006
(n−1)、1006
nに出力し、キャリア周波数f
rの電力再生用RF信号1021を端子1010経由で電力再生器1005に出力する。第五の実施形態においても、第一の実施形態と同じく、電力再生用RF信号1021が電力再生器1005において低周波の電力に変換され、電力増幅器1002への供給電力として再利用される。
【0134】
図26に示す第五の実施形態に係る送信装置において、分波器1203は、例として
図27のブロック構成図において開示される内部構成を持つ。
図27に示した分波器1203は、端子1009と端子1010の間にキャリア周波数frの電力再生用RF信号1021を通過させ他の帯域のRF信号を遮断するフィルタ1221が設置され、端子1009と端子1011
1、・・・、1011
(n−1)、1011
nの間にキャリア周波数f
c1、・・・、f
c(n−1)、f
cnのデータ送信用RF信号1022iを通過させ他の帯域のRF信号を遮断するフィルタ1022
1、・・・、1022
(n−1)、1022
nが設置された構成を持つ。上記の構成により、RF信号がキャリア周波数毎に異なる端子に出力される機能が実現される。
【0135】
第五の実施形態においても、第一および第二の実施形態と同一の原理に基づいて
図18の特性図で示した特性を持ち、送信装置の省電力化が実現可能である。
【0136】
[第六の実施形態]
続いて、第六の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態に係る送信装置は、所定の第3の周波数の電力総和と、所定の基準電力との比較結果に基づいて、キャリア周波数fcとキャリア周波数frと、を決定するキャリア選択部1402を備える。
【0137】
図28は、第六の実施形態に係る送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図28に示す第六の実施形態に係る送信装置は、分波器1203の出力端子1011
1、1011
2、・・・、1011
nと送信用アンテナ1006
1、1006
2、・・・、1006
nとの間にスイッチ1401
1、1401
2、・・・、1401
nが挿入されている。また、スイッチ1401
1、1401
2、・・・、1401
nの出力端子1010
1、1010
2、・・・、1010
nと電力合成器1007の間に、電力再生器1005
1、1005
2、・・・、1005
nが設置されている。また、キャリア選択部1402が設置されている。
【0138】
図28に示す第六の実施形態に係る送信装置において、キャリア周波数frの電力再生用RF信号1021は使用せず、キャリア周波数f
c1、f
c2、・・・、f
cnのデータ送信用RF信号1022
1、1022
2、・・・、1022
nを用いる。そのため、第六の実施形態において、
図20で示した信号発生器1201の内部構成の内、キャリア周波数frの電力再生用RF信号1021に関与する部分すなわち電力再生制御データ発生器1101と、ミキサ1103と、LO信号発生器1105は設置しなくてもよい。同様に、第六の実施形態において、
図27で示した分波器1203の内部構成の内、キャリア周波数frの電力再生用RF信号1021に関与する部分すなわちフィルタ1221と端子1010は設置しなくてもよい。
【0139】
図28に示す第六の実施形態に係る送信装置において、キャリア選択部1402は、データ送信用RF信号1022
1、1022
2、・・・、1022
nの内、通信に用いるRF信号を選択する。通信に用いるRF信号やその数は任意に選択してもよく、また通信に用いるRF信号を時間に応じて変更してもよい。一つの例として、RF信号1022
1を通信に用いず、それ以外のRF信号1022
2、・・・、1022
nを通信に用いる場合が
図28において図示されている。通信に用いる電力増幅器1002からの出力RF信号(
図28では1022
2、・・・、1022
n)の電力の時間変動は、送信するデータによって決定される。本実施形態では、通信に用いない電力増幅器1002からの出力RF信号(
図28では1022
1)の合計電力を、以下の式(9)のように定める。
【0140】
【数9】
P
_not_use:通信に用いない電力増幅器1002の出力RF信号の合計電力
P
_base:基準電力
P
_use:通信に用いる電力増幅器1002の出力RF信号の合計電力
ここで、基準電力は電力増幅器1002の飽和出力としてもよく、もしくは電力増幅器1002の飽和出力からバックオフ量を取った電力としてもよい。キャリア選択部1402は、端子1404を介して、式(9)の関係が満たされるように、信号発生器1201から出力されるRF信号の電力を制御する。
【0141】
キャリア選択部1402は、通信に用いるRF信号(
図28では1022
2、・・・、1022
n)を送信用アンテナ(
図28では1006
2、・・・、1006
n)に出力するよう、スイッチ(
図28では1401
2、・・・、1401
n)を切り替える。また、キャリア選択部1402は、通信に用いないRF信号(
図28では1022
1)を電力再生器(
図28では1005
1)に出力するよう、スイッチ(
図28では1401
1)を切り替える。電力再生器1005
1、1005
2、・・・、1005
nに入力されたRF信号は低周波の電力に変換され、電力合成器1007へと出力される。
【0142】
電力合成器1007は、電力再生器1005
1、1005
2、・・・、1005
nおよび直流電圧源1004から入力された電力を合成して得られる合成電力を、電力増幅器1002の電力供給用の端子1014へ出力する。ここでの電力合成器1007は、
図11の構成を元にして、電力合成器1007の入力端子と出力端子を直結した並列合成型の構成でもよい。もしくは、電力合成器1007は、
図12の構成を元にして、電力合成器1007の入力端子をトランス素子の1次側に接続し、電力合成器1007の出力端子をトランス素子の2次側に接続した直列合成型の構成でもよい。上記のとおり第六の実施形態に係る送信装置では、通信に用いないRF信号(
図28では1022
1)が電力再生器(
図28では1005
1)において低周波の電力に変換され、電力増幅器1002への供給電力として再利用される。
【0143】
図28に示す第六の実施形態に係る送信装置では、通信の使用状況に応じて、通信に使用しないキャリア周波数のRF信号を電力再生に用いる事で、第一ないし第五の実施形態と同一の原理により、送信装置の省電力化が可能である。
【0144】
[第六の実施形態の変形例]
続いて、第六の実施形態の変形例について図面を用いて詳細に説明する。
【0145】
図29は、第六の実施形態の変形例における送信装置のブロック構成を示すブロック構成図である。
図29に示す第六の実施形態の変形例における送信装置は、
図28に示す第六の実施形態に対して、複数の電力再生器1005
1、1005
2、・・・、1005
nの代わりに、一つの電力再生器1005が用いられる。そして、電力再生器1005とスイッチ1401との間に、RF信号合成器1411が新たに設置される。
【0146】
図29に示す第六の実施形態の変形例における送信装置では、
図28に示す第六の実施形態に係る送信装置と同じく、データ送信用RF信号1022
1、1022
2、・・・、1022
nの内、通信に用いるRF信号を選択する。通信に用いない電力増幅器1002からの出力RF信号(
図29では1022
1)の合計電力は、式(9)により設定される。
【0147】
図29に示す第六の実施形態の変形例における送信装置では、キャリア選択部1402は、通信に用いるRF信号(
図29では1022
2、・・・、1022
n)を送信用アンテナ(
図29では1006
2、・・・、1006
n)に出力するよう、スイッチ(
図29では1401
2、・・・、1401
n)を切り替える。また、キャリア選択部1402は、通信に用いないRF信号(
図29では1022
1)をRF信号合成器1411に出力するよう、スイッチ(
図29では1401
1)を切り替える。
【0148】
RF信号合成器1411は、スイッチ1401から入力されたRF信号を合成して、電力再生器1005へ出力する。電力再生器1005に入力されたRF信号は低周波の電力に変換され、電力合成器1007へと出力される。
【0149】
電力合成器1007は、電力再生器1005及び直流電圧源1004から入力された電力を合成して得られる合成電力を、電力増幅器1002の電力供給用の端子1014へ出力する。上記のとおり第六の実施形態の変形例では、通信に用いないRF信号(
図29では10221)が電力再生器1005において低周波の電力に変換され、電力増幅器1002への供給電力として再利用される。
【0150】
図29に示す第六の実施形態の変形例における送信装置では、通信の使用状況に応じて、通信に使用しないキャリア周波数のRF信号を電力再生に用いる事で、第六の実施形態と同一の原理により、送信装置の省電力化が可能である。
【0151】
本願開示の送信装置は、特許文献1ないし特許文献10において開示されている送信装置に比べて、以下の効果がある。
【0152】
特許文献1ないし特許文献2に記載の送信装置の場合、送信に使用できる周波数は実質的に1バンドに限定され、複数のバンドを同時に送信に利用するCA技術に対応できない。また、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、1バンドの送信にPAを2つ用いている。しかし、電力増幅器の数の増加に伴い、回路サイズとコストが増大する。
【0153】
同様に、特許文献6ないし特許文献10に記載の技術の場合、送信装置のマルチバンド化にあたり使用バンド数と同数の電力増幅器を設置する必要があり、電力増幅器の数の増加に伴い、回路サイズとコストが増大する。また、特許文献6ないし特許文献10に記載の技術の場合、バンド切替スイッチで使用する電力増幅器を切り替える方式のため、送信機が対応している全てのバンドのRF信号を同時に出力できない。このため、特許文献6ないし特許文献10に記載の技術の場合、複数のバンドを同時に用いて通信するCA技術に適さない。
【0154】
これに対して、本実施形態の送信装置の場合は、一個の電力増幅器でn個のキャリア周波数のRF信号を同時に増幅できる。すなわち、本実施形態の送信装置は、PAの数を減らして回路サイズとコストを低減しながら、複数のバンドを同時に送信に利用するCA技術に対応できる。
【0155】
特許文献3に記載の技術の場合、再利用する電力の周波数が広帯域に分布しているため、回路が対応する周波数範囲から外れた電力は再利用できずに電力損失が発生する。
【0156】
これに対して、本実施形態の送信装置の場合は、再利用する電力の周波数は単一バンドに設定する事が可能であるため、再利用する電力の周波数を回路の対応周波数に収める事は容易である。すなわち、再利用する電力の周波数が広帯域に分布している事に起因する電力損失を回避できる。
【0157】
特許文献4に記載の技術の場合、電力再利用による省電力化が可能になる条件が、アンテナにおける整合ずれで反射電力が発生する場合に限定される。
【0158】
これに対して、本実施形態の送信装置の場合は、整合ずれで発生する反射電力ではなく、電力増幅器の出力電力を再利用する。そのため、整合ずれの有無によらず、電力増幅器から電力を出力する事で、電力再利用による送信装置の省電力化を実現できる。さらに、電力増幅器からの電力の出力は容易にon/off制御できるので、条件に応じて電力再利用の適用有無を容易に制御できる。
【0159】
特許文献5に記載の技術の場合、再利用できる電力は、送信用アンテナから空中に放出されたRF信号電力の一部に過ぎない。また、送信用アンテナから空中に放出されるRF信号の周波数と電力は電波法によって制約される。そのため、電力回収アンテナで回収できるRF信号の周波数と電力もまた電波法によって制約される。
【0160】
これに対して、本実施形態の送信装置の場合は、電力再生用RF信号を空中に放出せずに回路内で閉じたまま電力再利用に用いるため、高い効率でRF信号を電力再利用できる。また、電力再生用RF信号を空中に放出しないため、電力再生用RF信号の周波数と電力は電波法によって制約されない。
【0161】
特許文献2および特許文献6ないし特許文献10に記載の技術では、バックオフ時に高い電力効率を維持するため、RF信号の変調に応じて電源からPAへの供給電力を制御するポーラ変調技術を適用している。ポーラ変調技術では、PAのRF出力信号の誤差を抑制するために、電源回路はPAのRF出力信号に正確に応じた電力波形を出力する必要がある。しかしながら、高速変動する電力を電源回路から高精度に出力させる事は困難であり、PAのRF信号精度と変調速度を両立できない。
【0162】
これに対して、本実施形態の送信装置の場合、電力再生器からPAへ、平滑化された電力を供給するだけでよく、ポーラ変調技術のようにPAのRF出力信号に正確に応じた電力波形を出力する必要が無い。すなわち、本実施形態の送信装置の場合、ポーラ変調器で見られたPAのRF信号精度と変調速度の両立の問題を回避できる。
【0163】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0164】
(形態1)上記第1の視点に係る送信装置の通りである。
【0165】
(形態2)前記分波信号のうち、所定の周波数の信号の電力総和と、所定の第1の基準電力との比較結果に基づいて、前記前記第1の周波数、及び前記第2の周波数を決定するキャリア選択部を備える形態1に記載の送信装置。
【0166】
(形態3)前記電源電力を検出する電力検出器を備え、
前記信号発生器は、前記電力検出器の検出結果に基づいて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態1又は2に記載の送信装置。
【0167】
(形態4)前記信号発生器は、前記電力検出器の検出結果に基づいて、前記第2の周波数を決定する形態3に記載の送信装置。
【0168】
(形態5)前記入力信号の信号歪量を検出する信号歪検出器を備え、
前記信号発生器は、前記信号歪検出器の検出結果に基づいて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態1乃至4のいずれか一に記載の送信装置。
【0169】
(形態6)前記信号発生器は、前記信号歪検出器の検出結果に基づいて、前記第2の周波数を決定する形態5に記載の送信装置。
【0170】
(形態7)前記信号発生器は、前記電力増幅器の電力増幅度に基づいて、前記入力信号の増幅電力の総和を、増幅総和電力として推定し、前記増幅総和電力に応じて、前記入力信号の電力を制御する形態1乃至6のいずれか一に記載の送信装置。
【0171】
(形態8)前記信号発生器は、前記増幅総和電力と、所定の基準電力との比較結果に応じて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態7に記載の送信装置。
【0172】
(形態9)前記信号発生器は、前記増幅総和電力が所定の基準電力に一致するように前記入力信号を生成する形態7又は8に記載の送信装置。
【0173】
(形態10)前記信号発生器は、前記電力増幅器の飽和電力を、前記基準電力として決定する形態9に記載の送信装置。
【0174】
(形態11)前記電力再生器は、整合回路と、整流回路と、を少なくとも備え、前記整合回路は、前記第2の周波数において、前記整流回路の入力と、前記分波器の出力と間でインピーダンス整合を取り、前記整流回路は、ダイオードで構成される形態1乃至10のいずれか一に記載の送信装置。
【0175】
(形態12)前記第2の周波数は、前記第1の周波数より低い形態1乃至11のいずれか一に記載の送信装置。
【0176】
(形態13)上記第2の視点に係る送信方法の通りである。
【0177】
(形態14)前記分波信号のうち、所定の周波数の信号の電力総和と、所定の基準電力との比較結果に基づいて、前記第1の周波数、及び前記第2の周波数を決定する工程を備える形態13に記載の送信方法。
【0178】
(形態15)前記電源電力を検出する電力検出工程を含み、前記信号発生工程において、前記電力検出工程における検出結果に基づいて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態13又は14に記載の送信方法。
【0179】
(形態16)前記入力信号の信号歪量を検出する信号歪検出工程を含み、前記信号発生工程において、前記信号歪検出工程における検出結果に基づいて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態13乃至15のいずれか一に記載の送信方法。
【0180】
(形態17)前記信号発生工程において、前記電力増幅器の電力増幅度に基づいて、前記入力信号の増幅電力の総和を、増幅総和電力として推定し、前記増幅総和電力に応じて、前記入力信号の出力を制御する形態13乃至16のいずれか一に記載の送信方法。
【0181】
(形態18)前記信号発生工程において、前記増幅総和電力と、所定の基準電力とを比較し、比較結果に応じて、前記第2の周波数の信号を出力するか否かを決定する形態17に記載の送信方法。
【0182】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。