(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板上に第1の導体部が設けられ、第2の基板上に第2の導体部が設けられ、前記導体部同士が互いに隙間をおいて対向するように、第1の基板と第2の基板とがスペーサーを介して積層された構造を有し、
前記隙間に、圧電性を示す有機材料が充填されているか、または、
前記隙間に、圧電性を示す有機材料が、該有機材料と一方の導体部との間に空隙が存在するように配置されている、
メンブレンスイッチ。
前記スペーサーの厚さを有しかつ該スペーサーの材料からなるフィルムに対する打ち抜き加工によって、前記スペーサーが形成されたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
前記スペーサーが、第1の基板の主面および第2の基板の主面のうちの一方または両方に、絶縁材料を塗工することによって形成されたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
ポリアミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、オルニチン、セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびその誘導体から選択される1種または2種以上の単位を含有するポリα−アミノ酸である請求項8記載のメンブレンスイッチ。
ポリアミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンならびにその誘導体から選択される1種または2種以上の単位を含有するポリα−アミノ酸である、請求項10記載のメンブレンスイッチ。
ポリアミノ酸が、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステル、Nε-カルボベンゾキシ-L-リジンから選択される1種または2種以上の単位を含有するポリα−アミノ酸である、請求項10記載のメンブレンスイッチ。
ポリα−アミノ酸が、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2,2,2−トリフルオロエチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボルニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボルニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ヘキシルカルボニルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(10−(p−メトキシフェノキシ)−1−デシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ブトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ヘキシルオキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/L−フェニルアラニン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/L−フェニルアラニン共重合体、およびγ−ベンジル−L−グルタミン酸/L−アラニン共重合体から選択される1種以上である、請求項10記載のメンブレンスイッチ。
導体部同士の間の隙間に充填または空隙が存在するように配置されている有機材料に対し、該導体部同士の間での電圧印加による分極処理が施された、請求項1〜23のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
第1の基板および第2の基板のいずれか一方または両方が、可とう性を有する材料によって形成されたフレキシブル基板である、請求項1〜24のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
第1の基板、第2の基板、および、スペーサーが可とう性を有する材料によって形成されたものであり、当該メンブレンスイッチ全体が可とう性を有するものである、請求項1〜24のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
第1の基板とスペーサーとの間、および、第2の基板とスペーサーとの間の、いずれか一方または両方に、接着剤層が介在している、請求項1〜24のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
導体部同士の間の隙間に充填または空隙が存在するように配置されている有機材料と、該導体部との間に、接着剤層が介在している、請求項1〜27のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
第1の導体部、第2の導体部、および、それら導体部に接続された配線回路が、第1、第2の基板面に対する印刷によって形成されたものである、請求項1〜28のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチ。
請求項1〜29のいずれか一項に記載のメンブレンスイッチが、圧力を受ける物品の表層に沿って配置され、それによって、受ける圧力に応じた信号を発する機能が付与されている、前記物品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明のメンブレンスイッチは、
図1(a)〜(c)、
図5(a)〜(c)に構造例を示すように、第1の基板1の主面に第1の導体部1aが設けられ、第2の基板2の主面に第2の導体部2aが設けられ、これら導体部(1a、2a)同士が互いに隙間をおいて対向するように、第1の基板1と第2の基板2とがスペーサー3を介して積層された構造となっている。
本発明では、このスイッチ構造における導体部(1a、2a)同士の間の隙間に、
図1に構造例を示すように、圧電性を示す有機材料4が充填されているか、または、
図5に構造例を示すように、該圧電性を示す有機材料4が、片側の導体部(図では上側の導体部2a)と該有機材料4との間に空隙s1が残るように配置されている。
この独自の構造によって、
図2にブロック図として使用方法を例示するように、導体部(1a、2a)同士の間の電気的な特性を外部機器Mの計測部M1において測定することによって、圧力(または、当該メンブレンスイッチを厚さ方向に圧縮しようとする外部からの荷重)が作用していない状態、および圧力が作用した状態をそれぞれ示す電圧値、電流値、その他のパラメータや信号が得られ、それに応じた出力を外部機器の制御部M2などに伝達して種々の用途に利用するといった構成が可能になる。
【0015】
図1(a)、
図5(a)の態様では、第1の導体部と第2の導体部とを対向させるべく、スペーサー3に設けられた貫通孔3aの開口面積よりも導体部1a、2aの面積の方が大きいので、導体部の外周縁が該貫通孔3aの開口部からはみ出している。
ここで、本発明においてスペーサーに設けられる「貫通孔」とは、第1の導体部と第2の導体部とを対向させる目的で、スペーサーを当該メンブレンスイッチの厚さ方向に貫く空間部分をいう。該貫通孔は、〔シート状のスペーサーに穴あけ加工などによって後から形成された空間部分〕でもよいし、〔樹脂成形などによって最初からスペーサー中に存在する空間部分〕でもよいし、〔第1の導体部と第2の導体部とを対向させるための空間部分が先に設計的に決定され、該空間部分以外の部分にスペーサー材料が後から配置された結果として、残された空間部分〕であってもよいし、〔感光性材料を露光・現像することによるフォトリソグラフィーで形成された空間部分〕でもよい。また、該貫通孔は、必ずしも自体の空間部分の側方の周囲をスペーサーの材料によって完全に囲まれている必要はない。例えば、隣り合った貫通孔同士が互いに連通していてもよいし、他の目的(空気逃がしや軽量化など)のためにスペーサーに設けられる空間部分と連通していてもよいし、スペーサーの外周側面において外界の空間と連通していてもよい。また、例えば、スペーサーの材料が存在する部分が独立した支柱として離散的であるために、残りの空間部分が網目状につながっている場合でも、そのような空間部分は前記貫通孔である。該貫通孔は、形状によっては、他の目的のためにスペーサーに設けられる溝などの空間部分を兼用するものであってもよい。
図10(a)と同様、
図1(a)、
図5(a)では説明のために導体部を厚く描いているが、実際には導体部は薄く、スペーサーが導体部によって大きく圧縮されるようなことはない。
図1(a)の態様では、有機材料4は、貫通孔内全体に充填されており、
図5(a)の態様では、有機材料4と導体部1aとの間に空隙s1が存在している。
図1(b)、
図5(b)の態様では、スペーサー3に設けられた貫通孔3aの開口面積よりも導体部1a、2aの面積の方が小さく、よって、それら導体部はスペーサーの貫通孔内に収まって対向している。
図1(a)の態様では、有機材料4は、貫通孔内全体に充填されており、
図5(a)の態様では、有機材料4と導体部1aとの間に空隙s1が存在している。
図1(c)、
図5(c)の態様では、スペーサー3に設けられた貫通孔3aの開口面積よりも導体部1a、2aの面積の方が小さく、それら導体部はスペーサーの貫通孔内に収まって対向している。
図1(a)の態様では、有機材料4は、対向する導体同士の間に充填されており、
図5(a)の態様では、有機材料4と導体部1aとの間に空隙s1が存在している。この場合は電気的な絶縁性を担保する観点から〔スペーサー3に設けられた貫通孔の開口面積〕>〔導体部と有機材料との接触面積〕≧〔貫通孔内の導体部1a、2aの面積〕となっている。
図1(c)の態様のような場合、〔導体部と有機材料との接触面積〕>〔貫通孔内の導体部1a、2aの面積〕とするのが好ましい態様である。
対向する導体部が貫通孔の開口全体を占有し導体面積が広いという点や、絶縁性を担保しやすいという点からは、
図1(a)の態様が好ましく、圧縮される有機材料4の横方向への変形をスペーサーが妨げないという点からは、
図1(c)の態様が好ましい。
【0016】
第1、第2の導体部は、1対のみならず、一般的なメンブレンスイッチと同様に複数対の導体部をアレイ状に設けてもよく、
図3に各層毎に主面を示すように、第1の基板1上に複数の第1の導体部(1a1、1a2)を所定の配置パターンにて設け、これに対応する配置パターンにて第2の基板2上に複数の第2の導体部(2a1、2a2)を設け、これら導体部同士をそれぞれ隙間をおいて対向させ、複数の導体部対が面上に配列されたアレイ構造としてよい。スペーサー3は、各導体部対の導体部同士の間に隙間が確保されるように基板同士の間に介在しており、各導体部対の導体部同士の間の隙間(
図3ではスペーサーの貫通孔3a1、3a2の内部)には圧電性を示す有機材料4(図示せず)が充填または空隙が存在するように配置されている。
図3のようなアレイ構造の場合、スペーサー3は、導体部対同士ならびに外部への引出し配線同士を互いに電気的に絶縁する隔壁としても機能する。
【0017】
図3のようなアレイ構造の場合、基板上における導体部の配置パターンやピッチは用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、当該メンブレンスイッチを物品の表層に配置し、各部の圧力に応じた信号を得るのであれば、導体部の配置パターンは、四角形、正三角形、正六角形などを網の目の形状とするネットワークの交点に導体を配置するといったパターンが挙げられる。また、当該メンブレンスイッチを、所定のキー配列を持ったキーボ−ド(各種電子楽器の鍵盤(特に感圧機能付き)、コンピュータのキーボ−ド、各種装置の制御部やゲーム機の入力パッドなど)のスイッチとして用いるのであれば、そのキー配列に応じた配置パターンとすればよい。
アレイ構造における導体部同士の中心間距離は、製品の規模に応じて様々であり限定はされないが、0.1mm〜100mm程度が汎用的である。
【0018】
図6は、基板面に形成される導体と配線の配置パターンの一例(各スイッチの導体部とそれに接続される配線)を模式的に示したものである。図では、説明を簡単にするために導体部の数を4としている。配線の経路は一例である。
基板の外周形状は、正方形、長方形、円形など用途に応じた任意の形状であってよい。また、それらの外周形状に加えて、
図6(a)に示すような局所的に外部に張り出たコネクター部1cを設け、外部回路(例えば、
図2に示す外部機器Mなど、必要な機能を持った回路)との接続を行ってもよい。コネクター部1cの構造や各スイッチと外部回路とを接続するための構成は公知技術を参照することができる。
例えば、基板上の配線を露出させ(レジスト保護膜を設けない)、その露出した配線の表面に、Ni、Pd、Auなどの各種金属によるめっきを行う態様や、カーボンペーストなどの表面処理を施して端子とする態様、基板にハンダ付けなどによって市販のコネクターを実装する態様、はんだ、導電ペースト、異方導電性フィルム(以下、ACF)などでメンブレンスイッチ側のコネクター部と外部回路を導通する態様などが挙げられる。
【0019】
本発明のメンブレンスイッチと外部回路とは、必ずしも別個である必要はなく、
図6(b)に示すように、必要な外部回路mを、当該メンブレンスイッチの基板上に直接的に形成または実装してもよい。
図6(b)の外部回路mは、配線部分とそれに実装された多数の素子とを有してなるものでも良く、それらを一体化した1つのICチップであっても良い。外部回路mとしてICチップを用いる場合、当該メンブレンスイッチの基板上の配線に実装する態様(
図6(b)の外部回路mがそのままICチップになる態様)が好ましい。
【0020】
図6(b)の外部回路mは、外部機器との通信を行うための無線通信装置であってもい。即ち、当該メンブレンスイッチと外部機器との接続は、必ずしもコネクター部を介した有線的な接続である必要はなく、電波、光による無線的な接続であってよい。
【0021】
当該メンブレンスイッチにコネクター部を設ける場合、
図8(a)に示すように、第1の基板1、第2の基板2にそれぞれに設けられたコネクター部の配線10a、20aを、それぞれ別個に外部回路と接続をしても良い。
図8では、第1の導体部1aとコネクター部の配線10aとが、第1の基板面上において配線パターンによって互いにつながっているという接続関係を、一点鎖線の矢印で表している。第2の基板についても同様に、基板面上の配線パターンによる接続関係を一点鎖線で表している。
また、
図8(b)に示す例では、第1の基板上の配線10aが、導電性の接続媒体11aを介して、第2の基板上の配線12aへと接続され、さらに、コネクター部の配線13aへと接続されている。同図の例では、第1の基板1および第2の基板2上の全ての導体部(1a、2a)のための各配線(13a、20a)が、第2の基板上のコネクター部に集合している。
図8(b)に示すような片側の基板面に導体を集合させた態様は、コネクターの構造が単純になるので好ましい。
【0022】
一方の基板上の配線と他方の基板上の配線との電気的な接続には、公知の接続技術を用いることができる。
例えば、
図8(b)に示すように、互いに対向する両配線の間に導電性の接続媒体11aを介在させる態様では、該接続媒体として、導電性接着材やACFなどが挙げられる。ACFは、微細なピッチの配線同士を高い信頼性で接続できるという点では好ましい接続媒体である。
また、
図9に示すように、1枚の基板上に、第1、第2の導体部(1a、2a)とそれぞれの配線(1b、2b)を所定のパターンにて全て形成し、かつ、それら配線を1つのコネクター部1cまで延ばしておき、この1枚の基板を折り曲げ線Rにおいて2つに折り重ね、第1、第2枚の基板としてもよい。この態様では、一方の基板上の配線と他方の基板上の配線とが、折り曲げ線Rを越えた配線パターンによって互いに絡したものとなる。
【0023】
図2や
図6に示した外部回路に含まれる計測部は、当該メンブレンスイッチ中の各スイッチ間の電圧、電荷、電流、静電容量、抵抗またはその変化を計測して、各スイッチに作用した外部からの圧力または力(荷重)をそれに応じた信号として出力し得るものであればよい。なかでも、電荷または静電容量は、スイッチに作用する圧力や力に応じた変化量が大きいので、それらを計測し出力することが好ましい。また、各スイッチの信号は微弱であるので、計測部には増幅回路を組込むことが好ましい。
前記のような計測回路や増幅回路には公知技術を用いることができる。例えば、各スイッチで発生した電荷を増幅して積分回路により電圧に変換して出力する回路として、
図7に例示するような回路が挙げられる。
図7の例では、C
Xが各スイッチの静電容量を表しており、V
outが出力電圧であり、C
1、R
1は適宜決定されるキャパシターと抵抗である。
【0024】
さらに計測部には、電圧に変換した信号をコンピューターに取り込むことを目的にA/D変換回路を組込むことが好ましい。A/D変換回路としては公知の方法が用いられるが、積分型、逐次比較型、フラッシュ型、オーバサンプリング型等が挙げられる。
また、ノイズ除去回路、ソーヤタワー回路、フィルタリング回路、計数回路、計数リセット回路、表示回路、記憶回路、バーチャルグランド回路、各種の補償回路等、付帯的な回路を必要に応じて加えてもよい。
【0025】
第1、第2の基板は、導体部を支持し得るものであればよく、従来公知のメンブレンスイッチの基板の材料や、プリント配線基板の材料が好ましいものとして挙げられる。そのような材料としては、特に限定はされないが、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、液晶ポリマー等の他、紙フェノール(紙にフェノール樹脂を含浸させた複合材料)やガラスエポキシ(ガラス繊維製の布を積層したものにエポキシ樹脂を含浸させた複合材料)などの複合材料が好ましいものとして挙げられる。
また、ソルダーレジストインキなどの液状の絶縁材料を塗工し硬化させることで、第1、第2の基板のいずれか一方、または両方を形成してもよい。
【0026】
第1、第2の基板の材料は、互いに同じものであっても異なるものであっても良い。物品の曲面状の表面や表層に沿って装着するためには、第1、第2の基板のいずれか一方または両方が、可とう性を有する材料によって形成されたものであることが好ましい。当該メンブレンスイッチ全体に可とう性を付与るためには、両方の基板が可とう性を有する材料によって形成されたものであることが好ましい。上記した材料の中でも低コストであり透明性が高く、適度な可とう性を有する点からは、ポリエステル系樹脂が好ましいものとして挙げられる。また、耐熱性や寸法安定性であり可とう性を重視する用途ではポリイミド系樹脂が好ましいものとして挙げられる。可とう性は、材料自体の可とう性であることが好ましいが、基板の厚さを調節することによって基板全体の可とう性を実現させたものも含まれる。
【0027】
第1、第2の基板のそれぞれの厚さは、製品の規模、材料の機械的強度、可とう性、弾性などに応じて決定すればよく、特に限定はされないが、厚すぎると圧力分布が各スイッチ内の有機材料に正確に伝わらない問題が発生し、薄すぎると破断しやすくなり耐久性が下がる問題が発生する。総じて500μm〜5μm程度が汎用的であり、なかでも200μm〜10μmm程度がより実用的で好ましい範囲である。例えば、第1、第2の基板の材料が、ポリエステルである場合には、100μm〜20μm程度が実用上好ましい範囲である。
第1、第2の基板は、互いに同じ厚さであっても異なる厚さであっても良い。例えば、一方の基板を固定側としてより厚い寸法とし、他方の基板を可動側としてより薄い寸法としてもよい。
第1、第2の基板の外周形状は、必要とされる導体対の数、導体対の配列ピッチ、当該メンブレンスイッチを適用すべき物品の大きさに応じて適宜決定すればよく、互いに同じ形状であっても異なる形状であっても良い。
【0028】
第1または第2の基板に可とう性を有する材料を使用する場合、材料の可とう性は、特に限定はされないが、例えば、JIS K7161、JIS K7162に規定された引張試験方法において、引張弾性率が1GPa未満でありかつ引張破壊ひずみ10%以上であることが好ましい。
【0029】
第1、第2の導体部の材料は、従来公知のメンブレンスイッチの接点やプリント配線基板の配線材料として用いられる導電性材料の他、導体部間に充填または空隙が存在するように配置される有機材料の分極の変化を外部に好ましく伝達し得る導電性材料であればよい。
そのような導電性材料としては、金、銀、銅、白金、鉛、錫、ニッケル、クロムなどの良導体の金属単体、またはこれらの金属から選ばれた2種類以上の金属からなる合金が好ましい材料として挙げられる。また、前記金属の微粒子(例えば金属ナノ粒子と呼ばれるものなど)やカーボン粒子を高濃度に含有してなる導電性ペーストや導電性インキ、ポリチオフェンなどを主成分とする導電性ポリマーインキなどを、印刷によって基板上に堆積させ、乾燥・硬化・焼成などしたものなども好ましい導体部の態様として挙げられる。また、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの透明な金属酸化物もメンブレンスイッチ全体が透明にすることを目的とする場合は好ましい材料として挙げられる。
【0030】
導電部並びに回路部の表面は耐摩耗性、防錆、密着向上を目的として公知の表面修飾を施していても良いし、形成した導電部そのままでも良い。公知の表面修飾としてはNi、Pd、Auなどのめっき、不動体層や有機層を用いた防錆処理などが挙げられる。
【0031】
各導体部の外周形状は、特に限定はされず、
図3に示すような円形の他、正方形、長方形、その他の多角形、などが挙げられる。円形は、製造コスト、クラック防止、力の感知の点から好ましい形状である。
導体部対を構成する第1、第2の導体部のそれぞれの外周形状は、一方を他方に投影したときに一致する関係にあることが好ましい。ただし、導体部と外部回路とを通じる引出し配線(
図6の2に相当)は、この限りではない。
各導体部の外周形状の大きさ(基板の主面に占める面積)は、当該メンブレンスイッチの規模や用途に応じて適宜決定してよいが、例えば外周形状が円形の場合には、その直径は0.1μm〜500mm程度が好ましく、0.1mm〜100mmがより好ましい。また、導体部の外周形状が円形以外の場合、大きさは直径が0.1μm〜500mm程度の円形の面積に相当する面積が好ましく、0.1mm〜100mm程度の円形の面積に相当する面積がより好ましい。
各導体部の厚さは、製品の規模、材料、形成方法によっても異なるが、総じて、0.1μm〜100μm程度が汎用的であり、例えば、導電性ペーストや導電性インキなどを印刷によって形成する場合には5μm〜50μm程度が好ましく、金属箔やめっきにて形成する場合には5μm〜50μm程度が好ましく、蒸着やスパッタリングによって形成する場合は10nm〜5μmが好ましい。
導体部同士の間の距離は、有機材料が示す圧電性を好ましく検出し得る値であればよいが、可とう性や使用性の点からは小さい方が好ましく、絶縁性の担保の点からは大きい方が好ましい。該距離は、3μm〜500μmが好ましい範囲として例示され、5μm〜100μmがより好ましい範囲として例示される。
【0032】
図3の態様のように、導体部対を複数設けてアレイ構造とする場合、各導体部対のうちの一方の導体部は、個々に分離独立した導体部ではなく、共通電位となるように互いにつながって基板面上に広がった1枚の導体層であってもよい。このような態様であっても、他方の導体部が個々に分離独立し互いに絶縁されていれば、複数の導体部対が配列されたアレイ構造となる。
【0033】
第1、第2の基板上へのそれぞれの導体部の形成方法は、従来公知のメンブレンスイッチにおける接点の形成方法や、プリント配線基板における配線回路の形成方法を利用してよく、次に例示するような、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法が挙げられる。
導電性ペーストや導電性インキを印刷によって基板上に導体部の形状となるように堆積させた後、乾燥、硬化、焼成などを行い導体部とする方法。
無電解めっき、スパッタ、蒸着などによってシード層を形成した後にレジストを用い電気めっきによって配線を形成し不要なシード層を除去する方法。
基板上への金属箔の貼り合わせや金属やITOなどのスパッタ、蒸着などによって全面的に形成した導体層をエッチングして導体部を残す方法。
これらの方法の中でも、生産性(低コスト)と信頼性のバランスの点から、サブトラクティブ法が好ましい方法として挙げられる。
第1の導体部と第2の導体部は同じ材料であっても良いし互いに異なる材料からなるものであっても良い。
【0034】
第1、第2の基板には、各導体部と外部回路とを接続するための配線回路が設けられる。
図3の例では、第1の基板1には、導体部(1a1、1a2)にそれぞれ接続された配線回路(1b1、1b2)が設けられ、第2の基板2には、導体部(2a1、2a2)にそれぞれ接続された配線回路(2b1、2b2)が設けられている。
配線回路は、導体部が形成された面のみならず、その裏面や基板内部に形成されていてもよく、その場合、配線回路と導体部とを接続する導通路、スルーホール、ビアなどが基板の厚さ方向に設けられる。
配線回路の材料、形成方法は、上記した導体部の材料と形成方法と同様であってよい。生産性や単純な構造の点からは、導体部と配線回路とを、基板の同じ面に同じ材料を用いて同じ形成方法によって一度に形成することが好ましい。
【0035】
第1、第2の基板上にそれぞれ導体部と配線回路を印刷法を用いて形成する場合の一例は次のとおりである:
ポリエチレンテレフタラート製のフィルムを基板とし、印刷回路用の銀ペーストを用いたスクリーン印刷にて、該基板上に導体部とそれに接続された配線回路パターンを描画する。導体部と配線回路が描かれた該基板をオーブンにて所定の時間加熱・乾燥させて、導体部と配線回路とが設けられた基板を得る。この方法は、生産性(低コスト)と信頼性のバランスが優れている。
【0036】
第1、第2の基板上にそれぞれ導体部と配線回路をフォトリソグラフィーを用いて形成する場合の一例は次のとおりである:
3層タイプのポリイミド銅張積層板(ポリイミド樹脂フィルム上に接着剤層(エポキシ接着剤層など)を介して銅箔を積層した三層の積層体)を用意し、その銅箔面にドライフィルムレジストをラミネートし、形成すべき導体部と配線回路だけがドライフィルムレジストに覆われるように露光・現像を行う。これに塩化鉄や塩化銅でエッチングを施し、露出した銅箔を除去し、目的の導体部および配線回路だけを残す。最後にドライフィルムレジストを剥離して、導体部と配線回路が設けられた基板を得る。この方法は、銅箔が電気的・機械的に優れた良導体であり、基板との密着性、耐熱性も高く、微細なパターン加工が可能であるため、品質を重視する製品の製造に適している。また、配線回路の表面が平坦であるので圧電性を示す有機材料の層が薄くても絶縁性を担保できる点で有利である。
【0037】
スペーサーは、第1、第2の基板同士の間に介在し、導体部同士の間に隙間を形成するように第1、第2の基板を支持し得るものであればよい。スペーサーは、スペーサーが導体部同士の間の隙間を周囲で環状に取り巻いて囲む態様(即ち、スペーサーとなるフィルムが、
図1(a)〜(c)のような貫通孔3aを有し、該貫通孔内の空間部分を挟んで導体部が対向する態様)とすると、スペーサーの形成が簡単であり、かつ、第1、第2の基板をバランスよく支持し得、隣り合った導体対同士を絶縁し得るので好ましい。しかしながら、1つの導体部対の周囲に独立した支柱として離散的に設けられてもよい。その場合、上述したように、スペーサーの材料が存在しない空間部分が貫通孔である。
【0038】
スペーサーの材料は、剛体であってもよいが、スペーサーが導体部に加えられる圧力の妨げにならない点や、当該メンブレンスイッチ全体に可とう性を付与し得る点からは、適度な弾性と可とう性を有することが好ましく、小さい力でも圧縮し得るような低弾性が好ましい。
スペーサーの材料の弾性と可とう性は、特に限定はされないが、例えば、JIS K7161とK7162に規定された引張試験方法において、引張弾性率が1GPa未満でありかつ引張ひずみ10%以上とすることが好ましい。
また、スペーサーの材料は、隣り合った導体部対同士を電気的に絶縁するために、絶縁性材料であることが好ましい。
以上のような材料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、塩化ビニル、ポリウレタンなどの高分子材料が挙げられ、可とう性、弾性率、コスト、耐熱性の観点から、ポリエステルがより好ましい材料として挙げられる。
また、スペーサーの材料は、ソルダーレジストインキなどの液状の絶縁材料を硬化させたものであってもよく、基板に用いたソルダーレジストインキなどの液状の絶縁材料と同じ材料を用いてもよい。
【0039】
スペーサーに設けられる貫通孔の開口形状は、特に限定はされないが、
図1(b)、(c)の態様の場合には、導体部の外形と相似の形状であることが好ましく、よって、
図3に示すような円形形の他、正方形、長方形、多角形、異形などが好ましい形状として挙げられる。スペーサーに設けられる貫通孔には、圧電性を示す有機材料を注入する際の空気抜きのための通路を接続しておいてもよい。
スペーサーの厚さは、設計上決定された導体部同士の間の距離が得られるように、導体部の厚さを考慮して、適宜決定すればよい。例えば、
図1の例では、(スペーサーの厚さ)=(導体部の厚さ×2)+(導体部同士の間の距離)である。
【0040】
導体部と上記有機材料とは、必ずしも密着している必要はなく、
図5に示すように、空隙s1があっても良い。この場合は(スペーサーの厚さ)>(導体部の厚さ×2)+(有機材料の厚さ)となる。
導体部同士の間の距離は、上記したように、3μm〜500μmが好ましい範囲である。
【0041】
図3のように貫通孔3a1、3a2を含んだスペーサー3の形成方法は、特に限定はされないが、次のような方法が例示される。
押出成形、射出成形など樹脂成形型を用いて貫通孔を持ったシート状の成形部品として形成する方法。
スペーサー材料からなる目的厚さのフィルムを用意しその所定位置に所定の開口形状の貫通孔を打ち抜きによって形成してスペーサーとする方法(後述の(A)に例示する方法)。
導体部や配線回路が形成された第1または第2の基板上のスペーサーを設けるべき領域に絶縁性材料からなるインキを印刷し、硬化させてスペーサーとする方法。この時、貫通孔に該当する開口部を残すようにインキを印刷する必要があるが、該開口部はスクリーン印刷、グラビアコート、インキジェットなどの公知の印刷方法を用いたパターン形成によって設けてもよい(後述の(B)に例示する方法)。また、インキに感光性材料を用いてロールコートなどで全面印刷した後に露光・現像を行い、該インキを後から除去することで設けてもよい。
上記の方法のなかでも、生産性とコストの観点からは、スペーサー材料からなる目的厚さ(スペーサーとして必要な厚さ)のフィルムを用意しその所定位置に所定の形状の貫通孔を打ち抜きによって形成してスペーサーとする方法が好ましいが、可とう性および弾性を持ったフィルムを金型で抜くという加工に起因して、寸法精度が多少粗い傾向がある。一方、パターン印刷や露光・現像によってスペーサーを形成する方法は、材料費や加工の手間の点から抜く方法と比較すると高価なものとなるが、前記の打ち抜きに比べて、印刷された面へ高い密着が得られる、打ち抜きなどと比較すると微細な構造が作れるという利点がある。
【0042】
スペーサーを、成形、モールド、打ち抜きなどによる別個のシート状の成形部品として形成した場合の、当該メンブレンスイッチの組立て方法としては、公知の積層技術を参照することができ、スペーサーと基板との間に接着剤層を介在させてこれらを積層する方法、パンチングなどで貼り合せる方法などが挙げられる。
接着剤は、感圧性粘着剤、感光性接着剤、熱硬化性接着剤などいずれを用いてもよく、好ましい材料としては、熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
また、接着剤を用いて接着を行う部分は全面であっても良く、スペーサーの一部の領域であっても良い。
【0043】
(A)スペーサーを別個のシート状の成形部品として形成し、基板に貼り合わせる場合の、当該メンブレンスイッチのより具体的な製造例は、次のとおりである:
スペーサーとして、予め(合わせ用の剥離シート、接着剤層、スペーサーとなるポリエチレンテレフタラートからなる層、接着層、合わせ用の剥離シート)がこの順に積層された5層の積層体を用意し、これに打ち抜き加工を施して、目的とする貫通孔を形成する。貫通孔の大きさと位置は、対向する導体部同士の間に形成すべき所定空間の大きさと位置に応じて決定すればよい。
次に片面の剥離シートを剥がし、一方の基板上の接点と、スペーサーに形成した貫通孔の開口部とが一致するように貼り合わせを行う。
次に、スペーサーの貫通孔内に圧電性を示す有機材料を充填または空隙が存在するように配置する。
次に、スペーサーの他方の面の剥離シートを剥がし、他方の基板上の導体部と、スペーサーに形成した貫通孔の開口部とを位置合わせし、貼り合せを行い、当該メンブレンスイッチを得る。
【0044】
(B)基板上に印刷によってスペーサーを形成する場合の、該スペーサーの形成例は、次のとおりである:
導体部や配線回路が設けられた一方の基板面に、スクリーン印刷によって導体部の周囲を取り囲むように絶縁性インキ層を形成し、貫通孔を形成する。これをオーブンにて所定の時間乾燥・硬化させて基板上に積層されたスペーサーを得る。
この場合、スペーサーの材料として、上記のように、ソルダーレジストインキなどの絶縁材料を用いてもよい。
【0045】
本発明において導体部間に充填または空隙が存在するように配置される圧電性を示す有機材料としては、単一材料、混合材料、複合材料であってもよく、混合材料、複合材料の場合は成分となる個々の物質に必ずしも圧電性がある必要はなく、全体として圧電性を示す有機材料となっていればよい。具体的には、次の(a)〜(c)の材料が挙げられる。
(a)自体が圧電性を有する有機圧電体(単一材料または混合材料)。
(b)自体が圧電性を有する有機圧電体を母材とし、その内部に自体が圧電性を有する他の材料からなるフィラーが分散することによって、全体として該母材自体の圧電性とは異なる圧電性を示す有機材料となっている複合材料。
(c)圧電性を有しない有機材料を母材とし、その内部に自体が圧電性を有する材料からなるフィラーが分散することによって、全体として圧電性を示す有機材料となっている複合材料。
【0046】
上記(a)の有機圧電体は、(a1)その分子の化学構造から圧電性を示す有機化合物、および、(a2)その分子の化学構造からは圧電性を示さないが、加工(分子の化学構造は変えない加工)を加えることで圧電性を発現し得るものとなった有機化合物の両方を含む概念である。
有機圧電体は、有機化合物であるため、一般的な強誘電体として知られているチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの無機材料には無い、可とう性、成形加工性を持っており、また、軽量であり、コスト的にも優れている(特公昭62−4873号公報を参照のこと)。
さらに、一般的な無機強誘電体であるPZTは、人体や環境に有害な鉛を多く含むが、有機圧電体は鉛を含まないため人体や環境への影響が少ないという長所もある。
しかし、有機圧電体とりわけ有機強誘電体は、強誘電性の報告は多くあるものの、未だ素子の構造について多くの検討がなされておらず、検討されている素子では複雑な構造となり非常に素子のコストが高くなっている(特開平10−332509号公報、特開2009−53109号公報を参照のこと)。さらに、有機圧電体を用いて面内の複数点にかかる圧力を別々に感知するような構造の素子についての検討はほとんどなされていない。
【0047】
上記(a1)の有機化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/トリフロロエチレン共重合体、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、硫酸グリシン、ポリ尿素、ナイロン、強誘電性液晶、クロホン酸などが挙げられ、これらはいずれか1種であっても、2種以上の混合物であってもよい。また、上記(a2)の有機化合物としては、例えば、多孔質ポリオレフィンなどの多孔質樹脂(例えば、特開2012-124434号公報に記載の多孔質樹脂)が挙げられる。
これらの有機圧電体の中でも、印刷技法によって導体部間に充填または空隙が存在するように配置し得るという良好な加工性と、良好な圧電特性の観点から、ポリアミノ酸が特に好ましい材料である。好ましいポリアミノ酸の詳細については、後述する。
【0048】
圧電性を示す有機材料としての上記(b)の複合材料は、上記(a)の有機圧電体を母材として、その中にさらに圧電性を有する別の材料からなる粒子状のフィラーが分散したものである。フィラーの材料としては、上記(a)の有機圧電体(母材とは異なる材料)や、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、天然もしくは人工の水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸ニオブ酸カリウム[K(Ta,Nb)O
3]、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、および、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)などの無機強誘電体が挙げられる。
フィラーの粒子径は、例えば、顕微鏡によって得られる粒子像のフェレー(Feret)径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)を粒子径(定方向径とも呼ばれる)として採用すればよい。フィラーの粒子径は特に限定はされないが、母材の弾性や、硬化前の流動性を妨げないものであることが好ましく、例えば、平均粒子径として100nm〜5μm程度が挙げられる。
複合材料中のフィラーの含有量は特に限定はされないが、少ない場合はその圧電性が発現せず、多い場合は有機材料としての可とう性、加工性が損なわれてしまう。このため、5〜90重量%が好ましく、10〜80重量%がより好ましい。
【0049】
圧電性を示す有機材料としての上記(c)の複合材料は、圧電性を有しない有機材料を母材とし、その中に上記(b)と同様のフィラーが分散したものである。圧電性を有しない有機材料としては、一般的な樹脂、エラストマーなどであってよく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、天然ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴムなどのエラストマーなどが挙げられる。
複合材料中のフィラーの含有量は特に限定はされないが、少ない場合はその圧電性が発現せず、多い場合は有機材料としての可とう性、加工性が損なわれてしまう。このため、5〜90重量%が好ましく、10〜80重量%がより好ましい。
【0050】
上記の圧電性を示す有機材料(上記(a)〜(c)の有機圧電体)には、圧電体、強誘電体としての効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の各種樹脂や添加剤を特性の改質のために任意で含有させることができる。樹脂添加剤としては、例えばシリカ、タルク、硫酸バリウムなどの無機充填剤、顔料や染料などの着色剤、カーボンブラック、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー、ゴム粒子等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等、マレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂の熱硬化性樹脂、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、等を挙げることができる。
【0051】
本発明によるメンブレンスイッチの導体間に含まれた有機材料に対しては、圧電性を発現させる前処理や、圧電性を高めるための分極処理を施しても良い。
圧電性を発現させる前処理としては、例えば、コロナ放電等による電荷をトラップする処理が挙げられる。分極処理としては、例えば、有機材料を挟む両導体部間に、高圧直流定電圧電源などを用いて直流電圧を一定時間印可する処理が挙げられる。また、分極処理は、非加熱(例えば、5℃〜35℃程度の常温)で行ってもよいし、加熱下で行ってもよい。分極処理を加熱下で行う場合には、加熱温度は、対象とする有機材料のガラス転移点程度が好ましい温度として挙げられる。尚、有機材料が複合材料である場合には、その材料の組み合わせにもよるが、母材となっている有機材料のガラス転移点が好ましい加熱温度となる。
【0052】
本発明によるメンブレンスイッチが検出可能な外部からの力は、導体部同士の間の距離や、導体部と有機材料との接触面積など、当該メンブレンスイッチの各部のサイズに応じて変更可能であるが、当該メンブレンスイッチが有用となるような一般的な用途では、検出すべき圧力の範囲としては、0MPa〜0.1MPa程度が例示される。
【0053】
[ポリα−アミノ酸]
以下に、上記(a)の有機圧電体として特に好ましいポリα−アミノ酸について詳細に説明する。
【0054】
かかるポリα−アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、オルニチン、セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンおよびその誘導体から選択される1種類以上の単位を含有するポリα−アミノ酸であれば良い。中でも、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびその誘導体から選択される1種類以上の単位を含有するポリα−アミノ酸は溶解性の観点から好ましく、より好ましくはグルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびその誘導体から選択される1種類以上の単位を含有するポリα−アミノ酸のホモポリマー、コポリマーが挙げられる。
【0055】
以下のポリα−アミノ酸は、溶解性と圧電特性の観点から好ましい。
式(I):
【0057】
(式中、kは1または2の整数、R
1はC
1〜C
8の置換もしくは非置換のアルキル基、または、ハロゲン原子、アルコキシ基もしくはニトロ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。)で表される単位(以下、「式(I)の単位」とも略称する。)、
式(II):
【0059】
(式中、kは1または2の整数、R
2はC
3〜C
16非置換アルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部が、ハロゲン原子、C
3〜C
12脂環式炭化水素基、C
1〜C
6アルコキシ基、シアノ基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいフェニルアルコキシ基もしくは置換基を有していてもよいフェニルアルキルカルバメート基で置換されたC
1〜C
6アルキル基を表す。但し、R
2は式(I)のR
1と同一の基となることはない。)で表される単位(以下、「式(II)の単位」とも略称する。)、
式(III):
【0061】
(式中、R
3はメチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(但し、Xはハロゲン原子もしくはC
1〜C
6アルコキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC
1〜C
6アルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、C
1〜C
6アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはC
1〜C
6アルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。)で表される単位(以下、「式(III)の単位」とも略称する。)、
式(IV):
【0063】
(式中、kは1または2の整数、R
4はC
1〜C
12アルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたC
1〜C
12アルキル基、または、C
1〜C
12アルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。lは6〜12の整数、mは1〜3の整数を表す。)で表される単位(以下、「式(IV)の単位」とも略称する。)、および
式(V):
【0065】
(式中、R
5は、水素原子、メチル基、−CH(OH)CH
3、C
3〜C
4分岐鎖状アルキル基、または、―(CH
2)
n−Z(但し、nは1〜4の整数、Zはヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、メチルスルファニル基、アミノ基、置換アリール基、アミノカルボニル基、−NH-C(NH
2)=NH、
【化13】
、または
【化14】
を表す。)を表す。)で表される単位(以下、「式(V)の単位」とも略称する。)
から選択される1種以上の単位を含有するポリα−アミノ酸である。
【0066】
以下、式(I)〜式(V)の単位のそれぞれについて詳しく説明する。
[式(I)の単位]
式(I)の単位はグルタミン酸γ−エステル単位またはアスパラギン酸γ−エステル単位である。
式中のR
1は、C
1〜C
8の置換もしくは非置換のアルキル基、または、ハロゲン原子、アルコキシ基もしくはニトロ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
「C
1〜C
8のアルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−エチルブチル基、4−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、6−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、3−エチルヘプチル基、4−プロピルヘプチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、4,4−ジプロピルブチル基、2−メチル−3−エチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基などが挙げられる。好ましくはC
1〜C
6アルキル基、より好ましくはC
1〜C
3アルキル基であり、メチル基またはエチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0067】
また「C
1〜C
8アルキル基」は水素原子の一部または全部が置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルコキシ基(好ましくはC
1〜C
6アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、メチレンジオキシ基等))等が挙げられる。
【0068】
また、「ハロゲン原子、アルコキシ基もしくはニトロ基で置換されていてもよいベンジル基」において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでもフッ素原子、臭素原子または塩素原子が好ましい。「アルコキシ基」は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルコキシ基であり、好ましくはC
1〜C
6アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、およびメチレンジオキシ基等)であり、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、メチレンジオキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0069】
「ハロゲン原子、アルコキシ基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンジル基」の好ましい例としては、p−ブロモベンジル基、p−クロロベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−メトキシベンジル基、2,6−ジメトキシベンジル基、3,4−メチレンジオキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル基、ベンジル基が挙げられ、なかでも、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ベンジル基がより好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
【0070】
R
1の好ましい態様はメチル基またはベンジル基である。
【0071】
[式(II)の単位]
式(II)の単位はグルタミン酸γ−エステル単位またはアスパラギン酸γ−エステル単位である。
式中のR
2は、C
3〜C
16非置換アルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子、C
3〜C
12脂環式炭化水素基、C
1〜C
6アルコキシ基、シアノ基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいフェニルアルコキシ基もしくは置換基を有していてもよいフェニルアルキルカルバメート基で置換されたC
1〜C
6アルキル基を表す。但し、式中のR
2は、式(I)中のR
1と同一基となることはない。
【0072】
「C
3〜C
16非置換アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、3−エチルブチル基、4−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、5−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、6−エチルヘキシル基、4−プロピルヘキシル基、5−プロピルヘキシル基、6−プロピルヘキシル基、5−ブチルヘキシル基、6−ブチルへキシル基、6−ペンチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、3−エチルヘプチル基、4−プロピルヘプチル基、5−ブチルヘプチル基、6−ペンチルヘプチル基、7−ヘキシルヘプチル基、2−メチルオクチル基、3−エチルオクチル基、4−プロピルオクチル基、5−ブチルオクチル基、6−ペンチルオクチル基、7−ヘキシルオクチル基、8−ヘプチルオクチル基、2−メチルノニル基、3−エチルノニル基、4−プロピルノニル基、5−ブチルノニル基、6−ペンチルノニル基、7−ヘキシルノニル基、8−ヘプチルノニル基、2−メチルデシル基、2−メチルウンデシル基、2−メチルドデシル基、2−メチルトリデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルペンタデシル基、3,3−ジエチルプロピル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、4,4−ジプロピルブチル基、2−メチル−3−エチルペンチル基、2,3,4−トリメチルペンチル基、2−メチル−3−プロピルヘキシル基などが挙げられる。
【0073】
かかる「C
3〜C
16非置換アルキル基」は「C
6〜C
16非置換アルキル基」が好ましく、「C
6〜C
16直鎖状非置換アルキル基」がより好ましく、「C
6〜C
12直鎖状非置換アルキル基(すなわち、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等)」がさらに好ましく、とりわけ好ましくはn−ヘキシル基またはn−ドデシル基である。
【0074】
「水素原子の一部もしくは全部が、ハロゲン原子、C
3〜C
12脂環式炭化水素基、C
1〜C
6アルコキシ基、シアノ基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいフェニルアルコキシ基もしくは置換基を有していてもよいフェニルアルキルカルバメート基で置換されたC
1〜C
6アルキル基」において、「C
1〜C
6アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−エチルブチル基などが挙げられる。「C
1〜C
6アルキル基」は「C
1〜C
3アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)」が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでもフッ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましい。
「C
3〜C
12脂環式炭化水素基」は、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基であり、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、デカヒドロナフチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基などが挙げられる。「C
3〜C
12脂環式炭化水素基」は「C
6〜C
8の飽和脂環式炭化水素基(すなわち、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基)」が好ましく、より好ましくは、シクロヘキシル基、ノルボルニル基であり、さらに好ましくは、ノルボルニル基である。
「C
1〜C
6のアルコキシ基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状アルコキシ基であり、また、アルキル鎖にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−メトキシエトキシ基、n−エトキシエトキシ基、n−メトキシエトキシエトキシ基およびn−エトキシエトキシエトキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基またはn−プロポキシ基であり、より好ましくはエトキシ基である。
「置換基を有していてもよいフェニル基」は非置換のフェニル基または水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C
1〜C
6アルコキシ基等で置換されたフェニル基であり、例えば、フェニル基、p−フルオロフェニル基、p−クロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−プロポキシフェニル基、p−ブトキシフェニル基、p−ペンチルオキシフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−エトキシメトキシフェニル基、3,5−エトキシエトキシフェニル基、3,5−メトキシエトキシフェニル基がなど挙げられ、好ましくはフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、3,5−エトキシエトキシフェニル基であり、より好ましくはフェニル基、p−メトキシフェニル基である。
「置換基を有していてもよいフェニルアルコキシ基」は、非置換のフェニルアルコキシ基または水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C
1〜C
6アルコキシ基等で置換されたフェニルアルコキシ基であり、例えば、ベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、p−フルオロベンジルオキシ基、3,5−ジフルオロベンジルオキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基、3,5−ジメトキシベンジルオキシ基などが挙げられ、好ましくはベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、p−フルオロベンジルオキシ基、p−メトキシベンジルオキシ基であり、さらに好ましくはベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基である。
「置換基を有していてもよいフェニルアルキルカルバメート基」は非置換のフェニルアルキルカルバメート基または水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C
1〜C
6アルコキシ基等で置換されたフェニルアルキルカルバメート基であり、例えば、ベンジルカルバメート基、p−フルオロベンジルカルバメート基、3,5−ジフルオロベンジルカルバメート基、p−メトキシベンジルカルバメート基、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート基、p−メトキシベンジルカルバメート基、3,5−ジメトキシベンジルカルバメート基、フェニルエチルカルバメート基、フェニルプロピルカルバメート基が挙げられ、好ましくはベンジルカルバメート基である。
【0075】
R
2の好ましい態様は「C
6〜C
16非置換アルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子もしくはC
3〜C
12脂環式炭化水素基で置換されたC
1〜C
6置換アルキル基」であり、より好ましい態様は「C
6〜C
16非置換アルキル基、または、水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子もしくはノルボルニル基で置換されたC
1〜C
6置換アルキル基」であり、R
2の特に好ましい例としては、n−ヘキシル基、n−ドデシル基、2−ノルボニルメチル基、または2,2,2−トリフルオロエチル基が挙げられる。
【0076】
[式(III)の単位]
式(III)の単位は、アラニン単位、フェニルアラニン単位およびリジン誘導体単位を含む。
式中のR
3は、メチル基、ベンジル基または−(CH
2)
4−NHX基(但し、Xはハロゲン原子もしくはC
1〜C
6アルコキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC
1〜C
6アルキルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フルオレニルアルコキシカルボニル基、C
1〜C
6アルキル基もしくはニトロ基で置換されてもよいベンゼンスルホニル基、またはC
1〜C
6アルキルオキシカルボニル基を表す。)を表す。
【0077】
リジン誘導体単位、すなわち、式中のR
3が「−(CH
2)
4−NHX基」からなる単位において、
Xが「置換ベンジルオキシカルボニル基」である場合の置換基である「C
1〜C
6アルコキシ基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状アルコキシ基であり、また、アルキル鎖にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−メトキシエトキシ基、n−エトキシエトキシ基、n−メトキシエトキシエトキシ基およびn−エトキシエトキシエトキシ基が挙げられる。
また、Xが「C
1〜C
6アルキルカルボニル基」である場合の「C
1〜C
6アルキル基」、および、Xが「置換ベンゼンスルホニル基」である場合の置換基である「C
1〜C
6アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−エチルブチル基などが挙げられる。
なお、リジン誘導体単位は、式中のR
3が−(CH
2)
4−NH−CO−CH
2−C
6H
5であるN
ε−ベンジルオキシカルボニルリジン単位が好ましい。
【0078】
[式(IV)の単位]
式(IV)の単位は、グルタミン酸γ−エステル単位またはアスパラギン酸γ−エステル単位である。
式中のR
4は、C
1〜C
12アルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたC
1〜C
12アルキル基、または、C
1〜C
12アルキルカルボニル基を表し、m個のR
4は同一でも異なってもよい。
R
4における「C
1〜C
12アルコキシ基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、およびtert−オクチルオキシ基が挙げられる。なかでも、C
1〜C
6アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、またはtert−ブトキシ基等)が好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基がより好ましい。
【0079】
「水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されたC
1〜C
12アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。かかるハロゲン置換アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロジメチルエチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロブチル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロペンチル基、トリフルオロヘプチル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロノニル基、トリフルオロデシル基、トリフルオロウンデシル基、トリフルオロドデシル基、ペンタフルオロペンチル基、ヘプタフルオロペンチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘキシル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ヘンイコサフルオロウンデシル基、ヘプタデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサフルオロデシル基、ヘンイコサフルオロドデシル基、トリクロロメチル基、トリクロロエチル基、トリブロモメチル基、トリブロモエチル基、トリヨードメチル基、およびトリヨードエチル基が挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロエチル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0080】
「C
1〜C
12アルキルカルボニル基」は、直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソヘキシルカルボニル、3−メチルペンチルカルボニル、n−ヘプチルカルボニル、n−オクチルカルボニル、n−ノニルカルボニル、n−デシルカルボニル、n−ウンデシルカルボニル、およびn−ドデシルカルボニルを挙げることができる。なかでも、C
3〜C
9アルキルカルボニル基が好ましく、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソヘキシルカルボニル、n−ヘプチルカルボニル、n−オクチルカルボニルがより好ましく、n−ヘキシルカルボニルが特に好ましい。
【0081】
R
4の好ましい態様は、C
1〜C
6アルコキシ基、水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子で置換されたC
1〜C
12アルキル基、C
3〜C
9アルキルカルボニル基であり、R
4の特に好ましい例としては、メトキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、トリフルオロメチル基、またはn−ヘキシルカルボニル基が挙げられる。
【0082】
lは6〜12の整数、好ましくは6〜10の整数を表す。また、mは1〜3の整数、好ましくは1または2を表し、mが2または3の場合、2個または3個のR
4は同一でも、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0083】
[式(V)の単位]
式中のR
5は、水素原子、メチル基、−CH(OH)CH
3、C
3〜C
4分岐鎖状アルキル基、または、―(CH
2)
n−Z(但し、nは1〜4の整数、Zはヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、メチルスルファニル基、アミノ基、置換アリール基、アミノカルボニル基、−NH-C(NH
2)=NH、
【化15】
、または
【化16】
を表す。)を表す。
【0084】
「C
3〜C
4分岐鎖状アルキル基」は、好ましくはイソプロピル基、sec−ブチル基である。また、「―(CH
2)
n−Z基」におけるnは1〜4の整数である。また、Zにおける「置換アリール基」は、水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)またはヒドロキシ基で置換された、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、4−ヒドロキシフェニル基、フェニル基が挙げられ、特に好ましくは4−ヒドロキシフェニル基である。
【0085】
式(V)の単位の好ましい態様は、R
5が水素原子、4−アミノブチル基、4−ヒドロキシベンジル基、アミノカルボニルエチル基、または−(CH
2)
3−NH-C(NH
2)=NH基である単位である。
【0086】
かかる式(I)の単位〜式(V)の単位から選択される1種以上の単位を含有するポリα−アミノ酸は、式(I)の単位のホモコポリマー、式(II)の単位のホモポリマー、式(III)の単位のホモポリマー、式(IV)の単位のホモポリマー、および式(V)の単位のホモポリマーを含む。また、コポリマーである場合、式(I)の単位のうちの2種以上の単位からなるコポリマー、式(II)の単位のうちの2種以上の単位からなるコポリマー、式(III)の単位のうちの2種以上の単位からなるコポリマー、式(IV)の単位のうちの2種以上の単位からなるコポリマー、式(V)の単位のうちの2種以上の単位からなるコポリマー、および式(I)の単位〜式(V)の単位のうちの2以上の異なる式の単位からなるコポリマーを含む。コポリマーの重合形態は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0087】
なお、ポリα−アミノ酸において、式(I)〜式(V)の単位を構成するα−アミノ酸はいずれもL体でも、D体でもよいが、好ましくは、L体である。
【0088】
ホモポリマーの具体例としては、ポリ(DL−アラニン)、ポリ(γ−メチル−L−グルタミン酸)、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタミン酸)、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(L−リジン)、ポリ(L−チロシン)、ポリ(L−グリシン)等が挙げられる。
【0089】
コポリマーの好ましい態様としては、
式(I)の単位のうちの2種以上の単位を含むコポリマー(例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ベンジル−L−グルタミン酸コポリマー(好ましくは、γ−メチル−L−グルタミン酸(5〜95モル%)/γ−ベンジル−L−グルタミン酸(5〜95モル%)コポリマー))が挙げられる。また、(A):式(I)の単位のうちの1種以上の単位と、(B):式(II)の単位、式(III)の単位、および式(IV)の単位から選択される1種以上の単位とを含むコポリマーが挙げられる。特に好ましい態様は、(A):式(I)の単位のうちの1種以上の単位と、(B):式(II)の単位、式(III)の単位、および式(IV)の単位から選択される1種以上の単位とを含むコポリマーである。
(A)の単位と(B)の単位とを含むコポリマーにおいては、より良好な圧電性のポリα−アミノ酸が得られる点から、(A)の単位が、式(I)中のR
1がベンジル基である、グルタミン酸γ−ベンジルエステル単位からなるコポリマーが特に好ましい。また、(B)の単位が式(II)の単位もしくは式(IV)の単位からなるコポリマーである場合、コポリマーはランダム共重合体であるのが好ましく、(B)の単位が式(III)の単位からなるコポリマーである場合、コポリマーはブロック共重合体であることが好ましく、(A)−(B)型ブロック共重合体または(A)−(B)−(A)型ブロック共重合体が特に好ましい。
【0090】
(A)の単位と(B)の単位とを含むコポリマーの全単位中における(A)の単位の含有量は、(B)の単位の種類によって異なるが、0.01モル%〜90モル%が好ましい。上限値は、85モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。下限値は0.1モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましく、10モル%がさらにより好ましく、15モル%がさらに好ましく、20モル%がさらに好ましく、40モル%がさらに好ましい。
【0091】
また、(B)の単位の含有量は、(B)の単位の種類によって異なるが、10モル%〜99.99モル%が好ましい。上限値は、99.9モル%が好ましく、99モル%がより好ましく、95モル%がさらに好ましく、90モル%がさらに好ましく、85モル%がさらに好ましく、80モル%がさらに好ましく、60モル%がさらにより好ましい。下限値は、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、40モル%がさらにより好ましい。(B)の単位が式(IV)の単位である場合、下限値は、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、80モル%がさらにより好ましい。
【0092】
(A)の単位と(B)の単位とを含むコポリマーが、式(I)の単位と式(II)の単位とからなるコポリマーである場合、例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸(15〜85モル%)/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸(15〜85モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−ドデシル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−ドデシル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(30〜70モル%)/γ−2,2,2−トリフルオロエチル−L−グルタミン酸(30〜70モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体、またはγ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)共重合体が好ましい。
【0093】
また、式(I)の単位と式(III)の単位とからなるコポリマーである場合、例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸(20〜80モル%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(20〜80モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(40〜60モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−フェニルアラニン(40〜60モル%)共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−フェニルアラニン(40〜60モル%)共重合体、またはγ−ベンジル−L−グルタミン酸(40〜60モル%)/L−アラニン(40〜60モル%)共重合体が好ましい。
【0094】
また、式(I)の単位と式(IV)の単位とからなるコポリマーである場合、例えば、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル%)/γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル%)/γ−(6−(p−ヘキシルカルボニルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル〜16モル%)/γ−(10−(p−メトキシフェノキシ)−1−デシル)−L−グルタミン酸(84〜>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル〜8モル%)/γ−(6−(p−ブトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(92〜>99モル%)共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル〜14モル%)/γ−(6−(p−ヘキシルオキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸(86〜>99モル%)共重合体、またはγ−メチル−L−グルタミン酸(<1モル〜8モル%)/γ−(6−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシ)−1−ヘキシル−L−グルタミン酸(92〜>99モル%)共重合体等が好ましい。
【0095】
ポリα−アミノ酸の分子量は特に限定されないが、ポリα−アミノ酸の圧電性および製膜性の観点から、重量平均分子量(Mw)が1,000〜5,000,000が好ましく、5,000〜2,500,000がより好ましく、10,000〜2,000,000がさらに好ましい。
【0096】
ポリα−アミノ酸の調製方法は特に限定されず、自体公知のポリα−アミノ酸の製造方法を採用できる。一般的には、式(I)の単位、式(II)の単位、式(III)の単位、式(IV)の単位、または式(IV)の単位となるN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物またはN−カルボキシ−α−アミノ酸誘導体無水物を適宜混合して有機溶剤または水に溶解または懸濁させ、必要に応じてこれに重合開始剤を加えて共重合する方法を挙げることができる。例えば、上記の(A)の単位と(B)の単位とを含むコポリマーを製造する場合、(A)単位となるN−カルボキシ−α−グルタミン酸γ−メチルエステル無水物あるいはN−カルボキシ−α−グルタミン酸γ−ベンジルエステル無水物と、(B)単位となるN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物またはN−カルボキシ−α−アミノ酸エステル誘導体無水物を適宜混合して有機溶剤または水に溶解または懸濁させ、必要に応じてこれに重合開始剤を加えて共重合する方法を挙げることができる。また、(B)の単位が式(II)の単位もしくは式(IV)の単位からなるコポリマーを調製する場合、N−カルボキシ−α−グルタミン酸無水物またはN−カルボキシ−α−グルタミン酸γ−エステル無水物を有機溶媒または水に溶解または懸濁させ、必要に応じてこれに重合開始剤を加えて、重合させ、ポリα−グルタミン酸またはポリα−グルタミン酸γ−エステルを調製した後、原料となる特定のアルコール1種もしくは2種以上をポリα−グルタミン酸またはポリα−グルタミン酸γ−エステルのグルタミン酸単位に対して適量加え、必要に応じて触媒を加えて、γ位にエステルを導入し、またはγ位のエステルを変換することで調製する方法を挙げることができる。
【0097】
前記有機溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、石油エーテル、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロアセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびトリブチルアミンを挙げることができる。有機溶媒は1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
前記重合開始剤の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、イソホロンジアミン等の一級ジアミン;メチルアミン、エチルアミン、および1−プロピルアミン等の一級モノアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、およびジエタノールアミン等のアルコールアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、およびジプロピルアミン等の二級アミン;N,N−ジメチルエチレンジアミン、およびN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級三級ジアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびトリブチルアミン等の三級アミン;ポリエーテルジアミン、およびポリエステルジアミン等のアミノ基含有ポリマー;メタノール、およびエタノール等の一級アルコール;イソプロパノール等の二級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、およびヘキサメチレングリコール等のグリコール類;ポリエーテルジオール、およびポリエステルジオール等の水酸基含有ポリマー;チオール類等を挙げることができる。重合開始剤は、1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0099】
前記触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、シアン化カリウム、二酸化炭素、チタン(IV)テトライソプロポキシド、1,3−置換型テトラアルキルジスタンノキサンスズ(IV)錯体、テトラシアノエチレン、4−ジメチルアミノピリジン、およびジフェニルアンモニウムトリフラート−トリメチルシリルクロリドを挙げることができる。触媒は1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
触媒量は、反応により適宜設定されるが一般には、適切な反応時間を実現し、反応後の触媒除去が困難とならない範囲で適宜選択することができ、例えば、使用するアミノ酸無水物のモル数に対して0.0001〜1当量、好ましくは0.01〜0.75当量、より好ましくは0.1〜0.5当量とすることができる。
【0101】
原料となるアルコールの量は、反応により適宜設定されるが一般には、側鎖の変換が十分に行われ、未反応アルコールの除去が困難とならない範囲で適宜選択することができ、例えば、ポリα−アミノ酸のグルタミン酸単位に対して0.01〜50当量、好ましくは0.1〜25当量、より好ましくは0.15〜20当量とすることができる。
【0102】
圧電性を示す有機材料を導体部同士の間の隙間に充填または空隙が存在するように配置する方法としては、例えば、
図4(a)、(b)に示すように、基板2上に導体部2aやそれに接続された配線回路(図示せず)を形成し、さらにその上に貫通孔3aを有するスペーサー3を積層し、該貫通孔内の底面に導体部2aの上面を露出させておき、この状態で、圧電性を示す有機材料(上記ポリα−アミノ酸など)を含有するインキ(またはペースト)4aを印刷法によって貫通孔3a内に注入するという方法が例示される。
図4(a)、(b)は、スクリーン印刷による充填例を示す模式図であり、スクリーンPに形成された透過口P1が、スペーサー3に形成された貫通孔3aの開口に位置合わせされ、スキージQが矢印の方向に移動してスクリーンを擦り、スクリーンPのインキ4aが透過口P1を通過し、直下の貫通孔3a内に押し込まれている。同図中の波線P2はスクリーンのメッシュを示唆しており、透過口P1内に露出している。
図4(a)の態様では、スクリーンPに形成された透過口P1の形状が、スペーサー3に形成された貫通孔3aの開口形状と一致しており、貫通孔内全体にインキ4aが充填されている。この上に導体部を有する基板が積層されると、
図1(a)に示すメンブレンスイッチが得られる。
また、
図4(b)の態様では、スクリーンPに形成された透過口P1の形状が、スペーサー3に形成された貫通孔3aの開口形状よりも小さく、導体部2aの上面の特定の領域だけにインキ4aが充填されている。この上に導体部を有する基板が積層されると、
図1(c)に示すように、導体部同士の間の特定の領域(例えば、中央領域)だけに圧電性を示す有機材料が充填されたメンブレンスイッチが得られる。
印刷方法は、上記スクリーン印刷のみならず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などであってもよい。また、マイクロコンタクトプリンティングやマイクロモルディングなど、ソフトリソグラフィーと呼ばれる技法も印刷法に含まれる。
印刷によって貫通孔内に圧電性を示す有機材料を注入するという方法は、コスト、膜厚制御などの観点からは、好ましい方法である。
また、印刷以外に空隙に圧電材料を注入する方法としては成形・切断した有機圧電材料を接着剤・接着フィルムを介して貼合したり、熱圧着したりする方法、溶融させたものを注入する方法などが挙げられる。
【0103】
上記印刷法にポリα−アミノ酸含有インキを用いる場合、インキに使用される有機溶媒としては種々のものを使用でき、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのクロロ炭化水素系溶媒、パーフルオロ−tert−ブタノール、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール等のフッ素含有分岐アルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノンなどのアルキルケトン系溶媒、安息香酸メチル、安息香酸エーテル、安息香酸ブチルなどの安息香酸エステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびソルベントナフサなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒、メチルセロソルブアセテート、メトキシプロピルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられる。
有機溶媒は1種の溶媒を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
好ましくは、含窒素極性溶媒、炭化水素ケトン系溶媒、安息香酸エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒から選択される1種以上である。また、一般的に印刷法では印刷中にインキが乾いて粘度が変化することを避けるために沸点が150℃以上の溶剤を用いることが好ましい。
【0104】
ポリα−アミノ酸含有インキ中のポリα−アミノ酸の濃度は均一な製膜が達成できれば特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、40〜50重量%がより好ましい。
【0105】
好ましい圧電性を得るためには、ポリα−アミノ酸含有インキ中には、ポリα−アミノ酸の合成に使用された触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸等、上述の触媒が挙げられる)が、ポリα−アミノ酸含有インキ中に実質的に含まれないことが好ましい。残留触媒の濃度は6.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。
【0106】
圧電性を示す有機材料を導体部同士の間の隙間に充填または空隙が存在するように配置する他の方法としては、圧電性を示す有機材料からなるフィルムを所定の外形および所定の厚さに形成し、接着剤層を介して導体層に貼付するという方法が挙げられる。
【0107】
本発明のメンブレンスイッチは、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の部材を任意で加えることができる。例えば、一方の基板の外面におもて面用フィルムをさらに積層し、他方の基板の外面に裏面用フィルムをさらに積層する態様や、外界からのノイズを遮断するシールド用の導体層を一方または両方の基板の外面に付与する態様が挙げられ、各層同士の間には接着剤層を適宜介在させることができる。
また、加飾層を設けて表面をその用途によってデコレーションしたり、封止層を設けて耐久性の向上を目指したり、接着層をさらに設けておき、本発明のメンブレンスイッチを用いた種々の製品の組立て等に、該接着層を利用しても良い。
【0108】
本発明のメンブレンスイッチは種々のセンサーと組み合わせて使用することができる。例えば温度、加速度、放射線などのセンサーと組み合わせると、複数の情報を同時にセンシングすることが可能になる上に、温度などの情報を本発明のスイッチの出力の補正に用いることもできる。
【0109】
本発明のメンブレンスイッチを種々の物品に適用することによって、即ち、当該メンブレンスイッチを種々の物品の表層に沿って配置(表面に現れる配置、表面に現れない配置を含む)することによって、外部から加えられた圧力に応じた信号を発する機能が付与された物品が得られる。また、圧電性を示す部分の材料として上記有機材料を用いているので、既存のスイッチやセンサーと比較すると安価で大面積の作成が可能となる。
これは、既存のキーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどとは異なり、まったく新しい形態の、人とコンピュータのインターフェースとなりえ、幅広い用途での応用が期待される。
例えば、ロボットの表面に使用すれば、何かが触れたことや触れた強さに応じた各部の信号が得られるので、該ロボットに触覚を付与することができる人口皮膚となる。スマートフォンやタブレット端末、PC本体にあるタッチパネルの代わりとして使用すれば、既存のタッチパネルでは、タッチしているXとYの座標しか信号として得られないが、本発明のメンブレンスイッチを用いればタッチしている強さを信号としてコンピュータに伝えることができる。
【0110】
また、ベッド、マット、イス(ソファー、車イス、乗り物(自動車、鉄道車両、航空機など)の座席部をも含む)などの荷重を受ける部分の表層に沿って当該メンブレンスイッチを配置すれば、使用者から受ける荷重の分布に応じた各部の信号が得られるので、面内の分布荷重を可視化することが可能になり、体圧の測定が可能となり褥瘡の防止などが可能となる。また、圧力センサーの数字を解析することで脈拍や呼吸などをセンシングすることが可能となり体調等をデータ化することが可能となる。
前記のような用途のために、外部機器として、表示装置、プリンター、入力装置などを備えたコンピュータと適宜接続してもよい。
以下に、より具体的な応用例を挙げる。
ベッド、マット、イス、シート等の支持体面に、微小振動を検出するセンサー素子を複数配設し、生体の脈拍(心拍)、呼吸、体動などの生体信号の強度分布を測定する種々の測定装置が知られている。本発明のメンブレンスイッチは、このような測定装置においてベッド等に配置される1以上のセンサー素子の替りに用いてよい。各センサー素子の替りに用いた当該メンブレンスイッチから得られる信号は、適宜、電圧変換、デジタル変換を行い、生体信号として処理を行えばよい。また、当該メンブレンスイッチの出力から所定の周波数帯域の生体信号を抽出するためのフィルタや、各スイッチ部分ごとの生体信号の強度値を演算する演算部を適宜設け、当該メンブレンスイッチに含まれる各スイッチ部分の配置と、前記強度値とを対応付けて、強度分布を生成してもよい。
前記のようなベッドやイスは、ソファーベッドや病院のベッドのように、姿勢変更式(平坦なベッドから、背もたれ部などを持った形態へと折り曲げて変更し得る構成)であってよい。また、その場合、それぞれの姿勢に応じて、複数配設された各スイッチ部分から得られる生体信号に重み付けをすれば、該生体信号をより精度良く抽出することができる。このように、本発明のメンブレンスイッチをセンサー素子の替りに用いる場合には、種々の信号処理を適宜に加えてもよい。
また、心拍や脈拍に関する振動信号は微小であるため、外部からの振動ノイズによって、心拍が検出困難な場合がある。このような問題に対して、本発明によるメンブレンスイッチの各スイッチ部分を、2以上、ベッド等に配置し、生体振動を全ての各スイッチ部分で検知する構成とする。このとき、振動ノイズも各スイッチ部分によって振動要素として検出される。しかし、呼吸、心拍、体動の生体振動は、全てのセンサー素子で同じタイミングであるため、各センサー素子からの共通情報である呼吸、心拍、体動の発生タイミングを見ることで、外部からの振動ノイズを演算により効果的に排除することもできる。
以上のように、本発明を圧力センサーの替りに用いることによって、ベッド、マット、シート等の支持体面に分布する生体信号の強度分布を好ましく測定し得る装置が得られる。
【0111】
さらに、足圧測定シート(足の裏のどの領域部分がどれほどの荷重を地面に伝えているかを測定するシート)、歯の噛み合わせ測定器(上下の歯の間に挟んで噛むことによって、どの歯がどれほどの圧縮荷重を対象物に作用させているかを測定するシート)など、当該メンブレンスイッチのシート状の形態をそのまま利用して物品を構成することによって、シート状の圧力測定器を構成することが可能になる。
いずれの場合も、当該メンブレンスイッチをシート状の感圧ヘッド部として機能するように用い、外部の計測装置によって各導体部間の電流の変化や静電容量の変化を測定し得るように構成すればよい。
さらにまた、本発明のメンブレンスイッチは、圧電式加速度センサ、ジャイロセンサ等、圧電素子を用いることが知られている各種センサに、圧電素子の代替品として用いることができる。
さらにまた本発明のメンブレンスイッチを種々の物品の表層に沿って配置(表面に現れる配置、表面に現れない配置を含む)することによって、外部から加えられた圧力に応じて生じる電圧等を利用した発電装置、エネルギーハーベスティング装置(微小なエネルギーを集めて電力等にする装置)等の物品も得られる。
さらにまた本発明のメンブレンスイッチを種々の物品の表層に沿って配置(表面に現れる配置、表面に現れない配置を含む)することによって、外部から加えられた電圧等の電気信号に応じて生じる駆動力等を利用したアクチュエーター等の物品も得られる。
本発明のメンブレンスイッチには、エネルギーハーベスティングなど従来のメンブレンスイッチの延長では考えられなかった用途も期待される。本発明のメンブレンスイッチで発生した電荷を整流回路に通したのちコンデンサなどに蓄電すれば、そのエネルギーが利用可能になる。蓄えられた電気エネルギーは、当該メンブレンスイッチに接続される各種回路を駆動するための電源として利用可能であり、外部電源、電池が不要の自己発電型センサーを構成することが可能となる。また、当該メンブレンスイッチと組み合わせて使用される各種センサーの電源としても利用可能である。
【0112】
以下に実験例等を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実験例等に限定されるものではない。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0114】
[ポリα−アミノ酸の合成]
合成例1:γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体の合成
(ステップ1)ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸の合成
1,2−ジクロロエタン410ml(関東化学社製)にN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(54.92g、293.45mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(366μl、2.93mmol、関東化学社製)を加え、25℃で1日間攪拌を行い、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸を得た。下記の方法(測定法1)で重量平均分子量Mwを測定した。重量平均分子量Mwは1.9×10
4であった。
(ステップ2)ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸の側鎖置換反応(エステル交換反応)
上記で調製したポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸9.3gを1,2−ジクロロエタン45mlに溶解させ、1−ヘキサノール(16ml、130.00mmol、東京化成工業社製)ならびにp−トルエンスルホン酸1水和物(1.24g、6.50mmol、東京化成工業社製)を加え、80℃で1日間攪拌してエステル交換反応を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の重合体の組成を測定した。
【0115】
合成例2〜3、5〜6、8〜13:各種ポリα−アミノ酸の合成
合成例1と同様の方法により、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸を得た後、1,2−ジクロロエタンに溶解させ、表1(導入アルコールの欄)に示すアルコールをポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸のグルタミン酸単位に対して適量加え、触媒量のp−トルエンスルホン酸1水和物を加え、1〜5日間攪拌を行う手順により、各種ポリα−アミノ酸(共重合体)を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の重合体の組成を測定した。
【0116】
合成例4:γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体の合成
(ステップ1)ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸の合成
1,2−ジクロロエタン265ml(関東化学社製)にN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(44.2g、167.98mmol)と開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(208.2μl、1.68mmol)を加え、25℃で3日間攪拌を行い、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸を得た。下記の方法(測定法1)で重量平均分子量Mwを測定した。重量均分子量Mwは2.2×10
4であった。
(ステップ2)ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸の側鎖置換反応(エステル交換反応)
上記で調製したポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(10g、45.6mmol)を1,2−ジクロロエタン170mlに溶解させ、1−ドデカノール(10.2ml、45.6mmol、東京化成工業社製)ならびにp−トルエンスルホン酸1水和物(2.6g、13.68mmol)を加え、65℃で1日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反応後の重合体の組成を測定した。
【0117】
合成例7:γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体の合成
合成例4と同様の方法によりポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸を得た後、1,2−ジクロロエタンに溶解させ、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸のグルタミン酸単位に対して、当量のノルボルナン−2−メタノール(東京化成工業社製)と触媒量のp−トルエンスルホン酸1水和物を加え、65℃で4日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体を得た。得られた共重合体について、下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)でエステル交換反後の重合体の組成を測定した。
【0118】
【表1】
【0119】
合成例14:γ−メチル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体の合成
1,2−ジクロロエタン130mlにN
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(4.02g、13.12mmol)ならびにN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(2.46g、13.12mmol)を入れ、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(32.78μl、0.262mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0120】
合成例15〜18:各種コポリマーの合成
合成例14と同様にして、1,2−ジクロロエタンに表2に示す2種のN−カルボキシ−L−アミノ酸無水物(成分A、成分B)を等モルずつ入れ、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンをアミノ酸無水物に対して1/100当量分加え、2〜3日間攪拌を行い、各種ポリアミノ酸共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0121】
【表2】
【0122】
合成例19:γ−メチル−L−グルタミン酸(68%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック(32%)共重合体合成
1,2−ジクロロエタン20mlにN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(5.00g、26.72mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(66.80μl、0.534mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行った後、再び0℃まで冷却し、1,2−ジクロロエタン20mlを加えた後、N
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(4.09g、13.36mmol)を添加して、25℃で1日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0123】
合成例20:γ−メチル−L−グルタミン酸(41%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(18%)−γ−メチル−L−グルタミン酸(41%)ブロック共重合体の合成
合成例19と同様にして、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体を得た後、再び0℃まで冷却し、1,2−ジクロロエタン10mlを加えた後、N−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(5.00g、26.72mmol)を添加して、25℃で2日間攪拌を行い、γ−メチル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン−γ−メチル−L−グルタミン酸ブロック共重合体を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0124】
合成例21:γ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)ブロック共重合体(低分子量体)の合成
1,2−ジクロロエタン10mlにN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(1.00g、3.80mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(9.56μl、0.076mmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行った後、再び0℃まで冷却し、N
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(1.16g、3.80mmol)を添加して、25℃で1日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体(低分子量体)を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0125】
合成例22:γ−ベンジル−L−グルタミン酸(53%)−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(47%)ブロック共重合体(高分子量体)の合成
1,2−ジクロロエタン10mlにN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(1.00g、3.80mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(0.48μl、3.8μmol)を加え、25℃で1日間攪拌を行った後、再び0℃まで冷却し、N
α−カルボキシ−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン無水物(1.16g、3.80mmol)を添加して、25℃で3日間攪拌を行い、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンブロック共重合体(高分子量体)を得た。下記の方法(測定法1)で共重合体の重量平均分子量Mwを測定した。また、下記の方法(測定法2)で共重合体の組成を測定した。
【0126】
【表3】
【0127】
[ポリアミノ酸の物性測定]
測定法1:重量平均分子量の測定方法
重量平均分子量Mwはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。具体的には、分析カラム装置(昭和電工社製、Shodex K−802ならびにK−806M)をGPC用分析装置(日立社製、LaChrom Elite)に取り付け、別途調製した測定溶液を10〜80μl注入し、溶離液流速:1ml/分、カラム保持温度:40℃の条件にて測定を行った。測定溶液は、ポリアミノ酸濃度が0.25〜3.0%(w/v)となるようにクロロホルムに溶解させた後、フィルター濾過を行うことで調製した。得られたピークの保持時間と別途測定した較正用ポリスチレン(昭和電工社製、Shodex STANDARD SM−105)のピークの保持時間を比較することで、重量平均分子量Mwを算出した。
【0128】
測定法2:エステル交換反応後の共重合体の組成測定方法
サンプル十数mgを重クロロホルムもしくは重トリフルオロ酢酸に溶解した後、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1HNMR、BRUKER社、400MHz)を分析し、エステル交換前後もしくは共重合時のアミノ酸のα位のプロトンのピーク面積を比較することで、組成を算出した。測定例を以下に示す。
【0129】
γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体の組成測定
合成した共重合体10mgを重トリフルオロ酢酸に溶解し、
1HNMRを測定したところ、3.8ppm付近にγ−メチル−L−グルタミン酸のメチル基由来ピークが、また4.7ppm付近にγ−メチル−L−グルタミン酸およびγ−ヘキシル−L−グルタミン酸のα位のプロトンに由来するピークが検出された。3.8ppm付近のピーク面積をA、4.7ppm付近のピーク面積をBとするとA/B=1.17であった。ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸の場合は、A/B=3.00であることから、減少分だけヘキシル基に置換していると考えられる。従って、ヘキシル基の含有率は、1.83/3.00=0.61から61%となる。故に共重合体の組成は、γ−メチル−L−グルタミン酸(39%)/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸(61%)となる。
【0130】
γ−ベンジル−L−グルタミン酸/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体の組成測定
合成した共重合体10mgを重トリフルオロ酢酸に溶解し、
1HNMRを測定したところ、5.1ppm付近にN
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンのベンジル基およびγ−ベンジル−L−グルタミン酸のベンジル基由来ピークが、また4.7ppm付近にγ−ベンジル−L−グルタミン酸、4.4ppm付近にN
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンのα位のプロトンに由来するピークが検出された。5.1ppm、4.7ppm、4.4ppm付近のピーク面積をそれぞれA、B、CとするとA/B=4.00、A/C=4.00、B/C=1.00であった。B、Cはともにプロトン1個分の面積を表しているので、共重合体の組成はγ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)/N
ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)となる。
【0131】
上記2例に示したとおり、γ−メチル−L−グルタミン酸を含む場合は、メチル基とα位のピーク面積、γ−ベンジル−L−グルタミン酸を含む場合は、ベンジル基とα位のピーク面積を比較することでエステル交換反応後の共重合体の組成を算出することができる。
【0132】
評価法3:圧電性の測定
合成例1、3、4、6、7、15、19、20、21、22のポリα−アミノ酸の圧電性を確認した。
電極としてITO(酸化インジウムスズ)を蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚み:125±5μm、縦:18mm、横:12mm)上に、圧電体膜として、ポリα―アミノ酸溶液から適当な溶媒を使用し、キャスト法によりポリマー薄膜を作製した。この薄膜を、ITO電極を蒸着したPET基板で挟み込むことで素子を作製し、作製した素子に負荷(約6kg)をかけた際に発現する起電力を、KEITHLEY社製のソースメータを用いて室温(20℃)で測定した。
【0133】
【表4】
【0134】
なお、使用した、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸(Mw:3.3×104)、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(Mw:3.8×104)は、シグマアルドリッチ社から商業的に入手可能である。
【0135】
表4より、本願のポリアミノ酸は圧電性を有することが示されている。
【0136】
[配合例1:ポリアミノ酸インキの作成]
合成例21で作成したγ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)−Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)ブロック共重合体を過剰量のエーテルに添加して再沈殿を行い、沈殿を真空ポンプにて終夜乾燥を行った。得られたγ−ベンジル−L−グルタミン酸(50%)−Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン(50%)ブロック共重合体の固体36重量部、シリカ粒子4重量部、カルビトールアセテート30重量部、γ−ブチルラクトン30重量部をあわとり練太郎ARE−310(株式会社シンキー製)にて均一になるまで5〜30分程度攪拌した。これを3本ロールにて混合することによりポリアミノ酸インキを作成した。
【0137】
使用した成分の詳細は以下の通りである。
シリカ粒子:日本アエロジル製、商品名「RY−200」、粒子径比表面積:100m
2/g
カルビトールアセテート(EDGAc):関東化学社製
γ−ブチルラクトン(GBL):純正化学製
【0138】
[作製例1:メンブレンスイッチの作製]
以下の作製法に基づいて
図1(a)に示すメンブレンスイッチを作製した。
厚さ50μ、1辺100mmの正方形のポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン(登録商標)200H」)を基板として用い、該基板の面上の中央に導電性銀ペースト(トーヨーケム株式会社製「RA FS 059」)を用いて、1つの正方形(1辺25mm)の導体部と、該導体部に接続された幅500μmの配線回路を形成した。より詳細には、前記導電性銀ペーストを、スクリーン印刷法を用いてポリイミドフィルム上に導体部と配線回路を描くように堆積させ、150℃で5分間乾燥した後、250℃で5分間焼成して導体層とした。焼成後の導体部と配線回路のそれぞれの厚さの実測値はいずれも8μmであった。
前記の基板は、2枚を対向させるために、1つのサンプルについて同じ構成のものを2枚作成した。本例では、導体部と配線回路が単純な形状であるため、2枚の基板の構成は互いに同一となっているが、一方の基板上の(導体部、配線回路)と、他方の基板上の(導体部、配線回路)とは、合わせたときに一致するよう互いに鏡像的に対応する関係にある。
上記2枚の基板の一方に、導体部の4辺と並行に、かつ、該導体部の外周縁部を全周にわたって幅1mmだけ覆うように、粘着剤層付きポリイミドテープ(東レ・デュポン株式会社製「カプトンテープ」、厚さ100μm)を4枚貼り付けて、該導体部の周囲を取り囲みスペーサーとした。これは、スペーサーを別部材として形成し貼り付ける場合を想定した試作用の形成方法であって、貫通孔をプレスで打ち抜く場合を模したものである。
導体部の外形が1辺25mmの正方形であるのに対して、4枚のポリイミドテープによって囲まれて形成された中央の貫通孔の開口形状は、1辺23mmの正方形となっている。
上記基板のスペーサーの該貫通孔に、上記合成例21で合成したポリアミノ酸溶液(溶媒:1,2−ジクロロエタン、溶液濃度12.8%(w/w))を、そのまま200μL滴下して、該貫通孔内を該溶液で充填し、常温にて1日乾燥して溶剤を除去し、圧電性を示す有機材料の層を形成した。
スペーサーと圧電性を示す有機材料を形成した基板の上に、初めに作成した他方の基板を導体部が下となるように重ね、基板の外周縁部を両面粘着テープで固定し、本発明のメンブレンスイッチを得た。
試験用として、前記の製造手順にて、同じ構成のサンプルを計4個作製した。
【0139】
尚、合成例1、3、4、6、7、15、19、20、22のポリアミノ酸溶液の場合も、作製例1と同様に、それぞれ表5の溶液を貫通孔に充填して、本発明のメンブレンスイッチを得る。
【0140】
[作製例2:メンブレンスイッチの作製]
(上基板(第1の基板)、下基板(第2の基板)に共通の工程)
銅箔付きポリイミド(パナソニック株式会社製「FELIOS フィルム25μm−銅箔9μm」)にドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン株式会社製「ALPHO NIT4015」)を用いてサブトラクティブ法にて導体部(1辺25mm)と配線パターンを形成した。
ドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン株式会社製「ALPHO NIT4015」)を用いて、導体部の表面および配線部の端部(最後にコネクター部になる場所)以外をめっき用のレジストとして覆い、導体部表面および配線部の端部に無電解Niめっき(厚さ3μm)を施し、さらにその上に電界Auめっき(厚さ0.03μm)を施し、2層構造の導体部、配線部を得た。
ドライフィルムを剥離した後、フレキシブル基板用のソルダーレジストインキ(味の素ファインテクノ株式会社製「AE−70−M11」)を印刷することでスペーサーを作成した(硬化後の最終厚さが、ポリイミド基板の上面から20μm、Au層の上面から8μmとなるように材料を配置した)。
また、上記作成例1と同様に、導体部の外形を1辺25mmの正方形としたのに対して、レジストインキにて囲まれて形成された中央の貫通孔の開口形状は、1辺23mmの正方形とした。即ち、該レジストインキは、導体部の外周縁を全周にわたって幅1mmだけ覆っている。
レジストインキは100℃で30分加熱して溶剤を揮発させて半硬化の状態とした。
(下基板(第2の基板)のみの工程)
半硬化したレジストインキで形成した開口内に配合例1で作成したポリアミノ酸インキを硬化後の最終厚さが10μmとなるようにスクリーン印刷にて形成した。これを150℃で30分加熱することでポリアミノ酸インキの溶剤を揮発させると同時にレジストインキの本硬化を行った。
(第1、第2の基板の貼り合わせ)
上記(上基板(第1の基板)、下基板(第2の基板)に共通の工程)で得られた第1の基板と、上記(下基板(第2の基板)のみの工程)で得られた第2の基板とを、熱ロールラミネーターにて貼り合せた。
その後、両基板のそれぞれの配線を導通させるべき部分には、ACFを介在させ、アイロンを用いて貼り合せて、両配線同士を導通させた。これを150℃で30分加熱することで、半硬化であった第1の基板のレジストインキ、ACFの本硬化を行った。
【0141】
【表5】
【0142】
評価法1:メンブレンスイッチに荷重を加えて得られる信号の評価
卓上型精密万能試験機(株式会社島津製作所製「AGS−Xシリーズ」、使用ロードセル10N)を用いて、上記作製例1で得られたメンブレンスイッチの4つのサンプルに対して、それぞれ、直径20mmの円盤を介して導体部の中央に荷重を加え、荷重の増大に伴って変化する導体部同士の間の静電容量の値を測定した。
静電容量の測定では、LCRメータ(アジレントテクノロジー株式会社製「4284AプレシジョンLCRメータ」)を用い、測定周波数30Hzにて、荷重0.5〜7.5Nの間で荷重を変化させて複数点の静電容量を測定した。
[作成例1]のメンブレンスイッチについて加えた荷重に対する静電容量の傾きを最小二乗法で計算したところ0.55pF/N、相関係数を計算したところ平均0.98であった。これにより、静電容量の変化を電気信号として取り出せば、当該メンブレンスイッチに作用した力と強い相関関係を持った信号が得られることが分かった。