特許第6237660号(P6237660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237660
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】カードコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/73 20110101AFI20171120BHJP
【FI】
   H01R12/73
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-12944(P2015-12944)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-139497(P2016-139497A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 裕康
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06908322(US,B1)
【文献】 登録実用新案第3147848(JP,U)
【文献】 特開2003−242457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードコネクタ本体のハウジングと、
前記ハウジング内に搭載されていてカードのプッシュイン又はプッシュイジェクトの際に可動するスライダーと、
前記ハウジングと前記スライダーとの間に接続されるピンと、
を備える、プッシュイン/プッシュイジェクト方式のカードコネクタにおいて、
前記ハウジングは前記ピンの略垂下する部分を受けるピン溝が形成されており、
当該ピン溝の最上部と前記ピンとの接続箇所が、前記ピンと前記スライダーとの接続箇所よりも高い位置にある、カードコネクタ。
【請求項2】
前記ピンは、前記スライダー側の端部に鉤状部分を含み、
前記スライダーは、底面に支持孔が形成されていて、当該底面と天井面との間が中空となっていて、
前記ピンの端部の先端が前記中空又は前記天井面に接するように位置し、かつ、前記鉤状部分が当該支持孔を通る態様で、前記ピンと前記スライダーとが接続される、請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ピンは、直線状の第1部分と、前記略垂下部分を含む第2部分と、前記鉤状部分を含む第3部分とを備える、請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項4】
請求項1記載のカードコネクタと、前記カードコネクタが固定される装置とを備える、カードコネクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタに関し、特に、プッシュイン/プッシュイジェクト方式のカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、循環カムを用いたイジェクト機構付きカード用コネクタにおいて、循環カムを摺動するピンを常時安定的に押させることができ、しかも、ピンの長さを長くする必要のないカード用コネクタを提供することが開示されている。このコネクタは、コネクタに対するカードの挿抜時に、カードの動きに応答して、ピンがカードの挿抜方向沿いに循環カムの溝の上を摺動するように構成されており、ピンの摺動時に、ピンの所定部付近を循環カムの溝に向かって押さえつける弾性部材が、カードの挿抜方向に沿って複数設けてある。
【0003】
【特許文献1】特開2007−12550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、特許文献1に開示されているカードコネクタにおけるピンに係る応力を説明するためのモデル図である。図5には、ピン20と、ピン20の支点30と、ピン20が係止されるピン溝10とを示している。支点30は、イジェクタ(図示しない)との接続箇所に当たる。図5において、カードの挿入時には当該カードは左側から右側に向けて(カード挿入方向に向けて)進行し、カードの抜き出し時には当該カードは右側から左側に向けて(カード抜き出し方向に向けて)進行する。ピン20は、支点30から水平に延びる第1部分22と、第1部分の一端から垂下する第2部分24とを備える。なお、図5のモデル図では、カードコネクタにカードが挿入されて保持されている場合のピン20の位置を仮定しており、これは、特許文献1の図7(c)、図8(c)に示されている状態に相当する。
【0005】
ここでは、理解容易のために、ピン20及びピン溝10は、いずれも剛体であり、かつ、これらの間で摩擦は生じないものとし、さらに、これらは並行接触しているものと考えて説明する。
【0006】
図5に示すように、ピン20がピン溝10に係止されている状態で、イジェクタをカード抜き出し方向へ付勢するスプリングによって、支点30には図面左側へ向けた力が作用しており、これに伴って、ピン20の第2部分24に対して相対的に図面左側から右側に向けて力が働く。ピン20のピン溝10との接触部分にかかる力は、矢印Aで示すベクトルで表すことができる。
【0007】
矢印Aで示すベクトルは、支点30と上記端部とを結ぶ線方向と、これに対する垂直方向とに分解して、矢印Bで示すベクトルと矢印Cで示すベクトルとで表すことができる。矢印Bで示すベクトルは、支点30を中心とするピン20への回転モーメントとしては寄与しない。一方、矢印Cで示すベクトルは、支点30を中心として、図5の反時計回りの回転モーメントをピン20に及ぼすことになる。
【0008】
つまり、特許文献1に開示されているカードコネクタは、ピン20がピン溝10に係止されている状態で、ピン20に対して相対的に図面左側から右側に向けて力が働き、この結果、ピン20にはピン溝10から離脱する方向へ回転モーメントが及ぶのである。
【0009】
そして、ピン20に対して支点30を中心としてピン溝10から離脱する方向への回転モーメントが働くと、ピン溝10からピン20が外れるといった事態が生じうる。実際に、ピン20が外れてしまうと、カードコネクタに対するカードの所要の挿抜が行えなくなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ピンに対して支点を中心として離脱する方向への回転モーメントが働くことを回避して、ピン溝からピンが外れないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
カードコネクタ本体のハウジング(例えば、図4のハウジング130)と、
前記ハウジング内に搭載されていてカードのプッシュイン又はプッシュイジェクトの際に可動するスライダー(例えば、図4のスライダー80)と、
前記ハウジングと前記スライダーとの間に接続されるピン(例えば、図4のピン20)と、
を備える、プッシュイン/プッシュイジェクト方式のカードコネクタにおいて、
前記ハウジングは前記ピンの略垂下する部分(例えば、図4の第2部分24)を受けるピン溝(例えば、図4のピン溝90)が形成されており、
当該ピン溝の最上部と前記ピンとの接続箇所が、前記ピンと前記スライダーとの接続箇所よりも高い位置にある(例えば、図4の作用点35が、図4の支点30よりも高い位置にある)。
【0012】
前記ピンは、前記スライダー側の端部に鉤状部分(例えば、図4の第3部分26を備えること)を有し、
前記スライダーは、底面に支持孔(例えば、図4の支持孔82)が形成されていて、当該底面と天井面との間が中空となっていて、
前記ピンの端部の先端が前記中空又は前記天井面に接するように位置し、かつ、前記鉤状部分が当該支持孔を通る態様で、前記ピンと前記スライダーとが接続されてもよい。
【0013】
前記各接続箇所間の高低差は、少なくとも、前記カードの厚みと、前記ピンの剛性と、前記ピンと前記ピン溝との間の摩擦係数と、前記ピンと前記ピン溝との間の並行接触性とのいずれかに基づいて決定してもよい。
【0014】
前記ピンは、直線状の第1部分と、前記略垂下部分を構成する第2部分と、前記鉤状部分を構成する第3部分とを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態のカードコネクタにおけるピンに係る応力を説明するためのモデル図である。
図2図1のモデル図の原理を実現するカードコネクタの内部構成を示す斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4図2等に示すピン20付近におけるカードの挿抜方向に沿った断面図である。
図5】特許文献1に開示されているカードコネクタにおけるピンに係る応力を説明するためのモデル図である。
【符号の説明】
【0016】
10 ピン溝
20 ピン
30 支点
40 係止部
50 コンタクト
60 端子部
70 カード押え部
90 ピン溝
100 コイルばね
110 スイッチコンタクト
150 挿入部
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態のカードコネクタにおけるピンに係る応力を説明するためのモデル図である。図1には、図5と同様に、ピン20と、ピン20の支点30と、ピン20が係止されるピン溝10とを示している。ピン20は、水平に延びる第1部分22と、第1部分の一端から垂下する第2部分24と、第1部分22と支点30とを結ぶ第3部分26とを備える。なお、図1のモデル図でも、カードコネクタにカードが挿入されて保持されている場合のピン20の位置を仮定している。
【0019】
ここでも、理解容易のために、まずは、ピン20及びピン溝10は、いずれも剛体であり、かつ、これらの間で摩擦は生じないものとし、さらに、これらは並行接触しているものと考えて説明する。
【0020】
図1に示すように、上述した従来例の場合と同様に、ピン20がピン溝10に係止されている状態で、ピン20に対して相対的に図面左側から右側に向けて力が働き、ピン20とピン溝10との接触部分にかかる力は、矢印Aで示すベクトルで表すことができる。
【0021】
矢印Aで示すベクトルは、支点30と上記端部とを結ぶ線方向と、これに対する垂直方向とに分解して、矢印Bで示すベクトルと矢印Cで示すベクトルとで表すことができる。矢印Bで示すベクトルは、支点30を中心とするピン20への回転モーメントとしては寄与しない。一方、矢印Cで示すベクトルは、支点30を中心として、図1の時計回りの回転モーメントをピン20に及ぼすことになる。
【0022】
つまり、本実施形態のカードコネクタは、ピン20がピン溝10に係止されている状態で、ピン溝10に対して相対的に図面左側から右側に向けて力が働き、ピン20にはピン溝10から離脱しない方向へ回転モーメントが及ぶのである。
【0023】
なお、この回転モーメントMは、矢印Aで示すベクトルに対応する荷重をl、第1部分22と矢印Bとの為す角の角度をθ、支点30から第2部分24までの水平方向の長さをLとすると、
M=(l×sinθ×cosθ)×L
と表すことができる。
【0024】
このように、ピン20に対して支点30を中心としてピン溝90から離脱する方向への回転モーメントが働くことを回避すると、ピン溝10からピン20が外れることを防止できる。したがって、カードコネクタに対する所望のカードの挿抜を行うことが妨げられることがない。
【0025】
図2は、図1のモデル図の原理を実現するカードコネクタの内部構成を示す斜視図である。図3は、図2の平面図である。図2図3においても、カードコネクタにカードが挿入されて保持されている場合のピン20の位置を示している。
【0026】
本実施形態のカードコネクタは、半田などによって、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、ディジタルカメラなどの所望の装置に内蔵されている印刷配線基板(図示しない)に固定するための固定部120が、例えば四隅に設けられている箱型のハウジング130を有する。このハウジング130の上面には、実際には、図示しないシールドカバーが取り付けられた状態で使用される。
【0027】
このカードコネクタには、図示しないSDメモリカードなどのICカードを含むカードが挿入される挿入部150が形成されている。図2の場合には、図面左下側から右上側に向けてカードが挿入され、図3の場合には、図面下側から上側に向けてカードが挿入される。
【0028】
挿入部150の奥には、カードの主面に対して当接する当接面40が位置する。当接面40には、カードコネクタのハウジング130も貫通する幾つかの開口部が形成されている。
【0029】
当接面40の奥には、挿入対象のカードに設けられている複数の端子に各々が接触される、複数のコンタクト50が設けられている。コンタクト50は、当接面40の位置からせりあがっていてカードの端子に弾性接触する端部と、カードコネクタの底面側を通る基端部と、挿入部150と反対側の位置でカードコネクタが固定される装置に内蔵されている印刷配線基板に接続される複数の端子部60とを備えている。
【0030】
コンタクト50の上記端部と端子部60との間には、カードの挿抜状態を検出するためのスイッチコンタクト110が設けられている。また、スイッチコンタクト110の近傍にも、カードコネクタのハウジング130も貫通する幾つかの開口部が形成されている。
【0031】
本実施形態のカードコネクタは、当接面40の隣接した位置に、カードがカードコネクタから抜け落ちることを防止するために、係止部70が設けられている。係止部70は、挿入対象のカードの側縁に設けられた切り欠き部に係合するように構成されていて、その上面方向に向けた付勢力をカードに対して与えている。
【0032】
さらに、本実施形態のカードコネクタは、当接面40及びコンタクト50に隣接して、カードの挿抜方向に延びているコイルばね100が配置されている。コイルばね100は、これに連結されているスライダー80に付勢力を与えることで、カードの抜き出し時に挿入部150の方向に向けて、カードを押し出すものである。
【0033】
スライダー80には、以下説明するように、ピン20の一端が接続されている。また、ピン20の他端は、図3に示すように、カードが挿入されて保持されている状態において、ハウジング130に形成されているピン溝90内に係止されている。
【0034】
図4は、図2等に示すピン20付近におけるカードの挿抜方向に沿った断面図である。図4には、図3に示すピン20,スライダー80,ピン溝90及びハウジング130と、図1に示す支点30及びピンの各部分22,24,26とに加えて、スライダー80に形成された支持孔82及びピン20の作用点35も示している。
【0035】
ピン20は、その基端となる第1部分22は直線状をしており、一端側の第3部分26はU字状をしている。なお、U字状のピン20の形状は例示であり、支点30の位置が作用点35の位置よりも図面下側となることが実現できれば、第3部分26の形状は、例えば、コ字状でもよいし、V字状でもよい。この種の第3部分26の形状を、本明細書では総称して鉤状と称する。
【0036】
また、ピン20の第3部分26のうち、支持孔82と接する付近がピン20の支点30となる。ピン20の第3部分26側の端部は、ピン20の第1部分22の略延長上であって、かつ、第1部分22と略同軸上に位置する形状とされている。
【0037】
ここで、スライダー80は、底面に支持孔82が形成されていて、底面と天井面との間が中空となっている。ピン20の第3部分26側の先端は、支持孔82を図面下側から上側に向けて通されてから、スライダー80の長手方向とピン20の第1部分22とが略平行となるようにセットされる。
【0038】
こうすると、ピン20の第3部分26側の先端は、スライダー80の中空又は天井面に接するように位置し、かつ、第3部分26の鉤状部分は、支持孔82を通る態様で、ピン20とスライダー80とが接続されることになる。係る場合には、支持孔82の形成方向と、そこを通るピン20の延在方向とが略一致するため、この状態では、ピン20がスライダー80から離脱しない。
【0039】
また、ピン20の第1部分22と第2部分24とは、相互に略直角となる態様で曲げられている。この曲部付近、つまり、ピン溝90の最上部がピン20の作用点35となる。そして、通常、第2部分24は略垂下しており、第1部分22は、これに略直交していて、カードの挿抜方向に平行な態様で配置されている。
【0040】
本実施形態では、ハウジング13に第2部分24の先端を受けるピン溝90が形成されていることから、支点30の位置を作用点35の位置よりも、図面下側になるようにしている。これにより、図1のモデル図を参照して説明したように、ピン20に対して支点30を中心とする図4の時計回りの回転モーメントが生じるので、これにより、ピン20がピン溝90から離脱することが防止できる。
【0041】
ここで、ピン20は、支点30と作用点35との高低差は、カードの厚みの例えば5%以上、好ましくは例えば10%以上とするとよい。
【0042】
理論的には、図1のモデル図を参照して説明したように、支点30の位置が作用点35の位置よりも下側であれば、ピン20がピン溝90から離脱することを回避できるが、実際には、図1を用いて説明したような、ピン20が完全な剛体であるとか、また、ピン20とピン溝10との間で摩擦が生じないとか、さらに、これらは並行接触するとか、そのような前提は成り立たないので、このような事情を加味すると、上記のように、カードの厚みの10%以上とするとよい。
【0043】
もっとも、例えば、より剛体に近い条件のピン20を用いるというように、図1のモデル図の説明での前提条件に近い条件のような場合には、支点30と作用点35との高低差は、例えば、カードの厚みの5%程度であってもよい。つまり、支点30と作用点35との高低差は、カードの厚みと、ピン20の剛性と、ピン20とピン溝10との間の摩擦係数と、ピン20とピン溝10との間の並行接触性との少なくともいずれかを考慮して決定すればよい。
【0044】
なお、上述した実施例は、ピン溝90をハウジング13に設けた例であるが、既に公知である、ピン溝90をスライダー80に設ける構成の場合でも本発明を実施できる。この場合は、ハウジング13とピン20との間の接続箇所が支点30となり、この支点30の位置が作用点35の位置よりも下側になるようにすればよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のカードコネクタによれば、ピン20がピン溝90から離脱することを回避できるので、カードの挿抜ができなくなることを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態のカードコネクタと、これが固定されたパーソナルコンピュータ、携帯電話機、ディジタルカメラなどの装置とを備える、カードコネクタシステムを構成すると、装置に対してカードの挿抜ができなくなるとった不具合の発生を防止することができる。
図1
図2
図3
図4
図5