特許第6237670号(P6237670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000002
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000003
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000004
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000005
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000006
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000007
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000008
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000009
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000010
  • 特許6237670-車両の上部車体構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237670
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両の上部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-29800(P2015-29800)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-150702(P2016-150702A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 敬三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−139239(JP,A)
【文献】 特開2011−195105(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034586(WO,A1)
【文献】 米国特許第02122444(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0124279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、
前記左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、
前記ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、
上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、
前記一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインと、を備えた車両の上部車体構造であって、
前記車幅方向ルーフレインは、車両前後方向において前記センタピラーに重なる位置に配設され、
前記ルーフレールと前記フロントヘッダとの結合部近傍で、両者を連結する第1補強部
前記ルーフレールと前記車幅方向ルーフレインとの結合部近傍で、両者を連結する第2補強部と、
該第2補強部における車幅方向内側の端部と前記フロントヘッダとを連結する前後方向ルーフレインとが配設された
車両の上部車体構造。
【請求項2】
前記ルーフレールと、前記ルーフパネルの後部に車幅方向に配設されたリヤヘッダとの結合部近傍で、両者を連結する第3補強部が配設された
請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、フロントヘッダと該フロントヘッダの車幅方向両外側のフロントピラーとの間に配設されたフロントウインドウと、を備えた車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の上部車体構造としては、特許文献1,2に開示の上部車体構造に例示されるように、車体のルーフ部を形成するルーフパネルの下部において車幅方向に延びるように配設されたルーフレインフォースメントを備えたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、車両前後両端部及び車両前後方向中央部にルーフパネルの下面に接合する接合面を設けるとともに、該接合面以外の部位がルーフパネルの下面から所定長さ以上、下方に離間するように側面視略W形状に形成したルーフレインフォースメントをルーフパネルの下面に接合した車両の上部車体構造が開示され、この構成により、ルーフパネルの張り剛性の向上を図っている(特許文献1中の段落[0038]、[0049]参照)。
【0004】
下記特許文献2に開示には、ルーフレインフォースメントとしての第1クロスメンバと第2クロスメンバを、平面視X字状に配置した車両の上部車体構造としての車両用サンルーフ構造が開示され、平面視X字状に配置した第1・第2クロスメンバにより、ルーフの剛性を高めることができるとされている(特許文献2中の段落[0027]参照)。
【0005】
ところで、本願発明者は、乗心地性能の向上を図る研究を行っているが、そのためには、振動減衰性能を向上させる必要がある。ここで、振動減衰性能とは、対象とする周波数帯(モード)が20〜50Hz帯域の振動(搭乗者が足元等でビリビリ感を感じる程度の振動)を低減させることを目的とした性能を示す。本願発明者は、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動が、その要因の1つであることを見出した。
【0006】
特許文献1,2の構造でも、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動抑制に一定の効果が期待できると考えられるが、乗心地性能の向上を図るために、さらなる検討の必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−58224号公報
【特許文献2】特開2002−248943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動抑制に伴うフロントヘッダの上下振動による乗心地性能(振動減衰性能)の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、前記左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、前記ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、前記一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインと、を備えた車両の上部車体構造であって、前記車幅方向ルーフレインは、車両前後方向において前記センタピラーに重なる位置に配設され、前記ルーフレールと前記フロントヘッダとの結合部近傍で、両者を連結する第1補強部、前記ルーフレールと前記車幅方向ルーフレインとの結合部近傍で、両者を連結する第2補強部と、該第2補強部における車幅方向内側の端部と前記フロントヘッダとを連結する前後方向ルーフレインとが配設されたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記ルーフレールと前記車幅方向ルーフレインとの結合部と、前記ルーフレールと前記フロントヘッダとの結合部との剛性を向上させることで、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することができ、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0011】
また、前記第1補強部が前記ルーフレールと前記車幅方向ルーフレインとの両者を最短距離である直線的に連結すること、或いは前記第2補強部が前記ルーフレールと前記フロントヘッダとの両者を最短距離である直線的に連結することにより、各結合部の剛性を効果的に向上させることができる点で好ましい。但し、第1補強部と第2補強部とは、それぞれに対応する両者を直線的に連結するに限らず、車両平面視で若干湾曲するなど、各結合部の剛性の向上に寄与する範囲で両者を直線的に連結するラインに対して迂回するラインに沿って連結する形状も含む。
【0012】
またこの発明は、前後方向ルーフレインが配設されたことにより、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することができ、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることができるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0013】
ここで、前記前後方向ルーフレインがそれぞれ車幅方向の両側に一対備えた構成の場合、これら一対の前記前後方向ルーフレインは、例えば、車両平面視でハの字形状など車両後方程幅広に傾斜する方向、車両平面視で逆ハの字形状など車両後方程幅狭に傾斜する方向、或いは平行などに配設してもよく、延びる方向については限定しない。
【0014】
この発明の態様として、前記ルーフレールと、前記ルーフパネルの後部に車幅方向に配設されたリヤヘッダとの結合部近傍で、両者を連結する第3補強部が配設されたものである。
【0015】
上記構成によれば、前記ルーフレールと前記リヤヘッダとの結合部の剛性を向上させることで、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制し、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1第1の参考例に係る車両を一部省略して示した斜視図。
図2第1の参考例に係る車両のフレーム構造を示す斜視図。
図3第1の参考例に係る車両の上部車体構造の底面図。
図4第1の参考例に係る車両の上部車体構造の前側部分の斜視図。
図5第1の参考例に係るリヤヘッダの内部構造を示す断面図。
図6】リヤヘッダとルーフレールとの結合部分を底面側から見た斜視図。
図7図6中において一部車載部品を取り外して示した斜視図。
図8第2の参考例に係る車両の上部車体構造の底面図。
図9実施形態に係る車両の上部車体構造の底面図。
図10実施形態に係るフロントヘッダの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1第1の参考例に係る車両を一部省略して前側左斜め上方から見た斜視図であり、図2第1の参考例に係る車両のフレーム構造を前側左斜め上方から見た斜視図である。図3第1の参考例に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視断面図を示す。図4図2中の領域Zにおける車両の上部車体構造の前側部分の拡大図である。図5(a)は図3中のB−B線断面図を示し、図5(b)は図3中のC−C線断面図を示す。図6はリヤヘッダと車両右側のルーフレールとの結合部分を底面側から見た斜視図であり、図7はコーナープレートを外した状態のリヤヘッダと車両右側のルーフレールとの結合部分を底面側から見た斜視図である。図8第2の参考例に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視に対応する断面図を示す。図9実施形態に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視に対応する断面図を示す。図10図9中のD−D線断面図を示す。なお、図中、矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方、矢印(U)は車体上方を示す。
【0019】
第1の参考例
第1の参考例に係る車両Vの上部には、図1、及び図2に示すように、車幅方向の両側において前側下部から後側上部に向けて延びるフロントピラー1,1が設けられ、これらフロントピラー1,1の下部は上下方向に延びるヒンジピラー2,2に連結されている。
【0020】
フロントピラー1はフロントピラーインナとフロントピラーアウタとを接合して、ヒンジピラー2はヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合して、いずれも閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0021】
上述の左右のフロントピラー1,1の後端には、図1図3に示すように、車両前後方向に延びる左右一対のルーフレール3,3(ルーフサイドレール)が連続して形成され、左右のフロントピラー1,1の上端部相互間には、車幅方向に延びるフロントヘッダ11(図2図3参照)が架設されるとともに、左右のルーフレール3,3の後端部相互間には、車幅方向に延びるリヤヘッダ12が架設されている。
【0022】
フロントヘッダ11の車幅方向両端部には、図2図3、及び図4に示すように接合フランジ11aが接合されており、この接合フランジ11aを介してルーフレール3に結合(接合固定)されている。
ここで、この接合フランジ11aは、車両平面視で車両前後方向の後端部が車幅方向外側程幅広に形成した幅広部81を有している。この幅広部81は、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1近傍で、両者を略直線的に連結するように配設されている(図3図4参照)。すなわち、幅広部81は、車両平面視で前端側が略直線状の稜線となるように徐々に拡幅して形成している。
【0023】
そして、上述の左右一対のルーフレール3,3、フロントヘッダ11、及びリヤヘッダ12に囲まれた領域は、車両上部において車両前後方向及び車幅方向に広がるように配設された鋼板製のルーフパネル13によって覆われている(図1図3参照)。
【0024】
このルーフパネル13は、上記領域に加えてフロントヘッダ11、及びリヤヘッダ12の少なくとも一部を覆うように上方から配置されているため、フロントヘッダ11とリヤヘッダ12とは、いずれも上方に配置したルーフパネル13とで略閉断面構造を構成し、それぞれルーフパネル13の前部、後部において車幅方向に延びる車体剛性部材としている。
【0025】
フロントヘッダ11の閉断面構造について詳述すると、フロントヘッダ11は、車幅方向の直交断面視で上方に開口した上方開口を有する略ハット形状に形成しており、フロントヘッダ11の内部には該上方開口を覆うルーフパネル13との間に閉断面空間11Aを構成している(図4図10参照)。
また、図1図3に示すように、車両前後方向に延びるルーフレール3の前後方向中央部(図3中の二点鎖線で示す円形部位3C)よりも前側には、上下方向に延びるセンタピラー31が連続して形成され、ルーフレール3の後端部には、上下方向に延びるリヤピラー32が連続して形成されている。
【0026】
続いてリヤヘッダ12の閉断面構造について詳述すると、リヤヘッダ12は、図5(a),(b)、図6、及び図7に示すように、ルーフパネル13の下側で該ルーフパネル13と対向するリヤヘッダ底部120と、該リヤヘッダ底部120の前端から車幅方向に沿って上下方向に延びる縦壁部121と、該縦壁部121の上端から車両前方に向けて略水平に延びる前方延出部122とを有し、ルーフパネル13とリヤヘッダ12との間に閉断面空間12Aを構成している(図5(a),(b)参照)。なお、前方延出部122の車幅方向における所定部位には、ルーフパネル13との間に介在させ、両者に接着する接着剤8が塗布されている(図5(a)参照)。
【0027】
そして、図5(b)、及び図7に示すように、リヤヘッダ12には、該リヤヘッダ12とルーフレール3との結合部T3近傍(コーナー部)において、両者を略直線的に連結するとともに、車両平面視で車幅方向外側程幅広に形成した幅広部83が配設されている。この幅広部83は、リヤヘッダ12の車幅方向の両端において前方延出部122よりも車幅方向の外側程車両前方向へ延出し(図5(b)参照)、車両平面視で前端側が略直線状の稜線となるように徐々に拡幅して形成している。すなわち、幅広部83は、リヤヘッダ12とルーフレール3とのコーナー部が車両平面視面取り形状になるように形成している。
【0028】
なお、図6は上述したように、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T3近傍の底面側から見た斜視図であり、図6中の符号43は、リヤピラー32の内側に配設され、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3を底面側から覆う車体ボディとしてのコーナープレートである。図7は、図6中において図示するコーナープレート43を取り外した状態を示す斜視図であり、図7中の仮想線で示した符号32Rは、リヤピラーレインレインフォースメントである。
【0029】
一方、車両下部には、図1及び図2に示すように、ヒンジピラー2の下部から車両後方に向かって延びるサイドシル33が配設され、サイドシル33の車両前後方向中央部には、上下方向に延びる上記センタピラー31の下部が接合されている。
【0030】
さらにまた、車両前部には、フロアパネル7の前端から立ち上がるとともに車幅方向の略全幅に亘って延びて、エンジンルームEと車室Cとを仕切るダッシュパネル21を備え、ダッシュパネル21の上方には、車幅方向に延び、その略全幅に亘ってフロントウインドウ22の下端を支持するカウルパネル23が配設されている(同図参照)。
なお、図1、及び図2中の符号24は、ダッシュパネル21の前部におけるエンジンルームEの側方にて夫々車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームであり、符号25は、フロントサイドフレーム24に対して車幅方向外方、且つ上方に離間した位置にヒンジピラー2の上端部から車両前方へ延びる左右一対のエプロンレインフォースメントであり、符号26はエンジンルームEの車幅方向両側に配設されたサスペンションタワー部である。
【0031】
そして、車両Vには、図2に示すように、上述のフロントヘッダ11と、左右のフロントピラー1,1とカウルパネル23とで囲繞されたフロントウインドウ開口部22Aが形成され、ヒンジピラー2と、フロントピラー1と、ルーフレール3の前部と、センタピラー31と、サイドシル33とで囲繞されたフロント側のサイドドア開口34Aが形成され、センタピラー31と、ルーフレール3の後部と、リヤピラー32と、リアフェンダを含む後部ボディサイド部37と、サイドシル33とで囲繞されたリヤ側のサイドドア開口35Aとが形成されている。フロントウインドウ開口部22Aには、フロントウインドウ22が配設され(図1図3参照)、また、フロント側のドア開口34Aには図示省略するフロントサイドドアが配設され、リヤ側のドア開口35Aには図示省略するリヤサイドドアがそれぞれ開閉可能に配設されている。
【0032】
一方、車両後部には、車室C後方に有する後部荷室Crから後方に向けて開口する後部荷室開口CrAが形成され(図2図3参照)、図1、及び図3に示すように、リフトゲート41(バックドア)によってルーフパネル13の後端部(リヤヘッダ12部分)を開閉支点として後部荷室開口CrAを覆うように形成して、ハッチバック型の車両を構成している。このリフトゲート41には、リフトゲート開口部41Aが設けられ、該リフトゲート開口部41Aを閉塞するリヤウインドウ42を備えている(図1図3参照)。
【0033】
さらに、図2、及び図3に示すように、ルーフパネル13の下方側(車室C側)には、上述したフロントヘッダ11とリヤヘッダ12との間に、複数のルーフレインフォースメント15〜17が設けられ、上述したルーフパネル13と、フロントヘッダ11、リヤヘッダ12、及び複数のルーフレインフォースメント15〜17によりルーフ部10が構成されている(図1図3参照)。
【0034】
ところで上述したフロントヘッダ11、リヤヘッダ12、各ルーフレインフォースメント15〜17の上面には、接着剤8が塗布されており(例えば、図5(a)参照)、この接着剤8により、ルーフパネル13の下面に接着されている。
【0035】
また、図2、及び図3に示すように、上述した複数のルーフレインフォースメント15〜17は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、及び後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17で構成している。
【0036】
前側車幅方向ルーフレインフォースメント15は、左右一対のルーフレール3,3間において車幅方向に直線状に延び、その車幅方向両外端部の夫々には、図3に示すように、接合フランジ15aが接合されており、この接合フランジ15aを介して車両前後方向においてセンタピラー31に少なくとも一部が重なる位置でルーフレール3に結合されている。
【0037】
ここで、この接合フランジ15aは、車幅方向の内端が前側車幅方向ルーフレインフォースメント15と略同じ幅(車両前後方向長さ)で形成され、車両前後方向の両端部に車両平面視で車幅方向外側程、車両前後両側へ幅広に形成した幅広部82を有している。この幅広部82は、ルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2近傍で、両者を略直線的に連結するように配設されている(図3図4参照)。すなわち、車両前側へ幅広に形成した幅広部82は、車両平面視で前端側が略直線状の稜線となるように徐々に拡幅して形成するとともに、車両後側へ幅広に形成した幅広部82は、車両平面視で後端側が略直線状の稜線となるように徐々に拡幅して形成している。
【0038】
また、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、及び後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17は、図2、及び図3に示すように、それぞれの両端部に接合片16a,17aが一体または一体的に形成されている。そして、該接合片16a,17aが、ルーフレール3,3の前後方向各部にスポット溶接等によって接合されることで、ルーフレール3,3に結合されている。
【0039】
これにより、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16は、ルーフレール3,3の車両前後方向の略中央部3Cよりも若干後方において、ルーフレール3,3を相互に連結するように配設され、後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17は、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16とリヤヘッダ12との車両前後方向の略中央位置に配設されている。
【0040】
以上、詳述した第1の参考例の車両Vの上部車体構造は、車体のルーフ部10の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレール3,3と、左右一対の両ルーフレール3,3間に配設されたルーフパネル13と、該ルーフパネル13の前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダ11と、上部がルーフレール3に結合されると共に、下方へ延びるセンタピラー31と、車両前後方向においてセンタピラー31に重なる位置で一対のルーフレール3,3間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインとしての前側車幅方向ルーフレインフォースメント15と、を備えた車両の上部車体構造であって、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1近傍で、両者を直線的に連結する第1補強部としての幅広部81が、ルーフレール3と車幅方向ルーフレインとしての前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2近傍で、両者を直線的に連結する第2補強部としての幅広部82が、それぞれ配設されたものである(図2図3図4参照)。
【0041】
上記構成によれば、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1と、ルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2との剛性を向上させることができ、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することにより、軽量な構造で、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0042】
具体的には、フロントウインドウ22は、一般にフロントウインドウ開口部22Aを覆うことが可能な大きさを有した重量物であるため、車両走行中にフロントウインドウ22が振動した場合、それに伴って該フロントウインドウ22の上端に配設したフロントヘッダ11も振動し易くなる。そうすると、その影響でドライバは、例えば、足元から、或いはシート取り付け部を介して伝わる低周波の振動(ビリビリ感)を感じ、乗り心地性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0043】
これに対して、第1の参考例の車両Vの上部車体構造によれば、上述したように、フロントウインドウ22の振動による影響を受け易いフロントヘッダ11と、ルーフレール3との結合部T1で両者を、幅広部81を有する接合フランジ11aによって連結して該結合部T1の剛性の向上を図るとともに、車両前後方向においてセンタピラー31に重なる位置で配設した前側車幅方向ルーフレインフォースメント15と、ルーフレール3との結合部T2で両者を、幅広部82を有する接合フランジ15aによって連結して該結合部T2の剛性の向上を図っている。
【0044】
これにより、単にルーフパネル13の面剛性を向上させるだけでなく、フロントヘッダ11と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3と、センタピラー31とを含めた三次元的な骨格全体でフロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することができ、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0045】
この発明の態様によれば、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3近傍で、両者を直線的に連結する第3補強部としての幅広部83が配設されたものである(図2図3図5(b)、図7参照)。
【0046】
上記構成によれば、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3の剛性を向上させることができる。そして、結合部T3の剛性を向上させたこれらルーフレール3とリヤヘッダ12と、さらにリヤピラー32も含めた三次元的な骨格全体でフロントウインドウ22の上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となる。
【0047】
その他にも、第1の参考例の車両Vの上部車体構造は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15を、交差部分を有さずに車幅方向に直線状に延びるフレームで構成したため、生産性に優れたレインフォースメントとして備えることができる(図2図3参照)。
【0048】
さらに、第1の参考例の車両Vの上部車体構造は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15を備えることで、側突安全性能の向上を図ることができる。
【0049】
また、第1の参考例の車両Vの上部車体構造は、車両前後方向における前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とリヤヘッダ12との間に、車幅方向に延びる後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、及び後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17を備えることでルーフパネル13の後側部分の張り剛性の向上を図ることができる(同図参照)。
【0050】
なお、幅広部81は、フロントヘッダ11の車幅方向の両外端部に備えた接合フランジ11aを幅広に形成したものであるとともに、幅広部82は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両外端部に備えた接合フランジ15aを幅広に形成したものであるが、この構成に限定せず、フロントヘッダ11や前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の夫々の車幅方向の両外端部に一体又は一体的に形成した幅広部を形成し(図示省略)、該幅広部を有する外端部を接合フランジを介さずにルーフレール3に直接、結合した構成であってもよい。
【0051】
続いて第2の参考例について説明する。但し、上述した第1の参考例と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の参考例
第2の参考例の車両Vaは、図8に示すように、第1の参考例の車両Vの上部車体構造における車幅方向の両側に備えた幅広部81,82,83の代わりに、傾斜メンバ91,92,93を配設したものである。
【0052】
具体的には、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1近傍において、接合フランジ11aは幅広部81を有しないで形成し、これらルーフレール3とフロントヘッダ11とを直線的に連結する傾斜メンバ91を配設している。
【0053】
詳しくは、傾斜メンバ91の車幅方向の外端(後端)91afはルーフレール3に結合され、傾斜メンバ91の車幅方向の内端(前端)91arはフロントヘッダ11に結合されている。これにより、この傾斜メンバ91は、上記結合部T1近傍においてフロントヘッダ11とルーフレール3とを架け渡すように配設されている。
【0054】
さらに、ルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2近傍において、接合フランジ15aは幅広部82を有しないで形成し、これらルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とを直線的に連結する傾斜メンバ92を配設している。
【0055】
詳しくは、傾斜メンバ92の車幅方向の外端(前端)92afはルーフレール3に結合され、傾斜メンバ92の車幅方向の内端(後端)92arは前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に結合されている。これにより、この傾斜メンバ92は、上記結合部T2近傍における、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両前側部位(車両前側角部近傍)において前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3とを架け渡すように配設されている。
【0056】
さらにまた、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3近傍において、幅広部83を有しないで形成し、これらルーフレール3とリヤヘッダ12とを直線的に連結する傾斜メンバ93を配設している。
【0057】
詳しくは、傾斜メンバ93の車幅方向の外端(前端)93afは、ルーフレール3に結合され、傾斜メンバ93の車幅方向の内端(後端)93arは、リヤヘッダ12に結合されている。これにより、この傾斜メンバ93は、上記結合部T3近傍においてリヤヘッダ12とルーフレール3とを架け渡すように配設されている。
【0058】
上記構成によれば、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1近傍に両者を連結する傾斜メンバ91を配設するとともに、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T2近傍に両者を連結する傾斜メンバ92を配設したため(図8参照)、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となるという第1の参考例の車両Vと同様の効果を奏することができる。
【0059】
さらに、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3近傍に両者を連結する傾斜メンバ93を配設したため(図8参照)、ルーフレール3とリヤヘッダ12との結合部T3の剛性を向上させることができ、ルーフレール3とリヤヘッダ12と、さらにリヤピラー32も含めた三次元的な骨格全体でフロントウインドウ22の上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となるという第1の参考例の車両Vと同様の効果を奏することができる。
【0060】
なお、ルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2近傍で両者を連結する傾斜メンバ92は、該結合部T2近傍における、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両前側部位(車両前側角部近傍)に配設するに限らず、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両後側部位(車両後側角部近傍)に配設してもよく、或いは、車両前側部位と車両後側部位との双方に配設してもよい。
【0061】
実施形態
実施形態の車両Vbは、第1の参考例の車両Vの上部車体構造において、ルーフパネル13の下方側(車室C側)、且つ上述したフロントヘッダ11とリヤヘッダ12との間において、上述した複数のルーフレインフォースメント15〜17に加えて、前側傾斜ルーフレインフォースメント18を配設したものである。
【0062】
この前側傾斜ルーフレインフォースメント18は、図9に示すように、車幅方向に並ぶように左右一対設けられ、前部がフロントヘッダ11に結合されるとともに、後方側程車幅方向外方に傾斜しながら延びており、本実施例においては、左右一対の前側傾斜ルーフレインフォースメント18,18は、後方程徐々に拡幅して平面視略ハの字形状に延びている。そして、前側傾斜ルーフレインフォースメント18の後部は、センタピラー31とルーフレール3との結合部近傍、すなわち、ルーフレール3と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15との結合部T2近傍位置に結合されている(同図参照)。
【0063】
詳しくは、左右一対の前側傾斜ルーフレインフォースメント18,18の前後各端部には、図9に示すように、接合フランジ18af,18ar(前端接合フランジ18af、及び後端接合フランジ18ar)が一体または一体的に形成されている。そして、図9に示すように、車幅方向左側の前側傾斜ルーフレインフォースメント18の前端接合フランジ18afは、フロントヘッダ11の中央部11Cと車幅方向左側の外側端部(左側の接合フランジ11a)との間に結合され(図9図10参照)、車幅方向右側の前側傾斜ルーフレインフォースメント18の前端接合フランジ18afは、フロントヘッダ11の中央部11Cと車幅方向右側の外側端部(右側の接合フランジ11a)との間に結合されている(図9参照)。
なお、図10中の符号9はシール部材である。
【0064】
さらに、車幅方向の左右各側において、前側傾斜ルーフレインフォースメント18の後端接合フランジ18arは、図9に示すように、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の外側端部、すなわち幅広部82を有する接合フランジ15aの付け根部分に結合されている。
【0065】
上述した実施形態の車両Vbの構成によれば、前側傾斜ルーフレインフォースメント18により、フロントヘッダ11と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とを連結することで、フロントヘッダ11と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とセンタピラー31とを含めた三次元的な骨格全体の剛性をさらに向上させることができ、フロントヘッダ11の上下振動をより一層、抑制することにより、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることができるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0066】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、車幅方向ルーフレインは、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対応し、以下、同様に、
前後方向ルーフレインは、前側傾斜ルーフレインフォースメント18に対応し、
第1補強部は、幅広部81、又は傾斜メンバ91に対応し、
第2補強部は、幅広部82、又は傾斜メンバ92に対応し、
第3補強部は、幅広部83、又は傾斜メンバ93に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0067】
例えば、本発明の上述した実施形態においては、フロントヘッダ11の閉断面空間11Aには、節部材を配設していない構成であるが、例えば、図4中の仮想線で示すように、節部材51,52を配設した構成であってもよい。
【0068】
さらに、図4中では、フロントヘッダ11の車幅方向の中央部11Cに配設した中央節部材51と、前側傾斜ルーフレインフォースメント18とフロントヘッダ11との結合部Tbよりも車幅方向外側、すなわちフロントヘッダ11の付け根部分に1つずつ配設した外側節部材52とを仮想線で図示しているが、この実施例に限定せず、少なくとも1つの節部材を任意の箇所に配設することができる。
【0069】
また、第1の参考例の車両Vの上部車体構造は、幅広部81,82,83を備えた構成であるとともに、第2の参考例の車両Vaの上部車体構造は、傾斜メンバ91,92,93を備えた構成であるが、この発明は、これら実施形態の構成に限らず、例えば、第1の参考例の車両Vの上部車体構造において、ルーフレール3とフロントヘッダ11との結合部T1近傍において、幅広部81の代わりにルーフレール3とフロントヘッダ11とを直線的に連結する傾斜メンバ91を配設するなど、適宜、幅広部81,82,83と傾斜メンバ91,92,93とを組み合わせた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、例えば、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、上部がルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインと、を備えた車両の下部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0071】
V,Va,Vb…車両
3…ルーフレール
10…ルーフ部
11…フロントヘッダ
12…リヤヘッダ
13…ルーフパネル
15…前側車幅方向ルーフレインフォースメント(車幅方向ルーフレイン)
18…前側傾斜ルーフレインフォースメント(前後方向ルーフレイン)
31…センタピラー
81,82,83…幅広部(第1〜3補強部)
91,92,93…傾斜メンバ(第1〜3補強部)
T1…ルーフレールとフロントヘッダとの結合部
T2…ルーフレールと前側車幅方向ルーフレインフォースメントとの結合部
T3…ルーフレールとリヤヘッダとの結合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10