(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー母体粒子中、前記離型剤の含有率が、3〜15質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
前記結晶性ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂ユニットとポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとが化学的に結合した、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂が少なくとも非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、離型剤がエステルワックス
からなる第1の離型剤成分とマイクロクリスタリンワックス
からなる第2の離型剤成分とを含有し、離型剤中、第1の離型剤成分の含有率が
70〜
96質量%の範囲内であり、かつ、第2の離型剤成分の含有率が
4〜
30質量%の範囲内であり、結着樹脂中、結晶性ポリエステル樹脂の含有率が5〜20質量%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、
各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、結着樹脂中、非晶性ビニル樹脂の含有率が50質量%以上であることが好ましい。これにより、溶融時の弾性が過度に低下せず、耐高温オフセット性に優位な非晶性ビニル樹脂と、低温定着性に優れる結晶性ポリエステル樹脂とを含有させることで、低温定着性と耐高温オフセット性とを両立することができる。
【0028】
また、低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保管性向上の観点から、結晶性ポリエス
テル樹脂の融点(T
mc)が、上記式(1)を満たすことが好ましい。
【0029】
また、第1の離型剤成分の融点(T
mw1)と第2の離型剤成分の融点(T
mw2)とが、上記式(2)を満たすことが好ましい。トナー作製時、第1の離型剤成分、第2の離型剤成分の融点差離型剤の結晶サイズが小さく、トナー母体粒子中に均一に分散しやすくなる。光沢ムラの発生が抑制できるとともに、第1の離型剤成分による接着性付与と、離型剤全体としての分離性向上をより効果的に発現できる。
【0030】
また、結晶性ポリエステル樹脂の融点(T
mc)と第2の離型剤成分の融点(T
mw2)とが、上記式(3)を満たすことが好ましい。トナー作製時、結晶性ポリエステル樹脂の結晶サイズが小さく、トナー母体粒子中に分散しやすくなる。さらには、光沢ムラの発生が抑制できるとともに、熱定着時に結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂の熱溶融を促進するため、低温定着性に優れる。
【0031】
また、定着分離性に優れ、光沢ムラの発生を抑制できる観点から、トナー母体粒子中、離型剤の含有率が、3〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、低温定着性が確実に得られ、光沢ムラの発生を抑制できる観点から、第1の離型剤成分が炭素鎖長の異なる複数種のエステルを含み、第1の離型剤成分の炭素鎖長分布において、最も高い含有率に対応した炭素鎖長を有するエステルの含有率が70質量%以上であることが好ましい。
【0033】
また、結晶性ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂ユニットとポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとが化学的に結合した、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いるとメインバインダーと結晶性ポリエステル樹脂の親和性が適度に上がるため、結晶性ポリエステル樹脂のトナー母体粒子中の分散性も良好となり、耐高温オフセット性を確保できるとともに、低温定着化への効果が大きい。
【0034】
また、非晶性樹脂ユニットが、ビニル樹脂ユニットであることが好ましい。非晶性ビニル樹脂と同種の樹脂成分が結晶性ポリエステル樹脂に含まれることによって、定着時に結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂を速やかに溶融するため、低温定着性に優れる。また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶成長が抑制されるため、結晶が分散し、光沢ムラの発生を抑制できる。
【0035】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
【0036】
《静電荷像現像用トナー》
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含むトナー母体粒子を含有する。
【0037】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、その軟化点が80〜140℃の範囲内であることが好ましく、90〜120℃であることがより好ましい。
軟化点を上記範囲内とすることにより、定着時に加えられる熱によって生じる弊害を低減させることができ、その結果、着色剤に大きな負担をかけることなく画像を形成することができるため、形成される可視画像により広く安定した色再現性を得ることができる。
また、定着温度が極めて低温の低温定着を弊害を伴うことなく行うことができるため、
電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を行うことが可能となる。
【0038】
本発明の静電荷像現像用トナーの軟化点は、例えば、(1)結着樹脂を得るための重合性単量体の種類や組成比を調節すること、(2)トナーの製造工程において、例えば、結着樹脂を得る過程に連鎖移動剤を用い、その種類や使用量により、樹脂の分子量を調整すること、(3)離型剤などの構成材料の種類や使用量を調節すること、あるいはこれらの(1)〜(3)の手法を組み合わせることなどによって制御することができる。
【0039】
本発明の静電荷像現像用トナーの軟化点は、例えば、「フローテスターCFT−500」(島津製作所社製)を用い、トナーにより、高さ10mmの円柱形状体を形成し、この円柱形状体を、昇温速度6℃/minで加熱しながらプランジャーによって1.96×10
6Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより、プランジャーからの降下量と温度との関係を示す軟化流動曲線を得ることによって測定され、降下量5mmにおける温度が軟化点とされる。
【0040】
以下、静電荷像現像用トナーを構成する各材料について説明する。
【0041】
〈トナー母体粒子〉
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と離型剤とを含んで構成されている。
本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
【0042】
〈離型剤〉
本発明に係る離型剤は、エステルワックス
からなる第1の離型剤成分とマイクロクリスタリンワックス
からなる第2の離型剤成分とを含有し、離型剤中、第1の離型剤成分の含有率が
70〜
96質量%の範囲内であり、第2の離型剤成分の含有率が
4〜
30質量%の範囲内であることを特徴とする。
第1の離型剤成分の含有率が40質量%より小さい場合には、低温定着性が悪化し、98質量%より大きい場合には、光沢ムラが悪化してしまう。
第2の離型剤成分の含有率が2質量%より小さい場合には、光沢ムラが悪化し、40質量%より大きい場合には、低温定着性が悪化してしまう。
第1及び第2の離型剤成分の含有率は、第1の離型剤成分が70〜96質量%の範囲内、第2の離型剤成分が4〜30質量%の範囲内であ
り、第1の離型剤成分が80〜96質量%の範囲内、第2の離型剤成分が4〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
また、第1の離型剤成分の融点(T
mw1)と第2の離型剤成分の融点(T
mw2)とが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0044】
5(℃)≦T
mw2−T
mw1≦15(℃) 式(2)
【0045】
第1及び第2の離型剤成分の融点差(T
mw2−T
mw1)は、より好ましくは10〜15℃の範囲内である。
【0046】
また、後述する結晶性ポリエステル樹脂の融点(T
mc)と第2の離型剤成分の融点(T
mw2)とが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
【0047】
5(℃)≦T
mw2−T
mc≦15(℃) 式(3)
【0048】
なお、本発明において、第1及び第2の離型剤成分や結晶性ポリエステル樹脂由来の融点は、トナーの示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を行うことにより求めることができる。示差走査熱量測定には、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いることができる。
測定は、昇降速度10℃/minで室温(25℃)から150℃まで昇温し、5分間150℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで150℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び、昇降速度10℃/minで0℃から150℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行う。上記測定は、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行う。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用する。
上記測定において、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線から解析を行い、第1及び第2の離型剤成分や結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークのトップ温度を、融点(℃)とする。
【0049】
(第1の離型剤成分)
本発明に係る第1の離型剤成分に含まれるエステルワックスは、少なくともエステルを含んでいる。
エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステルのいずれをも用いることができ、例えば、下記一般式(1)〜(3)で表される構造を有する高級脂肪酸及び高級アルコールのエステル類、下記一般式(4)で表される構造を有するトリメチロールプロパントリエステル類、下記一般式(5)で表される構造を有するグリセリントリエステル類、下記一般式(6)で表される構造を有するペンタエリスリトールテトラエステル類などを挙げることができる。
【0050】
一般式(1) R
1−COO−R
2
一般式(2) R
1−COO−(CH
2)
n−OCO−R
2
一般式(3) R
1−OCO−(CH
2)
n−COO−R
2
【0051】
一般式(1)〜(3)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数13〜30の炭化水素基を表す。R
1及びR
2は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、1〜30の整数を表す。
【0052】
R
1及びR
2は、炭素数13〜30の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数17〜22の炭化水素基である。
【0053】
nは、1〜30の整数を表すが、好ましくは1〜12の整数を表す。
【0055】
一般式(4)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数13〜30の炭化水素基を表す。R
1〜R
4は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0056】
R
1〜R
4は、炭素数13〜30の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数17〜22の炭化水素基である。
【0058】
一般式(5)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数13〜30の炭化水素基を表す。R
1〜R
3は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0059】
R
1〜R
3は、炭素数13〜30の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数17〜22の炭化水素基である。
【0061】
一般式(6)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数13〜30の炭化水素基を表す。R
1〜R
4は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0062】
R
1〜R
4は、炭素数13〜30の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数17〜22の炭化水素基である。
【0063】
R
1〜R
4が有してもよい置換基としては、本発明の効果を阻害しない範囲において特に限定されず、例えば、直鎖又は分岐アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基、非芳香族複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、シリル基、重水素原子等が挙げられる。
【0064】
上記一般式(1)で表される構造を有するモノエステルの具体例としては、例えば、以下の式(1−1)〜(1−8)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
【0065】
式(1−1) CH
3−(CH
2)
12−COO−(CH
2)
13−CH
3
式(1−2) CH
3−(CH
2)
14−COO−(CH
2)
15−CH
3
式(1−3) CH
3−(CH
2)
16−COO−(CH
2)
17−CH
3
式(1−4) CH
3−(CH
2)
16−COO−(CH
2)
21−CH
3
式(1−5) CH
3−(CH
2)
20−COO−(CH
2)
17−CH
3
式(1−6) CH
3−(CH
2)
20−COO−(CH
2)
21−CH
3
式(1−7) CH
3−(CH
2)
25−COO−(CH
2)
25−CH
3
式(1−8) CH
3−(CH
2)
28−COO−(CH
2)
29−CH
3
【0066】
上記一般式(2)及び一般式(3)で表される構造を有するジエステルの具体例としては、例えば、以下の式(2−1)〜(2−7)、及び式(3−1)〜(3−3)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
【0067】
式(2−1) CH
3−(CH
2)
20−COO−(CH
2)
4−OCO−(CH
2)
20−CH
3
式(2−2) CH
3−(CH
2)
18−COO−(CH
2)
4−OCO−(CH
2)
18−CH
3
式(2−3) CH
3−(CH
2)
20−COO−(CH
2)
2−OCO−(CH
2)
20−CH
3
式(2−4) CH
3−(CH
2)
22−COO−(CH
2)
2−OCO−(CH
2)
22−CH
3
式(2−5) CH
3−(CH
2)
16−COO−(CH
2)
4−OCO−(CH
2)
16−CH
3
式(2−6) CH
3−(CH
2)
26−COO−(CH
2)
2−OCO−(CH
2)
26−CH
3
式(2−7) CH
3−(CH
2)
20−COO−(CH
2)
6−OCO−(CH
2)
20−CH
3
【0068】
式(3−1) CH
3−(CH
2)
21−OCO−(CH
2)
6−COO−(CH
2)
21−CH
3
式(3−2) CH
3−(CH
2)
23−OCO−(CH
2)
6−COO−(CH
2)
23−CH
3
式(3−3) CH
3−(CH
2)
19−OCO−(CH
2)
6−COO−(CH
2)
19−CH
3
【0069】
上記一般式(4)で表される構造を有するトリエステルの具体例としては、例えば、以下の式(4−1)〜(4−6)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
【0071】
上記一般式(5)で表される構造を有するトリエステルの具体例としては、例えば、以下の式(5−1)〜(5−6)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
【0073】
上記一般式(6)で表される構造を有するテトラエステルの具体例としては、例えば、以下の式(6−1)〜(6−5)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
【0075】
以上の中でも、エステルとしては、モノエステルであることが好ましい。
また、第1の離型剤成分を構成するエステルワックスは、一つの分子内にモノエステル構造、ジエステル構造、トリエステル構造及びテトラエステル構造の複数が保有された構造のものであってもよい。
また、離型剤を構成する第1の離型剤成分としては、以上のエステルの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0076】
トナー母体粒子中、離型剤の含有率は、3〜15質量%の範囲内であることが好ましく、5〜12質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0077】
第1の離型剤成分が、炭素鎖長の異なる複数種のエステルを含む場合、第1の離型剤成分の炭素鎖長分布において、最も高い含有率に対応した炭素鎖長を有するエステルの含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0078】
(第2の離型剤成分)
本発明に係る第2の離型剤成分には、少なくともマイクロクリスタリンワックスが含まれている。
ここで、マイクロクリスタリンワックスとは、石油ワックスの中で、主成分が直鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)であるパラフィンワックスとは異なり、直鎖状炭化水素の他に分岐鎖状炭化水素(イソパラフィン)や環状炭化水素(シクロパラフィン)を多く含むワックスをいい、一般に、マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンが多く含有されているために、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、パラフィンワックスに比べて分子量が大きいものである。
このようなマイクロクリスタリンワックスは、炭素数が30〜60の範囲内、重量平均分子量が500〜800の範囲内、融点が60〜90℃の範囲内である。マイクロクリスタリンワックスとしては、重量平均分子量が600〜800の範囲内、融点が60〜85℃の範囲内であるものが好ましい。また、低分子量のもので特に数平均分子量が300〜1000の範囲内のものが好ましく、400〜800の範囲内のものがより好ましい。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、1.01〜1.20の範囲内であることが好ましい。
【0079】
マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、日本精鑞(株)製のHNP−0190、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1090、Hi−Mic−2045、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−2095などのマイクロクリスタリンワックスや、イソパラフィンが主成分であるワックスEMW−0001、EMW−0003などが挙げられる。
【0080】
また、マイクロクリスタリンワックスは、分岐の割合が0.1〜20%の範囲内であることが好ましく、0.3〜10%の範囲内であることがより好ましい。
分岐の割合、すなわち、マイクロクリスタリンワックスを構成する全炭素原子中の3級炭素原子及び4級炭素原子の合計の割合が0.1〜20%の範囲内であることにより、マイクロクリスタリンワックスが低融点でありながら、エステルワックスとの相互作用による分子間の絡み合いが確実に得られて離型剤のトナー母体粒子表面への移行が発生しにくいものとなる。
【0081】
マイクロクリスタリンワックスにおける分岐の割合は、具体的には、下記条件における
13C−NMR測定方法により得られるスペクトルにより、下記式(i)により算出することができる。
【0082】
式(i):分岐の割合(%)=(C3+C4)/(C1+C2+C3+C4)×100
(式(i)中、C1は1級炭素原子に係るピーク面積、C2は2級炭素原子に係るピーク面積、C3は3級炭素原子に係るピーク面積、C4は4級炭素原子に係るピーク面積を表す。)
【0083】
(
13C−NMR測定方法の条件)
測定装置 :FT NMR装置 Lambda400(日本電子社製)
測定周波数 :100.5MHz
パルス条件 :4.0μs
データポイント:32768
遅延時間 :1.8sec
周波数範囲 :27100Hz
積算回数 :20000回
測定温度 :80℃
溶媒 :ベンゼン−d
6/o−ジクロロベンゼン−d
4=1/4(v/v)
試料濃度 :3質量%
試料管 :径5mm
測定モード :
1H完全デカップリング法
【0084】
〈結着樹脂〉
本発明に係る結着樹脂は、少なくとも非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有している。
【0085】
(非晶性ビニル樹脂)
本発明に係る非晶性ビニル樹脂は、ビニル基を有する単量体(以下、「ビニル単量体」という。)を用いて形成されるものであり、非晶性ビニル樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、中でも、スチレン・アクリル樹脂であることが好ましい。
本発明において、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークを有さない樹脂と定義される。ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。吸熱曲線は、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。
【0086】
ビニル単量体としては、以下のものが挙げられる。
【0087】
(1)スチレン系単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
【0088】
上記ビニル単量体は、1種単独で、又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0089】
また、ビニル単量体としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、アシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0090】
さらに、ビニル単量体として多官能性ビニル類を使用し、ビニル重合体を架橋構造を有するものとすることもできる。
多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0091】
非晶性ビニル樹脂の結着樹脂中における含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0092】
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る結晶性ポリエステル樹脂は、結着樹脂中における含有率が5〜20質量%の範囲内であることを特徴とする。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が5質量%より小さい場合には、低温定着性が悪化し、20質量%より大きい場合には、光沢ムラが悪化してしまう。
結晶性ポリエステル樹脂の含有率は、7〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0093】
また、結晶性ポリエステル樹脂の融点(T
mc)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0094】
65(℃)≦T
mc≦85(℃) 式(1)
【0095】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、好ましくは70〜80℃の範囲内である。
なお、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述したようにトナーの示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより測定することができる。
【0096】
本発明に係る結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)と、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)との重縮合反応によって得ることができる。
本発明において、「結晶性」樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークを有する樹脂と定義される。ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0097】
結晶性ポリエステル樹脂は、上記したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合反応によって合成される単重合体であってもよいし、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合反応によって合成される結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットとが共重合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂としてもよく、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂ユニットからなる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂が挙げられる。
【0098】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオール、及びこれらのエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸誘導体などを挙げることができる。
【0099】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、メサコン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸、及びこれらのアルキルエステル、酸無水物、酸塩化物などを挙げることができる。
【0100】
結晶性ポリエステル樹脂の形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分を重縮合する(エステル化する)ことにより形成することができる。
上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率としては、多価カルボン酸成分のカルボキシ基に対する多価アルコール成分のヒドロキシ基の当量比を、1.5/1〜1/1.5の範囲内とすることが好ましく、1.2/1〜1/1.2の範囲内とすることがより好ましい。
【0101】
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。
具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。
アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。
これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
重合温度や重合時間は特に限定されるものではなく、重合中には必要に応じて反応系内を減圧してもよい。
【0103】
結晶性ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが共重合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂である場合、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの含有率は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して50質量%以上98質量%未満であることが好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の各ユニットの構成成分及び含有率は、例えば、NMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定により特定することができる。
【0104】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であると好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
【0105】
また、結晶性ポリエステル樹脂ユニットが、結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを主鎖として、グラフト化されていることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを有し、側鎖として結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向をより高めることができ、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、更に、スルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂ユニット中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット中であってもよい。
【0106】
また、多価アルコール成分の炭素数(C(alcohol))と、多価カルボン酸成分の炭素数(C(acid))とが、下記式(A)〜(C)の関係を満たすことが好ましい。
【0107】
C(acid)−C(alcohol)≧4 式(A)
C(acid)≧10 式(B)
C(alcohol)≦6 式(C)
【0108】
原料の炭素数が規定された結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖の鎖長が異なる多価アルコール成分と多価カルボン酸とを用いて形成されていることから、炭素数の短い分岐鎖と炭素数の長い分岐鎖とが、交互にポリエステル鎖に結合されたものとなる。このため、結晶化する際、規則性が低い部分が存在すると考えられる。従って、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂として、原料の炭素数が規定された結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、熱定着において結晶性ポリエステル樹脂の融点より高い温度の熱エネルギーが付与された際に、結晶の規則性が低い部分から順次に融解していくため、良好な低温定着性が得られる。
【0109】
C(acid)−C(alcohol)≧4であるが、C(acid)−C(alcohol)≧6を満たすことがより好ましい。
【0110】
なお、多価カルボン酸成分を2種以上含有する場合、上記C(acid)は、最も含有率(mol換算)の多い多価カルボン酸成分の炭素数とする。同率の場合は、炭素数が最も大きい多価カルボン酸成分の炭素数をC(acid)とする。
同様に、多価アルコール成分を2種以上含有する場合、上記C(alcohol)は、最も含有率(mol換算)の多い多価アルコール成分の炭素数とする。同率の場合は、炭素数が最も大きい多価カルボン酸成分の炭素数をC(alcohol)とする。
【0111】
(ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット)
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットは、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。
また、非晶性樹脂ユニットは、当該ユニットと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂ユニットである。
【0112】
非晶性樹脂ユニットは、上記したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂ユニットからなる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性樹脂ユニットを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性樹脂ユニットを有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0113】
非晶性樹脂ユニットは、結着樹脂に含まれる非晶性ビニル樹脂と同種の樹脂であるビニル樹脂ユニットであることが好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ビニル樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ビニル樹脂中に更に取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。
【0114】
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
【0115】
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらも同種の樹脂である。
【0116】
非晶性樹脂ユニットを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂ユニット、ウレタン樹脂ユニット、ウレア樹脂ユニットなどが挙げられる。中でも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂ユニットが好ましい。
ビニル樹脂ユニットとしては、ビニル単量体が重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂ユニット、スチレン・アクリル酸エステル樹脂ユニット、エチレン・酢酸ビニル樹脂ユニットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン・アクリル樹脂ユニットの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0117】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0118】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとを分子結合させた構造の共重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0119】
(1)非晶性樹脂ユニットをあらかじめ重合しておき、当該非晶性樹脂ユニットの存在下で結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
この方法では、まず、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。
次に、非晶性樹脂ユニットの存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。このとき、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させるとともに、非晶性樹脂ユニットに対し、多価アルコール成分又は多価カルボン酸を付加反応させることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が形成される。
【0120】
上記方法において、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性樹脂ユニットの形成時、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに残存するカルボキシ基又はヒドロキシ基と反応可能な部位及び非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂ユニット中のカルボキシ基又はヒドロキシ基と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットは非晶性樹脂ユニットと化学的に結合することができる。
若しくは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成時、多価アルコール成分又は多価カルボン酸成分と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
【0121】
(2)結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を付加重合させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
【0122】
次に、上記で形成した結晶性ポリエステルユニットと、非晶性樹脂ユニットとを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
【0123】
(3)結晶性ポリエステル樹脂ユニットをあらかじめ形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で非晶性樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価アルコール成分と多価カルボン酸とを重縮合反応させて、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成しておく。
次に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を重合反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、上記(1)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
【0124】
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに非晶性樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂ユニット鎖に結晶性ポリエステル樹脂ユニット鎖をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。
(1)の方法は、非晶性樹脂ユニットをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル樹脂ユニットを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
【0125】
〈着色剤〉
着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができ、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、同76などを挙げることができ、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部の範囲内である。
【0126】
〈荷電制御剤〉
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部の範囲内とされる。
【0127】
〈外添剤〉
本発明に係るトナー母体粒子は、そのままで本発明の静電荷像現像用トナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加してもよい。
【0128】
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。
【0129】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0130】
〈トナー粒子の粒径〉
トナー粒子の平均粒径は、例えば、体積基準のメジアン径(d
50)で3〜10μmの範囲内であることが好ましく、5〜8μmの範囲内であることがより好ましい。
このトナー粒子の平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
体積基準のメジアン径(d
50)が上記範囲内であることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することが可能となる。
【0131】
トナー粒子の体積基準のメジアン径(d
50)は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定、算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(d
50)とされる。
【0132】
〈トナー粒子の平均円形度〉
トナー粒子は、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
【0133】
トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にて馴染ませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(I)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性が得られる。
【0134】
式(I)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0135】
〈現像剤〉
本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散した分散型キャリア等用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d
50)としては、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d
50)は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0136】
《静電荷像現像用トナーの製造方法》
〈トナー母体粒子の製造方法〉
本発明に係るトナー母体粒子の製造方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法等を挙げることができるが、中でも乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コスト及び製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
【0137】
乳化凝集法によるトナー母体粒子の製造方法は、水系媒体中に必要に応じて離型剤を含む非晶性ビニル樹脂微粒子が分散された水系分散液と、着色剤微粒子の水系分散液と、結晶性ポリエステル樹脂の水系分散液とを混合し、非晶性ビニル樹脂微粒子と着色剤微粒子と結晶性ポリエステル樹脂とを凝集させることにより、トナー母体粒子を形成し、静電荷像現像用トナーを作製する方法である。
【0138】
ここで、水系分散液とは、水系媒体中に、分散体(粒子)が分散されているものであり、水系媒体とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0139】
非晶性ビニル樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の非晶性ビニル樹脂微粒子は、例えば、2層構造を有する非晶性ビニル樹脂微粒子は、常法に従った重合処理(第1段重合)によって樹脂微粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法によって得ることができる。
【0140】
以下に、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一例として、乳化凝集法による製造方法を示す。
【0141】
(1)離型剤を含有する非晶性ビニル樹脂微粒子を作製する、非晶性ビニル樹脂微粒子作製工程
(2)結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより結晶性ポリエステル樹脂微粒子を作製する、結晶性ポリエステル樹脂微粒子作製工程
(3)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる、着色剤微粒子の水系分散液調製工程
(4)水系媒体中において、非晶性ビニル樹脂微粒子と着色剤微粒子と結晶性ポリエステル樹脂微粒子とを凝集させてコア粒子を形成する、コア粒子形成工程
(5)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御しトナー母体粒子を得る、熟成工程
(6)トナー母体粒子の分散液を冷却する、冷却工程
(7)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する、濾過・洗浄工程
(8)洗浄されたトナー母体粒子を乾燥する、乾燥工程
(9)乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を添加する、外添剤添加工程
【0142】
(1)非晶性ビニル樹脂微粒子作製工程
この工程においては、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液は、非晶性ビニル樹脂を得るためのビニル単量体を使用してミニエマルション重合法によって調製することができる。
例えば、界面活性剤を含有した水系媒体中にビニル単量体を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤からのラジカルにより当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。
【0143】
(界面活性剤)
この工程において使用される界面活性剤としては、従来公知の種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いることができる。
【0144】
(重合開始剤)
この工程において使用される重合開始剤は、従来公知の種々のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)が好ましく用いられる。その他、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物、アゾビスイソブチロニトリル等を用いてもよい。
【0145】
(連鎖移動剤)
この工程においては、非晶性ビニル樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタンや、スチレンダイマー等を挙げることができる。
【0146】
本発明に係るトナー母体粒子中には、離型剤が含有されている。この離型剤は、例えば、あらかじめ非晶性ビニル樹脂を形成するための単量体の溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー母体粒子中に導入することができる。
【0147】
また、本発明に係るトナー母体粒子中には、必要に応じて、荷電制御剤等の他の内添剤が含有されていてもよい。このような内添剤は、例えば、あらかじめ非晶性ビニル樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させておくことによってトナー母体粒子中に導入することができる。
このような内添剤は、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、コア粒子形成工程において、非晶性ビニル樹脂微粒子、着色剤微粒子及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子とともに当該内添剤微粒子を凝集させることにより、トナー母体粒子中に導入することもできるが、この工程においてあらかじめ導入する方法を採用することが好ましい。
【0148】
非晶性ビニル樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(d
50)で100〜400nmの範囲内であることが好ましい。
本発明において、スチレン・アクリル系樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d
50)は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0149】
(2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子作製工程
この工程においては、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液が調製される。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液は、結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散することによって調製することができる。具体的には、結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化等によって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去することにより調製することができる。
【0150】
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。
水系媒体中には、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤等が添加されていてもよい。界面活性剤としては、上記の工程に挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0151】
油相液の調製に使用される有機溶媒としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内である。
油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。
【0152】
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(d
50)で100〜400nmの範囲内にあることが好ましい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(d
50)は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて測定される値である。
【0153】
(3)着色剤微粒子の水系分散液調製工程
この工程は、トナー母体粒子として着色剤を含有するものを所望する場合に、必要に応じて行う工程であって、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤微粒子の水系分散液を調製する工程である。
【0154】
着色剤微粒子の水系分散液は、界面活性剤を臨界ミセル濃度(CMC)以上に添加した水系媒体中に着色剤を分散させることにより得られる。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、使用する分散機としては、特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0155】
着色剤微粒子は、分散した状態で体積基準のメジアン径(d
50)が10〜300nmの範囲内であることが好ましく、100〜200nmの範囲内であることがより好ましく、100〜150nmの範囲内であることが特に好ましい。
本発明において、着色剤微粒子の体積基準のメジアン径(d
50)は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される値である。
【0156】
(4)コア粒子形成工程
この工程においては、非晶性ビニル樹脂微粒子、着色剤微粒子及び結晶性ポリエステル樹脂微粒子、並びに必要に応じて、その他のトナー構成成分の微粒子を凝集させて、コア粒子を形成する。
具体的には、水系媒体中に上記の各微粒子が分散された水系分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え、非晶性ビニル樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にすることによって、凝集させる。
【0157】
(凝集剤)
この工程において使用される凝集剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等の1価の金属塩、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
(5)熟成工程
この工程は、必要に応じて行われるものであって、当該熟成工程においては、コア粒子形成工程によって得られたトナー母体粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させてトナー母体粒子を形成させる熟成処理が行われる。
熟成処理は、具体的には、会合粒子が分散された系を加熱撹拌することにより、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間等により調整することにより行われる。
【0159】
(6)冷却工程
この工程は、トナー母体粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理の条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等を例示することができる。
【0160】
(7)濾過・洗浄工程
この工程は、冷却されたトナー母体粒子の分散液から当該トナー母体粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー母体粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去して洗浄する工程である。
固液分離には、特に限定されずに、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法等を用いることができる。また、洗浄においては、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄することが好ましい。
【0161】
(8)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナー母体粒子の製造方法における乾燥工程に従って行うことができる。
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することが好ましい。
乾燥されたトナー母体粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
なお、乾燥されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、その凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0162】
(9)外添剤添加工程
この工程は、トナー母体粒子に対して外添剤を添加する場合に、必要に応じて行う工程である。
上記のトナー母体粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー母体粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加した状態で使用してもよい。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0163】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法としては、少なくとも上記工程(1)、(2)及び(4)を有していればよく、必要に応じて、工程(3)、(5)〜(9)を実施してもよい。なお、工程(3)を実施しない場合、工程(4)において、非晶性ビニル樹脂微粒子と結晶性ポリエステル樹脂微粒子とを凝集させてコア粒子を形成する。
【0164】
また、本発明に係るトナー母体粒子においては、コア・シェル構造を取っていないが、耐熱性の観点から、コア・シェル構造を取って構わない。例えば、工程(4)のコア粒子形成工程後に、シェル層形成工程を設けてもよい。そのとき、シェル層は、非晶性樹脂からなることが好ましい。
また、結晶性樹脂分散液を添加するタイミングとしては、工程(4)のコア粒子形成工程の初期段階(昇温過程)であることが好ましい。
【実施例】
【0165】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0166】
なお、本実施例において、エステルワックス(第1の離型剤成分)及びマイクロクリスタリンワックス(第2の離型剤成分)、並びに結晶性ポリエステル樹脂由来の融点は、トナーの示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を行うことにより求めた。示差走査熱量測定には、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いた。
測定は、昇降速度10℃/minで室温(25℃)から150℃まで昇温し、5分間150℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで150℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び、昇降速度10℃/minで0℃から150℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行った。上記測定は、トナー3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行った。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用した。
上記測定において、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線から解析を行い、第1及び第2の離型剤成分、並びに結晶性ポリエステル樹脂由来の吸熱ピークのトップ温度を、融点(℃)とした。
【0167】
《離型剤微粒子の分散液の調製》
〈離型剤微粒子の分散液(W)の調製〉
離型剤としてベヘン酸ベヘニル382.5質量部及びHNP−0190(日本精蝋製)67.5質量部、ラウリル硫酸ナトリウム50質量部並びにイオン交換水3500質量部を80℃に加熱して、IKA社製のウルトラタラクスT50にて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積基準のメジアン径(d
50)が180nmの離型剤の微粒子が分散された離型剤微粒子の分散液(W)を調製した。
【0168】
《結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製》
〈結晶性ポリエステル樹脂の合成〉
(1)結晶性ポリエステル樹脂(c1)の合成
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、ドデカン二酸200質量部、1,6−ヘキサンジオール102質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)
4を0.3質量部投入し、更に、生成される水を留去しながら反応系の温度を190℃から6時間かけて240℃に上昇させ、更に、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(c1)は、重量平均分子量(Mw)が14500、融点(T
mc)が70℃であった。
【0169】
(2)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c2)の合成
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
【0170】
スチレン 34質量部
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
【0171】
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0172】
ドデカン二酸 250質量部
1,6−ヘキサンジオール 128質量部
【0173】
次いで、攪拌下で付加重合系樹脂(StAc)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)
4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
【0174】
次いで、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c2)を得た。
得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c2)は、重量平均分子量(Mw)が18000、融点(T
mc)が67℃であった。
【0175】
(3)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c3)及び(c4)の合成
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c2)の合成において、重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーの原料を下記のように変更した以外は同様にして、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c3)及び(c4)を合成した。
得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c3)及び(c4)は、重量平均分子量(Mw)がそれぞれ26200、22800、融点(T
mc)がそれぞれ75℃、64℃であった。
【0176】
・ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c3)
テトラデカン二酸 440質量部
1,4−ブタンジオール 153質量部
【0177】
・ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c4)
セバシン酸 242質量部
1,6−ヘキサンジオール 141質量部
【0178】
(4)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c5)の合成
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、セバシン酸275質量部、1,12−ドデカンジオール275質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)
4を0.3質量部投入し、更に、生成される水を留去しながら反応系の温度を190℃から6時間かけて240℃に上昇させ、更に、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(c5′)を得た。続いて、得られた結晶性ポリエステル樹脂(c5′)を、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に移し、酢酸エチル300質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート44質量部を加え、窒素気流下にて80℃で5時間反応させた。
【0179】
次いで、減圧下(15kPa)にて酢酸エチルを留去してハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c5)を得た。
得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c5)は、重量平均分子量(Mw)が52000、融点(T
mc)が79℃であった。
【0180】
(5)結晶性ポリエステル樹脂(c6)の合成
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、フマル酸148質量部、アジピン酸61質量部、1,6−ヘキサンジオール205質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)
4を0.3質量部投入し、更に、生成される水を留去しながら反応系の温度を190℃から6時間かけて240℃に上昇させ、更に、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(c6)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(c6)は、重量平均分子量(Mw)が20400、融点(T
mc)が90℃であった。
【0181】
〈結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製〉
(1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)の調製
上記で得られた結晶性ポリエステル樹脂(c1)72質量部をメチルエチルケトン72質量部に、70℃で30分撹拌し溶解させた。次に、この溶液を撹拌しながら、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加した。次いで、イオン交換水250質量部にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液を70分にわたり滴下した。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)の減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂(c1)の微粒子が分散された結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)を調製した。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)に含まれる粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(HORIBA製)」にて測定した結果、132nmであった。
【0182】
(2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C2)〜(C6)の調製
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)の調製において、結晶性ポリエステル樹脂(c1)を、それぞれハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c2)〜(c6)に変更した以外は同様にして、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C2)〜(C6)を調製した。
【0183】
なお、下記表1中、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C6)の炭素数C(asid)は、より含有率(mol換算)の高いフマル酸の炭素数を示している。
【0184】
【表1】
【0185】
《非晶性樹脂微粒子の分散液の調製》
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製〉
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部と、イオン交換水3000質量部とを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温を75℃とした後、スチレン(St)568質量部、n−ブチルアクリレート(BA)164質量部及びメタクリル酸(MAA)68質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃において2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂微粒子(a1)の分散液を調製した。
【0186】
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、樹脂微粒子(a1)の分散液を固形分換算で42質量部と、スチレン(St)195質量部、n−ブチルアクリレート(BA)91質量部、メタクリル酸(MAA)20質量部及びn−オクチルメルカプタン4.0質量部からなる混合液に離型剤としてベヘン酸ベヘニル37.8質量部、HNP−0190を16.2質量部、80℃において溶解させた単量体混合液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、1時間混合、分散させて、乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第2段重合)を行い、これにより樹脂微粒子(a1′)の分散液を調製した。
【0187】
(3)第3段重合
樹脂微粒子(a1′)の分散液に、過硫酸カリウム(KPS)8質量部をイオン交換水150質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下において、スチレン(St)339質量部、n−ブチルアクリレート(BA)120質量部、メタクリル酸(MAA)32質量部及びn−オクチルメルカプタン8.1質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第3段重合)を行い、その後、28℃まで冷却することにより、体積基準のメジアン径(d
50)が168nmである、水系媒体中に離型剤を含有した非晶性樹脂(スチレン・アクリル樹脂)の微粒子が分散された非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)を調製した。
【0188】
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)〜(A4)、(A7)及び(A8)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、離型剤を下記のように変更した以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)〜(A4)、(A7)及び(A8)を調製した。
【0189】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)
ベヘン酸ベヘニル 38.2質量部
HNP−0190 55.0質量部
【0190】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A3)
ベヘン酸ステアリル 79.2質量部
HNP−0190 14.0質量部
【0191】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A4)
ベヘン酸ベヘニル 79.2質量部
HNP−0190 14.0質量部
【0192】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A7)
ベヘン酸ベヘニル 35.4質量部
HNP−0190 57.8質量部
【0193】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A8)
ベヘン酸ベヘニル 92.3質量部
HNP−0190 0.9質量部
【0194】
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A5)の調製〉
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部と、イオン交換水3000質量部とを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温を75℃とした後、スチレン(St)568質量部、n−ブチルアクリレート(BA)164質量部及びメタクリル酸(MAA)68質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃において2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂微粒子(a5)の分散液を調製した。
【0195】
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、樹脂微粒子(a5)の分散液を固形分換算で39質量部と、スチレン(St)180質量部、n−ブチルアクリレート(BA)83質量部、メタクリル酸(MAA)18質量部及びn−オクチルメルカプタン3.8質量部からなる混合液に離型剤としてペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル153.7質量部、Hi−Mic−1090を28.0質量部、85℃において溶解させた単量体混合液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、1時間混合、分散させて、乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第2段重合)を行い、これにより樹脂微粒子(a5′)の分散液を調製した。
【0196】
(3)第3段重合
樹脂微粒子(a5′)の分散液に、過硫酸カリウム(KPS)8質量部をイオン交換水150質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下において、スチレン(St)313質量部、n−ブチルアクリレート(BA)111質量部、メタクリル酸(MAA)29質量部及びn−オクチルメルカプタン7.5質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第3段重合)を行い、その後、28℃まで冷却することにより、体積基準のメジアン径(d
50)が194nmである、水系媒体中に離型剤を含有した非晶性樹脂(スチレン・アクリル樹脂)の微粒子が分散された非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A5)を調製した。
【0197】
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A6)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A5)の調製において、離型剤を下記のように変更した以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A6)を調製した。
【0198】
・非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A6)
ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル 143.2質量部
HNP−0190 40.4質量部
【0199】
〈非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(A9)の調製〉
(1)非晶性ポリエステル樹脂(a9)の作製
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(BPA−EO)50質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA−PO)249質量部、テレフタル酸(TPA)91質量部、フマル酸(FA)46質量部及びエステル化触媒(オクチル酸スズ)2質量部を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、更に、8kPaで1時間反応させ、非晶性ポリエステル樹脂(a9)を得た。
【0200】
(2)非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(A9)の調製
非晶性ポリエステル樹脂(a9)100質量部を「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所社製)を用いてV−LEVEL、300μAで60分間超音波分散することにより、体積基準のメジアン径(d
50)が160nmである非晶性ポリエステル樹脂の微粒子が分散された非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(A9)を調製した。
【0201】
表2には、非晶性樹脂中の第1及び第2の離型剤成分の融点を示している。
【0202】
【表2】
【0203】
《着色剤粒子の水系分散液の調製》
〈着色剤粒子の水系分散液(Cy1)の調製〉
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)を調製した。
得られた着色剤粒子の水系分散液(Cy1)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径(d
50)は110nmであった。
【0204】
《トナーの作製》
〈トナー(1)の作製〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液(A1)137質量部(固形分換算)、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(A9)274質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)46質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH(25℃換算)を10に調整した。
【0205】
その後、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)24質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(d
50)が6.1μmになった時点で、塩化ナトリウム100質量部をイオン交換水450質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。トナー粒子の平均円形度は、測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて、HPF検出数を4000個として測定した。
【0206】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子を得た。
【0207】
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)1.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)0.6質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで20分間混合し、体積平均粒径が6.1μmであるトナー(1)を得た。
【0208】
〈トナー(2)〜(9)及び(11)〜(14)の作製〉
トナー(1)の作製において、非晶性樹脂微粒子の水系分散液、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液を表3に記載のとおりに変更した以外は同様にして、トナー(2)〜(9)及び(11)〜(14)を作製した。
【0209】
〈トナー(10)の作製〉
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(A9)を374質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)を46質量部(固形分換算)、離型剤微粒子の分散液(W)を37質量部(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH(25℃換算)を10に調整した。
【0210】
その後、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)24質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(d
50)が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム100質量部をイオン交換水450質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
【0211】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子を得た。
【0212】
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)1.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)0.6質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで20分間混合し、体積平均粒径が6.1μmであるトナー(10)を得た。
【0213】
【表3】
【0214】
《現像剤の作製》
トナー(1)〜(14)に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)〜(14)をそれぞれ製造した。
【0215】
《評価》
〈低温定着性〉
複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラーの表面温度を100〜210℃の範囲内で変更することができるように改造したものに、上記の現像剤(1)〜(14)をそれぞれ装填した。評価紙として、「NPi上質紙(128g/m
2)」(日本製紙社製)を用い、常温常温(温度20℃、相対湿度55%)において、トナー付着量8mg/10cm
2のベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を95℃から5℃刻みで増加させるよう変更しながら200℃まで繰り返し行った。
次いで、各定着温度の定着実験において得られたプリント物を、折り機で上記ベタ画像に荷重をかけるように折り、これに0.35MPaの圧縮空気を吹き付け、折り目を下記の評価基準に示す5段階にランク付けした。
【0216】
ランク5:全く折れ目なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:大きな剥離あり
【0217】
ランク3となる定着実験のうち、最も定着温度の低い定着実験における定着温度を、最低定着温度として評価した。◎〜△を合格とした。
評価結果を表4に示す。
【0218】
◎:最低定着温度が150℃以下
○:最低定着温度が150℃を超え160℃以下
△:最低定着温度が160℃を超え180℃以下
×:最低定着温度が180℃を超える
【0219】
〈耐高温オフセット性〉
複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラーの表面温度を100〜210℃の範囲内で変更することができるように改造したものに、上記の現像剤(1)〜(14)をそれぞれ装填した。評価紙として、普通紙「Jペーパー(64g/m
2)」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、常温常温(温度20℃、相対湿度55%)において、トナー付着量8mg/10cm
2のベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を150℃から5℃刻みで増加させるよう変更しながら210℃まで繰り返し行い、ベタ画像のオフセットを目視で評価した。〇及び△を合格とした。
評価結果を表4に示す。
【0220】
○:200℃までオフセットなし
△:180℃を超え200℃以下でオフセット発生
×:180℃以下でオフセット発生
【0221】
〈定着分離性〉
複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラーの表面温度を100〜210℃の範囲内で変更することができるように改造したものに上記の現像剤(1)〜(14)をそれぞれ装填した。定着装置を加熱ローラーの表面温度を190℃に設定し、常温常温(温度20℃、相対湿度55%)において、縦送りで搬送したA4サイズの記録紙「OKプリント上質(52.3g/m
2)(王子製紙社製)」上に、トナー付着量8mg/10cm
2の加熱ローラーの軸方向に伸びる10cm幅のベタ帯状画像を定着させ、その分離性を下記評価基準に従って評価した。○及び△を合格とした。
評価結果を表4に示す。
【0222】
〇:記録紙がカールすることなく加熱ローラーと分離できる、画像劣化なし
△:記録紙が加熱ローラーと分離するが、画像上に白スジが観察される
×:加熱ローラーヘの巻付きが発生してしまい、当該加熱ローラーと分離できない
【0223】
〈光沢ムラ〉
複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラーの表面温度を100〜210℃の範囲内で変更することができるように改造したものに上記の現像剤(1)〜(14)をそれぞれ装填した。定着装置を加熱ローラーの表面温度を190℃に設定し、常温常温(温度20℃、相対湿度55%)において、「PODグロスコート紙(128g/m
2)(王子製紙社製)」上に、トナー付着量8mg/10cm
2のベタ画像を定着させ、そのベタ画像の最大光沢度と最小光沢度との差(Gloss差)を算出し、下記評価基準に従って評価した。◎〜△を合格とした。
評価結果を表4に示す。
【0224】
◎:Gloss差≦3(最高光沢度と最低光沢度の差がほとんどわからない)
○:3<Gloss差≦8(最高光沢度と最低光沢度の差が少しあるが実用上問題ない)
△:8<Gloss差≦15(最高光沢度と最低光沢度の差があるが実用上問題ない)
×:15<Gloss差(最高光沢度と最低光沢度の差がはっきりしており、実用上問題がある)
【0225】
【表4】
【0226】
表4から明らかなように、本発明のトナーは、比較例のトナーと比べて、低温定着性、耐高温オフセット性、定着分離性及び光沢ムラの点において優れていることがわかる。
以上から、離型剤がエステルワックス
からなる第1の離型剤成分とマイクロクリスタリンワックス
からなる第2の離型剤成分とを含有し、離型剤中、第1の離型剤成分の含有率が
70〜
96質量%の範囲内で、第2の離型剤成分の含有率が
4〜
30質量%の範囲内であり、結着樹脂中、結晶性ポリエステル樹脂の含有率が5〜20質量%の範囲内であることが、低温定着性と耐高温オフセット性を確保しつつ、定着分離性、光沢均一性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することに有用であることが確認された。