【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボルト締め端子の積層構造では、端子とボルト以外に、回り止め本体110および長さの相違する複数本の回り止めピン120、これら複数の回り止めピン120の下端をそれぞれ嵌合係止する複数の嵌合凹部122を固定材123に設ける必要がある。このように、端子とボルト以外の別部品が必要になる。固定材123を車体パネルとすると、車体パネルに嵌合凹部を設ける必要があると共にネジ穴を設けた取付ボスを突設する必要があり、車体パネル側の加工数が増加する問題がある。
【0006】
特に、ボルト締め端子をアース端子として用い、積層して車体パネルに一括固定する場合、自動車組立ラインにおいて、車体パネルからなる固定材の取付ボス上に複数のアース端子を積層し、其の上面に回り止め本体を搭載すると共に回り止めピンをアース端子の両面に接触配置する組付作業を行う必要があり、自動車組立ラインでの作業が繁雑になる問題がある。
【0007】
また、特許文献2も複雑な形状の集合端子201が必要となり、コスト高になる。かつ、集合端子201に積層して取り付けるアース端子200は、
図10(B)に示すように、集合する電線の方向が同一方向に特定され、かつ、異なるアース端子200に接続する電線が上下に重なって干渉し、アース端子と電線の圧着部が接触して損傷を受ける恐れがある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、アース端子等として用いられるボルト締め端子の電線接続部が上下に干渉されることなく配置でき、かつ、車体固定前に予め上下積層配置しておくこと及び積層連結具を用いてボルト締結前にボルト締め端子を車体に仮固定できるようにして、車体パネル等への固定作業を簡単にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、
中央にボルト穴を設けた電気接触部に電線接続部を連続させたボルト締め端子を上下に積層保持する積層連結具であって、ボルト貫通用の中央穴を設けた環状の下段部材と上段部材からなり、
前記下段部材の中央穴を囲む環状部の上面に周方向に一定の角度で上下段差部を設け、隣接する段差面の高さを前記ボルト締め端子の厚さ寸法に相当する寸法で相違させる一方、
前記上段部材の中央穴を囲む環状部に周方向に一定間隔をあけて外周面に開口する電線接続部挿入穴を設け、該上段部材の環状部の下面に前記下段部材の上面の上下段差部に対応させて周方向に上下段差部を設け、かつ、前記電線接続部挿入穴の下面は前記下段部材の上面と端子挿通空間をあけた位置となる段部とし、該段部に挟まれた部分に前記下段部材の上面に当接させる突出部を設け、かつ、前記各電線接続部挿入穴の開口に近接する両側面に前記ボルト締め端子の電線接続部の基板上面から突出するバレル加締め部または溶接部の後端に当たる被係止部に係止する係止突起を設け、
前記下段部材の上面の上下段差部に前記上段部材の下面の上下段差部の各突出部を当接させて重ねた状態で、周方向に間隔をあけて形成される前記端子挿通空間の上下高さが相違し、各端子挿通空間に挿入する前記ボルト締め端子の電気接触部が前記中央穴に上下に積層した状態で、該ボルト締め端子の前記被係止部に前記係止突起を係止する構成としているボルト締め端子の積層連結具を提供している。
【0010】
前記のように、本発明の積層連結具は、ボルト貫通用の中央穴を設けた環状の下段部材と上段部材とを上下に組み合わせて形成してなり、
前記中央穴を囲む環状の下段部材の上面と前記上段部材の下面とに周方向に一定の角度で上下段差部を設け、該下段部材の上面の上下段差部と上段部材の下面の上下段差部を接合して組みつけた状態で、周方向に一定間隔をあけると共に前記ボルト締め端子の電気接触部の厚さと対応する寸法で上下高さを相違させた複数の端子挿通空間を設け、
前記端子挿通空間は前記上段部材に設ける電線接続部挿入穴と、該電線接続部挿入穴の下部に連続する前記下段部材に設ける幅広の電気接触部挿通部とからなり、
前記電線接続部挿通穴と電気接触部挿通部の外周面は開口とし、かつ、前記電線接続部挿通穴の外周側開口の両側面から前記ボルト締め端子の電線接続部の基板上面から突出するバレル加締め部または溶接部の後端に当たる被係止部に係止する係止突起を設け、
前記下段部材の電気接触部挿通部の内周を開口として前記中央穴に連通させ、
複数の前記端子挿通空間に前記ボルト締め端子を挿入し、前記中央穴に上下に積層した状態で、該ボルト締め端子の前記被係止部に前記係止突起が係止する構成としている。
【0011】
前記のように、本発明の積層連結具は、前記端子挿通空間を周方向に一定間隔をあけて複数個設けている。90度間隔をあけた場合には、電線端末に接続した4個のボルト締め端子を90度間隔をあけた4方向から挿入して中央で上下に重ねるようにしている。60度間隔をあけて6個設けた場合には、6本の電線を6方向から配線して中央で重ね、さらに、45度間隔をあけて8個設けた場合には、8本の電線を8方向から配線して中央に重ねるようにしており、隣接するボルト締め端子の電線接続部が上下に重ならない範囲で多数設けることができる。
このように、ボルト締め端子の電線接続部が重ならないようにできるため、ボルトによる締結時に着座不良、接触不良およびボルトの緩み発生を防止できる。
【0012】
前記ボルト締め端子は、円板の中央にボルト穴を設けた電気接触部を有する汎用のボルト締め端子で、該電気接触部に連続する電線接続部は電線と端子のバレルを加締め圧着または溶接(抵抗溶接又は超音波溶接)のいずれかで接続するタイプとしている。
前記上段部材および下段部材は円環形状とし、上下に重ねた状態で連結保持する結合手段を設けている。該結合手段として、ロック爪を上段部材に設け、該ロック爪が挿入係止するロック枠を下段部材に設けることが好ましい。
【0013】
また、前記積層連結具で上下積層するボルト締め端子がアース端子で、車体パネルにボルト締結でアース接続する場合、
前記下段部材の底面から係止脚を突設し、前記車体パネルのボルト穴の周縁に設けた係止穴に前記係止脚を挿入係止する構成とすることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は前記積層連結具を用いたボルト締め端子の積層保持方法として、
前記上段部材と下段部材とを結合して形成する各端子挿通空間の下面に電線端末に接続したボルト締め端子を沿わせて前記電気接触部より挿入し、該ボルト締め端子の突出した前記被係止部の両側に前記係止突起を係止して、電線接続部に連続する電気接触部を前記上段部材の中央穴に突出させ、該電線端末のボルト締め端子を周方向に位相させて前記中央穴内に前記電気接触部を上下に積層すると共に、前記電線接続部および接続する電線を周方向に重ならないように位相させた状態で保持する積層連結具を用いたボルト締め端子の積層保持方法を提供している。
【0015】
また、前記ボルト締め端子を車両に配線するアース線の端末に接続するアース端子として用い、積層する前記ボルト締め端子を前記積層連結具に挿入保持しておき、
車体パネル等の接地部材に設けたボルト穴に前記積層連結具で保持したアース端子のボルト穴を連通させ、ボルトを通して前記接地部材にナットで締結することが好ましい。
なお、本発明のボルト締め端子はアース端子としての使用に限定されず、電源線用の端子として用いることもできる。
【0016】
前記のように、複数枚のボルト締め端子を積層して車体パネル等の固定材にボルトで締結固定する際、予め積層連結具で複数のボルト締め端子を位置決め保持できる。よって、車両組立ラインで、アース端子を予め保持した積層連結具を車体パネルのアースポイントに設置し、該積層連結具で積層保持されたボルト締め端子のボルト穴にボルトを通してナットと締結するだけでよいため、作業手数を大幅に簡素化できる。
なお、車両組み立てラインで、他のワイヤハーネスの電線端末のアース端子を前記積層連結具で積層保持して組み立てても良いことは言うまでもない。
【0017】
また、前記積層連結具の下段部材の底面に係止脚を突設し、車体パネルに設けた係止穴に挿入係止すると、複数のアース端子を積層保持した状態で車体パネルのアースポイントにワンタッチで設置することができる。