特許第6237723号(P6237723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237723ボルト締め端子の積層連結具および積層固定構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237723
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ボルト締め端子の積層連結具および積層固定構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/34 20060101AFI20171120BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01R4/34
   H01R4/64 C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-145632(P2015-145632)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-27807(P2017-27807A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田 和美
(72)【発明者】
【氏名】羽渕 顕一郎
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−128487(JP,A)
【文献】 特開2009−302024(JP,A)
【文献】 特開2009−283375(JP,A)
【文献】 特開平05−211072(JP,A)
【文献】 特開2014−086359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/34
H01R 4/64
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央にボルト穴を設けた電気接触部に電線接続部を連続させたボルト締め端子を上下に積層保持する積層連結具であって、ボルト貫通用の中央穴を設けた環状の下段部材と上段部材からなり、
前記下段部材の中央穴を囲む環状部の上面に周方向に一定の角度で上下段差部を設け、隣接する段差面の高さを前記ボルト締め端子の厚さ寸法に相当する寸法で相違させる一方、
前記上段部材の中央穴を囲む環状部に周方向に一定間隔をあけて外周面に開口する電線接続部挿入穴を設け、該上段部材の環状部の下面に前記下段部材の上面の上下段差部に対応させて周方向に上下段差部を設け、かつ、前記電線接続部挿入穴の下面は前記下段部材の上面と端子挿通空間をあけた位置となる段部とし、該段部に挟まれた部分に前記下段部材の上面に当接させる突出部を設け、かつ、前記各電線接続部挿入穴の開口に近接する両側面に前記ボルト締め端子の電線接続部の基板上面から突出するバレル加締め部または溶接部の後端に当たる被係止部に係止する係止突起を設け、
前記下段部材の上面の上下段差部に前記上段部材の下面の上下段差部の各突出部を当接させて重ねた状態で、周方向に間隔をあけて形成される前記端子挿通空間の上下高さが相違し、各端子挿通空間に挿入する前記ボルト締め端子の電気接触部が前記中央穴に上下に積層した状態で、該ボルト締め端子の前記被係止部に前記係止突起を係止する構成としているボルト締め端子の積層連結具。
【請求項2】
前記積層連結具で上下積層するボルト締め端子はアース端子で、車体パネルにボルト締結でアース接続され、
前記下段部材の底面から係止脚を突設し、前記車体パネルのボルト穴の周縁に設けた係止穴に前記係止脚を挿入係止する構成としている請求項1に記載のボルト締め端子の積層連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボルト締め端子の積層連結具および該積層連結具を用いたボルト締め端子の積層固定構造に関し、詳しくは、アース端子等として汎用されているボルト締め端子を1カ所に積層し、ボルトを用いて車体等に締結固定するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アース端子等として用いる複数のボルト締め端子を1カ所に重ねて固定するため、図9に示す接続端子の回り止め構造が特開2002−50417号公報で提供されている。該構造では複数のボルト締め端子100Aと100Bを180度位相させて積層し、その上面に回り止め本体110を重ね、該回り止め本体110に突設する回り止めピン120をボルト締め端子100A、100Bの両側面に当接させて位置決め保持して、固定材123に設けた嵌合凹部122に嵌合係止している。該固定材123にネジ穴124hを設けた取付ボス124を突設し、積層するボルト締め端子100A、100Bのボルト穴に上方から通したボルト150をネジ込み、取付ボス124にボルト締め端子100Aと100Bを電線同士が重なることなく積層固定している。
【0003】
また、特開平8−7942号公報では、図10に示す四角形状としたアース端子200を用い、集合端子201の両側に蛇腹状に上下段で設けたU字溝202、203に複数枚のアース端子200をそれぞれ挿入しながら上下配置し、ボルト205を積層しているアース端子200のボルト穴200hおよび集合端子201の下端連結部の中央に設けたボルト穴201hに挿入して車体のボルト穴に締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−50417号公報
【特許文献2】特開平8−7942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のボルト締め端子の積層構造では、端子とボルト以外に、回り止め本体110および長さの相違する複数本の回り止めピン120、これら複数の回り止めピン120の下端をそれぞれ嵌合係止する複数の嵌合凹部122を固定材123に設ける必要がある。このように、端子とボルト以外の別部品が必要になる。固定材123を車体パネルとすると、車体パネルに嵌合凹部を設ける必要があると共にネジ穴を設けた取付ボスを突設する必要があり、車体パネル側の加工数が増加する問題がある。
【0006】
特に、ボルト締め端子をアース端子として用い、積層して車体パネルに一括固定する場合、自動車組立ラインにおいて、車体パネルからなる固定材の取付ボス上に複数のアース端子を積層し、其の上面に回り止め本体を搭載すると共に回り止めピンをアース端子の両面に接触配置する組付作業を行う必要があり、自動車組立ラインでの作業が繁雑になる問題がある。
【0007】
また、特許文献2も複雑な形状の集合端子201が必要となり、コスト高になる。かつ、集合端子201に積層して取り付けるアース端子200は、図10(B)に示すように、集合する電線の方向が同一方向に特定され、かつ、異なるアース端子200に接続する電線が上下に重なって干渉し、アース端子と電線の圧着部が接触して損傷を受ける恐れがある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、アース端子等として用いられるボルト締め端子の電線接続部が上下に干渉されることなく配置でき、かつ、車体固定前に予め上下積層配置しておくこと及び積層連結具を用いてボルト締結前にボルト締め端子を車体に仮固定できるようにして、車体パネル等への固定作業を簡単にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、
中央にボルト穴を設けた電気接触部に電線接続部を連続させたボルト締め端子を上下に積層保持する積層連結具であって、ボルト貫通用の中央穴を設けた環状の下段部材と上段部材からなり、
前記下段部材の中央穴を囲む環状部の上面に周方向に一定の角度で上下段差部を設け、隣接する段差面の高さを前記ボルト締め端子の厚さ寸法に相当する寸法で相違させる一方、
前記上段部材の中央穴を囲む環状部に周方向に一定間隔をあけて外周面に開口する電線接続部挿入穴を設け、該上段部材の環状部の下面に前記下段部材の上面の上下段差部に対応させて周方向に上下段差部を設け、かつ、前記電線接続部挿入穴の下面は前記下段部材の上面と端子挿通空間をあけた位置となる段部とし、該段部に挟まれた部分に前記下段部材の上面に当接させる突出部を設け、かつ、前記各電線接続部挿入穴の開口に近接する両側面に前記ボルト締め端子の電線接続部の基板上面から突出するバレル加締め部または溶接部の後端に当たる被係止部に係止する係止突起を設け、
前記下段部材の上面の上下段差部に前記上段部材の下面の上下段差部の各突出部を当接させて重ねた状態で、周方向に間隔をあけて形成される前記端子挿通空間の上下高さが相違し、各端子挿通空間に挿入する前記ボルト締め端子の電気接触部が前記中央穴に上下に積層した状態で、該ボルト締め端子の前記被係止部に前記係止突起を係止する構成としているボルト締め端子の積層連結具を提供している。
【0010】
前記のように、本発明の積層連結具は、ボルト貫通用の中央穴を設けた環状の下段部材と上段部材とを上下に組み合わせて形成してなり、
前記中央穴を囲む環状の下段部材の上面と前記上段部材の下面とに周方向に一定の角度で上下段差部を設け、該下段部材の上面の上下段差部と上段部材の下面の上下段差部を接合して組みつけた状態で、周方向に一定間隔をあけると共に前記ボルト締め端子の電気接触部の厚さと対応する寸法で上下高さを相違させた複数の端子挿通空間を設け、
前記端子挿通空間は前記上段部材に設ける電線接続部挿入穴と、該電線接続部挿入穴の下部に連続する前記下段部材に設ける幅広の電気接触部挿通部とからなり、
前記電線接続部挿通穴と電気接触部挿通部の外周面は開口とし、かつ、前記電線接続部挿通穴の外周側開口の両側面から前記ボルト締め端子の電線接続部の基板上面から突出するバレル加締め部または溶接部の後端に当たる被係止部に係止する係止突起を設け、
前記下段部材の電気接触部挿通部の内周を開口として前記中央穴に連通させ、
複数の前記端子挿通空間に前記ボルト締め端子を挿入し、前記中央穴に上下に積層した状態で、該ボルト締め端子の前記被係止部に前記係止突起が係止する構成としている。
【0011】
前記のように、本発明の積層連結具は、前記端子挿通空間を周方向に一定間隔をあけて複数個設けている。90度間隔をあけた場合には、電線端末に接続した4個のボルト締め端子を90度間隔をあけた4方向から挿入して中央で上下に重ねるようにしている。60度間隔をあけて6個設けた場合には、6本の電線を6方向から配線して中央で重ね、さらに、45度間隔をあけて8個設けた場合には、8本の電線を8方向から配線して中央に重ねるようにしており、隣接するボルト締め端子の電線接続部が上下に重ならない範囲で多数設けることができる。
このように、ボルト締め端子の電線接続部が重ならないようにできるため、ボルトによる締結時に着座不良、接触不良およびボルトの緩み発生を防止できる。
【0012】
前記ボルト締め端子は、円板の中央にボルト穴を設けた電気接触部を有する汎用のボルト締め端子で、該電気接触部に連続する電線接続部は電線と端子のバレルを加締め圧着または溶接(抵抗溶接又は超音波溶接)のいずれかで接続するタイプとしている。
前記上段部材および下段部材は円環形状とし、上下に重ねた状態で連結保持する結合手段を設けている。該結合手段として、ロック爪を上段部材に設け、該ロック爪が挿入係止するロック枠を下段部材に設けることが好ましい。
【0013】
また、前記積層連結具で上下積層するボルト締め端子がアース端子で、車体パネルにボルト締結でアース接続する場合、
前記下段部材の底面から係止脚を突設し、前記車体パネルのボルト穴の周縁に設けた係止穴に前記係止脚を挿入係止する構成とすることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は前記積層連結具を用いたボルト締め端子の積層保持方法として、
前記上段部材と下段部材とを結合して形成する各端子挿通空間の下面に電線端末に接続したボルト締め端子を沿わせて前記電気接触部より挿入し、該ボルト締め端子の突出した前記被係止部の両側に前記係止突起を係止して、電線接続部に連続する電気接触部を前記上段部材の中央穴に突出させ、該電線端末のボルト締め端子を周方向に位相させて前記中央穴内に前記電気接触部を上下に積層すると共に、前記電線接続部および接続する電線を周方向に重ならないように位相させた状態で保持する積層連結具を用いたボルト締め端子の積層保持方法を提供している。
【0015】
また、前記ボルト締め端子を車両に配線するアース線の端末に接続するアース端子として用い、積層する前記ボルト締め端子を前記積層連結具に挿入保持しておき、
車体パネル等の接地部材に設けたボルト穴に前記積層連結具で保持したアース端子のボルト穴を連通させ、ボルトを通して前記接地部材にナットで締結することが好ましい。
なお、本発明のボルト締め端子はアース端子としての使用に限定されず、電源線用の端子として用いることもできる。
【0016】
前記のように、複数枚のボルト締め端子を積層して車体パネル等の固定材にボルトで締結固定する際、予め積層連結具で複数のボルト締め端子を位置決め保持できる。よって、車両組立ラインで、アース端子を予め保持した積層連結具を車体パネルのアースポイントに設置し、該積層連結具で積層保持されたボルト締め端子のボルト穴にボルトを通してナットと締結するだけでよいため、作業手数を大幅に簡素化できる。
なお、車両組み立てラインで、他のワイヤハーネスの電線端末のアース端子を前記積層連結具で積層保持して組み立てても良いことは言うまでもない。
【0017】
また、前記積層連結具の下段部材の底面に係止脚を突設し、車体パネルに設けた係止穴に挿入係止すると、複数のアース端子を積層保持した状態で車体パネルのアースポイントにワンタッチで設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
前記のように、本発明では、アース端子等として用いるボルト締め端子を積層保持する積層連結具は、特殊な端子ではなく汎用されているボルト締め端子を用いるためコスト低下を図ることができ、かつ、所定角度間隔をあけて隣接するボルト締め端子の電線接続部が上下に干渉されない位置に保持して積層できるため、ボルトによる締結時に着座不良、接触不良およびボルトの緩み発生を防止できる。さらに、該積層状態で被固定材の車体等の所定位置に搬送設置でき、車体に固定する自動車組立ラインでの作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態のボルト締め端子からなるアース端子を積層保持する積層連結具を示し、(A)は分解斜視図、(B)組みつけた状態の斜視図、(C)は(B)の正面図である。
図2】環状の積層連結具を展開させた状態で示す正面図である。
図3】ボルト締め端子に電線を接続した状態を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図4】前記電線に接続したボルト締め端子を積層連結具に取り付けた状態を示し、(A)は一部平面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。
図5】電線端末に接続したボルト締め端子を前記積層連結具に取り付ける方法を示す平面図である。
図6】前記積層連結具にボルト締め端子を取り付けた状態を示す平面図である。
図7】前記積層連結具で積層保持したボルト締め端子を車体パネルにボルト締めしている状態を示す断面図である。
図8】(A)(B)は第2実施形態を示す概略図である。
図9】従来例を示す斜視図である。
図10】(A)(B)は他の従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7に第1実施形態を示す。
第1実施形態では、図3に示すボルト締め端子からなる4個のアース端子1(1A〜1D)をそれぞれ電線20の端末に圧着接続し、これら4個のアース端子1A〜1Dを図1に示す樹脂製の積層連結具10で積層保持している。
【0021】
使用するボルト締め端子からなる前記アース端子1は汎用されている端子で、図3に示すように、円板1aの中央にボルト穴1hを設けた電気接触部2に、電線接続部3の長方形状の基板1bを連続させ、該基板1bの幅方向両側から芯線バレル1cを突設している。電線20の端末で皮剥ぎして露出させた芯線20aに芯線バレル1cを加締め圧着して、電線20とアース端子1を接続している。芯線バレル1cによる芯線加締め部3aは電気接触部2より上方に膨らみ、該芯線加締め部3aの両側後端を積層連結具10で係止される被係止部3dとしている。
【0022】
前記積層連結具10は、円環形状の下段部材11と上段部材15とからなり、下段部材11の上面に上段部材15を重ね、該下段部材11と上段部材15の間にアース端子1の電線接続部3の芯線加締め部3aより前部の所謂首下部分3kを挟んで位置決め保持し、該状態で円環形状の積層連結具10の外周から電線20が図6に示すように放射状に引き出されるようにしている。
【0023】
下段部材11は図1および図2に示すように、円形の中央穴12を囲む円環部13の下面13sは平坦面とすると共に、円環部13の上面に周方向に一定の周角度(本実施形態では90度)で4つの上下段差部14a〜14dを設けている。これら上下段差部14a〜14cの境界は垂直面14fとしている。隣接する上下段差部14aと14b、14bと14c、14cと14dの境界の垂直面14fはボルト締め端子1の厚さ寸法(t)に相当する寸法とし、隣接する上下段差部を寸法(t)で相違させている。最低位置の上下段差部14aと最高位置の上下段差部14dの境界の垂直面14gの寸法は(3t)としている。
【0024】
前記上段部材15の円形の中央穴16は下段部材11の中央穴12と同形とすると共に、上段部材15は下段部材11と外径も同等とし、下段部材11の上面に上段部材15を重ねた状態で、図1(B)に示すように円筒形状としている。
【0025】
上段部材15の中央穴16を囲む円環部17に、外周面に開口する電線接続部挿入穴18を90度間隔をあけた4個設けている。該電線接続部挿入穴18の外周面の開口18aに近接した位置の両側面に、互いに近接する方向に突出するV状の係止部19を設けている。該係止部19は開口18aに向けて外広がりとなり、アース端子1の芯線加締め部3aの挿入を容易とすると共に、開口18aの幅が広がる方向に撓むことができるようにしている。該両側の係止部19をアース端子1の芯線加締め部3aが押し広げて通過した後に、係止部19は自動復帰して、芯線加締め部3aの後端の被係止部3dに係止するものとしている。該電線接続部挿入穴18の奥端の内周側は閉鎖面18eとし、中央穴16との間に環状に連続する挟持部17aを設けている。前記電線接続部挿入穴18に芯線加締め部3aが位置すると、該芯線加締め部3aより先端側の首下部分3kが前記挟持部17aの下面と下段部材11の上面とで挟持され、ボルト穴1hを設けた電気接触部2が中央穴16内に位置するようにしている。
【0026】
さらに、上段部材15の円環部17の底面は下段部材11の上面の上下段差部14a〜14dに対応させて周方向に上下段差部を設けている。かつ、上段部材15の外周に設けた4個の開口18aを挟む周方向の両側の底面は、前記下段部材11の上面と端子挿通空間22(22a〜22d)をあけた位置となる段部21とし、周方向に隣接する段部21に挟まれた部分に下段部材11の上面に当接させる突出部23を設けている。これにより、各端子挿通空間22(22a〜22d)は上段部材15の電線接続部挿入穴18の下部に下段部材11の上面に沿って内外周面に開口する電気接触部挿通部24が連続する構成としている。
【0027】
図1(C)および展開形状とした図2に示すように、下段部材11の上面の上下段差部14a〜14dに上段部材15の下面の突出部23を当接させて重ねた状態で、周方向に間隔をあけて形成される4つの端子挿通空間22(22a〜22d)の上下高さを、アース端子1の電気接触部2の厚さと対応する寸法(t)で相違させている。各端子挿通空間22a〜22dに挿入するアース端子1(1A〜1D)の電気接触部2が中央穴12、16に上下に積層した状態で位置し、係止部19により被係止部3dが係止した状態で保持できる構成としている。
【0028】
下段部材11に上段部材15を重ねて組み合わせる積層連結具10には、前記のように、端子挿通空間22(22a〜22d)を、周方向に90度間隔をあけて4個設けており、4本の電線20の各端末に接続する4枚のアース端子1A〜1Dを90度間隔をあけた4方向から配線して中央で上下に重ねるようにしている。
【0029】
前記上段部材15と下段部材11の外周面に設けたロック爪とロック枠(図示せず)を結合して積層連結具10を組み立てた後に、上段部材15と下段部材11の間に形成される4つの端子挿通空間22(22a〜22d)にそれぞれ電線20の端末に圧着したアース端子1A〜1Dを挿入して取り付けている。
【0030】
4本の電線20の端末に加締め圧着したアース端子1A〜1Dを積層連結具10に予め取りつけて仮保持した状態で、車体パネルのアースポイントにボルトで締結固定する方法について、図5図7を参照して説明する。
【0031】
図5で四角囲みした数字1、2、3、4に示す順序で、積層連結具10にアース端子1A、1B、1C、1Dを下段から順次上段へと取り付ける。積層連結具10は下段部材11の上面に上段部材15を重ねてロック結合して組み立てている。
【0032】
具体的には、積層連結具10の最下段に位置する端子挿通空間22aにアース端子1Aを挿入し、電線接続部3の被係止部3dの両側に係止部19を係止し、開口18aに芯線加締め部3aを位置させ、首下部分3kを挟持部17aの下面に位置させて下段部材11の上面との間に挟持し、電気接触部2を中央穴16内に位置させて配置する。
ついで、端子挿通空間22bにアース端子1Bを前記と同様に挿入して係止部19でアース端子1Bを係止して、中央穴16内においてアース端子1Bの電気接触部2をアース端子1Aの電気接触部2の上面に位置させる。この状態で、アース端子1Aと1Bの電気接触部2、2は上下に重なるが電線接続部3は90度間隔をあけた位置で、上下方向で干渉することはない。
ついで、端子挿通空間22cにアース端子1Cを前記と同様に挿入して係止部19でアース端子1Cを係止し、中央穴16内においてアース端子1Bの電気接触部2の上面にアース端子1Cの電気接触部2を位置させる。
最後に、最上段の端子挿通空間22dにアース端子1Dを前記と同様に挿入して係止部19でアース端子1Dを係止して、中央穴16内においてアース端子1Cの電気接触部2の上面にアース端子1Dの電気接触部2を位置させる。
これにより、図6に示すように、4枚のアース端子1A〜1Dの電気接触部2は中央穴16内に下位置から順次上位置に重なった状態で保持される。
【0033】
この状態で自動車組立ラインに搬送し、図7に示すように、車体パネル30のボルト穴31を設けたアースポイントに、積層連結具10の下段部材11の下面13sを載置し、上下に積層したアース端子1A〜1Dのボルト穴1hをボルト穴31に合わせる。
この状態で、上方から汎用のボルト33を積層したアース端子1A〜1Dのボルト穴1hに挿入していき、車体パネル30のボルト穴31を通し、車体パネル30の下面のボルト穴周縁に溶接しているナット32に締結する。
これにより、4本の電線20の端末に接続した4枚のアース端子1A〜1Dをボルト33とナット32を用いて車体パネル30に接続して、アース処理する。
【0034】
前記のように、積層連結具10に90度間隔をあけてアース端子1A〜1Dを取り付けた状態で、これらアース端子1A〜1Dの電気接触部2を中央で上下に積層し、該電気接触部2のボルト穴1hを上下に連通させた状態で積層連結具10で保持することができる。この状態で、自動車組立ラインで車体パネル30のアースポイントに積層連結具10を設置し、ボルト33で締結すれば良いだけであるため、作業手数を大幅に簡素化できる。かつ、アース端子1は、円板の中央にボルト穴1hを設けた電気接触部2を有する汎用のボルト締め端子を用い、特殊な端子ではないため、コスト低下を図ることができる。
【0035】
なお、自動車組立ラインで他のワイヤハーネスの電線端末に取り付けたアース端子を前記積層連結具で積層する場合、空いている電線挿通空間に前記他のワイヤハーネスのアース端子を挿入係止して、先入れしているアース端子の電気接触部と積層すればよく、車体パネルに一括で固定することもできる。
【0036】
図8に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、図8(A)に示すように、積層連結具10の下段部材11の下面から一対の係止脚50、50を突設し、車体パネル30のボルト穴31に近接して設けた係止穴51に挿入係止している。このように、係止脚50を係止穴51に挿入係止する構成とすると、積層連結具10を所定位置に精度良く設置できる。
【0037】
また、図8(B)に示すように、アース端子1は電線接続部3に芯線バレルと絶縁被覆バレル1zを設け、絶縁被覆バレル1zにより芯線加締め部3aの後部に絶縁被覆加締め部3eを設けている。該絶縁被覆加締め部3eの後端両側を被係止部3dとし、上段部材の係止部19を係止するものとしている。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
本発明は前記実施形態に限定されず、ボルト締め端子の電線接続部は電線と溶接してもよいし、電気接触部は円形以外に四角形状としてもよい。
また、積層連結具には周方向に所定間隔をあけて、6個、8個等の端子挿通空間を設け、6本、8本の電線端末のボルト締め端子を積層連結できるものとしてもよい。さらに、アース端子以外に電源端子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1(1A〜1D) アース端子(ボルト締め端子)
1h ボルト穴
1c 芯線バレル
2 電気接触部
3 電線接続部
3a 芯線加締め部
3d 被係止部
10 積層連結具
11 下段部材
12、16 中央穴
14a〜14d 上下段差部
15 上段部材
18 電線接続部挿入穴
18a 開口
19 係止部
20 電線
21 段部
22(22a〜22d) 端子挿通空間
23 突出部
30 車体パネル
31 ボルト穴
32 ナット
33 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10