(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237737
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両用通信装置、コンピュータプログラム及び通信システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/24 20060101AFI20171120BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G06F1/24 B
B60R16/02 660M
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-181807(P2015-181807)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-58837(P2017-58837A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 俊郎
【審査官】
篠塚 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−128313(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/55198(WO,A1)
【文献】
特開2012−187710(JP,A)
【文献】
特開2005−309495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/02
G06F1/24
11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両電源がオン及びオフの何れでもソフトウェアを実行するリセット対象部(4,5)と、
前記リセット対象部のソフトウェアの動作をリセットするリセット部(8)と、
車両電源のオンオフを判定する電源判定部(4a)と、
車両電源のオフが前記電源判定部により判定されると、その車両電源がオフの期間に、前記リセット対象部のソフトウェアの動作を予め決定されたリセットタイミングで前記リセット部によりリセットさせるリセット実行部(4b)と、を備えた車両用通信装置(4)。
【請求項2】
請求項1に記載した車両用通信装置において、
車両電源がオフの期間にソフトウェアが実施するサービスに係る所定期間とリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定するタイミング決定部(4c)を備え、
前記リセット実行部は、前記リセット対象部のソフトウェアの動作を前記タイミング決定部により決定されたリセットタイミングで前記リセット部によりリセットさせる車両用通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載した車両用通信装置において、
前記タイミング決定部は、車両電源のオンからオフへの切り換えを契機とするサービスに係る前記所定期間と前記リセット期間とが競合しないタイミングを前記リセットタイミングとして決定する車両用通信装置。
【請求項4】
請求項2に記載した車両用通信装置において、
前記タイミング決定部は、予め設定されている特定の日時への到達を契機とするサービスに係る前記所定期間と前記リセット期間とが競合しないタイミングを前記リセットタイミングとして決定する車両用通信装置。
【請求項5】
請求項2から4の何れか一項に記載した車両用通信装置において、
前記タイミング決定部は、前記リセットタイミングを決定した後にソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生し、その時点で決定しているリセットタイミングを変更する必要があると、その時点で決定しているリセットタイミングを変更する車両用通信装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載した車両用通信装置において、
前記リセット対象部は、装置全体の制御に係るソフトウェアを実行する制御部(4)及び無線通信に係るソフトウェアを実行する無線通信部(5)のうち少なくとも何れかを含む車両用通信装置。
【請求項7】
車両電源がオン及びオフの何れでもソフトウェアを実行するリセット対象部(4,5)と、前記リセット対象部のソフトウェアの動作をリセットするリセット部(8)と、を備えた車両用通信装置(2)のマイクロコンピュータに、
車両電源がオフの期間を判定する第1の手順と、
リセットタイミングを決定する第2の手順と、
車両電源のオフを前記第1の手順により判定すると、その車両電源がオフの期間に、前記リセット対象部のソフトウェアの動作を前記第2の手順により決定したリセットタイミングで前記リセット部によりリセットさせる第3の手順と、を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載したコンピュータプログラムにおいて、
前記第2の手順は、車両電源がオフの期間にソフトウェアが実施するサービスに係る所定期間とリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定するコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載したコンピュータプログラムにおいて、
前記リセットタイミングを決定した後にソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生したか否かを判定する第4の手順と、
ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生したと前記第4の手順により判定すると、その時点で決定しているリセットタイミングを変更する必要があるか否かを判定する第5の手順と、
リセットタイミングを変更する必要があると前記第5の手順により判定すると、その時点で決定しているリセットタイミングを変更する第6の手順と、を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
車両電源がオフの期間に、リセット対象部(4,5)のソフトウェアの動作を予め決定されたリセットタイミングでリセット部(8)によりリセットさせる車両用通信装置(4)と、
動作指示信号を前記車両用通信装置に送信する外部装置(3,14)と、を備え、
前記外部装置は、車両電源がオフの期間に動作指示信号の前記車両用通信装置への送信をリトライする際には、リセット期間よりも長い周期で動作指示信号の前記車両用通信装置への送信をリトライする通信システム(1)。
【請求項11】
請求項10に記載した通信システムにおいて、
前記外部装置は、前記動作指示信号として遠隔操作指示信号を前記車両用通信装置に送信するサーバ(3)を含む通信システム。
【請求項12】
請求項10又は11に記載した通信システムにおいて、
前記外部装置は、前記動作指示信号として制御指示信号を前記車両用通信装置に送信する電子制御装置(14)を含む通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用通信装置、コンピュータプログラム及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線通信機能を有する車両用通信装置が供されている。この種の車両用通信装置の1つとして、車両電源がオンであるときに、緊急通報、データ通信による目的地設定、音声通話等のサービスを行い、車両電源がオフであるときに、盗難追跡、リモートエンジンスタート、リモートドアロック・アンロック等のサービスを行う車両用通信装置がある。この種の車両用通信装置では、スマートフォン等の携帯電話機と同様の無線通信技術が採用されており、複雑な構造のソフトウェアを実行する。そのため、長期間の使用に際してソフトウェアの動作が不安定になる懸念がある。
【0003】
複雑な構造のソフトウェアを実行する他の装置としてナビゲーション装置が挙げられる。しかしながら、ナビゲーション装置は基本的に車両電源がオンのみでソフトウェアを実行する装置である。そのため、ナビゲーション装置では、車両電源のオンオフを切り換えるタイミング、即ち、ユーザがIG(イグニッション)及びACC(アクセサリ)をオンからオフに切り換えて降車するタイミングで電源をオフし、ユーザがIG及びACCをオフからオンに切り換えて乗車するタイミングで電源をオンすることでソフトウェアの動作をリセット(即ち初期化)し、ソフトウェアの動作を安定化させることができる。これに対し、上記した車両用通信装置は、車両電源がオン及びオフの何れでもソフトウェアを実行する装置である。そのため、ナビゲーション装置とは異なり、車両電源のオンオフを切り換えるタイミングでソフトウェアの動作をリセットすることができず、ソフトウェアの動作を安定化させることができない。
【0004】
ソフトウェアの動作を安定化させる構成として、ソフトウェアの動作を監視する専用の監視ソフトウェアを組み込み、ソフトウェアの動作の異常を監視ソフトウェアにより検出すると、ソフトウェアの動作をリセットする構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−142910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術では、ソフトウェアの動作が異常になってからの自動復帰という点で有効である。しかしながら、緊急通報のような緊急性の高い動作を必要とする車両用通信装置では、ソフトウェアの動作が異常になってから自動復帰させる構成は適さないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両電源がオン及びオフの何れでもソフトウェアを実行する構成において、ソフトウェアの動作を適切にリセットして安定化させることができる車両用通信装置、コンピュータプログラム及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、リセット対象部(4,5)は、車両電源がオン及びオフの何れでもソフトウェアを実行する。リセット部(8)は、リセット対象部のソフトウェアの動作をリセットする。電源判定部(4a)は、車両電源のオンオフを判定する。リセット実行部(4b)は、車両電源のオフが電源判定部により判定されると、その車両電源がオフの期間に、リセット対象部のソフトウェアの動作を予め決定されたリセットタイミングでリセット部によりリセットさせる。
【0009】
即ち、車両電源がオフの期間にソフトウェアが実施するサービスに係る所定期間とリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定しておくことで、そのサービスを妨げずにソフトウェアの動作をリセットすることができる。これにより、ソフトウェアの動作を適切にリセットして安定化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
通信システム1は、車両に搭載されている車両用通信装置2と、サーバ3(外部装置に相当)とが広域無線通信可能に構成されている。車両用通信装置2は、制御部4(リセット対象部に相当)と、無線通信部5(リセット対象部に相当)と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部6と、電源部7と、リセット部8と、車内通信部9と、発振部10とを有する。
【0012】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータにより構成されている。制御部4は、非遷移的実体的記録媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、装置全体の制御に係るソフトウェアを実行し、車両用通信装置2の動作全般を制御する。無線通信部5は、非遷移的実体的記録媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、無線通信に係るソフトウェアを実行し、車両用通信装置2の無線通信を制御する。具体的には、無線通信部5は、無線基地局11との間で通信電波を送受信することで、サーバ3との間で広域無線通信を行う。尚、制御部4と無線通信部5とは1チップで構成されている。
【0013】
GNSS受信部6は、衛星から受信したGNSS信号から各種パラメータを抽出し、その抽出した各種パラメータを用いて現在位置を演算し、その演算した現在位置を制御部4に出力する。電源部7は、車両に搭載されている車両バッテリ12から供給される電力を動作電力として取得する。
【0014】
リセット部8は、制御部4からリセット要求を入力すると、リセット命令を制御部4に出力する。制御部4は、リセット部8からリセット命令を入力すると、リセット命令を無線通信部5に出力すると共に、ソフトウェアの動作をリセット(即ち初期化)する。無線通信部5は、制御部4からリセット命令を入力すると、ソフトウェアの動作をリセットする。制御部4及び無線通信部5においてソフトウェアの動作をリセットするとは、その時点でソフトウェアが正常に動作しているか否かに関係なくソフトウェアを予め規定されている最初の手順から動作(即ち再起動又はリフレッシュ)させることである。
【0015】
車内通信部9は、車両に搭載されている車内LAN13と接続されており、車両に搭載されている電子制御装置(ECU(Electronic Control Unit))14(外部装置に相当)と車内LAN13を介してデータ通信を行う。発振部10は、基準クロックを生成し、その生成した基準クロックを制御部4に出力する。
【0016】
制御部4は、電源判定部4aと、リセット実行部4bと、タイミング決定部4cと、計時部4dとを有する。これら各部4a〜4dはソフトウェアにより実現されている。電源判定部4aは、ACC(アクセサリ)のオンオフを示すACC信号及びIG(イグニッション)のオンオフを示すIG信号により車両電源のオンオフを判定する。即ち、電源判定部4aは、ACC信号のオン又はIG信号のオンにより車両電源のオンを特定し、ACC信号のオフ且つIG信号のオフにより車両電源のオフを特定する。
【0017】
リセット実行部4bは、制御部4のソフトウェアの動作及び無線通信部5のソフトウェアの動作のうち少なくとも何れかを、タイミング決定部4cにより決定されたリセットタイミングでリセット部8によりリセットさせる。タイミング決定部4cは、車両電源がオフの期間にソフトウェアが実施するサービスに係る所定期間とソフトウェアの動作がリセットされるリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定する。計時部4dは、発振部10から入力する基準クロックを用いて計時する。
【0018】
上記した構成では、制御部4及び無線通信部5は、車両電源がオンオフの何れでも車両バッテリ12から供給される電力を電源部7が動作電力として取得することでソフトウェアを実行する。即ち、制御部4及び無線通信部5は、車両電源がオンであるとき、即ち、一般的にはユーザが乗車中であるときに、緊急通報、データ通信による目的地設定、音声通話等のサービスを行い、車両電源がオフであるとき、即ち、一般的にはユーザが非乗車中であるときに、盗難追跡、リモートエンジンスタート、リモートドアロック・アンロック等のサービスを行う。車両電源がオフであるときに制御部4及び無線通信部5が行うサービスとしては、車両電源のオンからオフへの切り換えを契機として行うサービス(即ち駐車直後のサービス)と、予め設定されている特定の日時への到達を契機として行うサービス(即ち駐車中の定期的なサービス)とがある。
【0019】
制御部4は、駐車直後のサービスとして例えばドアロック忘れを示すドアロック忘れ通知信号を無線通信部5からサーバ3に送信させるサービスを行う。この場合、サーバ3は、車両用通信装置2からドアロック忘れ通知信号を受信すると、ドアロック忘れ通知信号を予め送信先として設定されているユーザの携帯情報端末15に送信する。携帯情報端末15は、サーバ3からドアロック忘れ通知信号を受信すると、ドアロック忘れをユーザに通知し、ユーザからのドアロックの操作を受け付けると、ドアロック指示信号(動作指示信号、遠隔操作指示信号)をサーバ3に送信する。サーバ3は、携帯情報端末15からドアロック指示信号を受信すると、ドアロック指示信号を車両用通信装置2に送信する。制御部4は、サーバ3からドアロック指示信号を無線通信部5により受信すると、ドアロック指示信号を車内通信部9から図示しないドアロックECUに出力してドアロック制御を行う。
【0020】
又、制御部4は、駐車中の定期的なサービスとして例えばGNSS受信部6により演算された現在位置(即ち駐車位置)を示す現在位置通知信号を無線通信部5からサーバ3に送信させるサービスを行う。この場合、サーバ3は、車両用通信装置2から現在位置通知信号を受信すると、現在位置通知信号を予め送信先として設定されている携帯情報端末15に送信する。又、サーバ3は、現在位置の履歴を用いて車両盗難の可能性を判定し、車両盗難の可能性があると判定すると、盗難通知信号を予め送信先として設定されている携帯情報端末15に送信する。携帯情報端末15は、サーバ3から現在位置通知信号を受信すると、車両の現在位置をユーザに通知する。又、携帯情報端末15は、サーバ3から盗難通知信号を受信すると、車両盗難の可能性をユーザに通知する。
【0021】
次に、上記した構成の作用について、
図2から
図11を参照して説明する。制御部4は、本発明に関連し、
図2に示すリセット処理を行う。
制御部4は、リセット処理を開始すると、車両電源のオンからオフへの切り換えが発生したか否かを判定する(A1、第1の手順)。制御部4は、車両電源のオンからオフへの切り換えが発生していないと判定すると(A1:NO)、リセット処理を終了して次のリセット処理の開始を待機する。一方、制御部4は、ACC信号がオンからオフに切り換わり且つIG信号がオンからオフに切り換わり、車両電源のオンからオフへの切り換えが発生したと判定すると(A1:YES)、駐車直後のサービスの実施タイミングを特定する(A2)。制御部4は、駐車直後のサービスとして例えば上記したようにドアロック忘れ通知信号を送信させるサービスを行う場合であれば、ドアロック忘れ通知信号を送信させるタイミングを実施タイミングとして特定する。
【0022】
次いで、制御部4は、駐車中の定期的なサービスの実施タイミングを特定する(A3)。制御部4は、駐車中の定期的なサービスとして例えば上記したように現在位置通知信号を送信させるサービスを行う場合であれば、現在位置通知信号を送信させるタイミングを実施タイミングとして特定する。
【0023】
次いで、制御部4は、その特定したサービスの実施タイミングを考慮し、予め設定されている設定期間(例えば1時間)とリセット期間との和に相当するリセット可能期間を探索する(A4)。設定期間とは、サービスを実施したことで、その実施したサービスに関連する別のサービスを実施したり当該サービスの実施をリトライしたりすることを考慮して予め設定される期間である。リセット期間とは、ソフトウェアの動作がリセットされる始点から終点まで(即ちリセットの開始から完了まで)の期間である。制御部4は、リセット可能期間の探索に成功すると(A5:YES)、その探索に成功した期間において直前のサービスの終了タイミングを起点として設定期間後をリセットタイミングとして決定する(A6、第2の手順)。
【0024】
具体的に説明すると、
図3に示すように、制御部4が、「t1」のタイミングで車両電源のオンからオフへの切り換えを判定した後に、駐車直後のサービス又は駐車中の定期的なサービスの実施タイミングとして「t2」を特定した場合を想定する。制御部4は、サービスを行う始点から終点まで(即ちサービスの開始から完了まで)のサービス実施期間が「T1」であれば、そのサービス実施期間「T1」の終点である「t3」の直後から設定期間「Ta」とリセット期間「Tr」との和に相当するリセット可能期間「Ta+Tr」を探索する。この場合、制御部4は、「t3」以降に別のサービス実施期間を特定していないので、「t3」の直後からリセット可能期間が確保可能であると判定し、リセット可能期間の探索に成功する。そして、制御部4は、リセット可能期間の探索に成功すると、「t3」を起点として設定期間「Ta」後の「t4」をリセットタイミングとして決定する。即ち、制御部4は、サービス実施期間「T1」と設定期間「Ta」とを含む期間をサービスに係る所定期間「T1+Ta」とし、その所定期間「T1+Ta」とリセット期間「Tr」とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定する。
【0025】
又、
図4及び
図5に示すように、「t1」のタイミングで車両電源のオンからオフへの切り換えを判定した後に、駐車直後のサービス又は駐車中の定期的なサービスの実施タイミングとして「t2」を特定し、更に次のサービスの実施タイミングを特定した場合を想定する。制御部4は、サービス実施期間「T1」の終点である「t3」の直後からリセット可能期間を探索するが、「t3」以降に別のサービス実施期間を特定しているので、「t3」から別のサービス実施期間の始点までの期間とリセット可能期間とを比較する。
【0026】
即ち、
図4に示すように、最初のサービス実施期間「T1」の終点である「t3」から次のサービス実施期間「T2」の始点である「t11」までの期間が比較的長ければ、制御部4は、「t3」から「t11」までの期間がリセット可能期間よりも長いと判定する。即ち、制御部4は、
図3と同様に、「t3」の直後からリセット可能期間が確保可能であると判定し、リセット可能期間の探索に成功する。そして、制御部4は、リセット可能期間の探索に成功すると、「t3」を起点として設定期間「Ta」後の「t4」をリセットタイミングとして決定する。
【0027】
一方、
図5に示すように、最初のサービス実施期間「T1」の終点である「t3」から
から次のサービス実施期間「T3」の始点である「t21」までの期間が比較的短ければ、制御部4は、「t3」から「t21」までの期間がリセット可能期間よりも短いと判定する。即ち、制御部4は、
図3及び
図4とは異なり、「t3」の直後からリセット可能期間が確保不可能であると判定し、リセット可能期間の探索に失敗する。制御部4は、リセット可能期間の探索に失敗すると、次のサービス実施期間「T3」の終点である「t22」の直後からリセット可能期間を探索する。この場合、制御部4は、「t22」以降に別のサービス実施期間を特定していないので、「t22」の直後からリセット可能期間を確保可能であると判定し、リセット可能期間の探索に成功する。そして、制御部4は、リセット可能期間の探索に成功すると、「t22」を起点として設定期間「Ta」後の「t23」をリセットタイミングとして決定する。制御部4は、サービス実施期間「T3」と設定期間「Ta」とを含む期間をサービスに係る所定期間「T3+Ta」とし、その所定期間「T3+Ta」とリセット期間「Tr」とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定する。以上は、2回のサービス実施期間が発生する場合を説明したが、3回以上のサービス実施期間が発生する場合も同様である。
【0028】
制御部4は、このようにしてリセットタイミングを決定すると、車両電源のオフからオンへの切り換えが発生したか否かを判定し(A7)、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生したか否かを判定し(A8、第4の手順)、リセットタイミングに到達したか否かを判定する(A11)。制御部4は、リセットタイミングに到達したと判定する前に、ACC信号がオフからオンに切り換わり又はIG信号がオフからオンに切り換わり、車両電源のオフからオンへの切り換えが発生したと判定すると(A7:YES)、リセット処理を終了して次のリセット処理の開始を待機する。尚、制御部4は、リセット処理を終了すると、その時点で決定していたリセットタイミングを破棄(即ち消去)する。
【0029】
又、制御部4は、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生したと判定すると(A8:YES)、その時点で決定しているリセットタイミングを変更する必要があるか否かを判定する(A9、第5の手順)。ソフトウェアが新たに実施するサービスとは、上記した駐車直後のサービス及び駐車中の定期的なサービスの何れとも異なるサービスである。制御部4は、リセットタイミングを変更する必要がないと判定すると(A9:NO)、リセットタイミングを変更せずに維持する。一方、制御部4は、リセットタイミングを変更する必要があると判定すると(A9:YES)、リセットタイミングを変更する(A10、第6の手順)。
【0030】
具体的に説明すると、制御部4が、上記した
図3に示したように「t4」をリセットタイミングとして決定した後に、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生した場合を想定する。この場合、制御部4は、例えばソフトウェアが新たに実施するサービスに係る所定期間と既に決定しているリセット期間とが競合するか否かを判定し、リセットタイミングを変更する必要があるか否かを判定する。
図6に示すように、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求がリセット期間の終点である「t5」以降で発生した場合であれば、制御部4は、「t5」以降にサービス実施期間「T4」を特定する。この場合、制御部4は、ソフトウェアが新たに実施するサービスに係る所定期間と既に決定しているリセット期間とが競合しないと判定し、リセットタイミングを変更する必要がないと判定する。即ち、制御部4は、リセットタイミングを変更せずに維持する。
【0031】
一方、
図7に示すように、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求がサービス実施期間「T1」の終点である「t3」からリセット期間の始点である「t4」までの途中で発生した場合であれば、制御部4は、「t3」から「t4」の途中にサービス実施期間「T5」を特定する。この場合、制御部4は、ソフトウェアが新たに実施するサービスに係る所定期間と既に決定しているリセット期間とが競合すると判定し、リセットタイミングを変更する必要があると判定する。制御部4は、その新たに実施するサービスのサービス実施期間「T5」の終点である「t42」の直後からリセット可能期間を探索し、「t42」の直後からリセット可能期間を確保可能であると、リセット可能期間の探索に成功する。そして、制御部4は、リセット可能期間の探索に成功すると、「t42」を起点として設定期間「Ta」後の「t43」をリセットタイミングとして再決定する。即ち、制御部4は、リセットタイミングを変更する。以上は、ソフトウェアが新たに実施する1回のサービスの要求が発生した場合を説明したが、複数回のサービスの要求が発生した場合も同様である。
【0032】
又、制御部4は、ソフトウェアが新たに実施するサービスに係る所定期間と既に決定しているリセット期間とが競合するか否かを判定するのみでなく、サービスの内容によりリセットタイミングを変更する必要があるか否かを判定しても良い。即ち、ソフトウェアが新たに実施するサービスとして例えばアンロック制御やドアオープン制御等を実施する場合では、その直後にユーザが乗車する可能性が高い。制御部4は、ユーザが直後に乗車する可能性が高い制御を行うサービスの要求が発生すると、その時点で決定しているリセットタイミングを破棄することで、リセットタイミングを変更しても良い。
【0033】
制御部4は、リセットタイミングに到達したと判定すると(A11:YES)、リセット要求をリセット部8に出力し、リセットを行い(A12、第3の手順)、リセット処理を終了する。即ち、制御部4は、リセット部8からリセット命令を入力し、リセット命令を無線通信部5に出力すると共に、自身のソフトウェアの動作をリセットする。又、無線通信部5は、制御部4からリセット命令を入力し、自身のソフトウェアの動作をリセットする。
【0034】
以上に説明した一連の処理により、制御部4は、車両電源がオフの期間にソフトウェアがサービスに係る所定期間とリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定する。そして、制御部4は、リセットタイミングに到達すると、自身のソフトウェアの動作及び無線通信部5のソフトウェアの動作の両方をリセットする。尚、以上は、制御部4のソフトウェアの動作及び無線通信部5のソフトウェアの動作の両方をリセットする構成を例示したが、何れか一方をリセットする構成でも良い。即ち、制御部4は、リセット部8からリセット命令を入力すると、自身のソフトウェアの動作をリセットせずにリセット命令を無線通信部5に出力しても良い。又、制御部4は、リセット部8からリセット命令を入力すると、リセット命令を無線通信部5に出力せずに自身のソフトウェアの動作をリセットしても良い。
【0035】
次に、サーバ3が上記したドアロック指示信号等の遠隔操作指示信号を送信する動作について
図8及び
図9を参照して説明する。前述したように、サーバ3は、ユーザからのドアロックの操作等の遠隔操作の指示を携帯情報端末15が受け付け、携帯情報端末15から遠隔操作指示信号を受信した判定すると、遠隔操作指示信号を車両用通信装置2に送信する。ここで、サーバ3は、遠隔操作指示信号を車両用通信装置2に送信すると、受信監視タイマの計時を開始し(B1)、リトライ監視タイマの計時を開始し(B2)、ドアロック指示信号の送信時を起点として第1の規定時間が経過するまで遠隔操作完了信号の受信を待機する。
【0036】
図8に示すように、車両用通信装置2において、制御部4は、自身がリセット期間でなく且つ無線通信部5がリセット期間でなければ(即ち非リセット中であれば)、遠隔操作指示信号が無線通信部5により受信され、遠隔操作指示信号の受信に成功する。制御部4は、遠隔操作信号の受信に成功したと判定すると、遠隔操作信号を車内通信部9から図示しない遠隔操作の対象とする電子制御装置(即ちドアロックの操作であればドアロックECU)に出力し、遠隔操作制御を行う。そして、制御部4は、その遠隔操作制御を完了すると、その遠隔操作制御の完了を示す遠隔操作完了信号を無線通信部5からサーバ3に送信させる。サーバ3は、受信監視タイマの計時を開始してから第1の規定時間が経過する前に遠隔操作完了信号を受信したと判定すると、遠隔操作完了信号を携帯情報端末15に送信し、受信監視タイマの計時を途中終了し(B3)、リトライ監視タイマの計時を途中終了する(B4)。
【0037】
一方、
図9に示すように、制御部4は、自身がリセット期間である又は無線通信部5がリセット期間であれば(即ちリセット中であれば)、遠隔操作指示信号が無線通信部5により受信されず、遠隔操作指示信号の受信に失敗する。即ち、制御部4は、遠隔操作制御を行うことなく、遠隔操作完了信号を無線通信部5からサーバ3に送信させることもない。サーバ3は、遠隔操作完了信号を受信せずに第1の規定時間が経過したと判定すると(B5:YES)、遠隔操作信号の送信の失敗(即ち車両用通信装置2への未達)を特定し(B6)、リトライ監視タイマの計時を開始してから第2の規定時間が経過したか否かを判定する(B7)。サーバ3は、第2の規定時間が経過したと判定すると、遠隔操作指示信号の送信をリトライする。この場合、サーバ3は、第2の規定時間をリセット期間よりも長く設定し、リセット期間よりも長い周期で遠隔操作指示信号の送信をリトライする。即ち、サーバ3は、遠隔操作指示信号の送信をリトライする周期をリセット期間よりも長い周期とすることで、車両用通信装置2のリセット期間に遠隔操作指示信号の送信をリトライしてしまう状況を回避する。
【0038】
尚、以上は、サーバ3が遠隔操作指示信号を車両用通信装置2に送信する場合を説明したが、
図10及び
図11に示すように、電子制御装置14が制御指示信号を車両用通信装置2に送信する場合も同様である(B11〜B17)。即ち、電子制御装置14は、第2の規定時間をリセット期間よりも長く設定し、リセット期間よりも長い周期で制御指示信号の送信をリトライする。即ち、電子制御装置14は、制御指示信号の送信をリトライする周期をリセット期間よりも長い周期とすることで、車両用通信装置2のリセット期間に制御指示信号の送信をリトライしてしまう状況を回避する。
【0039】
以上説明したように本実施形態によれば、次に示す効果を得ることができる。
車両用通信装置2において、車両電源がオフの期間にサービスに係る所定期間とリセット期間とが競合しないタイミングをリセットタイミングとして決定し、制御部4のソフトウェアの動作及び無線通信部5のソフトウェアの動作を、その決定したリセットタイミングでリセットするようにした。これにより、車両電源がオフの期間にソフトウェアが実施するサービスを妨げずにソフトウェアの動作をリセットすることができ、ソフトウェアの動作を適切にリセットして安定化させることができる。
【0040】
又、車両用通信装置2において、リセットタイミングを決定した後にソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生し、その新たに発生したサービスに係る所定期間と既に決定しているリセット期間とが競合すると、リセットタイミングを再決定するようにした。これにより、ソフトウェアが新たに実施するサービスの要求が発生した場合でも、リセットタイミングを再決定することで、ソフトウェアの動作を適切にリセットして安定化させることができる。
【0041】
又、サーバ3において、遠隔操作指示信号の車両用通信装置2への送信をリトライする際に、車両用通信装置2のリセット期間よりも長い周期で遠隔操作指示信号の送信をリトライするようにした。これにより、車両用通信装置2のリセット期間に遠隔操作指示信号の送信をリトライしてしまう状況を回避することができる。又、電子制御装置14において、制御指示信号の車両用通信装置2への送信をリトライする際に、車両用通信装置2のリセット期間よりも長い周期で制御指示信号の送信をリトライするようにした。これにより、車両用通信装置2のリセット期間に制御指示信号の送信をリトライしてしまう状況を回避することができる。
【0042】
本発明は、上記した実施形態で例示したものに限定されることなく、その範囲を逸脱しない範囲で任意に変形又は拡張することができる。
本実施形態では、制御部4や無線通信部5のソフトウェアの動作をリセットする構成を例示したが、制御部4や無線通信部5とは別の機能ブロックのソフトウェアの動作をリセットする構成でも良い。
設定期間をサービスに応じて異なる期間で設定しても良い。即ち、サービスを実施したことで、その実施したサービスに関連する別のサービスを実施したり当該サービスの実施をリトライしたり可能性が高ければ設定期間を長く設定し、その可能性が低ければ設定期間を短く設定しても良い。
【符号の説明】
【0043】
図面中、1は通信システム、2は車両用通信装置、3はサーバ(外部装置)、4は制御部(リセット対象部)、4aは電源判定部、4bはリセット実行部、4cはタイミング決定部、5は無線通信部(リセット対象部)、8はリセット部、14は電子制御装置(外部装置)である。