特許第6237766号(P6237766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237766自己組織化リソグラフィプロセスに用いられる組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237766
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】自己組織化リソグラフィプロセスに用いられる組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20171120BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20171120BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20171120BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20171120BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   H01L21/30 568
   G03F7/004 521
   G03F7/075 511
   G03F7/039 601
   G03F7/38 511
   C08G77/04
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-512482(P2015-512482)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2014060699
(87)【国際公開番号】WO2014171446
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-88716(P2013-88716)
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】庵野 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 信也
(72)【発明者】
【氏名】永井 智樹
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−078830(JP,A)
【文献】 特開2009−147331(JP,A)
【文献】 特開2008−170999(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
C08G 77/04
G03F 7/004;7/039;7/075;7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上側に第1層を形成する工程、
上記第1層に放射線を照射し、上記第1層の表面に互いに極性の異なる第1領域及び第2領域を形成する工程、
上記第1領域及び第2領域の上側に、相分離構造を有する第2層を自己組織化材料により形成する工程、及び
上記第2層の一部を除去する工程
を備える自己組織化リソグラフィプロセスにおいて、上記第1層の形成に用いるポリシロキサン組成物であり、
下記式(i)で表されるシラン化合物の加水分解縮合物であり、かつ酸の作用により極性が変化するポリシロキサン、
放射線の照射により酸を発生する酸発生剤、及び
溶媒
を含有し、
上記溶媒がエーテル系溶媒、エステル系溶媒、又はエーテル系溶媒及びエステル系溶媒を含むポリシロキサン組成物。
【化1】
(式(i)中、Rは、酸の作用により解離する結合を有する基である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。ただし、a+bは1〜3の整数である。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Xが複数の場合、複数のXはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記エステル系溶媒が多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒である請求項1に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項3】
上記溶媒が水をさらに含有し、この水の上記溶媒を基準とする含有量が1質量%以上である請求項1又は請求項2に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項4】
上記水の上記溶媒を基準とする含有量が1質量%以上5質量%以下である請求項3に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項5】
上記自己組織化材料がブロック共重合体を含有する、請求項1に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項6】
上記自己組織化リソグラフィプロセスが、上記第1層上に被覆層を形成する工程をさらに備え、この被覆層を介して上記放射線の照射が行われる、請求項1又は請求項5に記載のポリシロキサン組成物。
【請求項7】
上記自己組織化リソグラフィプロセスにおいて、上記放射線の照射が液浸露光プロセスにより行われる、請求項6に記載のポリシロキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化リソグラフィプロセスに用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスを始めとする微細加工を必要とする各種電子デバイスの分野では、デバイスの高密度化、高集積化の要求がますます高まってきている。このようなデバイスの微細回路パターン形成において、フォトリソグラフィが重要な役割を果たしている。
【0003】
現在のフォトリソグラフィでは、微小なパターンを形成するために縮小投影露光が多く行われている。この縮小投影露光における解像度は光の回折限界に制約され、光源の波長の3分の1程度であるため、エキシマレーザー等の短波長の光源を用いることにより100nm程度の微細加工が可能となっている。
【0004】
しかし、光源の短波長化に伴い、装置の大型化、その波長域でのレンズの開発、装置及び対応するレジストのコストの増加など、解決すべき課題が数多く浮上してきている。
【0005】
一方で、より微細なパターンを簡便に形成する方法として、ブロックポリマー等の自己組織化が可能なポリマーが形成するミクロ相分離構造を利用する方法が報告されている。このような方法は、自己組織化リソグラフィプロセス等と呼ばれ、以下のようなものが提案されている。まず、基板表面に光反応性のシランカップリング剤を塗布してケイ素含有膜を形成し、マスクを介してケイ素含有膜の表面に光を照射することにより化学パターンを形成する。次いで、この化学パターン上に上記自己組織化ポリマーを塗布し、加熱等することで、自己組織化が相分離(自己組織化)する。この際、化学パターンと自己組織化ポリマーとの相互作用により上記相分離が促進される。その後、相分離により形成された複数の相のうち一部の相を除去することで、微細なパターンを形成することができる(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−202343号公報
【特許文献2】特開2003−321479号公報
【特許文献3】特表2005−502917号公報
【特許文献4】特開2013−232501号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature,424,411(2003)
【非特許文献2】Science,308,1442(2005)
【非特許文献3】Nano Letters,5,1379(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の自己組織化リソグラフィプロセスでは、上記化学パターンと自己組織化ポリマーとの相互作用が不十分であり、相分離性が十分でないという不都合がある。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、自己組織化リソグラフィプロセスにおいて、相分離性を向上できるケイ素含有膜を形成できるポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリシロキサン組成物は、基板の上側に第1層を形成する工程、上記第1層に放射線を照射し、上記第1層の表面に互いに極性の異なる第1領域及び第2領域を形成する工程、上記第1領域及び第2領域の上側に、相分離構造を有する第2層を自己組織化材料により形成する工程、及び上記第2層の一部を除去する工程を備える自己組織化リソグラフィプロセスにおいて、上記第1層の形成に用いるポリシロキサン組成物であり、下記式(i)で表されるシラン化合物の加水分解縮合物であり、かつ酸の作用により極性が変化するポリシロキサン、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤、及び溶媒を含有し、上記溶媒がエーテル系溶媒、エステル系溶媒、又はエーテル系溶媒及びエステル系溶媒を含むポリシロキサン組成物である。
【化1】
(式(i)中、Rは、酸の作用により解離する結合を有する基である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。ただし、a+bは1〜3の整数である。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Xが複数の場合、複数のXはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ポリシロキサン組成物>
本発明のポリシロキサン組成物は、後述する自己組織化リソグラフィプロセスに用いるポリシロキサン組成物であり、シラン化合物の加水分解縮合物であるポリシロキサン(以下、「[A]ポリシロキサン」ともいう。)、酸発生剤(以下、「[B]酸発生剤」ともいう。)、及び溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう。)を含有する。また、当該ポリシロキサン組成物は、発明の効果を損なわない範囲であれば、さらに[D]架橋促進剤、酸拡散制御剤、界面活性剤、密着助剤等の他の成分を含むことができる。
【0012】
[[A]ポリシロキサン]
[A]ポリシロキサンは、下記式(i)で表されるシラン化合物の加水分解縮合物であり、かつ酸の作用により極性が変化するものである。当該ポリシロキサン組成物が[A]ポリシロキサンを含有することで、上記第1層に互いに極性の異なる第1領域及び第2領域を形成することができ、これらの領域と第2層との相互作用により、第2層の相分離を促進することができる。
【0013】
【化2】
【0014】
上記式(i)中、Rは、酸の作用により解離する結合を有する基である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。ただし、a+bは1〜3の整数である。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Rが複数の場合、複数のRはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。Xが複数の場合、複数のXはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。
【0015】
上記Rで表される、酸の作用により解離する結合を有する基(以下、「酸解離性基」ともいう。)としては、[B]酸発生剤から発生する酸により解離するものであればよい。酸解離性基が解離することにより、カルボキシル基、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基が生じ、[A]ポリシロキサンの極性が高くなる。
【0016】
上記Rとしては、例えば下記式(1)で表される基が挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
上記式(1)中、Pは、単結合、メチレン基、ジフルオロメチレン基、炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基、若しくは炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基である。ただし、上記アルキレン基、芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部は、置換基により置換されていてもよい。Qは、−COO−又は−O−である。Rは、酸により解離して水素原子を生じる1価の有機基である。
【0019】
上記Pで表される炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロデカン骨格、アダマンタン骨格等の有橋脂環式骨格を有する2価の炭化水素基などが挙げられる。
【0020】
上記アルキレン基の有する水素原子の一部又は全部を置換できる置換基としては、例えば、フッ素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のフッ素化アルキル基等が挙げられる。
【0021】
上記芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部を置換できる置換基としては、例えばフッ素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のフッ素化アルキル基、メチレン基、ジフルオロメチレン基、炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のフッ素化アルキレン基等が挙げられる。
【0022】
また、上記アルキレン基、芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基の有する炭素原子の一部は酸素原子、硫黄原子等の2価の原子、又は−NH−等の2価の原子団により置換されていてもよい。
【0023】
上記Pとしては、例えば単結合、メチレン基、ジフルオロメチレン基、トリシクロデカン骨格を有する2価の炭化水素基やそのフッ素化物、アダマンタン骨格を有する2価の炭化水素基やそのフッ素化物、ノルボルナン骨格を有する2価の炭化水素基やそのフッ素化物等が挙げられる。特に、ノルボルナン骨格を有する2価の炭化水素基又はそのフッ素化物が好ましい。
【0024】
上記Rとしては、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数4〜12のアルキル置換シクロアルキル基、炭素数10〜14のアダマンチル基又はアルキル置換アダマンチル基、炭素数7〜12のアラルキル基等の炭化水素基;
アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ビニルカルボニル基、アリルカルボニル基、アラルキルカルボニル基;
アルコキシアルキル基、アラルキルオキシアルキル基、環状エーテル基等の式(1)中の酸素原子と結合してアセタール構造を形成する有機基;
アルキル基、アリール基若しくはアルコキシ基のうち1種、2種若しくは3種を有するシリル基等が挙げられる。
【0025】
Rとしては、t−ブチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、t−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
【0026】
また、上記Qが−COO−である場合のRとしては、Rを構成する原子のうちQと結合している炭素原子が、3つの他の炭素原子と結合しているものが好ましく、Qと結合している炭素原子がシクロアルキル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の嵩高い基と結合しているもの、Qと結合している炭素原子が上記嵩高い基を構成しているものがより好ましい。Qが−COO−の場合にRが上記の構造を有することで、Rは特に優れた酸解離性を示す。
【0027】
上記Rで表される1価の有機基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0028】
また、上記1価の有機基の有する炭素原子の一部は酸素原子、硫黄原子等の2価の原子、又は−NH−等の2価の原子団により置換されていてもよい。さらに、上記1価の有機基の有する水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等に置換されていてもよい。
【0029】
上記Xで表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
Xとしては、−ORが好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0031】
aとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。bとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。a+bとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0032】
([A]ポリシロキサンの調製方法)
[A]ポリシロキサンは、上記式(i)に対応するシランモノマー等を用いて公知の方法により調製することができる。
【0033】
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤は、放射線の照射により酸を発生する化合物であり、放射線の照射による熱や光のエネルギーにより分解して酸を発生する。この酸により、[A]ポリシロキサンの有する酸解離性基が解離し、[A]ポリシロキサンの極性が向上する。このような[B]酸発生剤としては、例えば熱酸発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。[B]酸発生剤としては、公知の物を用いることができる。また、[B]酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
[[C]溶媒]
[C]溶媒はエーテル系溶媒、エステル系溶媒、又はエーテル系溶媒及びエステル系溶媒を含むものであり、[A]ポリシロキサン、[B]酸発生剤及びその他任意成分を溶解する。当該ポリシロキサン組成物が[C]溶媒を含むことで、上記の第1層の均質性や表面状態が良好となる。この結果、第1層と第2層との相互作用が向上し、第2層の相分離がより促進されるため、相分離性が向上すると考えられる。また、[C]溶媒は水を含むことが好ましく、上記エーテル系溶媒及びエステル系溶媒以外の他の溶媒をさらに含んでもよい。この他の溶媒としては、[A]ポリシロキサン及び[B]酸発生剤を溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。また、[C]溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル等のジ脂肪族エーテル系溶媒;アニソール、ジフェニルエーテル、フェニルエチルエーテル等の含芳香環エーテル系溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0036】
上記エステル系溶媒としては、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のカルボン酸エステル系溶媒;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0037】
上記アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、iso−プロピルアルコール、t−ペンチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の脂環式モノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0038】
上記ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の脂肪族ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、メチルn−アミルケトンなどが挙げられる。
【0039】
上記アミド系溶媒としては、例えば1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド系溶媒;
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0040】
上記エステル系溶媒としては、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。[C]溶媒が含むエステル系溶媒がこれらのものであることで、上記の第1層と第2層との相互作用がより向上し、第2層の相分離性がより良好なものとなる。
【0041】
また、[C]溶媒中のエーテル系溶媒及びエステル系溶媒の合計含有量が50質量%以上であることが好ましい。このように、[C]溶媒中のこれらの溶媒の合計含有量が50質量%以上であることで、上述の相互作用がさらに向上し、第2層の相分離性が更に向上する。
【0042】
[C]溶媒が水をさらに含有する場合における、[C]溶媒を基準とする水の含有量としては、1質量%以上が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。このように、[C]溶媒が水を含有することで、[A]ポリシロキサンが水和されるため、当該ポリシロキサン組成物の保存安定性が向上する。また、水の存在により上記第1層の成膜時の硬化が促進されるため、緻密な膜を得ることができる。
【0043】
[その他任意成分]
([D]架橋促進剤)
[D]架橋促進剤は、当該ポリシロキサン組成物から感放射線性ポリシロキサン含有層を形成する際等に、[A]ポリシロキサンの分子鎖間又は分子鎖内における架橋反応を促進することができる化合物である。[D]架橋促進剤としては、上記性質を有する限り、特に限定されないが、例えば酸、塩基、金属錯体、金属塩化合物、オニウム塩化合物(ただし、[B]酸発生剤に該当するものを除く)等が挙げられる。[D]架橋促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
【0044】
上記酸としては、例えば塩酸等のハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素酸、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸、酢酸等のカルボン酸;ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸;リン酸、ヘテロポリ酸、無機固体酸などが挙げられる。
【0045】
上記塩基としては、例えば窒素含有化合物;水酸化アルカリ、炭酸アルカリ等のアルカリ金属化合物等が挙げられる。
【0046】
上記金属錯体としては、例えば周期律表第2、4,5及び13族の金属元素と、β−ジケトン、ケトエステル等の配位子とから構成されるキレート錯体等が挙げられる。
【0047】
上記金属塩化合物としては、例えば下記式(a)で表されるアルカリ金属塩化合物等が挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
上記式(a)中、Mは、アルカリ金属イオンである。Xn−は、水酸化物イオン及び炭素数1〜30の1価又は2価以上の有機酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。gは、1以上の整数である。hは、0又は1以上の整数である。nは、水酸化物イオン又は有機酸イオンの価数である。g+hは、i個の水酸化物イオン及び有機酸イオンの価数の合計と同じである。
【0050】
上記式(a)で表されるアルカリ金属塩化合物としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の水酸化物塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等の1価の塩;上記金属等のシュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩等の1価又は2価の塩等が挙げられる。
【0051】
[D]架橋促進剤としては、これらの中でも、より効果的に[A]ポリシロキサンを高分子量化すると考えられる観点より、窒素含有化合物、オニウム塩化合物が好ましい。
【0052】
上記窒素含有化合物としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0053】
上記アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0054】
上記アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、N−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。これらの中で、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、N−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましく、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−ヒドロキシメチルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾールが好ましい。
【0055】
上記ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0056】
上記含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0057】
(酸拡散制御剤)
酸拡散制御剤は塩基性を有する化合物である。酸拡散制御剤はその塩基性により、[B]酸発生剤から精製した酸の拡散を抑制する。この結果、後述する極性パターンのコントラストを向上させることができる。
【0058】
[自己組織化リソグラフィプロセス]
自己組織化リソグラフィプロセスは、基板の上側に第1層を形成する工程(以下、「第1層形成工程」ともいう。)、上記第1層に放射線を照射し、上記第1層の表面に互いに極性の異なる第1領域及び第2領域を形成する工程(以下、「第1層露光工程」ともいう。)、上記第1領域及び第2領域の上側に相分離構造を有する第2層を形成する工程(以下、「第2層形成工程」ともいう。)、及び上記第2層の一部を除去する工程(以下、「除去工程」ともいう。)を主に備える。また、上記自己組織化リソグラフィプロセスは、上記第1層露光工程後に、極性パターン上にガイドパターンを形成する工程(以下、「ガイドパターン形成工程」ともいう。)をさらに備えてもよい。
【0059】
(第1層形成工程)
本工程では、基板の上側に第1層としての感放射線性ポリシロキサン含有層を形成する。この形成方法としては、例えば基板の上側に当該ポリシロキサン組成物を塗布し塗膜を形成した後、この塗膜を減圧、加熱又はその両方により乾燥又は硬化させる方法が挙げられる。加熱が行われる場合、加熱条件は当該ポリシロキサン組成物の配合組成によって適宜選定される。通常、60℃〜350℃であり、好ましくは150℃〜300℃である。
【0060】
基板としてはシリコン基板等が用いられる。必要に応じて、基板と該感放射線性ポリシロキサン含有層との間に異なる層を設けてもよい。このような層としては、アルミニウム等の被覆層、実質的にケイ素原子を含まない有機化合物からなる層、非感放射線性ポリシロキサンを含有する層などが挙げられる。
【0061】
(第1層露光工程)
本工程では、感放射線性ポリシロキサン含有層に放射線を照射する。該層に含まれる化合物が光酸発生剤である場合はレーザー光等を、熱酸発生剤である場合は層表面を加熱可能なエネルギー線等を照射する。使用できる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中では、遠紫外線、極端紫外線、電子線が好ましい。遠紫外線の中では、ArFエキシマレーザー光(193nm)、KrFエキシマレーザー光(248nm)が好ましく、ArFエキシマレーザー光がより好ましい。
【0062】
放射線の照射は、感放射線性ポリシロキサン含有層の一部に対して行われる。照射は電子線等の描画装置などを用いて行ってもよく、フォトマスクを介して行ってもよい。放射線が照射された領域で発生した酸がポリシロキサンの極性を変化させることにより、未照射領域とは極性の異なる領域が形成される。この結果、該層の少なくとも表面には第1領域である未照射領域と、第2領域である被照射領域とで構成される極性パターンを有する層(以下、「極性パターン層」ともいう。)が形成される。
【0063】
なお、本明細書において極性パターンとは、感放射線性ポリシロキサン含有層の物理的形状を放射線の照射の前後で実質的に変化させることなく形成される化学的パターンをいう。公知のフォトリソグラフィープロセスのように、物理的形状を変化させることを目的とした工程により生じる物理的パターンや、これに付随して生じる化学的パターンは本明細書における極性パターンには含まれない。ただし、この定義は放射線の照射に起因する化学的変化により不可避的に生ずる層表面の物理的形状の微小変化まで全て排除することを意図したものではない。
【0064】
放射線の照射は液浸露光法により行うこともできる。この液浸露光法では、露光レンズと感放射線性ポリシロキサン含有層との間を液浸露光液で満たして露光を行う。この液浸露光液は、空気や不活性ガスに比して屈折率が大きいものである。上記液浸露光液として純水等の水系露光液を用いる場合、上記感放射線性ポリシロキサン含有層の上に撥水性の被覆層を形成することが好ましい。撥水性の被覆層は、例えば公知の液浸露光用レジスト上層形成用組成物を用いて形成することができる。
【0065】
また、上記撥水性の被覆層以外の被覆層を感放射線性ポリシロキサン含有層上に形成し、この被覆層を介して感放射線性ポリシロキサン含有層に放射線を照射してもよい。このような被覆層としては、例えば公知のレジスト上層反射防止膜等が挙げられる。
【0066】
放射線の照射後、発生した酸と感放射線性ポリシロキサンとの反応を促進するため、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことができる。PEB温度は例えば50℃〜180℃であり、好ましくは70℃〜150℃であり、さらに好ましくは75℃〜130℃であり、特に好ましくは80℃〜100℃である。PEB時間は例えば5秒〜600秒であり、好ましくは10秒〜180秒である。
【0067】
(ガイドパターン形成工程)
本工程では、極性パターン上にガイドパターンが配置される。ガイドパターンはプレパターンとも呼ばれる。自己組織化によるパターニングを大面積に一括して適用する場合、規則的に配列したパターンを有するミクロ構造が多数ランダムに生じ、ミクロ構造間の界面に欠陥が生じる場合がある。基板上にガイドパターンを配置して領域を画することにより、自己組織化パターンが生成する領域と方向をあらかじめ規定して相分離を制御することができる。ガイドパターンは凹凸や表面形状等の物理的要素によるもの、極性や構成材料の変化等の化学的要素によるもの、いずれによっても構成することができる。一般的には、バンク等による凹凸が形成され、ガイドパターンを構成する。
【0068】
(第2層形成工程)
本工程では、上記極性パターン層の上側に、第2層としての自己組織化材料層を形成する。ここで自己組織化材料とは、相分離により秩序パターンを自発的に形成する材料の総称である。この自己組織化材料を塗膜上に塗布等し、必要に応じて加熱することで、同じ性質を持つポリマー構造同士が集合し、自己整合的に複数の相からなる相分離構造が形成される。
【0069】
上記自己組織化材料としては、例えば一の性質を有する単量体化合物と、それと性質の異なる単量体化合物とが共重合してなるブロック共重合体、互いに性質の異なる複数のポリマーを含む組成物等が知られている。これらの中で、ブロック共重合体が好ましい。自己組織化材料としてブロック共重合体を用いることで、より微細なパターンを簡便に得ることができる。上記ブロック共重合体としては、例えばスチレン−メチルメタクリレートブロック共重合体等が挙げられる。
【0070】
自己組織化材料層の形成方法としては、例えば上記極性パターン層の上側に自己組織化材料組成物を塗布し、必要に応じてプレベーク(PB)を行い、塗膜中の溶媒を揮発させた後、必要に応じて加熱(アニーリング)し、相分離を促進する方法等が挙げられる。ここで、上記自己組織化材料組成物は、上記自己組織化材料及びこの自己組織化材料を溶解可能な溶剤を含む。なお、上述のように感放射線性ポリシロキサン含有層上に撥水性の被覆層を形成した場合、自己組織化材料組成物の塗布前に上記撥水性の被覆層を除去する。
【0071】
上記自己組織化材料組成物の塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。この塗膜の膜厚としては、例えば0.01μm〜1μmであり、好ましくは0.01μm〜0.5μmである。
【0072】
上記PB温度としては、例えば30℃〜200℃であり、好ましくは50℃〜150℃である。上記PB時間としては、例えば5秒〜600秒であり、好ましくは20秒〜300秒である。
【0073】
上記アニーリング方法としては、例えばオーブン、ホットプレート等を用いるものが挙げられる。上記アニーリング温度としては、例えば80℃〜400℃であり、好ましくは100℃〜350℃である。上記アニーリング時間としては、例えば10秒〜30分であり、好ましくは30秒〜10分である。
【0074】
(除去工程)
本工程では、上記自己組織化材料層を構成する複数の相のうち少なくとも1つの相を除去する。これにより、微細なパターンが得られる。複数の相のうちどの相を除去するかはプロセスの目的に応じて選択される。
【0075】
相の除去方法としては、例えば化学的エッチング、物理的エッチングが挙げられる。
【0076】
上記化学的エッチングとは、液体をエッチャントとして用いる方法(ケミカルウェットエッチング(湿式現像))である。化学的エッチングに用いるエッチング液としては、例えば酸、アルカリ水溶液、有機溶媒等が挙げられる。上記酸としては、例えばフッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。上記アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0077】
上記物理的エッチングとは、例えばエッチャントとしてCF、Oガス等を用いる方法である。この物理的エッチングとしては、例えばケミカルドライエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定的に解釈されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0079】
[Mw及びMn測定]
重合体のMw及びMnは、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
カラム:東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0080】
[合成例1]
[ポリシロキサン(A−1)の合成]
シュウ酸1.28gを水12.85gに加熱溶解させ、シュウ酸水溶液を調製し、滴下ロートに入れた。その後、化合物(M−1)13.92g(化合物の合計モルに対して50モル%)、化合物(M−4)35.93g(化合物の合計モルに対して50モル%)、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル35.90gをフラスコに投入し、このフラスコに冷却管及び上記滴下ロートを設置した。次いで、上記フラスコをオイルバスにて60℃に加熱し、その後上記滴下ロートからシュウ酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレーターに設置し、反応により生成したメタノールを除去してポリシロキサン(A−1)を含有する樹脂溶液175.0gを得た。上記樹脂溶液における固形分濃度(ポリシロキサン(A−1)の含有割合)は10.0質量%であった。また、ポリシロキサン(A−1)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
【0081】
[合成例2〜11]
[ポリシロキサン(A−2)〜(A−9)、(CA−1)及び(CA−2)の合成]
化合物の種類及び使用量を表1に記載の通りとした他は、上記合成例1と同様にしてポリシロキサン(A−2)〜(A−9)、(CA−1)及び(CA−2)を合成した。これらのポリシロキサンのMwを表1に併せて示す。
【0082】
ポリシロキサン(A−1)〜(A−9)、(CA−1)及び(CA−2)の合成に用いた化合物を以下に示す。
【0083】
【化5】
【0084】
【表1】
【0085】
[実施例1]
[ポリシロキサン組成物(J−1)の調製]
[A]ポリシロキサンとしての(A−1)を10質量%含有する樹脂溶液2質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)0.1質量部、[D]架橋促進剤としての(D−1)0.02質量部、並びに[C]溶媒としての(C−1)70質量部、(C−2)25質量部及び(C−3)2.88質量部を混合し、この混合液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0086】
ポリシロキサン組成物(J−1)〜(J−17)及び(DJ−1)〜(DJ−4)の合成に用いた各成分を以下に示す。
【0087】
[[B]酸発生剤]
B−1:下記式(B−1)で表される化合物
【0088】
【化6】
【0089】
[[C]溶媒]
C−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
C−2:プロピレングリコールモノエチルエーテル
C−3:水
【0090】
[[D]架橋促進剤]
D−1:下記式(D−1)で表される化合物
【0091】
【化7】
【0092】
【表2】
【0093】
[自己組織化材料組成物の調製]
ポリスチレンブロック及びポリメタクリル酸メチルブロックからなるジブロック共重合体(ジブロック共重合体中のスチレン単位が50質量%、メタクリル酸メチル単位が50質量%、ジブロック共重合体のMw=80,000)をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解し、1質量%溶液とした。この溶液を孔径200nmのメンブレンフィルターでろ過して自己組織化材料組成物を調製した。
【0094】
<評価>
[感放射線性ポリシロキサン含有層の形成及び露光]
12インチシリコンウェハ上に、有機下層膜形成用組成物(日産化学社の「ARC66」)をスピンコートした後、210℃で60秒間PBを行うことにより膜厚105nmの有機下層膜を形成した。この有機下層膜上に、実施例及び比較例のポリシロキサン組成物をスピンコートし、210℃で60秒間PBを行った後、23℃で60秒間冷却することにより膜厚30nmの感放射線性ポリシロキサン含有層を形成した。
【0095】
次いで、ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を使用し、NA:1.30、Dipoleの光学条件にて、42nmライン/84nmピッチ形成用のマスクサイズのマスクを介して上記感放射線性ポリシロキサン含有層を露光し、極性パターンを形成した。露光後、上記塗布/現像装置のホットプレート上で、100℃で60秒間PEBを行った後、23℃で30秒間冷却した。
【0096】
[自己組織化材料層の形成]
その後、露光後の上記感放射線性ポリシロキサン含有層上に、上記自己組織化材料組成物をスピンコートし、210℃で10分加熱し相分離させた。
【0097】
[自己組織化による相分離構造]
自己組織化による相分離構造について、測長SEM(日立製作所の「S−4800」)を用いて実施例及び比較例における自己組織化材料層を観察し、以下の基準により評価した。この評価結果を表3に示す。
A:明確な相分離が確認できる。
B:相分離が不完全な部分がある。
【0098】
【表3】
【0099】
表3に示されるように、実施例のポリシロキサン組成物を用いた場合においては、その上に形成される自己組織化材料層の相分離が明確であった。一方、比較例のポリシロキサン組成物を用いた場合は、自己組織化材料層の相分離が不完全な部分があった。このように、実施例のポリシロキサン組成物は、比較例のものと比べ自己組織化材料層の相分離性を向上できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のポリシロキサン組成物は、自己組織化リソグラフィプロセスにおいて、相分離性を向上できるケイ素含有膜を形成できる。従って、当該ポリシロキサン組成物は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造等におけるパターン形成に好適に用いることができる。