【実施例】
【0015】
本発明は、車輪とともに回転するディスクを、その両側面からブレーキライニングで挟みつけて制動する鉄道車両用キャリパブレーキ装置の構成要素であるブレーキシリンダのロッド突出側に設置して前記ロッドの突出状態を保持する駐車ブレーキ装置である。
【0016】
先ず、サービスブレーキを働かせるキャリパブレーキ装置の構成要素である空圧ブレーキシリンダの一例を、
図1を用いて説明する。
【0017】
1は軸方向に2分割したものを接続したシリンダ、2はこのシリンダ1の軸方向にシリンダ1の内部を自由に移動できるように設けたピストンであり、このピストン2の一方側面の中心部に、その先端部がシリンダ1から突出するロッド3を一体的に取付けている。このロッド3は、ピストン2のロッド3を取付けた側のシリンダ1の内部空間1cに配置したコイルスプリング4により、常時はシリンダ1の内部に退入している。
【0018】
5はシリンダ1の内部の、前記ロッド
3を取付けた側と反対側の空間1dに供給した圧縮空気が前記ロッド
3を取付けた側の空間1cに漏れないように、シリンダ1の接続面に挟み付けたダイヤフラムである。このダイヤフラム5は、ピストン2のロッド3を取付けた側と反対側に位置するように設けている。
【0019】
上記構成の空圧ブレーキシリンダでは、シリンダ1の内部のロッド3の取付け側と反対側の空間1dに圧縮空気を供給してシリンダ1からロッド3を突出させる。このロッド3の突出により、シリンダ1のロッド3の突出側と反対側の端面に設けた接続孔1aとロッド3の先端部に設けた接続孔3aとの距離を拡大させる。
【0020】
これにより、前記両接続孔1a,3aに基端部を回転自在に取付けた1対のブレーキてこの先端を接近させ、それぞれのブレーキてこの先端部に取付けたブレーキライニングでディスクを両側から挟んで制動する。
【0021】
本発明の駐車ブレーキ装置は、例えば上記構成の空圧ブレーキシリンダにおけるシリンダ1のロッド3の突出側に設置し、突出したロッド3を保持してロッド3の退入を阻止するもので、例えば以下のような構成である。
【0022】
11は前記空圧ブレーキシリンダのシリンダ1と同軸に連結する第2シリンダであり、前記ロッド3はこの第2シリンダ11を貫通してその先端部が外部に突出している。
【0023】
12は前記第2シリンダ11の内部に、前記ロッド3と同軸でかつ相対移動が自在なように設けた第2ピストンである。この第2ピストン12は、前記ロッド3の突出側の先端面12aが、前記第2シリンダ11の側壁11aよりも外側に突出するようにしている。
【0024】
13は、前記サービスブレーキ装置のシリンダ1の、前記第2ピストン12の側面12bと向き合う側壁1bの内周側部分に、前記側面12b側の突出部12cの端面と相対するように配置したスイッチである。このスイッチ13は、第2ピストン12によって区画された第2シリンダ11のシリンダ1と反対側の空間11bに供給した圧縮空気により第2ピストン12が押付けられているときはオフとなる。一方、前記圧縮空気が排気され、後述する駐車作動補助スプリング15のばね力により第2ピストン12がスイッチ13から離反して押付けを解除されたときにはオンとなる。
【0025】
14は、例えばシリンダ1の前記側壁1bの内周側部分に設けられた一方向クラッチであり、前記スイッチ13のオンとオフの切替えによりオンとオフが切替えられる。この一方向クラッチ14は、オフの場合はロッド3の出退移動を拘束せず、ロッド3は自由に出退移動ができるが、オンの場合はロッド3の突出移動は許容するが、ロッド3の退入移動は阻止する。
【0026】
前記一方向クラッチ14は、例えば、前記側壁1bのロッド3の貫通部をロッド3の突出方向に大径となるテーパ状に形成し、この貫通部に位置するロッド3の外周にボール群を設置した構成を採用する(例えば国際公開2011/081209号)。このような構成では、オンの場合は、ボール群は前記テーパ状の小径部に位置してロッド3に押付けられてロッド3の退入移動を阻止する。一方、オフの場合は、ボール群は大径部に位置してロッド3に押付けられないのでロッド3は自由に出退移動ができる。
【0027】
しかしながら、前記一方向クラッチ14の構成は、オフの場合にロッド3が自由に出退移動でき、オンの場合、すなわち駐車ブレーキ時にはシリンダ1及び第2シリンダ11からロッド3が突出した状態からの退入移動を阻止できるものであれば、特に限定しない。
【0028】
15は、第2ピストン12によって区画された第2シリンダ11内のシリンダ1側の空間11cにおける第2ピストン12の前記突出部12cの外周側に配置された駐車作動補助スプリングである。この駐車作動補助スプリング15は、常時は、第2ピストン12をロッド3の突出方向に押すようにばね力が働いている。
【0029】
16は、第2シリンダ11の外部から、第2ピストン12をロッド3の退入方向に押す解除機構の構成要素である手動解除ピストンであり、第2シリンダ11の前記空間11bに設置されている。この手動解除ピストン16の先端は第2シリンダ11の側壁11aを貫通して外方に突出しており、また、その胴部外周の例えば軸方向2箇所には、位置決め用凹部16aa,16abが形成されている。この凹部16aa,16abの軸方向の間隔は、第2ピストン12がスイッチ13を押し付ける状態から、前記空間11bから圧縮空気が排気されてスイッチ13から第2ピストン12が離反し、スイッチ13の押付けを解除するまでの間隔である。
【0030】
一方、前記凹部16aa,16abを形成した手動解除ピストン16の胴部16bが貫通する第2シリンダ11の側壁11aに設けた貫通孔11aaには、手動解除ピストン16が側壁11aに押付けられた状態の時に、シリンダ1側の前記凹部16aaに嵌め込む位置決め用弾性凸部11abを設けている。
【0031】
17は、第2シリンダ11の側壁11aの外側に突出した前記手動解除ピストン16の先端に固定した手動解除棒である。この手動解除棒17は、駐車ブレーキの解除時、ロッド3がシリンダ1内に退入する方向に押し込んで、手動解除用ピストン16を第2シリンダ11の内部に押し込むものである。
【0032】
18は駐車解除てこであり、中央部にロッド3を貫通しつつ第2ピストン12の先端面12aに当接する孔18aを、また、先端部には手動解除ピストン16の胴部16bを貫通する孔18bを設けている。そして、その基端側を第2シリンダ11の手動解除ピストン16と対向する側に揺動自在に支持させることで、前記手動解除棒17のロッド3の前記押し込みと同期して、駐車作動補助スプリング15のばね力に抗して第2ピストン12をロッド3の退入方向に押し込むようにしている。
【0033】
上記構成の本発明の駐車ブレーキ装置の動作を以下に説明する。
【0034】
(非制動時)
第2シリンダ11のシリンダ1と反対側の空間11bのみに圧縮空気を導入する。これにより、第2ピストン12に圧力が作用し、第2ピストン12が駐車作動補助スプリング15を圧縮してロッド3の退入方向に移動してスイッチ13を押し、スイッチ13をオフの状態にする。この状態では、ロッド3は出退方向の何れの方向にも移動できる。また、手動解除ピストン16は前記圧力の作用により第2シリンダ11の側壁11aに押付けられる。
【0035】
(サービスブレーキ時)
非制動の状態から、ピストン2のロッド3の取付け側と反対側の空間1dにも圧縮空気を導入する。これによって、ピストン2がコイルスプリング4を圧縮してロッド3が突出方向に移動する。ロッド3のこの移動によって、シリンダ1の接続孔1aとロッド3の接続孔3aに接続したブレーキてこの基端側を拡げて先端を閉じ、先端部に設置したブレーキライニングでディスクを挟みつけて制動する。
【0036】
(サービスブレーキの解除)
制動後は、ピストン2のロッド3の取付け側と反対側の空間1dに導入した圧縮空気のみを排気して、ピストン2に作用していた圧力を開放する。これにより、コイルスプリング4の復元力でロッド3が退入してブレーキてこの基端側を狭め、先端部に設置したブレーキライニングを離間させて制動を解除する。
【0037】
(駐車ブレーキ時)
前記サービスブレーキ時の状態で、第2シリンダ11のシリンダ1と反対側の空間11bに導入した圧縮空気を排気して、第2ピストン12に作用していた圧力を開放する。これにより、駐車作動補助スプリング15の復元力で第2ピストン12がロッド3の突出方向に押されて第2ピストン12の突出部12cの面がスイッチ13から離反し、一方向クラッチ14をオンの状態に切替える。
【0038】
一方向クラッチ14がオンに切替わると、ロッド3は突出方向へは移動できるが退入方向への移動はできなくなって、ピストン2のロッド3の取付け側と反対側の空間1dの圧力が低下してもブレーキライニングによるディスクの挟み付け状態を維持する。
【0039】
また、制動直後の高温状態のディスクやブレーキライニングが冷却されてブレーキライニングによるディスクの挟み付け力が低下した場合は、ピストン2のロッド3の取付け側と反対側の空間1dの残圧によりロッド3を突出方向に移動する。従って、駐車ブレーキ力を保持することができる。
【0040】
(駐車ブレーキの手動解除時)
駐車ブレーキが作動している状態で、手動解除棒17をロッド3の退入方向に押して手動解除ピストン16をロッド3の退入方向に移動させる。この移動は、第2シリンダ11の側壁11aに設置した弾性凸部11abの、胴部16bに設けた凹部への嵌め込みが、シリンダ1側の凹部16aaから反シリンダ1側の凹部16abに変わるまで行う。
【0041】
前記手動解除ピストン16の移動と同時に、駐車解除てこ18はロッド3の退入方向に揺動する。この揺動に伴って、第2ピストン12がロッド3の退入方向に押されてスイッチ13を押し、一方向クラッチ14をオフに切替える。一方向クラッチ14がオフに切替わるとロッド3は出退方向の何れの方向にも移動できるようになって、駐車ブレーキが解除された状態になる。
【0042】
(駐車ブレーキの手動解除状態の解除)
前記手動解除の状態で、第2シリンダ11のシリンダ1と反対側の空間11bに圧縮空気を導入する。これにより、第2シリンダ12及び手動解除ピストン16に圧力が作用し、第2ピストン12はロッド3の退入方向に押されてスイッチ13を押してオフに切替える。一方、手動解除ピストン16は第2シリンダ12の側壁11aに押し付けられ、側壁11aに設置した弾性凸部11abの、胴部16bに設けた凹部への嵌め込みが、反シリンダ1側の凹部16abからシリンダ1側の凹部16aaになって初期位置に戻る。
【0043】
以上説明した本発明の駐車ブレーキは、一方向クラッチ14のオンとオフの切替えによって、ロッド3の突出状態の維持と維持解除を切替えるので、駐車ブレーキ装置の小型化、簡略化が図れ、しかも、既存のブレーキシリンダへも容易に設置できるようになる。
【0044】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0045】
例えば、上記の例では、一方向クラッチ14をシリンダ1の側壁1bに設け、スイッチ13を介して一方向クラッチ14のオンとオフの切り替えを行うものを示している。しかしながら、
図4に示すように、一方向クラッチ14を第2シリンダ11の内部に設け、第2ピストンの移動で一方向クラッチ14のオンとオフの切り替えを直接行い、スイッチ13を省略しても良い。
【0046】
図4に示した例では、第2シリンダ11の内部に設けた一方向クラッチ14の内筒14aを第2ピストン12と一体に連結している。そして、第2ピストン12のロッド3の突出方向への移動により、前記内筒14aに回転が自在なように保持したボール14b群の、外筒14cの内部テーパ面への押付けが解除され、ロッド3の出退移動を許容する。反対に、第2ピストン12のロッド3の退入方向への移動により、外筒14cの内部テーパ面に前記ボール14b群を押付け、ロッド3の退入移動を阻止する。
【0047】
21は第2シリンダ11の内部に設けた複数の駐車解除ピストンである。ロッド3の自由な出退移動を許容する常時は、この駐車解除ピストン21に圧縮空気を供給し、第2ピストン12と側壁11aの間に設けた駐車作動補助スプリング15のばね力に抗して、第2ピストン12をロッド3が突出する方向に押して移動させる。
【0048】
第2ピストン12の前記移動に伴って前記内筒14aはロッド3が突出する方向に移動し、外筒14cの内部テーパ面へのボール14b群の押付けが解除される。この時、内筒14aと外筒14cの間に配置された内部ばね14dは圧縮される。
【0049】
一方、ロッド3の退入移動を阻止する駐車ブレーキ時は、駐車解除ピストン21への圧縮空気の供給を停止する。この供給停止により、駐車解除ピストン21内の戻しばね21a、駐車作動補助スプリング15のばね力によって、第2ピストン12はロッド3が退入する方向に押されて移動する。
【0050】
第2ピストン12の前記移動に伴って前記内筒14aはロッド3が退入する方向に移動し、内筒14aと外筒14cの間に配置された内部ばね14dが元のばね長さに復元して外筒14cの内部テーパ面にボール14b群を押付ける。
【0051】
駐車ブレーキを手動で解除する場合は、前記駐車ブレーキ状態で、第2シリンダ11の側壁11aに、中央部を回転自在に支持した手動解除棒17の一方端側を反時計回り方向に回動させる。この回動により、第2ピストン12の先端部に設けた孔12dに挿入した他方端部で第2ピストン12を、前記内部ばね14dのばね力に抗してロッド3の突出方向に引出し、外筒14cの内部テーパ面へのボール14b群の押付けを解除する。
【0052】
また、本発明の駐車ブレーキ装置を取付けるキャリパブレーキ装置は、特許文献1に記載されたブレーキてこを採用したものに限らず、
図2に示すように、ブレーキてこを2段にしたり、
図3に示すように、ブレーキてこの回転を、偏芯軸を介して行うことで、より小型化を図ったものでも良い。なお、
図2中の6は1段目のブレーキてこ、7は2段目のブレーキてこ、8はブレーキライニングを示す。また、
図3中の9はブレーキてこ、10は偏心軸を示す。