特許第6237775号(P6237775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237775
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20171120BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/134
   H01M4/13
   H01M4/36 E
   H01M4/36 C
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-538892(P2015-538892)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2014004813
(87)【国際公開番号】WO2015045341
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201520(P2013-201520)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】澤 勝一郎
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−514630(JP,A)
【文献】 特開2007−194076(JP,A)
【文献】 特開2010−092878(JP,A)
【文献】 特許第4351732(JP,B2)
【文献】 特開2010−262752(JP,A)
【文献】 特開2010−033744(JP,A)
【文献】 特開2008−258154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、第1の活物質粒子及びバインダーを含む第1の合剤層と、第2の活物質粒子及びバインダーを含む第2の合剤層とを備えるリチウム二次電池用負極であって、
前記第1の合剤層は前記集電体上に設けられており、前記第2の合剤層は前記第1の合剤層上に設けられており、
前記第2の合剤層は複数の柱部を備え、隣り合う一対の前記柱部の間には空隙が存在しており、
前記第2の合剤層の充電時における膨張率は、前記第1の合剤層の充電時における膨張率よりも大きく、
前記第1の合剤層の導電率は、前記第2の合剤層の導電率よりも大きく、
前記複数の柱部の柱部間ピッチは、35〜130μmであって、
前記柱部の直径は30〜100μmであって、
前記第1の合剤層が炭素被覆層を備えるSiO(x=0.5〜1.5)粒子を含み、
前記第2の合剤層がSiO(x=0.5〜1.5)粒子、Si粒子またはSi合金粒子を含む、
リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記第1の合剤層がさらに炭素材料を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記第1の合剤層及び前記第2の合剤層が炭素被覆されたSiO粒子と炭素材料を含み、前記第1の合剤層における、SiO粒子と炭素材料との合計質量に対するSiO粒子の質量の比が、前記第2の合剤層におけるSiO粒子と炭素材料との合計質量に対するSiO粒子の質量の比よりも小さい、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記第1の合剤層と前記第2の合剤層との間に、第3の合剤層を備え、前記第3の合剤層の充電時における膨張率は、前記第1の合剤層の充電時における膨張率よりも大きく、前記第2の合剤層の充電時における膨張率よりも小さい、請求項1から請求項3の何れかに記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
前記第2の合剤層は、土台部と土台部上に形成された前記複数の柱部を備える、請求項1から請求項4の何れかに記載のリチウム二次電池用負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池の負極活物質として、ケイ素を含む材料を用いることが検討されている。ケイ素を含む材料を活物質として用いた場合、リチウムの吸蔵・放出の際に、活物質の体積が膨張・収縮することにより、活物質の微粉化や、活物質の集電体からの剥離を生じる。このため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなるという問題がある。
【0003】
下記特許文献1には、負極集電体近傍におけるバインダーの割合が負極集電体から離れた位置におけるバインダー割合の2.5倍以上の負極を用いることが開示されている。
【0004】
下記特許文献2には、活物質としてSiOで示されるケイ素酸化物を用い、集電体側に酸素濃度の高いSiOxを配置し、その上に酸素濃度の低いSiOxを配置することにより、集電体の変形を抑制し、短絡による不良を低下させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-200686号公報
【特許文献2】特開2006-107912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、合剤層と集電体との密着性が不十分であるため、膨張収縮により集電性が低下し、サイクル特性が低下するという問題があった。
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る非水電解質二次電池用負極は、集電体と、第1の活物質粒子及びバインダーを含む第1の合剤層と、第2の活物質粒子及びバインダーを含む第2の合剤層とを備えるリチウム二次電池用負極であって、第1の合剤層は集電体上に設けられており、第2の合剤層は第1の合剤層上に設けられており、第2の合剤層は複数の柱部を備え、隣り合う一対の前記柱部の間には空隙が存在しており、第2の合剤層の充電時における膨張率は、第1の合剤層の充電時における膨張率よりも大きく、第1の合剤層の導電率は、第2の合剤層の導電率よりも大きい。複数の柱部の柱部間ピッチは、35〜130μmであって、前記柱部の直径は30〜100μmであることが好ましい。第1の合剤層が炭素被覆層を備えるSiOx(x=0.5〜1.5)粒子を含むことが好ましい。第2の合剤層がSiOx粒子、Si粒子またはSi合金粒子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、初期充放電効率が高く、かつサイクル特性に優れたリチウム二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の一例である負極を示す模式的断面図である。
図2】本発明の実施形態の他の一例である負極を示す模式的断面図である。
図3】本発明の実施形態の他の一例である負極を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0011】
本発明の実施形態の一例である負極を用いた非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質と、セパレータと、を備える。
【0012】
〔負極〕
以下、図1図3を参照しながら、負極10について詳説する。
図1の負極は、第1の活物質粒子及びバインダーを含む第1の合剤層12が、集電体11と接するように集電体上に設けられ、第2の活物質粒子及びバインダーを含む第2の合剤層13が、第1の合剤層上に設けられている。第2の合剤層13は、土台部と、土台部上に形成された柱部を備えている。第2の合剤層13の充電時における膨張率は、第1の合剤層12の充電時における膨張率よりも大きい。第1の合剤層12の導電率は、第2の合剤層13の導電率よりも大きい。
【0013】
第2の合剤層13は柱部を有しているので、第2の活物質粒子の膨張に伴う第2の合剤層13の膨張は、柱部間に形成されている空間に最大限吸収される。これによって、第2の合剤層13と集電体11との間の応力が低減される。加えて、第2の合剤層13と集電体11との間に、充電時における膨張率が第2の合剤層13よりも小さい第1の合剤層12を、集電体11と接するように設けると、最も大きな応力がかかる、合剤層と集電体との界面における応力を低減することができる。上述した構成によって、集電体にかかる応力が低減されると、充放電サイクルに伴って集電体から合剤層が剥離するのを抑制することができる。
【0014】
集電体にかかる応力を低減するために、第2の合剤層と集電体との間に充電時における膨張率が第2の合剤層よりも小さい第1の合剤層を、集電体と接するように設ける場合、第1の合剤層の導電率が、第2の合剤層の導電率よりも小さいと、電池の初期効率が低下する。導電性の高い合剤層を集電体と界面との間に配置する、即ち、第2の合剤層と集電体との間に充電時における膨張率が第2の合剤層よりも小さい第1の合剤層を集電体と接するように設ける場合、第1の合剤層の導電率を第2の合剤層の導電率よりも大きくすることで、初期効率の向上とサイクル特性の向上を両立させることが可能である。
【0015】
図2に例示するように、第2の合剤層13は、柱部のみを備えていてもよい。
【0016】
図3に例示するように、第1の合剤層12は、集電体に接する土台部と、土台部の上に形成された柱部を備え、第2の合剤層13は、柱部のみを備え、第2の合剤層13の柱部は、第1の合剤層12の柱部上に形成されていてもよい。
【0017】
第1の活物質粒子としては、SiとOを含有するものが好ましい。このようなものとして、SiOx(x=0.5〜1.5)からなる粒子が挙げられる。
【0018】
SiOx粒子は、その表面が、非晶質炭素で被覆されていることが好ましい。SiOxは、電子抵抗が高く、そのため負荷特性が低下する。表面を非晶質炭素で被覆することにより、電子伝導性を付与することができ、合剤層の電導度を向上させることが可能である。また、炭素は、SiOxと比較して、比表面積が大きいため、バインダーを保持しやすい。このため、集電体に近い側に設けられる第2の合剤層の第2の活物質粒子として、非晶質炭素で被覆したSiOx粒子を用いることにより、集電体との界面に近い側に、より多くのバインダーを配置することができる。このため、第2の合剤層と集電体との密着性をさらに改善することができ、第1の合剤層及び第2の合剤層が、集電体から剥離するのを抑制することができる。
【0019】
第2の活物質粒子は、SiOx粒子、Si粒子またはSi合金粒子を含有することが好ましい。Si合金としては、ケイ素と他の1種以上の元素との固溶体、ケイ素と他の1種以上の元素との金属間化合物、ケイ素と他の1種以上の元素との共晶合金などが挙げられる。合金の作製方法としては、アーク溶解法、液体急冷法、メカニカルアロイング法、スパッタリング法、化学気相成長法、焼成法などが挙げられる。特に、液体急冷法としては、単ロール急冷法、双ロール急冷法、及びガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法などの各種アトマイズ法が挙げられる。
【0020】
第1の活物質粒子または第2の活物質粒子としてSiOx粒子を用いる場合、カーボンブラックやアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、及びこれらの2種以上の混合物などの炭素材料を、負極活物質として共に用いることが好ましい。
【0021】
第2の合剤層13が第1の合剤層12上に設けられている、とは、第1の合剤層と第2の合剤層とが接するように、第2の合剤層が第1の合剤層上に設けられている場合と、第1の合剤層と第2の合剤層とは接していないが、第2の合剤層が集電体上の第1の合剤層よりも上側に設けられている場合、とが含まれる。第1の合剤層12と第2の合剤層13との間には、第1の合剤層12の充電時における膨張率よりも大きく、第2の合剤層13の充電時における膨張率よりも小さい、第3の合剤層(図示せず)が存在していることが好ましい。第3の合剤層により、集電体にかかる応力を、より一層低減することが可能である。
【0022】
第1の合剤層12と第2の合剤層13との組み合わせとしては、第1の合剤層12が炭素被覆されたSiOx粒子を含む層であって、第2の合剤層13がSi粒子を含む層である場合、第1の合剤層12が炭素被覆されたSiOx粒子と炭素材料とを含む層であって、第2の合剤層13がSi粒子を含む層である場合が例示される。また、第1の合剤層12及び第2の合剤層13が共に炭素被覆されたSiOx粒子と炭素材料とを含む層であって、第1の合剤層12における、SiOx粒子と炭素材料との合計質量に対するSiOx粒子の質量の比が、第2の合剤層13におけるSiOx粒子と炭素材料との合計質量に対するSiOx粒子の質量の比よりも小さい場合、も例示される。
【0023】
第1の合剤層12の厚みは、10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下である。また、第1の合剤層12の厚みは、2μm以上であることが好ましい。第1の合剤層12の厚みを厚くしすぎると、電池容量が低下する場合がある。また、第1の合剤層12の厚みが薄すぎると、サイクル特性を十分に高めることができない場合がある。
【0024】
第2の合剤層13の厚みは、電極のエネルギー密度を高めるため、第1の合剤層よりも厚いことが好ましい。従って、10μm以上であることが好ましく、50μm以下であることが好ましい。図1に例示するように、第2の合剤層13が土台部と、土台部上に形成された柱部を備えている場合には、第2の合剤層13における土台部の厚みは、5〜10μmであることが好ましく、土台部上に形成された柱部の厚みは、10〜50μmであることが好ましい。
【0025】
第2の合剤層13における柱部分は、千鳥配置されていることが好ましい。柱部分が千鳥配置されていることによって、形成される空隙が最大限活用される。柱部の形状は特に限定されるものではなく、集電体の長さ方向と水平な方向の柱部の断面は、円、正方形、その他の形状であっても良い。集電体の厚み方向と水平な方向の柱の断面は、長方形、正方形、台形その他の形状であってもよい。柱部間のピッチ(図1のP)は、35〜130μmが好ましい。柱部の直径(図1のL)は30〜100μmが好ましい。第1の合剤層12及び第2の合剤層13の密度は、0.7〜1.7g/cmが好ましい。
【0026】
第1の活物質粒子の平均粒径D50(メディアン径)は、10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下である。第1の活物質粒子の平均粒径が大きくなりすぎると、第1の合剤層の厚みが大きくなってしまう。第2の活物質粒子の平均粒径の下限値は、一般に2μmである。
【0027】
第2の活物質粒子の平均粒径D50(メディアン径)は、20μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは15μm以下である。第2の活物質粒子の平均粒径が大きくなりすぎると、電極の作製が困難となる。第2の活物質粒子の平均粒径の下限値は、一般に6μmである。
【0028】
バインダーとしては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドは弾性率が高いので、充放電による膨張・収縮でも粒子同士の接触が外れることがなくなる。従って、バインダーの接触点で活物質粒子がフレキシブルに動くことが可能となり、活物質粒子が膨張しても空隙に埋まるように活物質粒子が動けるので、第1の合剤層及び第2の合剤層において、活物質粒子同士の接触点が減少するのを抑制することができる。
【0029】
ポリイミドとしては、ポリアミド酸を熱処理することによって得られるポリイミドを用いることが好ましい。この熱処理によりポリアミド酸が脱水縮合して、ポリイミドが生成する。本発明においては、ポリイミドのイミド化率は、80%以上のものが好ましい。ポリイミドのイミド化率が80%未満であると、活物質粒子及び集電体との密着性が十分でない場合がある。ここで、イミド化率とは、ポリアミド酸などのポリイミド前駆体に対する生成したポリイミドのモル%である。イミド化率80%以上のものは、例えば、ポリアミド酸のN−メチル−ピロリドン(NMP)溶液を、100℃〜400℃の温度で1時間以上熱処理することにより得ることができる。また、350℃で熱処理する場合、熱処理時間が約1時間でイミド化率は80%となり、約3時間でイミド化率は100%となる。
【0030】
第1の合剤層は、第1の活物質粒子及び第1のバインダーを含む第1の合剤層スラリーを塗布して形成することが好ましい。第2の合剤層も、第2の活物質粒子及び第2のバインダーを含む第2の合剤層スラリーを塗布して形成することが好ましい。
【0031】
第1の合剤層スラリーを塗布後、乾燥させずに第2の合剤層スラリーを塗布してもよい。第1の合剤層スラリーを塗布後、乾燥させてから、第2の合剤層スラリーを塗布しても良い。
【0032】
第2の合剤層スラリーを塗布後、半乾き状態としてから、金型等を用いて柱部を形成することができる。
【0033】
第1の合剤層スラリーを乾燥させずに第2の合剤層スラリーを塗布したものは、第1の合剤層スラリーと第2の合剤層スラリーとが混合した第3の合剤層が形成されやすい。
【0034】
第1の合剤層12及び第2の合剤層13を形成した後、非酸化性雰囲気下で焼結することが好ましい。
【0035】
焼結は、例えば、真空下、または窒素雰囲気もしくはアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。焼成温度は、好ましくは200〜500℃の範囲内であり、さらに好ましくは300〜450℃の範囲内である。焼結する方法として、放電プラズマ焼結法やホットプレス法を用いてもよい。
【0036】
第1の合剤層12及び第2の合剤層13におけるバインダーの量は、第1の合剤層12及び第2の合剤層13に用いる第1の活物質粒子及び第2の活物質粒子の量や種類などに応じて、適宜調整して用いることができる。
【0037】
第1の合剤層12及び第2の合剤層13の充電時における膨張率は、充電状態の電極及び放電状態の電極より、それぞれ合剤層を剥離して、それぞれの合剤層の体積変化を求めることにより算出することができる。具体的には、以下の式から算出することができる。
【0038】
合剤層の膨張率(%)=〔(充電状態の電極より合剤層を剥離して測定した合剤層の体積)/(放電状態の電極より合剤層を剥離して測定した合剤層の体積)〕×100
【0039】
第1の合剤層12及び第2の合剤層13の導電率は、例えば、4探針抵抗率計(三菱化学製Laresta-GP)を用いて測定できる。
【0040】
〔正極〕
正極としては、リチウム二次電池の正極として用いることができるものであれば特に限定されるものではない。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0041】
〔非水電解質〕
非水電解質の電解質塩としては、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などを用いることができる。この中でも、イオン伝導性と電気化学的安定性の観点から、LiPF6を用いることが好ましい。電解質塩
は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら電解質塩は、非水電解質1Lに対し0.8〜1.5molの割合で含まれていることが好ましい。
【0042】
非水電解質の溶媒としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0044】
〔実験1〕
(負極の作製)
非晶質炭素で表面被覆されたSiOx粒子(x=1.0)と、黒鉛粉末と、バインダー前駆体溶液(ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸樹脂と分散媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を混合したもの)とを混合し、第1の合剤スラリーを調製した後、第1の合剤スラリーを集電体上に塗布した。SiOxの平均粒径は、5μmであった。黒鉛粉末の平均粒径は、3μmであった。SiOx粒子と黒鉛粉末と負極バインダー(負極バインダー前駆体溶液を乾燥させてNMPを除去し、重合反応及びイミド化反応させた後のもの)の質量比を89:4:7とした。負極集電体として、両面が電解銅で粗化されており、厚さが18μmである銅合金箔(C7025合金箔、組成;Cu 96.2質量%、Ni 3質量%、Si 0.65質量%、Mg 0.15質量%)を用いた。銅合金箔の各面の表面粗さRa(JIS B 0601−1994)は、0.25μmであった。銅合金箔の各面の平均山間隔S(JIS B 0601−1994)は、0.85μmであった。第1の合剤層を、密度0.9g/cm、片面厚み5μmとして、銅合金箔の両面に形成した。
【0045】
Si粒子と、黒鉛粉末と、バインダー前駆体溶液とを混合し、第2の合剤スラリーを調製した。Si粉末の平均粒径は3μmであった。黒鉛粉末の平均粒径は、3μmであった。Si粒子と黒鉛粉末と負極バインダー(負極バインダー前駆体溶液を乾燥させてNMPを除去し、重合反応及びイミド化反応させた後のもの)の質量比を89:4:7とした。第2の合剤スラリーを、集電体上に配置された第2の合剤層の上に塗布し、半乾き状態とした。半乾き状態とした負極合剤層の表面に複数の空孔が形成された金型(空孔径80μm、ピッチ105μm)を押し付けて成型したのち、負極合剤層を完全に乾燥させ、その後、400℃10時間で熱処理を行った。負極合剤層全体の合剤密度は、0.7g/cm、第1の合剤層と第2の合剤層の厚みは、片面39μmであった。
【0046】
上記電極の長さは、380mmであった。電極の幅は、50mmであった。負極の端部にある未塗布部分に、負極集電タブとしてニッケル板を接続した。実験例1の負極は、第1の合剤層上に、土台部と、土台部の上に形成された柱部を有する第2の合剤層が形成されていた。前記土台部の厚みは5μm、柱部の厚みは29μmであった。
【0047】
(正極の作製)
LiCOとCoCOとを、LiとCoとのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した。その後、混合物を800℃の空気雰囲気中にて24時間熱処理した。その後、これを粉砕して、LiCoOで表されるリチウムコバルト複合酸化物の粉末を得た。リチウムコバルト複合酸化物の粉末の平均粒径は、10μmであった。得られたリチウムコバルト複合酸化物粉末(正極活物質粉末)のBET比表面積は、0.37m/gであった。
【0048】
正極活物質粉末としてのLiCoO粉末と、正極導電材粒子としての炭素材料粉末と、正極バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを、分散媒としてのNMPに加えた後、混練し、正極合剤スラリーを得た。LiCoO粉末と炭素材料粉末とポリフッ化ビニリデンとの質量比(LiCoO粉末:炭素材料粉末:ポリフッ化ビニリデン)は、95:2.5:2.5とした。
【0049】
正極合剤スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた後に、圧延することにより正極を作製した。アルミニウム箔の厚みは、15μmであった。アルミニウム箔の長さは、402mmであった。アルミニウム箔の幅は、50mmであった。アルミニウム箔の塗布部の長さは、340mmであった。アルミニウム箔の塗布部の幅は、50mmであった。正極合剤層全体の合剤密度は、3.6g/cm、厚みは片面70μmであった。正極の端部にある正極活物質層の未塗布部分に、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続した。
【0050】
(非水電解液の作製)
アルゴン雰囲気下で、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを混合した。フルオロエチレンカーボネート(FEC)とメチルエチルカーボネート(MEC)との体積比(FEC:MEC)は、2:8とした。得られた混合溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させた。LiPFの濃度は、1モル/リットルとし非水電解液を得た。
【0051】
(電極体の作製)
正極と負極とを、厚さが20μmであるセパレータを介して対向させ、正極タブ及び負極タブが共に最外周となるように、円柱型の巻き芯を用いて、渦巻き状に巻回した。その後、巻き芯を引き抜いて、渦巻状の電極体を作製した。次に、渦巻き状の電極体を押し潰して、扁平型の電極体を得た。なお、セパレータとして、ポリエチレン製微多孔膜を用いた。
【0052】
(電池の作製)
扁平型電極体及び非水電解液を、25℃、1気圧の二酸化炭素雰囲気下でアルミニウムラミネート製の外装体内に挿入し、電池A1を作製した。
【0053】
(第1の合剤層と第2の合剤層の膨張率の測定)
負極活物質粒子として用いたSiO(すなわちSiOx(x=1.0))と、Siについて、充電時における膨張率を、以下のようにして測定した。
【0054】
膨張率=(充電状態の電極より合剤層を剥離して測定した体積)/
(放電状態の電極より合剤層を剥離して測定した体積)
【0055】
電極より合剤層を削りだし、削りだした合剤層の体積を島津製作所製乾式自動密度計(アキュピックII1340)にて測定した。
【0056】
理論容量まで充電した時の膨張率は、第1の合剤層は160%、第2の合剤層は220%であった。
【0057】
〔実験2〕
第1の合剤層スラリーを用いず、集電体と接するように第2の合剤層スラリーを塗布し、土台部分と、土台部分の上に形成された柱部を有する負極を作製したこと以外は、実験例1と同様にして、電池B1を作製した。実験例2の合剤層の合剤密度は、0.7g/cm、片面厚みは28μmであった。なお、実験例2における負極の容量は、実験例1の負極の容量と同じになるように調整している。
【0058】
上記電池A1及びB2を、以下の条件で充放電し、下記(1)式で示す初回充放電効率と下記(2)式で示す50サイクル目の容量維持率とを調べたので、その結果を表1に示す。
【0059】
(充放電条件)
・1サイクル目の充電条件
50mAの電流で4時間定電流充電を行った。その後、200mAの電流で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行った。さらに、4.2Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・1サイクル目の放電条件
200mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
・2サイクル目以降の充電条件
1000mAの電流で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行った。さらに、4.2Vの電圧で電流値が50mAとなるまで定電圧充電を行った。
・2サイクル目以降の放電条件
1000mAの電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
【0060】
(初回充放電効率の算出式)
初回充放電効率(%)
=(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量)×100・・・(1)
(50サイクル目の容量維持率の算出式)
10サイクル目の容量維持率(%)
=(10サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100・・・(2)
【0061】
【表1】
【0062】
電池A1及びB1の負極は、Si粒子を含み、柱部を備える合剤層を備えている。充放電後の電池A1及びB1の負極は、柱部から他の柱部に向かって、放射状に土台部に微細な割れがハニカム状に形成されているのが確認された。電池A1及びB1の負極では、活物質と共にバインダーが含まれているので、充放電に伴う膨張がフレキシブルに膨張収縮することにより、土台部分均一な割れが形成され、集電体に印加される応力が低減される。電池A1では、Siを含む第2の合剤層と集電体との間に、SiOx粒子を含む第1の合剤層を設けることで、合剤層と集電体との界面における応力を充分緩和できたので、電池B1と比べてサイクル特性が向上した。電池A1では、電子電導度の低いSiOx粒子粒子を含む第1の合剤層を、Si粒子を含み、柱部を備える第2の合剤層との間に配置したが、上記SiOx粒子は表面が炭素被膜されているため、初回充放電効率を向上させるとともに、サイクル特性を向上させることができた。
【0063】
〔参考実験〕
参考実験においては、非晶質炭素で表面被覆されたSiOx粒子、表面被覆されていないSiOx粒子及びSi粒子を含む合剤層について、それぞれ導電率を測定した。
【0064】
(合剤層の作製)
〔参考実験1〕
上記の実験1の負極の作製における第1の合剤層と同様にして、非晶質炭素で表面被覆されたSiOx粒子(x=1.0)を含む合剤層を作製した。なお、合剤層は集電体の片面にのみ塗布した。合剤層の厚みは8μmであった。
【0065】
〔参考実験2〕
表面被覆されていないSiOx粒子を用いたこと以外は、参考実験1と同様にして、表面被覆されていないSiOx粒子を含む合剤層を作製した。合剤層の厚みは8μmであった。
【0066】
〔参考実験3〕
実験1の負極の作製において使用したSi粒子を用いたこと以外は、参考実験1と同様にして、表面被覆されていないSiOx粒子を含む合剤層を作製した。合剤層の厚みは8μmであった。
【0067】
(導電率の測定)
上記で作製した合剤層について、4探針抵抗率計(三菱化学製Laresta-GP)を用い、導電率を測定した。
【0068】
【表2】
【0069】
非晶質炭素で表面被覆されたSiOx粒子を含む合剤層は、Si粒子を含む合剤層や表面被覆されていないSiOx粒子を含む合剤層よりも、極板抵抗が低く、合剤層の導電率が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0070】
10 負極
11 集電体
12 第1の合剤層
13 第2の合剤層
図1
図2
図3