(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配管上を移動自在であり、配管に超音波を照射して、反射波を検出する超音波探触子と、超音波探触子による検出結果に基づいて演算処理を実行し、前記配管の探傷結果を取得する演算処理装置とを有する検査システムであって、
前記配管の表面に貼り付けられ、前記配管上に配列されると共に配管上の位置を示す2次元模様が描かれているシート材と、
前記超音波探触子に取り付けられ、前記2次元模様を読み取るリーダーとを備え、
前記演算処理装置は、前記リーダーによって読み取られた前記2次元模様に基づいて前記配管上の位置データを取得し、前記位置データと、超音波探触子による検出結果から得られる探傷結果とを関連付け、
前記シート材は、前記配管の周方向に配列される前記2次元模様が描かれ、
前記超音波探触子に取り付けられ、前記配管の軸方向の前記超音波探触子の移動量を検出する移動量センサをさらに備え、
前記演算処理装置は、前記リーダーによって読み取られた前記2次元模様に基づいて前記配管上の周方向の位置データを取得すると共に、前記移動量センサによって検出された前記超音波探触子の移動量に基づいて前記配管上の軸方向の位置データを取得し、前記配管上の周方向及び軸方向の位置データと、前記探傷結果とを関連付ける検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
初めに第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る検査システムは、例えば、被検体である配管Pの検査に用いられ、配管Pの溶接線に発生する亀裂等を検出する。この検査システムは、
図1に示すように、シート材1、超音波探触子2、リーダー3、超音波探傷器4及び演算処理装置5から構成されている。
【0014】
シート材1は、
図1に示すように、配管Pの表面に貼り付けられている。このシート材1には、
図2に示すように、表面にQRコード1aが配管P上の軸方向及び周方向に描かれている。QRコード1aには、配管P上の位置(座標)を示すデータが暗号化されており、例えば、配管Pの軸方向及び周方向に10mm間隔で配置されている。また、シート材1は、配管Pの表面に直接ではなく、超音波を伝播させるグリセリンペースト(接触媒質)が配管Pの表面に塗布されて、貼り付けられている。このように、配管P上に塗布されたグリセリンペーストの上からシート材1を貼り付けることで、グリセリンペーストの粘着性によりシート材1を配管Pに吸着されることができ、さらに配管Pの表面に凹凸がある場合でも、シート材1を平らに貼り付けることができる。
ここで、接触媒質を介してシート材1を配管Pの表面に張り付ける代わりに、ゲル状のシート材1を配管Pの表面に直接貼り付けても良い。ゲル状のシート材1を用いることで、接触媒質を用いない場合、余分な接触媒質がシート材1の貼り付け箇所から漏れ出ることがない。同様の目的で、裏面に粘着性のある物質が塗布されたシール状のシートを用いても良い。
また、シート材1を張り付ける場所は、後述の超音波探触子2で配管Pの表面を走査するのとは異なる面に設けられていても良い。
また、シート材1の表面に設けられているQRコード1aが、反射率の高い反射材を用いて描かれていても良い。
また、QRコード1aの印刷面にラミネートや透明インク(ニス)等でコーティングがされていても良い。
また、通常は白いシート材1に黒色でQRコード1aが描かれているが、黒いシート材1に白色でQRコード1aが描かれていても良い。
なお、シート材1は、防水性、耐熱性を有し、超音波を透過する性質を備える半透明フィルム(電飾用紙)を使用することができる。シート材1は、適度に透けていることが好ましい。これは、検査員がシート材1を配管P等の被検体に張り付ける際に、シート材1が気泡が混入することなく接触媒質により一様に濡れていることを確認し易くするためである。これは、シート材1の内側に気泡が混入すると、気泡は超音波を透過しないため、好ましい探傷結果が得られないからである。
半透明フィルムとしては、例えば、ポリエステル(PET)を基材とし、表層強度を上げた半透明フィルムを使用することができる。
【0015】
超音波探触子2は、同軸ケーブルを介して超音波探傷器4に接続されており、配管P上を移動自在である。また、超音波探触子2は、先端から超音波を発生し、上記超音波の反射波を検出し、上記検出結果を検出信号として超音波探傷器4に出力する。例えば、この超音波探触子2は、検査員の手動によって配管Pの表面を走査させられ、配管Pの亀裂等を示す超音波の反射波を検出する。
【0016】
リーダー3は、超音波探触子2に取り付けられ、配管P上に貼り付けられたシート材1表面のQRコード1aを読み取る光学式リーダーであり、信号ケーブルを介して通信I/F部13に接続され、読み取ったQRコード1aの画像が含まれる画像信号を通信I/F部13に出力する。例えば、リーダー3は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備える発光部と、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等の撮像部とからなり、超音波探触子2の移動方向(走査方向)における後側に取り付けられている。なお、リーダー3は、同じ筐体によって、超音波探触子2と一体化されていてもよい。
本実施形態では撮像部が1個設けられている例を想定しているが、上記撮像部は複数設けられていても良い。例えば、超音波探触子2を挟むように、超音波探触子2の前後に合計2個の上記撮像部を設けても良い。
また、本実施形態では、リーダー3はLED等の発光素子を備える発光部であるとしたが、レーザー発振器であっても良い。レーザー発振器を用いる場合、レーザー光により照射されたシート材1上のQRコード1aが描かれている箇所とそうでない箇所とのコントラストを大きくすることができる。
上記撮像部は、白黒カメラに限定されず、カラーカメラでも良い。
また、上記撮像部に超音波探触子2を設けても良い。
また、超音波探触子2に、ボタンやホイールを設け、後述のパーソナルコンピュータの操作が可能なマウスの機能を持たせても良い。超音波探触子2に、マウスの機能を持たせることで、探傷の開始や終了、データの区切り等の操作を行う事ができる。
【0017】
超音波探傷器4は、超音波探触子2に接続されると共に演算処理装置5の通信I/F部13に接続され、超音波探触子2及びリーダー3に電力を供給し、また超音波探触子2から入力される検出信号をA/D変換して演算処理装置5の通信I/F部13に出力する。
なお、
図1における矢印の向きは、信号の進む方向を表示しており、上述の電力供給の向きとは関係がない。
また、超音波探触子2には超音波探傷器4から電力が供給され、リーダー3には通信I/F部13から電力が供給されても良い。
なお、超音波探触子2及びリーダー3の接続は、有線接続に限らず、無線接続であっても良い。
また、超音波探触子2が複数設けられていても良い。
さらに、超音波探触子2は、フェーズドアレイ超音波探傷法を用いても良い。この場合、1個の超音波探触子2でも、より広範な領域の走査が可能となる。
【0018】
演算処理装置5は、超音波探傷器4に接続された、例えば、デスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータであり、
図1に示すように、表示部11、操作部12、通信I/F部13及び演算制御部14を備える。
【0019】
表示部11は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイまたは液晶ディスプレイであり、演算制御部14の制御の下、各種画面を表示する。
操作部12は、マウス等のポインティングデバイス及びキーボードから構成され、ユーザから受け付けた操作指示を演算制御部14に出力する。
通信I/F部13は、演算制御部14の制御の下、通信ケーブルを介して超音波探傷器4との間で各種信号の送受信を行う。
通信I/F部13は、さらに、信号ケーブルを介して、リーダー3に接続され、リーダー3が読み取ったQRコード1aの画像信号を受信する。通信I/F部13は、受信した画像信号をA/D変換する。
なお、操作部12のマウス等のポインティングデバイスが、超音波探触子2を兼用しても良い。
【0020】
演算制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電気的に相互接続された各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されている。この演算制御部14は、上記ROMに記憶された各種演算制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行うと共に各部と通信を行うことにより演算処理装置5の全体動作を制御する。
【0021】
詳細については後述するが、演算制御部14は、ROMに検査プログラム14aを記憶し、検査プログラム14aに基づいて動作することで、リーダー3によって読み取られたQRコード1aを解析して配管P上の位置データ(絶対座標)を取得し、取得した配管P上の位置データと、超音波探触子2による検出結果から得られる探傷結果とを関連付ける。
【0022】
次に、このように構成された検査システムの動作について説明する。
超音波探触子2は、超音波探傷が可能な被検体に発生する亀裂等の欠陥や減肉を検出するために、検査員によって配管P上の検査部位を走査させられる。例えば、超音波探触子2は、配管P上の検査部位の始端から先端まで配管Pの軸方向に沿って検査員によって走査させられると、配管Pの検査部位の始端まで戻されると共に周方向にずらされた位置から再び配管P上を軸方向に走査される。そして、検査員は、超音波探触子2に対する上記操作を繰り返すことで、超音波探触子2によって配管P上の検査部位全体を走査する。
【0023】
この際、超音波探触子2は、超音波探傷器4に検出信号を出力する。また、リーダー3は、読み取った画像データを通信I/F部13に出力する。
超音波探傷器4は、超音波探触子2からの検出信号が入力されると、この信号にA/D変換等の処理を施して、演算処理装置5の通信I/F部13に出力する。
通信I/F部13は、超音波探傷器4から入力された超音波探触子2からの検出信号を演算制御部14に出力する。通信I/F部13は、さらに、リーダー3から画像信号が入力されると、この信号にA/D変換等の処理を施し、これを演算制御部14に出力する。
【0024】
演算処理装置5では、演算制御部14に、超音波探傷器4及び通信I/F部13を介して、超音波探触子2からの検出信号が入力され、さらに、通信I/F部13を介して画像データが入力されると、演算制御部14は、検査プログラム14aに従って、以下の特徴的な処理(
図4参照)を実行する。
【0025】
まず、演算処理装置5において、演算制御部14には、超音波探触子2に取り付けられているリーダー3から通信I/F部13を介して画像信号が入力され(ステップS1)、画像信号に含まれるQRコード1aの画像に基づいて配管P上の位置データ(絶対座標)を取得する(ステップS2)。つまり、演算制御部14は、検査プログラム14aに含まれるQRコード1aを解析するための解析プログラムに基づいてQRコード1aを解析することで、QRコード1aに含まれる暗号化された位置データを取得する。
ここで、QRコード1aを解析して位置データを取得する原理の一例を詳細に説明する。
図3は、QRコード1aの座標の読み取り原理を説明するための模式図である。
図3は、リーダー3の撮像部の視野を表している。Tは上記視野の中心を表す。この場合、上記視野に含まれる4個のQRコード1aを、便宜上、QRコード1a1〜1a4と呼ぶ。
まず、演算制御部14は、上記視野の中から中心Tに最も近いQRコード1aの識別点を探す。ここで、識別点とは、
図3のP1〜P3に示される点であり、QRコード1aの絶対座標や傾きを検出する際に用いられる。本実施形態の場合、1個のQRコード1aに対して識別点P1〜P3が3か所に設けられている。本実施形態ではQRコード1aは正方形であり、識別点P1〜P3は正方形の4角の内の3角に設けられている。なお、
図3では、便宜上、QRコード1a2のみに識別点P1〜P3が表示されているが、実際には全てのQRコード1aに識別点P1〜P3が設けられている。
図3の場合、QRコード1a2の識別点P1が上記視野の中心Tに最も近い識別点であるため、演算制御部14は、識別点P1の絶対座標を取得する。
次に、演算制御部14は、QRコード1a2の絶対座標を以下のように取得する。
識別点P1の絶対座標を取得した後、演算制御部14は、識別点P1を含むQRコード1a2に含まれている他の2個の識別点(識別点P2、P3)の絶対座標を取得する。ここで、例えば異物に隠されている等の原因で、QRコード1a2の3個の識別点の全ての絶対座標を取得できない場合、演算制御部14は中心Tから2番目に近いQRコード1a1の識別点の絶対座標を取得する。
xy座標を用いた識別点P1の絶対座標が(a、b)、識別点P2の絶対座標が(c、d)、識別点P3の絶対座標が(e、f)である場合、これら3個の絶対座標から、QRコード1aの中心の絶対座標を算出し、これをQRコード1a2の絶対座標として取得する。
次に、
図3の点線で示す、上記視野に対して傾きのない場合のQRコードを用いて、超音波探触子2のQRコード1a2に対する傾きθを算出する。この際、識別点P1〜P3の内の2個の座標が取得できれば、上記2個の座標を結ぶ線分を長辺とする直角三角形を用いて傾きθを算出できる。
例えば、識別点P1と識別点P2の絶対座標を用いる場合、識別点P1、識別点P2を長辺とする直角三角形を用いれば、上記直角三角形の他の2辺の長さが(c−a)、(d−b)と表せるので、θ=arctan(d−b/c−a)として算出できる。
このように超音波探触子2のQRコード1a2に対する傾きθが算出できると、シート材1に対する超音波探触子2及びリーダー3のなす角を把握することができる。そのため、位置データと超音波探触子2の傾きにより、超音波ビームの伝搬位置を、表示部11に表示することができる。
ここで、2個の識別点からQRコード1aの傾きを算出することができるが、さらに3個めの識別点の座標を取得することで、QRコード1aの位置(中心の絶対座標)を確定することができるため、QRコード1aの識別点を3個取得する。
また、1個のQRコード1aを認識するに当たり、識別点P1〜P3を取得することに加え、1個のQRコード1aがシート材1の色(例えば白色)で囲まれていることを演算制御部14は確認している。こうすることによって、QRコード1aの誤認識を防止することができる。
なお、上述の例では、QRコード1a2のみを用いて傾きを算出したが、QRコード1a2とQRコード1a1の2個のQRコード1aを用いて角度θを算出すると、より正確な傾きθを算出することができる。
従って、上述のように算出して取得したQRコード1aの絶対座標と、QRコード1aの傾きθと、予め設定されたリーダー3の撮像部から超音波探触子2までの距離とから、超音波探触子2の絶対座標を算出することができる。
【0026】
続いて、演算制御部14は、超音波探触子2から超音波探傷器4及び通信I/F部13を介して検出信号が入力されると、上記検出信号に基づいて演算処理を実行し、配管Pの探傷結果を取得し、上記位置データと、上記探傷結果とを関連付けて保存し(ステップS3)、上記位置データ及び探傷結果に基づく探傷分布データを作成する(ステップS4)。即ち、ステップS3では、超音波探触子2が検出結果を取得するのと同時に超音波探触子2が上記検出結果を取得した位置のQRコード1aの絶対座標を演算制御部14が取得する。演算制御部14が取得したQRコード1aの絶対座標から演算制御部14は上記検出結果を取得した位置の超音波探触子2の絶対座標を算出する。演算制御部14は、さらに、超音波探触子2が取得した検出結果と演算制御部14が上記検出結果を取得した位置の超音波探触子2の絶対座標との組み合わせを保存する。
そして、演算制御部14は、操作部12が検査員によって操作されて、停止ボタンが押下されると、上述した処理を停止する。上述した探傷分布データは、表示部11に表示された場合、探傷結果を示す各色(例えば、赤色、青色、黄色等)が配管P上の位置毎にマッピングされた画像として表示される。
上述のように、演算制御部14は、超音波探触子2による検出結果を配管P上の位置データに関連付けて記憶する。この際、経過時間と共に記憶する設定にすれば、超音波探触子2の軌跡を表示することができる。
また、マッピングされた画像の表示形式として、超音波探触子2の位置だけでなく、超音波探触子2の傾き、及び被検体(例えば配管P)の形状を考慮したボリュームレンダリング処理を行うことができる。
また、超音波探触子2を被検体の欠陥や減肉の周りを周回させるなど自在な超音波探触子2の操作を記録することができる。従来の機械式スキャナを使用した探傷では、超音波探触子2の動きは直線方向、円周方向など一定の動きであり、超音波ビームの向きも一定であった。しかしながら、本実施形態に係る検査システムによれば、検査員が手動で超音波探触子2を自在に動かしたとしても、超音波の反射波の検出結果を取得した地点の絶対座標を自動的に取得できる。そのため、超音波探触子2の走査方向に制約がなくなり、検査システムの利便性を大幅に向上させることができる。
また、ノズルなどの複雑な形状の箇所における探傷において、超音波探触子2の位置や角度を検査員にリアルタイムに知らせることができるため、より多くの情報を検査員に与えることができる。そのため、検査員は配管Pを見ずとも超音波探触子2の位置や角度がリアルタイムに表示される表示部11のみを見れば足りる。従って、本実施形態の超音波探触子2は、検査員をナビゲートすることができると言える。さらに、超音波探触子2の位置データと傾きから、超音波ビームの伝搬位置を3D等で表示して、検査員が形状エコーとキズエコーとを区別する支援を行うことができる。
【0027】
このような本実施形態によれば、演算処理装置5が、リーダー3によって読み取られたQRコード1aに基づいて配管P上の位置データを取得し、上記位置データと、超音波探触子2による検出結果から得られる探傷結果とを関連付ける。そのため、超音波探触子2を配管P上から離したとしても、配管P上におけるシート材1のQRコード1a上に超音波探触子2を戻せば、配管P上の正確な位置データを取得して、上記位置データを超音波探触子2による検出結果から得られる配管Pの探傷結果に関連付けることができる。
つまり、上記実施形態では、
図1に示すように、超音波探傷器4を介して超音波探触子2の検出結果が演算処理装置5の通信I/F部13に入力され、リーダー3からの画像信号は演算処理装置5の通信I/F部13に直接入力される。通信I/F部13は、これら超音波探触子2の検出結果と、リーダー3の画像信号を演算制御部14に出力し、演算制御部14が、上記のような処理を行うことで、超音波探触子2が取得した検出結果と演算制御部14が取得した超音波探触子2の絶対座標の組み合わせを保存する。このようなシステムは、探傷機能と位置情報演算機能が一体となったシステムである。
ここで、
図9に示すように、超音波探触子2の検出結果が超音波探傷器4に入力される一方、リーダー3からの画像信号が演算処理装置5の通信I/F部13に直接入力され、通信I/F部13でA/D変換等の処理を施された画像信号は、演算制御部14に出力され、演算制御部14において上記画像信号から超音波探触子2の絶対座標が取得され、上記絶対座標が通信I/F部13から超音波探傷器4に出力されても良い。この場合、超音波探傷器4において、超音波探触子2が取得した検出結果と演算制御部14が取得した超音波探触子2の絶対座標の組み合わせを保存することができる。
この
図9に示すようなシステムでは、上記実施形態の超音波探触子2が担った探傷機能を公知の汎用の探傷装置で代用することができる。そのため、公知の汎用の探傷機能と、上記実施形態に記載されるQRコード1aを用いた絶対座標の取得機能とを組み合わせることで、上記実施形態と同様の結果を得ることができる。この場合、超音波探傷器4において組合された超音波探触子2が取得した検出結果と、演算制御部14において取得した超音波探触子2の絶対座標とを、上記実施形態と同様に、演算処理装置5の表示部11に表示することができる。この場合、
図9に示すように、超音波探傷器4と通信I/F部13との間では双方向の通信が行われる。
【0028】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る検査システムについて説明する。
本第2実施形態に係る検査システムは、以下の点において、上記第1実施形態と相違する。つまり、本実施形態に係る検査システムは、
図5に示すように、新たに移動量センサ6を備え、またシート材50に描かれるQRコード50aの配列が異なる点において、上記第1実施形態と相違する。これ以外の構成要素については第1実施形態と同様である。よって、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成要素については説明を省略する。
【0029】
移動量センサ6は、超音波探触子2に取り付けられ、配管Pの軸方向の超音波探触子2の移動量を検出する光学センサであり、信号ケーブルを介して演算処理装置5の通信I/F部13に接続され、超音波探触子2の移動量を示す移動量信号を通信I/F部13に出力する。例えば、移動量センサ6は、光学マウス用のセンサからなり、超音波探触子2の移動方向(走査方向)における後側にリーダー3に隣接するように取り付けられている。なお、移動量センサ6は、同じ筐体によって、超音波探触子2及びリーダー3と一体化されていてもよい。
なお、第1実施形態と同様に、
図5における矢印の向きは、信号の進む方向を表示している。
また、超音波探触子2には超音波探傷器4から電力が供給され、リーダー3と移動量センサ6には通信I/F部13から電力が供給されても良い。或いは、超音波探傷器4が、超音波探触子2、リーダー3、移動量センサ6に電力を供給しても良い。
【0030】
また、シート材50の始端側には、
図6に示すように、QRコード50aが、配管Pの周方向に10mm間隔で配置されている。
【0031】
次に、このように構成された検査システムの動作について説明する。
超音波探触子2は、配管Pの溶接線に平行(配管Pの周方向)に発生する亀裂等の欠陥や減肉を検出するために、検査員によって配管P上の検査部位を走査させられる。例えば、超音波探触子2は、配管P上の検査部位の始端から先端まで配管Pの軸方向に沿って検査員によって走査させられると、配管Pの検査部位の始端まで戻されると共に周方向にずらされた位置から再び配管P上を軸方向に走査される。そして、検査員は、超音波探触子2に対する上記操作を繰り返すことで、超音波探触子2によって配管P上の検査部位全体を走査する。
【0032】
この際、超音波探触子2は、超音波探傷器4に検出信号を出力する。また、リーダー3は、読み取った画像データを演算処理装置5の通信I/F部13に出力する。また、移動量センサ6も、演算処理装置5の通信I/F部13に移動量信号を出力する。
超音波探傷器4は、超音波探触子2からの検出信号が入力されると、この信号にA/D変換等の処理を施して、演算処理装置5の通信I/F部13に出力する。
通信I/F部13は、超音波探傷器4から入力された超音波探触子2からの検出信号を演算制御部14に出力する。また、通信I/F部13は、リーダー3からの画像信号及び移動量センサ6からの移動量信号が入力されると、これらの信号にA/D変換等の処理を施し、これを演算制御部14に出力する。
【0033】
演算処理装置5では、超音波探傷器4及び通信I/F部13を介して、超音波探触子2からの検出信号が演算制御部14に入力され、リーダー3からの画像信号及び移動量センサ6からの移動量信号が通信I/F部13を介して演算制御部14に入力されると、検査プログラム14aに従って、以下の特徴的な処理(
図7参照)を実行する。
【0034】
まず、演算処理装置5において、演算制御部14には、超音波探触子2に取り付けられているリーダー3から通信I/F部13を介して画像信号が入力され(ステップS11)、演算制御部14は、画像信号に含まれるQRコード50aの画像に基づいて配管P上の周方向の位置データ(配管Pの周方向の絶対座標)を取得する(ステップS12)。つまり、演算制御部14は、検査プログラム14aに含まれるQRコード50aを解析するための解析プログラムに基づいてQRコード50aを解析することで、QRコード50aに含まれる暗号化された配管Pの周方向の位置データ(絶対座標)を取得する。
【0035】
続いて、演算制御部14には、超音波探触子2に取り付けられている移動量センサ6から通信I/F部13を介して移動量信号が入力され(ステップS13)、演算制御部14は、移動量信号によって示される超音波探触子2の移動量(ここでは、超音波探触子2の配管Pの軸方向の移動量)に基づいて配管P上の軸方向の位置データ(配管Pの軸方向の絶対座標)を取得する(ステップS14)。つまり、演算制御部14は、超音波探触子2が検査員によって軸方向へ移動させられ、この移動による超音波探触子2の移動量に基づいて配管P上の軸方向の位置データ(絶対座標)を取得する。
【0036】
続いて、演算制御部14は、超音波探傷器4及び通信I/F部13を介して超音波探触子2から検出信号が入力されると、上記検出信号に基づいて演算処理を実行し、配管Pの探傷結果を取得し、上記周方向及び軸方向の位置データと、上記探傷結果とを関連付けて保存し(ステップS15)、上記位置データ及び探傷結果に基づく探傷分布データを作成する(ステップS16)。そして、演算制御部14は、操作部12が検査員によって操作されて、停止ボタンが押下されると、上述した処理を停止する。上述した探傷分布データは、表示部11に表示された場合、探傷結果を示す各色(例えば、赤色、青色、黄色等)が配管P上の位置毎にマッピングされた画像として表示される。
【0037】
このような本実施形態によれば、演算制御部14は、通信I/F部13を介して、リーダー3によって読み取られたQRコード50aに基づいて配管P上の周方向の位置データを取得すると共に、移動量センサ6によって検出された超音波探触子2の移動量に基づいて配管P上の軸方向の位置データを取得する。そのため、演算制御部14は、配管P上の周方向及び軸方向の位置データと、上記探傷結果とを関連付けることによって、超音波探触子2を配管P上から離したとしても、以下のような効果を奏する。即ち、配管P上におけるシート材50のQRコード50a上に超音波探触子2を戻せば、配管P上の正確な位置データを取得して、上記位置データを超音波探触子2による検出結果から得られる配管Pの探傷結果に関連付けることができる。
つまり、上記実施形態では、
図5に示すように、超音波探傷器4を介して超音波探触子2の検出結果が演算処理装置5の通信I/F部13に入力され、リーダー3からの画像信号、及び移動量センサ6からの移動量信号が演算処理装置5の通信I/F部13に直接入力される。通信I/F部13は、これら超音波探触子2の検出結果、リーダー3の画像信号、及び移動量センサ6の移動量信号を演算制御部14に出力し、演算制御部14が、上記のような処理を行うことで、超音波探触子2が取得した検出結果と、演算制御部14が取得した超音波探触子2の位置データ(絶対座標)とを関連付けて保存する。このようなシステムは、探傷機能と位置情報演算機能が一体となったシステムである。
ここで、
図10に示すように、超音波探触子2の検出結果が超音波探傷器4に入力される一方、リーダー3からの画像信号と移動量センサ6からの移動量信号とが演算処理装置5の通信I/F部13に直接入力され、通信I/F部13でA/D変換等の処理を施された画像信号と移動量信号は、演算制御部14に出力され、演算制御部14において上記画像信号と上記移動量信号とから超音波探触子2の絶対座標が取得され、上記絶対座標が通信I/F部13から超音波探傷器4に出力されても良い。この場合、超音波探傷器4において、超音波探触子2が取得した検出結果と演算制御部14が取得した超音波探触子2の絶対座標とを関連付けることができる。
このようなシステムでは、上記実施形態の超音波探触子2が担った探傷機能を公知の汎用の探傷装置で代用することができる。そのため、公知の汎用の探傷機能と、上記実施形態に記載されるQRコード1aを用いた絶対座標の算出機能とを組み合わせることで、上記実施形態と同様の結果を得ることができる。この場合、超音波探傷器4において関連付けられた超音波探触子2が取得した検出結果と、演算制御部14において取得した超音波探触子2の絶対座標とを、上記実施形態と同様に、演算処理装置5の表示部11に表示することもできる。この場合、
図10に示すように、超音波探傷器4と通信I/F部13との間では双方向の通信が行われる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記第1実施形態に係る検査システムでは、単純に、QRコード1aに基づいて位置データを取得している。しかしながら、例えば、移動量センサ6を搭載し、補完処理として、移動量センサ6によって検出された超音波探触子2の移動量に基づいて超音波探触子2の移動方向(配管Pの軸方向)における隣接する2個のQRコード1aの間(例えば10mmの隙間)の配管P上の位置データを取得し、上記位置データと、上記探傷結果とを関連付けてもよい。例えば、演算処理装置5の演算制御部14は、2個のQRコード1aの間をリーダー3で読み取る。つまり、リーダー3よって撮影された画像にQRコード1aが含まれていない場合、移動量センサ6によって検出された超音波探触子2の移動量に基づいて2個のQRコード1aの間の配管P上の位置データを取得してもよい。
【0039】
(2)上記第2実施形態に係る検査システムでは、配管Pの周方向に10mm間隔で配置したQRコード1aに基づいて配管Pの周方向に位置データを取得し、配管Pの軸方向の位置データは、超音波探触子2の移動量を検出する移動量センサ6にて取得している。しかしながら、例えば、配管Pの周方向に100mm間隔で配置したQRコード1aに基づいて配管P上の位置データを取得し、隣接する2個のQRコード1aの間(配管Pの周方向)及び配管Pの軸方向の位置データを超音波探触子2の移動量を検出する移動量センサ6にて取得し、上記位置データを、上記探傷結果に関連付けてもよい。例えば、演算処理装置5の演算制御部14は、周方向に並ぶ2個のQRコード1aの一方がリーダー3によって読み取られることによって、上記一方のQRコード1aに基づく配管P上の位置データを取得し、上記一方のQRコード1aから周方向に超音波探触子2が移動され、その際に移動量センサ6によって検出された移動量に基づいて2個のQRコード1aの間の配管Pの周方向の位置データを取得する。加えて、2個のQRコード1aの間から配管Pの軸方向に超音波探触子2が移動され、その際に移動量センサ6によって検出された移動量に基づいて配管Pの軸方向の位置データを取得する。
【0040】
(3)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、シート材1を半透明フィルムとしているが、本発明はこれに限定されず、薄いプラスチックシートであり、配管Pに平らに貼り付けることができ、超音波を伝播できるシートであればよい。
なお、配管Pにエルボ管やU字管が接続されている場合でも、シート材1をエルボ管やU字管の形状に合わせて形成することで、直管状の配管Pに限らずに、複雑な形状の被検体に対してもシート材1を使用することができる。シート材1をエルボ管やU字管の形状に合わせて形成する方法として、シート材1を立体図形の展開図のように形成しても良いし、立体成型しても良い。
さらに、本願発明を適用できる検査対象物は配管に限定されず、圧力容器、橋梁等の鉄鋼建造物全般に渡る。従って、上記実施形態に記載される配管が被検体とされる例は一例であって、検査対象物は配管には限定されない。
【0041】
(4)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、シート材1の表面には配管P上の位置を示すQRコード1aが描かれているが、本発明はこれに限定されない。例えば、QRコード1aの代わりに、三角形や四角形等の図形、また通常のQRコード1aを除くマイクロQRコード等の2次元模様がシート材1の表面に描かれていてもよい。なお、シート材1の表面に三角形や四角形等の図形が描かれている場合、演算処理装置5の演算制御部14は、予め図形と位置データとを関連付けたデータベースを記憶し、上記データベースに基づいて位置データを取得する。
また、QRコード1a以外のバーコード等のコードを用いても良い。さらに、バーコードやQRコード1aに色情報を加えても良い。加える色情報としては、例えば、白黒、グレースケール、カラー(多色刷り)がある。
なお、QRコード1aに代えて、配管P上の位置(座標)を示すデータが暗号化されICタグを用いても良い。或いは、QRコード1aに代えて、コイルを用いても良い。
【0042】
(5)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、リーダー3や、移動量センサ6が、超音波探触子2の移動方向(走査方向)における後側に取り付けられているが、前側でもよいし、横側であってもよい。
(6)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、超音波探傷器4と演算処理装置5とは個別の装置であるが、一体化されていてもよい。
(7)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、超音波探触子2と組み合わせて使用されている。しかしながら、超音波探触子2と組み合わせずに、位置検出の目的に絞って上記検査システムを使用しても良い。または、医療用のエコー機器と組み合わせて使用しても良い。
(8)上記第1、2実施形態に係る検査システムは、超音波探触子2を用いた配管Pの検査システムである。しかしながら、板厚の計測に用いることができるため、詳細な板厚の計測を行うことができる。即ち、上記第1、2実施形態に係る検査システムを使用すると、超音波探触子2の位置、傾き、超音波ビームの伝搬位置を表示部11に表示することができる。従って、例えば、表示部11の表示画面をデジタル処理することによって、上記表示画面を所望の倍率に拡大することができる。よって、詳細に板厚を計測したい被検体に対しては、板厚の計測が可能な2点の絶対座標を、必要に応じて上記倍率を高くして正確に取得すれば良い。
(9)上記第1、2実施形態に係る検査システムでは、QRコード1aは、シート材1に描かれている。しかしながら、QRコードを配管Pに印刷等により直接描いても良い。
(10)上記第1、2実施形態に係る検査システムにおいて、シート材1をロール状に形成しても良い。このようにすることで、サイズの大きい配管Pにも使用することができる。
(11)上記第1、2実施形態に係る検査システムにおいて、
図8に示されるように、シート材100に描かれるQRコード100aを千鳥状に配置しても良い。QRコード100aを千鳥状に配置することによって、1個のQRコード100aを認識するに当たり、1個のQRコード100aに含まれている識別点P1〜P3を取得することに加え、1個のQRコード100aがシート材100の色(例えば白色)で囲まれていることを演算制御部14が確認せずとも、識別点P1〜P3から1個のQRコード100aの認識を行う際の誤認識を防止することができる。従って、検査プログラム14aをより軽くシンプルにすることができる。