(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237788
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】有機物質の熱分解方法および有機物質の熱分解生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/16 20060101AFI20171120BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20171120BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20171120BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20171120BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20171120BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20171120BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
C08J11/16ZAB
C02F11/10 Z
B09B3/00 302A
B09B3/00 302Z
B09B3/00 302B
C02F11/00 101Z
B09B3/00 301W
B09B3/00 301Z
B01J23/745 M
B01J37/00 D
B01J37/04 102
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-550503(P2015-550503)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2015003844
(87)【国際公開番号】WO2016017176
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-155653(P2014-155653)
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 純
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】百野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 稔
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−111394(JP,A)
【文献】
特開2005−015700(JP,A)
【文献】
特開平08−253601(JP,A)
【文献】
特開平10−245568(JP,A)
【文献】
特開2010−013657(JP,A)
【文献】
特開2014−037524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/16
B01J 23/745
B01J 37/00
B01J 37/04
B09B 3/00
C02F 11/00
C02F 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質に有機物質分解触媒を混合し、成形して複合造粒物とし、この複合造粒物を、
流動媒体が有機物質分解触媒と同種の粉粒物である流動層式の熱分解炉に投入して有機物
質を熱分解することを特徴とする有機物質の熱分解方法。
【請求項2】
有機物質分解触媒が金属系触媒であることを特徴とする請求項1に記載の有機物質の熱
分解方法。
【請求項3】
有機物質分解触媒が製鉄所発生ダストであることを特徴とする請求項2に記載の有機物
質の熱分解方法。
【請求項4】
製鉄所発生ダストが転炉ダストであることを特徴とする請求項3に記載の有機物質の熱
分解方法。
【請求項5】
有機物質に有機物質分解触媒を混合し、成形して複合造粒物とし、この複合造粒物を、
流動媒体が有機物質分解触媒と同種の粉粒物である流動層式の熱分解炉に投入して、有機
物質を熱分解し、有機物質の熱分解生成物であるガス又は/及び油分を得ることを特徴と
する有機物質の熱分解生成物の製造方法。
【請求項6】
有機物質分解触媒が金属系触媒であることを特徴とする請求項5に記載の有機物質の熱
分解生成物の製造方法。
【請求項7】
有機物質分解触媒が製鉄所発生ダストであることを特徴とする請求項6に記載の有機物
質の熱分解生成物の製造方法。
【請求項8】
製鉄所発生ダストが転炉ダストであることを特徴とする請求項7に記載の有機物質の熱
分解生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を効率的に熱分解し(thermal decomposition)、高発熱量(high calorific power)のガスや油分を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題が大きな課題となっており、エネルギー問題解決のひとつのアプローチとして、廃プラスチック(waste plastic)やバイオマスのような有機物質が有する熱量を有効に活用する方法が検討されている。しかしながら、これらの有機物質は未処理のままでは発熱量が低く、また固体であるため燃焼速度が遅く、灰分が発生するといった問題があり、これを解決するために油化(liquefaction)、ガス化(gasification)などさまざまな技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロータリーキルン式(rotary kiln type)の反応容器内において、廃プラスチックと流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking:FCC)触媒を混合し、廃プラスチックをFCC触媒との接触面で接触分解させる方法が示されている。この方法によれば、FCC触媒を使用することにより、350〜500℃という低温度で廃プラスチックを分解することが可能である。
また、特許文献2には、冶金炉(metallurgical furnace)から発生する一酸化炭素を含むガスに水蒸気を添加し、シフト反応(shift reaction)によって生成した水素、水蒸気、炭酸ガスを含むガスにより有機物質を分解する方法が示されている。この方法によれば、水素化、水素化分解(hydrogenolysis)、水蒸気改質(steam reforming)、炭酸ガス改質(carbon dioxide reforming)よりも、重質化(producing heavy products)を抑制し、400〜800℃で効率よく有機物質の分解・ガス化を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−13657号公報
【特許文献2】特開2012−188641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される方法では、FCC触媒を用いることにより低温度で廃プラスチックを分解し、高発熱量のガスや油分を得ることが可能であるが、触媒と廃プラスチックの接触効率が悪く、これを改善するためには廃プラスチックを通常、1mmのふるいを通る程度に微粉砕する必要がある。廃プラスチックの微粉砕にはコストがかかり、また、特定の樹脂類については粉砕自体が非常に困難である。
また、特許文献2に示される方法は、改質ガスを用いることにより、低温度で有機物質を分解することが可能であるが、一般にプラスチックをはじめとする有機物質は熱伝導度が非常に低く、昇温に時間がかかるため、分解処理量に限界がある。特にプラスチックの場合、反応炉内に過剰な量の原料を投入すると、溶融状態のプラスチックどうしが融着し、反応炉内が閉塞するといった致命的な問題が発生する恐れがある。
【0006】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、プラスチックなどの有機物質を効率的に熱分解し、高発熱量のガスや油分を得ることができ、有機物質の大量処理も可能な熱分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するためには、触媒(有機物質分解触媒)による有機物質の熱分解の効率を高める必要があると考え、実験と検討を重ねた結果、有機物質に触媒を混合して成形(form)したもの、すなわち有機物質中に触媒を分散させた成形物(formed material)(造粒物(agglomerated material))を熱分解処理に供することにより、有機物質の熱分解速度を効果的に高めることができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0008】
[1]有機物質に有機物質分解触媒を混合し、成形して複合造粒物とし、この複合造粒物を熱分解炉に投入して有機物質を熱分解する有機物質の熱分解方法。
[2]上記[1]の熱分解方法において、有機物質分解触媒が金属系触媒である有機物質の熱分解方法。
[3]上記[1]の熱分解方法において、有機物質分解触媒が製鉄所発生ダストである有機物質の熱分解方法。
【0009】
[4]上記[3]の熱分解方法において、製鉄所発生ダストが転炉ダストである有機物質の熱分解方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの熱分解方法において、複合造粒物を流動層式の熱分解炉に投入して有機物質を熱分解する有機物質の熱分解方法。
[6]上記[5]の熱分解方法において、流動層の流動媒体が、有機物質分解触媒と同種の粉粒物である有機物質の熱分解方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複合造粒物内において有機物質と触媒(有機物質分解触媒)が近接配置されるため、最大限の触媒効果を得ることができる。また、触媒は有機物質に較べて熱伝導率が高く、特に金属系触媒を用いることにより有機物質の昇温速度を大幅に改善することができる。これらの結果、触媒による有機物質の熱分解の効率を向上させ、有機物質の熱分解速度を効果的に高めることができ、このため有機物質の大量処理も可能となる。
また、複合造粒物を流動層式(fluid bed type)の熱分解炉に投入して有機物質の熱分解を行う方法では、複合造粒物は有機物質単味に較べて比重が大きいため流動層下部に下降しやすくなり、流動層内における反応領域を広げることができるため、有機物質の処理量をさらに増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明法において、複合造粒物を得るための製造フローの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明法において、熱分解炉での熱分解処理の一実施形態を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施例で用いたガス化試験装置の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の有機物質の熱分解方法は、有機物質に有機物質分解触媒(以下、説明の便宜上、単に「触媒」という。)を混合し、成形して複合造粒物とし、この複合造粒物を熱分解炉に投入して有機物質を熱分解するものである。本発明では、複合造粒物内において有機物質と触媒が近接配置され、両者の接触面積が増大するため、触媒の作用により有機物質を効率的に熱分解することができる。また、触媒は有機物質に較べて熱伝導率が高いため、有機物質の昇温速度を高めることができる。これらの結果、触媒による有機物質の熱分解の効率を向上させ、有機物質の熱分解速度を効果的に高めることができる。
【0013】
本発明において、熱分解の対象となる有機物質(固体)に特別な制限はないが、高分子量の有機物質が好適であり、例えば、プラスチック(通常、廃プラスチック)、バイオマスなどが挙げられ、これらの1種以上もしくは混合物を対象とすることができる。
プラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン類、PA(polyamide)、熱可塑性ポリエステル類、PS(polystyrene)、エラストマー類、熱硬化性樹脂類、合成ゴム類、発砲スチロールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリオレフィン類は、PE(polyethylene)やPP(polypropylene)を含む。熱可塑性ポリエステル類は、PET(polyethylene terephthalate)含む。
また、バイオマスとしては、例えば、下水汚泥、紙、木材(例えば、建設廃木材、梱包・運送廃木材、間伐材など)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
触媒は、有機物質との複合造粒物中に分散させるため粉粒状であることが好ましい。サイズは特に限定されないが、0.5mmのふるいを通る程度であることが好ましい。触媒としては、FCC触媒をはじめとする一般的な熱分解触媒を使用することが可能であるが、熱伝導率の高さの観点からFe、Niなどの金属を主成分とする触媒、すなわち金属系触媒が好ましい。特に製鉄所の各工程で発生するダスト類(製鉄所発生ダスト)は鉄を主成分とし、安価であるため本発明法における触媒として適している。製鉄所発生ダストの代表例としては、転炉ダストが挙げられるが、これに限定されない。製鉄所発生ダストのなかでも、転炉ダストは鉄の成分比率が高く、熱伝導率が非常に高いため、本発明法における触媒として最も適している。転炉ダストとは、転炉を用いて行われる製鋼工程で発生する鉄含有ダストであり、製鋼工程としては、例えば、脱燐工程、脱炭工程、ステンレス鋼の精錬工程などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
有機物質に対する触媒の添加量は、有機物質と触媒の種類によって適宜選択すればよいが、有機物質がプラスチックやバイオマス、触媒が製鉄所発生ダスト(転炉ダストなど)の場合は、有機物質の10〜60質量%程度が望ましい。触媒の添加量が有機物質の10質量%未満では、触媒と有機物質の接触面積が少なくなるため、本発明の効果が小さくなる。一方、触媒の添加量が有機物質の60質量%を超えると、有機物質と触媒の混合物の成形が難しくなる。
【0016】
有機物質は、触媒を均一に混合できる程度のサイズである必要があり、このため必要に応じて事前に破砕処理する。但し、触媒をある程度均一に混合できる程度の細かさでよいので、50mm程度のふるいを通る程度に粉砕すればよく、微粉砕する必要はない。
成形される複合造粒物の強度を確保するため、有機物質と触媒を混合する際に、適量のバインダーを添加することが好ましい。バインダーとしては、一般的に用いられる有機バインダーが適用可能であり、PVA(ポリビニルアルコール)、でんぷん等を用いることができる。
なお、有機物質がプラスチックである場合は、一般に120℃以上に加熱されることによりプラスチックが軟化・溶融し、それ自体がバインダーとなるため、バインダーを添加してもしなくともよい。成形方法によってはバインダーを添加することなく、適正な強度の複合造粒物を得ることができる。
【0017】
複合造粒物を成形するに際しては、事前に有機物質に触媒と必要によりバインダーを添加し、ミキサーなどで十分に混合することが好ましく、これにより触媒を均一に分散させるとともに、成形される複合造粒物の強度を確保することができる。
有機物質に触媒を混合した混合物を成形する方法は任意であり、例えば、押出成形(extrusion molding)、リングダイ成形(ring die molding)、ブリケット成形(briquette forming)などが適用可能であるが、有機物質と触媒の均一混合性を高めるためには、特にスクリュー等による混錬機構を有する押出成形機による成形が好ましい。この際、プラスチックの80質量%以上が軟化もしくは溶融する温度で混練することがさらに好ましい。軟化する温度としてはJIS K7206(1999)に準拠して測定される軟化点(Vicat softening point)以上の温度を用いることができ、溶融する温度としてはJIS K7121(1987)に記載の示差走査熱量分析(differential scanning calorimetry)にて求められる融点以上の温度を用いることができる。
成形される複合造粒物の大きさに特に制限はないが、通常、平均粒径で3mm〜50mm程度とすることが好ましい。複合造粒物の平均粒径を3mm未満とするには、有機物質の微粉砕が必要となるため非常に大きな労力が必要となり、一方、複合造粒物の平均粒径(多粒子の重量平均粒径)が50mmを超えると、気体との反応表面積が減少し、ガス化率が大きく減少するおそれがある。
【0018】
図1は、有機物質が廃プラスチックである場合において、複合造粒物を得るための製造フローの一例を示している。この製造フローでは、廃プラスチックxが破砕機1で破砕され、次いで磁選機2で金属分が取り除かれた後、ミキサー3に投入される。このミキサー3には、さらに、触媒y(例えば、転炉ダスト)とバインダーz(例えば、PVA水溶液)が投入され、これらと廃プラスチックxが撹拌混合される。この混合物は、スクリューによる混錬機構を有する二軸押出成形機4にて成形され、複合造粒物(成形物)が得られる。
複合造粒物(有機物質)の熱分解方法は、一般的な熱分解方法がすべて適用可能であり、例えば、特許文献2に示されるような水素、炭酸ガス及び水蒸気を含む混合ガスを複合造粒物(有機物質)に接触させ、所定の温度で有機物質を熱分解してもよい。また、他の方式の熱分解方法でもよい。
【0019】
複合造粒物が投入され、有機物質の熱分解がなされる熱分解炉の形式にも特別な制限はなく、一般的な熱分解炉がすべて利用可能であるが、そのなかで工業的に連続処理が可能であるロータリーキルン式や流動層式の熱分解炉が好ましく、なかでも流動層式の熱分解炉が特に好ましい。複合造粒物を流動層式の熱分解炉に投入して有機物質の熱分解を行った場合、複合造粒物は有機物質単味に較べて比重が大きいため流動層下部に下降しやすくなり、流動層内における反応領域を広げることができるため、有機物質の処理量を増大させることができる。
また、流動層式の熱分解炉では流動媒体が用いられるが、複合造粒物に使用する触媒の種類によっては、有機物質の熱分解によって分離した触媒(例えば、転炉ダスト)が流動媒体の役割を果たすことができる。したがって、そのような触媒を用いる場合には、操業開始時に、触媒と同種の粉粒物を流動媒体として使用すれば、以降は複合造粒物を通じて流動媒体が供給されることになるので、流動媒体を単味で供給する必要がなくなる。
【0020】
図2は、そのような流動層式の熱分解炉での熱分解処理の一実施形態を示すものであり、5は流動層式の熱分解炉、Aは流動層である。
熱分解炉5では、ガス供給管6を通じて分散板50の下側の風箱部51(wind box)に流動ガス(混合ガス)が導入され、この流動ガスが分散板50から吹き出すことにより、分散板50の上方に流動媒体による流動層Aが形成される。複合造粒物は熱分解炉5の上部から流動層Aに供給され、この流動層A内で複合造粒物の有機物質が熱分解され、気体生成物となる。一方、有機物質から分離した触媒は、流動媒体の一部となる。
【0021】
気体生成物を含むガスは、排出管7を通じて排出された後、集塵機(サイクロンなど)でガス中に飛散した流動媒体や有機物質の灰分が捕集される。本実施形態では、排出管7に1次集塵機8aと2次集塵機8bが設けられ、1次集塵機8aでは主に流動媒体が捕集され、2次集塵機8bにおいて有機物質の灰分が主に捕集されるようにしている。1次集塵機8aによって流動媒体が補集された後のガスは、2次集塵機8bに供給される。2次集塵機8bによって灰分が補集された後のガスは、2次集塵機8bの外部に排出されて回収される。これにより、回収対象である高発熱量のガスを回収する。
1次集塵機8aで捕集された流動媒体を主体とする捕集物は、返送管9を通じて熱分解炉5に循環されるようにしてもよい。
また、有機物質から分離した触媒が流動媒体の一部となるので、系内の流動媒体量を一定に維持するため、必要に応じて、抜出部52から流動媒体の一部を抜き出すようにしてもよい。
さらに生成ガスはスクラバーで水洗され、集塵機で分離できなかった微粒子や油分等を取り除いた後、燃料として使用できる。スクラバーの洗浄水中に回収された油分は、油水分離装置を通して回収されたのち、燃料として使用できる。油水分離装置としては、フィルター式、傾斜板方式などの方式を適用可能である。
【実施例】
【0022】
図1に示す製造フローにしたがい、以下のようにして廃プラスチックと主成分が鉄などの金属である転炉ダスト(触媒)の複合造粒物を製造した。廃プラスチックを破砕機で約50mm以下に破砕した後、磁選機で金属分を取り除いた。この廃プラスチックを、廃プラスチック質量の3%の割合の5%PVA水溶液(バインダー)(PVAは廃プラスチックの0.15質量%)と、触媒である調和平均径約100μmの転炉ダスト(廃プラスチックと転炉ダストの質量比=7:3)とともにミキサーに投入し、よく撹拌混合した後、二軸押出成形機にて造粒(成形)し、転炉ダストを内包する直径4mmΦ×長さ10〜20mmの複合造粒物を製造した。使用した二軸押出成形機のダイス径は4mmであり、ダイス温度は190℃であった。廃プラスチックの成分は主にポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンから成り、混練温度は160℃であった。
【0023】
図3に示す流動層式のガス化試験装置を用い、上記のようにして得られた複合造粒物のガス化試験を行った(本発明例)。この試験では、複合造粒物中のプラスチックを600℃にてガス化し、測定したガス発生量とガス組成からガス低位発熱量(lower heating value)、ガス化率(gasification rate)などを求めた。
図3において、10は流動層ガス化炉(11はその加熱ヒータ)である。この流動層ガス化炉10では、分散板100の下方にガス供給管12を通じて流動ガスが導入され、この流動ガスが分散板100から吹き出すことで分散板100の上方に流動層Aが形成される。ガス化する原料(造粒物)は、保持容器130と定量供給用スクリュー131等からなる原料供給手段13を通じて流動層ガス化炉10の上部から炉内に供給される。流動層ガス化炉10内のガスは、排出管14を通じて取り出され、ガス冷却機15で冷却された後(18はガストラップ)、マスフローメーター16でガス流量が連続的に測定され、さらに、ガスクロマトグラフ装置17(gas chromatography equipment)でガス組成が測定される。流動層Aが形成される流動層ガス化炉10の内径は66mmとした。
【0024】
流動媒体としては、触媒と同じ調和平均径100μmの転炉ダストを使用した。原料供給手段13を通じた複合造粒物の供給速度は300g/hとした。また、流動ガスとして、H
2、N
2、CO
2、H
2Oの混合ガスを4L/min供給した。
また、比較例として、破砕機で破砕した後、磁選機で金属分を取り除いた廃プラスチックのみを二軸押出成形機にて造粒(成形)し、この廃プラスチック造粒物について、上記と同様のガス化試験を実施した。破砕機で破砕した廃プラスチックおよび廃プラスチック造粒物は、それぞれ上記実施例とほぼ同じ大きさであった。
本発明例と比較例のガス化試験の結果を表1に示す。本発明例では、相対的に廃プラスチック配合率が小さく、廃プラスチックの供給量が少ないにもかかわらず、ガス化率が大幅に向上し、生成ガス発熱量も非常に高くなった。これは複合造粒物内で分散した触媒によりガス化反応速度が高まるためであると考えられる。また、表1中の廃プラスチック配合率と転炉ダスト配合率は、造粒物中に占めるそれぞれの割合を示している。本発明例においては、添加したPVAの量をゼロと近似して、それぞれの値を示している。
ガス化率は廃プラスチック中の炭素が生成ガス中へ移行した割合を示し、以下の式で示される。
ガス化率=(生成ガス中炭素量(kg/h)−流動ガス中炭素量(kg/h))÷廃プラスチック中炭素量(kg/h)×100
【0025】
【表1】
【符号の説明】
【0026】
1 破砕機
2 磁選機
3 ミキサー
4 二軸押出成形機
5 熱分解炉
6 ガス供給管
7 排出管
8a 1次集塵機
8b 2次集塵機
9 返送管
10 流動層ガス化炉
11 加熱ヒータ
12 ガス供給管
13 原料供給手段
130 保持容器
131 定量供給用スクリュー
14 排出管
15 ガス冷却機
16 マスフローメーター
17 ガスクロマトグラフ装置
18 ガストラップ
50 分散板
51 風箱部
52 抜出部
100 分散板
x 廃プラスチック
y 触媒
z バインダー
A 流動層