特許第6237792号(P6237792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237792
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20171120BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20171120BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/36 A
   H01M10/0569
   H01M10/052
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-554549(P2015-554549)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2014006340
(87)【国際公開番号】WO2015098064
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-271277(P2013-271277)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】高梨 優
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 翔
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和弘
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−62911(JP,A)
【文献】 特開2001−176511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、
前記正極活物質はニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムを含有するリチウムコバルト複合酸化物を含み、前記リチウムコバルト複合酸化物に占めるコバルトの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して80モル%以上である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記リチウムコバルト複合酸化物はLiCoNiMnAlGe(0.8≦x<1、0.05≦y≦0.15、0.01≦z≦0.1、0.005≦v≦0.02、0.005≦w≦0.02からなる、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記リチウムコバルト複合酸化物の表面の一部に希土類化合物が付着されている、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記希土類化合物は水酸化物及びオキシ水酸化物の少なくとも1種を含む、請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極の電位がリチウム基準で4.6Vとなるように充電される、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記非水電解質はフッ素化溶媒を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記フッ素化溶媒がフルオロエチレンカーボネート、フッ素化プロピオン酸メチル及びフッ素化メチルエチルカーボネートのいずれかを含む、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンを含む携帯電話機、携帯型コンピュータ、PDA、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池が多く使用されている。さらに、電気自動車やハイブリッド電気自動車の駆動用電源、太陽光発電、風力発電等の出力変動を抑制するための用途や夜間に電力をためて昼間に利用するための系統電力のピークシフト用途等の定置用蓄電池システムにおいても、非水電解質二次電池が多く使用されるようになってきている。
【0003】
しかし、適用される機器の改良に伴って、さらに消費電力が高まる傾向にあり、更なる高容量化が強く望まれている。上記非水電解質二次電池を高容量化する方策としては、活物質の容量を高くする方策や、単位体積当たりの活物質の充填量を増やすといった方策の他、電池の充電電圧を高くするという方策がある。但し、電池の充電電圧を高くした場合には、正極活物質の結晶構造劣化や正極活物質と非水電解液との反応が生じやすくなる。
【0004】
下記特許文献1は、コバルト酸リチウムを主たる正極活物質として、正極活物質にニッケル、マンガン、アルミニウムをそれぞれ置換することで、終止電圧4.4Vでのサイクル特性の改善や、4.2Vにおける高温保存特性の改善を報告している。
下記特許文献2は、正極活物質表面を化合物で被覆することにより、活物質と非水電解液との反応抑制し4.2Vにおけるサイクル特性の改善を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−265731号公報
【特許文献2】WO2012/099265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用い、充電電圧をより高くして正極の電圧がリチウム基準で4.5Vよりも大きくなるような場合、正極活物質の表面及び内部の結晶構造がO3構造からH1−3構造へ相転移するとともに、表面では電解液との反応がより活性になり、電解液の分解が進行する。これに起因してサイクル特性が低下してしまう。上記特許文献には、正極の電圧が炭素基準で4.4Vよりも大きくなるような場合に正極活物質に生じる相転移や表面での電解液との反応については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの局面に係る非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、非水電解質とを備え、前記正極活物質はニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムを含有するリチウムコバルト複合酸化物を含み、前記リチウムコバルト複合酸化物に占めるコバルトの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して80モル%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの局面に係る非水電解質二次電池によれば、リチウム基準で4.6Vという非常に高い充電電圧であっても、正極活物質の構造変化や活物質表面での電解液との反応を抑制することができ、長寿命な非水電解質二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】希土類化合物が表面に付着した正極活物質のSEM像である。
図2】1実施形態のラミネート形非水電解質二次電池の斜視図である。
図3図2の巻回電極体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[非水電解質二次電池]
本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池の一例としては、正極と、負極と、非水電解質とを備える。本実施形態の一例である非水電解質二次電池は、例えば、正極および負極がセパレータを介して巻回もしくは積層された電極体と、液状の非水電解質である非水電解液とが電池外装缶に収容された構成を有するが、これに限定されるものではない。以下に、非水電解質二次電池の各構成部材について詳述する。
【0012】
[正極]
正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合剤層とで構成されることが好適である。正極集電体には、例えば、導電性を有する薄膜体、特にアルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、アルミニウムなどの金属表層を有するフィルムが用いられる。正極合剤層には、正極活物質粒子の他に、結着剤、導電剤を含むことが好ましい。
【0013】
正極活物質はニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムを含有するリチウムコバルト複合酸化物である。前記リチウムコバルト複合酸化物に占めるコバルトの割合は、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して80モル%以上である。
【0014】
前記リチウムコバルト複合酸化物を用いると、例えば、リチウム基準で4.53V以上まで充電された場合であっても、O3構造からH1−3構造変化への相転移を抑制されるので、正極結晶構造が安定し、サイクル特性が向上する。
【0015】
前記リチウムコバルト複合酸化物の組成式は、LiCoNiMnAlGe(0.8≦x<1、0.05≦y≦0.15、0.01≦z≦0.1、0.005≦v≦0.02、0.005≦w≦0.02で示されることが好ましい。上記組成に含まれるリチウムコバルト複合酸化物は、特に結晶構造が安定であるため、例えば、リチウム基準で4.53V以上まで充電された場合であっても、正極活物質の結晶構造の相転移が起こりにくい。
【0016】
上記リチウムコバルト複合酸化物の表面の一部に希土類化合物が付着されていることが好ましい。希土類化合物としては、希土類の水酸化物、オキシ水酸化物、酸化物、炭酸化合物、リン酸化合物及びフッ素化合物が挙げられる。これらの中でも、特に希土類の水酸化物及びオキシ水酸化物から選ばれた少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0017】
希土類化合物に含まれる希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。これらの中で、ネオジム、サマリウム、エルビウムが好ましく、特にエルビウムが好ましい。
【0018】
希土類化合物の具体例としては、水酸化ネオジム、オキシ水酸化ネオジム、水酸化サマリウム、オキシ水酸化サマリウム、水酸化エルビウム、オキシ水酸化エルビウム等の水酸化物やオキシ水酸化物の他、リン酸ネオジム、リン酸サマリウム、リン酸エルビウム、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム、炭酸エルビウム等のリン酸化合物や炭酸化合物、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化エルビウム、フッ化ネオジム、フッ化サマリウム、フッ化エルビウム等の酸化物やフッ素化合物等が挙げられる。
【0019】
尚、正極活物質としては、上記正極活物質と他の正極活物質とを混合させて使用することも可能である。
【0020】
結着剤としては、フッ素系高分子、ゴム系高分子等が挙げられる。例えば、フッ素系高分子としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの変性体等、ゴム系高分子としてエチレンープロピレンーイソプレン共重合体、エチレンープロピレンーブタジエン共重合体等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。結着剤は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の増粘剤と併用されてもよい。導電剤としては、例えば、炭素材料としてカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
[負極]
負極は、例えば、負極活物質と、結着剤とを水あるいは適当な溶媒で混合し、負極集電体に塗布し、乾燥し、圧延することにより得られる。負極集電体には、導電性を有する薄膜体、特に銅などの負極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、銅などの金属表層を有するフィルム等を用いることが好適である。結着剤としては、正極の場合と同様にPTFE等を用いることもできるが、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)又はこの変性体等を用いることが好ましい。結着剤は、CMC等の増粘剤と併用されてもよい。
【0022】
上記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、SiやSn等のリチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物等を用いることができる。また、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよく、炭素材料やリチウムと合金化する金属或いは合金材料や金属酸化物の中から選ばれた負極活物質を組み合わせたものであってもよい。
【0023】
[非水電解質]
非水電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、フッ素化環状カーボネート、また、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートやフッ素化鎖状カーボネート、また、鎖状カルボン酸エステルやフッ素化鎖状カルボン酸エステルを用いることができる。特に、高誘電率、低粘度、低融点の観点でリチウムイオン伝導度の高い非水系溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートまたは鎖状カルボン酸エステルとの混合溶媒を用いることが好ましい。また、この混合溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートまたは鎖状カルボン酸エステルとの体積比は、2:8〜5:5の範囲に規制することが好ましい。
【0024】
フッ素化環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどのフッ素化溶媒は、酸化分解電位が高く耐酸化性が高いため、高電圧充電保存時に分解しにくいので好ましい。フッ素化環状カーボネートとしては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネートが挙げられる。中でもフルオロエチレンカーボネートが特に好ましい。フッ化鎖状カーボネートの例としては、フッ素化メチルエチルカーボネートが挙げられる。フッ素化鎖状カルボン酸エステルとしては、フッ素化プロピオン酸メチルが挙げられる。
【0025】
また、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物;プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ヘキサメチレンジイソシアネート等のニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を上記の溶媒とともに用いることもでき、また、これらの水素原子Hの一部がフッ素原子Fにより置換されている溶媒も用いることができる。1,3−プロパンスルトンやヘキサメチレンジイソシアネートは正極表面や負極表面に良好な皮膜を形成するため特に好ましい。
【0026】
非水電解質の溶質としては、例えば、フッ素含有リチウム塩であるLiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、及びLiAsFなどを用いることができる。さらに、フッ素含有リチウム塩に、フッ素含有リチウム塩以外のリチウム塩〔P、B、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩(例えば、LiClO等)〕を加えたものを用いても良い。特に、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成する点から、フッ素含有リチウム塩とオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩とを含むことが好ましい。
【0027】
上記のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩の例として、LiBOB〔リチウム−ビスオキサレートボレート〕、Li[B(C)F]、Li[P(C)F]、Li[P(C]が挙げられる。中でも特に負極で安定な被膜を形成させるLiBOBを用いることが好ましい。なお、上記溶質は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
[セパレータ]
セパレータとしては、例えば、ポリプロピレン製やポリエチレン製のセパレータ、ポリプロピレン−ポリエチレンの多層セパレータや、セパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いることができる。
【0029】
(実験例1−1)
[正極の作製]
リチウム源として炭酸リチウムを用い、コバルト源として四酸化コバルトを用い、コバルトの置換元素源となるニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウム源として、水酸化ニッケル、二酸化マンガン、水酸化アルミニウム、二酸化ゲルマニウムとを用いた。コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:1:1で乾式混合した後、これをリチウム及び遷移金属のモル比が1:1になるよう炭酸リチウムと混合し、粉末をペレットに成型して、空気雰囲気中において、900℃で24時間焼成し、正極活物質を調製した。
【0030】
上述の正極活物質を96.5質量部、導電剤としてのアセチレンブラックを1.5質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末を2.0質量部となるよう混合し、これをN−メチルピロリドン溶液と混合して正極合剤スラリーを調製した。次いで、正極合剤スラリーを正極集電体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法により塗布して正極集電体の両面に正極活物質合剤層を形成し、乾燥した後、圧縮ローラーを用いて圧延し、所定サイズに裁断して正極板を作製した。そして、正極板の正極活物質合剤層の未形成部分に正極集電タブとしてのアルミニウムタブを取り付けて、正極とした。正極活物質合剤層の量は39mg/cmとし、正極合剤層の厚みは120μmとした。
【0031】
[負極板の作製]
黒鉛と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースと、結着材としてのスチレンブタジエンゴムとを、質量比で98:1:1となるように秤量し、水に分散させて負極活物質合剤スラリーを調製した。この負極活物質合剤スラリーを、厚さ8μmの銅製の負極芯体の両面にドクターブレード法により塗布した後、110℃で乾燥させて水分を除去して、負極活物質層を形成した。そして、圧縮ローラーを用いて所定の厚さに圧延し、所定サイズに裁断して負極極板を作製した。
【0032】
[非水電解液の調整]
非水溶媒として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、フッ素化プロピオンカーボネート(FMP)を用意した。25℃における体積比で、FEC:FMP=20:80となるように混合した。この非水溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウムを濃度が1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質を調製した。
【0033】
[非水電解質二次電池の作製]
非水電解質二次電池としての特性の評価について説明する。まず、非水電解質二次電池の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。ラミネート形非水電解質二次電池20は、ラミネート外装体21と、正極板と負極板とを備え偏平状に形成された巻回電極体22と、正極板に接続された正極集電タブ23と、負極板に接続された負極集電タブ24とを有している。巻回電極体22は、それぞれが帯状である正極板、負極板及びセパレーターを有し、正極板と負極板とがセパレーターを介して互いに絶縁された状態で巻回されるようにして構成されている。
【0034】
ラミネート外装体21には凹部25が形成されており、このラミネート外装体21の一端側がこの凹部25の開口部分を覆うように折り返されている。凹部25の周囲にある端部26と折り返されて対向する部分とは溶着され、ラミネート外装体21の内部が封止されるようになっている。封止されたラミネート外装体21の内部には、巻回電極体22が非水電解液とともに収納されている。
【0035】
正極集電タブ23及び負極集電タブ24は、それぞれ樹脂部材27を介して封止されたラミネート外装体21から突出するようにして配置され、これら正極集電タブ23及び負極集電タブ24を介して電力が外部に供給されるようになっている。正極集電タブ23及び負極集電タブ24のそれぞれとラミネート外装体21との間には、密着性向上及びラミネート材のアルミニウム合金層を介する短絡防止の目的で、樹脂部材27が配置されている。
【0036】
作製した正極板及び負極板を、ポリエチレン製微多孔質膜からなるセパレータを介して巻回し、最外周にポリプロピレン製のテープを張り付けて円筒状の巻回電極体を作製した。次いで、これをプレスして偏平状の巻回電極体とした。また、ポリプロピレン樹脂層/接着剤層/アルミニウム合金層/接着材層/ポリプロピレン樹脂層の5層構造からなるシート状のラミネート材を用意し、このラミネート材を折り返して底部を形成するとともにカップ状の電極体収納空間を形成した。
【0037】
次いで、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で偏平状の巻回電極体と非水電解質とをカップ状の電極体収納空間に挿入した。この後、ラミネート外装体内部を減圧してセパレーター内部に非水電解質を含浸させ、ラミネート外装体の開口部を封止した。このようにして、高さ62mm、幅35mm、厚み3.6mm(封止部を除外した寸法)の非水電解質二次電池を作製した。これらの電池の理論容量は、充電電圧がリチウム基準で4.5Vのとき、800mAhである。
【0038】
(実験例1−2)
コバルト、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのモル比を90:5:5:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例1−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0039】
(実験例1−3)
コバルト、ニッケル、マンガン及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例1−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0040】
(実験例1−4)
コバルト、ニッケルのモル比を90:10になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例1−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0041】
[充放電サイクルの条件]
上記電池について、下記の条件で充放電試験を行った。
400mAの定電流で電池電圧が4.50Vとなるまで充電し、電池電圧が各値に達した後は、各値の定電圧で40mAとなるまで充電を行った。そして、800mAの定電流で電池電圧が2.50Vとなるまで放電を行い、このときに流れた電気量を測定して1回目の放電容量を求めた。測定温度は45℃で行った。負極に用いられる黒鉛の電位は、リチウム基準で約0.1Vである。このため、電池電圧4.50Vにおいて正極電位はリチウム基準で4.53V以上4.60V程度となる。上記と同じ条件で充放電を繰り返して100回目の放電容量を測定し、容量維持率を以下の式を用いて算出した。
容量維持率(%)=(100回目の放電容量/1回目の放電容量)×100
【0042】
実験例1−4で用いた電池の容量維持率を100とした場合の、各電池の容量維持率の相対値を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを含有している実験例1−1に対し、コバルト、ニッケルのみを含む実験例1−4では、サイクル特性が低下した。リチウムコバルト複合酸化物にアルミニウム及びゲルマニウムの両者を含有させることで、活物質の内部構造の安定化及び表面構造の安定化による電解液の分解抑制により、サイクル特性の低下が抑制したと考えられる。
【0045】
コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを含有している実験例1−1に対し、コバルト、ニッケル、マンガンの他にアルミニウムとゲルマニウムのどちらか一方のみを含む実験例1−2及び実験例1−3は、サイクル特性が低下した。これらの結果から、アルミニウムは内部構造を安定化するが充電時のOCV低下抑制のため、正極活物質表面が活性状態になり電解液との反応が進行し、サイクル特性が低下していると考えられる。ゲルマニウムは表面構造を安定化すると考えられるが、内部構造の崩壊が進むため、サイクル特性が低下していると考えられる。よって、リチウムコバルト複合酸化物にアルミニウム及びゲルマニウムの両者を含有させることで、活物質の構造が安定化し、サイクル特性の低下が抑制されたと考えられる。
【0046】
(実験例2−1)
[正極の作製]
正極活物質は、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:0.5:0.5になるように正極活物質を調製した。
【0047】
次に、以下のようにして湿式法により正極活物質の表面に希土類化合物を付着させた。正極活物質1000gを3リットルの純水と混合して撹拌し、正極活物質が分散した懸濁液を調製した。懸濁液のpHが9を保つように水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、この懸濁液に希土類化合物源としての硝酸エルビウム5水和物1.85gを溶解した溶液を添加した。
【0048】
なお、懸濁液のpHが9よりも小さいと、水酸化エルビウム及びオキシ水酸化エルビニウムが析出し難くなる。また、懸濁液のpHが9よりも大きいと、これらの析出する反応速度が速くなり、正極活物質表面に対する分散状態が不均一となる。
【0049】
次に、上記懸濁液を吸引濾過し、更に水洗して得られた粉末を120℃で熱処理した。これにより、正極活物質の表面に水酸化エルビウムが均一に付着した正極活物質粉末が得た。
【0050】
図1に正極活物質の表面に希土類化合物を付着させたもののSEM像を示す。正極活物質の表面に、エルビウム化合物が均一に分散した状態で付着していることが確認された。エルビウム化合物の平均粒子径は100nm以下であった。また、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いてこのエルビウム化合物の付着量を測定したところ、正極活物質に対してエルビウム元素換算で0.07質量部であった。
【0051】
なお、正極活物質の表面に希土類元素化合物の微粒子を分散した状態で付着させると、高電位の充放電反応を行った際の正極活物質構造変化を抑制することが可能になる。この理由は明らかでないが、希土類元素の水酸化物を表面に付着させることで、充電時の反応過電圧が増加し、相転移による結晶構造変化を小さくすることが可能となるためと考えられている。
【0052】
上述のようにして調製された表面に希土類化合物を有する正極活物質を用い、実験例1−1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0053】
(実験例2−2)
コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:1:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0054】
(実験例2−3)
コバルト、ニッケル及びマンガンのモル比を90:5:5になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0055】
(実験例2−4)
コバルト及びマンガンのモル比を90:10になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0056】
(実験例2−5)
コバルト、ニッケル及びマンガンのモル比を90:1:9になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0057】
(実験例2−6)
コバルト、ニッケル及びマンガンのモル比を90:3:7になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0058】
(実験例2−7)
コバルト、ニッケル及びマンガンのモル比を90:7:3になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0059】
(実験例2−8)
コバルト、ニッケル及びマンガンのモル比を90:9:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
(実験例2−9)
コバルト及びニッケルのモル比を90:10になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0061】
(実験例2−10)
コバルト、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのモル比を90:5:5:0.05になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0062】
(実験例2−11)
コバルト、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのモル比を90:5:5:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0063】
(実験例2−12)
コバルト、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのモル比を90:5:5:2になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0064】
(実験例2−13)
コバルト、ニッケル、マンガン及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:1になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0065】
(実験例2−14)
コバルト、ニッケル、マンガン及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:2になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0066】
(実験例2−15)
コバルト、ニッケル、マンガン及びゲルマニウムのモル比を90:5:5:3になるように正極活物質を調製したこと以外は、実験例2−1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0067】
[充放電サイクルの条件]
実験例2−1〜2−15の各電池について、実験例1−1〜1−4の各電池と同様の条件で充放電試験を行った。
【0068】
実験例1−4で用いた電池の容量維持率を100とした場合の、各電池の容量維持率の相対値を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを含有する実験例2−1〜2−2に対し、アルミニウム及びゲルマニウムを共に含まない実験例2−3〜2−9ではサイクル特性が低下した。
【0071】
実験例2−3〜2−9を比較すると、ニッケルとマンガンを等比で置換している実験例2−3が最も容量維持率がよい結果となった。これは、実験例2−3の場合ニッケルのイオン価数は2価、マンガン価数は4価で存在しているが、比較例2〜7ではニッケルとマンガンの価数が一部3価を含んでいる。3価のニッケルとマンガンはヤーンテラー効果で結晶中に歪みを与えるため、これらが正極活物質に存在することで、構造不安定になり、サイクル特性が低下したと考えられる。
【0072】
コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを含有する実験例2−1〜2−2に対し、コバルト、ニッケル、マンガンの他にアルミニウムとゲルマニウムのどちらか一方のみを含む実験例2−10〜2−15は、サイクル特性が低下した。
【0073】
表1及び表2より、正極活物質の表面に希土類化合物を付着させたことによる影響について考察する。実験例1−1と実験例2−2、実験例1−2と実験例2−11、実験例1−3と実験例2−13、実験例1−4と実験例2−9の組み合せに関し、100サイクル後の容量維持率の差は、実験例1−1と実験例2−2の差が最も大きい。即ち、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを含有する正極活物質に希土類化合物を付着させたほうが、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウム、ゲルマニウムを必須としない正極活物質に希土類化合物を付着させるよりも、サイクル特性が向上する効果が大きい。これは、希土類化合物によって正極活物質表面の反応過電圧が増加し、相転移による結晶構造変化が小さくなったためと考えられる。
【0074】
上記実験例は、ラミネート形非水電解質二次電池の例を示したが、これに限らず、金属製の外装缶を使用した円筒形非水電解質二次電池や角形非水電解質二次電池等に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の一局面の非水電解質二次電池は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の特に高容量かつ長寿命が必要とされる用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
20.非水電解質二次電池 21.ラミネート外装体 22.巻回電極体
23.正極集電タブ 24.負極集電タブ
図1
図2
図3