特許第6237796号(P6237796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237796
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光学積層体、偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20171120BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20171120BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20171120BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B1/14
   G02B5/30
   B32B23/08
   G09F9/00 342
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   G09F9/00 313
   G09F9/00 302
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-460(P2016-460)
(22)【出願日】2016年1月5日
(62)【分割の表示】特願2012-530692(P2012-530692)の分割
【原出願日】2011年8月24日
(65)【公開番号】特開2016-130846(P2016-130846A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-191193(P2010-191193)
(32)【優先日】2010年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 智之
(72)【発明者】
【氏名】西園 健史
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−086660(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119566(WO,A1)
【文献】 特開2008−012675(JP,A)
【文献】 特開2006−293279(JP,A)
【文献】 特開2009−186760(JP,A)
【文献】 特開2010−181871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 − 1/18
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロース基材の一方の面上にハードコート層を有する光学積層体であって、
前記ハードコート層は、単一の層構成を有するものであり、
前記ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂と光重合開始剤とを含有するハードコート層形成用組成物を用いて形成されたものであり、
前記電離放射線硬化型樹脂は、10以上の重合性官能基を有し、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、2以上の重合性官能基を有するモノマーとを含有し、
前記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、前記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及び前記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により、負荷荷重10mNで測定したとき、
前記マルテンス硬度(N1)は、200〜450N/mmであり、
前記マルテンス硬度(N2)は、150〜300N/mmであり、
前記マルテンス硬度(N3)は、150〜250N/mmであり、
前記トリアセチルセルロース基材の厚みが10〜65μmであり、
前記光学積層体のヘイズが1%未満である
ことを特徴とする光学積層体。
【請求項2】
マルテンス硬度(N1)とマルテンス硬度(N2)との差(N1−N2)が、0〜150N/mmであり、マルテンス硬度(N2)とマルテンス硬度(N3)との差(N2−N3)が、0〜150N/mmである請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
ハードコート層の表面の鉛筆硬度試験(4.9N荷重)の硬度が、3H以上である請求項1又は2記載の光学積層体。
【請求項4】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光板は、偏光素子表面に請求項1、2又は3記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項5】
最表面に請求項1、2若しくは3記載の光学積層体、又は、請求項4記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等の画像表示装置においては、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。
【0003】
このような要求に対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を設けたハードコートフィルムや、更に、反射防止性や防眩性等の光学機能を付与したハードコートフィルムを利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
【0004】
ところで、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性の向上のためには、ハードコートフィルムのハードコート層表面の硬度が高い方が好ましい。ハードコート層表面の硬度を高める方法としては、従来から種々検討されており、例えば、ハードコート層に無機微粒子を含有させる方法がある。このようなハードコートフィルムとして、例えば、特許文献1には、透明基材上に、光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む組成物を硬化させた中間層を設け、当該中間層上に更にハードコート層を設け、硬度の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、従来のハードコートフィルムは、ハードコート層の硬度を高めるほどに、ハードコートフィルム全体の反り(カール)やフィルムの撓みが発生し、ハードコートフィルムを偏光子やディスプレイパネルに貼付ける際に、空気を噛んで気泡が混入することやフィルムを内側に巻き込んでしまい、加工適正を著しく低下させるおそれがあった。
更に、従来、ハードコートフィルムの軽量化を目的とした薄膜化の要請があるが、中間層とハードコート層とを有するハードコートフィルムでは、充分な薄膜化を図ることができなかった。そのため、単一の層構成のハードコート層で硬度の向上を図り、更に、透明基材の膜厚を薄くすることが求められていた。しかしながら、このような単一の層構成のハードコート層と薄膜化された透明基材とを有するハードコートフィルムでは、ハードコート層の高硬度化を図ると、カールや熱しわの発生が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−107762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みて、単一の層構成のハードコート層を備え、基材厚みが薄くても、高硬度であって、カールの発生や熱しわを低減でき、偏光子やディスプレイパネルへの貼付ける際の作業性に優れる光学積層体、該光学積層体を用いてなる偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トリアセチルセルロース基材の一方の面上にハードコート層を有する光学積層体であって、上記ハードコート層は、単一の層構成を有するものであり、上記ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂と光重合開始剤とを含有するハードコート層形成用組成物を用いて形成されたものであり、上記電離放射線硬化型樹脂は、10以上の重合性官能基を有し、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、2以上の重合性官能基を有するモノマーとを含有し、上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、上記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)及び上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により、負荷荷重10mNで測定したとき、上記マルテンス硬度(N1)は、200〜450N/mmであり、上記マルテンス硬度(N2)は、150〜300N/mmであり、上記マルテンス硬度(N3)は、150〜250N/mmであり、上記トリアセチルセルロース基材の厚みが10〜65μmであり、上記光学積層体のヘイズが1%未満であることを特徴とする光学積層体である。
本発明の光学積層体において、上記マルテンス硬度(N1)とマルテンス硬度(N2)との差(N1−N2)が、0〜150N/mmであり、マルテンス硬度(N2)とマルテンス硬度(N3)との差(N2−N3)が、0〜150N/mmであることが好ましい。
また、上記ハードコート層の表面の鉛筆硬度試験(4.9N荷重)の硬度が、3H以上であることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光板は、偏光素子表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明は、最表面に上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明者らは、トリアセチルセルロース基材の上に単一の層構成を有するハードコート層が形成された構造の光学積層体について鋭意検討した結果、該光学積層体にカールが発生することを抑制するには、該光学積層体を構成する各層の硬度のバランスが重要であることを見出した。すなわち、光学積層体を構成する各層の硬度、特に、ハードコート層の表面及び断面の中央のマルテンス硬度並びにトリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度が、それぞれ所定の範囲内にあることで、上記ハードコート層を単一の層構成とし、また、トリアセチルセルロース基材を薄膜化した場合であってもカールの発生を好適に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の光学積層体において、上記ハードコート層は、単一の層構成を有するものであり、上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)、該ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)、及び、上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3)を、それぞれナノインデンテーション法により、負荷荷重10mNで測定したとき、上記マルテンス硬度(N1)は、200〜450N/mmであり、上記マルテンス硬度(N2)は、150〜300N/mmであり、上記マルテンス硬度(N3)は、100〜250N/mmである。上記マルテンス硬度(N1)、(N2)及び(N3)が上記範囲内にそれぞれあることで、本発明の光学積層体は、カールの発生を防止することができる。
上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)の具体的な測定方法としては、例えば、図1に示したように、上記N1は、ハードコート層10の表面(トリアセチルセルロース基材と反対側表面)に対して垂直方向から対面角136°のダイヤモンド正四角錐形状のビッカース圧子12を押し込み、得られた荷重−変位曲線から、マルテンス硬度を算出し、これを5箇所について求めた平均をハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)とする。なお、上記マルテンス硬度は、より具体的には、ビッカース圧子の押し込みによりできたピラミッド形のくぼみ13aの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を割る(F/A)ことで求められる。
また、上記ハードコート層の断面中央のマルテンス硬度(N2)は、図1に示したように、ハードコート層10の断面10aの中央(A−A線)に、該断面10aに対して垂直方向からビッカース圧子12を押し込んで形成したくぼみ13bから、上記N1と同様にしてマルテンス硬度(5箇所について求めた平均)を求める。また、上記トリアセチルセルロース基材の断面中央のマルテンス硬度(N3)は、トリアセチルセルロース基材11の断面11aの中央(B−B線)に、該断面11aに対して垂直方向からビッカース圧子12を押し込んで形成したくぼみ13cから、上記N1と同様にしてマルテンス硬度(5箇所について求めた平均)を求める。
なお、上記ナノインデンテーション法によるマルテンス硬度の測定は、(株)フィッシャー・インスツルメント製、ピコデンターHM−500を用いて測定することができる。
【0012】
上記ハードコート層の表面のマルテンス硬度(N1)が200N/mm未満であると、本発明の光学積層体の表面硬度が目標の鉛筆硬度3Hに到達せず、また、耐擦傷性も不充分となる。一方、上記マルテンス硬度(N1)が450N/mmを超えると、逆に硬くなりすぎて、脆くなり、クラック性(靭性)が低下してしまう。また、カールが強くなり、後加工のプロセスにおいて、不具合(例えば、ケン化工程でカールが更に強くなって生産ラインを通らなくなり、場合によっては破断してしまったり、偏光板に貼合した後にもカールしてしまったりする等)が生じてしまう。更に、本発明の光学積層体の表面硬度が目標の鉛筆硬度3Hに到達しなくなる。
上記マルテンス硬度(N1)の好ましい下限は210N/mmであり、好ましい上限は400N/mmであり、より好ましい下限は230N/mmであり、より好ましい上限は350N/mmである。
【0013】
また、上記ハードコート層の断面の中央のマルテンス硬度(N2)が100N/mm未満であると、本発明の光学積層体の表面硬度が目標の鉛筆硬度3Hに到達しない。一方、上記マルテンス硬度(N2)が300N/mmを超えると、逆に硬くなりすぎて脆くなり、クラック性(靭性)が低下してしまう。
上記マルテンス硬度(N2)の好ましい下限は150N/mmであり、好ましい上限は250N/mmであり、より好ましい下限は170N/mmであり、より好ましい上限は240N/mmである。
【0014】
また、上記トリアセチルセルロース基材の断面の中央のマルテンス硬度(N3)が150N/mm未満であると、本発明の光学積層体の表面硬度が目標の鉛筆硬度3Hに到達しない。一方、上記マルテンス硬度(N3)が250N/mmを超えると、逆に硬くなりすぎて脆くなり、クラック性(靭性)が低下してしまう。また、熱ダメージ(フィルムの幅方向のうねり)も強くなり、パネル貼合後に外観不良を起こしてしまう。
上記マルテンス硬度(N3)の好ましい下限は160N/mmであり、好ましい上限は240N/mmであり、より好ましい下限は170N/mmであり、より好ましい上限は230N/mmである。
【0015】
更に、本発明の光学積層体では、上記マルテンス硬度(N1)とマルテンス硬度(N2)との差(N1−N2)が0〜150N/mmであり、マルテンス硬度(N2)とマルテンス硬度(N3)との差の(N2−N3)が0〜150N/mmであることが好ましい。上記(N1−N2)及び(N2−N3)が上記範囲内にあることで、本発明の光学積層体にカールが発生することをより好適に防止することができる。上記(N1−N2)及び(N2−N3)のより好ましい下限は5N/mmであり、より好ましい上限は100N/mmである。上記(N1−N2)及び(N2−N3)が上記範囲内にあることで、各層の硬化収縮を一定に抑えることができ、よって、カールが発生しにくくなる。なお、本発明の光学積層体において、上記(N1−N2)及び(N2−N3)は、いずれか一方のみが上記範囲内にあればよいが、上記(N1−N2)及び(N2−N3)のいずれも上記範囲内にあることがより好ましい。
【0016】
また、上記ハードコート層は、表面の鉛筆硬度試験(4.9N荷重)の硬度が、3H以上であることが好ましい。3H未満であると、本発明の光学積層体のハードコート性が不充分となる。なお、上記鉛筆硬度試験は、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験に準ずる試験である。
なお、本明細書において、上記ハードコート層の鉛筆硬度試験による硬度は、5回ひっかき試験を行ったうち、1回の引いた長さの3分の1以上の長さに傷が発生した回をNGとし、NGが1回以下であれば合格という基準に基づいて評価した結果を意味する。つまり、5回ひっかき試験を行い、1回傷が発生した場合は「4/5」という記述になり合格となり、また、5回ひっかき試験を行い、4回傷が発生した場合は「1/5」という記述になり不合格となる。
【0017】
以下、上述した硬度を有する本発明の光学積層体におけるハードコート層及びトリアセチルセルロース基材について説明する。
上記トリアセチルセルロース基材は、透明性、平滑性、耐熱性を備え、更に機械的強度に優れたものである。
上記トリアセチルセルロース基材の厚みは、10〜65μmであることが好ましく、20〜45μmであることがより好ましい。
また、上記トリアセチルセルロース基材は、その上にハードコート層を形成するに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的又は化学的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。なお事前にケン化処理をしておけばカール防止にも効果がある。
また、事前に上記トリアセチルセルロース基材の少なくともハードコート層と接する側の反対の面に後述する溶剤を塗工しておくのもカール防止にも効果がある。
【0018】
上記ハードコート層は、上記トリアセチルセルロース基材上に形成されたものであり、バインダー樹脂を含有するものである。
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂と光重合開始剤とを含有するハードコート層形成用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0019】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。更に、上述した化合物のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン又はイソシアヌル等の変性を施した化合物であってもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0020】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0021】
上記電離放射線硬化型樹脂は、6以上の重合性官能基を有するウレタン化合物、又は、10以上の重合性官能基を有するポリマーと、2以上の重合性官能基を有するモノマーとを含有することが好ましい。このような組成の電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層形成用組成物を用いることで、上述したマルテンス硬度(N1)、(N2)及び(N3)の関係を満たすハードコート層を好適に得ることができる。
ここで、従来、ハードコート層形成用組成物としては形成するハードコート層の高硬度化等を目的としてシリカを含有するものが知られている。しかしながら、このようなシリカを含有するハードコート層形成用組成物を用いて塗膜を形成し乾燥させると、シリカが透明基材側に存在しやすくなり、製造した光学積層体は、屈曲性が悪くなってクラックが生じやすくなるという問題があった。
これに対して、本発明の光学積層体では、上記ハードコート層形成用組成物にシリカを含有させず、電離放射線硬化型樹脂として、上述した6以上の重合性官能基を有するウレタン化合物、又は、10以上の重合性官能基を有するポリマーと、2以上の重合性官能基を有するモノマーとを含有させることで、該ハードコート層形成用組成物をトリアセチルセルロース基材上に塗布し塗膜を形成し乾燥させると、理由は明確ではないが、上記塗膜のトリアセチルセルロース基材と反対側(以下、塗膜の上層ともいう)に6以上の重合性官能基を有するウレタン化合物、又は、10以上の重合性官能基を有するポリマーの存在割合が高くなり、上記塗膜のトリアセチルセルロース基材側(以下、塗膜の下層ともいう)に上記2以上の重合性官能基を有するモノマーの存在割合が高くなる。このような塗膜では、上記塗膜の下層に多く存在する2以上の重合性官能基を有するモノマーは、後述する浸透性溶剤を用いると、トリアセチルセルロース基材へ浸透される。そして、上記塗膜を硬化させることで、上述したマルテンス硬度(N1)、(N2)及び(N3)の関係を満たすハードコート層を形成することができる。また、上記塗膜の全体を充分に硬化させることができるため、光学積層体のカールを制御することができ、更に、上記塗膜は紫外線照射により硬化されるので、充分に高い硬度のハードコート層を得ることができる。
なお、上記塗膜の上層における上記2以上の重合性官能基を有するモノマーの存在割合が高い場合、上記塗膜の硬化が始まると、該2以上の重合性官能基を有するモノマーの反応が早すぎて塗膜の深部にまで硬化が及ばず、ハードコート層の硬化が不充分となることがある。また、上記塗膜の上層が硬化しやすいため硬化収縮が大きく、その結果、得られる光学積層体のカールが大きくなることがある。
【0022】
上記6以上の重合性官能基を有するウレタン化合物は、重量平均分子量が1000〜1万であることが好ましい。このような6以上の重合性官能基を有するウレタン化合物としては、例えば、日本合成化学工業株式会社製:UV1700B(重量平均分子量2000、重合性官能基数10)、UV6300B(重量平均分子量3700、重合性官能基数7)、UV7640B(重量平均分子量1500、重合性官能基数7)、日本化薬株式会社製:DPHA40H(重量平均分子量7000、重合性官能基数8)、UX5001T(重量平均分子量6200、重合性官能基数8)、根上工業株式会社製:UN3320HS(重量平均分子量5000、重合性官能基数15)、UN904(重量平均分子量4900、重合性官能基数10)、UN3320HC(重量平均分子量1500、重合性官能基数6)、UN3320HA(重量平均分子量1500、重合性官能基数6)、荒川化学工業株式会社製:BS577(重量平均分子量1000、重合性官能基数6)、及び、新中村化学工業株式会社製:U15H(重合性官能基数15)、U6H(重合性官能基数6)等が挙げられる。
また、上記10以上の重合性官能基を有するポリマーは、重量平均分子量が1万〜5万であることが好ましい。このような10以上の重合性官能基を有するポリマーとしては、例えば、荒川化学工業株式会社製:BS371、BS371MLV、BSDK1、BSDK2、BSDK3、日立化成工業株式会社製:ヒタロイド7975Dシリーズ(例えば、ヒタロイド7975D5、7975D12、7975D40等)等が挙げられる。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。
また、上記2以上の重合性官能基を有するモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)が好適に挙げられる。
【0023】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性の観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0024】
また、上記ハードコート層形成用組成物は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0025】
上記光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、上記光重合開始剤としては、具体例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0026】
上記光重合開始剤としては、上記電離放射線硬化型樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、上記光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることが好ましい。
【0027】
ここで、上記電離放射線硬化型樹脂の硬化は、形成するハードコート層の硬度の面を考慮して、N雰囲気下(酸素濃度は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは250ppm以下)で紫外線照射により行うことが好ましい。このような環境下で上記電離放射線硬化型樹脂の硬化を行う場合、上記ハードコート層形成用組成物の塗膜は、最表面で固まりやすく内部は固まりにくい。しかしながら、上記電離放射線硬化型樹脂及び溶剤の種類に合わせて、上記光重合開始剤の含有量を特定の範囲とすることで、マルテンス硬度(N1)、(N2)及び(N3)が上述した関係を満たすように制御することができる。
具体的には、上記ハードコート層形成用組成物における上記光重合開始剤の含有量は、上記電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、0.75〜2.5質量部であることが好ましい。0.75質量部未満であると、本発明の光学積層体におけるハードコート層のマルテンス硬度(N2)を上述した範囲とすることができないことがあり、2.5質量部を超えると、塗設した塗膜の深部まで電離放射線が届かなくなり内部硬化が促進されず、目標であるハードコート層の表面の鉛筆硬度3H以上が得られないおそれがある。また、上記塗膜の硬化時の発熱量が大きくなり、上記電離放射線硬化型樹脂の硬化が進行して得られる光学積層体にカールや熱しわが発生しやすくなる。
上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1質量部であり、より好ましい上限は2質量部である。理由は不明であるが、上記光重合開始剤の含有量がこの範囲にあることで、膜厚方向に硬度分布を適度に発生させることができ、本発明の光学積層体の高硬度と低カールを両立することが可能となる。
【0028】
上記ハードコート層形成用組成物は、溶剤を含有していてもよい。
上記溶剤としては、使用する樹脂成分の種類及び溶解性に応じて選択して使用することができ、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合溶媒であってもよい。
【0029】
上記溶剤は、なかでも、トリアセチルセルロース基材に対して浸透性のある浸透性溶剤を含有することが好ましい。本発明において、浸透性溶剤の「浸透性」とは、トリアセチルセルロース基材に対する浸透性、膨潤性、湿潤性等のすべての概念を包含する意である。
このような浸透性溶剤がトリアセチルセルロース基材を膨潤、湿潤することによって、ハードコート層形成用組成物の一部がトリアセチルセルロース基材まで浸透する挙動をとる。
【0030】
上記浸透性溶剤の具体例としては、ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、含窒素化合物;ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、グリコール類;メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル、ハロゲン化炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、グリコールエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられ、またはこれらの混合物が挙げられ、好ましくはエステル類、ケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。その他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類も、上記浸透性溶剤と混合して用いることができる。
また、ハードコート層形成用組成物中において、上記浸透性溶剤は、溶剤全量中10〜100質量%、特に50〜100質量%となることが好ましい。
【0031】
上記ハードコート層形成用組成物中における原料の含有割合(固形分)として特に限定されないが、通常は5〜70質量%、特に25〜60質量%とすることが好ましい。
【0032】
上記ハードコート層形成用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する、防眩性を付与する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0033】
また、上記ハードコート層形成用組成物は、光増感剤を混合して用いてもよく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等が挙げられる。
【0034】
上記ハードコート層形成用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0035】
上記ハードコート層形成用組成物を用いて上述したマルテンス硬度(N1)及び(N2)を有するハードコート層を形成する方法としては、例えば、上記ハードコート層形成用組成物を、トリアセチルセルロース基材に塗布し形成した塗膜を、所定の条件で硬化させる方法が挙げられる。
【0036】
上記ハードコート層形成用組成物をトリアセチルセルロース基材上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
【0037】
上記トリアセチルセルロース基材上に上記ハードコート層形成用組成物を塗布して形成した塗膜は、必要に応じて加熱及び/又は乾燥し、活性エネルギー線照射等により硬化させることが好ましい。
【0038】
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射が挙げられる。上記紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0039】
本発明の光学積層体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。85%未満であると、本発明の光学積層体を画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。
【0040】
また、本発明の光学積層体は、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。また、後述する公知の防眩層を形成した場合のように、本発明の光学積層体に防眩性を付与した場合、上記ヘイズは、80%未満であることが好ましい。上記防眩層は、内部拡散によるヘイズ及び/又は最表面の凹凸形状によるヘイズからなってよく、内部拡散によるヘイズは、0.5%以上79%未満であることが好ましく、1%以上50%未満であることがより好ましい。最表面のヘイズは、0.5%以上35%未満であることが好ましく、1%以上20%未満であることがより好ましく、1%以上10%未満であることが更に好ましい。
【0041】
本発明の光学積層体は、また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、必要に応じて他の層(防眩層、帯電防止層、低屈折率層、防汚層、接着剤層、他のハードコート層等)の1層又は2層以上を適宜形成することができる。なかでも、防眩層、帯電防止層、低屈折率層及び防汚層のうち少なくとも一層を有することが好ましい。これらの層は、公知の反射防止用積層体と同様のものを採用することもできる。
【0042】
本発明の光学積層体は、トリアセチルセルロース基材上に、電離放射線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含有するハードコート層形成用組成物を使用してハードコート層を形成することにより製造することができる。
上記ハードコート層形成用組成物及びハードコート層の形成方法については、上述したハードコート層において説明したものと同様の材料、方法が挙げられる。
【0043】
本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、本発明による光学積層体を該光学積層体におけるハードコート層が存在する面と反対の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板も、本発明の一つである。
【0044】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0045】
本発明は、最表面に上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等の画像表示装置であってもよい。
【0046】
上記画像表示装置の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。また、上記LCD偏光板よりも視認側にある表面ガラス基板(前面板とも言う)の表面(BL側でもよい)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0047】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、STN型、VA型、IPS型等の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0048】
上記画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0049】
上記画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0050】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FED、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPCなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の光学積層体は、上述した構成からなるものであるため、カールが発生することを好適に防止することができる。このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】マルテンス硬度の測定方法を説明する模式図である。
図2】カール幅の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0054】
以下の配合によってハードコート層形成用組成物1を調製した。
<ハードコート層形成用組成物1>
樹脂1;ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製;PET30) 20質量部
樹脂2;ポリマーアクリレート(B−1) 30質量部
重合開始剤;Irg.184(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー184) 1質量部
Irg.907(チバ・ジャパン社製;イルガキュアー907) 1質量部
レベリング剤;メガファックMCF350−5 0.05質量部
溶剤;メチルエチルケトン(MEK) 50質量部
ここで、ポリマーアクリレート(B−1)は、荒川化学工業社製「BS371MLV」であり、1分子におけるアクリロイル基が約25個であって、平均分子量(Mw)が15000であった。
【0055】
表1に示した配合に従い、ハードコート層形成用組成物2〜17をそれぞれ調製した。
なお、表1中、
「UV1700B」とは、多官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製;UV1700B、重合性官能基数10)を示し、
「A−1」とは、平均一次粒径30nmの球状シリカ微粒子4個が無機の化学結合した平均2次粒径100nmであって、MIBKで希釈した固形分40%の反応性異型シリカ微粒子を示し、
「BS577」とは、荒川化学工業社製のウレタンアクリレート樹脂(重合性官能基数6)を示し、
「B−2」とは、荒川化学工業社製「BS371」であり、1分子におけるアクリロイル基が約50個であって、平均分子量(Mw)が40000であった。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例1)
<光学積層体の製造>
トリアセチルセルロース基材(厚み40μm、コニカミノルタ製、KC4UA)を準備し、該トリアセチルセルロース基材の片面に、ハードコート層形成用組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、10g/cm(乾燥時)のハードコート層を形成し、これによりトリアセチルセルロース基材及びハードコート層を有する光学積層体を製造した。
【0058】
(実施例5〜7、参考例2〜4、8、9、比較例1〜6、8、9)
表2に示したように、ハードコート層形成用組成物1の代わりにハードコート層形成用組成物2〜17をそれぞれ使用した以外の作製方法は実施例1と同様にして、実施例5〜7、参考例2〜4、8、9、比較例1〜6、8、9の光学積層体をそれぞれ製造した。
【0059】
(比較例7)
紫外線の積算光量が50mJ/cmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして比較例7の光学積層体を製造した。
【0060】
(比較例10)
ハードコート層形成時の紫外線を基材側から積算光量が100mJ/cmになるよう照射した以外は、実施例1と同様にして比較例10の光学積層体を製造した。
【0061】
実施例、参考例及び比較例で得られた光学積層体を以下の方法により評価し、それぞれの結果を表2に示した。
【0062】
(評価1:マルテンス硬度の測定)
実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体のハードコート層の表面、断面中央、及び、トリアセチルセルロース基材の断面中央を(株)フィッシャー・インスツルメント製、ピコデンターHM−500を用いてナノインデンテーション法によりマルテンス硬度を測定した値を、それぞれN1、N2、N3とした。
なお、負荷荷重を10mNとし、ハードコート層の表面を5回測定した平均値をN1(N/mm)とした。
また、各実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体を50μmに裁断し、ハードコート層と基材それぞれの断面のほぼ中央となる場所に、負荷荷重を10mNとし、5回測定した値の平均値をそれぞれN2、N3とした。なお、マルテンス硬度の詳細な測定方法は、図1を用いて説明したとおりである。また、ピコデンターの針先条件、押し込み速さ、押し込み荷重、及び、測定時の温度、湿度は、以下の通りとした。
ビッカース圧子(四角錘)、先端部分の対面角136°
0mN〜10mN 10秒
10mNのまま 5秒
10mN〜0mN 10秒
温度25℃、湿度50%
【0063】
(評価2:鉛筆硬度)
実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体を、温度23℃、相対湿度50%の条件で16時間以上調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度3H)を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度評価方法に一部則った測定で、荷重を4.9Nとし、ひっかき速度を1.4mm/secとして鉛筆硬度試験を行い、以下の基準により評価した。
(評価基準)
5回ひっかき試験をしたうち、1回の引いた長さの3分の1以上の長さに傷が発生し充分な明るさの蛍光灯下での目視にて確認できた傷をNGとし、NGが5回中1回以下であれば合格(○)、2回以上傷が発生した場合を不合格(×)とした。
【0064】
(評価3:耐擦傷性)
実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体のハードコート層表面を、#0000番のスチールウールを用いて、摩擦荷重を変化させ、10往復摩擦し、その後の塗膜の傷、剥がれの有無を目視し下記の基準にて評価した。
◎:1000g/cm荷重で、傷なし、塗膜の剥がれなし
○:700g/cmで傷なし、塗膜の剥がれなし(1000g/cmでは傷又は塗膜の剥がれあり)
×:700g/cmで傷又は塗膜の剥がれがあった
【0065】
(評価4:屈曲性)
JIS−K5600−5−1に記載されているマンドレル試験(2mmから32mmの金属製円柱にサンプルを巻きつける試験)に準じ、円柱にハードコート層を外側にした実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体の長さ方向で巻き付けたときのクラック(ひび)が発生しなかった棒の最小直径を記載した。つまり、直径15mmの円柱でクラックが発生し、直径16mmで発生しなかった場合は、16mmとした。直径17mm以下を良好な光学積層体と評価する。
【0066】
(評価5:カール幅)
光学積層体のカールの度合い(カール幅)は、図2に示したように、実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体を10cm×10cmにカットしたサンプル片1を水平な台(平面)の上に置き、ハードコート層の端点間の距離(W)を測定したときの当該距離の平均値(mm)を以下のように表した。
○:40mm以上
△:20以上、40mm未満
×:0以上、20mm未満
【0067】
(評価6:熱しわ)
実施例、参考例及び比較例に係る光学積層体を100cm×50cmにカットしたサンプル片を水平な黒い台(平面)の上に置き、サンプルから上部1mに設置した蛍光灯の写りこみを、サンプル面から45度の位置から目視で観察し、下記の基準にて評価した。
○:熱しわが殆ど観察されない
△:熱しわが観察されるが、強く観察されない
×:熱しわが強く観察された
【0068】
【表2】
【0069】
表2より、実施例1、5〜7に係る光学積層体は、カールの発生は充分に抑制され、硬度3Hの鉛筆硬度試験において良好な結果であり、耐擦傷性にも優れ、また、屈曲性及びカールの評価も満足できたものであった。
一方、比較例1〜4、6及び8に係る光学積層体は、硬度3Hの鉛筆硬度試験及び/又は耐擦傷性における結果は良好であったが、屈曲性の評価に劣り強いカールも発生していた。また、比較例5、7及び9に係る光学積層体は、屈曲性及びカールの評価は満足できたが、鉛筆硬度試験において硬度3Hを達成していなかったり、耐擦傷性の評価に劣ったりするものであった。また、比較例10に係る光学積層体は、硬度3Hの鉛筆硬度試験及び耐擦傷性における結果は良好であったが、屈曲性の評価に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 サンプル片
10 ハードコート層
10a 断面
11 トリアセチルセルロース基材
11a 断面
12 ビッカース圧子
13a、13b、13c くぼみ
図1
図2