特許第6237825号(P6237825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237825高温プラズマ原料供給装置および極端紫外光光源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237825
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】高温プラズマ原料供給装置および極端紫外光光源装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20171120BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20171120BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G03F7/20 521
   H05H1/24
   H05G2/00 K
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-106710(P2016-106710)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-212185(P2017-212185A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年8月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】山谷 大樹
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−18701(JP,A)
【文献】 特開2015−53292(JP,A)
【文献】 特開2008−294393(JP,A)
【文献】 特表2007−505460(JP,A)
【文献】 特開2000−91095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温プラズマを発生させるための液体状の高温プラズマ原料が収容された容器に、前記高温プラズマ原料を供給する高温プラズマ原料供給装置であって、
固体状の前記高温プラズマ原料を複数収容し、回転可能に構成された原料収容部と、
前記原料収容部内に突き通され、前記原料収容部に収容された前記高温プラズマ原料を前記原料収容部の外部に供給する供給ノズルと、
前記供給ノズルから前記高温プラズマ原料が供給される空間と前記容器が配置された空間との間に設けられたロードロック部と、
前記供給ノズルから供給された前記高温プラズマ原料を前記ロードロック部へ誘導する供給経路と、を備え、
前記供給経路の少なくとも一部に、前記固体状の高温プラズマ原料よりも小さい孔が形成されていることを特徴とする高温プラズマ原料供給装置。
【請求項2】
前記供給ノズルから供給される前記高温プラズマ原料の供給個数および供給間隔の少なくとも一方を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項3】
前記供給ノズルは、前記原料収容部内における先端開口部を水平方向または略水平方向に向け、前記原料収容部外における先端開口部を鉛直方向下方に向けたL字形状または略L字形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項4】
前記供給ノズルから供給される前記高温プラズマ原料を計数する原料計数部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項5】
前記供給経路は、網状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項6】
前記供給経路は、前記高温プラズマ原料の誘導方向を変更可能に構成されていること特徴する請求項1から5のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項7】
前記供給経路は、水平方向の軸を中心に揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項8】
前記供給経路は、前記固体状の高温プラズマ原料よりも硬い材料により構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項9】
前記固体状の高温プラズマ原料は、球形であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置。
【請求項10】
極端紫外光を放射する極端紫外光光源装置であって、
前記請求項1から9のいずれか1項に記載の高温プラズマ原料供給装置と、
前記容器と、
前記容器が配置された空間を構成するチャンバと、
前記容器に収容された液体状の高温プラズマ原料を、前記高温プラズマを発生させる高温プラズマ発生部へ供給する原料供給機構と、
前記原料供給機構によって供給される前記液体状の高温プラズマ原料を加熱して励起し高温プラズマを発生させる高温プラズマ発生部と、を備えることを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項11】
前記チャンバ内に配置され、前記ロードロック部と前記容器とを接続する接続経路をさらに備え、
前記接続経路の少なくとも一部に屈曲部を有することを特徴とする請求項10に記載の極端紫外光光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温プラズマ原料を供給する高温プラズマ原料供給装置、およびその高温プラズマ原料供給装置を備える極端紫外光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう。)を放射する極端紫外光光源装置(以下、「EUV光源装置」ともいう。)の開発が進められている。
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの一つに極端紫外光放射種(以下、「EUV放射種」という。)を加熱して励起することにより高温プラズマを発生させ、その高温プラズマからEUV光を取り出す方法がある。このような方法を採用するEUV光源装置として、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式のEUV光源装置がある。
【0003】
DPP方式のEUV光源装置は、極端紫外光放射源を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。DPP方式においては、放電を発生させる電極表面に液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ))を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Discharge Plasma)方式と称されることもある。
【0004】
LDP方式のEUV光源装置においては、所定間隔だけ互いに離間した円盤状の一対の電極が回転可能に設けられる。これらの電極の一部は、液体状の高温プラズマ原料を収容するコンテナ中に浸されており、電極が回転することにより放電領域に高温プラズマ原料が輸送される構成となっている。また、このようなLDP方式のEUV光源装置においては、別途比較的容量の大きなリザーバーに高温プラズマ原料を収容しておき、リザーバーからコンテナへ高温プラズマ原料を供給することで、コンテナ内の高温プラズマ原料の量を一定に保っている。
特許文献1には、リザーバーに収容される液体状の高温プラズマ原料(液体スズ)を、コンテナに対して循環供給する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−225437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のEUV光源装置においては、EUV放射の発生中は高温プラズマ原料が消費されるため、リザーバー内の高温プラズマ原料の収容量は徐々に減少する。そのため、EUV光源装置を長期間、安定して運用するためには、定期的にリザーバーに高温プラズマ原料を補充する必要がある。
リザーバー内の液体スズの温度を変動させないためには、液体スズをリザーバーに供給することが考えられる。しかしながら、液体スズを供給する場合、液体スズが固体化しないように、供給経路の温度を全てスズの融点以上に維持するための加熱機構が必要になる。また、供給経路における液体スズによるエロージョンを防止するために、当該供給経路内は、液体スズに対する化学的耐性を付与する必要がある。このように、装置構成が複雑化する。
【0007】
一方、リザーバーに固体スズを供給する場合には、上記のような加熱機構を設けたり、供給経路内に化学的耐性を付与したりする必要はない。しかしながら、固体スズの表面は酸化スズにより覆われているため、固体スズの供給に際し、酸化スズのような不純物がリザーバーへ混入しやすいという問題がある。
そこで、本発明は、液体状の高温プラズマ原料を収容するリザーバーに対して、比較的簡易な構成で、不純物が抑制された高温プラズマ原料を適切に供給することができる高温プラズマ原料供給装置、およびその高温プラズマ原料供給装置を備えた極端紫外光光源装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る高温プラズマ原料供給装置の一態様は、高温プラズマを発生させるための液体状の高温プラズマ原料が収容された容器に、前記高温プラズマ原料を供給する高温プラズマ原料供給装置であって、固体状の前記高温プラズマ原料を複数収容し、回転可能に構成された原料収容部と、前記原料収容部内に突き通され、前記原料収容部に収容された前記高温プラズマ原料を前記原料収容部の外部に供給する供給ノズルと、前記供給ノズルから前記高温プラズマ原料が供給される空間と前記容器が配置された空間との間に設けられたロードロック部と、前記供給ノズルから供給された前記高温プラズマ原料を前記ロードロック部へ誘導する供給経路と、を備え、前記供給経路の少なくとも一部に、前記固体状の高温プラズマ原料よりも小さい孔が形成されている。
【0009】
このように、高温プラズマ原料供給装置において固体状の高温プラズマ原料を扱うので、高温プラズマ原料を液体状に保つための加熱機構が必要ない。また、当該装置内に液体状の高温プラズマ原料に対する化学的耐性を付与する必要もない。さらに、原料収容部を回転させることで原料収容部内の固体状の高温プラズマ原料を動かし、供給ノズルを介して固体状の高温プラズマ原料を原料収容部の外部へ供給することができる。したがって、比較的簡易な構成で固体状の高温プラズマ原料を供給することができる。また、固体状の高温プラズマ原料をロードロック部へ誘導する途中で、当該高温プラズマ原料の表面から剥離された酸化物等の不純物を、供給経路に形成された孔から落とすことができる。そのため、容器に不純物が混入することを抑制することができる。
【0010】
また、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給ノズルから供給される前記高温プラズマ原料の供給個数および供給間隔の少なくとも一方を制御する制御部を備えてもよい。
この場合、固体状の高温プラズマ原料が一度に大量に供給されることを防止することができ、固体状の高温プラズマ原料が目詰まりすることを抑制することができる。また、固体状の高温プラズマ原料が一度に大量に供給されることに起因する容器内の液体状の高温プラズマ原料の温度低下を抑制することができる。
【0011】
さらに、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給ノズルは、前記原料収容部内における先端開口部を水平方向または略水平方向に向け、前記原料収容部外における先端開口部を鉛直方向下方に向けたL字形状または略L字形状であってもよい。この場合、固体状の高温プラズマ原料が、意図せずに一度に大量に供給ノズルから供給されることを確実に抑制することができる。
また、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給ノズルから供給される前記高温プラズマ原料を計数する原料計数部をさらに備えてもよい。これにより、固体状の高温プラズマ原料の供給量を適切に制御することができる。また、供給ノズルから高温プラズマ原料が供給されないといった不具合を検出することもできる。
【0012】
さらに、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給経路は、網状であってもよい。この場合、より不純物が供給経路から落ち易くなり、容器への不純物の混入を適切に抑制することができる。
また、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給経路は、前記高温プラズマ原料の誘導方向を変更可能に構成されていてもよい。
容器が複数設けられており、各容器にそれぞれ対応してロードロック部も複数設けられている場合、高温プラズマ原料の誘導方向を切り替えて適切に高温プラズマ原料を供給することができる。つまり、複数の容器で供給経路を共有することができる。
【0013】
さらにまた、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給経路は、水平方向の軸を中心に揺動可能に構成されていてもよい。このように、供給経路はシーソー構造であってもよい。この場合、供給経路の傾きを制御することで高温プラズマ原料の誘導方向を変更ことができ、簡易な構成で高温プラズマ原料の供給先の切り替えが可能である。
また、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記供給経路は、前記固体状の高温プラズマ原料よりも硬い材料により構成されていてもよい。この場合、供給ノズルから落下した高温プラズマ原料を供給経路によって受け止めた際の当該高温プラズマ原料の跳ね返りを抑制することができる。したがって、高温プラズマ原料を適切にロードロック部へ誘導することができる。
【0014】
さらに、上記の高温プラズマ原料供給装置において、前記固体状の高温プラズマ原料は、球形であってもよい。この場合、高温プラズマ原料は供給経路上を転がり易く、また、目詰まりの発生を抑制された形状とすることができる。
また、本発明に係る極端紫外光光源装置の一態様は、極端紫外光を放射する極端紫外光光源装置であって、上記のいずれかの高温プラズマ原料供給装置と、前記容器と、前記容器が配置された空間を構成するチャンバと、前記容器に収容された液体状の高温プラズマ原料を、前記高温プラズマを発生させる高温プラズマ発生部へ供給する原料供給機構と、前記原料供給機構によって供給される前記液体状の高温プラズマ原料を加熱して励起し高温プラズマを発生させる高温プラズマ発生部と、を備える。
【0015】
これにより、安定して極端紫外光を(EUV光)を放射することができる。
さらに、上記の極端紫外光光源装置において、前記チャンバ内に配置され、前記ロードロック部と前記容器とを接続する接続経路をさらに備え、前記接続経路の少なくとも一部に屈曲部を有していてもよい。この場合、接続経路を通る高温プラズマ原料に速度分布をもたせることができ、適切に目詰まりを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高温プラズマ原料供給装置は、溶融スズ等の液体状の高温プラズマ原料を収容する容器に対して、比較的簡易な構成で適切に高温プラズマ原料を供給することができる。また、上記容器に高温プラズマ原料の酸化物等の不純物が混入することを抑制することができる。したがって、この高温プラズマ原料供給装置を備える極端紫外光光源装置は、安定して極端紫外光(EUV光)を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の極端紫外光光源装置の一例を示す概略構成図である。
図2】スズ供給機構の構成例を示す図である。
図3】スズ充填機構を示す図である。
図4】球形スズ供給装置の一例である。
図5】供給経路の一例である。
図6】供給経路の別の例である。
図7】供給経路の別の例である。
図8】スズ充填機構の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の極端紫外光光源装置(EUV光源装置)100を示す概略構成図である。
EUV光源装置100は、半導体露光用光源として使用可能な、例えば波長13.5nmの極端紫外光(EUV光)を放出する装置である。
本実施形態のEUV光源装置100は、DPP方式のEUV光源装置であり、より具体的には、放電を発生させる電極表面に供給された高温プラズマ原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該高温プラズマ原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを発生するLDP方式のEUV光源装置である。
【0019】
EUV光源装置100は、図1に示すように、放電容器であるチャンバ11を有する。チャンバ11は、開口を有する隔壁11aによって、大きく2つの空間に分割されている。一方の空間は放電空間11bであり、他方の空間は集光空間11cである。
放電空間11bには、各々独立して回転可能な一対の放電電極21a,21bが互いに離間して対向配置されている。放電電極21a,21bは、EUV放射種を含む高温プラズマ原料を加熱して励起するためのものである。
放電空間11bの圧力は、高温プラズマ原料を加熱励起するための放電が良好に発生するように、真空雰囲気に維持されている。
【0020】
集光空間11cには、EUV集光鏡(集光ミラー)12と、デブリトラップ13とが配置されている。
EUV集光鏡12は、高温プラズマ原料が加熱励起されることで放出されるEUV光を集光し、チャンバ11に設けられたEUV取出部11dから、例えば露光装置の照射光学系(不図示)へ導くものである。
EUV集光鏡12は、例えば、斜入射型の集光鏡であり、複数枚の薄い凹面ミラーを入れ子状に高精度に配置した構造を有する。各凹面ミラーの反射面の形状は、例えば、回転楕円面形状、回転放物面形状、ウォルター型形状であり、各凹面ミラーは回転体形状である。ここで、ウォルター型形状とは、光入射面が、光入射側から順に回転双曲面と回転楕円面、もしくは、回転双曲面と回転放物面からなる凹面形状である。
【0021】
EUV集光鏡12は、反射面形状が回転楕円面形状、ウォルター型形状等いずれかの形状であって、径が互いに異なる回転体形状の凹面ミラーを複数枚備える。EUV集光鏡を構成するこれらの凹面ミラーは、同一軸上に、焦点位置が略一致するように回転中心軸を重ねて配置される。このように凹面ミラーを入れ子状に高精度に配置することにより、EUV集光鏡12は、0°〜25°の斜入射角度のEUV光を良好に反射し、且つ一点に集光することが可能となる。
また、上記した各凹面ミラーの基体材料は、例えば、ニッケル(Ni)等である。波長が非常に短いEUV光を反射させるため、凹面ミラーの反射面は、非常に良好な平滑面として構成される。この平滑面に施される反射材は、例えば、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、およびロジウム(Rh)などの金属膜である。各凹面ミラーの反射面には、このような金属膜が緻密にコーティングされている。
【0022】
デブリトラップ13は、放電によるプラズマ生成の結果生じるデブリを捕捉し、当該デブリがEUV光の集光部へ移動するのを抑制する。
放電空間11bに配置された一対の放電電極21a,21bは、金属製の円盤状部材である。放電電極21a,21bは、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属からなる。ここで、2つの放電電極21a,21bのうち、一方の放電電極21aがカソードであり、他方の放電電極21bがアノードである。
放電電極21aは、その一部が高温プラズマ原料22aを収容するコンテナ23aの中に浸されるように配置される。放電電極21aの略中心部には、モータ24aの回転軸25aが取り付けられている。すなわち、モータ24aが回転軸25aを回転させることにより、放電電極21aは回転する。モータ24aは、制御部40によって駆動制御される。
【0023】
また、回転軸25aは、例えば、メカニカルシール26aを介してチャンバ11内に導入される。メカニカルシール26aは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸25aの回転を許容する。
放電電極21bも、放電電極21aと同様に、その一部が高温プラズマ原料22bを収容するコンテナ23bの中に浸されるように配置される。放電電極21bの略中心部には、モータ24bの回転軸25bが取り付けられている。すなわち、モータ24bが回転軸25bを回転させることにより、放電電極21bは回転する。モータ24bは、制御部40によって駆動制御される。
【0024】
また、回転軸25bは、例えば、メカニカルシール26bを介してチャンバ11内に導入される。メカニカルシール26bは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸25bの回転を許容する。
放電電極21a,21bの表面上に乗った液体状の高温プラズマ原料22a,22bは、放電電極21a,21bが回転することで放電領域に輸送される。ここで、放電領域とは、両電極21a,21b間の放電が発生する空間であり、両電極21a,21bの周縁部のエッジ部分間距離が最も短い部分である。
高温プラズマ原料22a,22bとしては、溶融金属、例えば液体状のスズ(Sn)を用いる。この高温プラズマ原料22a,22bは、放電電極21a,21bに電力を供給する給電用の金属としても働く。
【0025】
コンテナ23a,23bは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持可能な絶縁性の電力導入部11f,11gを介して、パルス電力供給部27に接続されている。コンテナ23a及び23b、並びにスズ22a及び22bは導電性である。放電電極21aの一部及び放電電極21bの一部はそれぞれスズ22a,22bに浸漬しているので、コンテナ23a,23b間にパルス電力供給部27からパルス電力を印加することで、放電電極21a,21b間にパルス電力を印加することができる。
なお、特に図示しないが、コンテナ23a及び23bには、スズ22a,22bを溶融状態に維持する温度調節機構が設けられている。
パルス電力供給部27は、コンテナ23a及び23b間、すなわち放電電極21a及び21b間にパルス幅の短いパルス電力を印加する。パルス電力供給部27は、制御部40によって駆動制御される。
【0026】
レーザ源28は、放電領域に輸送された放電電極21a上のスズ22aに対してレーザ光(エネルギービーム)を照射するエネルギービーム照射部である。レーザ源28は、例えばNd:YVOレーザ装置(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate レーザ装置)である。このレーザ源28が放出するレーザ光Lは、レーザ光集光部等を介してチャンバ11の窓部11gに入射し、放電電極21a上に導かれる。レーザ源28によるレーザ光の照射タイミングは、制御部40が制御する。
【0027】
パルス電力供給部27により放電電極21a,21bにパルス電力を印加した状態で、放電領域に輸送された高温プラズマ原料に対してレーザ光が照射されると、当該高温プラズマ原料が気化し、両電極21a,21b間でパルス放電が開始される。その結果、高温プラズマ原料による高温プラズマPが形成される。そして、放電時に流れる大電流によりプラズマPが加熱励起され高温化すると、この高温プラズマPからEUV光が放射される。
なお、上述したように放電電極21a,21b間にはパルス電力を印加するため、上記放電はパルス放電となり、放射されるEUV光はパルス状に放射されるパルス光となる。
また、上記において、放電電力21a,21bおよびコンテナ23a,23bは、高温プラズマ発生部に対応している。
コンテナ23a,23bには、スズ22a,22bを供給するスズ供給機構(原料供給機構)が接続されている。
【0028】
以下、スズ供給機構について説明する。
図2は、コンテナ23aにスズ22aを供給するスズ供給機構30の構成例を示す図である。なお、コンテナ23bにスズ22bを供給するスズ供給機構についても、図2に示すスズ供給機構30と同様の構成を有するため、以下、コンテナ23aにスズ22aを供給するスズ供給機構30についてのみ説明する。
スズ供給機構30は、スズ22aを収容するリザーバー(容器)31aを備える。リザーバー31aは、コンテナ23aよりも容量が大きく設計されている。
【0029】
リザーバー31aには、その側壁下部(スズ22aの下限レベルLcよりも下方)にスズ排出口32が形成されており、当該スズ排出口32とコンテナ23aに形成されたスズ供給口33とは、スズ供給管34によって接続されている。スズ供給管34にはポンプ35が設けられており、当該ポンプ35の駆動によってリザーバー31a内のスズ22aがコンテナ23aへ供給される。また、スズ供給管34には、スズ22aを所定の設定温度にするための冷却手段36が設けられている。
【0030】
さらに、コンテナ23aには、スズ22aが排出されるスズ排出口37が形成されており、当該スズ排出口37とリザーバー31aに形成されたスズ還流口38が、スズ排出管39によって接続されている。
ここで、スズ供給口33は、コンテナ23aにおける放電電極21aが放電領域に到達する直前に通過する領域近傍に形成されている。また、スズ排出口37は、コンテナ23aにおける放電電極21aのレーザ光が照射された部分がコンテナ23a中のスズ22aに再び浸漬する領域近傍に形成されている。
【0031】
このように構成することにより、レーザ光が照射される前、且つ放電が発生する前の放電電極21aに、所定の設定温度のスズ22aが供給されて放電領域に輸送される。また、放電発生により加熱された放電電極21aがコンテナ23a内のスズ22aと接触し、当該スズ22aが所望の温度以上に加熱されても、この加熱されたスズ22aはコンテナ23aから排出されるので、次の放電時に輸送されるスズ22aには影響を与えない。
【0032】
スズ排出管39を通ってリザーバー31aに還流してきた加熱されたスズ22aは、リザーバー31a内のスズ22aと混合され、リザーバー31a内のスズ22aの全体の温度を上昇させる。しかしながら、リザーバー31aの容量は、上述したようにコンテナ23aの容量よりも大きいので、リザーバー31aに収容されるスズ22aの量も多く、このスズ22aの温度上昇は緩やかとなる。したがって、冷却手段36によってスズ供給管34を流れるスズ22aの温度を所望の設定温度にする際の、当該冷却手段36の負荷は小さくなる。
このように、リザーバー31aに収容されるスズ22aは、コンテナ23aに対して循環供給される。
【0033】
EUV光源装置100におけるEUV放射の発生中は、高温プラズマ原料であるスズが消費されるため、リザーバー31aにおけるスズ22aの収容量は徐々に減少する。そのため、リザーバー31aには、スズ22aの収容量をモニタリングし、スズ22aの収容量が適正量となるようリザーバー31aにスズ22aを補充するための機構が設けられている。
リザーバー31aには、当該リザーバー31aに収容されているスズ22aの液面レベルを検出するための液面レベルセンサ(不図示)が設けられており、液面レベルセンサの検出信号は、制御部40に出力される。制御部40は、液面レベルセンサからの検出信号をもとに、リザーバー31aにおけるスズ22aの収容量を検出し、当該収容量が適正量となるように充填制御を行う。当該充填制御では、制御部40は、以下に説明するスズ充填機構(高温プラズマ原料供給装置)60を駆動制御し、スズ充填機構60からリザーバー31aへスズ22aを供給する。
【0034】
図3は、スズ充填機構60の構成を示す図である。
スズ充填機構60は、球形スズ供給装置61を備える。球形スズ供給装置61には、固体のスズ原料が収容されている。本実施形態において、固体スズ原料の形状は、球状である。なお、固体スズ原料の形状は、棒状や回転楕円体形状、その他ブロック形状など、任意の形状であってもよい。
球形スズ供給装置61は、図4に示すように、固体スズ原料(以下、「球形スズB」という。)を複数収容する原料収容部61aを備える。原料収容部61aは、底部を有する例えば筒状の容器であり、鉛直方向(図4の上下方向)の軸を中心として、不図示の回転機構により回転可能に構成されている。
【0035】
原料収容部61aの底部には、原料収容部61aに収容された球形スズBを当該原料収容部61aの外部に供給するための供給ノズル62が突き通されている。図4に示すように、供給ノズル62は、原料収容部61a内における先端開口部62aを水平方向に向けたL字形状であり、先端開口部62aは、原料収容部61aの底部から距離dだけ上方に設けられている。ここで、距離dは、例えば球形スズBの直径以上とすることができる。
原料収容部61aは、供給ノズル62に対して相対的に回転可能に構成されている。原料収容部61aは、制御部40によって回転制御される。制御部40による回転制御により原料収容部61aが回転すると、当該原料収容部61a内に収容された球形スズBが動いて供給ノズル62の先端開口部62aに入り込み、そのまま供給ノズル62を通って供給ノズル62の下端部から原料収容部61aの外部へ排出される。
なお、供給ノズル62は、先端開口部62aを略水平方向に向けた略L字形状であってもよい。つまり、供給ノズル62は、上方から球形スズBが入らず、原料収容部61aの回転により球形スズBが1つずつ断続的に入るような形状であればよい。
【0036】
図3に戻って、供給ノズル62の下端部よりも下方には、供給ノズル62から供給される球形スズBの数をカウントするためのセンサ(原料計数部)63が配置されている。センサ63としては、例えばレーザセンサを用いることができる。
また、供給ノズル62の真下で、且つセンサ63よりも下方には、筐体64が配置されている。筐体64には、球形スズBが通過可能な開口を有する原料供給口64aが形成されている。原料供給口64aは、供給ノズル62の下端部の真下に形成されている。つまり、供給ノズル62の下端部から排出された球体スズBは、そのまま落下し、原料供給口64aを通過して筐体64に供給される。
【0037】
制御部40は、センサ63の検出信号をモニタリングすることで、球形スズ供給装置61から筐体64に供給される球形スズBの数をカウントすることが可能である。また、制御部40は、センサ63の検出信号をモニタリングすることで、球形スズ供給装置61から球形スズBが供給されないといった不具合(例えば、供給ノズル62の目詰まり等)を検出することも可能である。
制御部40は、センサ63の検出信号に基づいて原料収容部61aの回転を制御することで、球形スズ供給装置61から筐体64への球形スズBの供給個数(供給量)を制御可能である。また、制御部40は、原料収容部61aの回転を制御することで、球形スズ供給装置61から球形スズBを1つずつ断続的に供給することができる。さらに、制御部40は、原料収容部61aの回転を制御することで、球形スズBの供給間隔も制御可能である。
【0038】
筐体64内における原料供給口64aの下方には、供給選択機構65が設けられている。供給選択機構65は、球形スズBの供給先を選択するための機構であり、球形スズBを放電電極21aに対応するカソード側のリザーバー31aへ供給するか、放電電極21bに対応するアノード側のリザーバー31bへ供給するかを選択することができるように構成されている。
供給選択機構65は、球形スズBの誘導方向を変更可能に構成された供給経路65aを備える。具体的には、供給経路65aは、水平方向の所定の軸を中心に揺動可能なシーソー構造を有し、制御部40が供給経路65aの傾きを制御することで、球形スズBの転がり先を切り替え可能である。つまり、供給経路65aが図3の実線で示す状態である場合、球形スズBはカソード側のリザーバー31aへ供給され、供給経路65aが図3の破線で示す状態である場合、球形スズBはアノード側のリザーバー31bへ供給される。
【0039】
また、供給経路65aは、球形スズBよりも小さい複数の孔を有する。例えば、供給経路65aは、図4に示すように断面U字形の網状の経路とすることができる。供給経路65aは、例えば金属製であり、球形スズBよりも硬い材料により構成されている。また、供給経路65aおよびこの供給経路65aを駆動可能に支持するシーソー構造部全体の重量は、球形スズBより重い。
なお、供給経路65aの形状は、球形スズBが転がって移動可能な形状であれば、任意の形状であってよい。また、供給経路65aを構成する材料は、アクリルや金属等、任意の材料を用いることができる。ただし、供給経路65aを構成する材料は、原料供給口64aから落下してきた球形スズBを受け止めた際に、球形スズBが大きく跳ね上がることを抑制可能な材料であることが好ましい。上記のように、供給経路65aを、球形スズBよりも硬い金属により構成した場合、球形スズBの若干の変形が生じたり、球形スズBと供給経路65aの非弾性衝突などにより球形スズBの跳ね上がりを効果的に抑制したりすることができるため好ましい。
【0040】
原料供給口64aから落下し供給経路65aによって受け止められた球形スズBは、供給経路65a上を転がり、原料供給管66に供給される。原料供給管66は、リザーバー31aおよび31bのそれぞれに対応して設けられており、球形スズBは、供給選択機構65によって選択された供給先に対応する原料供給管66に供給される。以下の説明では、リザーバー31aへ球形スズBを供給する場合について説明する。
【0041】
原料供給管66は、ロードロック機構を有するロードロック部67を備える。ロードロック部67は、第一のゲートバルブ67aと、第二のゲートバルブ67bとによって区画されている。第一のゲートバルブ67aは筐体64に設けられ、第二のゲートバルブ67bは真空容器であるEUV光源装置100のチャンバ11に設けられている。このように、ロードロック部67は、供給ノズル62から球形スズBが供給される空間である筐体64と、リザーバー31aが配置された空間であるチャンバ11との間に設けられている。
第一のゲートバルブ67aと第二のゲートバルブ67bとによって区画されたロードロック空間には、圧力計67c、真空引き用管路67d、およびパージガス供給用管路67eが設けられている。真空引き用管路67dおよびパージガス供給用管路67eは、真空引きおよびパージガス供給を行う真空・パージ機構67fに接続されている。
【0042】
供給経路65aを通過した球形スズBは、原料供給管66の傾斜部を転がり、ロードロック部67に一旦供給される。つまり、球形スズBは、第一のゲートバルブ67aが開状態であり、第二のゲートバルブ67bが閉状態であるロードロック部67に供給される。なお、球形スズ供給装置61は、所定量の球形スズBがロードロック部67に供給された時点で、輸送を停止する。ここで、上記所定量は、当該ロードロック部67からリザーバー31aまでの経路内において球形スズBの目詰まりが生じない量(数)に設定されているものとする。
【0043】
ロードロック部67に所定量の球形スズBが供給されると、制御部40は、ロードロック部67上部の第一のゲートバルブ67aを閉じ、真空・パージ機構67fを制御して、真空引き用管路67dからロードロック部67の真空引きを開始する。このとき、ロードロック部67内の圧力は、圧力計67cが計測する。そして、制御部40は、圧力計67cによる計測結果をもとに、ロードロック部67内において十分な真空が得られた(チャンバ11内圧力とロードロック部67内圧力とがほぼ一致した)と判断すると、ロードロック部67下部の第二のゲートバルブ67bを開く。
【0044】
チャンバ11内には、ロードロック部67(第二のゲートバルブ67b)とリザーバー31aとを接続する接続経路である固体スズ供給用絶縁路68が設けられている。また、固体スズ供給用絶縁路68のリザーバー31a側端部には、テーパー部69が形成されている。したがって、制御部40が第二のゲートバルブ67bを開くと、ロードロック部67に供給された球形スズBは、固体スズ供給用絶縁路68およびテーパー部69を介して、リザーバー31aに注入される。なお、EUV光源装置100のチャンバ11内は、放電電極等の高電圧部分が存在するため、固体スズ供給用絶縁路68や、必要に応じてテーパー部69は、絶縁性部材から構成される。
【0045】
図3に示すスズ充填機構60では、固体スズ供給用絶縁路68は、直線状の接続経路としているが、少なくとも一部に屈曲部を有していてもよい。この場合、固体スズ供給用絶縁路68内の球体スズBに速度分布をもたせることができる。そのため、ロードロック部67から供給された球形スズBが一気にテーパー部69に到達することを抑制し、テーパー部69における球形スズBの目詰まりを抑制することができる。
球形スズBをリザーバー31aに注入した後は、制御部40は、ロードロック部67下部の第二のゲートバルブ67bを閉じ、パージガス供給用管路66eによってロードロック部67内部にパージガス(例えば、Arガス)をパージする。そして、ロードロック部67のパージが完了したら、制御部40は、ロードロック部67上部の第一のゲートバルブ67aを開く。これにより、次の球形スズBの補充開始準備がなされる。
【0046】
上記の補充プロセスは、リザーバー31a内のスズ22aの液面レベルが、上述した下限レベルLcよりも上方の再充填レベルを下回ったときに開始される。リザーバー31a内のスズ22aの液面レベルが再充填レベルに達したか否かは、リザーバー31aに設けられた下位レベルセンサ41aによって検出することができる。制御部40は、下位レベルセンサ41aの検出信号を受け、リザーバー31aへの球形スズBの供給を開始する。
リザーバー31aに球形スズBが供給されると、球形スズBがリザーバー31a内で溶け、リザーバー31a内の液体スズの液面レベルが上昇する。制御部40は、リザーバー31a内の液面レベルが上記の再充填レベルよりも上方の上限レベルに達するまで、上述した補充プロセスを繰り返す。リザーバー31a内のスズ22aの液面レベルが上限レベルに達したか否かは、リザーバー31aに設けられた上位レベルセンサ41bによって検出することができる。そして、制御部40は、上位レベルセンサ41bの検出信号を受け、液面レベルが上限レベルに達したと判断すると、リザーバー31aへの球形スズBの供給を停止する。
【0047】
上記のような補充プロセスにより、リザーバー31a内のスズ22aの液面レベルが下限レベルLcを下回ることを確実に防止することができる。また、リザーバー31a内のスズ22aの液面レベルが上限レベルを超えて溢れることを確実に防止することができる。このように、リザーバー31a内に常に適正量のスズ22aを収容させておくことができるので、EUV光源装置100は、安定してEUV光を放射することができる。
以上のように、本実施形態におけるスズ充填機構60は、リザーバー31aに固体スズである球形スズBを供給する。したがって、リザーバー31aに液体スズを供給する場合のように、スズの固体化を防止するための加熱機構を設けたり、スズ充填機構60に化学的耐性を付与したりする必要がない。
【0048】
また、スズ充填機構60は、複数の球形スズBを収容し、回転可能に構成された原料収容部61aと、原料収容部61a内に突き通され、原料収容部61aに収容された球形スズBを原料収容部61aの外部に供給する供給ノズル62と、を備える。したがって、制御部40によって原料収容部61aを回転することで供給ノズル62から球形スズBを供給することができ、簡易な構成で固体スズの供給を実現することができる。
【0049】
さらに、制御部40は、供給ノズル62から供給される球形スズBの供給個数や供給間隔を制御可能である。そのため、供給ノズル62から一度に大量の球形スズBが供給されることを防止し、球形スズBを断続的に供給することができる。したがって、球形スズBの目詰まりが生じることを抑制することができる。EUV発光中はEUV光源内部に高電圧がかかっているため、目詰まりが発生してしまった場合にはEUV光源装置の稼動を停止し、目詰まりの解消作業を行わなければならない。上記のように目詰まりの発生が抑制されることで、EUV光源装置の稼動停止を抑制することができる。
【0050】
また、一度に大量の球形スズBがリザーバー31a内に供給されることを抑制することができるので、リザーバー31aが収容する液体スズ22aの温度が急激に下降してしまうことを抑制することができる。
リザーバー31aが収容する液体スズ22aの温度が急激に下降すると、EUV発光の条件が変化し、所望のEUV出力が得られなくなるおそれがある。また、リザーバー31a内の液体スズ22aの温度低下が著しい場合、温度調整機構によるリザーバー31a内の温度調整に時間がかかり、リザーバー31a内の温度が適正温度に上昇するまでの間、EUV光源装置の稼動を停止させる必要がある。リザーバー31a内の温度が急激に低下することを抑制することで、所望のEUV出力が得られなくなることを抑制することができると共に、EUV光源装置の稼動停止を抑制することができる。
【0051】
さらに、供給ノズル62は、原料収容部61a内における先端開口部61aを水平方向に向けたL字形状であり、原料収容部61aに収容された球形スズBは、容易に供給ノズル62に入らないような構造となっている。そのため、意図せず大量の球形スズBが供給ノズル62から供給されることを抑制することができ、上記のような目詰まりの発生やリザーバー31a内の急激な温度低下を抑制することができる。
また、スズ充填機構60は、球形スズ供給装置61から供給される球形スズBの数をカウントするセンサ63を備えるので、球形スズBのリザーバー31aへの供給量を適切に制御することができる。さらに、球形スズ供給装置61から球形スズBが供給されないような不具合が発生した場合には、これを直ちに検出することもできる。
【0052】
さらに、スズ充填機構60は、供給ノズル62から供給された球形スズBをロードロック部67へ誘導する網状の供給経路65aを備える。球形スズBの表面が酸化スズによって覆われている場合、原料収容部61a内における球形スズB同士の接触により剥離した酸化スズが供給ノズル62から排出される場合がある。また、球形スズBが供給経路65a上を転がって移動した際にも、表面の酸化スズが剥離する場合がある。供給経路65aに球形スズBよりも小さい孔を設けることで、これらの酸化スズを孔から落とすことができ、リザーバー31aに不純物が入ることを抑制することができる。
なお、図3に示すように供給経路65aの下方に酸化スズリザーバー65bを配置しておけば、球形スズBから剥離し供給経路65aから落ちた酸化スズを適切に回収することができる。
【0053】
また、供給経路65aを、球形スズBよりも硬い金属によって構成すれば、球形スズ供給装置61の供給ノズル62から落下してきた球形スズBを受け止めた際の球形スズBの跳ね返りを抑制し、確実に球形スズBを原料供給管66へ誘導することができる。
また、供給経路65aは、球形スズBの誘導方向を変更可能に構成することができる。これにより、カソード側のリザーバー31aとアノード側のリザーバー31bとを切り替えて球形スズBを供給することができる。つまり、リザーバー31aとリザーバー31bとでスズ充填機構を共有することができる。さらに、供給経路65aをシーソー構造とすることで、簡易な構成で球形スズBの供給先の切り替えを実現することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態における高温プラズマ原料供給装置(スズ充填機構60)は、溶融スズ等の液体状の高温プラズマ原料を収容する容器(リザーバー31a、31b)に対して、比較的簡易な構成で適切に高温プラズマ原料を供給することができる。また、上記容器に高温プラズマ原料の酸化物等の不純物が混入することを抑制することができる。したがって、この高温プラズマ原料供給装置を備えるEUV光源装置100は、安定してEUV光を放射することができる。
【0055】
(変形例)
上記実施形態においては、供給経路65aを図5に示すような網状経路とする場合について説明したが、球形スズBが転がって移動可能であり、球形スズBの表面から剥離した酸化スズが落ちる孔が形成された形状であればよい。例えば供給経路65aは、図6に示すように、複数の孔が形成された底部と、当該底部の対向する辺に接続された側壁部とを有する形状であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、供給経路65aを水平方向の所定の軸を中心に揺動可能なシーソー構造とする場合について説明したが、球形スズBの供給先(誘導方向)を切り替え可能な構造であればよい。例えば、供給経路65aは、垂直方向の所定の軸を中心に揺動可能な構造であってもよい。さらに、供給経路65aは、上方が開放された形状に限定されず、管状の形状であってもよい。例えば、供給経路65aを塑性変形可能な管状の網状経路とし、図7に示すように供給経路65aの端部を変形させて、球形スズBの誘導方向を変更するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、供給経路65aにより球形スズBの供給先を切り替える場合について説明したが、カソード側のリザーバー31a用のスズ充填機構と、アノード側のリザーバー31b用のスズ充填機構とをそれぞれ別個に設けてもよい。この場合、カソード側のリザーバー31a用のスズ充填機構は、例えば図8に示すようになる。
【0057】
(応用例)
上記各実施形態においては、高温プラズマ原料に照射するエネルギービームとしてレーザを用いる場合について説明したが、レーザに代えてイオンビームや電子ビーム等を用いることもできる。
また、上記各実施形態においては、DPP方式のEUV光源装置に適用する場合について説明したが、LPP方式のEUV光源装置にも適用可能である。LPP方式のEUV光源装置は、液体状の高温プラズマ原料を収容するリザーバーから、原料供給ノズルを介して真空チャンバ内に液滴状の高温プラズマ原料(ターゲット原料)を供給する。そして、このEUV光源装置では、ターゲット原料にプラズマ生成用ドライバレーザを照射し、当該ターゲット材料を励起させて高温プラズマを生成し、EUVを放射する。上記各実施形態は、このようなLPP方式のEUV光源装置に用いられるリザーバーへ高温プラズマ原料を供給する場合にも適用可能である。
さらに、上記各実施形態においては、EUV光源装置を半導体露光用光源として用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、露光用マスクの検査装置等の光源として用いることもできる。
【符号の説明】
【0058】
11…チャンバ、13…ホイルトラップ、21a,21b…放電電極、22a,22b…高温プラズマ原料、23a,23b…コンテナ、28…レーザ源、30…スズ供給機構、31…リザーバー、40…制御部、60…スズ充填機構、61…球形スズ供給装置、62…供給ノズル、65a…供給経路、67…ロードロック部、100…極端紫外光光源装置(EUV光源装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8