特許第6237828号(P6237828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237828
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20171120BHJP
   G02B 7/10 20060101ALI20171120BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B7/02 E
   G02B7/10 C
   H04N5/225 400
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-123447(P2016-123447)
(22)【出願日】2016年6月22日
(62)【分割の表示】特願2012-142578(P2012-142578)の分割
【原出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-173606(P2016-173606A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 裕二
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 誠
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−304115(JP,A)
【文献】 特開2000−304998(JP,A)
【文献】 特開2010−072582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/10
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環部材と、第2の環部材とを有するレンズ鏡筒であって、前記レンズ鏡筒の内部に設けられた半導体素子を含む電子部品と、前記第1の環部材と前記第2の環部材との間に構成され前記レンズ鏡筒の外部と前記レンズ鏡筒の内部とをつなぐ隙間と、前記第1の環部材の周方向に延設された接地パターンとを設け、該周方向に延設された接地パターンは、前記電子部品と前記レンズ鏡筒の外部との間に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
第1の環部材と、第2の環部材とを有するレンズ鏡筒であって、前記レンズ鏡筒の内部に設けられた半導体素子を含む電子部品と、前記第1の環部材と前記第2の環部材との間に構成され前記レンズ鏡筒の外部と前記レンズ鏡筒の内部とをつなぐ隙間と、前記第1の環部材の周方向に延設された接地パターンとを設け、該周方向に延設された接地パターンは、前記電子部品よりも前記レンズ鏡筒の外部側に配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
複数の環部材を備え、前記複数の環部材の間に存在する環状の隙間を通して外部に通じる空間内に回路基板が内装されているレンズ鏡筒であって、前記複数の環部材は少なくとも前記隙間を構成する部位は非金属材料で構成され、前記回路基板はレンズ鏡筒の周方向に延長されるとともに、前記隙間に沿って周方向に延設されて接地部位に接続されている導電パターンが設けられていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記導電パターンは、コードパターンと、回路パターンと、接地部位に接続されている接地パターンを含み、前記接地パターンは、少なくとも前記コードパターン及び前記回路パターンが配設されている周方向の領域に延設される請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記接地パターンは、周方向の一部において接地部位に接続されている請求項1,2,4のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記隙間はレンズ鏡筒の外周面に沿って環状に延設されている固定環と、当該固定環に沿って環状に延設されて回転操作される操作環との間に生じており、これら固定環と操作環の少なくとも一方は金属材料と非金属材料で構成され、前記隙間の部位には当該金属材料が存在していない請求項1ないし5のいずれかに記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ等の撮像装置に用いるレンズ鏡筒に関し、特に静電気対策を施したレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静止画像や動画を撮像するカメラやビデオ等の撮像装置に用いるレンズ鏡筒、特に撮像装置の本体であるカメラボディに対して着脱可能に構成したレンズ鏡筒は、当該レンズ鏡筒とカメラボディとの間で電気信号を送受できるように構成する必要がある。例えば、レンズ鏡筒における焦点位置情報や絞り値情報等の電気信号をカメラボディに対して送出することができるように構成する必要がある。そのため、レンズ鏡筒には半導体装置を含む各種電子部品を内装しているが、これらの電子部品における誤作動や静電破壊が問題とされている。すなわち、レンズ鏡筒単独では静電気が発生することは殆ど無く、静電気が問題になることは少ないが、レンズ鏡筒がカメラボディに装着されあるいは一体化されているときには、カメラボディを通してレンズ鏡筒の一部が接地された状態となるため、撮影者の体に帯電された静電気がレンズ鏡筒に印加されたときに、印加された静電気がレンズ鏡筒の内部の電子回路や電子部品にまで印加され、当該静電気がノイズとなって誤作動を引き起したり電子部品を静電破壊してしまう。
【0003】
このようなレンズ鏡筒に内装した電子回路や電子部品の誤作動や静電破壊を防止するために、特許文献1ではカメラの接地部所に電気接続した中継部材に弾性の導電性部材を配設し、この導電性部材をレンズ鏡筒の外周面に設けられた金属材からなる外周面カバーに接触させた構成とすることで、外周面カバーに生じた静電気を導電性部材及び中継部材を介してカメラの接地部所に伝達し、かつ接地に放電させる構成がとられている。また、特許文献2では正面に外観品位を向上させるための金属製の化粧板が設けられているレンズ鏡筒において、当該レンズ鏡筒に内装されているフレキシブルプリント基板のグランドパターンを導電性の圧縮ばねによって当該化粧板に電気接続する構成がとられている。レンズ鏡筒に発生した静電気が化粧板に印加されても、圧縮ばね及びグランドパターンを介してグランドに伝達し、かつ放電させている。このように、特許文献1,2の技術は、レンズ鏡筒に生じる静電気をレンズ鏡筒に設けた金属製部材で集電し、集電した静電気を導電部材を通して接地部所に放電する技術であり、これによりレンズ鏡筒に内装されている電子回路や電子部品に対する静電気の影響を解消することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−357757号公報
【特許文献2】特開2003−215425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においてはレンズ鏡筒の軽量化や低コスト化を図るためにレンズ鏡筒の構成部材を樹脂で製造することが行われており、特にレンズ鏡筒の構成の大部分を占める固定環や操作環等の環状部材については金属材料を全く用いることなく樹脂のみで製造することが行われている。このようにレンズ鏡筒の外面に露呈される構成部材、特にレンズ鏡筒の固定環や操作環等が樹脂のみで構成されたレンズ鏡筒では、これらの環部材間での摩擦によって発生する静電気は比較的に少ないが、撮影者に帯電されている静電気が各構成部材に存在している隙間、特に固定環と操作環との間に生じている隙間を通してレンズ鏡筒の内部に印加され、内装されている電子回路や電子部品の誤作動や静電破壊の要因となることが推測される。このような問題を解消するためには、固定環と操作環との間の隙間を塞ぐことが考えられるが、操作環の円滑な操作回転を確保するためには隙間を零にすることは難しい。
【0006】
また、この種のレンズ鏡筒に特許文献1,2の技術を採用しようとしても、特許文献1,2の技術はレンズ鏡筒の外周面や正面、あるいは他の部位に金属部材を備えているレンズ鏡筒に適用して有効であるので、樹脂製のレンズ鏡筒に適用することはできず、有効な静電気対策をとることは難しい。仮に特許文献1,2の技術を適用しようとする場合には、特許文献2のような金属製の化粧板を別に用意してレンズ鏡筒の正面に配設する必要があり、これでは目的としているレンズ鏡筒の軽量化と低コスト化を実現することが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、軽量化や低コスト化を図るとともに、レンズ鏡筒に内装している電子回路や電子部品を静電気から保護することを可能にしたレンズ鏡筒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の環部材と、第2の環部材とを有するレンズ鏡筒であって、前記レンズ鏡筒の内部に設けられた半導体素子を含む電子部品と、前記第1の環部材と前記第2の環部材との間に構成され前記レンズ鏡筒の外部と前記レンズ鏡筒の内部とをつなぐ隙間と、前記第1の環部材の周方向に延設された接地パターンとを設け、該周方向に延設された接地パターンは、前記電子部品と前記レンズ鏡筒の外部との間に配置されている
【0009】
本発明は、第1の環部材と、第2の環部材とを有するレンズ鏡筒であって、前記レンズ鏡筒の内部に設けられた半導体素子を含む電子部品と、前記第1の環部材と前記第2の環部材との間に構成され前記レンズ鏡筒の外部と前記レンズ鏡筒の内部とをつなぐ隙間と、前記第1の環部材の周方向に延設された接地パターンとを設け、該周方向に延設された接地パターンは、前記電子部品よりも前記レンズ鏡筒の外部側に配置されている。
【0010】
本発明は、複数の環部材を備え、前記複数の環部材の間に存在する環状の隙間を通して外部に通じる内部空間内に回路基板が内装されているレンズ鏡筒であって、前記複数の環部材は少なくとも前記隙間を構成する部位は非金属材料で構成され、前記回路基板はレンズ鏡筒の周方向に延長されるとともに、前記隙間に沿って周方向に延設されて接地部位に接続されている導電パターンが設けられている。
【0011】
本発明において、前記導電パターンは、コードパターンと、回路パターンと、接地部位に接続されている接地パターンを含み、前記接地パターンは、少なくとも前記コードパターン及び前記回路パターンが配設されている周方向の領域に延設される。また、前記接地パターンは、周方向の一部において前記接地部位に接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レンズ鏡筒の外部から印加される静電気を吸収することができ、電気部品や回路基板を静電気から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のレンズ鏡筒の外観図。
図2図1のレンズ鏡筒の光軸に沿った縦断面図。
図3】フレキシブル回路基板の概略平面図。
図4】レンズ鏡筒に内装されている状態のフレキシブル回路基板の外観図。
図5】静電気を放電する作用の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を一眼レフカメラ用の交換レンズとして構成したレンズ鏡筒の外観図である。この実施形態では、レンズ鏡筒1は概略図示するカメラボディ2に設けられているレンズマウント21に対して着脱可能な交換レンズとして構成されており、外周面にはレンズ光軸Lxに沿った方向の後端(カメラボディ2の側、以下同じ)寄りの位置に第1固定環11が配設され、前端(カメラボディ2と反対側、以下同じ)側の位置に第2固定環12が配設され、これら第1固定環11と第2固定環12との間に焦点合わせを行う際に操作される操作環としてのフォーカス環14が配設されている。このフォーカス環14は後述するように手操作により回転されたときにレンズ鏡筒1に内装されているレンズ群を移動して焦点合わせを行うようになっている。また、前記第2固定環12の後端面には、図1には表れないが後述する第3固定環13が固定されており、この第3固定環13は前記カメラボディ2に装着するためのマウント部として構成されている。このレンズ鏡筒1においては軽量化を図るために前記第1ないし第3の固定環11,12,13及びフォーカス環14はいずれも非金属材料、ここでは樹脂で形成されている。なお、第3固定環13は所要の強度を得るために金属材料で形成されていてもよい。
【0017】
図2はレンズ鏡筒1のレンズ光軸Lxに沿った縦断面図である。なお、この図2では本発明と直接関係の少ない絞り機構やその他の機構については図示を省略している。前記第2固定環12は内環として構成され、前記第1固定環11は第2固定環12の外周に所要の間隔をもって配設された外環として構成されており、これら第1固定環11と第2固定環12は後端部において一体化されている。また、第2固定環12の後端部に一体化された第3固定環13は前記したようにカメラボディ2の前記レンズマウント21に着脱可能なマウント部として構成されている。
【0018】
前記第2固定環12の内径領域には第1レンズ群3と第2レンズ群4がレンズ光軸Lxの方向に配列されている。これら第1レンズ群3と第2レンズ群4は1枚または複数枚のレンズ31,41で構成されており、それぞれ第1レンズ群枠32、第2レンズ群枠42に支持されるとともに、両レンズ群枠32,42は図には表れないビス等によって一体化されている。そして、これらレンズ群3,4は前記第2固定環12に対しレンズ光軸方向に移動可能に支持されている。すなわち、第2固定環12には径方向に貫通したガイド溝12aがレンズ光軸Lxの方向に延長されており、このガイド溝12aには前記第1レンズ群枠32と第2レンズ群枠42にそれぞれ半径方向に突出されているガイド部33,43が内挿されている。そのため、第1レンズ群枠32と第2レンズ群枠42、換言すれば第1レンズ群3と第2レンズ群4は一体となって前記ガイド部33,43が前記ガイド溝12aに案内されてレンズ光軸Lxの方向に移動可能とされている。
【0019】
前記フォーカス環14は前記第1固定環11と前記第2固定環12との間に配設されており、その外周面の前端部14aが前記第1固定環11と第2固定環12との間からレンズ鏡筒1の外周に露呈され、この露呈された前端部14aが操作部としてレンズ光軸Lxの回りに回転操作されるようになっている。このフォーカス環14の回転を可能とするために、フォーカス環14と第1固定環11及び第2固定環12との間にはそれぞれ微小の隙間d1,d2が確保されている。また、フォーカス環14は前端側の内周面に内径突起14bが設けられ、この内径突起14bは前記第2固定環12の外周面に設けた円周溝12bに係合されており、フォーカス環14は手操作されたときにこの内径突起14bが円周溝12bに沿って案内されながら第2固定環12の外周に沿って回転される。
【0020】
また、フォーカス環14は後端側の周面にカム溝14cが所要の形状に形成されている。このカム溝14cには前記第1レンズ群枠32から半径方向に突出されたカムピン34が内挿状態に係合されており、フォーカス環14を回転したときにはカム溝14cとカムピン34との係合により第1レンズ群3がレンズ光軸Lxの方向に移動され、これと一体の第2レンズ群4もレンズ光軸Lxの方向に移動される。この第1レンズ群3と第2レンズ群4の移動によってレンズ鏡筒1の焦点合わせ(フォーカシング)が行われることは言うまでもない。
【0021】
また、前記レンズ鏡筒1の内部空間、ここでは前記フォーカス環14と第1固定環11との間に区画形成されている内部空間R内には所要の電子回路を構成するフレキシブル回路基板5とブラシ部6が内装されている。ブラシ部6は前記フォーカス環14の外周面のレンズ光軸Lx方向の中間領域に支持されており、詳細については省略するがベース体61に複数個、この例では4つの摺動ブラシ62がレンズ光軸Lx方向に配列されている。これらの摺動ブラシ62はフォーカス環14の回転に伴って前記フレキシブル回路基板5の表面上を摺動され、当該フレキシブル回路基板5に設けた後述するコードパターン52aに電気接触し、その電気接触状態の変化によって当該フォーカス環14の回転位置を検出するために用いられる。
【0022】
フレキシブル回路基板5は、前記内部空間R内において前記ブラシ部6と径方向に対向するように前記第1固定環11の内周面に沿って配設されている。図3はフレキシブル回路基板5の展開図であり、可撓性のある概ね帯状をした薄い絶縁板51の表面に所要の導電パターン52が形成され、かつ各種の電子部品53が搭載されている。前記フレキシブル回路基板5は相対的に幅広寸法に形成された主体部5Aと、この主体部から延長された相対的に幅狭寸法の延長部5Bとで構成されている。この主体部5Aには、長手方向の一部の領域に前記導電パターン52によってコードパターン52aが形成されている。このコードパターン52aは前記ブラシ部6の4つの摺動ブラシ62に対応した4列のパターンで構成され、各摺動ブラシ62に対して選択的に電気接触することによってコード信号を出力するものである。また、前記主体部5Aの長手方向の他の一部の領域には前記導電パターン52で形成された回路パターン52bと前記各種の電子部品53とで所要の電子回路部5Aaが構成されている。この電子部品53にはMIS構造の半導体素子を含む電子部品、例えばシステムLSIやEEPROM等の静電気によって破損されるおそれのある電子部品が含まれている。レンズ内モータを備えるレンズ鏡筒の場合にはこの種の電子部品の数はより多くなる。また、前記主体部5Aには前記導電パターン52の一部によって幅方向の一方の縁に沿ってほぼ直線状をした所要幅寸法の接地パターン52cが形成されている。この接地パターン52cは前記主体部5Aのほぼ全長にわたって延長されている。
【0023】
前記フレキシブル回路基板5の延長部5Bは前記導電パターン52で形成された配線パターン52dが形成されており、この配線パターン52dは前記主体部5Aの回路パターン52bに電気接続されるとともに、その一部は前記接地パターン52cにも電気接続されている。また、延長部5Bの先端部5Baは円弧状に形成されており、前記配線パターン52dはこの先端部5Baにまで延長されている。前記配線パターン52dのうち、前記接地パターン52cに接続されている配線パターンは接地用配線パターン、すなわちアースパターンとして構成されている。以上のコードパターン52a、回路パターン52b、接地パターン52c、配線パターン52d、すなわち前記導電パターン52は導電膜を有するフレキシブル基板をフォトリソグラフィ技術を利用して形成することが可能である。
【0024】
図4は前記フレキシブル回路基板5をレンズ鏡筒1に組み付けた状態の概念図である。図2を参照すると判るように、フレキシブル回路基板5の主体部5Aは前記第1固定環11とフォーカス環14との間に形成されている内部空間R内において第1固定環11の前端寄りの内周面、すなわち前記フォーカス環14に支持したブラシ部6に対向する領域の内周面に沿って導電パターン52を内側に向けて環状に湾曲された状態で内装され、かつ当該第1固定環11の内周面に固定支持されている。この内装に際しては、前記摺動ブラシ62がフォーカス環14の回転に伴って回動したときに前記主体部5Aに設けたコードパターン52aに摺動して電気接触することが可能な円周角度位置に配置される。また、図5図2の一部を拡大図示するように、当該主体部5Aに設けた接地パターン52cは、当該内部空間Rがレンズ鏡筒の外部に連通する隙間、すなわち前記フォーカス環14と前記第1固定環11との間に生じている隙間d1に臨むように、当該接地パターン52cがレンズ光軸Lx方向の前端側に位置されるように配置される。
【0025】
前記フレキシブル回路基板5の延長部5Bは、第1固定環11の内周面に沿ってレンズ光軸Lx方向に沿って後端側に延設され、第2固定環12の後端部の内側面に固定されている。この第2固定環12の後端面には前記したマウント部を構成している第3固定環13のフランジ13aが一体化されている。このフランジ13aはレンズ鏡筒1を前記カメラボディ2に装着したときに前記レンズマウント21に対面するようになっており、当該フランジ13aにはレンズ光軸Lx方向に貫通されたピン状のコンタクトパッド7が配設されている。このコンタクトパッド7の前端部は前記フレキシブル回路基板5の延長部5Bの先端部5Baに電気接続されている。また、このコンタクトパッド7は複数個設けられており、そのうちの1つは接地用コンタクトパッドとして前記延長部5Bに設けられた配線パターン52dのうち前記接地パターン52cに接続されている配線パターンに電気接続されている。なお、このコンタクトパッド7は後端部がパッド状に露呈されており、レンズ鏡筒1をカメラボディ2に装着したときにレンズマウント21に設けられているコンタクトピン8が弾接され、このコンタクトピン8を介してカメラボディ1の接地電位部位、通常ではカメラボディ1の筐体に電気接続されるようになっている。
【0026】
この構成のレンズ鏡筒によれば、レンズ鏡筒1をカメラボディ2に装着すると、第3固定環13、すなわちマウント部がカメラボディ2のレンズマウント21に装着され、これと同時にレンズ鏡筒1のコンタクトパッド7がカメラボディ2のコンタクトピン8に電気接続される。これによりレンズ鏡筒1内のフレキシブル回路基板5がカメラボディ2に電気接続される。すなわち、フレキシブル回路基板5の主体部5Aに形成されているコードパターン52a、回路パターン52b、接地パターン52cが配線パターン52dを介してカメラボディ2に電気接続される。特に、接地パターン52cは配線パターン52dのうちの接地用配線パターンとして構成された配線パターンに接続された上でカメラボディ2の接地部位に接続される。
【0027】
フォーカス環14を操作してレンズ光軸Lxの回りに回転することにより、カム溝14cの回転角度位置が変化され、前記したようにカム溝14cとカムピン34との係合により第1レンズ群3と第2レンズ群4が一体となってレンズ光軸Lx方向に移動されて焦点合わせが行われる。この焦点合わせに際しては、フォーカス環14の回転に伴って当該フォーカス環14に支持されているブラシ部6の摺動ブラシ62も一体的に回転され、各摺動ブラシ62はフレキシブル回路基板5のコードパターン52a上を摺動され、フォーカス環14の回転位置に対応したコード信号を発生させる。このコード信号は電子回路部5Aaにおいて所定の信号処理が行われた上で焦点情報の信号として延長部5Bの配線パターン52dを介し、さらにコンタクトパッド7及びコンタクトピン8を介してカメラボディ2に出力される。
【0028】
このような撮影者によるフォーカス操作、あるいはレンズ鏡筒1をカメラボディ2に着脱する等の他の操作を行う際に、撮影者の体に帯電している静電気がレンズ鏡筒1に対して印加されることがある。この印加された静電気はレンズ鏡筒1に存在している隙間、ここでは第1固定環11又は第2固定環12とフォーカス環14との間に生じている隙間d1,d2を通してレンズ鏡筒1の内部空間内にある印加され易い部分に印加される。この実施形態では、第1固定環11とフォーカス環14との内部空間Rに電子回路が構成されているので、特に隙間d1を通してレンズ鏡筒1の内部に静電気が印加され易い。このようにして静電気が電子回路に印加されたときには、フレキシブル回路基板5に設けた電子回路部5Aaにおけるノイズとなり、当該電子回路部5Aaで誤作動が生じ、あるいは電子部品53の静電破壊が生じることがある。
【0029】
しかし、このレンズ鏡筒1では第1固定環11とフォーカス環14との隙間d1に臨む位置に、当該隙間d1の全周にわたってフレキシブル回路基板5に設けた接地パターン52cが配設されている。そのため、図5において模式的に示すように、当該隙間d1を通してレンズ鏡筒1の内部空間Rに印加される静電気Sは隙間d1を通過する際に、当該隙間d1から最短距離に位置されている当該接地パターン52cに印加され、ここで吸収される。この接地パターン52cに吸収された静電気は、当該接地パターン52cから接地用配線パターン52dに伝達され、ここからコンタクトパッド7まで伝達される。そして、コンタクトパッド7まで伝達された静電気は、コンタクトピン8を介してカメラボディ2の接地部位にまで伝達され、ここから接地に放電される。このように、第1固定環11とフォーカス環14の隙間からレンズ鏡筒1の内部に印加された静電気Sは全てが接地パターン52cに伝達されかつ吸収された上で最終的にコンタクトパッド7からカメラボディ2に伝達されて放電されることになり、レンズ鏡筒1に内装している電子回路、特に電子回路部5Aaにおける静電気による誤作動を防止し、かつ電子部品の静電破壊を防止することができる。
【0030】
この実施形態のようにレンズ鏡筒1の固定環11,12やフォーカス環14等の主要な構成部材を樹脂等の絶縁材料で形成した場合に、仮にレンズ鏡筒1の操作によって生じる構成部材間での摺動による静電気が発生したとしても発生した静電気が隙間を通ってレンズ鏡筒1の内部の電子回路部5Aaへ印加されることが防止でき、誤作動及び静電破壊を防止する。これにより、静電気対策を実現しながらもレンズ鏡筒1の軽量化が実現できる。また、この実施形態では、既存のレンズ鏡筒に配設されているフレキシブル回路基板5の一部に、レンズ鏡筒1の隙間d1に臨むように導電パターン52の一部で接地パターン52cを形成するだけで静電気対策が実現できるので、レンズ鏡筒1の大幅な設計変更は不要であり低コスト化が実現できる。レンズ鏡筒1の一部を金属材料で構成すると、静電気がどこに印加されるか特定できないが、この実施形態のように隙間d1に臨む位置に接地パターン52cを配設することで、静電気を積極的に安全な接地パターン52cに印加させることができる。
【0031】
実施形態ではフォーカス環と第1固定環との間に設けられた内部空間にフレキシブル回路基板を配設し、この内部空間が外部に通じるフォーカス環と第1固定環との間に生じている隙間から電子部品への静電気の印加を防止する構成を示したが、フレキシブル回路基板を内装する内部空間が隙間を通して外部に連通される構成のレンズ鏡筒であれば、例えばズーム環と固定環との間に設けられた内部空間にフレキシブル回路基板を配設し、これらズーム環と固定環との間に生じている隙間を通して印加される静電気を吸収する構成であってもよい。また、実施形態ではフレキシブル回路基板を内装しているレンズ鏡筒の例を示したが、可撓性の少ない通常の回路基板を内装しているレンズ鏡筒の場合でもレンズ鏡筒に生じている隙間に臨む位置に接地パターンを配設することによって静電気を吸収ないし放電する効果を得ることができる。
【0032】
実施形態に記載の接地パターンはレンズ鏡筒に生じる隙間を通してレンズ鏡筒の内部の電子回路部にまで進入しようとする静電気を印加することが可能であれば、当該隙間の周方向の全領域、すなわちレンズ鏡筒の全周領域にわたって形成する必要はない。しかし、静電気は予測できない経路で内部に向けて印加されることがあるので、信頼性の高い静電対策を実現する上では当該隙間の周方向の全領域にわたって形成することが好ましい。また、接地パターンに印加された静電気がそこから電子回路部の信号用の回路パターンや電子部品に印加することを防止するために、接地パターンはレンズ鏡筒内に内装可能なフレキシブル回路基板の寸法の範囲内でできるだけ電子回路部から離した領域に形成することが好ましい。また、接地パターンは静電気を吸収する際の容量を大きくして静電気の放電効果を高めるためには、スペースの許される範囲でパターン面積をなるべく大きくすることが好ましい。可能であれば接地パターンをフレキシブル回路基板のほぼ全周、少なくとも電子部品53の外周を囲む領域にわたって形成してもよく、このようにすればレンズ鏡筒にフレキシブル回路基板を組み込む際に、隙間の位置、方向を考慮することなく組み込むことが可能になり、レンズ鏡筒の設計の自由度を高めることができる。特に、相対回転する環部材の一方にフレキシブル回路基板が搭載され、相対回転によって隙間の位置が変化するような場合にも有効となる。
【0033】
以上説明した実施形態ではレンズ交換式カメラのレンズ鏡筒に適用した例を示したが、レンズ鏡筒がカメラボディに一体化されている沈胴式レンズ鏡筒を含むレンズ鏡筒についても本発明を適用することができる。また、複数の回路基板を備えてそれぞれに電子部品を搭載して電子回路部を構成しているレンズ鏡筒の場合には、各回路基板にそれぞれ導電パターンを形成することが好ましい。この場合においても、各回路基板の導電パターンは外部から静電気が誘電される側の端部、すなわちレンズ鏡筒に生じている隙間の外部側開口に臨む位置に配設することが肝要である。
【0034】
以上の説明では、レンズ鏡筒の軽量化及び低コスト化を図るためにレンズ鏡筒の構成部材が樹脂、すなわち非金属材料で形成されている実施形態について説明したが、本発明の技術思想はこれらの構成部材の一部が金属材料で形成されているレンズ鏡筒の場合でも有効であることは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 レンズ鏡筒
2 カメラボディ
3 第1レンズ群
4 第2レンズ群
5 フレキシブル回路基板
6 ブラシ部
7 コンタクトパッド
11 第1固定環
12 第2固定環
13 第3固定環
14 フォーカス環
21 レンズマウント
22 コンタクトピン
51 絶縁板
52 導電パターン
52a コードパターン
52b 回路パターン
52c 接地パターン
52d 配線パターン
53 電子部品
62 摺動ブラシ
R 内部空間
d1,d2 隙間
Lx レンズ光軸
図1
図2
図3
図4
図5