【実施例】
【0025】
(
参考例1)
4インチ(100mm)ウエハ用SiC単結晶インゴットから、約400μmの厚さでスライスし、ラッピングとダイヤモンド砥粒による通常のポリッシングを実施して、CMPを施す対象の基板を準備した。この基板のポリタイプは4H型、オフ角は4°である。このようにポリッシングを行った場合、表面の加工変質層の厚さは100nm程度以下であった。次いで、以下のようにしてCMPを実施した。
【0026】
研磨スラリーとしてシリカ等の研磨剤粒子及び酸を含むものを用い、加工圧やスラリーのpHを適宜調整して、研磨速度を100nm/hr.にして、基板の表面を厚さ100nm除去し(研磨量100nm)、かつ研磨傷も残らないようにCMPを行った。CMP終了後、共焦点顕微鏡(レーザテック社SICA61)を用いて、本
参考例で得られたSiC基板の表面のピットを観察し、その形状と深さを評価したところ、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下の範囲に該当する略円形状ピットの密度は0.8個/cm
2であった。
【0027】
次に、上記で得られたCMP後のSiC基板に対してエピタキシャル成長を行った。その手順としては、成長炉にSiC基板をセットし、成長炉内を真空排気した後、水素ガスを毎分150L導入しながら圧力を1.0×10
4Paに調整した。その後、圧力を一定に保ちながら成長炉の温度を1600℃まで上げ、SiH
4流量を毎分40cm
3、C
2H
4流量を毎分20cm
3、ドーピング用のN
2の流量を毎分1cm
3にしてエピタキシャル成長層を10μm成長した。成長後、水素ガスのみ流した状態で温度を下げ、常温まで下がった後、水素ガスの導入を止め、成長室内を真空排気し、不活性ガスを成長室に導入して、成長室を大気圧に戻してから、エピタキシャルSiCウエハを取り出した。
【0028】
このようにしてエピタキシャル成長を行った膜の欠陥数を上記共焦点顕微鏡によって評価したところ、キャロット欠陥密度は1個/cm
2であった。略円形状ピットの密度より、キャロット欠陥密度の方が大きいのは、モホロジー的特徴を伴わない通常のらせん転位から発生するキャロット欠陥も僅かではあるが存在したためである。三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.8個/cm
2であった。
【0029】
(
参考例2)
CMPの研磨速度を80nm/hr.として、研磨量を100nmにした以外は
参考例1と同様にして、
参考例2に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.6個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にしてエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.8個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.7個/cm
2であった。
【0030】
(
参考例3)
CMPの研磨速度を50nm/hr.として、研磨量を100nmにした以外は
参考例1と同様にして、
参考例3に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.4個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にしてエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.6個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.4個/cm
2であった。
【0031】
(
参考例4)
CMPの研磨速度を30nm/hr.として、研磨量を100nmにした以外は
参考例1と同様にして、
参考例4に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.2個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にしてエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.5個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.3個/cm
2であった。
【0032】
(
参考例5)
CMPを実施する対象の基板のオフ角が2°である以外は
参考例1と同様にして、
参考例5に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.7個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は1個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.9個/cm
2であった。
【0033】
(
参考例6)
CMPを実施する対象の基板のオフ角が0.5°である以外は
参考例1と同様にして、
参考例6に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.8個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は1.1個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は2個/cm
2であった。
【0034】
(実施例7)
CMP終了までは
参考例1と同様にしてSiC基板を得た後、更に、RIE装置を用いて、Arガスを流してSiC基板の表面のエッチングを行った。RIE(反応性イオンエッチング)の条件としては、エッチング圧力が20Pa、Arガス流量が20sccm、投入する高周波電力は0.1W/cm
2であり、厚さ約20nmのエッチングを行った。
【0035】
上記で得られた実施例7に係るSiC基板について、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.8個/cm
2であり、
参考例1と変わらなかったが、このようにして得たSiC基板上に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.6個/cm
2であった。これは、RIEによって略円形状ピットの段差及び大きさが低減するとともに、ピット部分の結晶性の乱れが除去されたことで、このピットがキャロット欠陥の発生起点となる確率が抑えられたためと考えられ、また、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.3個/cm
2であった。
【0036】
(実施例8)
CMP終了までは
参考例2と同様にしてSiC基板を得た後、更に、RIE装置を用いて、Heガスを流してSiC基板の表面のエッチングを行った。RIEの条件としては、エッチング圧力が20Pa、Heガス流量が20sccm、投入する高周波電力は0.1W/cm
2であり、厚さ約20nmのエッチングを行った。
【0037】
上記で得られた実施例8に係るSiC基板について、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.6個/cm
2であり、
参考例2と変わらなかったが、このようにして得た基板上に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.4個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.1個/cm
2であった。
【0038】
(
参考例9)
CMPの研磨速度を100nm/hr.として、研磨量を500nmにした以外は
参考例1と同様にして、
参考例9に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.7個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は0.9個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.8個/cm
2であった。
【0039】
(
参考例10)
CMPの研磨速度を80nm/hr.として、研磨量を500nmにした以外は
参考例1と同様にして、
参考例10に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は0.6個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は1.1個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は1.7個/cm
2であった。
【0040】
(比較例1)
CMPの研磨速度を150nm/hr.として、研磨量を100nmにした以外は
参考例1と同様にして、比較例1に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は2.5個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は2.8個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は3.5個/cm
2であった。
【0041】
(比較例2)
CMPの研磨速度を300nm/hr.として、研磨量を100nmにした以外は
参考例1と同様にして、比較例2に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は4個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は4.3個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は5.2個/cm
2であった。
【0042】
(比較例3)
CMPの研磨速度を500nm/hr.として、研磨量を500nmにした以外は
参考例1と同様にして、比較例3に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は5.5個/cm
2であった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は5.8個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は6.5個/cm
2であった。
【0043】
(比較例4)
CMPの研磨速度を100nm/hr.として、研磨量を50nmにした以外は
参考例1と同様にして、比較例4に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は2.1個/cm
2であり、研磨速度が小さくても研磨量が少ないとポリッシング後の加工変質層の除去量が不十分であるため、所定の略円形状ピットの密度は減らなかった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は2.5個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は3.5個/cm
2であった。
【0044】
(比較例5)
CMPの研磨速度を80nm/hr.として、研磨量を30nmにした以外は
参考例1と同様にして、比較例5に係るSiC基板を得た。CMP後のSiC基板の表面において、直径が0.5μm以上1.5μm以下、深さが50nm以上500nm以下である略円形状ピットの密度は2.7個/cm
2であり、研磨速度が小さくても研磨量が少ないとポリッシング後の加工変質層の除去量が不十分であるため、所定の略円形状ピットの密度は減らなかった。次に、
参考例1と同様にエピタキシャル成長を実施し、成長後のエピタキシャル膜の欠陥数を評価したところ、キャロット欠陥密度は3.2個/cm
2であり、三角形欠陥やコメット欠陥等を含めたエピタキシャル欠陥全体の密度は4.1個/cm
2であった。