(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6237852
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】アクティブフィルタの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/42 20070101AFI20171120BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20171120BHJP
H02M 1/12 20060101ALI20171120BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20171120BHJP
H02J 3/01 20060101ALI20171120BHJP
H02J 3/16 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H02M1/42
H02M7/48 Y
H02M1/12
H02J3/18 142
H02J3/01
H02J3/16
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-192802(P2016-192802)
(22)【出願日】2016年9月30日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 玲二
【審査官】
小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−282365(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/171233(WO,A1)
【文献】
特開平09−056086(JP,A)
【文献】
特開2003−324847(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/051500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/42
H02J 3/01
H02J 3/16
H02J 3/18
H02M 1/12
H02M 7/48
H02P 21/00
H02P 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、上記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように上記設置点(P)へ補償電流(Ic)を供給するアクティブフィルタ(6)の動作を制御する制御装置(71,72,73)であって、
上記負荷電流(Io)をd軸電流成分及びq軸電流成分に変換するdq変換器(703)と、
上記dq変換器(703)のd軸電流成分出力及びq軸電流成分出力のうち少なくともd軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(704,705)と、
上記ハイパスフィルタ(704)のd軸電流成分出力と、上記dq変換器(703)のq軸電流成分出力又は上記ハイパスフィルタ(705)のq軸電流成分出力とにそれぞれ補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を電流指令値(id*,iq*)として出力する乗算器(716,717)と、
上記乗算器(716,717)の出力と上記補償電流(Ic)の検出結果とに基づいて、上記アクティブフィルタ(6)が出力すべき電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)を演算する演算器(712,713,714,715)と、
上記電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて上記アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号(G)を生成する駆動信号生成回路(720)とを備え、
上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)は、d軸電流の補償率(Kd)よりも大きい範囲で調節可能であることを特徴とするアクティブフィルタの制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記負荷電流(Io)の大きさに応じて、上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節されることを特徴とするアクティブフィルタの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記アクティブフィルタ(6)を構成するデバイスのケース温度(tc)に応じて、上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節されることを特徴とするアクティブフィルタの制御装置。
【請求項4】
交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、上記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように上記設置点(P)へ補償電流(Ic)を供給するアクティブフィルタ(6)の動作を制御する制御装置(71,72,73)であって、
上記負荷電流(Io)をd軸電流成分及びq軸電流成分に変換するdq変換器(703)と、
上記dq変換器(703)のd軸電流成分出力及びq軸電流成分出力のうち少なくともd軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(704,705)と、
上記ハイパスフィルタ(704)のd軸電流成分出力と、上記dq変換器(703)のq軸電流成分出力又は上記ハイパスフィルタ(705)のq軸電流成分出力とにそれぞれ補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を電流指令値(id*,iq*)として出力する乗算器(716,717)と、
上記乗算器(716,717)の出力と上記補償電流(Ic)の検出結果とに基づいて、上記アクティブフィルタ(6)が出力すべき電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)を演算する演算器(712,713,714,715)と、
上記電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて上記アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号(G)を生成する駆動信号生成回路(720)とを備え、
上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)と、上記乗算器(716,717)におけるd軸電流の補償率(Kd)との各々が個別に調節可能であることを特徴とするアクティブフィルタの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブフィルタの制御装置に関し、特にアクティブフィルタによる高調波電流補償技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電源から供給を受けてAC/AC変換器等の負荷に流れる負荷電流は、高調波電流の成分を含んでいる。この高調波電流による問題を解決するため、負荷に対して並列形のアクティブフィルタを設けて、負荷電流の高調波成分が交流電源へ流出しないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ある従来技術によれば、アクティブフィルタの容量を必要最小限に抑制するために、系統母線を介して系統電源に接続した負荷に発生する高調波電流から相異なる次数の高調波成分の発生量を検出し、上記各次高調波成分のうち最も発生率の高い次数の高調波成分を基準とし、その基準次数の高調波成分に基づいて各次高調波成分ごとに所定の相互比率を設定し、上記各次高調波成分の発生量と上記各次高調波成分ごとの相互比率とによる演算処理でもって、アクティブフィルタから出力される補償量が、高調波ガイドラインにより規制される高調波成分の上限量(規格値)を上記各次高調波成分の発生量から差し引いた目標量と一致するように制御する(特許文献2参照)。
【0004】
一方、電解コンデンサレスインバータが負荷として採用された場合、電源インピーダンスが大きくなるに伴ってアクティブフィルタの補償電流制御が電解コンデンサレスインバータの共振周波数で振動的となるため、アクティブフィルタの制御によって、共振の抑制を行う必要がある。例えば、アクティブフィルタの制御装置は、アクティブフィルタの設置点電圧に対してあるゲインでの増幅を伴った微分値を、補償電流と負荷電流とに基づいて得られる値から減じることで、アクティブフィルタが出力する電圧の指令値たる電圧指令値を得る(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−207798号公報
【特許文献2】特開平10−210658号公報
【特許文献3】特開2016−116330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の技術では、電解コンデンサレスインバータが負荷として採用され、かつ電源インピーダンスが大きい場合の共振を、効果的に抑制することができない。
【0007】
また、上記特許文献3の技術では、アクティブフィルタの容量低減を実現することができない。
【0008】
本発明の目的は、高調波電流を規格値以下に抑えつつ、アクティブフィルタの容量低減と、電源インピーダンスが大きい場合の共振の抑制とを両立させ得る、アクティブフィルタの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、
交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、上記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように上記設置点(P)へ補償電流(Ic)を供給するアクティブフィルタ(6)の動作を制御する制御装置(71,72,73)において、
上記負荷電流(Io)をd軸電流成分及びq軸電流成分に変換するdq変換器(703)と、
上記dq変換器(703)のd軸電流成分出力及びq軸電流成分出力のうち少なくともd軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(704,705)と、
上記ハイパスフィルタ(704)のd軸電流成分出力と、上記dq変換器(703)のq軸電流成分出力又は上記ハイパスフィルタ(705)のq軸電流成分出力とにそれぞれ補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を電流指令値(id
*,iq
*)として出力する乗算器(716,717)と、
上記乗算器(716,717)の出力と上記補償電流(Ic)の検出結果とに基づいて、上記アクティブフィルタ(6)が出力すべき電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)を演算する演算器(712,713,714,715)と、
上記電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて上記アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号(G)を生成する駆動信号生成回路(720)とを備え、
上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)
は、d軸電流の補償率(Kd)よりも大きい範囲で調節可能であることを特徴とする。
【0010】
この構成では、アクティブフィルタ(6)により高調波成分の低減だけでなく、基本波力率の改善を行う場合には、dq変換器(703)のq軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(705)を設けずに、dq変換器(703)のq軸電流成分出力に補償率(Kq)を乗算した結果を電流指令値(iq
*)として出力することで、q軸電流の基本波成分及び高調波成分の補償を行う。
【0011】
また、この構成では、dq変換器(703)及びハイパスフィルタ(704,705)の出力であるd軸高調波電流及びq軸高調波電流のうち、特にq軸高調波電流に乗算される補償率(Kq)を1.0よりも小さい値に調節する。電解コンデンサレスインバータの高調波電流はq軸電流成分が支配的である点に鑑み、主としてq軸電流の補償率(Kq)を調節することで、高調波電流を規格値以下に抑えつつ、電源インピーダンスが大きい場合の共振を抑制する。逆に、d軸電流の補償率(Kd)を小さくしても、交流電源(1)へ流出する高調波電流の増加は小さいので、d軸電流の補償率(Kd)をできる限り小さく設定しておくことで、アクティブフィルタ(6)の容量を極力低減する。
【0012】
また、第2の発明は、
第1の発明において、
上記負荷電流(Io)の大きさに応じて、上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節されることを特徴とする。
【0013】
この構成では、例えば軽負荷時、すなわち負荷電流(Io)が小さい場合には、q軸電流の補償率(Kq)が小さくなるように調節される。
【0014】
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明において、
上記アクティブフィルタ(6)を構成するデバイスのケース温度(tc)に応じて、上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節されることを特徴とする。
【0015】
この構成では、例えばケース温度(tc)が所定の温度以上になれば、q軸電流の補償率(Kq)が格段に小さくなるように調節される。
【0016】
また、第4の発明は、
交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、上記負荷(2)に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように上記設置点(P)へ補償電流(Ic)を供給するアクティブフィルタ(6)の動作を制御する制御装置(71,72,73)において、
上記負荷電流(Io)をd軸電流成分及びq軸電流成分に変換するdq変換器(703)と、
上記dq変換器(703)のd軸電流成分出力及びq軸電流成分出力のうち少なくともd軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(704,705)と、
上記ハイパスフィルタ(704)のd軸電流成分出力と、上記dq変換器(703)のq軸電流成分出力又は上記ハイパスフィルタ(705)のq軸電流成分出力とにそれぞれ補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を電流指令値(id*,iq*)として出力する乗算器(716,717)と、
上記乗算器(716,717)の出力と上記補償電流(Ic)の検出結果とに基づいて、上記アクティブフィルタ(6)が出力すべき電圧(Vr)の指令値たる電圧指令値(Vid,Viq)を演算する演算器(712,713,714,715)と、
上記電圧指令値(Vid,Viq)に基づいて上記アクティブフィルタ(6)を駆動制御する信号(G)を生成する駆動信号生成回路(720)とを備え、
上記乗算器(716,717)におけるq軸電流の補償率(Kq)
と、上記乗算器(716,717)におけるd軸電流の補償率(Kd)との各々が個別に調節可能であることを特徴とする。
【0017】
この構成では、q軸電流の補償率(Kq)と、d軸電流の補償率(Kd)との双方が調節可能とされる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、高調波電流を規格値以下に抑えつつ、アクティブフィルタ(6)の容量低減と、電源インピーダンスが大きい場合の共振の抑制とを両立させることができる。
【0019】
第2の発明によれば、負荷電流(Io)の大きさに応じてq軸電流の補償率(Kq)を最適に調節することで、軽負荷時のアクティブフィルタ(6)の損失を抑えつつ、高調波規制への適合が可能となる。
【0020】
第3の発明によれば、デバイスのケース温度(tc)が所定の温度以上になったことを条件として、q軸電流の補償率(Kq)を小さくすることで、デバイスの熱破壊を防止することができる。
【0021】
第4の発明によれば、q軸電流の補償率(Kq)と、d軸電流の補償率(Kd)との双方を調節可能とすることで、制御の自由度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態1のアクティブフィルタの制御装置の構成を、その制御対象の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【
図2】
図2は、電源インピーダンスが小さい場合に、負荷電流に含まれる高調波電流の補償にあたり、d軸電流の補償率とq軸電流の補償率とを互いに同一としつつ、両補償率を変化させたときの、電源電流に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
【
図3】
図3は、電源インピーダンスが大きい場合に、d軸電流の補償率とq軸電流の補償率とをともに0.8としたときの、
図1中の各部の電流波形図である。
【
図4】
図4は、電源インピーダンスが小さい場合に、q軸電流の補償率を0.8に調節しつつ、d軸電流の補償率を変化させたときの、電源電流に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、電源インピーダンスが大きい場合に、q軸電流の補償率を0.8とし、かつd軸電流の補償率を0.6としたときの、
図1中の各部の電流波形図である。
【
図6】
図6は、実施形態2のアクティブフィルタの制御装置の構成を、その制御対象の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態2にて負荷電流の大きさに応じてq軸電流の補償率が調節されることを示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に従った補償率調節のもとで負荷の大きさを変化させた場合の、電源電流に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態3のアクティブフィルタの制御装置の構成を、その制御対象の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
《発明の実施形態1》
図1は、実施形態1のアクティブフィルタの制御装置(71)の構成を、その制御対象たるアクティブフィルタ(6)の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【0025】
〈全体構成〉
三相の交流電源(1)は電源電流(Is)を出力する。アクティブフィルタ(6)は交流電源(1)に対し、三相の系統連系リアクトル(4)を介して、負荷(2)と並列に接続される。アクティブフィルタ(6)は、三相の電圧(Vr)を系統連系リアクトル(4)に印加することで、系統連系リアクトル(4)に三相の補償電流(Ic)を出力する。
【0026】
ここでは補償電流(Ic)についてアクティブフィルタ(6)から交流電源(1)へ向かう方向を正にとっている。よって交流電源(1)から流れる三相の電源電流(Is)と補償電流(Ic)の和が負荷(2)へと入力する三相の負荷電流(Io)であるとして説明する。
【0027】
交流電源(1)の電源インピーダンスをリアクトル(3)として示した。リアクトル(3)には電源電流(Is)が流れることにより三相の電圧が発生する。リアクトル(3)が無視できるときに交流電源(1)が出力する三相の電圧(Vs)を導入すると、リアクトル(3)の負荷(2)側の三相の電圧(Vi)は、電圧(Vs)からリアクトル(3)の両端の電圧を差し引いた電圧として把握される。つまり交流電源(1)が実質的に出力するのは電圧(Vs)ではなく、電圧(Vi)である。
【0028】
なお、リアクトル(3)の負荷(2)側は、負荷(2)と、系統連系リアクトル(4)を介してアクティブフィルタ(6)とが接続されることから、設置点(P)として示した。よって電圧(Vi)は、以降、設置点電圧(Vi)と称することがある。これに対して、電圧(Vs)を、以降、電源電圧(Vs)と称することがある。
【0029】
なお、
図1では交流電源(1)、リアクトル(3)、系統連系リアクトル(4)を三相分纏めて一相として表現しているので設置点(P)も1つの点として示されているが、実際には相毎に1つずつ存在し、合計3個存在する。
【0030】
〈アクティブフィルタの構成〉
アクティブフィルタ(6)は例えばインバータ(61)とコンデンサ(62)とを備える。インバータ(61)は補償電流(Ic)を入出力することにより、d軸電流はコンデンサ(62)を直流電圧(Vdc)に充放電し、q軸電流はコンデンサ(62)を介さずにインバータ(61)の内部で線間を還流する。
【0031】
例えばインバータ(61)は電圧形インバータであり、3つの電流経路がコンデンサ(62)に対して並列に接続され、各々の電流経路において2つのスイッチング素子が設けられる。
【0032】
〈アクティブフィルタの制御装置の構成〉
制御装置(71)は交流電圧検出器(701)、位相検出部(702)、dq変換器(703,711)、ハイパスフィルタ(704,705)、乗算器(716,717)、減算器(707,712,713)、比例積分制御器(708,714,715)、加算器(709)、及び駆動信号生成回路(720)を有している。
【0033】
交流電圧検出器(701)は三相の設置点電圧(Vi)、より詳細にはそれらの相間電圧を検出し、これを位相検出部(702)に与える。位相検出部(702)は設置点電圧(Vi)の位相(ωt)を検出し、これをdq変換器(703,711)に伝える。交流電圧検出器(701)は、フォトカプラを用いて設置点電圧(Vi)のゼロクロス点を検出する構成としてもよい。
【0034】
dq変換器(703)は検出された負荷電流(Io)を三相/二相変換する。d軸及びq軸は位相検出部(702)で検出された位相と同期して回転する回転座標系である。
【0035】
この際、負荷電流(Io)は三相であるので、そのうちの二相分の負荷電流(ir,it)が検出されれば負荷電流(Io)のd軸成分及びq軸成分を得ることができる。
図1ではそのように二相分の負荷電流(ir,it)が検出される場合を例示している。
【0036】
dq変換器(711)は検出された補償電流(Ic)を三相/二相変換してd軸電流(id)、q軸電流(iq)を得る。この際、補償電流(Ic)も三相であるので、そのうちの二相分が検出されればd軸電流(id)、q軸電流(iq)を得ることができる。
図1ではそのように二相分の電流が検出される場合を例示している。
【0037】
ハイパスフィルタ(704,705)はそれぞれ、負荷電流(Io)のd軸成分及びq軸成分の直流成分を除去する。
【0038】
負荷電流(Io)のうち、位相(ωt)と同期する成分は、d軸成分、q軸成分のいずれにおいても直流分として現れる。つまり負荷電流(Io)に高調波成分が無ければd軸成分、q軸成分は直流となる。よって上記ハイパスフィルタ(704,705)は、負荷電流(Io)のd軸成分、q軸成分のうち、高調波成分のみを出力する。
【0039】
乗算器(716,717)は、ハイパスフィルタ(704,705)の出力にそれぞれ調節可能な補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を出力する。
【0040】
なお、アクティブフィルタ(6)により高調波成分の低減だけでなく、基本波力率の改善を行う場合には、dq変換器(703)のq軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(705)を設けずに、dq変換器(703)のq軸電流成分出力に含まれる基本波成分及び高調波成分を乗算器(717)に入力する構成とすればよい。
【0041】
補償電流(Ic)のd軸電流(id)、q軸電流(iq)は、位相のずれなく負荷電流(Io)の高調波成分と一致すれば、負荷電流(Io)の高調波成分を負担することになり、電源電流(Is)には高調波成分が発生しない。したがって乗算器(716,717)は、後述するd軸における修正を無視すれば、補償電流(Ic)のd軸電流(id)、q軸電流(iq)の指令値を出力すると言える。
【0042】
さて、q軸電流(iq)の指令値(iq
*)はq軸側の乗算器(717)から得ることができる。他方、d軸電流(id)の指令値(id
*)はd軸側の乗算器(716)の出力に対して直流電圧(Vdc)の変動に対応するための修正が行われる。具体的には下記のように修正される。
【0043】
減算器(707)はコンデンサ(62)が支える直流電圧(Vdc)とその指令値(Vdc
*)との偏差を求める。比例積分制御器(708)は減算器(707)から得られた偏差に比例積分制御を行って修正値を求める。当該修正値はd軸側の乗算器(716)の出力と加算器(709)によって加算される。これにより、直流電圧(Vdc)の変動の影響が小さな指令値(id
*)が、加算器(709)から得られる。
【0044】
減算器(712,713)は、それぞれ偏差(Δid,Δiq)を出力する。d軸電流の偏差(Δid)はd軸電流(id)を指令値(id
*)から差し引いて求められる。q軸電流の偏差(Δiq)はq軸電流(iq)を指令値(iq
*)から差し引いて求められる。
【0045】
d軸側及びq軸側の比例積分制御器(714,715)は、それぞれ偏差(Δid,Δiq)に対して比例積分制御を行って比例演算結果たる値を電圧指令値(Vid,Viq)として出力する。
【0046】
ここでは交流電源(1)が供給する設置点電圧(Vi)は三相電圧なので、電流指令値(id
*,iq
*)は、定常状態においては設置点電圧(Vi)の周期の1/6倍の周期を有して設置点電圧(Vi)と同期する。
【0047】
駆動信号生成回路(720)は、電圧指令値(Vid,Viq)に基づいてアクティブフィルタ(6)を駆動制御する駆動信号(G)を生成する。かかる機能を有する駆動信号生成回路(720)の構成は周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
〈負荷の構成〉
本実施形態での例示では、負荷(2)はインバータ(23)と、インバータ(23)で制御されて冷媒(不図示)を圧縮する圧縮機(24)とを含む空気調和機である。負荷(2)は更に、インバータ(23)へと直流電源を供給するためにコンバータ(21)及びコンバータ(21)とインバータ(23)との間で並列に接続して設けられるローパスフィルタ(22)も含んでいる。
【0049】
ローパスフィルタ(22)はリアクトル(221)とコンデンサ(222)によってチョークインプット型のフィルタとして実現される。具体的にはコンデンサ(222)は、電解コンデンサよりも小容量のフィルムコンデンサであって、コンバータ(21)とインバータ(23)との間の直流リンクにおいてインバータ(23)と並列に接続されている。またリアクトル(221)はコンデンサ(222)よりもコンバータ(21)側において直流リンクの一方の直流母線に直列に接続して設けられている。
【0050】
〈その他の構成〉
補償電流(Ic)のリップルを除去する観点から、
図1に示すように、リアクトル(91)とコンデンサ(92)からなるローパスフィルタ(9)が、例えば系統連系リアクトル(4)と交流電圧検出器(701)との間に設けられることが望ましい。ここではローパスフィルタ(9)は一相分のみを図示しているが、実際には三相分設けられる。
【0051】
〈アクティブフィルタの制御装置の動作〉
アクティブフィルタ(6)は、交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、負荷(2)に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように設置点(P)へ補償電流(Ic)を供給する。補償が完全であると、電源電流(Is)は高調波成分を含まない正弦波状の電流波形を有することとなる。制御装置(71)は、当該アクティブフィルタ(6)の動作を制御するものである。
【0052】
図1の制御装置(71)では、d軸電流及びq軸電流の補償率をそれぞれKd、Kqとして、d軸電流指令値及びq軸電流指令値(id
*,iq
*)を設定する。
【0053】
図2は、リアクトル(3)が一相当たり50μHであって電源インピーダンスが小さい場合に、負荷電流(Io)に含まれる高調波電流の補償にあたり、d軸電流の補償率(Kd)とq軸電流の補償率(Kq)とを互いに同一としつつ、両補償率(Kd,Kq)を1.0から0.6まで変化させたときの、電源電流(Is)に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
【0054】
図2によれば、Kd=Kq=0.7〜0.6とする場合には例示した高調波規制の規格値(規格IEC61000-3-2 ClassAによる)を満たせない高調波次数が存在するが、Kd=Kq=1.0〜0.8とする場合には全高調波次数で規格値を満たすことが判る。例えばd軸電流及びq軸電流の補償率(Kd,Kq)をともに0.8とすると、アクティブフィルタ(6)の装置容量を20%低減できる。
【0055】
図3は、リアクトル(3)が一相当たり1mHであって電源インピーダンスが大きい場合に、d軸電流及びq軸電流の補償率(Kd,Kq)をともに0.8としたときの、
図1中の各部の電流波形図である。
図3によれば、共振に起因した脈動が電源電流(Is)に生じている。このように、電源インピーダンスが大きくなるにつれて、共振が抑制できない場合があることが判る。
【0056】
図4は、リアクトル(3)が一相当たり50μHであって電源インピーダンスが小さい場合に、q軸電流の補償率(Kq)を0.8に調節しつつ、d軸電流の補償率(Kd)を1.0から0.6まで変化させたときの、電源電流(Is)に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
【0057】
図4によれば、Kq=0.8とする限り、Kd=1.0〜0.6のいずれでも、全高調波次数で規格値を満たすことが判る。
【0058】
図5は、リアクトル(3)が一相当たり1mHであって電源インピーダンスが大きい場合に、q軸電流の補償率(Kq)を0.8とし、かつd軸電流の補償率(Kd)を0.6としたときの、
図1中の各部の電流波形図である。
図5によれば、電源電流(Is)における共振が抑制できていることが判る。しかも、q軸電流の補償率(Kq)及びd軸電流の補償率(Kd)がいずれも1.0より低く抑えられているので、アクティブフィルタ(6)の装置容量が低減される。
【0059】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態によれば、高調波電流を規格値以下に抑えつつ、アクティブフィルタ(6)の容量低減と、電源インピーダンスが大きい場合の共振の抑制とを両立させることができる。
【0060】
《発明の実施形態2》
図6は、実施形態2のアクティブフィルタの制御装置(72)の構成を、その制御対象たるアクティブフィルタ(6)の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【0061】
〈アクティブフィルタの制御装置の構成〉
図6の制御装置(72)では、負荷電流(Io)の大きさを表すdq変換器(703)の出力に応じて、乗算器(717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節される。その他の点は、
図1の制御装置(71)と同様である。
【0062】
〈アクティブフィルタの制御装置の動作〉
図7は、実施形態2にて負荷電流(Io)の大きさに応じてq軸電流の補償率(Kq)が調節されることを示す図である。
図7によれば、軽負荷時、すなわち負荷電流(Io)が小さい場合には、q軸電流の補償率(Kq)が小さくなるように調節される。例えば負荷電流(Io)の大きさが2.5Aである場合には、q軸電流の補償率(Kq)を0.6まで下げる。他方、d軸電流の補償率(Kd)は、負荷電流(Io)の大きさによらず、ほぼ一定の値0.6に調節される。
【0063】
図8は、
図7に従った補償率調節のもとで負荷の大きさを変化させた場合の、電源電流(Is)に含まれる高調波電流の変化の様子を示す図である。
図8によれば、2.5kWから10kWまでのいずれの負荷でも、全高調波次数で規格値を満たすことが判る。
【0064】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態によれば、負荷電流(Io)の大きさに応じてq軸電流の補償率(Kq)を最適に調節することで、軽負荷時に余計な補償をしないことにより、アクティブフィルタ(6)の損失を抑えつつ、高調波規制への適合が可能となる。
【0065】
《発明の実施形態3》
図9は、実施形態3のアクティブフィルタの制御装置(73)の構成を、その制御対象たるアクティブフィルタ(6)の構成及びその周辺の構成とともに示すブロック図である。
【0066】
〈アクティブフィルタの制御装置の構成〉
図9の制御装置(73)では、アクティブフィルタ(6)を構成するデバイスのケース温度(tc)に応じて、乗算器(717)におけるq軸電流の補償率(Kq)が調節される。その他の点は、
図1の制御装置(71)と同様である。
【0067】
〈アクティブフィルタの制御装置の動作〉
実施形態3では、ケース温度(tc)が所定の温度以上になれば、q軸電流の補償率(Kq)が格段に小さくなるように調節される。
【0068】
〈本実施形態における効果〉
本実施形態によれば、デバイスのケース温度(tc)が所定の温度以上になったことを条件として、q軸電流の補償率(Kq)を小さくすることで、デバイスの熱破壊を防止することができる。
【0069】
《その他の実施形態》
実施形態1〜3ではd軸電流の補償率(Kd)とq軸電流の補償率(Kq)との双方を調節可能としたが、例えばKd=0.6を満たすようにd軸電流の補償率(Kd)を固定しつつ、q軸電流の補償率(Kq)のみを調節可能とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、高調波電流を規格値以下に抑えつつ、アクティブフィルタの容量低減と、電源インピーダンスが大きい場合の共振の抑制とを両立させ得る、アクティブフィルタの制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 交流電源
2 負荷
4 系統連系リアクトル
6 アクティブフィルタ
71,72,73 アクティブフィルタの制御装置
704,705 ハイパスフィルタ
712,713 減算器(演算器)
714,715 比例積分制御器(演算器)
716,717 乗算器
720 駆動信号生成回路
P 設置点
【要約】
【課題】高調波電流を規格値以下に抑えつつ、アクティブフィルタの容量低減と、電源インピーダンスが大きい場合の共振の抑制とを両立させ得る、制御装置を提供する。
【解決手段】交流電源(1)に対して設置点(P)において負荷(2)と並列に接続され、負荷に流れる負荷電流(Io)の高調波成分を補償するように設置点へ補償電流(Ic)を供給するアクティブフィルタ(6)の動作を制御する制御装置(71)において、負荷電流(Io)をd軸電流成分及びq軸電流成分に変換するdq変換器(703)と、dq変換器の少なくともd軸電流成分出力から高調波成分を抽出するハイパスフィルタ(704,705)と、ハイパスフィルタのd軸電流成分出力と、dq変換器又はハイパスフィルタのq軸電流成分出力とにそれぞれ補償率(Kd,Kq)を乗算した結果を電流指令値として出力する乗算器(716,717)とを設け、乗算器におけるq軸電流の補償率(Kq)を調節可能とする。
【選択図】
図1