(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1主面と第2主面とを有する振動板と、前記振動板の前記第1主面および前記第2主面の少なくとも一方の主面に設けられ、前記振動板を同心円状に屈曲振動させる駆動体と、を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータとともに前記振動板の厚み方向から挟んで第1ブロア室を構成し、前記第1ブロア室の中央において前記第1ブロア室の外部と連通させる第1通気孔を有する筐体と、を備え、
前記振動板および前記筐体の少なくとも一方は、円環状に配置された複数の開口部と、該複数の開口部によって囲まれる内側の箇所を支持するための梁部と、を有し、
前記複数の開口部によって囲まれる内側の空間が前記第1ブロア室を構成し、
前記第1ブロア室の中心軸から前記第1ブロア室の外周までの最短距離aと前記振動板の共振周波数fとは、前記第1ブロア室を通過する気体の音速をcとし、第1種ベッセル関数J0(k0)=0の関係を満たす値をk0としたとき、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす、ブロア。
前記振動板は、前記筐体とともに前記振動板の厚み方向から挟んで前記第1ブロア室を構成する振動部と、前記振動部の周囲を囲み、前記筐体に接合する枠部と、前記振動部と前記枠部とを連結し、前記枠部に対して前記振動部を弾性支持する複数の連結部と、を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のブロア。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のポンプでは、流入口の径が小さい場合、流体の流量が十分に得られないという問題がある。また、流入口の径が小さい場合、粉塵等が流入口に詰まる可能性がある。
【0007】
一方、流入口の径が大きい場合、流入口の範囲が空洞の圧力振動の節から遠く離れた箇所まで広がることになり、流入口の圧力が常に一定せず、変化してしまう。そのため、特許文献1のポンプでは、流入口の径が大きい場合、吐出圧力や吐出流量が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、十分な流量を確保するために大きな開口部を設けても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できるブロアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブロアは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0010】
本発明のブロアは、アクチュエータと、筐体と、を備えている。アクチュエータは、振動板と、駆動体と、を有する。振動板は、第1主面と第2主面とを有する。駆動体は、振動板の第1主面および第2主面の少なくとも一方の主面に設けられている。また、駆動体は、振動板を同心円状に屈曲振動させる。
【0011】
筐体は、アクチュエータとともに振動板の厚み方向から挟んで第1ブロア室を構成する。また、筐体は、第1ブロア室の中央を第1ブロア室の外部と連通させる第1通気孔を有する。
【0012】
振動板および筐体の少なくとも一方は、第1ブロア室の外周を第1ブロア室の外部と連通させる開口部を有する。
【0013】
第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周までの最短距離aと振動板の共振周波数fとは、第1ブロア室を通過する気体の音速をcとし、第1種ベッセル関数J
0(k
0)=0の関係を満たす値をk
0としたとき、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。
【0014】
この構成において、振動板および筐体は、第1ブロア室が最短距離aとなるよう形成されている。駆動体は、振動板を共振周波数fで振動させる。振動板の共振周波数fは、振動板の厚み、振動板の材料などによって定まる。
【0015】
ここで、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の圧力振動の節とほぼ一致する。
【0016】
そのため、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、この構成のブロアは、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0017】
また、この構成では、第1ブロア室の外周が第1ブロア室の圧力振動の節となるため、第1ブロア室の外周の圧力は常に一定となる。例えば、気体として空気を使用する場合、第1ブロア室の外周の圧力は常に大気圧となる。
【0018】
そのため、第1ブロア室の外周が特許文献1の第1通気孔より大きな開口部によって第1ブロア室の外部と連通していても、この構成のブロアは、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0019】
したがって、この構成のブロアは、十分な流量を確保するために大きな開口部を設けても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0020】
また、この構成のブロアは、大きな開口部によって、粉塵等が開口部に詰まることを防止できる。すなわち、この構成のブロアは、吐出圧力や吐出流量が粉塵等によって低下することを防止できる。
【0021】
なお、最短距離aと共振周波数fとが0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たすことが、さらに好ましい。
【0022】
また、筐体の第1通気孔には、第1ブロア室の外部から内部へ気体が流れることを防ぐ第1の弁が設けられていることが好ましい。
【0023】
この構成のブロアは、第1ブロア室の外部から第1通気孔を介して内部へ気体が流れることを弁によって防ぐことができる。そのため、この構成のブロアは、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0024】
また、第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周までの範囲において、振動板の振動変位のゼロ交差点の個数は、第1ブロア室の圧力変化のゼロ交差点の個数と一致することが好ましい。ここで、第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周までに対応する振動板の各点は、振動によって変位する。また、第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周にかけて、第1ブロア室の各点の圧力は、振動板の振動によって変化する。
【0025】
この構成では、振動板の振動時において、振動板の各点の変位分布が、第1ブロア室の各点の圧力変化分布に近い分布となる。すなわち、振動板の振動時において、振動板の各点は、第1ブロア室の各点の圧力変化に合わせて、変位する。
【0026】
よって、この構成のブロアは、振動板の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、第1ブロア室の気体に伝えることができる。したがって、この構成のブロアは、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0027】
なお、第1ブロア室の各点の圧力変化分布u(r)は、第1ブロア室の中心軸からの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0028】
また、振動板は、筐体とともに振動板の厚み方向から挟んで第1ブロア室を構成する振動部と、振動部の周囲を囲み、筐体に接合する枠部と、振動部と枠部とを連結し、枠部に対して振動部を弾性支持する複数の連結部と、を有することが好ましい。
【0029】
この構成では、振動部は複数の連結部で枠部に対して柔軟に弾性支持されており、振動部の屈曲振動は殆ど妨げられない。このため、本発明のブロアでは、振動部の屈曲振動に伴う損失が少なくなる。
【0030】
また、開口部は、振動板の振動の節の内、最も外側の節と枠部との間に位置する振動板の領域に形成されていることが好ましい。
【0031】
振動部は複数の連結部で枠部に対して柔軟に弾性支持されているため、振動部の枠部側の端も自由振動する。この構成では、開口部が前記領域に形成されているため、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の外周を構成する。すなわち、第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周までの最短距離aは、開口部によって規定される。
【0032】
したがって、この構成のブロアは、振動板が振動部と枠部と連結部とを有する態様であっても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0033】
また、開口部は、振動板の振動の節の内、最も外側の節と枠部との間に位置する振動板の領域と対向する筐体の領域に形成されていることが好ましい。
【0034】
振動部は複数の連結部で枠部に対して柔軟に弾性支持されているため、振動部の枠部側の端も自由振動する。この構成では、開口部が前記領域に形成されているため、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の外周を構成する。すなわち、第1ブロア室の中心軸から第1ブロア室の外周までの最短距離aは、開口部によって規定される。
【0035】
したがって、この構成のブロアは、振動板が振動部と枠部と連結部とを有する態様であっても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0036】
また、駆動体は、圧電体であることが好ましい。
【0037】
また、筐体は、振動板の第2主面に対向し、振動板の屈曲振動に伴って屈曲振動する第1可動部を有することが好ましい。
【0038】
この構成では、振動板の振動に伴い第1可動部が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本発明のブロアは、吐出圧力と吐出流量をさらに増加させることができる。
【0039】
また、筐体は、アクチュエータとともに振動板の厚み方向から挟んで第2ブロア室を構成し、第2ブロア室の中央を第2ブロア室の外部と連通させる第2通気孔を有し、
振動板は、第1ブロア室の外周を第2ブロア室の外周と連通させる開口部を有し、
第2ブロア室の中心軸から第2ブロア室の外周までの最短距離は、aである、ことが好ましい。
【0040】
この構成では、振動板および筐体は、第1ブロア室および第2ブロア室の両方が最短距離aとなるよう形成されている。駆動体は、振動板を共振周波数fで振動させる。
【0041】
そして、この構成のブロアは、アクチュエータの駆動時、第1ブロア室の気体を、第1通気孔を介して筐体の外部へ吐出し、第2ブロア室の気体を、第2通気孔を介して筐体の外部へ吐出する。
【0042】
この構成では、第1ブロア室の外周の気体と第2ブロア室の外周の気体とは振動板の振動時、開口部を介して移動する。よって、第1ブロア室の外周の圧力と第2ブロア室の外周の圧力とは振動板の振動時、開口部を介して相殺され、常に大気圧(節)となる。
【0043】
ここで、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の圧力振動の節と第2ブロア室の圧力振動の節とに一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板の振動の節の内、最も外側の節が、第1ブロア室の圧力振動の節と第2ブロア室の圧力振動の節とにほぼ一致する。
【0044】
そのため、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、この構成のブロアは、第1通気孔及び第2通気孔の両方から、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0045】
また、筐体の第2通気孔には、第2ブロア室の外部から内部へ気体が流れることを防ぐ第2の弁が設けられていることが好ましい。
【0046】
この構成では、第2ブロア室の外部から第2通気孔を介して内部へ気体が流れることを弁によって防ぐことができる。そのため、この構成のブロアは、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0047】
また、第2ブロア室の中心軸から第2ブロア室の外周までの範囲において、振動板の振動変位のゼロ交差点の個数は、第2ブロア室の圧力変化のゼロ交差点の個数と一致することが好ましい。ここで、第2ブロア室の中心軸から第2ブロア室の外周までに対応する振動板の各点は、振動によって変位する。また、第2ブロア室の中心軸から第2ブロア室の外周にかけて、第2ブロア室の各点の圧力は、振動板の振動によって変化する。
【0048】
この構成では、振動板の振動時において、振動板の各点の変位分布が、第2ブロア室の各点の圧力変化分布に近い分布となる。すなわち、振動板の振動時において、振動板の各点は、第2ブロア室の各点の圧力変化に合わせて、変位する。
【0049】
よって、この構成のブロアは、振動板の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、第2ブロア室の気体に伝えることができる。したがって、この構成のブロアは、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0050】
なお、第2ブロア室の各点の圧力変化分布u(r)は、第2ブロア室の中心軸からの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0051】
また、筐体は、第1ブロア室および第2ブロア室の少なくとも一方の外周を筐体の外部と連通させる第3通気孔を有することが好ましい。
【0052】
この構成では振動板の振動時、筐体外部の気体が、第3通気孔を介して、第1ブロア室および第2ブロア室の少なくとも一方へ流入する。
【0053】
また、筐体は、振動板の第1主面に対向し、振動板の屈曲振動に伴って屈曲振動する第2可動部を有することが好ましい。
【0054】
この構成では、振動板の振動に伴い第2可動部が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本発明のブロアは、吐出圧力と吐出流量をさらに増加させることができる。
【発明の効果】
【0055】
この発明によれば、十分な流量を確保するために大きな開口部を設けても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
《本発明の第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る圧電ブロア100について説明する。
【0058】
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電ブロア100の外観斜視図である。
図2は、
図1に示す圧電ブロア100の外観斜視図である。
図3は、
図1に示す圧電ブロア100のS−S線の断面図である。
【0059】
圧電ブロア100は、上から順に、弁80、筐体17、振動板41、及び圧電素子42を備え、それらが順に積層された構造を有している。
【0060】
なお、この実施形態では、圧電素子42が本発明の「駆動体」に相当する。
【0061】
振動板41は、円板状であり、例えばステンレススチール(SUS)から構成されている。振動板41の厚みは例えば、0.6mmである。通気孔24の直径は例えば、0.6mmである。振動板41は、第1主面40Aと第2主面40Bとを有する。
【0062】
振動板41の第2主面40Bは、筐体17の先端に接合している。これにより、振動板41は、筐体17とともに振動板41の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室31を構成する。また、振動板41および筐体17は、ブロア室31が半径aとなるよう形成されている。例えば本実施形態においてブロア室31の半径aは、6.1mmである。
【0063】
さらに、振動板41は、ブロア室31の外周をブロア室31の外部と連通させる開口部62を有する。開口部62の形状は、
図2に示すように、弧62Aを有する扇形である。開口部62は、ブロア室31を囲むよう、振動板41のほぼ全周にわたって形成されている。これにより、振動板41は、外周部34と、複数の梁部35と、振動部36と、を備えている。外周部34は円環状である。振動部36は円板状である。振動部36は、外周部34の開口内に、外周部34との間に隙間を空けた状態で配置されている。複数の梁部35は、外周部34と振動部36との間の隙間に設けられ、振動部36と外周部34との間を連結している。
【0064】
したがって、振動部36は、梁部35を介して中空に支持されており、厚み方向に上下動自在となっている。
【0065】
ブロア室31は、振動板41の第2主面40Bを正面視して、開口部62より内側の空間(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側の空間)を指す。そのため、振動板41の第2主面40Bにおける開口部62より内側の領域(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側にある振動部36の通気孔24側の主面)は、ブロア室31の底面を構成する。振動板41は例えば、金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより形成される。
【0066】
圧電素子42は、円板形状であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子42の両主面には、電極が形成されている。圧電素子42は、振動板41のブロア室31とは逆側の第1主面40Aに接合されており、印加された交流電圧に応じて伸縮する。圧電素子42及び振動板41の接合体は、圧電アクチュエータ50を構成する。
【0067】
筐体17は、下方が開口した断面コ字状に形成されている。筐体17の先端は、振動板41に接合している。筐体17は、例えば金属から構成されている。
【0068】
筐体17は、振動板41の第2主面40Bに対向する円板状の天板部18と、天板部18に接続する円環状の側壁部19と、を有する。天板部18の一部は、ブロア室31の天面を構成する。
【0069】
なお、この実施形態では、ブロア室31が本発明の「第1ブロア室」に相当する。また、天板部18が本発明の「第1可動部」に相当する。
【0070】
天板部18は、ブロア室31の中央部をブロア室31の外部と連通させる円柱状の通気孔24を有する。ブロア室31の中央部とは、振動板41の第1主面40Aを正面視して圧電素子42と重なる部分である。天板部18には、ブロア室31の外部から通気孔24を介して内部へ気体が流れることを防ぐ弁80が設けられている。
【0071】
なお、この実施形態では、通気孔24が本発明の「第1通気孔」に相当する。また、弁80が本発明の「第1の弁」に相当する。
【0072】
以下、圧電ブロア100の動作時における空気の流れについて説明する。
【0073】
図4(A)(B)は、
図1に示す圧電ブロア100を1次モードの共振周波数(基本波)で動作させた時における圧電ブロア100のS−S線の断面図である。
図4(A)は、ブロア室31の容積が最も増大したときの図であり、
図4(B)は、ブロア室31の容積が最も減少したときの図である。ここで、図中の矢印は、空気の流れを示している。
【0074】
また、
図5は、
図1に示す圧電ブロア100が
図4(B)に示す状態にある瞬間の、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけるブロア室31の各点の圧力変化と、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周までを構成する振動板41の各点の変位と、の関係を示す図である。
図5は、シミュレーションによって求めた図である。
【0075】
ここで、
図5において、ブロア室31の各点の圧力変化と振動板41の各点の変位とは、ブロア室31の中心軸C上にある振動板41の中心の変位で規格化された値で示されている。なお、
図5に示す、ブロア室31の各点の圧力変化分布u(r)については、後に説明する。
【0076】
また、
図6は、
図1に示す圧電ブロア100における、半径a×共振周波数fと、圧力振幅との関係を示す図である。
図6は、シミュレーションによって、半径a×共振周波数fを変化させて圧力振幅を求めた図である。
図6の点線は、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす範囲の下限と上限、及び最大値を示している。下限値は104m/sであり、上限値は156m/sであり、最大値は130m/sである。
【0077】
同様に、
図6の一点鎖線は、0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす範囲の下限と上限を示している。下限値は117m/sであり、上限値は143m/sである。
【0078】
なお、
図6に示す圧力振幅は、圧電素子42中央部の振動速度で規格化している。圧電素子42の破損限界が上限となるため、
図6に示す測定では振動速度=1m/sの時の圧力振幅をグラフ化している。
【0079】
図3に示す状態において、1次モードの周波数(基本波)の交流駆動電圧が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動板41を1次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。
【0080】
同時に、天板部18は、振動板41の屈曲振動に伴うブロア室31の圧力変動により、振動板41の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
【0081】
これにより、
図4(A)(B)に示すように、振動板41及び天板部18が屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
【0082】
なお、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとは、ブロア室31を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数J
0(k
0)=0の関係を満たす値をk
0としたとき、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。
【0083】
本実施形態において例えば、振動板41の共振周波数fは、21kHzである。振動板41の共振周波数fは、振動板41の厚み、振動板41の材料などによって定まる。空気の音速cは、340m/sである。k
0は、2.40である。第1種ベッセル関数J
0(x)は、以下の数式で示される。
【0085】
また、ブロア室31の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室31の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0086】
図4(A)に示すように、振動板41が圧電素子42側へ屈曲すると、天板部18も圧電素子42とは逆側へ屈曲し、ブロア室31の容積が増大する。このとき、ブロア室31の中央部の圧力が低下して弁80が閉じるため、通気孔24部では空気の出入りは生じない。これに伴い、圧電ブロア100の外部の空気が開口部62を介してブロア室31内に吸引される。
【0087】
図4(B)に示すように、振動板41がブロア室31側へ屈曲すると、天板部18も圧電素子42側へ屈曲し、ブロア室31の容積が減少する。このとき、ブロア室31の中央部の圧力が増加して弁80が開くため、ブロア室31内の空気が通気孔24から吐出される。
【0088】
以上のように、圧電ブロア100では、振動板41の振動に伴い天板部18が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本実施形態の圧電ブロア100は、吐出圧力と吐出流量を増加させることができる。
【0089】
また、
図4(A)(B)及び
図5の点線に示すように、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周までを構成する振動板41の各点は、振動によって変位する。そして、
図5の実線に示すように、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけて、ブロア室31の各点の圧力は、振動板41の振動によって変化する。
【0090】
図5の点線と実線に示すように、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周までの範囲において、振動板41の振動変位のゼロ交差点の個数は0個であり、ブロア室31の圧力変化のゼロ交差点の個数も0個である。そのため、振動板41の振動変位のゼロ交差点の個数は、ブロア室31の圧力変化のゼロ交差点の個数と一致している。
【0091】
よって、圧電ブロア100では、振動板41の振動時において、振動板41の各点の変位分布が、ブロア室31の各点の圧力変化分布に近い分布となっている。
【0092】
ここで、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節とほぼ一致する。
【0093】
圧電ブロア100は、例えば鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用される。長期駆動に伴う圧電素子の破損を防ぐためには、圧電素子の振動速度は2m/s以下とする必要がある。鼻水や痰の吸引には20kPa以上の圧力が必要なため、圧電ブロア100には、10kPa/(m/s)以上の圧力振幅が必要である。
図6に示すように、圧力振幅は、afが130m/sであるときに最大となる。130m/sから±10%ずれた117m/s及び143m/sては、圧力振幅は、20kPa/(m/s)以上得られる。130m/sから±20%ずれた104m/s及び156m/sでも、圧力振幅は、10kPa/(m/s)以上得られる。
【0094】
そのため、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア100は、鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用することが可能な、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0095】
さらに、0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア100は、極めて高い吐出圧力及び極めて高い吐出流量を実現できる。
【0096】
また、圧電ブロア100では、ブロア室31の外周がブロア室31の圧力振動の節となるため、ブロア室31の外周の圧力は常に大気圧となる。そのため、ブロア室31の外周が特許文献1の通気孔24より大きな開口部62によってブロア室31の外部と連通していても、圧電ブロア100は、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0097】
したがって、圧電ブロア100は、十分な流量を確保するために大きな開口部62を設けても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0098】
また、圧電ブロア100は、大きな開口部62によって、粉塵等が開口部62に詰まることを防止できる。すなわち、圧電ブロア100は、吐出圧力や吐出流量が粉塵等によって低下することを防止できる。
【0099】
また、圧電ブロア100は、ブロア室31の外部から通気孔24を介して内部へ空気が流れることを弁80によって防ぐことができる。そのため、圧電ブロア100は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0100】
また、圧電ブロア100では、振動板41の振動時において、振動板41の各点の変位分布は、ブロア室31の各点の圧力変化分布に近い。すなわち、振動板41の振動時において、振動板41の各点は、ブロア室31の各点の圧力変化に合わせて、変位している。
【0101】
そのため、圧電ブロア100は、振動板41の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、ブロア室31の空気に伝えることができる。したがって、圧電ブロア100は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0102】
《本発明の第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る圧電ブロア200について説明する。
【0103】
図7は、本発明の第2実施形態に係る圧電ブロア200の平面図である。
図8は、
図7に示す圧電ブロア200の裏面図である。
図9は、
図7に示す圧電ブロア200のT−T線の断面図である。
【0104】
圧電ブロア200は、上から順に、弁280、筐体217、振動板241、及び圧電素子42を備え、それらが順に積層された構造を有している。
【0105】
なお、この実施形態では、圧電素子42が本発明の「駆動体」に相当する。
【0106】
振動板241は、円板状であり、例えばステンレススチール(SUS)から構成されている。振動板241の厚みは例えば、0.5mmである。振動板241は、第1主面240Aと第2主面240Bとを有する。
【0107】
振動板241の第2主面240Bは、筐体217の先端に接合している。これにより、振動板241は、筐体217とともに振動板241の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室231を構成する。また、振動板241および筐体217は、ブロア室231が半径aとなるよう形成されている。例えば本実施形態においてブロア室231の半径aは、11mmである。
【0108】
振動板241は、振動部263と、振動部263の周囲を囲み、筐体217に接合する枠部261と、振動部263と枠部261とを連結し、枠部261に対して振動部263を弾性支持する3つの連結部262と、を有する。
【0109】
振動部263は、筐体217とともに振動板241の厚み方向から挟んでブロア室231を構成する。そのため、天板部218に対向する振動部263の領域の一方主面は、ブロア室231の底面を構成する。振動板241は例えば、金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより形成される。
【0110】
圧電ブロア200では、振動部263は3つの連結部262で枠部261に対して柔軟に弾性支持されており、振動部263の屈曲振動は殆ど妨げられない。
【0111】
圧電素子42は、円板形状であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子42の両主面には、電極が形成されている。圧電素子42は、振動板241のブロア室231とは逆側の第1主面240Aに接合されており、印加された交流電圧に応じて伸縮する。圧電素子42及び振動板241の接合体は、圧電アクチュエータ250を構成する。
【0112】
筐体217は、下方が開口した断面コ字状に形成されている。筐体217の先端は、振動板241の枠部261に接合している。筐体217は、例えば金属から構成されている。
【0113】
筐体217は、振動板241の第2主面240Bに対向する天板部218と、天板部218に接続する円環状の側壁部219と、を有する。
【0114】
天板部218は、円板状の剛体である。天板部218は、ブロア室231の天面を構成する。天板部218は、厚天部229と、厚天部229の内周側に位置する薄天部228と、を有する。天板部218は、ブロア室231の中央部をブロア室231の外部と連通させる通気孔224を薄天部228に有する。厚天部229の厚みは例えば、0.5mmであり、薄天部228の厚みは例えば、0.05mmである。通気孔224の直径は例えば、0.6mmである。
【0115】
ブロア室231の中央部とは、振動板241の第1主面240Aを正面視して圧電素子42と重なる部分である。天板部218には、ブロア室231の外部から通気孔224を介して内部へ気体が流れることを防ぐ弁280が設けられている。
【0116】
また、天板部218の振動部263側には、ブロア室231の一部であり、通気孔224と連通するキャビティ225が形成されている。キャビティ225は、円柱形状である。キャビティ225の直径は例えば、3.0mmであり、キャビティ225の厚みは例えば、0.45mmである。
【0117】
さらに、天板部218は、ブロア室231の外周をブロア室231の外部と連通させる開口部214を有する。開口部214は、振動板241の振動の節の内、最も外側の節F2と枠部261との間に位置する振動板241の領域と対向する筐体217の対向領域に形成されている。開口部214は、ブロア室231を囲むよう、天板部218のほぼ全周にわたって形成されている。
【0118】
なお、この実施形態では、ブロア室231が本発明の「第1ブロア室」に相当する。また、天板部218が本発明の「第1可動部」に相当する。また、通気孔224が本発明の「第1通気孔」に相当する。また、弁280が本発明の「第1の弁」に相当する。
【0119】
以下、圧電ブロア200の動作時における空気の流れについて説明する。
【0120】
図10(A)(B)は、
図7に示す圧電ブロア200を3次モードの周波数(基本波の3倍波)で動作させた時における圧電ブロア200のT−T線の断面図である。
図10(A)は、ブロア室231の容積が最も増大したときの図であり、
図10(B)は、ブロア室231の容積が最も減少したときの図である。ここで、図中の矢印は、空気の流れを示している。
【0121】
また、
図11は、
図7に示す圧電ブロア200が
図10(B)に示す状態にある瞬間の、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周にかけるブロア室231の各点の圧力変化と、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周までを構成する振動板241の各点の変位と、の関係を示す図である。
図11は、シミュレーションによって求めた図である。
【0122】
ここで、
図11において、ブロア室231の各点の圧力変化と振動板241の各点の変位とは、ブロア室231の中心軸C上にある振動板241の中心の変位で規格化された値で示されている。
【0123】
また、
図12は、
図7に示す圧電ブロア200における、半径a×共振周波数fと、圧力振幅との関係を示す図である。
図12は、シミュレーションによって、半径a×共振周波数fを変化させて圧力振幅を求めた図である。
図12の点線は、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす範囲の下限と上限、及び最大値を示している。下限値は240m/sであり、上限値は360m/sであり、最大値は300m/sである。
【0124】
同様に、
図12の一点鎖線は、0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす範囲の下限と上限を示している。下限値は270m/sであり、上限値は330m/sである。
【0125】
なお、
図12に示す圧力振幅は、圧電素子42中心部の振動速度で規格化している。圧電素子42の破損限界が上限となるため、
図12に示す測定では振動速度=1m/sの時の圧力振幅をグラフ化している。
【0126】
図9に示す状態において、3次モードの共振周波数(基本波)の交流駆動電圧が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動板241を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。ただし、振動板241は連結部262によって柔軟に支持されているため、振動板241の屈曲振動が枠部261や天板部218に伝わることはない。従って、天板部218は屈曲振動しない。
【0127】
これにより、
図10(A)(B)に示すように、振動板241が屈曲変形してブロア室231の体積が周期的に変化する。
【0128】
なお、ブロア室231の半径aと振動板241の共振周波数fとは、ブロア室231を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数J
0(k
0)=0の関係を満たす値をk
0としたとき、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。本実施形態において例えば、共振周波数fは、29kHzである。k
0は、5.52である。
【0129】
また、ブロア室231の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室231の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0130】
図10(A)に示すように、振動板241が圧電素子42側へ屈曲すると、ブロア室231の中央部の容積が増大し、中央部より外周に位置する外周部の容積が減少する。このとき、ブロア室231の中央部の圧力が低下して弁280が閉じるため、空気の出入りは生じない。
【0131】
次に、
図10(B)に示すように、振動板241がブロア室231側へ屈曲すると、ブロア室231の中央部の容積が減少し、外周部の容積が増大する。このとき、ブロア室231の中央部の圧力が増加して弁280が開くため、ブロア室231内の空気が通気孔224から吐出される。
【0132】
ここで、
図10(A)(B)及び
図11の点線に示すように、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周までを構成する振動板241の各点は、振動によって変位する。そして、
図11の実線に示すように、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周にかけて、ブロア室231の各点の圧力は、振動板241の振動によって変化する。
【0133】
また、
図11の点線と実線に示すように、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周までの範囲において、振動板241の振動変位のゼロ交差点の個数は1個であり、ブロア室231の圧力変化のゼロ交差点の個数も1個である。そのため、振動板241の振動変位のゼロ交差点の個数は、ブロア室231の圧力変化のゼロ交差点の個数と一致している。
【0134】
よって、圧電ブロア200では、振動板241の振動時において、振動板241の各点の変位分布が、ブロア室231の各点の圧力変化分布に近い分布となっている。
【0135】
ここで、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板241の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室231の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板241の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室231の圧力振動の節とほぼ一致する。
【0136】
圧電ブロア200は、例えば鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用される。長期駆動に伴う圧電素子の破損を防ぐためには、圧電素子の振動速度は2m/s以下とする必要がある。鼻水や痰の吸引には20kPa以上の圧力が必要なため、圧電ブロア200には、10kPa/(m/s)以上の圧力振幅が必要である。
図12に示すように、圧力振幅は、afが300m/sであるときに最大となる。300m/sから±10%ずれた270m/s及び330m/sては、圧力振幅は、20kPa/(m/s)以上得られる。300m/sから±20%ずれた240m/s及び360m/sでも、圧力振幅は、10kPa/(m/s)以上得られる。
【0137】
そのため、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア200は、鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用することが可能な、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0138】
さらに、0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア200は、極めて高い吐出圧力及び極めて高い吐出流量を実現できる。
【0139】
また、圧電ブロア200では、ブロア室231の外周がブロア室231の圧力振動の節となるため、ブロア室231の外周の圧力は常に大気圧となる。そのため、ブロア室231の外周が特許文献1の通気孔224より大きな開口部214によってブロア室231の外部と連通していても、圧電ブロア200は、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0140】
したがって、圧電ブロア200は、十分な流量を確保するために大きな開口部214を設けても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0141】
また、圧電ブロア200は、大きな開口部214によって、粉塵等が開口部214に詰まることを防止できる。すなわち、圧電ブロア200は、吐出圧力や吐出流量が粉塵等によって低下することを防止できる。
【0142】
また、圧電ブロア200は、ブロア室231の外部から通気孔224を介して内部へ空気が流れることを弁280によって防ぐことができる。そのため、圧電ブロア200は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0143】
また、圧電ブロア200では、振動板241の振動時において、振動板241の各点の変位分布が、ブロア室231の各点の圧力変化分布に近い。すなわち、振動板241の振動時において、振動板241の各点は、ブロア室231の各点の圧力変化に合わせて、変位している。
【0144】
そのため、圧電ブロア200は、振動板241の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、ブロア室231の空気に伝えることができる。したがって、圧電ブロア200は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0145】
また、圧電ブロア200では、振動部263は3つの連結部262で枠部261に対して柔軟に弾性支持されており、振動部263の屈曲振動は殆ど妨げられない。このため、圧電ブロア200では、振動部263の屈曲振動に伴う損失が少なくなる。
【0146】
ただし、振動部263は複数の連結部262で枠部261に対して柔軟に弾性支持されているため、振動部263の枠部261側の端264も自由振動する(
図10(A)(B)参照)。
【0147】
圧電ブロア200では、開口部214が前述の対向領域に形成されているため、振動板241の振動の節の内、最も外側の節F2が、ブロア室231の外周を構成する。すなわち、ブロア室231の中心軸Cからブロア室231の外周までの半径aは、開口部214によって規定される。
【0148】
したがって、この構成のブロア200は、振動板241が振動部263と枠部261と連結部262とを有する態様であっても、吐出圧力や吐出流量が低下することを防止できる。
【0149】
従って、第2実施形態の圧電ブロア200によれば、前記第1実施形態の圧電ブロア100と同様の効果を奏する。
【0150】
《本発明の第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る圧電ブロア300について説明する。
【0151】
図13は、本発明の第3実施形態に係る圧電ブロア300の外観斜視図である。
図14は、
図13に示す圧電ブロア300の外観斜視図である。
図15は、
図13に示す圧電ブロア200のU−U線の断面図である。
【0152】
圧電ブロア300は、弁80を備えず、筐体317を備える点で、圧電ブロア100と相違する。圧電ブロア300は、上から順に、筐体17、振動板41、圧電素子42、及び筐体317を備え、それらが順に積層された構造を有している。その他の構成については圧電ブロア100と同じであるため、説明を省略する。
【0153】
筐体317は、上方が開口した断面コ字状に形成されている。筐体317の先端は、振動板41の第1主面40Aに接合している。筐体317は、例えば金属から構成されている。
【0154】
これにより、筐体317は、アクチュエータ50とともに振動板41の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室331を構成する。また、振動板41および筐体317は、ブロア室331が半径aとなるよう形成されている。すなわち、ブロア室331は、ブロア室31と同じ半径aを有している。
【0155】
本実施形態において振動板41の開口部62は、ブロア室31の外周をブロア室331の外周と連通させる。開口部62は、ブロア室331を囲むよう、振動板41のほぼ全周にわたって形成されている。そのため、アクチュエータ50の通気孔324側の面における開口部62より内側の領域(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側にある振動部36の通気孔324側の主面)は、ブロア室331の底面を構成する。
【0156】
筐体317は、振動板41の第1主面40Aに対向する円板状の天板部318と、天板部318に接続する円環状の側壁部319と、を有する。天板部318の一部は、ブロア室331の天面を構成する。
【0157】
なお、この実施形態では、筐体17及び筐体317が本発明の「筐体」を構成する。また、ブロア室31が本発明の「第1ブロア室」に相当し、ブロア室331が本発明の「第2ブロア室」に相当する。また、天板部18が本発明の「第1可動部」に相当し、天板部318が本発明の「第2可動部」に相当する。
【0158】
天板部318は、ブロア室331の中央部を筐体317の外部と連通させる円柱状の通気孔324を有する。ブロア室331の中央部とは、振動板41の第1主面40Aを正面視して圧電素子42と重なる部分である。通気孔324の直径は例えば、0.6mmである。
【0159】
なお、この実施形態では、通気孔324が本発明の「第2通気孔」に相当する。
【0160】
以下、圧電ブロア300の動作時における空気の流れについて説明する。
【0161】
図16は、
図13に示す圧電ブロア300を1次モードの周波数(基本波)で動作させた時における圧電ブロア300のU−U線の断面図である。
図16(A)は、ブロア室31の容積が最も増大し、ブロア室331の容積が最も減少したときの図であり、
図16(B)は、ブロア室31の容積が最も減少し、ブロア室331の容積が最も増大したときの図である。ここで、図中の矢印は、空気の流れを示している。
【0162】
なお、
図13に示す圧電ブロア300が
図16(B)に示す状態にある瞬間の、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけるブロア室31の各点の圧力変化は、
図1に示す圧電ブロア100が
図4(B)に示す状態にある瞬間の、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけるブロア室31の各点の圧力変化(
図5参照)にほぼ等しい。
【0163】
また、
図13に示す圧電ブロア300が
図16(A)に示す状態にある瞬間の、ブロア室331の中心軸Cからブロア室331の外周にかけるブロア室331の各点の圧力変化は、
図1に示す圧電ブロア100が
図4(B)に示す状態にある瞬間の、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけるブロア室31の各点の圧力変化(
図5参照)にほぼ等しい。即ち、
図13に示す圧電ブロア300が
図16(A)に示す状態にある瞬間の、ブロア室331の中心軸Cからブロア室331の外周にかけるブロア室331の各点の圧力変化分布u(r)は、
図5の実線で示される。
【0164】
また、圧電ブロア300のブロア室331における、半径a×共振周波数fと、圧力振幅との関係は、ブロア室31における、半径a×共振周波数fと、圧力振幅との関係とほぼ同じである。すなわち、圧電ブロア300のブロア室331における、半径a×共振周波数fと、圧力振幅との関係は、
図6で示される。
【0165】
図15に示す状態において、1次モードの周波数(基本波)の交流駆動電圧が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動板41を1次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。
【0166】
同時に、天板部18は、振動板41の屈曲振動に伴うブロア室31の圧力変動により、振動板41の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
【0167】
天板部318も、振動板41の屈曲振動に伴うブロア室331の圧力変動により、振動板41の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
【0168】
これにより、
図16(A)(B)に示すように、ブロア室31、331の体積が周期的に変化する。
【0169】
なお、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとは、ブロア室31を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数J
0(k
0)=0の関係を満たす値をk
0としたとき、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。さらに、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとも、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。本実施形態において例えば、共振周波数fは、21kHzである。空気の音速cは、340m/sである。k
0は、2.40である。
【0170】
また、ブロア室31の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室31の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。ブロア室331の各点の圧力変化分布u(r)も、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0171】
図16(A)に示すように、振動板41が圧電素子42側へ屈曲すると、天板部18は圧電素子42とは逆側へ屈曲し、ブロア室31の容積が増大する。さらに、天板部318は圧電素子42側へ屈曲し、ブロア室331の容積が減少する。
【0172】
このとき、ブロア室31の中央部の圧力が低下するため、筐体17の外部の空気が通気孔24を介してブロア室31内に吸引され、ブロア室331の空気が開口部62を介してブロア室31内に吸引される。また、このとき、ブロア室331の中央部の圧力が増加するため、ブロア室331の中央部の空気が、通気孔324を介して筐体317の外部へ吐出される。
【0173】
図16(B)に示すように、振動板41がブロア室31側へ屈曲すると、天板部18は圧電素子42側へ屈曲し、ブロア室31の容積が減少する。さらに、天板部318は圧電素子42とは逆側へ屈曲し、ブロア室331の容積が増大する。
【0174】
このとき、ブロア室31の中央部の圧力が増加するため、ブロア室31の中央部の空気が、通気孔24を介して筐体17の外部へ吐出される。また、このとき、ブロア室331の中央部の圧力が低下するため、筐体317の外部の空気が通気孔324を介してブロア室331内に吸引され、ブロア室31の空気が開口部62を介してブロア室331内に吸引される。
【0175】
以上のように、圧電ブロア300は、アクチュエータ50の駆動時、ブロア室31の空気を、通気孔24を介して筐体17の外部へ吐出し、ブロア室331の空気を、通気孔324を介して筐体17の外部へ吐出する。
【0176】
また、圧電ブロア300では、振動板41の振動に伴い天板部18、318が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本実施形態の圧電ブロア300は、吐出圧力と吐出流量を増加させることができる。
【0177】
また、
図16(A)(B)及び
図5の点線に示すように、ブロア室31、331の中心軸Cからブロア室31、331の外周までを構成する振動板41の各点は、振動によって変位する。そして、
図5の実線に示すように、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周にかけて、ブロア室31の各点の圧力は、振動板41の振動によって変化する。ブロア室331の中心軸Cからブロア室331の外周にかけて、ブロア室331の各点の圧力も、振動板41の振動によって変化する。
【0178】
図5の点線と実線に示すように、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の外周までの範囲において、振動板41の振動変位のゼロ交差点の個数は0個であり、ブロア室31の圧力変化のゼロ交差点の個数も0個であり、ブロア室331の圧力変化のゼロ交差点の個数も0個である。
【0179】
そのため、振動板41の振動変位のゼロ交差点の個数は、ブロア室31の圧力変化のゼロ交差点の個数とブロア室331の圧力変化のゼロ交差点の個数とに一致している。
【0180】
よって、圧電ブロア300では、振動板41の振動時において、振動板41の各点の変位分布が、ブロア室31の各点の圧力変化分布とブロア室331の各点の圧力変化分布とに近い分布となっている。
【0181】
ここで、
図16(A)(B)に示すように、ブロア室331の容積が減少した時にブロア室31の容積が増大し、ブロア室31の容積が減少した時にブロア室331の容積が増大する。すなわち、ブロア室31の容積とブロア室331の容積とは、逆位相で変化する。
【0182】
そのため、ブロア室31の外周の空気とブロア室331の外周の空気とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して移動する。よって、ブロア室31の外周の圧力とブロア室331の外周の圧力とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して相殺され、常に大気圧(節)となる。
【0183】
そして、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに、ほぼ一致する。
【0184】
そのため、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たし、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア300は、通気孔24及び通気孔324の両方から、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0185】
よって、圧電ブロア300は、消費電力を増加させることなく、1つの通気孔24から吐出する圧電ブロア101の吐出流量のほぼ二倍の吐出流量を実現できる。さらに、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たし、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア300は、極めて高い吐出圧力及び極めて高い吐出流量を実現できる。
【0186】
また、圧電ブロア300は、圧電素子42から照射される超音波を筐体317によって遮蔽できる。
【0187】
また、圧電ブロア100ではアクチュエータ50の駆動時、開口部62の近くに障害物(例えば平板)が置かれると、ブロア室31の外周の圧力が大気圧とならず、吐出圧力および吐出流量が低下する。
【0188】
これに対して、圧電ブロア300では、筐体317によって開口部62が保護されている。そのため、圧電ブロア300ではアクチュエータ50の駆動時、開口部62の近くに障害物が置かれても、ブロア室31の外周の圧力とブロア室331の外周の圧力とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して常に大気圧を維持できる。よって、圧電ブロア300では吐出圧力および吐出流量の低下を防止できる。
【0189】
また、圧電ブロア300では、振動板41の振動時において、振動板41の各点の変位分布は、ブロア室31の各点の圧力変化分布とブロア室331の各点の圧力変化分布とに近い。すなわち、振動板41の振動時において、振動板41の各点は、ブロア室31の各点の圧力変化とブロア室331の各点の圧力変化とに合わせて、変位している。
【0190】
そのため、圧電ブロア300は、振動板41の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、ブロア室31、331の空気に伝えることができる。したがって、圧電ブロア300は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0191】
《本発明の第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る圧電ブロア400について説明する。
【0192】
図17は、本発明の第4実施形態に係る圧電ブロア400の外観斜視図である。
【0193】
圧電ブロア400は、通気孔424及び弁80が設けられた筐体417と通気孔425及び弁480が設けられた筐体427とを備える点で、圧電ブロア300と相違する。その他の構成については圧電ブロア300と同じであるため、説明を省略する。
【0194】
筐体417は、開口部62と対向する部分に通気孔424が設けられた天板部418を有し、通気孔24に弁80が設けられている点で、
図15に示す筐体17と相違する。その他の筐体417の構成については、
図15に示す筐体17と同じであるため、説明を省略する。
【0195】
筐体427は、開口部62と対向する部分に通気孔425が設けられた天板部428を有し、通気孔324に弁480が設けられている点で、
図15に示す筐体317と相違する。その他の筐体427の構成については、
図15に示す筐体317と同じであるため、説明を省略する。
【0196】
なお、この実施形態では、通気孔424及び通気孔425のそれぞれが本発明の「第3通気孔」に相当する。また、弁80が本発明の「第1の弁」に相当し、弁480が本発明の「第2の弁」に相当する。
【0197】
以下、圧電ブロア400の動作時における空気の流れについて説明する。
【0198】
図18は、
図17に示す圧電ブロア400を1次モードの周波数(基本波)で動作させた時における圧電ブロア400の断面図である。
図18(A)は、ブロア室31の容積が最も増大し、ブロア室331の容積が最も減少したときの図であり、
図18(B)は、ブロア室31の容積が最も減少し、ブロア室331の容積が最も増大したときの図である。ここで、図中の矢印は、空気の流れを示している。
【0199】
図17に示す状態において、1次モードの周波数(基本波)の交流駆動電圧が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動板41を1次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。
【0200】
同時に、天板部418は、振動板41の屈曲振動に伴うブロア室31の圧力変動により、振動板41の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
【0201】
天板部428も、振動板41の屈曲振動に伴うブロア室331の圧力変動により、振動板41の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
【0202】
これにより、
図18(A)(B)に示すように、ブロア室31、331の体積が周期的に変化する。
【0203】
なお、本実施形態においても、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとは、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。さらに、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとも、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす。例えば本実施形態においても、共振周波数fは、21kHzである。空気の音速cは、340m/sである。k
0は、2.40である。
【0204】
また、ブロア室31の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室31の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。ブロア室331の各点の圧力変化分布u(r)も、u(r)=J
0(k
0r/a)の式で表される。
【0205】
図18(A)に示すように、振動板41が圧電素子42側へ屈曲すると、天板部418は圧電素子42とは逆側へ屈曲し、ブロア室31の容積が増大する。さらに、天板部428は圧電素子42側へ屈曲し、ブロア室331の容積が減少する。
【0206】
このとき、ブロア室31の中央部の圧力が低下するため、弁80が閉じ、圧電ブロア400外部の空気とブロア室331の空気が開口部62を介してブロア室31内に吸引される。また、このとき、ブロア室331の中央部の圧力が増加するため、弁480が開き、ブロア室331の中央部の空気が通気孔324を介して筐体427の外部へ吐出される。
【0207】
図18(B)に示すように、振動板41がブロア室31側へ屈曲すると、天板部418は圧電素子42側へ屈曲し、ブロア室31の容積が減少する。さらに、天板部428は圧電素子42とは逆側へ屈曲し、ブロア室331の容積が増大する。
【0208】
このとき、ブロア室31の中央部の圧力が増加するため、弁80が開き、ブロア室31の中央部の空気が通気孔24を介して筐体417の外部へ吐出される。また、このとき、ブロア室331の中央部の圧力が低下するため、弁480が閉じ、圧電ブロア400外部の空気とブロア室31の空気が開口部62を介してブロア室331内に吸引される。
【0209】
以上のように、圧電ブロア400は、アクチュエータ50の駆動時、ブロア室31の空気を、通気孔24を介して筐体417の外部へ吐出し、ブロア室331の空気を、通気孔324を介して筐体427の外部へ吐出する。
【0210】
また、圧電ブロア400では、振動板41の振動に伴い天板部418、428が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本実施形態の圧電ブロア400は、吐出圧力と吐出流量を増加させることができる。
【0211】
ここで、
図18(A)(B)に示すように、ブロア室331の容積が減少した時にブロア室31の容積が増大し、ブロア室31の容積が減少した時にブロア室331の容積が増大する。すなわち、ブロア室31の容積とブロア室331の容積とは、逆位相で変化する。
【0212】
そのため、ブロア室31の外周の空気とブロア室331の外周の空気とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して移動する。よって、ブロア室31の外周の圧力とブロア室331の外周の圧力とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して相殺され、常に大気圧(節)となる。
【0213】
そして、af=(k
0c)/(2π)である場合、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板41の振動の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに、ほぼ一致する。
【0214】
そのため、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たし、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.8×(k
0c)/(2π)≦af≦1.2×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア400は、通気孔24及び通気孔324の両方から、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0215】
よって、圧電ブロア400は、消費電力を増加させることなく、1つの通気孔24から吐出する圧電ブロア101の吐出流量のほぼ二倍の吐出流量を実現できる。
【0216】
さらに、ブロア室31の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たし、ブロア室331の半径aと振動板41の共振周波数fとが0.9×(k
0c)/(2π)≦af≦1.1×(k
0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア400は、極めて高い吐出圧力及び極めて高い吐出流量を実現できる。
【0217】
また、圧電ブロア400も、圧電素子42から照射される超音波を筐体427によって遮蔽できる。
【0218】
また、圧電ブロア400でも、筐体427によって開口部62が保護されている。そのため、圧電ブロア400ではアクチュエータ50の駆動時、開口部62の近くに障害物が置かれても、ブロア室31の外周の圧力とブロア室331の外周の圧力とはアクチュエータ50の駆動時、開口部62を介して常に大気圧を維持できる。よって、圧電ブロア400でも吐出圧力および吐出流量の低下を防止できる。
【0219】
また、圧電ブロア400では、弁80、弁480、通気孔424、及び通気孔425が設けられている。そのため、
図18(A)(B)に示すように、圧電ブロア400の外部から通気孔24、324を介してブロア室31、331へ空気が吸入されない。すなわち、圧電ブロア400では、
図16(A)(B)に示す圧電ブロア300と異なり、通気孔24、324を介した逆方向の気流が生じない。よって、圧電ブロア400は、空気の流れを一方向にすることができる。
【0220】
また、圧電ブロア400では、
図18(A)(B)及び
図5に示すように、振動板41の振動時において、振動板41の各点の変位分布は、ブロア室31の各点の圧力変化分布とブロア室331の各点の圧力変化分布とに近い。すなわち、振動板41の振動時において、振動板41の各点は、ブロア室31の各点の圧力変化とブロア室331の各点の圧力変化とに合わせて、変位している。
【0221】
そのため、圧電ブロア400は、振動板41の振動エネルギーを殆ど損なうことなく、ブロア室31、331の空気に伝えることができる。したがって、圧電ブロア400は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
【0222】
《その他の実施形態》
前記実施形態では流体として空気を用いているが、これに限るものではない。当該流体が、空気以外の気体であっても適用できる。
【0223】
また、前記実施形態では、振動板41、241はSUSから構成されているが、これに限るものではない。例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、銅などの他の材料から構成してもよい。
【0224】
また、前記実施形態ではブロアの駆動源として圧電素子42を設けたが、これに限るものではない。例えば、電磁駆動でポンピング動作を行うブロアとして構成されていても構わない。
【0225】
また、前記実施形態では、圧電素子42はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されているが、これに限るものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系及びアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電体セラミックスの圧電材料などから構成してもよい。
【0226】
また、前記実施形態ではユニモルフ型の圧電振動子を使用しているが、これに限るものではない。振動板41の両面に圧電素子42を貼着したバイモルフ型の圧電振動子を使用してもよい。
【0227】
また、前記実施形態では円板状の圧電素子42、円板状の振動板41及び円板状の天板部18、318、418、428を用いたが、これに限るものではない。例えば、これらの形状が矩形や多角形であってもよい。
【0228】
また、前記実施形態では、天板部18、318、418、428が、振動板41の屈曲振動に伴って同心円状に屈曲振動するが、これに限るものではない。実施の際は、振動板41のみが屈曲振動し、天板部18、318、418、428が、振動板41の屈曲振動に伴って屈曲振動しなくても良い。
【0229】
また、前記実施形態では、k
0が2.40、5.52の条件を用いたが、これに限るものではない。8.65、11.79、14.93など、k
0は、J
0(k
0)=0の関係を満たす値であれば良い。
【0230】
また、前記第1実施形態では、圧電素子42は、振動板41のブロア室31とは逆側の第1主面40Aに接合されているが、これに限るものではない。実施の際は、例えば、圧電素子42が振動板41のブロア室31側の第2主面40Bに接合されていてもよいし、2枚の圧電素子42が振動板41の第1主面40A及び第2主面40Bに接合されていてもよい。この場合、筐体17は、少なくとも1枚の圧電素子42及び振動板41から構成される圧電アクチュエータとともに、振動板41の厚み方向から挟んで第1ブロア室を構成する。
【0231】
同様に、前記第2実施形態では、圧電素子42は、振動板241のブロア室231とは逆側の第1主面240Aに接合されているが、これに限るものではない。実施の際は、例えば、圧電素子42が振動板241のブロア室231側の第2主面240Bに接合されていてもよいし、2枚の圧電素子42が振動板241の第1主面240A及び第2主面240Bに接合されていてもよい。この場合、筐体217は、少なくとも1枚の圧電素子42及び振動板41から構成される圧電アクチュエータとともに、振動板241の厚み方向から挟んで第1ブロア室を構成する。
【0232】
同様に、前記第3実施形態と前記第4実施形態では、圧電素子42は、振動板41のブロア室331側の第1主面40Aに接合されているが、これに限るものではない。実施の際は、例えば、圧電素子42が振動板41のブロア室31側の第2主面40Bに接合されていてもよいし、2枚の圧電素子42が振動板41の第1主面40A及び第2主面40Bに接合されていてもよい。この場合、筐体17、317は、少なくとも1枚の圧電素子42及び振動板41から構成される圧電アクチュエータとともに、振動板41の厚み方向から挟んで第1ブロア室および第2ブロア室を構成する。
【0233】
また、前記実施形態では、1次モード及び3次モードの周波数で圧電ブロアの振動板を屈曲振動させたが、これに限るものではない。実施の際は、複数の振動の腹を形成する、3次モード以上の奇数次の振動モードで振動板を屈曲振動させても良い。
【0234】
また、前記実施形態では、ブロア室31、231、331の形状が円柱形状であるが、これに限るものではない。実施の際は、ブロア室の形状が正角柱形状であっても良い。この場合、ブロア室の半径aの代わりに、ブロア室の中心軸からブロア室の外周までの最短距離aを使用する。
【0235】
また、前記実施形態では、筐体17の天板部18において、1つの円形の通気孔24が設けられており、筐体217の天板部218においても、1つの円形の通気孔224が設けられており、筐体317の天板部318においても、1つの円形の通気孔324が設けられているが、これに限るものではない。実施の際は、例えば
図19〜
図21に示すように複数の通気孔524〜724が設けられていてもよく、例えば
図20〜
図22に示す通気孔624〜824のように、円形でなくてもよい。
【0236】
また、前記実施形態では、弁80、280が通気孔24、224に設けられているが、これに限るものではない。実施の際は、必ずしも弁を設けなくても構わない。弁を設けない場合、
図4(A)、
図10(A)のように振動板41、241が圧電素子42側へ屈曲した時、
図4(B)、
図10(B)と逆方向の気流が生じる。従って、通気孔24、224からは、大きな風速の吐出流と吸入流が交互に生じる、つまり、強い往復流を得ることができる。このような強い往復流は、例えば、発熱部品の冷却に用いることができる。
【0237】
また、前記実施形態では、開口部62が振動板41に設けられていたり、開口部214が天板部218に設けられていたりするが、これに限るものではない。実施の際は、開口部が筐体の側壁部に設けられていてもよい。
【0238】
また、前記第2の実施形態において、開口部214は、振動板241の振動の節の内、最も外側の節F2と枠部261との間に位置する振動板241の領域と対向する筐体217の領域に形成されているが(
図9参照)、これに限るものではない。実施の際は、開口部214は、振動板241の振動の節の内、最も外側の節F2と枠部261との間に位置する振動板241の領域に形成されていてもよい。
【0239】
最後に、前記実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。