(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地上側に設けられ電力を送信する送電装置と、車両に設けられ前記送電装置より送信された電力を受信して電気負荷に供給する受電装置と、を備えた非接触給電システムにおいて、
前記送電装置は、
駐車スペースに設けられ、電力を送信する送電コイルと、
前記送電コイルへ供給する電力を制御する給電制御部と、
前記受電装置との間で通信を行う送電側通信部と、
を備え、
前記受電装置は、
前記送電コイルより送信された電力を受信し、受信した電力を駆動力として車両に供給する受電コイルと、
前記受電コイルに対して車両の前方側、及び後方側にそれぞれ少なくとも一つ設けられ、前記送電コイルより送信された電力を励磁パターン信号として受信するサブコイルと、
前記受電コイル及びサブコイルによる電力の受信を制御する受電制御部と、
前記送電装置との間で通信を行う受電側通信部と、
を備え、
前記給電制御部は、車両が前記駐車スペースに接近した際に、識別データを含む励磁パターン信号で励磁し、
前記受電制御部は、少なくとも一つの前記サブコイルにて受信された励磁パターン信号より前記識別データを取得し、且つ、前記受電側通信部は、この識別データを前記送電装置に送信し、
前記給電制御部は、前記励磁パターン信号に含めた識別データと、前記受電制御部より送信された識別データとが一致した際に前記送電コイルと前記受電コイルをペアリングし、
前記前方側に設けられたサブコイルで受信される識別データと、前記後方側に設けられたサブコイルで受信される識別データが相違する場合には、前記ペアリングをキャンセルすること
を特徴とする非接触給電システム。
前記給電制御部は、前記送電コイルと受電コイルをペアリングした後、前記受電制御部より送信される識別データが途切れた場合、或いは、識別データが不一致となった場合には、前記ペアリングをキャンセルすること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この非接触給電システムは、地上側の駐車設備に設けられる複数の送電装置と(
図1では、一例として2つの送電装置101,101aを示している)、車両20に搭載される受電装置102を備えている。
【0010】
送電装置101は、車両20を駐車するための駐車スペースを備えている。また、地上ユニット51と、駐車スペースの地面に設置された送電コイル11と、駐車スペースに車両20が接近した際にこれを検出する車両検出センサ33を備えている。なお、
図1では、一例として2つの送電装置101,101aを示している。本発明はこれに限定されるものではなく、3以上の送電装置を備える場合ついても適用することができる。
【0011】
地上ユニット51は、送電コイル11に電流を通電して励磁するパワーユニット12と、該パワーユニット12の作動を制御する地上コントローラ13(給電制御部)と、受電装置102との間で無線通信を行う通信部14(送電側通信部)と、を備えている。パワーユニット12は、あるパターンで励磁することによって形成される励磁パターン信号を送電コイル11より送信する制御を行う。また、送電装置101aについても同様の構成を有しており、地上ユニット51a、送電コイル11a、及び車両検出センサ33aを備えている。なお、地上コントローラ13は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0012】
車両20に搭載される受電装置102は、車両20の底部適所に設置された受電コイル21と、該受電コイル21にて受信される交流電圧を直流化し、且つ平滑化する整流平滑回路22を備えている。更に、整流平滑回路22の作動を制御する車両コントローラ24(受電制御部)と、受電コイル21にて受信された電圧を充電するバッテリ23(電気負荷)と、地上ユニット51との間で通信を行う通信部25(受電側通信部)と、を備えている。受電コイル21は、車両20が駐車スペースの所定位置に駐車された際に、上述した送電コイル11と対向する位置となるように配置されている。そして、該受電コイル21は、受信した電力をバッテリ23に供給する。即ち、受信した電力を駆動力として車両20に供給する。
【0013】
また、受電装置102は、車両20の底部に設置されたサブコイルSC1,SC2,SC3,SC4を備えている。該サブコイルSC1〜SC4は、車両20が移動して駐車スペースの所定位置に停車するまでの間、送電コイル11より出力される励磁パターン信号を受信し、車両コントローラ24に出力する。各サブコイルSC1〜SC4の配置構成については、後述する。なお、車両コントローラ24は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶部からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0014】
図2は、車両20と複数の駐車スペース32,32aとの関係を示す説明図である。本実施形態では、各駐車スペース32,32aに設けられる地上ユニット51,51aと車両20に搭載される受電装置102との間で無線通信を行うことにより、受電装置102と該車両20が駐車する駐車スペース32に対応する送電装置101とをペアリングする処理を行う。そして、車両20とペアリングされた送電装置101の送電コイル11を通電して電力を送信し、受電装置102はこの電力を受信して、車両20に搭載されたバッテリ23(
図1参照)を充電する。
【0015】
図3は、
図1に示したパワーユニット12、送電コイル11、受電コイル21、整流平滑回路22、サブコイルSC1〜SC4、及びその周辺機器の詳細な構成を示す回路図である。
図3に示すように、パワーユニット12は、複数のスイッチ回路(例えば、半導体素子等)からなるインバータ回路31を備えている。そして、地上コントローラ13(
図1参照)の制御により各スイッチ回路のオン、オフを制御して、直流電源15より供給される直流電圧Vinを所定の周波数の交流電圧に変換する。
【0016】
送電コイル11には、抵抗R1及びコンデンサC1が接続されており、該送電コイル11にパワーユニット12より出力される交流電圧を印加して電流を流すことにより、送電コイル11を後述するペアリング用の励磁である第1励磁、及び車両20の位置合わせのための励磁である第2励磁とすることができる。更に、
図1に示すように、送電コイル11と受電コイル21が互いに対向する位置に配置された場合には、送電コイル11をバッテリ充電用の励磁である第3励磁とすることにより、非接触で受電コイル21にバッテリ充電用の電力を送信する。
【0017】
受電コイル21は、コンデンサC2及び抵抗R2に接続されており、送電コイル11より送信された電力を非接触で受信する。整流平滑回路22は、複数のダイオードからなるブリッジ回路、及びコンデンサC3を有しており、受電コイル21で受信した交流電圧を直流電圧に変換し、更に、平滑化してバッテリ23に供給する。
【0018】
サブコイルSC1〜SC4は、送電コイル11より出力される励磁パターン信号を受信した場合に、この励磁パターン信号を
図1に示す車両コントローラ24に出力する。即ち、車両20が駐車スペース32内に進入している際に、車両20の移動に伴ってサブコイルSC1〜SC4のうち少なくとも一つが送電コイル11に接近して、該送電コイル11より出力される励磁パターン信号が、サブコイルSC1〜SC4にて受信された場合に、この励磁パターン信号を車両コントローラ24に出力する。
【0019】
図4は、車両20の底部に搭載される受電コイル21、及び各サブコイルSC1〜SC4の配置、及び各サブコイルSC1〜SC4の受信可能領域を示す説明図である。
図4に示すように、受電コイル21に対して車両20の前方側にサブコイルSC2が設けられ、受電コイル21に対して車両20の後方側に2つのサブコイルSC3,SC4が設けられている。更に、受電コイル21に重複してサブコイルSC1が設けられている。サブコイルSC1は、受電コイル21と同一のコアに巻回されている。即ち、
図6に示すように、受電コイル21は、平板形状のフェライトコア61に螺旋状に巻回されており、更に、該フェライトコア61のほぼ中央部に、サブコイルSC1が巻回されている。
【0020】
図4に示すように、各サブコイルSC1,SC2,SC3,SC4の受信可能領域はそれぞれQ1,Q2,Q3,Q4とされている。つまり、受信可能領域が送電コイル11の励磁範囲と重複する位置となった場合に、該送電コイル11より出力される励磁パターン信号を受信することができる。この際、互いに隣接するサブコイルの受信可能領域は、その一部で重複している。具体的には、受信可能領域Q1とQ2が一部で重複し、同様に受信可能領域Q1とQ3、Q1とQ4、及びQ3とQ4が一部で重複している。受信可能領域の一部を重複させる理由は、車両20が駐車スペース32内の所定位置に向けて移動している際に、送電コイル11と、各サブコイルSC1〜SC4との間の励磁パターン信号の通信が途切れることを防止するためである。
【0021】
本実施形態では、車両20が駐車スペース32に接近した際には、送電コイル11を第1励磁とする。第1励磁では、後述するように、ペアリング信号を含む励磁パターン信号を出力する。そして、各サブコイルSC1〜SC4のうち少なくとも一つで受信される励磁パターン信号に含まれるペアリング信号に基づいて、受電装置102と送電装置101との間でペアリングを行う。更に、ペアリングが完了した後に送電コイル11を第2励磁とし、サブコイルSC1にて受信される励磁パターン信号の強度から、車両20が駐車スペース32内の所定位置に駐車しているか否かを判断する。その後、車両20が駐車スペース32内の所定位置に駐車していると判断された場合には、送電コイル11を第3励磁として、非接触給電を行う。
【0022】
ここで、第2励磁とする際に送電コイル11に供給する電力は、第1励磁とする際に送電コイル11に供給する電力よりも大きくしている。これは、送電コイル11が第1励磁とされているときに、車両コントローラ24が第2励磁であると誤認識することを防止するためである。
【0023】
以下、
図5に示すデータ列を参照して、第1励磁について説明する。第1励磁では、スタートビット、ID、データ長コード、識別データ、サム値、終了ビットのデータ列からなるペアリング信号を含むパターンで送電コイル11を励磁する。従って、送電コイル11より出力される励磁パターン信号は、
図5に示すペアリング信号を含むことになる。
【0024】
ペアリング信号に含まれる識別データには、各駐車スペース毎に割り当てられた固有のビット列が設定される。例えば、4ビットのデータとした場合には「1、0、1、0」が設定される。地上コントローラ13は、
図5に示すペアリング信号が含まれるように、送電コイル11に流れる電流を制御する。即ち、第1励磁では、識別データを含む励磁パターン信号で送電コイル11を励磁する。
【0025】
送電コイル11に、
図5に示したペアリング信号のデータ列で変調された電流が流れると、各サブコイルSC1〜SC4のうち、受信可能領域が送電コイル11の励磁範囲と重複しているサブコイルではペアリング信号が受信され、このペアリング信号は、
図1に示す車両コントローラ24に供給される。
【0026】
車両コントローラ24では、サブコイルで受信された励磁パターン信号に含まれるペアリング信号からデータ列を読み取り、識別データを認識する。そして、認識した識別データを、通信部25より通信部14に送信し、地上コントローラ13は、送電コイル11にて送信した識別データと通信部14で受信した識別データが一致した場合に、この駐車スペースと車両20をペアリングする。
【0027】
また、複数のサブコイルSC1〜SC4のうち、複数のサブコイルにて、データ列が受信された場合には、各データ列のORを演算する。この際、複数のサブコイルにて受信されるデータ列が、同一の送電コイル11より送信されたペアリング信号である場合には、ORを演算しても同一のデータ列となる。具体的に、ペアリング信号に含まれる識別データが「1,0,1,0」であり、複数のサブコイルでこのペアリング信号が受信された場合には、各ペアリング信号に含まれる識別データ「1,0,1,0」のORを演算しても、その結果は「1,0,1,0」となる。従って、この識別データを用いたペアリングが可能となる。
【0028】
一方、例えば、サブコイルSC3で受信されるペアリング信号に含まれる識別データと、サブコイルSC4で受信されるペアリング信号に含まれる識別データが異なる場合には、これらのORを演算すると、同一の識別データとはならない。例えば、サブコイルSC3で受信されたペアリング信号に含まれる識別データが「0,1,0,1」であり、サブコイルSC4で受信されたペアリング信号に含まれる識別データが「1,0,1,0」である場合には、これらのORを演算すると「1,1,1,1」となる。このデータは、意味をなさないデータとなるので、サム値がエラーとなる。車両コントローラ24は、サム値がエラーとなった場合には、ペアリングをキャンセルする。詳細については、後述する。
【0029】
次に、車両20が前進して駐車枠34内の駐車スペース32に進入するときの、サブコイルSC2(車両20の前方側に搭載されるサブコイル)で受信される電圧の変化について、
図7に示す説明図、及び
図8に示す波形図を参照して説明する。車両20が駐車スペース32内に進入し、サブコイルSC2の受信可能領域Q2が送電コイル11の励磁範囲の一部と重複すると、
図8(a)に示すように、時刻t0にてサブコイルSC2で受信される電圧が徐々に大きくなり、その後減少に転じる。そして、時刻t1においてサブコイルSC2にて受信される電圧が第1閾値電圧Vth1を上回ると、ペアリング信号のデータ列を認識できる。即ち、
図8(b)に示すように、時刻t1にて「0」、「1」で変化するペアリング信号のデータ列が取得される。そして、このデータ列を用いて、車両20と駐車スペース32のペアリングを行うことができる。
【0030】
次に、車両20が駐車スペース32に接近し、その後、駐車スペース32内の所定位置に停車するまでの動作について、
図9、
図10に示すフローチャート、及び
図14〜
図17に示す説明図を参照して説明する。
【0031】
図14は、車両20が駐車枠34内の駐車スペース32に接近している状態を示している。この際、地上コントローラ13は待機中とされ(
図9のステップa11)、車両コントローラ24は駐車スペース32に接近中である(ステップb11)。そして、通信部25よりLAN(Local_Area_Network)等の通信により、車両IDを含む無線信号を送信する(ステップb12)。
【0032】
地上ユニット51の通信部14は、この無線信号を受信すると、該無線信号に含まれる車両IDが正規の車両IDであることを認識する(ステップa13)。その後、地上ユニット51を起動させ(ステップa14)、地上ユニット51が起動したことを無線信号にて車両コントローラ24に通知する(ステップa15)。
【0033】
車両コントローラ24は、ディスプレイ(図示省略)等により地上ユニット51が起動したことを車両20の運転者に通知する(ステップb13)。その結果、運転者は地上ユニット51が起動したことを認識できる。車両コントローラ24は、ペアリング信号待ちとなる(ステップb14)。
【0034】
地上ユニット51が起動すると、地上コントローラ13は、車両検出センサ33を起動させる(ステップa16)。地上コントローラ13は車両20の接近待ち状態となる(ステップa17)。
【0035】
その後、
図15に示すように、車両20の一部が駐車スペース32の駐車枠内に侵入すると(ステップb15)、車両検出センサ33により、車両20が駐車スペース32内に侵入したことが検出される(ステップa18)。地上コントローラ13は、ペアリング信号を含む励磁パターン信号で送電コイル11を第1励磁とする(
図10のステップa19)。更に、第1励磁を継続させる(ステップa20)。このとき、車両コントローラ24は、ペアリング信号待ち状態とされる(ステップb16)。
【0036】
その後、
図16に示すように、車両20が駐車スペース32内の送電コイル11に接近し、サブコイルSC4の受信可能領域Q4が送電コイル11の励磁範囲と重複する位置に達すると(ステップb17)、サブコイルSC4にてペアリング信号が受信され、車両コントローラ24は、このペアリング信号に含まれる識別データを認識する(ステップb18)。
【0037】
車両コントローラ24は、認識した識別データを、通信部25より送信し、地上コントローラ13に対してペアリングを要求する(ステップb19)。地上コントローラ13は、識別データを受信し(ステップa21)、第1励磁で送信したペアリング信号に含まれる識別データと、車両コントローラ24より送信された識別データの一致、不一致を判断する。そして、両者が一致した場合には、受電装置102と送電装置101をペアリングする(ステップa22)。ペアリング処理の詳細については、後述する。その後、地上コントローラ13は、充電可能位置判断制御を開始する(ステップa23)。
【0038】
車両コントローラ24は、ペアリングされたことを認識し(ステップb20)、充電可能位置判断制御を開始する(ステップb21)。
【0039】
地上コントローラ13は、送電コイル11を第2励磁とするように、該送電コイル11に流れる電流を制御する(ステップa24)。その後、非接触充電に移行する(ステップa25)。車両コントローラ24は、受電コイル21の近傍に設けられているサブコイルSC1で受信される電圧の大きさを判断する(ステップb22)。この受電電圧判断処理の詳細については、後述する。
【0040】
そして、
図17に示すように、車両20が駐車スペース32内の所定位置に停車した場合、即ち、送電コイル11と受電コイル21が互いに向き合う位置に達した場合には、非接触充電に移行する(ステップb23)。
【0041】
次に、
図10のステップb22に示した受電電圧判断処理の詳細な手順を
図11に示すフローチャートを参照して説明する。受電電圧判断処理が開始されると、地上コントローラ13は、送電コイル11を第2励磁とする。即ち、前述した第1励磁よりも高い電圧で送電コイル11を励磁し、該送電コイル11より電力を送信する。
【0042】
図11のステップS11において、受電コイル21に併設されたサブコイルSC1が第2励磁による電力を受信すると、車両コントローラ24は、この電力による電圧が予め設定した第2閾値電圧Vth2(>Vth1)に達しているか否かを判断する。
【0043】
そして、第2閾値電圧Vth2に達していない場合には(ステップS12でNO)、車両20の停車位置が所定位置に達していないと判断し、ステップS13においてその旨を運転者に通知し、ステップS11に処理を戻す。
【0044】
一方、サブコイルSC1で受信される電圧が閾値電圧Vth2に達している場合には(ステップS12でYES)、車両20は所定位置に
到達しているものと判断する。そして、ステップS14において、車両の停車位置が充電可能位置に到達していることをディスプレイ(図示省略)等に表示して、運転者に通知する。運転者は、この表示を見ることにより、車両20を停止させる。
【0045】
即ち、送電コイル11とサブコイルSC1が重複する面積の大きさが大きいほど、サブコイルSC1で受信される電圧が増加する。従って、サブコイルSC1で受信される電圧を監視することにより、駐車スペース32内の所定位置(充電可能な位置)に車両20が停車しているか否かを判断することができる。
【0046】
ステップS15において、運転者による充電開始要求が入力されたか否かを判断する。そして、充電開始要求が入力された場合には(ステップS15でYES)、ステップa25,b23において、バッテリ23の充電を開始する。
【0047】
上記の処理を、
図18(a),(b)を参照して説明する。
図18(a)は送電コイル11に励磁される電圧変化を示す波形図、
図18(b)はサブコイルSC1で受信される電圧変化を示す波形図である。
図18(a)に示す時刻t0にて送電コイル11を第1励磁とする。即ち、送電コイル11をペアリング信号を含む励磁パターン信号で励磁する。サブコイルSC1では、
図18(b)に示すように、時刻t0にてペアリング信号が受信され、更に、受信信号の強度が強くなり、時刻t1にてペアリングが行われる。その後、時刻t2にて送電コイル11を第1励磁から第2励磁に切り替える。車両20は駐車スペース32に対して移動しているので、受電コイル21で受信される電圧は
図18(b)に示すように変動する。そして、受信電圧が予め設定した第2閾値電圧Vth2に達した場合に、車両20が充電可能位置に達していると判断する。
【0048】
なお、本実施形態では、サブコイルSC1で受信される電圧の大きさから車両20が充電可能位置に停車しているか否かを判断する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、受電コイル21で受信される電圧の大きさから車両20が充電可能位置に停車しているか否かを判断することも可能である。
【0049】
次に、
図10のステップa22に示したペアリング処理の詳細な手順について、
図12に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
初めに、ステップS31において、車両コントローラ24は、各サブコイルSC1〜SC4のうちのいずれかでペアリング信号が受信されている場合には、該ペアリング信号から識別データを取得する。この際、2以上のサブコイルにてペアリング信号が受信されている場合には、各サブコイルで受信されたペアリング信号に含まれる識別データを合成した合成データを取得する。
【0051】
以下、合成データの生成方法について、
図19に示す説明図及び
図20、
図21に示す波形図を参照して説明する。
図19は、車両20が駐車スペース32に進入するときの位置関係を示す説明図、
図20は2つのサブコイルSC4,SC1の受信信号を示す波形図である。
図19に示すように、車両20が後退しながら図中矢印Y1のように駐車スペース32に進入すると、初めに、サブコイルSC4の受信可能領域Q4が送電コイル11の励磁範囲と重複するので、
図20(a)に示すように、サブコイルSC4で受信される電圧が徐々に上昇し、時刻t11にて通信可能な電圧である第1
閾値電圧Vth1に達する。その後、車両20が更に駐車スペース32内に進入すると、サブコイルSC4の受信可能領域Q4は送電コイル11から徐々に遠ざかるので、サブコイルSC4で受信される電圧は下降に転じる。
【0052】
一方、受電コイル21と同一のコア(
図6のフェライトコア61)に巻回されたサブコイルSC1の受信可能領域Q1は、受信可能領域Q4よりも遅れて送電コイル11の励磁範囲と重複するので、
図20(b)に示すように、時刻t12において第1
閾値電圧Vth1に達する。この際、受信可能領域Q1とQ4がそれぞれの一部で重複するので、サブコイルSC4で受信される電圧が第1
閾値電圧Vth1を下回る時刻t13よりも早い時刻t12にて、サブコイルSC1で受信される電圧が第1
閾値電圧Vth1を
達することになる。従って、送電コイル11との間の通信をサブコイルSC4からサブコイルSC1に引き継ぐことができ、途中で通信が途切れることを防止できる。
【0053】
これは、サブコイル
SC4とSC1との関係のみならず、SC1とSC2,
SC1とSC3,SC3とSC4の間、即ち、互いに隣接するサブコイルどうしで、各受信可能領域の一部が重複している。従って、互いに隣接するサブコイル間において、途中で通信が途切れることを防止できる。
【0054】
また、サブコイルSC4は、
図20(a)に示すように、受信される電圧が第1閾値電圧Vth1を上回る時間帯(t11〜t13)にて、「0」、「1」で変化する識別データを取得できる。その結果、
図21(a)に示すように、時刻t11〜t13の時間帯にて識別データが取得される。一方、サブコイルSC1は、
図20(b)に示すように、時刻t12において、受信電圧が閾値電圧Vth1に達するので、時刻t12以後に識別データを取得できる。その結果、
図21(b)に示す如くの識別データが取得される。車両コントローラ24は、双方の識別データを合成し、合成データを生成する。具体的には、サブコイルSC4で取得した識別データ(
図21(a)の波形)とサブコイルSC1で取得した識別データ(
図21(b)の波形)のORを演算することにより、合成データを求める。その結果、
図21(c)に示す合成データが得られる。
なお、本実施形態では、
図21(a)〜(c)に示したように、2つの識別データのORを演算して合成データを求める例について説明したが、2つの識別データを重ね合わせて得られる信号から合成データを求めるようにしてもよい。例えば、
図22に示すように、サブコイルSC4にて曲線q13に示す受信信号が得られ、サブコイルSC1にて曲線q12に示す受信信号が得られた場合には、各受信信号q12,q13を合成した信号q11を合成データとすることができる。即ち、受信信号q12とq13のうちのいずれか大きい方の信号を求めることにより、ORを演算することと同様の合成データを取得することができる。
【0055】
図12に示すステップS32において、車両コントローラ24は、合成データのサム値を演算する。そして、ステップS33において、ステップS32で求めたサム値が、送電コイル11より送信した識別データのサム値と一致するか否かを判断する。そして、一致しない場合には(ステップS33でNO)、ペアリングを行わず、現時点でペアリングされている場合には、ステップS34において、このペアリングをキャンセルする。その後、ステップS31に処理を戻す。
【0056】
一方、サム値が一致する場合には(ステップS33でYES)、ステップS35において、車両コントローラ24は、ペアリングを開始する。この処理では、合成データのデータ列と、送電コイル11より送信した識別データのデータ列を対比し、双方が一致した場合には、この車両20の受電装置102と送電装置101をペアリングさせる。具体的には、例えば合成データのデータ列が「1,0,1,0」であり、送電コイル11より送信した識別データのデータ列が「1,0,1,0」である場合には、双方は一致するので、これらをペアリングさせる。
【0057】
ステップS36において、車両コントローラ24は、ペアリングが成功したか否かを判断する。そして、ペアリングに成功しない場合には(ステップS36でNO)、ステップS31に処理を戻す。ペアリングに成功した場合には(ステップS36でYES)、ステップa23において、充電可能位置判断制御を開始する。
【0058】
次に、車両コントローラ24にて取得される合成データと、地上コントローラ13より送信された識別データが一致する場合、及び一致しない場合について詳細に説明する。
図19に示したように、車両20が駐車スペース32の駐車枠34内に正常に進入している場合には、各サブコイルSC1〜SC4で取得される識別データは、同一の送電コイル11より送信される識別データとなる。
【0059】
従って、各サブコイルSC1〜SC4にて取得される識別データのORを演算して合成データを生成した場合、この合成データは、地上コントローラ13より送信された識別データと一致する。即ち、
図21(a)〜(c)にて説明したように、サブコイルSC4で受信された識別データと、サブコイルSC1で受信された識別データを合成して合成データを生成すると、この合成データは送電コイル11より送信された識別データと一致する。よって、
図12のステップS33の処理では、合成データのサム値が一致すると判断されるので、この合成データを用いたペアリングが行われる。
【0060】
一方、各サブコイルSC1〜SC4にて取得される識別データが一致しない場合には、送電コイル11より送信される識別データと、各サブコイルSC1〜SC4で受信される識別データの合成データとが一致しないので、エラーとなる。以下、これを
図23に示す説明図、及び
図24に示す波形図を参照して説明する。
【0061】
図23に示すように、車両20が2つの駐車スペース32,32aに跨って進入した場合を考える。この場合には、サブコイルSC3は、駐車スペース32の送電コイル11より送信されたペアリング信号を受信する。一方、サブコイルSC4は、駐車スペース32aの送電コイル11aより送信されたペアリング信号を受信する。その結果、サブコイルSC3で取得される識別データは、
図24(a)に示す波形となり、サブコイルSC4で取得される識別データは、
図24(b)に示す波形となる。
【0062】
そして、双方の波形は相違するので、双方のORを演算して合成データを生成すると、
図24(c)に示すように、意味をなさない波形となる。従って、
図12のステップS33の処理では、サム値が不一致と判断され、ペアリングがキャンセルされる。
【0063】
つまり、
図23に示すように、車両20が2つの駐車スペース32,32aに跨って進入した場合には、いずれの駐車スペース32,32aともペアリングが行われない。従って、車両20の運転者は、車両20を移動させて、所望の駐車スペース内に進入する操作を行うことになる。
【0064】
また、
図23では、受電コイル21の後方側に設けられるサブコイルSC3、及びサブコイルSC4で取得される識別データが相違する場合に、ペアリングをキャンセルする例について示したが、受電コイル21の前方側に設けられるサブコイルSC2と、後方側に設けられるサブコイルSC3またはSC4との間で識別データが相違した場合においても、ペアリングをキャンセルする。即ち、本実施形態に係る
非接触給電システムでは、受電コイル21の前方側に設けられたサブコイルで受信される識別データと、受電コイル21の後方側に設けられたサブコイルで受信される識別データが相違する場合には、ペアリングをキャンセルする。
【0065】
更に、複数の識別データを合成しなくても、各サブコイルSC1〜SC4で取得される識別データを対比し、少なくとも一つの識別データが他の識別データと相違する場合に、ペアリングをキャンセルすることも可能である。
【0066】
次に、受電装置102と送電装置101がペアリングされ、その後、該駐車スペース32から逸脱する場合の動作を、
図13に示すフローチャート、及び
図25に示す説明図を参照して説明する。この動作は、車両20と駐車スペース32とのペアリングが完了し、その後、バッテリ23の充電を行わずに車両20を駐車スペース32から逸脱する場合に等に行われる。
【0067】
初めに、
図13のステップS51において、車両コントローラ24は、合成データの待ち受け状態となる。ステップS52において、各サブコイルSC1〜SC4にてペアリング信号が受信され、識別データが取得されたか否かを判断する。そして、一定時間以上識別データが取得されない場合には(ステップS52でNO)、ステップS53において、ペアリングをキャンセルする。その後、ステップS51に処理を戻す。
【0068】
一方、識別データが取得された場合には(ステップS52でYES)、ステップS54において、車両コントローラ24は、各サブコイルで取得した識別データのORを演算し、合成データを生成する。
【0069】
ステップS55において、車両コントローラ24は、生成した合成データのサム値を演算し、更に、ステップS56において、地上コントローラ13より送信されたペアリング信号に含まれる識別データのサム値と一致するか否かを判断する。
【0070】
その結果、一致しない場合には(ステップS56でNO)、ステップS53において、ペアリングをキャンセルする。一方、一致する場合には(ステップS56でYES)、ステップS57において、車両コントローラ24は、ペアリングを開始する。ステップS58において、車両コントローラ24は、ペアリングが成功したか否かを判断し、成功している場合には、ステップa23(
図10参照)において、充電可能位置判断制御を開始する。
【0071】
このように、車両20が駐車スペース32から逸脱する場合には、各サブコイルSC1〜SC4と送電コイル11との間の通信が途切れた場合に、即時にペアリングがキャンセルされることになる。
【0072】
このようにして、本実施形態に係る非接触給電システムでは、車両20の底面に複数のサブコイルSC1〜SC4を搭載している。また、車両20が駐車スペース32に接近すると、送電コイル11が第1励磁とされ、ペアリング信号が送信される。そして、このペアリング信号がサブコイルSC1〜SC4の少なくとも一つで受信されると、このペアリング信号に含まれる識別データと、送電コイル11より送信されたペアリング信号に含まれる識別データとの一致が判断され、一致した場合には、この車両20に搭載される受電装置102と、送電装置101がペアリングされる。
【0073】
従って、車両20が駐車スペース32内の所定位置に停車する前の時点で、車両20と駐車スペース32をペアリングすることが可能となる。その結果、ペアリングの後に実行する充電可能位置判断制御、及び、非接触充電を迅速に行うことが可能となる。
【0074】
また、受電コイル21に対して前方側、及び後方側のそれぞれに少なくとも一つのサブコイルを搭載している。具体的には、受電コイル21の前方側にサブコイルSC2を搭載し、受電コイル21の後方側にサブコイルSC3,SC4を搭載している。従って、車両20が前進して駐車スペース32に接近する場合、及び車両20が後退して駐車スペース32に接近する場合の双方において、送電コイル11より送信される識別データをいずれかのサブコイルにて受信することができる。
【0075】
更に、受電コイル21の前方側、及び後方側の少なくとも一方には、2以上のサブコイルが設けられている。具体的には、受電コイル21の後方側には、2つのサブコイルSC3,SC4が設けられている。従って、一旦ペアリングが成立した場合には、その後の車両20が移動して駐車スペース32の所定位置に到達するまで、ペアリング信号の受信を継続させることができる。
【0076】
また、互いに隣接するサブコイルの受信可能領域は、それぞれの一部が互いに重複しているので、送電コイル11との間の通信が途切れることを防止できる。
【0077】
また、サブコイルにて受信される識別データまたはこれらの合成データのサム値と、送電コイルより送信した識別データのサム値が一致しない場合には、識別データを送信しない。即ち、車両コントローラ24は、合成した識別データの健全性を判断し、健全でなければ、合成した識別データを地上ユニット51に送信しないので、例えば、複数の駐車スペースより送信される識別データが混在する場合には、ペアリングを回避し、運転者に対して、車両20の駐車位置が不正であることを認識させることができる。
【0078】
更に、全てのサブコイルSC1〜SC4で受信されるペアリング信号が途切れた場合、或いは、ペアリング信号に含まれる識別データが、地上ユニット51より送信するペアリング信号に含まれる識別データと一致しなくなった場合には、ペアリングがキャンセルされる。従って、車両20が駐車スペース32から逸脱する場合には、各サブコイルSC1〜SC4と送電コイル11との間の通信が途切れた際に、即時にペアリングがキャンセルされることになる。このため、車両20は、即時に他の駐車スペースとの間でのペアリング動作に移行することが可能となる。更に、ペアリングがキャンセルされた駐車スペース32は、他の車両との間でのペアリングに移行することが可能となる。
【0079】
[本実施形態の変形例の説明]
前述した実施形態では、車両20の底部に設けるサブコイルとして、
図4に示したサブコイルSC1〜SC4を搭載する例について説明した。即ち、受電コイル21と同一のコアに巻回されたサブコイルSC1と、該サブコイルSC1の前方側に設けられるサブコイルSC2と、サブコイルSC1の後方側の左右にそれぞれ設けられるサブコイルSC3,SC4を搭載する例について説明した。
【0080】
本発明は、受電コイル21の前方側、及び後方側のそれぞれに、少なくとも一つのサブコイルを搭載すればよく、
図4に示したサブコイルの配置以外に、例えば、
図26(a)〜(d)に示すようにしてもよい。
図26(a)は、受電コイル21の前方側に設けられるサブコイルSC2と、受電コイル21の後方側に設けられるサブコイルSC5と、を備えている。また、受電コイル21の近傍にはサブコイルは搭載されない。即ち、
図4に示したサブコイルSC1を搭載していない。そして、受電コイル21の周囲に受信可能領域Q0が設定され、サブコイルSC2の周囲に受信可能領域Q2が設定され、サブコイルSC5の周囲に
受信可能領域Q5が設定されている。
【0081】
この場合、受電コイル21にて、送電コイル11より送信されるペアリング信号を受信し、識別データを取得する。つまり、受電コイル21の受信可能領域Q0が送電コイル11の励磁範囲と重複した際には、該送電コイル11より送信されるペアリング信号が受電コイル21にて受信されるので、該受電コイル21で受信されたペアリング信号に含まれる識別データを取得して、ペアリングを行う。そして、このようなサブコイルの配置構成とした場合においても、前述した実施形態と同様の効果を達成できる。また、受電コイル21を用いて識別データを取得するので、サブコイルの個数を削減できる。
【0082】
図26(b)は、受電コイル21と同一のコアに巻回されたサブコイルSC1と、受電コイル21の前方側に設けられたサブコイルSC2と、受電コイル21の後方側に設けられたサブコイルSC5を備えている。そして、サブコイルSC1の周囲に受信可能領域Q1が設定され、サブコイルSC2の周囲に受信可能領域Q2が設定され、サブコイルSC5の周囲に
受信可能領域Q5が設定されている。このようなサブコイルの配置構成とした場合においても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
図26(c)は、受電コイル21の前方側に設けられるサブコイルSC2と、受電コイル21の後方側の左右にそれぞれ設けられるサブコイルSC3,SC4と、該サブコイルSC3,SC4よりも後方側に設けられるサブコイルSC6を備えている。そして、受電コイル21の周囲に受信可能領域Q0が設定され、サブコイルSC2の周囲に受信可能領域Q2が設定され、サブコイルSC3の周囲に受信可能領域Q3が設定され、サブコイルSC4の周囲に受信可能領域Q4が設定され、サブコイルSC6の周囲に受信可能領域Q6が設定されている。このようなサブコイルの配置構成とした場合においても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
図26(d)は、受電コイル21の前方側に設けられるサブコイルSC2と、受電コイル21の後方側の左右にそれぞれ設けられるサブコイルSC3,SC4を備えている。そして、受電コイル21の周囲に受信可能領域Q0が設定され、サブコイルSC2の周囲に受信可能領域Q2が設定され、サブコイルSC3の周囲に受信可能領域Q3が設定され、サブコイルSC4の周囲に受信可能領域Q4が設定されている。このようなサブコイルの配置構成とした場合においても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
以上、本発明の非接触給電システム、及び非接触受電装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0086】
例えば、前述した実施形態では、電気負荷としてバッテリ23を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電動機を電気負荷とすることができる。