特許第6237899号(P6237899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237899
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】タッチパネル、および入力操作端末
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G06F3/041 602
   G06F3/041 495
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-529279(P2016-529279)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】JP2015066813
(87)【国際公開番号】WO2015194446
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-127070(P2014-127070)
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 尚志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠人
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/041130(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/019981(WO,A1)
【文献】 特開2007−086990(JP,A)
【文献】 特開2014−238277(JP,A)
【文献】 特開2013−200757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面が操作面であり、当該操作面の押圧によりひずみが生じる操作入力用部材と、
前記操作入力用部材の非操作面側に配置された表示部と、
キラル高分子からなる圧電性フィルムの両主面側に、この圧電性フィルムを挟むように対向させた検出用導体を積層した帯状の押圧センサと、を備え、
前記押圧センサは、前記表示部の周囲に配置され、前記表示部に表示される矩形形状の操作画面の寸法以上の長さで長手方向に延び、前記操作面を2つに分割する第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着され、且つ前記操作面の押圧位置を検出し、
前記操作面を通して前記操作画面を表示する、タッチパネル。
【請求項2】
一方の主面が操作面であり、当該操作面の押圧によりひずみが生じる操作入力用部材と、
前記操作入力用部材の非操作面側に配置された表示部と、
キラル高分子からなる圧電性フィルムの両主面側に、この圧電性フィルムを挟むように対向させた検出用導体を積層した帯状の押圧センサと、を備え、
前記押圧センサは、前記表示部の周囲に配置され、前記表示部に表示される矩形形状の操作画面の寸法以上の長さで長手方向に延び、前記操作面を2つに分割する第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着されているとともに、前記第1の直線に直交する第2の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側にも装着され、且つ前記操作面の押圧位置を検出し、
前記操作面を通して前記操作画面を表示する、タッチパネル。
【請求項3】
一方の主面が操作面であり、当該操作面の押圧によりひずみが生じる操作入力用部材と、
前記操作入力用部材の非操作面側に配置された表示部と、
キラル高分子からなる圧電性フィルムの両主面側に、この圧電性フィルムを挟むように対向させた検出用導体を積層した帯状の押圧センサと、を備え、
前記押圧センサは、前記表示部の周囲に配置され、前記表示部に表示される矩形形状の操作画面の寸法未満の長さで長手方向に延び、前記操作面を2つに分割する第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着され、且つ前記操作面の押圧位置を検出し、
前記操作画面は、押圧対象が表示される第1画面領域と、押圧対象が表示されない第2画面領域とを含み、
前記押圧センサは、前記操作面において押圧を検知しない押圧非検知領域を有し、
少なくとも一つの前記押圧非検知領域は、前記第1画面領域に重ならずに前記第2画面領域に重なり、
前記操作面を通して前記操作画面を表示する、タッチパネル。
【請求項4】
一方の主面が操作面であり、当該操作面の押圧によりひずみが生じる操作入力用部材と、
前記操作入力用部材の非操作面側に配置された表示部と、
キラル高分子からなる圧電性フィルムの両主面側に、この圧電性フィルムを挟むように対向させた検出用導体を積層した帯状の押圧センサと、を備え、
前記押圧センサは、前記表示部の周囲に配置され、前記表示部に表示される矩形形状の操作画面の寸法未満の長さで長手方向に延び、前記操作面を2つに分割する第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着されているとともに、前記第1の直線に直交する第2の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側にも装着され、且つ前記操作面の押圧位置を検出し、
前記操作画面は、押圧対象が表示される第1画面領域と、押圧対象が表示されない第2画面領域とを含み、
前記押圧センサは、前記操作面において押圧を検知しない押圧非検知領域を有し、
少なくとも一つの前記押圧非検知領域は、前記第1画面領域に重ならずに前記第2画面領域に重なり、
前記操作面を通して前記操作画面を表示する、タッチパネル。
【請求項5】
前記操作入力用部材は、前記操作面が矩形形状であり、
前記押圧センサは、前記操作入力用部材の主面の外周辺に沿って装着されている、請求項1〜4のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記押圧センサは、前記操作入力用部材の前記操作面に対向する他方の主面に装着されている、請求項1〜5のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記圧電性フィルムは、一軸方向に延伸されたポリ乳酸である、請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記圧電性フィルムは、その延伸方向と、前記第1の直線とがなす鋭角が略45°である、請求項1〜7のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項9】
請求項1、または3に記載のタッチパネルと、
前記第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着されている2つの前記押圧センサの発電量に基づき、前記第1の直線に直交する方向における、前記操作入力用部材の前記操作面の押圧位置を算出する演算部と、を備えた入力操作端末。
【請求項10】
請求項2、または4に記載のタッチパネルと、
前記第1の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着されている2つの前記押圧センサの発電量に基づき、前記第1の直線に直交する方向における、前記操作入力用部材の前記操作面の押圧位置を算出するとともに、前記第2の直線を挟んだ前記操作入力用部材の両側に装着されている2つの前記押圧センサの発電量に基づき、前記第2の直線に直交する方向における、前記操作入力用部材の前記操作面の押圧位置を算出する演算部と、を備えた入力操作端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作者による操作面への押圧操作を検出するタッチパネル、およびタッチパネルを利用した入力操作端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作者による操作面への押圧操作を検出するタッチパネルが各種考案されている。タッチパネルには、静電容量方式、熱抵抗方式、圧電音響方式、赤外線センサ方式等がある。操作面上の押圧位置に加えて、押圧力を検出するタッチパネルには、押圧検出センサが別途設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、平板状の圧電シートの対向する両主面に、マトリックス状の電極を形成したタッチパネルが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、圧電シートの対向する両主面上に、対向する一対の電極を離散的に複数個所設けたタッチパネルが記載されている。
【0005】
特許文献1、および2は、ともに圧電シートの両主面を表示器の表示面に対向させて配置し、圧電シートの一方の主面(表示面の反対側に位置する主面)を操作者による操作面とした構成である。
【0006】
タッチパネルを利用した入力操作装置は、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯端末だけでなく、券売機、ATM等の大型機器にも、入力デバイスとして組み込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−163618号公報
【特許文献2】特開2011−253517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、および2に記載されたタッチパネルは、表示器の表示面に対向する圧電シートに電極を設ける構成であるため、操作面の透過性を低下させる。すなわち、特許文献1、および2に記載されたタッチパネルは、表示器の表示面に表示した画像に対する操作者の視認性を低下させる。
【0009】
この発明の目的は、表示器の表示面に表示されている画像の視認性の低下を抑え、且つ操作面上の押圧位置に加えて、押圧力を検出する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
この発明にかかるタッチパネルは、一方の主面が操作面であり、当該操作面の押圧によりひずみが生じる操作入力用部材と、圧電性フィルムの両主面側に、この圧電性フィルムを挟むように対向させた検出用導体を積層したと押圧センサと、を備える構成である。また、押圧センサは、操作面を2つに分割する第1の直線を挟んだ操作入力用部材の両側に装着されている。
【0012】
この構成では、操作入力用部材を、例えばガラスやPET(polyethyleneterephthalate)の平板によって形成することで、十分な透過性を得ることができる。したがって、操作用入力部材の主面を表示器の表示面に対向させて配置したときに、この表示器の表示面に表示した画像に対する操作者の視認性を十分に確保できる。
【0013】
また、押圧センサは、表示器の表示面の外周に対向する位置や、表示面に対向しない位置等にずらして、操作入力用部材に装着することができる。したがって、操作入力用部材に装着した押圧センサによって、表示器の表示面に表示した画像に対する操作者の視認性を低下させない。
【0014】
また、操作面の押圧により生じた操作入力用部材のひずみにともなって、押圧センサの圧電性フィルムがひずむ。操作入力用部材は、操作面の押圧力に応じてひずむ。また、圧電性フィルムは、ひずみ量に応じた電荷を発生する。したがって、押圧センサ(圧電性フィルム)で発生した電荷量(発電量)を検出することで、操作入力用部材の操作面の押圧力を検出することができる。
【0015】
また、第1の直線を挟んだ操作入力用部材の両側に装着されている2つの押圧センサ(圧電性フィルム)で発生した電荷量(発電量)を用いることで、この第1の直線に直交する方向における押圧位置を検出することができる。すなわち、操作面上の第1の直線に直交する方向における1次元座標で押圧位置を検出することができる。
【0016】
また、第1の直線に直交する第2の直線を挟んだ操作入力用部材の両側にも、追加的に押圧センサを装着した構成にすれば、操作面上の2次元座標で押圧位置を検出することができる。この2次元座標は、直交する第1の直線、および第2の直線を軸とする座標系である。
【0017】
また、押圧センサが操作画面の寸法以上の長さで長手方向に延びる形状であれば、操作画面の大部分で押圧を検知することができる。一方、押圧センサが操作画面の寸法未満の長さで長手方向に延びる場合には、押圧センサが押圧を検知不能な領域が、操作画面において押圧対象が表示される領域に重ならずに、押圧対象が表示されない領域に重なるように押圧センサを配置すれば、少なくとも操作画面において押圧対象が表示される領域の大部分で押圧を検知することができる。
【0018】
また、押圧センサの発電量を入力とし、所定の演算処理を行う演算部を備えることで、押圧力や押圧位置を検出することができる入力操作端末を構成できる。
【0019】
また、操作入力用部材は、操作面が矩形形状である場合には、この操作入力用部材の主面の外周辺に沿って押圧センサを装着するのが好ましい。このようにすれば、操作面の押圧により生じた操作入力用部材のひずみを、効率的に押圧センサ(圧電性フィルム)に伝達できる(圧電性フィルムのひずみを大きくできる。)。
【0020】
また、押圧センサは、操作入力用部材の操作面に対向する他方の主面に装着されている。
【0021】
圧電性フィルムは、一軸方向に延伸されたポリ乳酸等で構成すればよい。この場合、圧電性フィルムの延伸方向は、第1の直線となす鋭角を略45°にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、表示器の表示面に表示されている画像の視認性の低下を抑え、且つ操作面上の押圧位置に加えて、押圧力を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】タッチパネルを備える入力操作端末の主要部の構成を示すブロック図である。
図2】タッチパネルを備える入力操作端末の外観を示す概略図である。
図3】タッチパネルを示す概略の平面図である。
図4図4(A)は、図2に示すA−A方向の断面図であり、図4(B)は、図2に示すB−B方向の断面図である。
図5図5(A)は、押圧センサの側面図であり、図5(B)は押圧センサの平面図である。
図6図6(A)は、Y軸方向の押圧位置にかかる測定手順を示す図であり、図6(B)は、測定結果を示す図である。
図7図7(A)、(B)は、それぞれ別の例にかかるタッチパネルを示す概略の平面図である。
図8図8(A)、(B)は、別の例にかかるタッチパネルを示す概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1は、この例にかかるタッチパネルを備える入力操作端末の主要部の構成を示すブロック図である。この例にかかる入力操作端末1は、制御部2と、表示部3と、センサ部4と、を備えている。制御部2は、入力操作端末1本体各部の動作を制御する。また、制御部2は、この発明で言う演算部に相当する構成を有する。表示部3は、表示器31と、表示制御部32とを有する。表示部3は、制御部2の指示にしたがって、表示制御部32が表示器31における画面表示を制御する。表示器31は、入力操作端末1本体の小型化の面から、液晶や有機EL(Electro Luminescence)等を利用した薄型の表示器であるのが好ましい。センサ部4は、押圧センサ41〜44を有する。この押圧センサ41〜44の詳細については、後述する。
【0026】
図2は、この例にかかる入力操作端末の外観を示す概略図である。図3は、この例にかかる入力操作端末に利用したタッチパネルを示す概略の平面図である。図4(A)は、図2に示すA−A方向の断面図であり、図4(B)は、図2に示すB−B方向の断面図である。入力操作端末1の筐体10は、図2に示すように、ほぼ直方体形状である。筐体10は、図2における上面に、矩形状の開口面を有する形状である。筐体10内には、制御基板20が取り付けられている。この制御基板20には、上述の制御部2にかかる回路や、表示制御部32にかかる回路が形成されている。
【0027】
また、筐体10内には、表示器31が取り付けられている。表示器31は、タッチ操作や押圧操作を受け付ける操作画面49を表示面に表示する。表示器31は、制御基板20と、筐体10上面の開口面との間に位置する。表示器31の表示面は、筐体10上面の開口面に対向している。表示器31の表示面および操作画面49は、筐体10上面の開口面とほぼ同じ大きさである(縦、および横の長さがほぼ同じである。)。表示器31は、表示面の中心と、筐体10上面の開口面の中心とが一致するように、筐体10に取り付けられている。
【0028】
また、筐体10上面の開口面には、この開口面を塞ぐように図3に示すタッチパネル40が取り付けられている。このタッチパネル40が、上述のセンサ部4を構成する。タッチパネル40は、図3に示すように、板部材45と、4つの押圧センサ41〜44を有している。板部材45は、主面を筐体10上面の開口面に対向させて取り付けている。図3において、破線で示す矩形領域が筐体10上面の開口面である。すなわち、板部材45の主面は、図3に示すように、筐体10上面の開口面よりも大きい(縦、および横の長さが長い。)。また、板部材45の主面の形状は、図3に示すように矩形である。また、タッチパネル40は、板部材45の主面の中心と、筐体10上面の開口面の中心とを一致させて、筐体10に取り付けている。タッチパネル40は、筐体10の内部に位置し、接着剤で取り付けている。接着剤は、筐体10上面の開口面の外側において、タッチパネル40と筐体10とが当接する箇所に塗布している。したがって、板部材45は、筐体10上面の開口面を通して一方の主面が外側に露出している。
【0029】
また、板部材45は、透過性がよく、ある程度の剛性を有する材料からなる。板部材45は、例えば、ガラスやPET(polyethylene terephthalate)の平板によって形成されている。したがって、操作者は、筐体10上面の開口面を塞ぐタッチパネル40の板部材45を通して、表示器31の表示面を見ることができる。したがって、表示器31が、タッチ操作や押圧操作を受け付ける操作画面49を表示面に表示すると、操作者は、タッチパネル40の操作面を通して、その操作画面49を見て、タッチパネル40をタッチ操作や押圧操作することができる。ここでは、板部材45が、この発明で言う操作入力用部材に相当する。また、板部材45は、筐体10上面の開口面を通して外側に露出している面(板部材45の一方の主面)が、この発明で言う操作面に相当する。
【0030】
また、タッチパネル40は、4つの押圧センサ41〜44を板部材45の操作面に対向する他方の主面に装着している。4つの押圧センサ41〜44は、板部材45の各辺に沿って装着されている。また、4つの押圧センサ41〜44は、図3に示すように、筐体10の開口面や表示器31の表示面に対向する位置の外側に沿って、すなわち操作画面49の外側に沿って装着されている。したがって、押圧センサ41〜44は、板部材45を通して表示器31の表示面を見る操作者の視野に入らない。すなわち、押圧センサ41〜44は、表示器31の表示面に表示されている画像の視認性を低下させない。また、図3に示すX軸と、Y軸とは、板部材45の操作面において直交する軸であり、一方がこの発明で言う第1の直線に相当し、他方がこの発明で言う第2の直線に相当する。この例では、板部材45の操作面の位置は、この操作面の中心を原点としたX−Y座標系(2次元座標系)であらわされる。
【0031】
図3に示すように、押圧センサ41、42は、X軸対称に装着されている。同様に、押圧センサ43、44は、Y軸対称に装着されている。押圧センサ41、42は、Y軸方向における板部材45の操作面の押圧位置を検出するための一対のセンサであり、押圧センサ43、44は、X軸方向における板部材45の操作面の押圧位置を検出するための一対のセンサである。
【0032】
より具体的には、ここでは、押圧センサ41と押圧センサ42とは、操作画面49を間に挟んで、Y軸方向に互いに対向するように配置している。そして、押圧センサ41と押圧センサ42とは、それぞれ、X軸方向を長手方向として延びる帯状であり、長手方向(X軸方向)の寸法を、同方向における操作画面49の寸法と同じ寸法(またはより大きな寸法)としている。また、押圧センサ43と押圧センサ44とは、操作画面49を間に挟んで、X軸方向に互いに対向するように配置している。そして、押圧センサ43と押圧センサ44とは、それぞれ、Y軸方向を長手方向として延びる帯状であり、長手方向(Y軸方向)の寸法を、同方向における操作画面49の寸法と同じ寸法(またはより大きな寸法)としている。
【0033】
なお、押圧センサ41、42や押圧センサ43、44は、それぞれ、互いに対称に設けられていなくてもよい。具体的には、押圧センサ41、42や押圧センサ43、44は、それぞれ、長手方向の配置がずれていてもよく、また、長手方向の寸法が異なっていてもよい。但し、押圧センサ41〜44は、以下に示すように、側面視して同様の構成であることが好ましい。以下では、押圧センサ41〜44を総称して、押圧センサ400と表記する。
【0034】
図5は、押圧センサの構成を示す概略図である。図5(A)は、側面図であり、図5(B)は平面図である。押圧センサ400は、検出用電極基板401、両面粘着テープ402、圧電性フィルム403、両面粘着テープ404、検出用電極基板405、両面粘着テープ406を、この順番に積層した構成である。
【0035】
検出用電極基板401および検出用電極基板405は、少なくとも一対のシグナル電極とグランド電極とを検出用電極として有する構成である。検出用電極基板401や検出用電極基板405は、ポリイミドやPET、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板に、検出用電極となる電極膜を形成して構成したり、検出用電極となる単体の導電テープとして構成したりすることができる。具体的には、検出用電極基板401と検出用電極基板405とを絶縁基板を含む構成とする場合には、検出用電極基板401を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にグランド電極を設け、検出用電極基板405を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にシグナル電極を設けるように構成することができる。また逆に、検出用電極基板401を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にシグナル電極を設け、検出用電極基板405を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にグランド電極を設けるように構成してもよい。その他にも、また、検出用電極基板401を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にグランド電極を設け、検出用電極基板405を構成する絶縁基板の圧電性フィルム403側の主面にシグナル電極を設け、更に、このシグナル電極を設ける絶縁基板の他方主面にグランド電極を設けるように構成して、耐ノイズ性を高めることもできる。 圧電性フィルム403は、ポリ乳酸(PLA)、より具体的にはL型ポリ乳酸(PLLA)またはD型ポリ乳酸(PDLA)からなる。以下、圧電性フィルム403をPLLAで構成する場合を代表として説明するが、圧電性フィルム403をPDLAで構成する場合も同様である。圧電性フィルム403は、長さ(図5における左右方向(以下、長手方向と言う。)の長さ)LLpに対して幅(図5(B)における上下方向(以下、短手方向と言う。)の長さ)LSpが短い長尺状の平膜からなる。圧電性フィルム403の分子の配向方向は、圧電性フィルム403の長手方向および短手方向に対して45°を成す。言い換えれば、図5(B)に示す圧電性フィルム403の一軸延伸方向500は、圧電性フィルム403の長手方向および短手方向に対して略45°を成す。ここで、圧電性フィルム403の一軸延伸方向500は、圧電性フィルム403の長手方向および短手方向に対して45°を成すことが最も好ましいが、45±10°の範囲であれば、実用上、問題無く使用することができる。
【0036】
ここで、圧電性フィルム403を形成するPLLAの特性について説明する。
【0037】
PLLAは、キラル高分子からなる。PLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸された方向に分子が配向し、当該分子の配向によって圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLAは、圧電性フィルム403にひずみが生じることで、電荷を発生する。ここで、圧電性フィルム403に生じるひずみとは、圧電性フィルム403が所定方向に伸長することである。この際、発生する電荷量は、圧電性フィルム403のひずみ量によって決まる。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。例えば、PLLAの圧電歪み定数d14は、延伸条件、熱処理条件、添加物の配合等の条件を整えることにより10〜20pC/Nという高い値が得られる。
【0038】
なお、圧電性フィルム403の延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えばある方向をX軸としてその方向に8倍、その軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0039】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じるので、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発電するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、出力電荷量が周囲環境に影響されない。
【0040】
検出用電極基板401は、圧電性フィルム403の一方の平板面(一方の主面)の略全面に形成されている。検出用電極基板405は、圧電性フィルム403の他方の平板面(他方の主面)の略全面に形成されている。また、検出用電極基板405には、電子部品405aが実装されている。電子部品405aは、検出用電極基板401と検出用電極基板405とに設けられた一対のシグナル電極とグランド電極との間の電位差を検出し、出力する回路を構成する。
【0041】
両面粘着テープ402は、検出用電極基板401と、圧電性フィルム403との間に位置し、検出用電極基板401と、圧電性フィルム403とを接着する接着部材である。また、両面粘着テープ404は、検出用電極基板405と、圧電性フィルム403との間に位置し、検出用電極基板405と、圧電性フィルム403とを接着する接着部材である。さらに、両面粘着テープ406は、押圧センサ400を板部材45に接着する接着部材である。両面粘着テープ402、404、406は、隣接する2つの層を接着する粘着剤で構成してもよい。
【0042】
また、押圧センサ41〜44は、図2に示したように、筐体10上面の開口面の外側に位置するので、透過性が低いものであっても、表示器31の表示面に表示されている画像の視認性を低下させることがない。したがって、検出用電極基板401、405は、透過性の高い導体パターンを形成するために、ポリチオフェンやポリアニリンを主成分とする有機電極、ITO、ZnO、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等の無機電極を用いなくてもよいので、安価にできる。
【0043】
操作者が、板部材45の操作面において操作画面49上の任意の点を押圧すると、この板部材45が撓み、この撓みは、押圧センサ41〜44に伝わり、各押圧センサ41〜44の圧電性フィルム403が長手方向および短手方向に伸長する。これにより、圧電性フィルム403には、長手方向および短手方向にひずみが生じ、当該ひずみに応じた電荷を発生する。この電荷は、検出用電極基板401、405によって検出され、電子部品405aが検出された電荷量に応じた電圧を外部へ出力する。この際、電荷量は上述のように圧電性フィルム403のひずみ量によって決まる。さらに、圧電性フィルム403のひずみ量は、板部材45を介して伝わる板部材45の撓み量によって決まり、当該撓み量は操作面の押圧力によって決まる。したがって、押圧センサ41〜44から得られる電圧値を計測することで、板部材45の操作面において操作画面49上のほとんど全ての点への押圧に対して、押圧力を検出することができる。
【0044】
例えば、押圧力Fは、各押圧センサ41〜44から得られる電圧値の総和S(=V1+V2+V3+V4)と、予め定めた比例定数γとの積による演算
押圧力F=γ×S
で算出できる。この演算は、制御部2で行われる。
【0045】
また、押圧センサ41、42から得られる電圧値の比を用いることで、図3に示すY軸方向の押圧位置を検出することができる。また、押圧センサ43、44から得られる電圧値の比を用いることで、図3に示すX軸方向の押圧位置を検出することができる。
【0046】
図6は、Y軸方向の押圧位置にかかる測定結果を示す図である。図6では、板部材45の操作面の中心を原点Oとし、押圧センサ41側を正、押圧センサ42側を負にしている。図6(B)の横軸は、図6(A)に示す押圧位置のY座標である。また、図6(B)の縦軸は、Log10(V1/V2)の値である。但し、V1は、押圧センサ41の出力電圧であり、V2は、押圧センサ42の出力電圧である。図6(B)は、図6(A)に示した、板部材45の操作面上に設定したY軸に平行な3本のライン(ラインA、B、C)毎に、そのライン上における押圧位置のY座標と、Log10(V1/V2)の値との関係を示す測定結果である。
【0047】
図6(B)から明らかなように、ラインA、B、Cの全てにおいて、押圧位置のY座標が−40mm〜+40mmの範囲内であるとき、Log10(V1/V2)の値が略リニアに変化することが確認できる。したがって、押圧位置のY座標は、押圧センサ41、42の出力電圧の比(V1/V2)を用いて検出することができる。また、このことから、押圧位置のX座標は、押圧センサ43、44の比(V4/V3)を用いて検出することができる。但し、V3は、押圧センサ43の出力電圧であり、V4は、押圧センサ44の出力電圧である。また、板部材45の操作面の中心を原点Oとし、押圧センサ44側を正、押圧センサ43側を負にしている。
【0048】
具体的には、板部材45の操作面の押圧位置を示すX、Y座標は、以下に示す演算により算出できる。
【0049】
押圧位置のY座標=α×Log10(V1/V2)
押圧位置のX座標=β×Log10(V4/V3)
α、およびβは、予め定めた定数である。この演算は、制御部2で行う。
【0050】
このように、この例にかかる入力操作端末1は、表示器31の表示面に表示されている画像の視認性の低下を抑えることができる。また、この入力操作端末1は、板部材45の操作面上の押圧位置に加えて、押圧力を検出することができる。
【0051】
また、入力操作端末1は、タッチパネル40の板部材45の押圧位置をX軸方向、またはY軸方向の一方についてのみ検出する場合には、押圧位置を検出する軸方向に応じた2つの押圧センサを板部材45に取り付ければよい。言い換えれば、押圧位置を検出しない軸方向に応じた2つの押圧センサを板部材45に取り付けなくてもよい。
【0052】
また、タッチパネル40は、上記の例では、板部材45を矩形形状としたが、円形状や楕円形状等にしてもよい。例えば、板部材45を円形状とする場合には、図7(A)に示すように、板部材45に対して、押圧センサ41〜44を装着すればよい。板部材45を楕円形状とする場合には、図7(B)に示すように、板部材45に対して、押圧センサ41〜44を装着すればよい。図7(A)、(B)において。破線で示す領域は、入力操作端末1の筐体10上面の開口面である。すなわち、筐体10上面の開口面の形状は、タッチパネル40の板部材45の形状に合わせればよい。この場合、表示器31の画面は、上述した例と同様に矩形形状であってもよいし、タッチパネル40の板部材45の形状に合わせた円形や楕円形であってもよい。
【0053】
また、上記の例では、押圧センサ41〜44は、タッチパネル40の板部材45の操作面に対向する主面に装着するとしたが、タッチパネル40の板部材45の操作面に装着してもよい。
【0054】
また、上記の例では、タッチパネル40は、筐体10の内部に位置するとしたが、筐体10の上面に取り付けてもよい。
【0055】
また、上記の例にかかる入力操作端末は、タブレット型端末や、スマートフォン等の機器に利用してもよい。この場合、制御部2は、検出した板部材45の操作面の押圧位置に応じた処理を実行する。
【0056】
また、上記の例では、押圧センサ41〜44は、それぞれの長手方向における寸法を、同方向における操作画面49の寸法以上に延びる帯状としたが、押圧センサ41〜44の長手方向の寸法は、同方向における操作画面49の寸法未満であってもよい。図8は、押圧センサの長手方向の寸法を、同方向における操作画面の寸法未満とする場合の構成例を示す図である。
【0057】
図8に示すタッチパネル40Pは、押圧センサ41P〜44Pを備えている。押圧センサ41Pと押圧センサ42Pとは、操作画面49を間に挟んで、Y軸方向に互いに対向するように配置している。そして、押圧センサ41Pと押圧センサ42Pとは、それぞれ、X軸方向を長手方向として延びる帯状であり、長手方向(X軸方向)の寸法を、同方向における操作画面49の寸法未満としている。また、押圧センサ43Pと押圧センサ44Pとは、操作画面49を間に挟んで、X軸方向に互いに対向するように配置している。そして、押圧センサ43Pと押圧センサ44Pとは、それぞれ、Y軸方向を長手方向として延びる帯状であり、長手方向(Y軸方向)の寸法を、同方向における操作画面49の寸法未満としている。
【0058】
このように押圧センサ41P〜44Pを、操作画面49の寸法未満とする場合には、図8(A)に示すように、押圧センサ41P〜44Pそれぞれの長手方向の端部を隣接するもの同士で結ぶ線分から外側の領域は、押圧されても正常に検知することができない押圧非検知領域93となり易い。具体的には、押圧非検知領域93が押圧されると、押圧センサ41P〜44Pのうちのいくつかに通常とは逆の極性の電荷が生じて出力が反転する。このため、押圧非検知領域93が押圧された場合には、正確な押圧検知が困難になる。
【0059】
そこで、このタッチパネル40Pでは、各押圧センサ41P〜44Pの長手方向の寸法や配置を調整することにより、押圧非検知領域93の大きさや配置を、操作画面49の操作において影響の少ない大きさや配置に調整している。
【0060】
具体的には、標準的な操作画面49は、図8(B)に示すように、タッチ操作や押圧操作の対象となるアイコンやウィジットなどのシンボルが表示される第1画像領域91と、タッチ操作や押圧操作の対象とならないステータスバーなどの状態情報を示すシンボルが表示される第2画像領域92と、を含む。したがって、仮に、前述した押圧非検知領域93が、アイコンやウィジットなどが表示される第1画像領域91に重なると、アイコンやウィジットの一部が押圧操作できない状態となって、操作者にとっての操作性が低下して問題となる。そこで、このタッチパネル40Pでは、各押圧センサ41P〜44Pの長手方向の寸法や配置を調整することにより、押圧非検知領域93が第1画像領域91に重ならずに、第2画像領域92にのみ重なるようにしている。これにより、押圧非検知領域93が、ステータスバーなどが表示される第2画像領域92に重なっていても、それらは押圧操作される対象ではないため、操作者は、操作性の低下や不確実性の増加などを感ずることなく、タッチパネル40Pを押圧操作することができる。
【0061】
このように、本発明のタッチパネルにおいて、各押圧センサの長手方向における寸法や配置は、押圧非検知領域の位置や大きさを適切にするように調整することが好ましい。ただし、ここでは、操作画面(ユーザインターフェース)として、ステータスバーなどが表示される第2画像領域92が、アイコン等が表示される第1画像領域91の一方側にのみ設けられる場合について例示したが、第1画像領域91の両側に第2画像領域92が設けられるような操作画面を採用するなど、操作画面側を調整することにより、押圧操作の対象が設けられていない第2画面領域を、押圧非検知領域に重ねるようにしてもよい。
【0062】
なお、スマートフォンのような画面サイズが4〜7インチ程度の比較的小型な機器に搭載されるタッチパネルの場合には、押圧センサの長手方向の寸法が、操作画面の約85%程度あれば、押圧非検知領域の大きさと配置が、操作画面の四隅近傍の指のサイズよりも小さい領域に限定される。このため、このような場合には、操作画面上に押圧非検知領域があっても問題にならない。
【符号の説明】
【0063】
1…入力操作端末
2…制御部
3…表示部
4…センサ部
10…筐体
20…制御基板
31…表示器
32…表示制御部
40…タッチパネル
41〜44、400…押圧センサ
45…板部材
401、405…検出用電極基板
402、404、406…両面粘着テープ
403…圧電性フィルム
405a…電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8