(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁界検出の等方性の向上を図った磁気センサを開示した先行文献として、特開平11−274598号公報(特許文献1)、特開平9−102638号公報(特許文献2)、国際公開第2013/171977号(特許文献3)、特開2012−88225号公報(特許文献4)、および、特開2013−250182号公報(特許文献5)がある。
【0003】
特許文献1に記載された磁気センサにおいては、磁気抵抗素子のパターンが螺旋状である。螺旋状のパターンの両端部は、それぞれ反対側に位置する最外部に形成されている。磁気抵抗素子のパターンは、実質的に湾曲部のみから形成されている。
【0004】
特許文献2に記載された磁気センサにおいては、磁気抵抗素子は、渦巻状に複数巻に巻回されて円形状をなすとともに、外部磁界に対して等方位的に成膜形成されている。
【0005】
特許文献3に記載された磁気センサにおいては、ブリッジ回路の複数の磁気抵抗素子はそれぞれ、全体として磁界検出方向とは実質的に直交する方向に沿った複数本の部分が所定間隔で平行に並んで、順次折り返すように連結されると共に、上記複数本の部分はそれぞれ、磁界検出方向に沿った複数本の部分が所定間隔で平行に並んで、順次折り返すように連結されて、電気的に接続されたつづら折り状に形成されている。
【0006】
特許文献4に記載された磁気センサは、直径の異なる半円弧状のパターンを連続的につなげた形状である2つの磁気抵抗素子が並列に接続されて構成されている。
【0007】
特許文献5に記載された磁気センサにおいては、正八角形の第1センシング部の中心と正八角形の第2センシング部の中心とが一致しており、第2センシング部の外側に第1センシング部が配置されている。第2センシング部の第2磁気抵抗素子の線状のレイアウトは、第1センシング部の第1磁気抵抗素子の線状のレイアウトに対して22.5°傾けられている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態に係る磁気センサについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る磁気センサのブリッジ回路を構成する4つの磁気抵抗素子のパターンを示す平面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る磁気センサの等価回路図である。
【0022】
図1,2に示すように、本発明の実施形態1に係る磁気センサ100は、平面視にて矩形状の基板110と、基板110上に設けられ、互いに電気的に接続されてホイートストンブリッジ型のブリッジ回路を構成する4つの磁気抵抗素子を備える。4つの磁気抵抗素子は、2つの第1磁気抵抗素子120a,120b、および、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bを含む。
【0023】
2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々の抵抗変化率より、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の抵抗変化率は小さい。2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々は、外部磁界が印加されることによって電気抵抗値が変化するいわゆる感磁抵抗である。2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々は、外部磁界が印加されてもほとんど電気抵抗値が変化しない固定抵抗である。
【0024】
4つの磁気抵抗素子は、基板110上に形成された配線によって互いに電気的に接続されている。具体的には、第1磁気抵抗素子120aと第2磁気抵抗素子130aとが配線146によって直列に接続されている。第1磁気抵抗素子120bと第2磁気抵抗素子130bとが配線150によって直列に接続されている。
【0025】
磁気センサ100は、基板110上にそれぞれ形成された、中点140、中点141、電源端子(Vcc)142、接地端子(Gnd)143および出力端子(Out)144をさらに備える。
【0026】
第1磁気抵抗素子120aおよび第2磁気抵抗素子130bの各々は、中点140に接続されている。具体的には、第1磁気抵抗素子120aと中点140とが配線145によって接続され、第2磁気抵抗素子130bと中点140とが配線152によって接続されている。
【0027】
第1磁気抵抗素子120bおよび第2磁気抵抗素子130aの各々は、中点141に接続されている。具体的には、第1磁気抵抗素子120bと中点141とが配線149によって接続され、第2磁気抵抗素子130aと中点141とが配線148によって接続されている。
【0028】
配線146は、電流が入力される電源端子(Vcc)142に接続されている。配線150は、接地端子(Gnd)143に接続されている。
【0029】
図2に示すように、磁気センサ100は、差動増幅器160、温度補償回路161、ラッチおよびスイッチ回路162、並びに、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ドライバ163をさらに備える。
【0030】
差動増幅器160は、入力端が中点140および中点141の各々に接続され、出力端が温度補償回路161に接続されている。また、差動増幅器160は、電源端子(Vcc)142および接地端子(Gnd)143の各々に接続されている。
【0031】
温度補償回路161は、出力端がラッチおよびスイッチ回路162に接続されている。また、温度補償回路161は、電源端子(Vcc)142および接地端子(Gnd)143の各々に接続されている。
【0032】
ラッチおよびスイッチ回路162は、出力端がCMOSドライバ163に接続されている。また、ラッチおよびスイッチ回路162は、電源端子(Vcc)142および接地端子(Gnd)143の各々に接続されている。
【0033】
CMOSドライバ163は、出力端が出力端子(Out)144に接続されている。また、CMOSドライバ163は、電源端子(Vcc)142および接地端子(Gnd)143の各々に接続されている。
【0034】
磁気センサ100が上記の回路構成を有することにより、中点140と中点141との間に、外部磁界の強さに依存する電位差が発生する。この電位差があらかじめ設定された検出レベルを超えると、出力端子(Out)144から信号が出力される。
【0035】
図3は、本発明の実施形態1に係る磁気センサのブリッジ回路における磁気抵抗素子と配線との接続部の積層構造を示す断面図である。
図3においては、磁気抵抗素子として機能する領域Rと、配線として機能する領域Lとの接続部のみ図示している。
【0036】
図3に示すように、4つの磁気抵抗素子は、SiO
2層またはSi
3N
4層などが表面に設けられた、Siなどからなる基板110上に形成されている。4つの磁気抵抗素子は、基板110上に設けられた、NiとFeとを含む合金からなる磁性体層10が、ミーリングによりパターニングされることにより形成されている。
【0037】
配線は、基板110上に設けられた、AuまたはAlなどからなる導電層20が、ウエットエッチングによりパターニングされることにより形成されている。導電層20は、磁性体層10が設けられた領域においては磁性体層10の直上に位置し、磁性体層10が設けられていない領域においては基板110の直上に位置している。よって、
図3に示すように、磁気抵抗素子として機能する領域Rと、配線として機能する領域Lとの接続部においては、導電層20は磁性体層10の直上に位置している。
【0038】
中点140、中点141、電源端子(Vcc)142、接地端子(Gnd)143および出力端子(Out)144の各々は、基板110の直上に位置する導電層20によって構成されている。
【0039】
導電層20の直上には、図示しないTi層が設けられている。磁気抵抗素子および配線を覆うように、SiO
2などからなる保護層30が設けられている。
【0040】
図4は、本発明の実施形態1に係る磁気センサの第1磁気抵抗素子のパターンを示す平面図である。
図1,4に示すように、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々は、平面視にて外形が矩形であるパターン120を有する。パターン120は、平面視にて、パターン120の中心S
0から放射状に延びてパターン120の外縁に接近している複数の第1スリットS
1、および、互いに隣接する第1スリットS
1同士の間に位置してパターン120の外縁からパターン120の中心に向かって延びている複数の第2スリットS
2が設けられていることによって、パターン120の外縁と中心との間を交互に向きを変えながらパターン120の中心の周りを一周するように繋がっている。
【0041】
図4に示すように、パターン120は、パターン120の中心S
0に関して略点対称の形状を有している。すなわち、パターン120は、パターン120の中心S
0に関して略180°回転対称な形状を有している。
【0042】
本実施形態においては、16本の第1スリットS
1が22.5°間隔で設けられ、16本の第2スリットS
2が22.5°間隔で設けられている。第2スリットS
2は、互いに隣接する第1スリットS
1の中間に位置している。第1スリットS
1および第2スリットS
2の各々の幅は、互いに同じで均一である。
【0043】
16本の第1スリットS
1の各々において、第1スリットS
1の延長線上におけるパターン120の外形と第1スリットS
1の先端との間の距離は略等しい。16本の第2スリットS
2の各々において、第2スリットS
2の延長線上におけるパターン120の中心S
0と第2スリットS
2の先端との間の距離は略等しい。
【0044】
ただし、第1スリットS
1および第2スリットS
2の各々の本数、幅、および、長さなどは上記に限られず、たとえば、パターン120の中心側から外側に行くにしたがって16本の第1スリットS
1の各々の幅が広くなるようにしてもよい。このようにした場合、1本に繋がっているパターン120の幅を全体的により均一にして、磁界検出の等方性を向上することができる。
【0045】
図5は、本発明の実施形態1に係る磁気センサの第2磁気抵抗素子が有するパターンを示す平面図である。
図6は、本発明の実施形態1に係る磁気センサの第2磁気抵抗素子が有するパターンに含まれる単位パターンを示す平面図である。なお、
図5においては、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々が有する同一形状の2つのパターン130のうちの一方のみを図示している。
【0046】
図1,5に示すように、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々においては、複数の曲部を有して折り返した8つの単位パターン170を含む同一形状の2つのパターン130が直列に接続されている。第2磁気抵抗素子130aにおいては、同一形状の2つのパターン130が配線147によって互いに接続されている。第2磁気抵抗素子130bにおいては、同一形状の2つのパターン130が配線151によって互いに接続されている。これにより、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々において、必要な電気抵抗値を確保している。2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の電気抵抗値が高いほど、磁気センサ100の消費電流を低減できる。
【0047】
図5に示すように、8つの単位パターン170は、仮想円C
1上に配置されて互いに接続されている。
図6に示すように、単位パターン170は、始端部170aから終端部170bまでの間に、14個の曲部B
1〜B
14および15個の直線状延在部L
1〜L
15を有して、折り返している。すなわち、単位パターン170は、始端部170aおよび終端部170bを口部とした袋状の形状を有している。
【0048】
本実施形態においては、単位パターン170は、14個の曲部B
1〜B
14の各々において直角に屈曲している。単位パターン170は、10μm以上の長さの直線状延在部を含まない。すなわち、15個の直線状延在部L
1〜L
15の各々の長さは、10μmより短い。
【0049】
ただし、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々が有するパターンは、上記に限られず、10μm以上の長さの直線状延在部を含まずに複数の曲部を有して折り返した少なくとも1つの単位パターンを含んでいればよい。
【0050】
磁気抵抗素子の電気抵抗値は、磁気抵抗素子を電流が流れる方向に対して特定の角度で磁界が印加されると、磁気抵抗効果によって変化する。磁気抵抗素子の長手方向の長さが長いほど、磁気抵抗効果が大きくなる。
【0051】
そのため、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々が上記のパターンを有することにより、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の磁気抵抗効果が抑制されて抵抗変化率が著しく小さくなる。その結果、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の抵抗変化率が、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々の抵抗変化率より小さくなる。
【0052】
本実施形態に係る磁気センサ100においては、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々がパターン120を有している。パターン120は、パターン120の外縁と中心との間を交互に向きを変えながらパターン120の中心の周りを一周するように繋がっているため、パターン120を流れる電流の向きは、水平方向の略全方位(360°)に亘っている。よって、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々は、水平方向の略全方位(360°)に亘って、外部磁界を検出することができる。なお、水平方向は、基板110の表面と平行な方向である。
【0053】
パターン120を流れる電流の向きを水平方向において分散させることにより、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々の磁気抵抗効果の異方性を低減することができる。
【0054】
パターン120は、単位面積当たりの密度が高い形状である。パターン120は、パターン120の外縁と中心との間を交互に向きを変えながらパターン120の中心の周りを一周するように1本に繋がっている。そのため、パターン120は、高密度に配置可能、かつ、長さを長くして高抵抗化可能である。
【0055】
よって、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々がパターン120を有することにより、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々を高抵抗かつ小形にすることができる。2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々の電気抵抗値が高いほど、磁気センサ100の消費電流を低減できる。
【0056】
さらに、パターン120は、平面視にて外形が矩形であるため、平面視にて矩形状の基板110上に効率よく配置することが可能である。すなわち、基板110の外形に合わせてパターン120を設けることにより、パターン120の周囲が余分なスペースになることを抑制できる。
【0057】
よって、2つの第1磁気抵抗素子120a,120bの各々を小形にしつつ基板110上に効率よく配置することにより、磁気センサ100を小形にすることができる。
【0058】
本実施形態に係る磁気センサ100においては、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々は、10μm以上の長さの直線状延在部を含まずに14個の曲部B
1〜B
14の各々において直角に屈曲して、始端部170aおよび終端部170bを口部とした袋状の形状を有する単位パターン170を含んでいる。
【0059】
これにより、単位パターン170を流れる電流の向きを水平方向において分散させて、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の磁気抵抗効果の異方性を低減することができる。また、外部磁界が0である時の磁気センサ100の出力が、残留磁化の影響によってばらつくことを抑制することができる。
【0060】
さらに、複数の単位パターン170が仮想円C
1上に配置されていることによって、パターン130を流れる電流の向きを水平方向において分散させて、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bの各々の磁気抵抗効果の異方性を低減することができる。
【0061】
図7は、本発明の実施形態1に係る磁気センサ100に対する外部磁界の印加方向を水平方向において22.5°間隔で0°〜337.5°まで変更して、外部磁界の強さと磁気センサ100の出力との関係を求めた実験結果を示すグラフである。
図7においては、縦軸に磁気センサ100の出力電圧(mV)、横軸に磁束密度(mT)を示している。
【0062】
図7に示すように、本実施形態に係る磁気センサ100においては、外部磁界の印加方向を水平方向において22.5°間隔で0°〜337.5°まで変更した場合においても、外部磁界の強さと磁気センサ100の出力との関係に大きな変化は認められなかった。すなわち、本実施形態に係る磁気センサ100は、磁界検出の等方性が向上していることが確認できた。また、外部磁界が0である時の磁気センサ100の出力のばらつきが抑制されていることも確認できた。
【0063】
本実施形態においては、磁気センサ100は、2つの第1磁気抵抗素子120a,120b、および、2つの第2磁気抵抗素子130a,130bを含んでいたが、磁気センサ100の構成はこれに限られず、第1磁気抵抗素子を少なくとも1つ含んでいればよい。これにより、磁気センサ100を小形にしつつ磁界検出の等方性を向上できる。また、磁気センサ100が第2磁気抵抗素子を含む場合には、第2磁気抵抗素子を少なくとも1つ含んでいればよい。
【0064】
以下、本発明の実施形態2に係る磁気センサについて図を参照して説明する。なお、本実施形態に係る磁気センサは、第2磁気抵抗素子が有するパターンのみ実施形態1に係る磁気センサ100と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0065】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る磁気センサの第2磁気抵抗素子が有するパターンを示す平面図である。
図9は、本発明の実施形態2に係る磁気センサの第2磁気抵抗素子が有するパターンに含まれる単位パターンを示す平面図である。
【0066】
図8に示すように、本発明の実施形態2に係る磁気センサの2つの第2磁気抵抗素子の各々は、複数の曲部を有して折り返した32個の単位パターン270を含むパターン230を有している。
【0067】
図8に示すように、32個の単位パターン270は、仮想矩形C
2上に配置されて互いに接続されている。なお、複数の単位パターン270が、仮想矩形以外の仮想多角形上に配置されていてもよい。
【0068】
図9に示すように、単位パターン270は、始端部270aから終端部270bまでの間に、14個の曲部B
1〜B
14および15個の直線状延在部L
1〜L
15を有して、折り返している。すなわち、単位パターン270は、始端部270aおよび終端部270bを口部とした袋状の形状を有している。
【0069】
本実施形態においては、単位パターン270は、14個の曲部B
1〜B
14の各々において直角に屈曲している。単位パターン270は、10μm以上の長さの直線状延在部を含まない。すなわち、15個の直線状延在部L
1〜L
15の各々の長さは、10μmより短い。
【0070】
本発明の実施形態2に係る磁気センサにおいては、2つの第2磁気抵抗素子の各々が含む複数の単位パターン270が仮想矩形C
2上に配置されていることによって、パターン230を流れる電流の向きを水平方向において分散させて、2つの第2磁気抵抗素子の各々の磁気抵抗効果の異方性を低減することができる。
【0071】
また、平面視にて、パターン230の外形が矩形であるため、平面視にて矩形状の基板110上に効率よく配置することが可能である。すなわち、基板110の外形に合わせてパターン230を設けることにより、パターン230の周囲が余分なスペースになることを抑制できる。
【0072】
よって、2つの第2磁気抵抗素子の各々を基板110上に効率よく配置することにより、磁気センサ100を小形にすることができる。
【0073】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。