(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237907
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】飛行時間型質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/40 20060101AFI20171120BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H01J49/40
H01J49/42
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-543505(P2016-543505)
(86)(22)【出願日】2014年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2014071603
(87)【国際公開番号】WO2016027301
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大輔
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−183022(JP,A)
【文献】
特開2003−123685(JP,A)
【文献】
特開2002−184349(JP,A)
【文献】
特開2000−340169(JP,A)
【文献】
特表2009−512162(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0030159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/40
H01J 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射したイオンをその入射軸と直交する方向に加速する直交加速部と、加速されたイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する分離検出部と、を具備する直交加速方式の飛行時間型質量分析装置であって、
a)測定対象であるイオンを一時的に保持するイオン保持部と、
b)前記イオン保持部と前記直交加速部との間に配設され、前記イオン保持部から出射されたイオンを前記直交加速部まで案内するイオン輸送光学系と、
c)前記イオン保持部からイオンを出射する際に、該イオン保持部の出口端と前記イオン輸送光学系の入口端との間の第1領域に、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有するイオンを加速する加速電場を形成し、該イオン輸送光学系の出口端と前記直交加速部の入口端との間の第2領域に、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有し且つ前記第1領域中のポテンシャル差よりも小さなポテンシャル差を有するイオンを減速する減速電場を形成するように、前記イオン保持部、前記イオン輸送光学系、及び前記直交加速部にそれぞれ含まれる構成部材に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項2】
入射したイオンを電場の作用により捕捉したあとに所定のタイミングでイオンに加速エネルギを付与して略一斉にイオンを射出するイオントラップ部と、該イオントラップ部から射出されたイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する分離検出部と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、
a)イオンを一時的に保持するイオン保持部と、
b)前記イオン保持部と前記イオントラップ部との間に配設され、前記イオン保持部から出射されたイオンを前記イオントラップ部まで案内するイオン輸送光学系と、
c)前記イオン保持部からイオンを出射する際に、該イオン保持部の出口端と前記イオン輸送光学系の入口端との間の第1領域に、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有するイオンを加速する加速電場を形成し、該イオン輸送光学系の出口端と前記イオントラップ部の入口端との間の第2領域に、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有し且つ前記第1領域中のポテンシャル差よりも小さなポテンシャル差を有するイオンを減速する減速電場を形成するように、前記イオン保持部、前記イオン輸送光学系、及び前記イオントラップ部にそれぞれ含まれる構成部材に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
前記イオン保持部は、イオンを解離させるコリジョンセル内に配置されたリニアイオントラップであることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
前記イオン保持部と、前記直交加速部及び前記分離検出部、とは隔壁で隔たれた異なる真空室内に配置され、前記イオン輸送光学系は、前記隔壁に設けられたイオン通過口を挟んで両真空室に跨って配置されていることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
前記イオン保持部は、イオンを解離させるコリジョンセル内に配置されたリニアイオントラップであることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
前記イオン保持部と、前記イオントラップ部及び前記分離検出部、とは隔壁で隔たれた異なる真空室内に配置され、前記イオン輸送光学系は、前記隔壁に設けられたイオン通過口を挟んで両真空室に跨って配置されていることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
前記電圧印加部は、前記分離検出部で検出したい質量電荷比範囲に応じて、前記第1領域に形成する加速電場における加速エネルギの大きさを調整することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛行時間型質量分析装置(Time-of-Flight Mass Spectrometer、以下「TOFMS」と略す)に関し、さらに詳しくは、直交加速方式TOFMS、及びイオントラップにイオンを一時的に保持し、該イオントラップからイオンを射出して飛行空間に導入するイオントラップTOFMSに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、TOFMSでは、試料成分由来のイオンに一定の運動エネルギを付与して一定距離の空間を飛行させ、その飛行に要する時間を計測して該飛行時間からイオンの質量電荷比を算出する。そのため、イオンを加速して飛行を開始させる際に、イオンの位置やイオンが持つ初期エネルギにばらつきがあると、同一質量電荷比を持つイオンの飛行時間にばらつきが生じ質量分解能や質量精度の低下に繋がる。こうした課題を解決する手法の一つとして、イオンビームの入射方向と直交する方向にイオンを加速して飛行空間に送り込む直交加速(「垂直加速」や「直交引出し」とも呼ばれる)方式のTOFMSが知られている。
【0003】
一方、分子量が大きな物質や化学構造が複雑な物質の同定や構造解析を行うために、近年、特定の質量電荷比を有するイオンを衝突誘起解離などの手法により1乃至複数段階に解離させ、それによって生成されたプロダクトイオンを質量分析する、MS
n分析(タンデム分析などとも呼ばれる)が広く利用されている。MS
n分析が可能である質量分析装置としては、四重極型(又はそれ以外の多重極型)のイオンガイドが内装されたイオンを解離させるコリジョンセルを挟んでその前後に四重極マスフィルタが配置された三連四重極型質量分析装置や、イオンを質量電荷比に応じて分離する機能とイオンに対する解離操作を行う機能とを有するイオントラップを用いたイオントラップ質量分析装置、或いは、そうしたイオントラップとTOFMSとを組み合わせたイオントラップ飛行時間型質量分析装置、などがよく知られている。
【0004】
また、上述した直交加速方式TOFMSの性能の良さを活かすために、コリジョンセルを挟んで前段に四重極マスフィルタ、後段に直交加速方式TOFMSを配置した四重極-飛行時間型質量分析装置(以下、慣用に従って「Q−TOFMS」と称す)も知られている。
【0005】
図3(a)は特許文献1に記載のQ−TOFMSにおけるコリジョンセル及び直交加速部の概略構成図、
図3(b)は
図3(a)中の軸(この場合にはイオン光軸)C上のポテンシャル分布を示す図、
図3(c)は
図3(a)中の出口側ゲート電極への印加電圧及び直交加速電圧のタイミング図である。
【0006】
図3(a)に示すように、このQ−TOFMSでは、イオンを解離させるコリジョンセル50の内部にリニアイオントラップ(又はイオンガイド)51を備えており、図示しない四重極マスフィルタにおいて選択された特定の質量電荷比を有するプリカーサイオンをコリジョンセル50内で解離させ、それによって生成されたプロダクトイオン(及び解離されなかったプリカーサイオン)をリニアイオントラップ51により一時的に保持する。そのあと、コリジョンセル50の出口側端面にある出口側ゲート電極52に印加する電圧を一時的に下げることにより、その直前まで保持していたイオンを所定のタイミングでリニアイオントラップ51から放出する。放出されたイオンは、グリッド電極53及びスキマー54を経て直交加速方式TOFMSの直交加速部55にX軸方向に沿って導入され、所定のタイミングで直交加速部55に加速電圧が印加されると、イオンはZ軸方向に加速されて図示しない飛行空間に導入される。
【0007】
図3(b)において実線は、イオンをリニアイオントラップ51に保持しているときのポテンシャル分布である。このとき、出口側ゲート電極52のポテンシャルはリニアイオントラップ(ロッド電極)51のポテンシャルよりも高いため、出口側ゲート電極52に向かって進むイオンは押し戻され、コリジョンセル50内に保持される。
図3(b)において点線は出口側ゲート電極52への印加電圧が下げられたときのポテンシャル分布である。このとき、リニアイオントラップ51の出口側端部から直交加速部55に向かって、ポテンシャルは下り傾斜となるため、その直前まで保持されていたイオンは直交加速部55に向かって加速される。
【0008】
リニアイオントラップ51に保持されている様々な質量電荷比を持つイオンは、該リニアイオントラップ51からほぼ一斉に放出されるものの、直交加速部55に到達するまでにイオン進行方向(つまりX軸方向)にばらつきが生じる。即ち、各イオンに付与される加速エネルギは略同一であるため、質量電荷比が小さいイオンほど速度は大きい。そのため、質量電荷比が小さなイオンは先行して直交加速部55に達し、質量電荷比が大きくなる順に時間的に遅れて直交加速部55に到達する。
直交加速部55では所定のタイミングで加速電圧(文献1における「push-pull voltage」)が印加されるため、その加速電圧の印加時に直交加速部55を通過しているイオンのみが飛行空間に向けて加速され、それ以外のイオンは無駄になる。このイオンの利用効率はデューティサイクル(Duty Cycle)と呼ばれ、次の式で定義される(特許文献2等参照)。
Duty Cycle[%]={(測定に利用したイオン量)/(直交加速部へ到達したイオン量)}×100
【0009】
コリジョンセル50内でのイオンの解離によって様々な質量電荷比のイオンが生成されるが、特許文献1に記載のQ−TOFMSでは、着目している質量電荷比を有するイオンのデューティサイクルを改善するために、リニアイオントラップ51からイオンを放出するためのパルス電圧の印加時点t
1から直交加速部55における加速電圧の印加時点t
2までの遅延時間t
Dを、目的イオンの質量電荷比に応じて調整するようにしている(
図3(c)参照)。これにより、分析者が着目しているイオンが直交加速部55を通過するタイミングで加速電圧が印加されるため、該イオンに対するデューティサイクルは改善され、該イオンの検出感度が向上することになる。この場合、分析者が着目しているイオン以外のイオンについては、デューティサイクルは低くなる(或いは、実質的に殆ど検出されない)。
【0010】
例えばMRM(多重反応イオンモニタリング)測定やプリカーサイオンスキャン測定のように観測したいプロダクトイオンの質量電荷比が決まっている場合には、該プロダクトイオンを高感度で検出できるため、上記Q−TOFMSは有用である。しかしながら、このQ−TOFMSでは、プロダクトイオンスキャン測定のように或る程度広い質量電荷比範囲に亘るイオンを高い感度で検出することはできない。即ち、幅広い質量電荷比に亘るイオンについてデューティサイクルを高くすることはできないという問題がある。
【0011】
また、上述したようなQ−TOFMSではなく、3次元四重極型イオントラップに一旦捕捉したイオンを該イオントラップから一斉に射出して質量分析するイオントラップ飛行時間型質量分析装置においても同様の問題がある。即ち、こうした質量分析装置では、イオンがその進行方向に広がってイオントラップのイオン入射口に到達した場合、イオントラップ内に捕捉されるのは到達したイオンのうちの所定の時間範囲内に到達したものだけであり、それ以外のイオンはイオン入射口で跳ね返されたり或いはイオントラップを通り抜けてしまったりして測定には利用されない。そのため、イオンが質量電荷比に応じて時間的にずれてイオントラップのイオン入射口に到達すると、一部の質量電荷比範囲のイオンしかイオントラップに捕捉されず、広い質量電荷比範囲に亘るイオンを高い感度で測定することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6285027号明細書
【特許文献2】特開2010-170848号公報
【特許文献3】特開2002-184349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、直交加速方式TOFMS又はイオントラップTOFMSにおいて、TOFMSでの測定に利用されるイオンの質量電荷比範囲を広げるとともにそのイオンの損失を抑えることにより、広い質量電荷比範囲に亘るイオンを高い感度で測定することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明の第1の態様は、入射したイオンをその入射軸と直交する方向に加速する直交加速部と、加速されたイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する分離検出部と、を具備する直交加速方式の飛行時間型質量分析装置であって、
a)測定対象であるイオンを一時的に保持するイオン保持部と、
b)前記イオン保持部と前記直交加速部との間に配設され、前記イオン保持部から出射されたイオンを前記直交加速部まで案内するイオン輸送光学系と、
c)前記イオン保持部からイオンを出射する際に、該イオン保持部の出口端と前記イオン輸送光学系の入口端との間の第1領域に
、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有するイオンを加速する加速電場を形成し、該イオン輸送光学系の出口端と前記イオントラップ部の入口端との間の第2領域に、
該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有し且つ前記第1領域中のポテンシャル差よりも小さなポテンシャル差を有するイオンを減速する減速電場を形成するように、前記イオン保持部、前記イオン輸送光学系、及び前記イオントラップ部にそれぞれ含まれる構成部材に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
【0015】
また上記課題を解決するために成された本発明の第2の態様は、入射したイオンを電場の作用により捕捉したあとに所定のタイミングでイオンに加速エネルギを付与して略一斉にイオンを射出するイオントラップ部と、該イオントラップ部から射出されたイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する分離検出部と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、
a)イオンを一時的に保持するイオン保持部と、
b)前記イオン保持部と前記イオントラップ部との間に配設され、前記イオン保持部から出射されたイオンを前記イオントラップ部まで案内するイオン輸送光学系と、
c)前記イオン保持部からイオンを出射する際に、該イオン保持部の出口端と前記イオン輸送光学系の入口端との間の第1領域に
、該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有するイオンを加速する加速電場を形成し、該イオン輸送光学系の出口端と前記イオントラップ部の入口端との間の第2領域に、
該イオン輸送光学系における平均的なポテンシャルの差よりも大きなポテンシャル差を有し且つ前記第1領域中のポテンシャル差よりも小さなポテンシャル差を有するイオンを減速する減速電場を形成するように、前記イオン保持部、前記イオン輸送光学系、及び前記イオントラップ部にそれぞれ含まれる構成部材に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る第1、第2の態様による飛行時間型質量分析装置では、前記イオン保持部は、イオンを解離させるコリジョンセル内に配置されたリニアイオントラップである構成とすることができる。
【0017】
リニアイオントラップは、典型的には、中心軸の周りに互いに平行に配置された4本の円柱状ロッド電極と、該4本のロッド電極を挟んで中心軸に直交するように配置された入口側ゲート電極及び出口側ゲート電極と、を含む。そして、4本のロッド電極で囲まれる空間にイオンを収束させるような高周波電場を形成するべく該ロッド電極に高周波電圧を印加するとともに、入口側ゲート電極及び出口側ゲート電極にはイオンと同極性の直流電圧を印加してイオンを両ゲート電極間に閉じ込める。
【0018】
出口側ゲート電極への印加電圧を、少なくともロッド電極の直流電位よりも下げることで、保持していたイオンを出射させることができるが、その際に、イオンができるだけかたまった状態で(つまりパケット状となって)出射するようにするには、イオンを保持しているときにロッド電極の出口側端部付近にイオンが集積していることが望ましい。このようにロッド電極の出口側端部付近にイオンを集積させるためには、例えば特許文献3に記載の構成を利用することで、軸方向のポテンシャル勾配を形成するとよい。
【0019】
本発明に係る第1の態様による飛行時間型質量分析装置において、イオン保持部に保持していたイオンを該イオン保持部から出射する際には、電圧印加部からイオン保持部及びイオン輸送光学系の構成部材にそれぞれ所定の電圧を印加することで、イオン保持部の出口端とイオン輸送光学系の入口端との間の第1領域に加速電場を形成する。イオン保持部から出射したイオンはこの加速電場により加速されてイオン輸送光学系に導入される。この加速電場におけるポテンシャル差を大きくしておくと、それだけ大きな加速エネルギがイオンに付与され、各イオンの速度がそれだけ大きくなる。
【0020】
イオン輸送光学系を通過するときのイオンの速度は質量電荷比に依存するが、上記加速エネルギが大きいほど質量電荷比差に起因する速度差は小さくなる。そこで、ここでは、後述するように加速電場におけるポテンシャル差を十分に大きくしておく。質量電荷比差によるイオンの速度差が小さいために、イオンがイオン輸送光学系を通過した時点で質量電荷比差によるイオン進行方向のイオンの位置の広がりは小さい。
【0021】
一方、イオンがイオン輸送光学系を通過したあとの第2領域では、減速電場によってイオンが持つエネルギは減衰される。そして、エネルギが減衰した状態で各イオンは直交加速部に導入される。上述したように、イオン進行方向にあまり広がらない状態で減速電場に達したイオンは第2領域で減速され、その直後に直交加速部に入る。そのため、減速されることによるイオン進行方向のイオンの広がりは実質的に問題とならない程度に抑えられる。その結果、直交加速部を通過する際のイオン進行方向のイオンの広がりは、特許文献1に記載の装置に比べて小さくなり、イオン保持部においてイオンを出射した時点から直交加速部において加速電圧を印加する時点までの遅延時間を一定とした場合に、幅広い質量電荷比範囲に亘るイオンを無駄にすることなく加速して飛行空間へと送り出すことができる。
【0022】
また、直交加速部に導入されたイオンが過大なエネルギを有していると、加速電圧による加速方向が入射軸に直交する方向とならず、斜め方向に飛び出すために飛行距離が理想状態からずれることになる。そうなると、飛行時間にもずれが生じ、質量精度が低下する。それに対し、本発明では、イオンが直交加速部に入射する直前に該イオンが持つエネルギが減じられるので、直交加速部におけるイオンの飛び出し方向のずれは小さくて済み、その結果、高い質量精度を確保することができる。
【0023】
また本発明に係る第2の態様による飛行時間型質量分析装置においては、上述したように、第2領域で減速されたイオンが、その直後にイオントラップ部に入る。このときのイオン進行方向のイオンの広がりは小さいので、幅広い質量電荷比範囲に亘るイオンを無駄にすることなくイオントラップ部に捕捉することができる。また、イオントラップ部に導入されたイオンが過大なエネルギを有していると、イオンが高周波電場によっても捕捉されずにイオントラップ部を通り抜けてしまったり該イオントラップ部を構成する電極内面に接触して消失してしまったりする。それに対し、本発明では、イオンがイオントラップ部に入射する直前に該イオンが持つエネルギが減じられるので、イオンがイオントラップ部に捕捉され易くなる。
【0024】
上述したように、コリジョンセル内に配置されたリニアイオントラップをイオン保持部とする場合、該コリジョンセルが配設された真空室内の真空度は、外部からコリジョンセルに供給されるコリジョンガスの影響で低下し易い。そこで、本発明に係る第1の態様による飛行時間型質量分析装置では、前記イオン保持部と、前記直交加速部及び前記分離検出部、又は前記イオントラップ部及び前記分離検出部、とは隔壁で隔たれた異なる真空室内に配置され、前記イオン輸送光学系は、前記隔壁に設けられたイオン通過口を挟んで両真空室に跨って配置されている構成とするとよい。
【0025】
この構成では、イオン輸送光学系は例えば、中央開口を有する電極板をイオン光軸に沿って配列させた構成などとすればよい。この場合、隔壁に設けられたイオン通過口を挟んで両真空室内にそれぞれ上記電極板を配置することで、両真空室に跨ったイオン輸送光学系を実現することができる。
【0026】
また、イオン輸送光学系としてこうした構成を採る場合、複数の電極板の中央開口を順次通過するイオンを収束するレンズ作用を生じさせる電場を形成するように、各電極板にそれぞれ所定の電圧を印加すればよい。この場合、イオン輸送光学系の初段の電極板から最終段の電極板までの間のイオン輸送光学系全体として、イオンに対して付与される平均的なエネルギがほぼゼロになるようにすることで、この領域を通過するイオンが実質的に加速も減速もされないようにすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る第1の態様による飛行時間型質量分析装置によれば、幅広い質量電荷比範囲のイオンを無駄にすることなく直交加速部で加速して質量分析に供することができる。即ち、幅広い質量電荷比のイオンに対してデューティサイクルを改善することができるから、広い質量電荷比範囲に亘る高感度なマススペクトルを1回の測定によって得ることができる。また、特に、本発明に係る第1の態様による飛行時間型質量分析装置において、衝突誘起解離等により生成されたプロダクトイオンをイオン保持部に保持する構成とすることにより、プロダクトイオンスキャン測定やニュートラルロススキャン測定において良好なスペクトルを得ることができる。
【0028】
また本発明に係る第2の態様による飛行時間型質量分析装置によれば、幅広い質量電荷比範囲のイオンを無駄にすることなくイオントラップ部に捕捉して質量分析に供することができる。したがって、第1の態様による飛行時間型質量分析装置と同様に、広い質量電荷比範囲に亘る高感度なマススペクトルを1回の測定によって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施例である直交加速方式TOFMSの全体構成図。
【
図2】
図1中のコリジョンセル及び直交加速部の詳細構成図(a)、軸C上の概略ポテンシャル分布図(b)、及び、コリジョンセルと直交加速部との間の空間におけるイオンの挙動を示す図(c)。
【
図3】従来のQ−TOFMSにおけるコリジョンセル及び直交加速部の詳細構成図(a)、軸C上のポテンシャル分布図(b)、及び、出口側ゲート電極への印加電圧及び直交加速電圧のタイミング図(c)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施例であるQ−TOFMSについて、添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1は本実施例のQ−TOFMSの全体構成図である。
本実施例のQ−TOFMSは、多段差動排気系の構成を有しており、略大気圧雰囲気であるイオン化室2と最も真空度の高い高真空室6との間に、第1乃至第3なる三つの中間真空室3、4、5がチャンバ1内に配設されている。
【0032】
イオン化室2には、エレクトロスプレイイオン化(ESI)を行うためのESIスプレー7が設けられ、目的化合物を含む試料液がESIスプレー7に供給されると、該スプレー7先端で片寄った電荷を付与されて噴霧された液滴から目的化合物由来のイオンが生成される。なお、イオン化法はこれに限るものではなく、例えば、試料が液体である場合には、ESI以外のAPCI、PESIなどの大気圧イオン化法が使用可能であり、また試料が固体状である場合にはMALDI法などが使用可能であり、試料が気体状である場合にはEI法などが使用可能である。
【0033】
生成された各種イオンは加熱キャピラリ8を通して第1中間真空室3へ送られ、イオンガイド9により収束されてスキマー10を通して第2中間真空室4へ送られる。さらに、イオンはオクタポール型のイオンガイド11により収束されて第3中間真空室5へ送られる。第3中間真空室5内には、四重極マスフィルタ12と、リニアイオントラップとして機能する四重極型のイオンガイド14が内部に設けられたコリジョンセル13とが設置されている。試料由来の各種イオンは四重極マスフィルタ12に導入され、四重極マスフィルタ12に印加されている電圧に応じた特定の質量電荷比を有するイオンのみが該四重極マスフィルタ12を通り抜ける。このイオンはプリカーサイオンとしてコリジョンセル13に導入され、コリジョンセル13内に外部から供給されるCIDガスとの接触によってプリカーサイオンは解離し、各種のプロダクトイオンが生成される。
【0034】
イオンガイド14はリニアイオントラップとして機能し、生成されたプロダクトイオンは一時的に保持される。そして、保持されていたイオンは所定のタイミングでコリジョンセル13から放出され、イオン輸送光学系16により案内されつつイオン通過口15を経て高真空室6内に導入される。イオン輸送光学系16は、イオン通過口15を挟んで第3中間真空室5と高真空室6とに跨って配置されている。高真空室6内には、イオン射出源である直交加速部17と、反射器21及びバックプレート22を備えた飛行空間20と、イオン検出器23とが設けられており、直交加速部17にX軸方向に導入されたイオンは所定のタイミングでZ軸方向に加速されることで飛行を開始する。イオンはまず自由飛行したあと反射器21及びバックプレート22により形成される反射電場で折り返され、再び自由飛行してイオン検出器23に到達する。イオンが直交加速部1
7を出発した時点からイオン検出器23に到達するまでの飛行時間はイオンの質量電荷比に依存する。したがって、イオン検出器23による検出信号を受けた図示しないデータ処理部は、各イオンの飛行時間に基づいて質量電荷比を算出し、例えばマススペクトルを作成する。
【0035】
図2(a)は
図1中のコリジョンセル13と直交加速部17の間の詳細構成図、
図2(b)は軸(この場合にはイオン光軸)C上の概略ポテンシャル分布図、
図2(c)はコリジョンセル13と直交加速部17との間の空間におけるイオンの挙動を示す図である。
【0036】
図2(a)に示すように、コリジョンセル13の前端面及び後端面はそれぞれ入口側ゲート電極131、出口側ゲート電極132となっており、これら入口側ゲート電極131及び出口側ゲート電極132とイオンガイド14とが実質的にリニアイオントラップとして機能する。イオン輸送光学系16は、中央に円形開口を有する円盤状の電極板が軸Cに沿って多数(この例では8枚)配列された構成である。直交加速部17は、入口側電極171、押出し電極172、グリッド状の引出し電極173を含む。制御部30の制御の下に、出口側ゲート電極電圧発生部31は出口側ゲート電極132に所定の電圧を印加し、イオン輸送光学系電圧発生部32はイオン輸送光学系16に含まれる各電極板にそれぞれ所定の電圧を印加し、直交加速部電圧発生部33は入口側電極171、押出し電極172及び引出し電極173にそれぞれ所定の電圧を印加する。
なお、
図2では、特徴的な動作の説明に必要な構成要素のみを記載しており、図示しないものの、イオンガイド14や入口側ゲート電極131などにも適宜の電圧が印加されるようになっている。
【0037】
図2(b)中に示す一点鎖線U1は、イオンをリニアイオントラップ(コリジョンセル13内)に保持しているときの概略ポテンシャル分布である。このとき、出口側ゲート電極電圧発生部31は出口側ゲート電極132に対しイオンガイド14よりも高い所定の電圧を印加する。これにより、
図2(b)中に一点鎖線U1で示すように、出口側ゲート電極132のポテンシャルはイオンガイド14のポテンシャルE
1よりも高いE
2となっており、これによってイオンはおおむねイオンガイド14の内部に保持される。これは、
図3(b)を用いて説明した従来装置の場合と同様である。
【0038】
このとき、直交加速部電圧発生部33から入口側電極171に印加される電圧により、入口側電極171のポテンシャルはイオンガイド14のポテンシャルE
1よりも低いE
4となっている。また、イオン輸送光学系電圧発生部32からイオン輸送光学系16に含まれる各電極板に印加される電圧により、イオン輸送光学系16全体の平均的なポテンシャルは入口側電極171のポテンシャルと同程度となっている。なお、イオン輸送光学系16における各電極板の設置位置のポテンシャルは同一ではないが、平均的にみれば一定であるとみなし得るので、
図2(b)では点線でポテンシャル分布を示している。
【0039】
図2(b)中に示す実線U3は、リニアイオントラップに保持していたイオンを放出する際の概略ポテンシャル分布である。このとき、出口側ゲート電極電圧発生部31は出口側ゲート電極132に印加する電圧を大きく引き下げる。また、イオン輸送光学系電圧発生部32は出口側ゲート電極132への印加電圧が下がった分だけ、イオン輸送光学系16に含まれる各電極板に印加する電圧を大きく引き下げる。ただし、イオン輸送光学系16を構成する各電極板の間の電位差は、それら電極板の中央開口を通過しようとするイオンを収束させるレンズ作用を示す電場が形成されるように保たれる。そのため、このときにもイオン輸送光学系16における各電極板の設置位置のポテンシャルは同一ではないが、平均的にみれば一定であるとみなし得るので、
図2(b)では点線でポテンシャル分布を示している。
【0040】
これにより、イオン輸送光学系16全体の平均的なポテンシャルは入口側電極171のポテンシャルE
4よりも遙かに低いE
3になる。また、出口側ゲート電極132におけるポテンシャル障壁もなくなる。そして、イオンガイド14の出口側端部からイオン輸送光学系16の入口側端面(初段の電極板)に向かって、急な下り傾斜のポテンシャル勾配を示す加速電場が形成される。その直前までイオンガイド14の内部空間に保持されていたイオンは、この加速電場によって加速される。
【0041】
図2(b)中に示す細い一点鎖線U2は、特許文献1に記載の装置に基づくイオン放出時のポテンシャル分布である。この場合にも、イオンガイド14に保持されていたイオンは加速電場によって加速されることになるが、その加速電場におけるポテンシャル勾配の傾斜は緩く、イオンに付与される加速エネルギは小さいことが分かる。本実施例のQ−TOFMSでは、
図2(b)に示すように、イオンガイド14の出口側端部とイオン輸送光学系16の入口側端面とのポテンシャルの差を大きくすることで、加速電場におけるポテンシャル勾配の傾斜を大きくし、この電場を通過する各イオンに対して大きな加速エネルギを与える。質量電荷比に依らずイオンが受ける加速エネルギは同一であるので、各イオンは質量電荷比に応じた速度を持つ。
【0042】
加速エネルギが大きいとその分だけ各イオンの速度は大きくなるが、速度が全般的に大きいほど、速度差による単位距離を進むときの時間差が生じにくい。即ち、速度が全般的に大きいほど、相対的に大きな速度を持つ質量電荷比が小さなイオンと相対的に小さな速度を持つ質量電荷比が大きなイオンとの距離差が生じにくい。そのため、異なる質量電荷比を有するイオンは、質量電荷比に応じた位置の差がそれほどつかずに、つまりイオン進行方向にそれほど広がらずにイオン輸送光学系16を通過する。上述したようにイオン輸送光学系16では、各電極板への印加電圧が調整されることで、イオンに対するレンズ作用が生じるようになっている。そのため、イオンは軸Cの径方向に大きく拡がることなく、効率良くイオン輸送光学系16を通過する。
【0043】
なお、イオンガイド14は軸C方向に長い内部空間を有しており、該内部空間にイオンを保持している際にイオンが軸方向に大きくばらついていると、イオンガイド14からイオンを放出する際に加速電場に到達するまでの時間差によって軸方向のイオンの広がりが生じ易くなる。そこで、イオンガイド14の内部空間にイオンを保持する際に(又は少なくともイオンを放出する直前に)、イオンガイド14の出口側端部に近い位置にイオンが集積している状態となっていることが好ましい。そのためには、特許文献3に記載の構成を利用し、軸方向のポテンシャル勾配を形成するとよい。
【0044】
イオン輸送光学系16全体の平均的なポテンシャルが入口側電極171のポテンシャルE
4よりも低いE
3になったことで、イオン輸送光学系16の出口側端面(最終段の電極板)と入口側電極171との間には、上り傾斜のポテンシャル勾配を示す減速電場が形成される。したがって、イオン輸送光学系16を通過したイオンは減速電場に突入し、イオンのエネルギは減衰する。即ち、本実施例のQ−TOFMSでは、イオンガイド14の出口側端部とイオン輸送光学系16の入口側端面との間に形成される加速電場においてイオンは加速され、そのあと、イオン輸送光学系16の出口側端面と入口側電極171との間に形成される減速電場においてイオンは減速される。ただし、減速電場におけるポテンシャル差(E
4−E
3 )は加速電場におけるポテンシャル差(E
1−E
3)よりも小さいので、減速電場で減速されたイオンは適度な速度で直交加速部17に導入される。減速されることで、イオン進行方向のイオンの広がりは減速前よりも大きくなるものの、減速の直後に直交加速部17に入るため、質量電荷比に応じたX軸方向のイオンの広がりは抑えられる。
【0045】
出口側ゲート電極132及びイオン輸送光学系16に印加される電圧がパルス的に下げられることでイオンガイド14からイオンが放出された時点から、所定の遅延時間だけ遅れたタイミングで、直交加速部電圧発生部33は、押出し電極172及び引出し電極173にそれぞれ所定の加速電圧を印加する。これによって、直交加速部17をX軸方向に進行していたイオンはZ軸方向に加速される。このとき、X軸方向に所定の長さ(
図2(a)中の加速領域の長さP)のイオンが加速されるが、上述したように質量電荷比に応じたX軸方向のイオンの広がりが抑えられているために、遅延時間を適切に定めることで、幅広い質量電荷比のイオンが上記長さPに存在しているときにイオンを加速することができる。即ち、幅広い質量電荷比を持つイオンを無駄なく飛行空間20に送り出すことができ、幅広い質量電荷比に亘るマススペクトルを得ることができる。
【0046】
また、減速前に各イオンは大きなエネルギを有しているが、減速電場を通過することで、各イオンが持つエネルギは大きく減衰する。イオンが大きなエネルギを持ったまま直交加速部17に導入されると、Z軸方向に加速されたときに、イオンはX軸方向に大きな速度成分を有したまま飛び出すことになるため、飛行軌道がZ軸方向から大きくずれてしまう。これに対し、本実施例のQ−TOFMSでは、各イオンのエネルギが十分に減衰した状態で直交加速部17に入るため、イオンの飛行軌道のZ軸方向からのずれを抑えることができる。これによって、飛行距離の変化は小さくて済み、飛行時間から算出される質量電荷比の精度を高めることができる。
【0047】
以上のように、本実施例のQ−TOFMSでは、1回の測定によって幅広い質量電荷比範囲のマススペクトル(プロダクトイオンスペクトル)を高い感度で、且つ高い精度で得ることができる。
【0048】
なお、直交加速部17に導入される際の質量電荷比に応じたイオン進行方向のイオンの広がりの程度を変えると、1回の測定によって得られるマススペクトルデータの質量電荷比範囲が変化する。上記イオンの広がりの程度は、主として、加速電場においてイオンに付与される加速エネルギの大きさ(つまりは加速電場におけるポテンシャル差)、イオン輸送光学系16の軸C方向の長さ、及び、直交加速部17における加速領域の長さPによって決まる。したがって、これらの関係を予め求めておき、例えば、求めたい質量電荷比範囲に応じて、加速エネルギの大きさを調整する等の制御を行うようにしてもよい。
【0049】
また上記実施例は本発明を、直交加速方式TOFMSを用いたQ−TOFMSに適用したものであるが、本発明は、3次元四重極型イオントラップをイオン射出源としたリニアTOFMS又はリフレクトロンTOFMSにも適用することができる。その場合、上記実施例の構成における直交加速部17を3次元四重極型イオントラップに置き換えればよい。即ち、イオン輸送光学系16を通過し、減速電場を経たイオンが、3次元四重極型イオントラップのイオン入射口から該イオントラップの内部に導入される構成とすればよい。この場合、イオン入射口を経てイオンが3次元四重極型イオントラップの内部に導入される時間を或る程度の範囲に限定する必要があるが、上記実施例の構成を用いることで、より広い質量電荷比範囲のイオンをイオントラップ内に導入することができる。それによって、イオントラップに捕捉したイオンを質量分析することによって得られるマススペクトルの質量電荷比範囲を広げることができる。
【0050】
また、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変更、修正、追加などを行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0051】
1…チャンバ
2…イオン化室
3、4、5…中間真空室
6…高真空室
7…ESIスプレー
8…加熱キャピラリ
9…イオンガイド
10…スキマー
11…イオンガイド
12…四重極マスフィルタ
13…コリジョンセル
131…入口側ゲート電極
132…出口側ゲート電極
14…イオンガイド
15…イオン通過口
16…イオン輸送光学系
17…直交加速部
171…入口側電極
172…押出し電極
173…引出し電極
20…飛行空間
21…反射器
22…バックプレート
23…イオン検出器
30…制御部
31…出口側ゲート電極電圧発生部
32…イオン輸送光学系電圧発生部
33…直交加速部電圧発生部
C…軸