特許第6237913号(P6237913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237913
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電池冷却構造、及びカバー板
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20171120BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20171120BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20171120BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20171120BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20171120BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20171120BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M10/6556
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/6563
   H01M10/643
   H01M10/6566
   B60L11/18 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-545093(P2016-545093)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2014004446
(87)【国際公開番号】WO2016030932
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】井口 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山縣 雄太
(72)【発明者】
【氏名】清田 茂之
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−84363(JP,A)
【文献】 特開2013−168318(JP,A)
【文献】 特開2011−23301(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061814(WO,A1)
【文献】 特開2013−116724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L11/18
H01M10/60−10/667
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックに取り付け可能なカバー板の表面に形成され、前記電池パック内に冷却風を取り入れるための複数の冷却通路と、
前記カバー板の表面上で前記複数の冷却通路と交差する方向に形成され、前記複数の冷却通路を互いに連結して前記冷却風を融通可能にする連結通路と、を備え、
前記電池パックは、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールボックス内に配置され、
前記カバー板は、前記電池パックの側面に取り付けられ、
前記複数の冷却通路は、互いに並列に、且つ、床面に対して垂直方向に延伸し、前記床面側の一部が開口していることを特徴とする電池冷却構造。
【請求項2】
前記冷却通路及び前記連結通路は、前記カバー板と一体成形された断面凹型の溝である請求項1に記載の電池冷却構造。
【請求項3】
前記電池パックの排気側に設けられた排気用ファンを更に備え、
前記排気用ファンが前記電池パックの排気側から前記電池パックの内部の前記冷却風を吸い出すことで、前記複数の冷却通路に前記冷却風が吸い込まれる請求項1又は2に記載の電池冷却構造。
【請求項5】
前記連結通路は、前記カバー板の表面上において、前記カバー板に近接する運転席及び助手席のいずれかの車両用シートのシートクッションフレームのうち前記車両用シートの前後方向に延びる左右一対のサイドフレームの各後端部を連結するパイプ状のリアフレームの可動域に対応する領域に形成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池冷却構造。
【請求項6】
前記連結通路は複数であり、前記電池パックの天板側よりも床面側に近い領域のほうの本数が多い請求項1から請求項3、及び請求項5のいずれか一項に記載の電池冷却構造。
【請求項7】
前記カバー板の表面に加えられた荷重を、前記電池パックの反対側のカバー板に伝達する通しボルトを更に備える請求項1から請求項3、請求項5、及び請求項6のいずれか一項に記載の電池冷却構造。
【請求項8】
冷却風が通過する複数の冷却通路が表面に形成され、
前記複数の冷却通路を互いに連結して前記冷却風を融通可能にする連結通路が前記表面上で前記複数の冷却通路と交差する方向に形成され、
車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールボックス内に配置される電池パックの側面に取り付けられ、
前記複数の冷却通路は、互いに並列に、且つ、床面に対して垂直方向に延伸し、前記床面側の一部が開口していることを特徴とするカバー板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を冷却するための電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源として電動機を用いる電気自動車や、駆動源として電動機と内燃機関とを組み合わせた自動車(いわゆるハイブリッド車)等においては、電動機にエネルギーである電気を供給するための電池が搭載される。この電池としては、繰り返し充放電が可能なリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。二次電池は、電池セルを積層した電池モジュールにより構成されており、この電池モジュールが電池ケースの内部に収容された状態で自動車に搭載される。この電池ケースと、電池ケースの内部に収容された電池モジュール及びその他の内部構成部品とを含めたものを電池パックと称している。この電池パックには、内部に収容される電池モジュールの温度を管理するため、内部に冷却風を取り入れるためのファンやダクト等の冷却機器が取り付けられている。
【0003】
近年では、乗用車の場合における二次電池の搭載場所として、周辺温度やレイアウト上の要求から、運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソールボックス内に電池パックを配置することがある。このような場合、電池ケースは、電池を取り囲むように配設されたカバー部と、カバー部からダクトに向けて突出する延伸部とを有する。ダクトは、カバー部から離間して配置され、延伸部に取り付けられるとともにフロアパネルに電池ケースを介して固定されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−299592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、運転席と助手席との間のセンターコンソールボックス内は限られた空間であるために、電池パックの周辺に、ダクトを配置するための十分な空間があるとはいえない。また、センターコンソールボックスの周辺に物が置かれたときにダクトが圧迫され、時に閉塞して、冷却風の流れの阻害が生じるおそれがある。
本発明の目的は、電池パックと冷却通路(冷却風が通過する配管)とを一体化し、且つ、冷却通路の閉塞による冷却風の流れの阻害を回避する電池冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る電池冷却構造では、電池パックに取り付け可能なカバー板の表面に、電池パック内に冷却風を取り入れるための複数の冷却通路を形成する。更に、カバー板の表面上で複数の冷却通路と交差する方向に、複数の冷却通路を互いに連結して冷却風を融通可能にする連結通路を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、電池パックに取り付け可能なカバー板の表面に冷却通路と連結通路を形成するため、電池パックの周辺や内部に余分な空間を確保する必要が無い。また、カバー板の表面に複数の冷却通路を形成し、冷却通路同士の間に連結通路を形成することで、ある冷却通路が閉塞したときに、他の冷却通路から連結通路を通して冷却風を融通できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池パックの外観の構成例を示す図である。(a)は電池パックの吸気側の外観図である。(b)はA−A線での断面図である。(c)はB−B線での断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電池パックの内部の構成例を示す図である。
図3】電池パック全体の冷却風の流れの説明図である。(a)は排気側から見た場合の電池パックの周辺図である。(b)は電池パック内部の冷却風の流れを示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る電池パックの外観の構成例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る入力防護領域について説明するための図である。
図6】電池パックの近傍の座席のシートクッションフレームの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
(構成)
第1実施形態に係る電池冷却構造は、図1(a)に示すような電池パック1において実現される。電池パック1の側面の吸気側には、カバー板2が取り付けられている。例えば、カバー板2は、金属板等のパネルである。ここでは、カバー板2は、電池パック1の吸気側の側面板1a(サイドプレート)に取り付けられている。実際には、カバー板2は、電池パック1の吸気側の側面板1aと一体化していても良い。また、カバー板2自体が、電池パック1の吸気側の側面板1aでも良い。
【0010】
カバー板2の表面には、電池パック1内に冷却風を取り入れるための冷却通路2a、2b、2cと、それらの冷却通路同士を互いに連結する連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iが設けられている。図1(b)及び(c)に示すように、冷却通路2a、2b、2c、及び連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iの各々の内部は空洞になっており、冷却風が通過可能である。ここでは、空冷式を想定しているため、冷却媒体として冷却風(空気等)を使用している。
【0011】
また、冷却通路2a、2b、2c、及び連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iは、板金加工(曲げ加工、プレス加工等)によりカバー板2と一体成形された断面凹型の溝である。ここでは、冷却通路2a、2b、2c、及び連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iは、カバー板2の表面に盛り上がり、カバー板2の裏面に断面凹型の溝を形成している。板金加工によりカバー板2の表面上に形成するため、電池パック1の周辺に配管を設置して連結する場合に比べて、冷却通路2a、2b、2c、及び連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iを容易に設けることができる。また、レイアウト設計及び変更も容易である。なお、上記の構成は一例に過ぎない。実際には、冷却通路及び連結通路の本数は任意である。また、板金加工に限らず、硬化性樹脂等によりカバー板2と共に一体成形しても良い。
【0012】
冷却通路2aと2bとの間は、連結通路2d、2e、2fにより連結され、冷却風の通路が形成されている。冷却通路2bと2cとの間は、連結通路2g、2h、2iにより連結され、冷却風の通路が形成されている。
また、図1(a)に示すように、冷却通路2a、2b、2cは、互いに並列に、且つ、床面(フロアパネル等)に対して垂直方向に延伸し、下方の床面側の一部が開口している。例えば、冷却通路2a、2b、2cの下方の床面側の端面が開口している。なお、実際には、下方の床面側の側面が開口していても良い。すなわち、下方の床面側の一部の開口部が吸気口となる。このようにすることで、電池パック1の周辺において無駄の無いコンパクトなレイアウトが実現できる。
【0013】
ここでは、冷却通路2a、2b、2cの各々は、下方の床面側が大きく開口し、内部の空洞が上方の天井側(電池パック1の天板側)に向けて狭くなっていく。また、上方の天井側では閉塞している。冷却通路2a、2b、2cの表面は、下方の床面側から上方の天井側にかけて下り坂となるように傾斜している。このため、乗員の目につき易い上方の天井側では、冷却通路2a、2b、2cの厚みがカバー板2に近くなっており、カバー板2の表面上の冷却通路2a、2b、2cが目立たない。また、運転席又は助手席とセンターコンソールボックスとの間に本や紙を挟む際に、冷却通路2a、2b、2cが邪魔にならず、円滑に本や紙を挟むことができる。
【0014】
なお、冷却通路2a、2b、2cにおいて、上方の天井側の一部のみ開口させることや、上方の天井側及び下方の床面側の両方の一部を開口させることも可能である。但し、例えば電池パック1が車両に搭載されている場合、上方の天井側の一部が開口していると、下方の床面側の一部のみが開口している場合よりも、吸気口が乗員に近く、吸気の際に生じる僅かな音(冷却風の流入音)が乗員に聞こえやすいため、静音(静粛性能)という観点では性能が劣ることになる。また、上方の天井側の一部のみが開口していると、電池パック1の天板の上に物を置いた場合や、電池パック1を何かで覆った場合に、全ての吸気口がまとめて塞がれて冷却風を取り入れることができなくなる可能性がある。このように、上方の天井側の一部は下方の床面側の一部よりも全ての吸気口がまとめて塞がれやすい。したがって、下方の床面側の一部のみが開口していると好ましい。
【0015】
また、図1(a)に示すように、連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iは、互いに並列に、且つ、床面に対して水平(平行)に設けられている。すなわち、連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iの延伸方向は、冷却通路2a、2b、2cの延伸方向と直交(交差)する方向である。ここでは、冷却通路2a、2b、2cと連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iとは、格子状に配列されている。但し、実施には、冷却通路2a、2b、2cと連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iとは、網目状に配列されていても良い。また、連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iは、冷却通路2a、2b、2cと斜めに交差する方向、又はX字状に形成されていても良い。
【0016】
連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iを設けたことにより、冷却通路2a、2b、2cのいずれかにおいて、例えば運転席又は助手席とセンターコンソールボックスとの間に挟まれた本や紙、又は床面に落ちたゴミが吸い込まれる等により、吸気口又は冷却通路内が閉塞した場合でも、残りの冷却通路から連結通路を通してその冷却通路に冷却風を融通(供給)することができる。
また、連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iを設けたことにより、冷却通路2a、2b、2cのいずれか1本のみ下方の床面側を開口させて吸気口を設け、他の2本には吸気口を設けないという設計も可能となる。すなわち、冷却通路2a、2b、2cのうち少なくとも1本に吸気口を設けていれば、冷却通路2a、2b、2cの全てに冷却風を供給することが可能となる。
【0017】
(電池パックの内部)
図2に示すように、電池パック1は、複数の電池モジュール3を並列に収容している。複数の電池モジュール3の各々は、全体として直方体である筐体(容器)の内部に複数の柱状の電池セル3aを収容している。例えば、電池セル3aは円筒形セルであり、電池モジュール3に千鳥配列で収容されている。ここでは、電池パック1は、3つの電池モジュール3を収容している。個々の電池モジュール3は、14本(5本+4本+5本)の電池セル3aを収容している。但し、実際には、これらの例に限定されない。
【0018】
また、各電池モジュール3の筐体の第1の側面には、筐体内部に冷却風を取り入れるための開口部3bが設けられている。図示しないが、第1の側面と対向する第2の側面には、筐体内部から冷却風を排出するための他の開口部が設けられている。開口部3bから取り入れられた冷却風は、収容されている電池セル3aを冷却する。上記のカバー板2に設けられた冷却通路2a、2b、2cの位置及び冷却風の放出口は、電池パック1に収容された各電池モジュール3に設けられた開口部3bの位置に対応する。例えば、冷却通路2a、2b、2cの内部の空洞は、各電池モジュール3に設けられた開口部3bと直結している。冷却通路2a、2b、2cを通過した冷却風は、各電池モジュール3の開口部3bから筐体内部に取り入れられ、電池セル3aを冷却する。
【0019】
(冷却風の流れ)
図3(a)に示すように、電池パック1の側面の排気側には、カバー板6が取り付けられている。例えば、カバー板6は、金属板等のパネルである。ここでは、カバー板6は、電池パック1の排気側の側面板1b(サイドプレート)に取り付けられている。実際には、カバー板6は、電池パック1の排気側の側面板1bと一体化していても良い。また、カバー板6自体が、電池パック1の排気側の側面板1bでも良い。カバー板6は、内部が空洞となっており、下方の床面側の一部を開口し、この開口部を排気口としている。なお、電池パック1の排気側のカバー板6についても、電池パック1の吸気側のカバー板2と同様に、表面に冷却通路及び連結通路を設け、この冷却通路の下方の床面側の一部を開口し、この開口部を排気口としても良い。カバー板6は、床面に設けられた排気用ファン7に接続されている。排気用ファン7が、電池パック1の排気側のカバー板6に設けられた排気口から、電池パック1の内部の空気を吸い出すことで、電池パック1の吸気側において冷却通路2a、2b、2cの開口部(吸気口)から電池パック1の内部に冷却風が吸い込まれる。
【0020】
図3(b)に示すように、冷却風が下方の床面側から冷却通路2a、2b、2cの吸気口に吸い込まれ、電池モジュール3の内部を通過して、カバー板6の排気口から下方の床面側に向かい、床面上の排気用ファン7に吸い出される。例えば、冷却風は、エアコン等により冷却された車内の空気である。この冷却風は、冷却通路2a、2b、2cの吸気口から吸い込まれ、電池モジュール3の内部を通過して、カバー板6の排気口から吸い出される。その後、例えば車内を循環し、再度、冷却通路2a、2b、2cの吸気口から吸い込まれることもある。
このように、吸気口に冷却風を押し込むのではなく、排気口から電池パック1の中の空気を吸い出すことで、吸気口から冷却風を吸い込む構造である場合、吸気口への異物の侵入を完全に防止することや、吸気口又は冷却通路内に詰まった異物を冷却風で押し流すことは困難である。そのため、冷却通路2a、2b、2cの間に連結通路2d、2e、2f、2g、2h、2iを設けて、冷却風を融通可能にすることに大きな意味が生じる。
【0021】
(変形例)
必要であれば、吸気口、冷却通路内、及び/又は連結通路内に、異物の侵入を防止するための侵入防止柵を設置しても良い。例えば、侵入防止柵として、冷却通路内に柵又は網を設置又は形成しても良い。侵入防止柵の形状は、柵状、格子状、網目状、ドット穴状等のいずれでも良い。すなわち、冷却風の通過を極力阻害せず、異物の侵入を防止可能な形状であれば良い。
【0022】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)第1実施形態に係る電池冷却構造では、電池パックの側面に取り付け可能なカバー板の表面に、電池パック内に冷却風を取り入れるための複数の冷却通路を形成する。更に、カバー板の表面上で複数の冷却通路と交差する方向に、複数の冷却通路を互いに連結して冷却風を融通可能にする連結通路を形成する。
このように、電池パックの側面に取り付け可能なカバー板の表面に、複数の冷却通路を形成し、冷却通路同士の間に連結通路を形成する。これにより、例えば運転席又は助手席とセンターコンソールボックスとの間に挟まれた本や紙、又は床面に落ちたゴミが吸い込まれる等により、ある冷却通路が閉塞したときに、他の冷却通路から連結通路を通して冷却風を融通できる。また、カバー板の表面上に冷却通路と連結通路を形成するため、電池パックの周辺や内部に余分な空間を確保する必要が無く、無駄の無いコンパクトなレイアウトが実現できる。
【0023】
(2)冷却通路及び連結通路は、カバー板と一体成形された断面凹型の溝である。
このようにすることで、カバー板の表面上に冷却通路及び連結通路を容易に形成することができる。また、レイアウト設計及び変更も容易である。
【0024】
(3)電池パックの排気側に設けられた排気用ファンが、電池パックの排気側から電池パックの内部の冷却風を吸い出すことで、複数の冷却通路に冷却風が吸い込まれる。
排気側にファンを設置することで、吸気側は冷却風を取り込む吸気口と冷却通路を設けるだけで十分となる。更に、排気側から電池パック内の冷却風を吸い出すため、吸気側から電池パック内に冷却風を押し込む場合と比べて、電池パック内から効率良く確実に冷却風を排出することができる。
【0025】
(4)電池パックは、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールボックス内に配置されている。カバー板は、電池パックの側面に取り付けられている。複数の冷却通路は、互いに並列に、且つ、床面に対して垂直方向に延伸し、床面側の一部が開口している。
このように、冷却通路の開口部(吸気口)が床面側であるため、電池パックの天板側に吸気口を設ける場合と比べて、吸気の際に生じる僅かな音(冷却風の流入音)が車室内の乗員に聞こえ難くなり、良好な静粛性能を得ることができる。また、電池パックの上に物が置かれても、吸気口が塞がれる心配が無い。
更に、上記の(3)のように吸気側において吸気口から冷却風を吸い込む構造を実現した場合、良好な静粛性能を得るため、冷却通路の開口部(吸気口)を床面側にすることに大きな意味が生じる。
【0026】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態に係る電池パック1の構成については、基本的に第1実施形態と同様である。
第1実施形態で説明した連結通路は、カバー板の表面に対して垂直な方向からの入力(衝突、打撃、加圧等)に対するカバー板の補強材(リブ)としても機能する。第2実施形態では、図4に示すように、カバー板2の表面上の一部の領域に、重点的に連結通路を設けることで、連結通路の配置により、カバー板2の表面に対して垂直な方向からの入力に対する耐久性や剛性を向上させた「入力防護領域」を形成する。
【0027】
例えば、電池パック1は、車両の運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソールボックス内に配置されている。一般的な運転席や助手席等の車両用シート(座席)は、図5に示すように、着座者の背部を支持するシートバック(背もたれ)と、着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション(座面)とを備えている。このシートクッションは、その骨格を構成するシートクッションフレーム5を備える。
シートクッションフレーム5は、図6に示すように、シート前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム5a、5bと、サイドフレーム5a、5bの各前端部を連結したフロントフレーム5cと、サイドフレーム5a、5bの各後端部を連結したリアフレーム5dとを含んで構成されている。サイドフレーム5a、5bは、板金材料によって形成されている。フロントフレーム5c及びリアフレーム5dは、円形断面の金属製のパイプ材によって形成されている。但し、実際には、円形断面の金属製のパイプ材に限定されない。
【0028】
このような構成、及び配置状況において、何らかの事情により、車両が横方向からの入力を受けて運転席又は助手席が移動、変形又は破損した場合、配置や強度の関係から、図5に示すように、リアフレーム5dが、電池パック1に取り付けられたカバー板2に強い荷重を加える可能性がある。
そこで、カバー板2に強い加重が加わる場合の対策として、第2実施形態では、図4に示すように、連結通路2dと2eとを接近させ、連結通路2dと2eとの間が連結通路2eと2fとの間よりも狭くなるように設ける。同様に、連結通路2gと2hとを接近させ、連結通路2gと2hとの間が連結通路2hと2iとの間よりも狭くなるように設ける。このように連結通路2d、2e及び連結通路2g、2hを設けた領域が「入力防護領域」となる。
【0029】
この入力防護領域における連結通路2d、2e、2g、2hは、カバー板2の表面上において、カバー板2に近接した運転席及び助手席のいずれかの車両用シートのシートクッションフレーム5のうち車両用シートの前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム5a、5bの各後端部を連結するパイプ状のリアフレーム5dの可動域(移動可能な範囲、又は位置変更可能な範囲)に対応する領域に形成されている。具体的には、車両用シートの前後方向のスライドに伴ってリアフレーム5dが前後方向にスライドする範囲や、車両用シートの上下方向の高さ調整に合わせてリアフレーム5dの位置が上下方向に変化する範囲に対応する領域に形成されている。すなわち、リアフレーム5dがカバー板2に接触する位置が前後上下方向にずれても、入力防護領域の範囲内に収まるようにしている。
【0030】
カバー板2の表面上の入力防護領域は、連結通路2d、2e、2g、2hを設けた分だけ、連結通路を設けていない他の領域よりも厚みが増し、入力に対する耐久性及び剛性が大きくなる。
また、入力防護領域において、上下方向に2本の連結通路(連結通路2dと2e、又は連結通路2gと2h)を並べて配置することで、1本の連結通路のみを設ける場合と比べて、構造上、入力に対する耐久性及び剛性が大きくなり、且つ、入力による荷重を2本の連結通路に分散することができる。
【0031】
また、リアフレーム5dの可動域に対応する領域のように、荷重を受ける可能性があるカバー板2の下方の床面側の領域(例えば、カバー板2の高さ方向の中央以下の領域)に連結通路を集中配置(重点的に形成)しても良い。具体的には、カバー板2の表面上において、上方の天井側(電池パック1の天板側)よりも下方の床面側に近い領域のほうに形成される連結通路の本数を多くする。
また、連結通路2d、2e、2g、2hがカバー板2の表面に対して垂直な方向からの入力を受けた場合には、連結通路2d、2e、2g、2hが変形することや、変形した連結通路2d、2e、2g、2hをカバー板2又はそれを取り付けた側面板が裏から支えることにより、入力による電池パック1の内部への影響を低減することができる。
【0032】
更に、図2に示すように、各電池モジュール3には、貫通孔であるボルト穴3cが設けられている。ここでは、各電池モジュール3の4隅(又はその付近)に、4つのボルト穴3cが設けられている。電池パック1自体には、3つの電池モジュール3が収容されているため、合計12のボルト穴3cが設けられていることになる。
ここでは、図4及び図5に示すように、カバー板2は、上記の電池モジュール3に設けられているボルト穴3cを貫通する通しボルト4を介して、電池パック1を挟んで反対側のカバー板6と連結している。実際には、カバー板2は、通しボルト4を介して、カバー板6ではなく、電池パック1の排気側の側面板1bと連結していても良い。若しくは、カバー板2とカバー板6ではなく、電池パック1の吸気側の側面板1aと排気側の側面板1bとが、通しボルト4を介して連結していても良い。この場合、カバー板2と吸気側の側面板1aとの連結方法(取り付け方法)、及びカバー板6と排気側の側面板1bとの連結方法については、既存の連結方法を利用できるため、特に限定しない。通しボルト4の端部は、ナットと座金に相当する部材により、カバー板2及び/又は吸気側の側面板1a(カバー板6及び/又は排気側の側面板1bも同様)を挟持して固定している。
【0033】
カバー板2は、入力防護領域に対して垂直な方向から強い荷重が加えられた場合、図5に示すように、複数の通しボルト4に荷重を分散し、通しボルト4を介して反対側のカバー板6に荷重を伝達する。この場合、通しボルト4を介して、カバー板2からカバー板6に直接荷重を伝達するような構成にすることで、電池パック1の吸気側の側面板1a及び排気側の側面板1bには可能な限り荷重を伝達しないように構成すると好ましい。例えば、カバー板2と通しボルト4とカバー板6とを用いて、電池パック1の側面外側に擬似的に強固なケースを構成する。なお、カバー板2と吸気側の側面板1aとが一体化し、カバー板6と排気側の側面板1bとが一体化しているときは、カバー板2の入力防護領域に荷重が加えられた場合、通しボルト4を介して反対側の排気側の側面板1b及びカバー板6に荷重を伝達することになる。反対側に荷重を伝達することで、電池パック1の内部への荷重の伝達を防止、抑止又は低減し、電池パック1の内容物(電池パック1に収容された電池モジュール3及び電池セル3a等)の変形(特に圧壊)を防止する。このように、専用の保護部材を使用せず、且つ、新たな部材を作製することなく既存の部材を利用して、電池パック1の内容物を防護(保護)する構造にする。
【0034】
(変形例)
なお、実際には、入力防護領域は、強い衝撃を受けてリアフレーム5dが突出、変形又は破損し、可動域を超えてカバー板2に接触する事態に備えて、リアフレーム5dの可動域よりも拡大した推定接触可能範囲(接触が起こり得ると推定される範囲)にすると好ましい。推定接触可能範囲は、リアフレーム5dの可動域を内包する。このように、入力防護領域は、リアフレーム5dがカバー板2に接触する可能性のある領域を含んでいる。
【0035】
また、実際には、車両の違いによるリアフレーム5dの位置の違いに対応するため、カバー板2の下方の床面側の領域(例えば、カバー板2の高さ方向の中央以下の領域)を全て推定接触可能範囲(又は入力防護領域)としても良い。
また、実際には、通しボルト4自体が、入力による荷重を直接受けても良い。例えば、カバー板2の表面に突出した通しボルト4の端部が、入力による荷重を直接受けても良い。すなわち、通しボルト4も、入力防護領域の一部であっても良い。この場合、入力防護領域は、通しボルト4を含む。
【0036】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態によれば、第1実施形態に係る電池冷却構造と同様の作用効果を奏し、更に以下のような効果を奏する。
(1)第2実施形態に係る電池冷却構造では、連結通路は、カバー板のリブとして、カバー板の表面上で荷重が加えられると推定される領域に重点的に形成されている。
このように、連結通路の配置を工夫することにより、連結通路の集合体でカバー板の表面上に入力防護領域を形成し、電源パックの側面からの入力に対する耐久性や剛性を向上させることができる。
【0037】
(2)第2実施形態に係る電池冷却構造では、連結通路は、前記カバー板の表面上において、運転席及び助手席のいずれかの車両用シートのシートクッションフレームのうち前記車両用シートの前後方向に延びる左右一対のサイドフレームの各後端部を連結するパイプ状のリアフレームの可動域に対応する領域に形成されている。
電池パックが車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールボックス内に配置されている場合、有事の際に、電池パックのカバー板に近接した車両用シートのリアフレームが、電池パックのカバー板の表面に荷重を加える可能性がある。そこで、連結通路の配置をリアフレームの可動域に対応させることで、的確に荷重を受け止めることが可能な入力防護領域を形成することができる。
【0038】
(3)連結通路は複数であり、電池パックの天板側よりも床面側に近い領域のほうの本数が多い。すなわち、上方の電池パックの天板側よりも、下方の床面側に近い領域のほうに形成される連結通路の本数を増やす。
カバー板の表面上において、下方の床面側の領域は車両用シートのリアフレームの可動域に対応すると考えられるため、下方の床面側の領域に連結通路を集中配置することで、カバー板の耐久性及び剛性を的確に向上させることが可能となる。
(4)電池パックのカバー板の表面に加えられた荷重を、通しボルトを介して電池パックの反対側のカバー板に伝達する。
これにより、電池パックの内部への荷重の伝達を防止し、電池パックの内容物の変形を防止する。
【0039】
<補足>
なお、上記の各実施形態は、任意に組み合わせて実施することも可能である。以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 電池パック
1a 側面板(吸気側)
1b 側面板(排気側)
2 カバー板(吸気側)
2a、2b、2c 冷却通路
2d、2e、2f、2g、2h、2i 連結通路
3 電池モジュール
3a 電池セル
3b 開口部
3c ボルト穴
4 通しボルト
5 シートクッションフレーム
5a、5b サイドフレーム
5c フロントフレーム
5d リアフレーム
6 カバー板(排気側)
7 排気用ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6