特許第6237914号(P6237914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237914
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】温度制御装置及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 23/19 20060101AFI20171120BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G05D23/19 J
   G05B11/36 501Q
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-546213(P2016-546213)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2014072997
(87)【国際公開番号】WO2016035130
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250317
【氏名又は名称】理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂文
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−049406(JP,A)
【文献】 特開2009−301258(JP,A)
【文献】 特開2001−273002(JP,A)
【文献】 特開2005−035090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 23/19
G05B 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御対象の目標温度である第1の温度設定値と、前記第1の制御対象の測定温度である第1の温度測定値とから前記第1の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、前記操作量にしたがって前記第1の制御対象の温度を制御する第1のコントローラと、
目標温度に到達するまでの時間が前記第1の制御対象より早い第2の制御対象の目標温度である第2の温度設定値と、前記第2の制御対象の測定温度である第2の温度測定値とから前記第2の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、前記操作量にしたがって前記第2の制御対象の温度を制御する第2のコントローラと、
前記第1及び第2のコントローラによる温度制御開始時における前記第1の温度設定値と前記第1の温度測定値の差分である第1の差分初期値と、前記温度制御開始時における前記第2の温度設定値と前記第2の温度測定値の差分である第2の差分初期値とを求め、前記第1の差分初期値に対する前記第2の差分初期値の比を算出して、前記比を記憶する初期差分比記憶手段と、
前記第1及び第2のコントローラにより温度制御が実行される制御タイミング毎に、当該制御タイミングにおける前記第1の温度設定値と前記第1の温度測定値の差分と、前記初期差分比記憶手段により記憶された比とを用いて、前記第2の温度設定値を補正する設定値補正手段と
を備えた温度制御装置。
【請求項2】
前記設定値補正手段は、当該制御タイミングにおける前記第1の温度設定値と前記第1の温度測定値の差分である差分値を算出して、前記差分値と前記初期差分比記憶手段により記憶された比を乗算し、前記温度制御開始時における前記第2の温度設定値から当該乗算結果を減算することで、前記第2の温度設定値を補正することを特徴とする請求項1記載の温度制御装置。
【請求項3】
3つ以上の制御対象が存在する場合、前記3つ以上の制御対象の中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象が前記第1の制御対象になり、残りの2つ以上の制御対象がそれぞれ第2の制御対象になることを特徴とする請求項1記載の温度制御装置。
【請求項4】
複数の制御対象の中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象が不明である場合、前記複数の制御対象の温度を制御する各コントローラに対して、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するための事前準備用の温度制御として、温度設定値の補正を行わずに制御対象の温度を制御することを指示する実行指示手段と、
前記事前準備用の温度制御中に、各々の制御対象の温度設定値と温度測定値の差分である差分値を求めるとともに、前記差分値を当該制御対象の単位時間毎の温度変化量で除算することで、各々の制御対象が目標温度に到達するまでの予測時間を算出し、前記複数の制御対象の中で、前記予測時間が最も大きい制御対象を第1の制御対象に設定し、残りの制御対象を第2の制御対象に設定する制御対象設定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の温度制御装置。
【請求項5】
第1のコントローラが、第1の制御対象の目標温度である第1の温度設定値と、前記第1の制御対象の測定温度である第1の温度測定値とから前記第1の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、前記操作量にしたがって前記第1の制御対象の温度を制御する第1の温度制御ステップと、
第2のコントローラが、目標温度に到達するまでの時間が前記第1の制御対象より早い第2の制御対象の目標温度である第2の温度設定値と、前記第2の制御対象の測定温度である第2の温度測定値とから前記第2の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、前記操作量にしたがって前記第2の制御対象の温度を制御する第2の温度制御ステップと、
初期差分比記憶手段が、前記第1及び第2の温度制御ステップによる温度制御開始時における前記第1の温度設定値と前記第1の温度測定値の差分である第1の差分初期値と、前記温度制御開始時における前記第2の温度設定値と前記第2の温度測定値の差分である第2の差分初期値とを求め、前記第1の差分初期値に対する前記第2の差分初期値の比を算出して、前記比を記憶する初期差分比記憶処理ステップと、
設定値補正手段が、前記第2の温度制御ステップで温度制御が実行される制御タイミング毎に、当該制御タイミングにおける前記第1の温度設定値と前記第1の温度測定値の差分と、前記初期差分比記憶処理ステップで記憶された比とを用いて、前記第2の温度設定値を補正する設定値補正処理ステップと
を備えた温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇温速度が異なる複数の制御対象の温度を制御する温度制御装置及び温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機や押出成形機などの、複数の温度制御ゾーン(制御対象)を有する機器では、各々の温度制御ゾーンにおける熱容量等の特性に合わせてヒータを設計している。しかしながら、実際の温度制御では、各々の温度制御ゾーンが目標温度に到達する時刻にバラツキが生じてしまうことが多い。
早くに目標温度に到達した温度制御ゾーンでは、他の温度制御ゾーンが目標温度に到達するまで目標温度を維持する必要があるため、射出成形機や押出成形機などの成形物である樹脂が焼けてしまうおそれがあり、また、無駄な電力を消費することになる。
【0003】
以下の特許文献1には、昇温完了時刻を同期させるために、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンの温度測定値を、他の温度制御ゾーンの目標温度に設定する温度制御方法が開示されている。
この温度制御方法の場合、全ての温度制御ゾーンの目標温度が同じであれば、昇温完了時刻を同期させることができるが、各温度制御ゾーンの目標温度が異なる場合や昇温開始温度が異なる場合などでは、昇温完了時刻を同期させることができなくなるという問題がある。
【0004】
以下の特許文献2に開示されている温度制御装置では、上記の問題を解決するために、コントローラの制御タイミング毎に、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンの温度設定値に対する温度測定値の到達率(=(温度測定値−温度測定値の初期値)/(温度設定値−温度測定値の初期値))を算出し、その到達率と他の温度制御ゾーンの温度測定値の初期値を用いて、他の温度制御ゾーンの温度設定値を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−315219号公報(例えば、段落[0010])
【特許文献2】特開2005−035090号公報(例えば、段落[0038])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の温度制御装置は以上のように構成されているので、コントローラの制御タイミング毎に、温度設定値に対する温度測定値の到達率(=(温度測定値−温度測定値の初期値)/(温度設定値−温度測定値の初期値))を算出する必要があるが、この到達率は、コントローラが温度制御量を算出する際のPID演算等では使用されない変数であるため、この到達率を算出するための処理を追加する必要があった。更に、この到達率から他の温度制御ゾーンの昇温を完了させるための設定値を算出するには、(到達率×(他の温度制御ゾーンの温度設定値−他の温度制御ゾーンの温度測定値の初期値)+他の温度制御ゾーンの温度測定値の初期値)という計算を行う必要があり、演算処理が複雑になってしまうという課題があった。また、この到達率の算出処理は、(温度測定値−温度測定値の初期値)を(温度設定値−温度測定値の初期値)で除算する処理であり、演算負荷が大きな除算処理を、コントローラの制御タイミング毎に行う必要があるため、装置の処理負荷が大きくなってしまうという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、演算負荷が軽い処理を実行するだけで、各温度制御ゾーンの目標温度が異なる場合や昇温開始温度が異なる場合でも、昇温完了時刻を同期させることができる温度制御装置及び温度制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る温度制御装置は、第1の制御対象の目標温度である第1の温度設定値と、第1の制御対象の測定温度である第1の温度測定値とから第1の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、その操作量にしたがって第1の制御対象の温度を制御する第1のコントローラと、目標温度に到達するまでの時間が第1の制御対象より早い第2の制御対象の目標温度である第2の温度設定値と、第2の制御対象の測定温度である第2の温度測定値とから第2の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、その操作量にしたがって第2の制御対象の温度を制御する第2のコントローラと、第1及び第2のコントローラによる温度制御開始時における第1の温度設定値と第1の温度測定値の差分である第1の差分初期値と、温度制御開始時における第2の温度設定値と第2の温度測定値の差分である第2の差分初期値とを求め、第1の差分初期値に対する第2の差分初期値の比を算出して、その比を記憶する初期差分比記憶手段とを設け、設定値補正手段が、第1及び第2のコントローラにより温度制御が実行される制御タイミング毎に、当該制御タイミングにおける前記第1の温度設定値と第1の温度測定値の差分と、初期差分比記憶手段により記憶された比とを用いて、前記第2の温度設定値を補正するようにしたものである。尚、初期差分比記憶手段は第2のコントローラの一部であっても良い。
【0009】
この発明に係る温度制御装置は、設定値補正手段が、当該制御タイミングにおける第1の温度設定値と第1の温度測定値の差分である差分値を算出して、その差分値と初期差分比記憶手段により記憶された比を乗算し、当該制御タイミングにおける第2の温度設定値から当該乗算結果を減算することで、前記第2の温度設定値を補正するようにしたものである。
【0010】
この発明に係る温度制御装置は、3つ以上の制御対象が存在する場合、3つ以上の制御対象の中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象が第1の制御対象になり、残りの2つ以上の制御対象がそれぞれ第2の制御対象になるようにしたものである。
【0011】
この発明に係る温度制御装置は、複数の制御対象の中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象が不明である場合、複数の制御対象の温度を制御する各コントローラに対して、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するための事前準備用の温度制御として、温度設定値の補正を行わずに制御対象の温度を制御することを指示する実行指示手段と、事前準備用の温度制御中に、各々の制御対象の温度設定値と温度測定値の差分である差分値を求めるとともに、その差分値を当該制御対象の単位時間毎の温度変化量で除算することで、各々の制御対象が目標温度に到達するまでの予測時間を算出し、複数の制御対象の中で、予測時間が最も大きい制御対象を第1の制御対象に設定し、残りの制御対象を第2の制御対象に設定する制御対象設定手段とを備えるようにしたものである。
【0012】
この発明に係る温度制御方法は、第1のコントローラが、第1の制御対象の目標温度である第1の温度設定値と、第1の制御対象の測定温度である第1の温度測定値とから第1の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、その操作量にしたがって第1の制御対象の温度を制御する第1の温度制御ステップと、第2のコントローラが、目標温度に到達するまでの時間が第1の制御対象より早い第2の制御対象の目標温度である第2の温度設定値と、第2の制御対象の測定温度である第2の温度測定値とから第2の制御対象の温度制御のための操作量を算出し、その操作量にしたがって第2の制御対象の温度を制御する第2の温度制御ステップと、初期差分比記憶手段が、第1及び第2の温度制御ステップによる温度制御開始時における第1の温度設定値と第1の温度測定値の差分である第1の差分初期値と、温度制御開始時における第2の温度設定値と第2の温度測定値の差分である第2の差分初期値とを求め、第1の差分初期値に対する第2の差分初期値の比を算出して、その比を記憶する初期差分比記憶処理ステップと、設定値補正手段が、第2の温度制御ステップで温度制御が実行される制御タイミング毎に、当該制御タイミングにおける第1の温度設定値と第1の温度測定値の差分と、初期差分比記憶処理ステップで記憶された比とを用いて、第2の温度設定値を補正する設定値補正処理ステップとを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、演算負荷が軽い簡単な処理を実行するだけで、各温度制御ゾーンの目標温度が異なる場合や昇温開始温度が異なる場合でも、昇温完了時刻を同期させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1による温度制御装置を示す構成図である。
図2】この発明の実施の形態1による温度制御装置の処理内容(温度制御方法)を示すフローチャートである。
図3】マスターCH及びスレーブCHの昇温完了時刻が同期している温度制御例を示す説明図である。
図4】この発明の実施の形態2による温度制御装置を示す構成図である。
図5】この発明の実施の形態2による温度制御装置の制御対象振分処理部30を示す構成図である。
図6】制御対象振分処理部30の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
この実施の形態1では、温度制御装置が、複数の温度制御ゾーンの温度を制御する例を説明するが、複数の温度制御ゾーンの中で、目標温度である温度設定値に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーン(第1の制御対象)をマスターCHと称し、残りの温度制御ゾーン(第2の制御対象)をスレーブCHと称する。
また、マスターCHを加熱するヒータを制御するコントローラをマスターコントローラと称し、スレーブCHを加熱するヒータを制御するコントローラをスレーブコントローラと称する。
なお、複数の温度制御ゾーンの中で、どの温度制御ゾーンが、温度設定値に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンであるかについては、各温度制御ゾーンの熱容量等の特性、過去の制御実績、あるいは、当該温度制御を開始する前の予備的な昇温結果などから特定されている。
【0016】
図1はこの発明の実施の形態1による温度制御装置を示す構成図である。
図1において、1はマスターCHの制御系、2(m=1,2,・・・,M)はスレーブCHの制御系である。図1では、M個のスレーブCHの制御系2〜2が実装されている例を示しているが、スレーブCHの制御系の数は1個であってもよい。
マスターCHの目標温度設定部11はユーザインタフェース(例えば、温度設定用のボタン、タッチパネルなど)を有し、マスターCHの目標温度である温度設定値SVmasterの設定を受け付ける処理を実施する。
マスターCHの温度測定部12はマスターCHの温度を測定する温度測定器であり、その測定結果である温度測定値PVmaster−nをマスターCHの差分算出部13に出力する。nは温度制御開始時からn番目の制御タイミングを示す変数である。
【0017】
マスターCHの差分算出部13は目標温度設定部11から出力されたマスターCHの温度設定値SVmasterと、温度測定部12から出力されたマスターCHの温度測定値PVmaster−nとの差分である差分値emaster−nを算出する処理を実施する。
マスターCHの制御演算部14は差分算出部13により算出された差分値emaster−nから、マスターCHの制御対象16の温度制御のための操作量として温度制御量MVmaster−nを算出し、その温度制御量MVmaster−nにしたがってヒータ15の加熱部を制御することで、そのマスターCHの制御対象16の温度を制御する。
マスターCHのヒータ15の加熱部は、制御演算部14の制御の下で、マスターCHの制御対象16を加熱する熱源である。
【0018】
スレーブCH(m=1,2,・・・,M)の目標温度設定部21はユーザインタフェース(例えば、温度設定用のボタン、タッチパネルなど)を有し、スレーブCHの目標温度である温度設定値SVslave−mの設定を受け付ける処理を実施する。
スレーブCHの温度測定部22はスレーブCHの温度を測定する温度測定器であり、その測定結果である温度測定値PVslave−m−nを差分算出部24に出力する。nは温度制御開始時からn番目の制御タイミングを示す変数である。
【0019】
スレーブCHは目標温度設定部21で設定された温度設定値SVslave−mに基づいて温度制御する通常制御モードと、後述する設定補正値算出部26により補正されたスレーブCHの温度設定値SV’slave−m−nに基づいて温度制御する昇温完了同期制御モードとの2つの制御モードがあり、2つの制御モードの切り替えは設定切換部23で行われる。
例えば、設定切換部23は、昇温完了同期制御モードで制御を開始し(設定補正値算出部26と差分算出部24を接続)、その後、マスターCHの差分算出部13により算出された差分emaster−nがゼロになると、制御モードを昇温完了同期制御モードから通常制御モードに切り換える処理を行う(目標温度設定部21と差分算出部24を接続する)。
この実施の形態1では、温度設定値に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが特定されているため、上述したように、昇温完了同期制御モードで温度制御を開始する。
後述する実施の形態2では、温度設定値に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが分からないため、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するための事前準備用の温度制御を開始する(詳細は後述する)。
【0020】
スレーブCHの差分算出部24は設定補正値算出部26により補正されたスレーブCHの温度設定値SV’slave−m−nと、温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m−nとの差分である差分値eslave−m−nを算出する処理を実施する。
スレーブCHの初期差分比記憶部25は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、マスターCHの差分算出部13から昇温完了同期制御モードで温度制御が開始された時点の差分である差分初期値easter−0(第1の差分初期値)を取得するとともに、スレーブCHの差分算出部24から昇温完了同期制御モードで温度制御が開始された時点の差分である差分初期値eslave−m−0(第2の差分初期値)を取得し、その差分初期値eslave−m−の差分初期値emaster−0に対する比α(=eslave−m−0/emaster−0)を算出して、その比αを記憶する処理を実施する。
なお、初期差分比記憶部25及び差分算出部13,24から初期差分比記憶手段が構成されている。
【0021】
スレーブCHの設定補正値算出部26は温度制御が実行される制御タイミング毎に、初期差分比記憶部25により記憶された比αを用いて、スレーブCHのスレーブコントローラ20が当該制御タイミングで使用するスレーブCHの温度設定値SVslave−mを補正する処理を実施する。
即ち、設定補正値算出部26は、マスターCHの差分算出部13からn回目の制御タイミング(n=1,2,・・・)での差分である差分値emaster−n(第1の差分値:SVmaster−PVmaster−n)を取得して、その差分値emaster−と初期差分比記憶部25により記憶された比αを乗算し、目標温度設定部21により設定が受け付けられたスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0(昇温完了同期制御モードで温度制御が開始された時点の温度設定値SVslave−m−0)から当該乗算結果emaster−n・αを減算することで、n回目の制御タイミングで使用するスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nを算出する処理を実施する。なお、設定補正値算出部26及び差分算出部13から設定値補正手段が構成されている。
【0022】
スレーブCHの制御演算部27は差分算出部24により算出された差分値eslave−m−nから、スレーブCHの制御対象29の温度制御のための操作量として温度制御量MVslave−m−nを算出し、その温度制御量MVslave−m−nにしたがってヒータ28の加熱部を制御することで、そのスレーブCHの制御対象29の温度を制御する。
スレーブCHのヒータ28の加熱部は、制御演算部27の制御の下で、スレーブCHの制御対象29を加熱する熱源である。
図2はこの発明の実施の形態1による温度制御装置の処理内容(温度制御方法)を示すフローチャートである。
【0023】
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、マスターCHのマスターコントローラ10がマスターCHの温度設定値SVmasterに基づき一定周期の制御タイミングで温度制御を繰り返し実施するものとする。また、スレーブCH(m=1,2,・・・,M)のスレーブコントローラ20が、マスターCHの差分値emaster−nがゼロになるまで、補正した温度設定値SV’slave−m−nに基づき一定周期の制御タイミングで温度制御を実施するものとする。
【0024】
マスターコントローラ10及びスレーブコントローラ20が温度制御を開始する前に、ユーザが目標温度設定部11のユーザインタフェースを操作して、マスターCHの目標温度である温度設定値SVmasterを設定するとともに、目標温度設定部21のユーザインタフェースを操作して、スレーブCH(m=1,2,・・・,M)の目標温度である温度設定値SVslave−m−0を設定する。
ここでは、ユーザが手動で温度設定値SVmaster,SVslave−m−0を設定する例を示しているが、外部から温度設定値SVmaster,SVslave−m−が自動的に設定されるものであってもよい。
なお、スレーブCHの温度設定値SVmasterと、各スレーブCH〜CHの温度設定値SVslave−1−0〜SVslave−M−0とが同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0025】
マスターコントローラ10及びスレーブコントローラ20は、例えば、外部から温度制御の開始要求を受けると、制御対象の温度制御を開始する。
即ち、マスターCHにおけるマスターコントローラ10の差分算出部13は、例えば、外部から昇温完了同期制御モードによる温度制御の開始要求を受けると、下記の式(1)に示すように、目標温度設定部11から出力されたマスターCHの温度設定値SVmasterと、温度測定部12から出力されたマスターCHの温度測定値PVmaster−(温度制御開始時におけるマスターCHの温度測定値PVmaster−0)との差分である差分初期値emaster−0を算出する。
master−0=SVmaster−PVmaster−0 (1)
以降のn回目の制御タイミング(n=1,2,・・・)において、マスターCHの差分算出部13は、下記の式(2)に示すように、目標温度設定部11から出力されたマスターCHの温度設定値SVmasterと、温度測定部12から出力されたマスターCHの温度測定値PVmaster−n(n回目の制御タイミングにおけるマスターCHの温度測定値PVmaster−n)との差分である差分値emaster−nを算出する。
master−n=SVmaster−PVmaster−n (2)
【0026】
マスターCHの制御演算部14は、マスターCHの差分算出部13が差分値emaster−nを算出すると、その差分値emaster−nが零に近づくように、例えば、その差分値を入力とするPID演算を実施することにより、マスターCHの制御対象16の温度制御のための操作量として温度制御量MVmaster−nを算出する。
マスターCHの制御演算部14は、温度制御量MVmaster−nを算出すると、その温度制御量MVmaster−nにしたがってヒータ15の加熱部を制御することで、マスターCHの制御対象16の温度を制御する(ステップST1)。
【0027】
スレーブCH(m=1,2,・・・,M)におけるスレーブコントローラ20の差分算出部24は、例えば、外部から昇温完了同期制御モードによる温度制御の開始要求を受けると、スレーブCHの目標温度設定部21から設定切換部23を介してスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0を取得するとともに、スレーブCHの温度測定部22からスレーブCHの温度測定値PVslave−m−0(温度制御開始時におけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m−0)を取得する。
そして、スレーブCHの差分算出部24は、下記の式(3)に示すように、スレーブCHの温度設定値SVslave−m−0と、温度制御開始時におけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m−0との差分である差分初期値eslave−m−0を算出する。
slave−m−0=SVslave−m−0−PVslave−m−0 (3)
以降のn回目の制御タイミング(n=1,2,・・・)において、スレーブCHの差分算出部24は、下記の式(4)に示すように、設定補正値算出部26から設定切換部23を介して出力されたスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nと、スレーブCHの温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m−n(n回目の制御タイミングにおけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m−n)との差分である差分値eslave−m−nを算出する。
slave−m−n=SV’slave−m−n−PVslave−m−n (4)
【0028】
スレーブCHの制御演算部27は、スレーブCHの差分算出部24が差分値eslave−m−nを算出すると、その差分値eslave−m−nが零に近づくように、例えば、その差分値を入力とするPID演算を実施することにより、スレーブCHの制御対象29の温度制御のための操作量として温度制御量MVslave−m−nを算出する。
スレーブCHの制御演算部27は、温度制御量MVslave−m−nを算出すると、その温度制御量MVslave−m−nにしたがってヒータ28の加熱部を制御することで、スレーブCHの制御対象29の温度を制御する(ステップST9)。
【0029】
スレーブCHの差分算出部24は、昇温完了同期制御モードによる温度制御が完了すると、以降の制御タイミングにおいて、スレーブCHの目標温度設定部21から設定切換部23を介して出力された温度設定値SVslave−m−0と、温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m(当該制御タイミングにおけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m)との差分値eslave−mを算出する。
スレーブCHの制御演算部27は、スレーブCHの差分算出部24が差分値eslave−mを算出すると、その差分値eslave−mが零に近づくように、例えば、その差分値を入力とするPID演算を実施することにより、スレーブCHの制御対象29の温度制御のための操作量として温度制御量MVslave−mを算出する。
スレーブCHの制御演算部27は、その温度制御量MVslave−mにしたがってヒータ28の加熱部を制御することで、スレーブCHの制御対象29の温度を制御する(ステップST11)。
【0030】
この実施の形態1では、マスターCHの温度設定値SVmaster及び各スレーブCH〜CHの温度設定値SVslave−1〜SVslave−Mが異なる場合や、マスターCH及び各スレーブCH〜CHの昇温開始温度が異なる場合でも、全ての制御対象の昇温完了時刻を同期させるため、温度制御開始時からn番目の制御タイミング(n=1,2,・・・)で温度制御を行う前に、各スレーブCH〜CHの温度設定値SVslave−1〜SVslave−Mを適宜補正するようにしている。
以下、スレーブCHの温度設定値SVslave−mの補正処理を具体的に説明する。
【0031】
スレーブCH(m=1,2,・・・,M)のスレーブコントローラ20は、今回の制御タイミングにおいて、外部から昇温完了同期制御モードで制御する指示が出力されているか否かを確認し、昇温完了同期制御モードで制御する指示が出力されている場合にはステップST3の処理に移行する。一方、昇温完了同期制御モードで制御する指示が出力されていない場合にはステップST11の処理に移行する(ステップST2)。
【0032】
前記ステップST2で、昇温完了同期制御モードで制御する実行する指示が出されていることを確認した場合は、昇温完了同期制御モードの初回の処理であるかを確認し、昇温完了同期制御モードの初回の処理である場合にはステップST4の処理に移行する。一方、昇温完了同期制御モードの2回目以降の処理である場合にはステップST7の処理に移行する(ステップST3)。
【0033】
まず、マスターCHの差分算出部13は、上記の式(1)によって、マスターCHの目標温度設定部11から出力されたマスターCHの温度設定値SVmasterと、マスターCHの温度測定部12から出力されたマスターCHの温度測定値PVmaster−0(温度制御開始時におけるマスターCHの温度測定値PVmaster−0)との差分である差分初期値emaster−0を算出する(ステップST4)。
スレーブCHの差分算出部24は、上記の式(3)によって、スレーブCHの目標温度設定部21から設定切換部23を介して出力されたスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0と、スレーブCHの温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m−0(温度制御開始時におけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m−0)との差分である差分初期値eslave−m−0を算出する(ステップST5)。
【0034】
スレーブCHの初期差分比記憶部25は、マスターCHの差分算出部13から差分初期値emaster−0を取得し、スレーブCHの差分算出部24から差分初期値elave−m−0を取得する。
そして、スレーブCHの初期差分比記憶部25は、下記の式(5)に示すように、その差分初期値emaster−0に対する差分初期値eslave−m−0の比αを算出して、その比αを記憶する(ステップST6)。
初期差分比記憶部25による比αの算出処理には、演算負荷が大きな除算処理が含まれているが、初期差分比記憶部25による比αの算出処理は、温度制御開始時の初回(0回)の制御タイミングで1回だけ行われるものであるため、以降のn回目の制御タイミング(n=1,2,・・・)においては演算負荷にならない。
【0035】
【数1】
【0036】
スレーブCHの設定補正値算出部26は、スレーブコントローラ20がn回目の制御タイミング(n=1,2,・・・)で温度制御を行う前に、未だマスターCHの温度の差分がゼロより大きければ、即ち、マスターCHの温度測定値PVmaster−nが目標温度である温度設定値SVmasterに到達していなければ(ステップST7)、初期差分比記憶部25により温度制御開始時に算出された比αを用いて、スレーブCHのスレーブコントローラ20がn回目の制御タイミングで使用するスレーブCHの温度設定値SVslave−mを補正する(ステップST8)。
即ち、設定補正値算出部26は、n回目の制御タイミングにおいて、マスターCHの差分算出部13から、上記の式(2)によって算出された差分値emaster−n(=SVmaster−PVmaster−n)を取得し、その差分値emaster−nと初期差分比記憶部25により記憶された比αに乗算する。
そして、設定補正値算出部26は、下記の式(6)に示すように、目標温度設定部21により設定が受け付けられたスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0(昇温完了同期制御モードで温度制御が開始された時点の温度設定値SVslave−m−0)から当該乗算結果emaster−n・αを減算することで、n回目の制御タイミングで使用するスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nを算出する。
SV’slave−m−n=SVslave−m−0−emaster−n×α (6)
【0037】
スレーブCHの設定補正値算出部26によるスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nを算出する補正処理は、各々の制御タイミングで実施されるが、簡単な演算である事に加え、演算負荷が大きな除算処理が含まれていない。
また、初期差分比記憶部25及び設定補正値算出部26が算出に用いている要素(easter−n)は、マスターコントローラ10が温度制御量MVmaster−nを算出する際のPID演算等で使用される変数であるため、マスターCHの差分算出部13から差分値emaster−nを得るようにすれば、従来例のように、到達率を算出するための特別な処理を一定周期の制御タイミング毎に実施する必要がない。
【0038】
スレーブCHの差分算出部24は、スレーブCHの設定補正値算出部26がn回目の制御タイミングで使用するスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nを算出すると、下記の式(7)に示すように、スレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nと、スレーブCHの温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m−n(n回目の制御タイミングにおけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m−n)との差分である差分値eslave−m−を算出する。
slave−m−n=SV’slave−m−n−PVslave−m−n (7)
【0039】
スレーブCHの制御演算部27は、スレーブCHの差分算出部24が差分値eslave−m−nを算出すると、その差分値eslave−m−nが零に近づくように、例えば、その差分値を入力とするPID演算を実施することにより、スレーブCHの制御対象29の温度制御のための操作量として温度制御量MVslave−m−nを算出する。
スレーブCHの制御演算部27は、温度制御量MVslave−m−nを算出すると、その温度制御量MVslave−m−nにしたがってヒータ28の加熱部を制御することで、スレーブCHの制御対象29の温度を制御する(ステップST9)。
マスターCHの温度が目標温度である温度設定値に到達するまで、ステップST1〜ST9の処理が繰り返し実施される。
【0040】
一方、マスターCHの温度が目標温度である温度設定値に到達すると、ステップST10において昇温完了同期制御モードが終了され、ステップST11の処理が実施される(ステップST7)。
即ち、スレーブCHの差分算出部24は、マスターCHの温度測定値PVmaster−nが目標温度である温度設定値SVmasterに到達すると、目標温度設定部21から設定切換部23を介してスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0(昇温完了同期制御モードで温度制御が開始された時点の温度設定値SVslave−m−0)を取得し、スレーブCHの温度設定値SVslave−m−0と、スレーブCHの温度測定部22から出力されたスレーブCHの温度測定値PVslave−m(当該制御タイミングにおけるスレーブCHの温度測定値PVslave−m)との差分値eslave−mを算出する。
【0041】
スレーブCHの制御演算部27は、スレーブCHの差分算出部24が差分値eslave−mを算出すると、その差分値eslave−mが零に近づくように、例えば、その差分値を入力とするPID演算を実施することにより、スレーブCHの制御対象29の温度制御のための操作量として温度制御量MVslave−mを算出する。
スレーブCHの制御演算部27は、その温度制御量MVslave−mにしたがってヒータ28の加熱部を制御することで、スレーブCHの制御対象29の温度を制御する(ステップST11)。
【0042】
ここで、図3はマスターCH及びスレーブCHの昇温完了時刻が同期している温度制御例を示す説明図である。
図3の例では、マスターCHの温度設定値SVmasterと、スレーブCHの温度設定値SVslave−mとが異なっており、また、マスターCHの昇温開始温度である温度測定値PVmaster−0と、スレーブCHの昇温開始温度である温度測定値PVslave−m−0とが異なっているが、マスターCHの昇温完了時刻とスレーブCHの昇温完了時刻とが一致している。
【0043】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、マスターCHの差分算出部13により算出された差分初期値emaster−0(温度制御開始時におけるマスターCHの温度設定値SVmasterと温度測定値PVmaster−0との差分である差分初期値emaster−0)と、スレーブCHの差分算出部24により算出された差分初期値eslave−m−0(温度制御開始時におけるスレーブCHの温度設定値SVslave−m−0と温度測定値PVslave−m−0との差分である差分初期値eslave−m−0)と取得して、その差分初期値emaster−0に対する差分初期値elave−m−0の比α(=eslave−m−0/emaster−0)を算出する初期差分比記憶部25を設け、設定補正値算出部26が、初期差分比記憶部25により算出された比αを用いて、スレーブCHのスレーブコントローラ20がn回目の制御タイミングで使用するスレーブCHの補正後の温度設定値SV’slave−m−nを算出するように構成したので、例えば、従来例のように、到達率を算出するための特別な処理を一定周期の制御タイミング毎に実施せずに、演算負荷が軽い処理を実行するだけで、マスターCHの温度設定値SVmasterとスレーブCHの温度設定値SVslave−mが異なる場合や、マスターCH及び各スレーブCHの昇温開始温度が異なる場合でも、全ての制御対象の昇温完了時刻を同期させることができる効果を奏する。
【0044】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、複数の温度制御ゾーンの中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが既知である例を説明しているが、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが予め分からない場合がある。
この実施の形態2では、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが分からない場合、複数の温度制御ゾーンに対する温度制御(上記実施の形態1で示している温度制御)を実施する前に、予備的な温度制御を実施することで、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーン(第1の制御対象)を判別する手段を備えている温度制御装置について説明する。
【0045】
図4はこの発明の実施の形態2による温度制御装置を示す構成図であり、図4において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
制御対象振分処理部30は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、複数の温度制御ゾーンの中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが不明である場合、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンを特定して、その温度制御ゾーンをマスターCHに設定する処理を実施する。
【0046】
図5はこの発明の実施の形態2による温度制御装置の制御対象振分処理部30を示す構成図である。
図5において、制御実行指示部31はコントローラが上記実施の形態1の温度制御を開始する前に、複数の温度制御ゾーンの温度を制御する各コントローラに対して、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するための事前準備用の温度制御として、温度設定値の補正を行わずに制御対象の温度を制御することを指示する。
ここで、複数の温度制御ゾーンの温度を制御する各コントローラは、マスターコントローラ10又はスレーブコントローラ20の何れかに該当するものであるが、この時点では、どのコントローラがマスターコントローラ10に該当するのかが不明であるため、複数のコントローラをCNT(m=0,1,2,・・・,M)の記号で識別する。なお、制御実行指示部31は実行指示手段を構成している。
【0047】
差分初期値記憶部32は制御実行指示部31から温度制御の実行が指示される前に、温度制御ゾーン毎に、当該温度制御ゾーンの温度測定部12(または22)から温度測定値PVinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を取得するとともに、当該温度制御ゾーンの目標温度設定部11(または21)から温度設定値SVinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を取得し、その温度測定値PVinit−mと温度設定値SVinit−mとの差分である差分初期値Dinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を算出して、その差分初期値Dinit−mを記憶する。
【0048】
差分値算出部33は制御実行指示部31が温度制御の実行を指示すると、温度制御ゾーン毎に、当該温度制御ゾーンの温度測定部12(または22)から温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)を取得するとともに、当該温度制御ゾーンの目標温度設定部11(または21)から温度設定値SV(m=0,1,2,・・・,M)を取得し、その温度測定値PVと温度設定値SVとの差分である差分値Dを算出する処理を実施する。
差分値比算出部34は、温度制御ゾーン毎に、差分初期値記憶部32に記憶されている差分初期値Dinit−mに対する差分値算出部33により算出された差分値Dの比D/Dinit−mを算出する処理を実施する。
【0049】
昇温完了時間推定部35は温度制御ゾーン毎に、当該温度制御ゾーンの温度測定部12(または22)から温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)を取得して記憶するとともに、温度制御ゾーン毎に、差分値比算出部34により算出された(M+1)個の温度制御ゾーンの比D/Dinit−mを監視し、いずれかの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mが予め設定された基準の比(例えば、0.8)に到達すると、今回の制御タイミングで取得した温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)から、前回の制御タイミングで取得して記憶した当該温度制御ゾーンの温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)を減算し、いずれかの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mが予め設定された基準の比(例えば、0.8)に到達した時の温度制御ゾーン毎の温度変化幅ΔPV(m=0,1,2,・・・,M)を算出し、差分値算出部33により算出された差分値Dの比D/Dinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を温度変化幅ΔPV(m=0,1,2,・・・,M)で除算して、各温度制御ゾーンの制御対象が目標温度に到達するまでの予測時間である温度制御ゾーン毎の昇温完了時間推定値T(m=0,1,2,・・・,M)を算出する。
【0050】
制御対象設定部36は差分値比算出部34により算出された(M+1)個の温度制御ゾーンの比D/Dinit−mを監視し、いずれかの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mが予め設定された基準の比(例えば、0.8)に到達すると、(M+1)個の温度制御ゾーンの中で、昇温完了時間推定値T(m=0,1,2,・・・,M)が最も大きい温度制御ゾーンをマスターCHに設定し、残りの温度制御ゾーンをスレーブCHに設定する処理を実施する。なお、差分初期値記憶部32、差分値算出部33、差分値比算出部34、昇温完了時間推定部35及び制御対象設定部36から制御対象設定手段が構成されている。
図6は制御対象振分処理部30の処理内容を示すフローチャートである。
【0051】
次に動作について説明する。
ただし、制御対象振分処理部30以外は、上記実施の形態1と同様であるため、制御対象振分処理部30の処理内容だけを説明する。
この実施の形態2では、(M+1)個の温度制御ゾーンが存在しているが、(M+1)個の温度制御ゾーンの中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが不明であるものとする。
【0052】
制御対象振分処理部30の制御実行指示部31は、(M+1)個のコントローラCNT(m=0,1,2,・・・,M)が上記実施の形態1の温度制御を開始する前に、(M+1)個のコントローラCNTに対して、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するための事前準備用の温度制御の実行を指示する(ステップST11)。
なお、制御実行指示部31は、事前準備用の温度制御の実行を指示する前に、差分初期値の記憶指令を差分初期値記憶部32に出力する。
ここで、事前準備用の温度制御は、上記実施の形態1の温度制御のような本格的な温度制御ではなく、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い制御対象を特定するために、少しだけ昇温させる簡易な温度制御である。
【0053】
差分初期値記憶部32は、制御実行指示部31から差分初期値の記憶指令を受けると、温度制御ゾーン毎に、当該温度制御ゾーンの温度測定部12(または22)から温度測定値PVinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を取得するとともに、当該温度制御ゾーンの目標温度設定部11(または21)から温度設定値SVinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を取得し、下記の式(8)に示すように、その温度測定値PVinit−mと温度設定値SVinit−mとの差分である差分初期値Dinit−mを算出して、その差分初期値Dinit−mを記憶する。
init−m=SVinit−m−PVinit−m (8)
【0054】
差分値算出部33は、制御実行指示部31が温度制御の実行を指示すると、温度制御ゾーン毎に、当該温度制御ゾーンの温度測定部12(または22)から温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)を取得するとともに、当該温度制御ゾーンの目標温度設定部11(または21)から温度設定値SV(m=0,1,2,・・・,M)を取得し、下記の式(9)に示すように、その温度測定値PVと温度設定値SVとの差分である差分値Dを算出する(ステップST12)。
=SV−PV (9)
【0055】
差分値比算出部34は、差分値算出部33が(M+1)個の温度制御ゾーンの差分値Dを算出すると、温度制御ゾーン毎に、差分初期値記憶部32に記憶されている差分初期値Dinit−mに対する差分値D(差分値比算出部34により算出された差分値)の比D/Dinit−mを算出する(ステップST13)。
【0056】
昇温完了時間推定部35は、差分値比算出部34により算出された(M+1)個の温度制御ゾーンの比D/Dinit−mを監視し、いずれかの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mが予め設定された基準の比(例えば、0.8)に到達すると(ステップST14)、下記の式(10)に示すように、今回の制御タイミングで取得した温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)から、前回の制御タイミングで取得して記憶した当該温度制御ゾーンの温度測定値PV(m=0,1,2,・・・,M)を減算し、いずれかの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mが予め設定された基準の比(例えば、0.8)に到達した時の温度制御ゾーン毎の温度変化幅ΔPV(m=0,1,2,・・・,M)を算出する。
ΔPV=今回の制御タイミングで取得した温度測定値PV
−前回の制御タイミングで取得した温度測定値PV
(10)
そして、昇温完了時間推定部35は、下記の式(11)に示すように、差分値算出部33により算出された差分値Dの比D/Dinit−m(m=0,1,2,・・・,M)を温度変化幅ΔPV(m=0,1,2,・・・,M)で除算して、温度制御ゾーン毎の昇温完了時間推定値T(m=0,1,2,・・・,M)を算出する。(ステップST15)。
=(D/Dinit−m)/ΔPV (11)
【0057】
制御対象設定部36は、昇温完了時間推定部35が温度制御ゾーン毎の昇温完了時間推定値T(m=0,1,2,・・・,M)を算出すると、(M+1)個の温度制御ゾーンの中で、昇温完了時間推定部35により算出された昇温完了時間推定値Tが最も大きい温度制御ゾーンをマスターCHに設定し、残りの温度制御ゾーンをスレーブCHに設定する(ステップST16)。
【0058】
いずれの温度制御ゾーンの比D/Dinit−mも基準の比(例えば、0.8)に到達していなければ(ステップST14)、ステップST12〜ST13の処理が繰り返し実施される。
制御実行指示部31は、制御対象設定部36がマスターCH及びスレーブCHを設定すると、上記実施の形態1と同様の昇温完了同期制御モードによる温度制御の開始指令をマスターCHのマスターコントローラ10及びスレーブCHのスレーブコントローラ20に出力する(ステップST17)。
【0059】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、複数の温度制御ゾーンの中で、いずれかの温度制御ゾーンに係る差分初期値Dinit−m(温度制御の実行が指示される前の温度測定値PVinit−mと温度設定値SVinit−mとの差分)に対する差分値D(温度制御実行中の温度測定値PVと温度設定値SVとの差分)の比が予め設定された基準の比に到達した段階で、昇温完了時間推定値Tが最も大きい温度制御ゾーンをマスターCHに設定し、残りの温度制御ゾーンをスレーブCHに設定するように構成したので、複数の温度制御ゾーンの中で、目標温度に到達するまでの時間が最も遅い温度制御ゾーンが不明である場合でも、上記実施の形態1の温度制御を適用することができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 マスターCHの制御系、2〜2 スレーブCHの制御系、10 マスターコントローラ(第1のコントローラ)、11 マスターCHの目標温度設定部、12 マスターCHの温度測定部、13 マスターCHの差分算出部(初期差分比記憶手段、設定値補正手段)、14 マスターCHの制御演算部、15 マスターCHのヒータ、16 マスターCHの制御対象、20 スレーブコントローラ(第2のコントローラ)、21 スレーブCHの目標温度設定部、22 スレーブCHの温度測定部、23 スレーブCHの設定値切換部、24 スレーブCHの差分算出部(初期差分比記憶手段)、25 初期差分比記憶部(初期差分比記憶手段)、26 設定補正値算出部(設定値補正手段)、27 スレーブCHの制御演算部、28 スレーブCHのヒータ、29 スレーブCHの制御対象、30 制御対象振分処理部、31 制御実行指示部(実行指示手段)、32 差分初期値記憶部(制御対象設定手段)、33 差分値算出部(制御対象設定手段)、34 差分値比算出部(制御対象設定手段)、35 昇温完了時間推定部(制御対象設定手段)、36 制御対象設定部(制御対象設定手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6