(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体基板の前記表面側にゲート電極と、前記ゲート電極と前記半導体基板との間に設けられたゲート絶縁膜とをさらに備え、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面には水素原子が存在する、請求項1または2に記載の半導体装置。
前記不純物領域を形成する段階は、加速電圧と単位面積あたりの注入量とを含む注入条件を変えて、複数回に渡って異なる深さ位置にプロトンを注入する段階を含む、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本願明細書の説明で、1E+15におけるEの記載は10のべき乗のことであり、例えば1E+15とは、1×10
15のことである。
【0013】
図1は半導体装置100の構成例を示す図である。
図1は、ゲート電極36を横切る方向に切断した半導体装置100の断面を示す。なお、半導体装置100は、複数のIGBT素子および他の素子を有するが、
図1においては1つのIGBTのみを示す。
【0014】
半導体装置100は、半導体基板90の表面側にMOSゲート構造30を有し、半導体基板90の裏面側にpn接合を有する。本明細書において、半導体基板90の表(おもて)面とはエミッタ電極26が形成される面を指し、半導体基板90の裏面とはコレクタ電極70が形成される面を指す。また、表面側とは半導体基板90の表面に近い方の面を指し、裏面側とは半導体基板90の裏面に近い方の面を指す。例えば、第2導電型領域34の表面側とは第2導電型領域34と第1金属の窒化物層22との界面であり、第2導電型領域34の裏面側とは第2導電型領域34とベース層40との界面である。
【0015】
半導体装置100は、半導体基板90と、半導体基板90の表面側に設けられたエミッタ電極26および層間絶縁膜21と、半導体基板90の裏面側に設けられたコレクタ電極70とを備える。半導体基板90は、第1導電型領域32と、第2導電型領域34と、ゲート電極36と、ゲート絶縁膜38と、ベース層40と、FS層50と、コレクタ層60とを有する。
【0016】
MOSゲート構造30は、エミッタ電極26と、層間絶縁膜21と、第1導電型領域32と、第2導電型領域34と、ゲート電極36と、ゲート絶縁膜38とを有する。第2導電型領域34のうち、ゲート絶縁膜38との界面であって、ゲート絶縁膜38を挟んでゲート電極36と対向する界面は、チャネル形成領域である。チャネル形成領域とは、ゲート電極36に、MOSゲートの閾値以上の電圧を印加したときにn型の反転層が形成される領域である。エミッタ電極26は、第1金属層20と、第1金属の窒化物層22と、第2金属層24とを有する。第1金属層20および第1金属の窒化物層22は、第2金属層24に対するバリアメタルを構成する。バリアメタルとしての第1金属層20および第1金属の窒化物層22は、第2金属層24と第1導電型領域32とのコンタクト抵抗を低減する。またバリアメタルは、エミッタ電極26のカバレッジを改善する。
【0017】
本例では、第1金属層20はチタン層であり、第1金属の窒化物層22は窒化チタン層であり、第2金属層24はアルミニウム層である。他の例においては、第1金属層20はタンタル層であってよく、第1金属の窒化物層22は窒化タンタル層であってよい。
【0018】
バリアメタルは、金属材料が半導体基板90へ拡散することを防ぐ機能も有する。またバリアメタルは、半導体基板90の表面側に設けられている場合、表面側から半導体基板90に注入されるプロトン(H
+イオン)を遮蔽する効果を有する。
【0019】
本例のMOSゲート構造30は、いわゆるトレンチゲート構造を有する。本例において第1導電型領域32は、ベース層40の表面側に形成されたn
+型領域である。また、第2導電型領域34は、第1導電型領域32を囲んで、第1導電型領域32とベース層40とを分離するように形成されたp型領域である。ゲート電極36に所定の電圧が印加されると、ゲート絶縁膜38と第2導電型領域34にチャネルが形成され、第1導電型領域32とベース層40とが導通する。これにより、MOSゲート構造30はMOSFETとして動作する。
【0020】
ベース層40は、第1導電型の半導体層である。本例のベース層40は、n型シリコン層である。ベース層40は、MOSゲート構造30がMOSFETとして動作する際にドリフト層として機能する。
【0021】
FS層50は、第1導電型を有しており、ベース層40の裏面側に形成される。FS層50は、半導体基板90の裏面側の近傍に形成される。FS層50は、逆電圧印加時における空乏層の広がりを止めるフィールドストップ(Field Stop)層である。
【0022】
FS層50は、プロトンを含むn型不純物領域を有する。n型不純物領域は、プロトンを注入して熱処理をすることにより形成されたn
+型の領域である。n型不純物領域は、半導体基板90の裏面側と表面側との間の異なる深さ位置において、キャリア濃度の複数のピークを有する。複数回に渡って異なる加速電圧で裏面側からプロトンを注入することにより、プロトンの注入位置を調節することができる。また、複数回に渡って異なる深さ位置に、単位面積あたりの注入量を変えてプロトンを注入することにより、プロトンの注入位置に応じて不純物濃度を調節することができる。なお、プロトン注入段階は、コレクタ層60およびコレクタ電極70形成段階の前に行う。
【0023】
半導体基板90がシリコンウェハである場合、半導体基板90はある程度の酸素を有する。例えば、FZウェハは、1E+15cm
−3から1E+16cm
−3程度の酸素を有する。また例えば、CZウェハは、1E+16cm
−3から1E+17cm
−3程度の酸素を有する。なお、半導体基板90は、プロトン注入または電子線照射等に起因して内部に空孔(V)を有する。空孔(V)、酸素(O)および水素(H)を有する半導体基板90を熱処理(アニーリング)することにより、FS層50にVOH欠陥が形成される。VOH欠陥は、電子を供給するドナーとなる。
【0024】
それゆえ、FS層50のn型不純物領域はフィールドストップ層として機能する。よって、逆電圧印加時に空乏層がFS層50を超えて広がることを防ぐことができる。これにより、逆電圧印加時の漏れ電流を低減することができる。
【0025】
なお、半導体基板90に注入されたプロトンは、その全てがVOH欠陥の形成に寄与しない。つまり、半導体基板90に注入されたプロトンの一部は、半導体基板90の内部を拡散する。例えば、注入されたプロトンの一部は半導体基板90の表面側に拡散する。
【0026】
表面側に拡散したプロトンは、半導体基板90内部の欠陥を回復する。例えば、裏面側から表面側に拡散したプロトンは、ゲート絶縁膜38の近傍における第2導電型領域34の結晶欠陥を回復することができる。つまり、IGBTのチャネル形成領域における結晶欠陥を回復することができる。また、ゲート電極36を設けるトレンチを形成する際に生じた、第2導電型領域34およびベース層40の欠陥(エッチングダメージ)も回復することができる。これにより、各IGBTのゲート閾値電圧(Vth)のばらつきを低減することができる。
【0027】
コレクタ層60は、半導体基板90の裏面側の端部に設けられる。コレクタ層60は、第2導電型を有する。本例のコレクタ層60は、p+型シリコン層である。なお、第1導電型領域32、第2導電型領域34、ベース層40、FS層50およびコレクタ層60は、同一の材料(本例ではシリコン)で形成される。
【0028】
コレクタ電極70は、コレクタ層60の裏面側に形成される。コレクタ電極70は、例えばアルミニウムを、コレクタ層60の裏面側に蒸着またはスパッタすることで形成される。
【0029】
図2の(a)から(d)は、FS層50における第1から第4の不純物領域を形成する工程を示す図である。本例のFS層50におけるn型不純物領域は、第1不純物領域51aから第4不純物領域51dを有する。なお、第1不純物領域51aから第4不純物領域51dは例示であり、n型不純物領域は5以上の不純物領域を有してもよい。第1不純物領域51aは、n型不純物領域のうち、最も表面側に位置する。第2不純物領域51bは、第1不純物領域51aよりも裏面側に設けられる。第3不純物領域51cは第2不純物領域51bよりも裏面側に設けられ、第4不純物領域51dは第3不純物領域51cよりも裏面側に設けられる。
【0030】
本例では、MOSゲート構造30を形成した後に、半導体基板90の裏面からプロトンを注入する。まず、加速電圧1.45MeV、単位面積あたりの注入量1E++13/cm
2で、第1回目のプロトン注入を行う。次に、加速電圧1.10MeV、単位面積あたりの注入量7E+12/cm
2に注入条件を変えて、第1回目のプロトン注入よりも裏面側において、第2回目のプロトン注入を行う。第1回目の注入量を第2回目の注入量よりも多くすることにより、熱処理時に半導体基板90の表面側に近い位置までプロトンを拡散させることができる。これにより、表面側の欠陥も回復させることができる。
【0031】
本例では、半導体基板90の表面側に近い位置までプロトンを拡散させて欠陥を回復させるので、第1回目のプロトンはできるだけ表面側に近い位置に注入されることが望ましい。しかし、表面側に近い位置までプロトンを注入するとそれだけ大きな加速電圧でプロトンを注入しなければならない。加速電圧が大きくなるに従い、プロトン注入による半導体基板90の欠陥も増加する。また、加速電圧が大きくなるに従い、深さ方向において注入量がばらつくので、一定深さに注入量を制御することが困難となる。そこで、最も表面側に近い第1回目のプロトンは、例えばチャネル形成領域から裏面側に向かって20μmから70μm程度の適切な位置に位置するように、注入すればよい。
【0032】
続いて、加速電圧0.82MeV、単位面積あたりの注入量1E+13/cm
2に注入条件を変えて、第2回目のプロトン注入よりも裏面側において、第3回目のプロトン注入を行う。最後に、加速電圧0.40MeV、単位面積あたりの注入量3E+14/cm
2に注入条件を変えて、第3回目のプロトン注入よりも裏面側において、第4回目のプロトン注入を行う。このように、裏面側と表面側との間の異なる深さ位置にプロトン注入を行う。
【0033】
プロトン注入段階では、第1回目、第2回目、第3回目および第4回目のプロトン注入における単位面積当たりの注入量を、それぞれN
1、N
2、N
3およびN
4とすると、N
2<N
1〜N
3<N
4の関係を満たすとしてよい。本明細書において、N
1〜N
3とは、N
1とN
3とが略等しいことを意味する。本例においては、N
1=N
3=1E+13/cm
2である。プロトン注入が完了した後、半導体基板90を熱処理して、n型不純物領域である第1から第4不純物領域を形成する。これにより、FS層50を完成させる。
【0034】
なお、第1回目のプロトン注入における単位面積当たりの注入量N
1は、N
2よりも大きく、かつ注入量が1E+12/cm
2以上で1E+14/cm
2以下であってよく、さらに3E+12/cm
2以上で3E+13/cm
2以下であってよい。また、第1不純物領域51aは、ゲートがオフでのIGBTへの電圧印加に対して完全に空乏化してもよい。そのためには、第2導電型領域34から第1不純物領域51aと第2不純物領域51bとの境界までにわたるキャリア濃度の積分値が、少なくとも臨界積分濃度n
cよりも小さくてよく、好ましくは臨界積分濃度n
cの半値よりも小さくてよい。
【0035】
ここで、臨界積分濃度n
cとは、以下の通りである。アバランシェ降伏が発生する電界強度の値は、臨界電界強度(Critical Electric Field Strength)と呼ばれる。アバランシェ降伏は、半導体の構成元素と、半導体にドーピングされた不純物と、不純物の濃度とに依存する。ドナー濃度をN
D、臨界電界強度をE
Cとすると、シリコン(Si)におけるインパクトイオン化係数を用いてイオン化積分をすると、臨界電界強度E
Cは数式1で表される。
【0037】
数式1からわかるように、ドナー濃度N
Dが決まれば、臨界電界強度E
Cは定まる。また、ポアソンの式は、1次元方向(x方向とする)のみを考慮した場合、数式2で表される。
【0039】
ここで、qは電荷素量(1.062×10
15[C])、ε
0は真空の誘電率(8.854×10
−14[F/cm])、ε
rは物質の比誘電率である。シリコンの場合は、ε
r=11.9である。pは正孔濃度、nは電子濃度、N
Aはアクセプタ濃度である。片側階段接合でn型層のみを考慮するのでアクセプタが存在しない(N
A=0)とする。さらに、正孔および電子が存在しない完全空乏化された(n=p=0)空乏層を仮定すると、数式2を深さxで積分すれば、数式3が得られる。
【0041】
pn接合の位置を原点0、n型層においてpn接合とは反対側の位置における空乏層の端部の位置をx
0とする。そして、空乏層全体を0からx
0で積分すると、数式3のEは、電界強度分布の最大値となる。これをE
mとすると、E
mは数式4で表される。
【0043】
電界強度分布の最大値E
mが、臨界電界強度E
cに達したとすると、数式4は数式5で表される。
【0045】
数式5は、両辺とも定数である。数式5の右辺は、n型層において完全空乏化した範囲であるので、本明細書において記載した定義より、臨界積分濃度n
cと表す。これにより次の数式6を得る。数式6は、臨界積分濃度n
cと臨界電界強度E
cとの対応を示す。このように、臨界積分濃度n
cは、臨界電界強度E
cに対応する定数となる。
【0047】
なお、上記計算においては、ドナー濃度N
Dはn型層のx方向の濃度分布が一様であると仮定している。臨界電界強度E
cはn型層のドナー濃度N
Dに依存するので(数式5)、臨界積分濃度n
cもn型層のドナー濃度にN
Dに依存する。ドナー濃度N
Dが1×10
13(/cm
3)から1×10
15(/cm
3)の範囲では、臨界積分濃度n
cは1.1×10
12(/cm
3)から2.0×10
12(/cm
2)となる。ドナー濃度が数桁に亘る濃度範囲であることを踏まえると、臨界積分濃度n
cはほぼ定数であると見なすことができる。
【0048】
例えば、実施形態の半導体装置100の定格電圧が1,200Vの例では、ベース層40のドナー濃度N
Dを6.1×10
13(/cm
3)とすると、数式6から臨界積分濃度n
cは約1.4×10
12(/cm
2)と評価できる。また、定格電圧が600Vの例では、ベース層40のドナー濃度N
Dを1.4×10
14(/cm
3)とすると、数式6から臨界積分濃度n
cは約1.55×10
12(/cm
2)と評価できる。また、上述の臨界総不純物量の議論は、シリコンに限らず、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイアモンド、酸化ガリウム(Ga
2O
3)等のワイドバンドギャップ半導体にも適用可能である。すなわち、数式1を導出するためにはインパクトイオン化係数に、数式2においては比誘電率に、各物質の値を用いれば良い。
【0049】
図3は、プロトンが注入された半導体基板90を熱処理した後の第1から第4の不純物領域におけるキャリア濃度分布を示す図である。第1不純物領域51aは、予め定められたキャリア濃度の不純物領域を有する。本例では、第1不純物領域51aは0.8E+15/cm
3のキャリア濃度を有する。第2不純物領域51bは、第1不純物領域51aにおける当該予め定められたキャリア濃度よりもキャリア濃度が低い。本例では、第2不純物領域51bは0.7E+15/cm
3のキャリア濃度を有する。第3不純物領域51cは1.0E+15/cm
3のキャリア濃度を有し、第4不純物領域51dは5.0E+15/cm
3超のキャリア濃度を有する。このように、FS層50のn型不純物領域は、半導体基板90の異なる深さ位置においてキャリア濃度の複数のピークを有する。
【0050】
図4は、本例のFS層50の有無に応じた漏れ電流の比較結果を示す図である。横軸はIGBTに印加した逆電圧の大きさ(V)を示し、縦軸は漏れ電流(A)を示す。プロトン注入無しとは、FS層をプロトン注入以外の手段で作成したことを示す。例えば、リンを注入することによりFS層を形成した場合である。一方、プロトン注入有りとは、本例のようにプロトン注入によりFS層50を形成したことを示す。本例のFS層50を有する方が、プロトン注入以外の手段でFS層を作成した場合と比較して漏れ電流が小さい。これは、熱処理時に半導体基板90の表面側に近い位置にまでプロトンを拡散させて欠陥を回復させた結果、ゲート閾値が所定値に増加回復した効果であると考えられる。
【0051】
図5aから
図5fは、半導体装置100の製造段階を示す図である。まず、
図5aに示すように、MOSゲート構造30を半導体基板90の表面側に形成する。MOSゲート構造30を形成する段階は、半導体基板90の表面側にバリアメタルとしての第1金属層20および第1金属の窒化物層22を形成する段階を含む。この段階では、第1導電型領域32、第2導電型領域34、ならびに、ゲート電極36およびゲート絶縁膜38を形成する際等に生じた欠陥が、チャネル形成領域に存在する。
【0052】
その後、
図5bに示すように、半導体基板90の裏面側を研磨して薄くする。さらにその後、
図5cに示すように、半導体基板90の裏面側からプロトンを注入して、不純物領域を形成する。先の
図2に示した様に、プロトンの注入は第1回目から第4回目に分けて行う。第1回目のプロトン注入位置が半導体基板90の表面側に最も近く、第4回目のプロトン注入位置が半導体基板90の裏面側に最も近くなるよう、第1回目から第4回目にかけて順に加速電圧を弱くしてプロトン注入深さを調節する。第1回目から第4回目の単位面積当たりの注入量を、それぞれN
1、N
2、N
3およびN
4とすると、N
2<N
1〜N
3<N
4の関係を満たす。
【0053】
その後、
図5dに示すように、300℃から500℃で30分から10時間、半導体基板90を熱処理する。熱処理段階において、注入されたプロトンの一部はFS層50においてVOH欠陥を形成する。また、他の一部は半導体基板90を拡散して表面側にまで達し、ベース層40における残量欠陥およびチャネル形成領域の欠陥を回復する。なお、プロトンは、ゲート絶縁膜38と半導体基板90の第2導電型領域34との界面にも達すると考えられるので、当該界面には水素原子が存在してよい。つまり、第2導電型領域34のシリコンのダングリングボンドがプロトンにより終端されて、シリコン‐水素結合が形成されてよい。これにより、逆電圧印加時の漏れ電流を低減し、かつ、ゲート閾値電圧(Vth)のばらつきを低減することができる。
【0054】
図5eは、半導体基板90の欠陥が回復した様子を模式的に示す図である。その後、
図5fに示すように、半導体基板90の裏面側にリン等の不純物を注入してp+型シリコン層であるコレクタ層60を形成する。続いて、アルミニウムを蒸着またはスパッタすることにより、コレクタ層60の裏面側にコレクタ電極70を形成する。
【0055】
本実施例によれば、バリアメタルを形成した後において裏面側からプロトン注入を行い、その後熱処理により表面側にまでプロトンを拡散させるので、欠陥回復のための熱処理を一度だけ行えばよい。つまり、表面側および裏面側から2度に渡ってプロトン注入と熱処理とを行う必要が無い。それゆえ、2度に渡ってプロトン注入と熱処理とを行う場合と比較して、熱処理の工程数を減らし製造コストを抑えることができる。
【0056】
図6aから
図6cは、半導体装置200の製造段階を示す図である。本例は、第1金属層20と第2金属層24との両方に直接接触させて第1金属の窒化物層22を設けない点、および、第1金属の窒化物層22と第2金属層24との間にプラグ28を有する点で半導体装置100と異なる。他の点は、半導体装置100の例と同じである。本例のプラグ28は、タングステンからなるプラグ28であってよい。プラグ28は、第1金属の窒化物層22と第2金属層24とを接続する。
図6aは、
図5cに相当し、半導体基板90の裏面側からプロトン注入をする段階を示す図である。
図6bは、
図5dに相当し、半導体基板90を熱処理する段階を示す図である。
図6cは、
図5eおよび
図5fに相当し、半導体基板90の欠陥が回復させた後に、半導体基板90の裏面側にコレクタ層60およびコレクタ電極70を形成する段階を示す図である。
【0057】
本例においても、MOSゲート構造30を形成した後に裏面側から
図2に示すようにプロトン注入を行う。これにより、バリアメタルを適用した半導体装置200において、逆電圧印加時の漏れ電流を低減し、ゲート閾値電圧(Vth)のばらつきを低減することができる。また、2度に渡ってプロトン注入と熱処理とを行う場合と比較して、熱処理の工程数を減らし製造コストを抑えることができる。なお、本明細書に記載の技術の適用は、IGBTに限定されない。例えば、バリアメタル形成後にライフタイム制御を行う素子にも適用することができる。
【0058】
図7は、半導体基板90の水素の分布を示す図である。
図7では、半導体装置100の断面と、本実施形態のネットドーピング濃度分布を示す。なお、半導体装置200も、同様のネットドーピング濃度分布と水素濃度分布とを有してよい。
【0059】
水素が注入される深さは、最深プロトンの飛程できまる。一方、プロトン注入後の熱処理により、
図7のように、最深のプロトンの飛程よりも数十μmは、さらに深くおもて面側に拡散する。この拡散する領域を、水素拡散領
域95とする。この水素拡散領
域95は、十分な濃度の水素でチャネル形成領域に達することが好ましい。例えば、チャネル形成領域における水素の濃度が、1E+14cm
−3の以上であって、且つ裏面側に向かって水素の濃度が増加するような分布であってよい。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。