(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制駆動力制御部は、予め設定した算出用車速閾値を超える車速で車両が走行している場合には、前記出力軸側車速及び前記車輪側車速のうち出力軸側車速を用いて前記制駆動力を制御することを特徴とする請求項1に記載した制駆動力制御装置。
前記車速値フィルタ部は、第一車速値フィルタ部と、前記第一車速値フィルタ部よりもカットオフ周波数が高い第二車速値フィルタ部と、を備えるとともに、前記制駆動力制御部が前記制動力及び前記駆動力の制御に用いる車速を前記出力軸側車速と前記車輪側車速との間で切り換えた直後は、前記第一車速値フィルタ部で前記ローパスフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項4に記載した制駆動力制御装置。
前記制駆動力制御部は、検出した前記制駆動力操作量が未操作状態から予め設定した制駆動力変更点操作量までの制動範囲内にある場合には、前記制動力を、前記未操作状態に対応する制動力から検出した前記制駆動力操作量の増加分だけ減少させ、検出した前記制駆動力操作量が前記制動範囲よりも大きい駆動範囲内にある場合には、前記制駆動力変更点操作量と検出した前記制駆動力操作量との偏差に応じた前記駆動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した制駆動力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で示す場合がある。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
(車両の構成)
図1及び
図2を参照して、制駆動力制御装置1を備える車両Cの構成について説明する。
制駆動力制御装置1は、車両Cに発生させる制動力と駆動力を制御する装置である。
図1中に示すように、制駆動力制御装置1を備える車両Cは、アクセル操作量センサ2と、ブレーキ操作量センサ4と、出力軸回転状態検出部6と、車輪速センサ8と、制駆動力コントローラ10を備える。これに加え、車両Cは、ブレーキアクチュエータ12と、ホイールシリンダ14と、動力コントロールユニット16と、駆動用モータ18と、車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)を備える。
アクセル操作量センサ2は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成した、運転者による加減速ペダル20(アクセルペダル)の操作量(踏み込み操作量)を検出するセンサである。
【0010】
加減速ペダル20は、車両Cの運転者が制動力要求または駆動力要求に応じて踏込むペダルである。
また、アクセル操作量センサ2は、運転者による加減速ペダル20の操作量を含む情報信号(以降の説明では、「アクセル操作量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ10へ出力する。
なお、アクセル操作量センサ2の構成は、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではなく、例えば、運転者の踏み込み操作による加減速ペダル20の開度を検出する構成としてもよい。
【0011】
すなわち、アクセル操作量センサ2は、運転者による加減速ペダル20の操作量を検出するセンサである。
ブレーキ操作量センサ4は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成した、運転者による制動用ペダル22(ブレーキペダル)の操作量(踏み込み操作量)を検出するセンサである。
制動用ペダル22は、車両Cの運転者が制動力要求のみに応じて踏込むペダルであり、加減速ペダル20とは個別に設ける。
【0012】
また、ブレーキ操作量センサ4は、運転者による制動用ペダル22の操作量を含む情報信号(以降の説明では、「ブレーキ操作量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ10へ出力する。
なお、ブレーキ操作量センサ4の構成は、アクセル操作量センサ2と同様、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではなく、例えば、運転者の踏み込み操作による制動用ペダル22の開度を検出する構成としてもよい。
すなわち、ブレーキ操作量センサ4は、運転者による制動用ペダル22の操作量を検出するセンサである。
【0013】
出力軸回転状態検出部6は、駆動用モータ18が有するモータ駆動力出力軸24(
図2を参照)の回転数(回転状態)を検出するレゾルバで形成する。
また、出力軸回転状態検出部6は、出力軸パルス信号に応じて、モータ駆動力出力軸24の回転数(回転状態)を検出する。そして、出力軸回転状態検出部6は、検出した回転数を含む情報信号(以降の説明では、「出力軸回転数信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ10へ出力する。
出力軸パルス信号は、モータ駆動力出力軸24の回転状態を示すパルス信号である。
【0014】
車輪速センサ8は、各車輪Wに対応して設けられ、且つ対応する車輪Wの一回転について予め設定した数の車輪速パルスを発生させる。そして、車輪速センサ8は、発生させた車輪速パルスを含む情報信号(以降の説明では、「車輪速パルス信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ10へ出力する。これにより、車輪速センサ8は、各車輪Wに対応して設けられ、且つ対応する車輪Wの回転状態を、車輪速パルスとして検出する。
なお、
図1中では、右前輪WFRの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ8を、車輪速センサ8FRと示し、左前輪WFLの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ8を、車輪速センサ8FLと示す。同様に、
図1中では、右後輪WRRの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ8を、車輪速センサ8RRと示し、左後輪WRLの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ8を、車輪速センサ8RLと示す。また、以降の説明においても、各車輪Wや各車輪速センサ8を、上記のように示す場合がある。
【0015】
制駆動力コントローラ10は、車両Cに発生させる制動力と駆動力を制御するものであり、マイクロコンピュータで構成する。なお、マイクロコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えた構成である。
また、制駆動力コントローラ10は、入力される各種の情報信号を用いて、後述する各種の処理を行い、ブレーキアクチュエータ12及び駆動用モータ18を制御するための指令信号(制動指令信号、駆動指令信号)を出力する。なお、制駆動力コントローラ10の具体的な構成については、後述する。
【0016】
制動指令信号は、車両Cに発生させる制動力を制御するための制動力指令値を含む情報信号である。
また、制動力指令値は、各ホイールシリンダ14の油圧を制御するための指令値である摩擦制動トルク指令値、及び駆動用モータ18で発生させる回生制動トルク指令値のうち少なくとも一方を含む。
また、制動力指令値は、車両Cの運転者による制動力要求に応じて、制駆動力コントローラ10により算出する。
【0017】
駆動指令信号は、駆動用モータ18が発生させる駆動力を制御するための駆動力指令値を含む情報信号である。また、駆動力指令値は、車両Cの運転者による駆動力要求に応じて、制駆動力コントローラ10により算出する。
ブレーキアクチュエータ12は、マスタシリンダ(図示せず)と各ホイールシリンダ14との間に介装した液圧制御装置である。また、ブレーキアクチュエータ12は、制駆動力コントローラ10から入力を受けた制動指令信号が含む制動力指令値に応じて、各ホイールシリンダ14の油圧を変化させる。これにより、ブレーキアクチュエータ12は、各車輪Wに制動力を付与する。
【0018】
ホイールシリンダ14は、ディスクブレーキを構成するブレーキパッド(図示せず)を、ディスクロータ(図示せず)に押し付けるための押圧力を発生させる。ディスクロータは、各車輪Wと一体に回転し、ブレーキパッドと接触して摩擦係数を発生させる部材である。
すなわち、ブレーキアクチュエータ12、マスタシリンダ、各ホイールシリンダ14は、前輪WF及び後輪WRのそれぞれに設けられて、各車輪Wに摩擦制動力を発生させる摩擦ブレーキを形成する。
【0019】
したがって、車両Cが備える摩擦ブレーキは、全ての車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に、摩擦制動力を発生させる。
なお、
図1中では、右前輪WFRに対して配置したホイールシリンダ14を、ホイールシリンダ14FRと示し、左前輪WFLに対して配置したホイールシリンダ14を、ホイールシリンダ14FLと示す。同様に、
図1中では、右後輪WRRに対して配置したホイールシリンダ14を、ホイールシリンダ14RRと示し、左後輪WRLに対して配置したホイールシリンダ14を、ホイールシリンダ14RLと示す。また、以降の説明においても、各ホイールシリンダ14を、上記のように示す場合がある。
【0020】
動力コントロールユニット16は、制駆動力コントローラ10から入力を受けた駆動指令信号が含む駆動力指令値に応じて、駆動用モータ18が発生させる駆動トルクを制御する。
また、動力コントロールユニット16は、駆動用モータ18が発生させている現在のトルク(モータトルク)を含む情報信号(以降の説明では、「現在トルク信号」と記載する場合がある)を、制駆動力コントローラ10へ出力する。
また、動力コントロールユニット16は、制駆動力コントローラ10から入力を受けた制動指令信号が含む回生制動トルク指令値に応じて、駆動用モータ18が発生させる回生トルクを制御する。
【0021】
駆動用モータ18は、車両Cの駆動力または回生制動力を発生させる構成であり、駆動力伝達経路を介して、右前輪WFR及び左前輪WFL、すなわち、前輪WFのみに、駆動力または回生制動力を発生させる。
したがって、第一実施形態の車両Cは、駆動方式が二輪駆動の車両(2WD車両)である。また、第一実施形態の車両Cは、右前輪WFR及び左前輪WFLが駆動輪であり、右後輪WRR及び左後輪WRLが従動輪である。
駆動力伝達経路は、
図2中に示すように、モータ駆動力出力軸24と、ドライブシャフト26と、ディファレンシャルギア28を含む。
【0022】
モータ駆動力出力軸24は、駆動用モータ18が有し、駆動力指令値及び回生制動トルク指令値に応じて回転する。
ドライブシャフト26は、右前輪WFR及び左前輪WFLと、ディファレンシャルギア28とを、個別に連結する。
ディファレンシャルギア28は、図示しないリング・ギヤ等を有し、モータ駆動力出力軸24の回転を、右前輪WFRに連結するドライブシャフト26と、左前輪WFLに連結するドライブシャフト26へ、個別に伝達する。
【0023】
(制駆動力コントローラ10の構成)
図1及び
図2を参照しつつ、
図3を用いて、制駆動力コントローラ10の構成について説明する。
図3中に示すように、制駆動力コントローラ10は、アクセル操作状態算出部30と、ブレーキ操作状態算出部32と、車速算出用信号切換部34と、車速算出部36を備える。これに加え、制駆動力コントローラ10は、車速値フィルタ部38と、制駆動力制御部40と、駆動力算出部42と、制動力算出部44を備える。
アクセル操作状態算出部30は、アクセル操作量センサ2から入力を受けたアクセル操作量信号が含む操作量を用いて、加減速ペダル20の操作量を算出する。そして、算出した操作量を含む情報信号(以降の説明では、「アクセルペダル操作量信号」と記載する場合がある)を、車速算出用信号切換部34と制駆動力制御部40へ出力する。
【0024】
ブレーキ操作状態算出部32は、ブレーキ操作量センサ4から入力を受けたブレーキ操作量信号が含む操作量を用いて、制動用ペダル22の操作量を算出する。そして、算出した操作量を含む情報信号(以降の説明では、「ブレーキペダル操作量信号」と記載する場合がある)を、制駆動力制御部40へ出力する。
車速算出用信号切換部34は、アクセル操作状態算出部30と、車速算出部36から、情報信号の入力を受ける。
また、車速算出用信号切換部34は、入力を受けた各種の情報信号が含むパラメータを用いて、車速算出部36が車速の算出に用いる情報信号を切り換える指令を生成する処理を行う。そして、車速算出用信号切換部34は、車速の算出に用いる情報信号を切り換える指令を含む情報信号(以降の説明では、「切換指令信号」と記載する場合がある)を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。
【0025】
ここで、車速算出部36が車速の算出に用いる情報信号を切り換える処理は、出力軸回転状態検出部6が出力した出力軸回転数信号と、車輪速センサ8RR及び車輪速センサ8RLが出力した車輪速パルス信号を切り換える処理である。
具体的には、予め設定した算出用車速閾値(例えば、7[km/h])を超える車速で車両Cが走行していると、車速算出部36が車速の算出に用いる情報信号を、出力軸回転数信号に切り換える指令(出力軸側指令)を生成する。そして、出力軸側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。
【0026】
また、加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にあり、さらに、算出用車速閾値以下の車速で走行する車両Cに摩擦制動力を発生させていると、車速算出部36が車速の算出に用いる情報信号を、車輪速パルス信号に切り換える指令(車輪側指令)を生成する。そして、車輪側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。
ここで、制動範囲は、加減速ペダル20が未操作状態の操作量から、加減速ペダル20の操作量が予め設定した制駆動力変更点操作量となるまでの範囲である。
【0027】
また、加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にあり、さらに、算出用車速閾値以下の車速で走行する車両Cに回生制動力を発生させていると、出力軸側指令を生成する。そして、出力軸側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。
また、車両Cが停止していると、出力軸側指令を生成し、出力軸側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。
車速算出部36は、出力軸回転状態検出部6と、車輪速センサ8と、車速算出用信号切換部34から、情報信号の入力を受ける。
【0028】
また、車速算出部36は、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が出力軸側指令を含む場合、出力軸回転状態検出部6から入力を受けた出力軸回転数信号が含むモータ駆動力出力軸24の回転数から車速を算出する。そして、車速算出部36は、算出した車速を示す情報信号(以降の説明では、「車速信号」と記載する場合がある)を、車速値フィルタ部38へ出力する。
なお、以降の説明では、モータ駆動力出力軸24の回転数から算出した車速を、「出力軸側車速」と記載する場合がある。
【0029】
また、車速算出部36は、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が車輪側指令を含む場合、車輪速センサ8から入力を受けた車輪速パルス信号が含む、車輪Wに発生させた車輪速パルスから車速を算出する。そして、算出した車速を示す車速信号を、車速値フィルタ部38へ出力する。
なお、以降の説明では、車輪速センサ8が発生させた車輪速パルスから算出した車速を、「車輪側車速」と記載する場合がある。すなわち、車輪側車速は、車輪速センサ8が検出した回転状態から算出した車速である。
【0030】
第一実施形態では、一例として、車速算出部36の構成を、車輪速センサ8RRが車輪WRRに発生させた車輪速パルスと、車輪速センサ8RLが車輪WRLに発生させた車輪速パルスから、車輪側車速を算出する場合を説明する。すなわち、第一実施形態では、一例として、車速算出部36の構成を、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が車輪側指令を含む場合に、従動輪に発生させた車輪速パルスから、車輪側車速を算出する場合を説明する。
車速値フィルタ部38は、車速算出部36と、車速算出用信号切換部34から、情報信号の入力を受ける。
【0031】
また、車速値フィルタ部38は、第一車速値フィルタ部46と、第二車速値フィルタ部48を備える。
第一車速値フィルタ部46は、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が、前回の処理と異なる指令を含む場合にのみ、車速信号をローパスフィルタ処理(以降の説明では、「第一車速値フィルタ処理」と記載する場合がある)する。そして、第一車速値フィルタ部46は、第一車速値フィルタ処理後の車速信号(以降の説明では、「第一フィルタ処理済車速信号」と記載する場合がある)を、制駆動力制御部40へ出力する。
【0032】
車速パルス信号は、車速算出部36が算出した車速(出力軸側車速、車輪側車速)を示すパルス信号である。
第二車速値フィルタ部48は、車速信号を、第一車速値フィルタ部46よりもカットオフ周波数が高いローパスフィルタ処理(以降の説明では、「第二車速値フィルタ処理」と記載する場合がある)する。
また、第二車速値フィルタ部48は、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が、前回の処理と同じ指令を含む場合にのみ、第二車速値フィルタ処理を行う。そして、第二車速値フィルタ部48は、第二車速値フィルタ処理を行った車速信号(以降の説明では、「第二フィルタ処理済車速信号」と記載する場合がある)を、制駆動力制御部40へ出力する。
【0033】
以上により、車速値フィルタ部38は、制駆動力制御部40が制動力指令値及び駆動力指令値の設定に用いる車速を出力軸側車速と車輪側車速との間で切り換えた直後は、第一車速値フィルタ部46でローパスフィルタ処理を行う。
制駆動力制御部40は、アクセル操作状態算出部30と、ブレーキ操作状態算出部32と、車速値フィルタ部38から、情報信号の入力を受ける。
また、制駆動力制御部40は、制駆動トルクマップ記憶部50と、制駆動トルク指令値算出部52を備える。
【0034】
制駆動トルクマップ記憶部50は、制駆動トルクマップを記憶している。
制駆動トルクマップは、
図4中に示すように、加減速ペダル20の操作量と、駆動用モータ18で発生させる駆動トルク及び回生トルクと、車速Vとの関係を示すマップである。なお、
図4中では、加減速ペダル20の操作量を「アクセル開度」と示し、回生トルクを「制動トルク」と示す。また、
図4中では、駆動トルクの上限値を「駆動トルク上限値」と示し、回生トルクの上限値を「制動トルク上限値」と示す。
制駆動トルク指令値算出部52は、入力を受けた各種の情報信号が含むパラメータを、制駆動トルクマップ記憶部50が記憶している制駆動トルクマップに入力して、車両Cに発生させる制動トルク指令値及び駆動トルク指令値を算出する。
【0035】
具体的には、アクセル操作状態算出部30から入力を受けたアクセルペダル操作量信号が含む加減速ペダル20の操作量と、車速値フィルタ部38から入力を受けたフィルタ処理済車速信号が含む車速を、制駆動トルクマップに入力する。そして、入力した加減速ペダル20の操作量(アクセル開度)及び車速Vに対応する駆動トルクまたは回生トルクから、制動トルク指令値及び駆動トルク指令値を算出する。
制動トルク指令値は、摩擦ブレーキ(ブレーキアクチュエータ12、マスタシリンダ、各ホイールシリンダ14)で発生させる摩擦制動トルク指令値と、駆動用モータ18で発生させる回生制動トルク指令値のうち少なくとも一方を含む。
【0036】
駆動トルク指令値は、駆動用モータ18で発生させる駆動トルクの指令値である。
駆動トルク指令値を算出する際には、アクセル操作量信号が含む操作量に応じたペダル開度が中立点以上となると、加減速ペダル20の開度が増加するにつれて、車両Cに発生させる駆動力を増加させるように、駆動トルク指令値を算出する。
また、駆動トルク指令値を算出する際には、アクセルペダル操作量信号が含む操作量を用いて、予め設定した中立点を基準とした、加減速ペダル20の操作量を算出する。
中立点は、車両Cに発生させる加速度と減速度を切り替える点、すなわち、制駆動力コントローラ10が出力する指令信号を、制動指令信号または駆動指令信号に切り替える点である。また、中立点は、アクセル操作量信号が含む操作量に応じた、加減速ペダル20の開度(ペダル開度)に対応するパラメータであり、例えば、25%程度の加減速ペダル20の開度に対応する。
【0037】
また、中立点とは、アクセル操作量信号が含む操作量であり、加減速ペダル20の操作量に応じたパラメータである制駆動力変更点操作量を示す。また、制駆動力変更点操作量は、加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にある場合には、加減速ペダル20の操作量の増加に応じて、制動トルク指令値を、後述する初期制動トルク指令値から減少させるための閾値である。これに加え、制駆動力変更点操作量は、加減速ペダル20の操作量が制駆動力変更点操作量以上である駆動範囲では、制駆動力変更点操作量と加減速ペダル20の操作量との偏差に応じた駆動トルク指令値を算出するための閾値である。
【0038】
初期制動トルク指令値は、加減速ペダル20の操作量が未操作状態(加減速ペダル20開度=0)で発生させる制動力信号が含む制動力指令値であり、例えば、車両Cの制動能力等に応じて、予め設定する。
車両Cに発生させる制動トルク指令値を算出した制駆動力制御部40は、算出した制動トルク指令値を含む情報信号(以降の説明では、「制動トルク指令値信号」と記載する場合がある)を、制動力算出部44へ出力する。
車両Cに発生させる駆動トルク指令値を算出した制駆動力制御部40は、算出した駆動トルク指令値を含む情報信号(以降の説明では、「駆動トルク指令値信号」と記載する場合がある)を、駆動力算出部42へ出力する。
【0039】
以上により、制駆動力制御部40は、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にある場合には、制動力指令値を、初期制動トルク指令値から、加減速ペダル20の操作量の増加分だけ減少させた値に設定する。
また、制駆動力制御部40は、加減速ペダル20の操作量が駆動範囲内にある場合には、初期制動トルク指令値に対応する加減速ペダル20の操作量と、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量との偏差に応じた駆動力指令値を設定する。
これにより、制駆動力制御部40は、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にある場合には、制動力を、未操作状態に対応する制動力から、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量の増加分だけ減少させる。これに加え、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量が駆動範囲内にある場合には、制駆動力変更点操作量とアクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量との偏差に応じた駆動力を発生させる。
【0040】
また、制駆動力制御部40は、制動力としては回生制動力のみを発生させている場合には、出力軸側車速及び車輪側車速のうち出力軸側車速を用いて、制動力及び駆動力を制御する。これに加え、摩擦制動力を発生させている場合には、出力軸側車速及び車輪側車速のうち車輪側車速を用いて、制動力及び駆動力を制御する。
駆動力算出部42は、制駆動力制御部40から入力を受けた駆動トルク指令値信号が含む駆動トルク指令値を用いて、駆動力指令値を算出する。そして、駆動力算出部42は、算出した駆動力指令値を含む情報信号(以降の説明では、「駆動力指令値信号」と記載する場合がある)を、動力コントロールユニット16へ出力する。
【0041】
制動力算出部44は、制駆動力制御部40から入力を受けた制動トルク指令値信号が含む制動トルク指令値を用いて、制動力指令値を算出する。そして、制動力算出部44は、算出した制動力指令値を含む情報信号(以降の説明では、「制動力指令値信号」と記載する場合がある)を、ブレーキアクチュエータ12及び動力コントロールユニット16のうち、少なくとも一方へ出力する。
具体的には、制動トルク指令値信号が含む制動トルク指令値が、摩擦制動トルク指令値及び回生制動トルク指令値である場合は、制動力指令値信号を、ブレーキアクチュエータ12及び動力コントロールユニット16へ出力する。また、制動トルク指令値信号が含む制動トルク指令値が、摩擦制動トルク指令値のみである場合は、制動力指令値信号を、ブレーキアクチュエータ12のみへ出力する。また、制動トルク指令値信号が含む制動トルク指令値が、回生制動トルク指令値のみである場合は、制動力指令値信号を、動力コントロールユニット16のみへ出力する。
【0042】
(動作)
次に、
図1から
図4を参照しつつ、
図5を用いて、第一実施形態の制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を説明する。
図5中に示すように、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を開始(START)すると、まず、ステップS100の処理を行う。
ステップS100では、車速算出用信号切換部34により、算出用車速閾値以下の車速で車両Cが走行しているか否かを判定する処理(図中に示す「算出用車速閾値以下」)を行う。
ステップS100において、算出用車速閾値以下の車速で車両Cが走行している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS102へ移行する。
【0043】
一方、ステップS100において、算出用車速閾値を超える車速で車両Cが走行している(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS110へ移行する。
ステップS102では、車速算出用信号切換部34により、車両Cが停止中であるか否かを判定する処理(図中に示す「停止中」)を行う。
ステップS102において、車両Cが停止中である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS104へ移行する。
【0044】
一方、ステップS102において、車両Cが走行中である(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS106へ移行する。
ステップS104では、車速算出用信号切換部34により、出力軸側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。そして、車速算出部36は、モータ駆動力出力軸24の回転数から出力軸側車速を算出(図中に示す「モータ回転数」)する。ステップS104において、出力軸側車速を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS112へ移行する。
【0045】
ステップS106では、車速算出用信号切換部34により、車両Cに摩擦制動力が発生しているか否かを判定する処理(図中に示す「摩擦制動力発生中」)を行う。
ステップS106において、車両Cに摩擦制動力が発生している(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS108へ移行する。
一方、ステップS106において、車両Cに摩擦制動力が発生していない(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS110へ移行する。
【0046】
ステップS108では、車速算出用信号切換部34により、車輪側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。そして、車速算出部36は、車輪速センサ8RRが車輪WRRに発生させた車輪速パルスと、車輪速センサ8RLが車輪WRLに発生させた車輪速パルスから、出力軸側車速を算出(図中に示す「従動輪速」)する。ステップS108において、出力軸側車速を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS112へ移行する。
ステップS110では、車速算出用信号切換部34により、出力軸側指令を含む切換指令信号を、車速算出部36と車速値フィルタ部38へ出力する。そして、車速算出部36は、モータ駆動力出力軸24の回転数から出力軸側車速を算出(図中に示す「モータ回転数」)する。ステップS110において、出力軸側車速を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS112へ移行する。
【0047】
ステップS112では、車速値フィルタ部38により、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が、前回の処理と異なる指令を含むか否かを判定する処理(図中に示す「モータ/車輪速切り換え」)を行う。
ステップS112において、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が、前回の処理と異なる指令を含む(図中に示す「Yes」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS114へ移行する。
一方、車速算出用信号切換部34から入力を受けた切換指令信号が、前回の処理と同じ指令を含む(図中に示す「No」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS116へ移行する。
【0048】
ステップS114では、第一車速値フィルタ部46により、第二車速値フィルタ処理よりも車速パルス信号に発生する変動の収束度合いが大きい第一車速値フィルタ処理(図中に示す「強フィルタ」)を行う。ステップS114において、第一車速値フィルタ処理を行うと、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS118へ移行する。
ステップS116では、第二車速値フィルタ部48により、第一車速値フィルタ処理よりも車速パルス信号に発生する変動の収束度合いが少ない第二車速値フィルタ処理(図中に示す「弱フィルタ」)を行う。ステップS116において、第二車速値フィルタ処理を行うと、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS118へ移行する。
【0049】
ステップS118では、ステップS114またはステップS116でフィルタ処理を行った車速を用いて、駆動トルク指令値を算出(図中に示す「駆動トルク算出」)する。ステップS118において、駆動トルク指令値を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を終了(END)する。
なお、上述したアクセル操作量センサ2は、制駆動力操作子操作量検出部に対応する。
また、上述した駆動用モータ18は、駆動源に対応する。
また、上述した加減速ペダル20は、制駆動力操作子に対応する。
【0050】
また、上述したモータ駆動力出力軸24は、駆動源の出力軸に対応する。
また、上述した回生制動力は、負荷制動力に対応する。
また、上述したように、第一実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、制動力として回生制動力のみを発生させている場合には、出力軸側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。これに加え、摩擦制動力を発生させている場合には、車輪側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0051】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の制駆動力制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)制駆動力制御部40が、制動力としては回生制動力のみを発生させている場合には、出力軸側車速を用いて制動力及び駆動力を制御し、摩擦制動力を発生させている場合には、車輪側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。
このため、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、駆動力伝達経路に発生するねじれの影響が少ない車輪Wの回転状態から算出した車輪側車速を用いて、制動力及び駆動力を制御することが可能となる。
その結果、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、車速の誤検出の発生を低減させることが可能となり、駆動用モータ18が発生させるトルクの変動を抑制して、車両Cに発生する前後方向加速度の変動を抑制することが可能となる。
【0052】
(2)制駆動力制御部40が、算出用車速閾値を超える車速で車両Cが走行している場合には、出力軸側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。
このため、出力軸回転状態検出部6よりも低い回転数の検出精度が低い車輪速センサ8を用いて車速を算出した場合と比較して、低速域における車速の検出精度を向上させることが可能となる。
その結果、算出用車速閾値を超える車速で車両Cが走行している場合には、車速の算出精度低下を抑制することが可能となる。
【0053】
(3)駆動用モータ18が、駆動輪である前輪WFのみに駆動力を発生させる。これに加え、車輪速センサ8は、従動輪である後輪WRのみの一回転について、車輪速パルスを発生させる。
このため、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、前輪WFと比較してスリップが発生する可能性が低い後輪WRの回転状態から算出した車速を用いて、制動力及び駆動力を制御することが可能となる。
その結果、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、車速の算出精度低下を抑制することが可能となる。
【0054】
(4)制駆動力制御部40が、車速値フィルタ部38でローパスフィルタ処理した車速信号を用いて、制動力及び駆動力を制御する。
このため、制動力及び駆動力を制御に用いる車速の急激な変動や消失の影響を抑制して、制動力及び駆動力を制御することが可能となる。
その結果、駆動用モータ18が発生させるトルクの変動を抑制して、車両Cに発生する前後方向加速度の変動を抑制することが可能となる。
【0055】
(5)車速値フィルタ部38が、制駆動力制御部40が制動力及び駆動力の制御に用いる車速を出力軸側車速と車輪側車速との間で切り換えた直後は、第一車速値フィルタ部46でローパスフィルタ処理を行う。
このため、車速算出部36が車速を算出するために用いる回転状態が前回の処理と異なる場合に、第二車速値フィルタ処理よりもカットオフ周波数が高い第一車速値フィルタ処理を行うことが可能となる。
その結果、車速算出部36が車速を算出するために用いる回転状態が前回の処理と異なり、車速の急激な変動や消失が発生する可能性が高い場合であっても、駆動用モータ18が発生させるトルクの変動を抑制することが可能となる。
【0056】
(6)制駆動力制御部40が、加減速ペダル20の操作量が駆動範囲内にある場合には、制動力を
、未操作状態に対応する制動力から、加減速ペダル20の操作量の増加分だけ減少させる。さらに、加減速ペダル20の操作量が制動範囲内にある場合には、車速が算出用車速閾値を超えていると、回生制動力のみを発生させるように、摩擦制動力及び回生制動力を制御する。
【0057】
(7)制駆動力制御部40が、加減速ペダル20の操作量が駆動範囲内にある場合には、制駆動力変更点操作量に対応する加減速ペダル20の操作量と、アクセル操作量センサ2が検出した加減速ペダル20の操作量と、の偏差に応じた駆動力を発生させる。
このため、加減速ペダル20の操作量が駆動範囲内にある場合には、加減速ペダル20の操作量に応じて、駆動トルクの大きさを制御することが可能となる。
その結果、運転者による加減速ペダル20のみの操作により、車両Cの加速及び減速を制御して、車両Cを走行させることが可能となる。
【0058】
(8)第一実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、制動力としては回生制動力のみを発生させている場合には、出力軸側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。これに加え、摩擦制動力を発生させている場合には、車輪側車速を用いて制動力及び駆動力を制御する。
このため、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、駆動力伝達経路に発生するねじれの影響が少ない車輪Wの回転状態から算出した車輪側車速を用いて、制動力及び駆動力を制御することが可能となる。
その結果、モータ駆動力出力軸24の回転中に摩擦制動力を発生させても、車速の誤検出の発生を低減させることが可能となり、駆動用モータ18が発生させるトルクの変動を抑制して、車両Cに発生する前後方向加速度の変動を抑制することが可能となる。
【0059】
(変形例)
(1)第一実施形態では、右前輪WFR及び左前輪WFLを駆動輪とし、右後輪WRR及び左後輪WRLを従動輪としたが、車両Cの構成は、これに限定するものではない。すなわち、右前輪WFR及び左前輪WFLを従動輪とし、右後輪WRR及び左後輪WRLを駆動輪としてもよい。また、全車輪Wを駆動輪としてもよい。
(2)第一実施形態では、車両Cの構成を、駆動源として駆動用モータ18のみを備える電気自動車(EV:Electric Vehicle)としたが、車両Cの構成は、これに限定するものではない。
すなわち、車両Cの構成を、駆動源として駆動用モータ18及びエンジンを備えるハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)としてもよい。この場合、負荷制動力は、回生制動力及びエンジンブレーキとなる。
また、車両Cの構成を、駆動源としてエンジンを備える自動車としてもよい。この場合、負荷制動力は、エンジンブレーキとなる。