(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成要素[A]が1分子中にグリシジル基を3個以上有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂を、構成要素[A]100質量部に対して40〜100質量部含む、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、次の(i)または(ii)のいずれかの構成を有するものである。
(i)少なくとも次の構成要素[A]〜[C]を含み、各構成要素の配合割合が(1)と(2)を満たすエポキシ樹脂組成物。
[A]:エポキシ樹脂
[B]:示差走査熱量計により測定される発熱開始温度が、構成要素[C]の発熱開始温度より高い硬化剤
[C]:式(a)で表される化合物。
(1)0.5≦(構成要素[B]に含まれる活性水素のモル数+構成要素[C]に含まれる活性水素のモル数)/構成要素[A]のエポキシ基のモル数0.02≦1.5
(2)0.02≦構成要素[C]のモル数/構成要素[B]のモル数≦5.0
または、(ii)少なくとも次の構成要素[A]〜[C]を含み、構成要素[C]の含有量が、構成要素[A]100質量部に対して1〜25質量部であり、かつ構成要素[C]の含有量が、構成要素[B]100質量部に対して1〜55質量部であるエポキシ樹脂組成物。
[A]:エポキシ樹脂
[B]:示差走査熱量計により測定される発熱開始温度が、構成要素[C]の発熱開始温度より高い硬化剤
[C]:式(a)で表される化合物
本発明で用いる構成要素[A]は、1分子中に2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂である。1分子中にグリシジル基が2個未満のエポキシ樹脂の場合、後述する硬化剤と混合した混合物を加熱硬化して得られる硬化物のガラス転移温度が低くなるため好ましくない。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。中でも、1分子中にグリシジル基を3個以上含むエポキシ樹脂は、高いガラス転移温度や弾性率を有する硬化物が得られるため、航空・宇宙機用途に好適に用いられる。
【0022】
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜含有させて用いてもよい。任意の温度において流動性を示すエポキシ樹脂と、任意の温度において流動性を示さないエポキシ樹脂を含有することは、得られるプリプレグを熱硬化する時のマトリックス樹脂の流動性制御に有効である。例えば、熱硬化時において、マトリックス樹脂がゲル化するまでの間に示す流動性が大きいと、強化繊維の配向に乱れを生じたり、マトリックス樹脂が系外に流れ出すことにより、繊維質量含有率が所定の範囲から外れたりすることがあり、その結果、得られる繊維強化複合材料の力学物性が低下する可能性がある。また、任意の温度において様々な粘弾性挙動を示すエポキシ樹脂を複数種組み合わせることは、得られるプリプレグのタック性やドレープ性を適切なものとするためにも有効である。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、耐熱性や機械物性に対して著しい低下を及ぼさない範囲であれば、構成要素[A]以外のエポキシ樹脂、例えば1分子中に1個のみのエポキシ基を有するモノエポキシ樹脂や、脂環式エポキシ樹脂などを適宜含有させることができる。
【0024】
本発明に含まれる構成要素[B]の硬化剤は、示差走査熱量計により測定される発熱開始温度が構成要素[C]より高く、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。ここで発熱開始温度は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”825、三菱化学(株)製)に構成要素[B]または構成要素[C]を含有したエポキシ樹脂組成物を、示差走査熱量計(DSC Q2000:TAインスツルメント社製)を用いて、窒素雰囲気中で5℃/分の昇温速度で測定した発熱曲線から求められるものであって、発熱ピークの立ち上がり点(ベースラインから0.2W/g発熱した点)の温度を指す。発熱開始温度測定用のエポキシ樹脂組成物は、[ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量/ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有質量]:[(構成要素[B]または構成要素[C])の活性水素当量/(構成要素[B]または構成要素[C])の含有質量]が、1:1となるように含有させる。構成要素[B]の発熱開始温度が構成要素[C]より低い場合、プリプレグ製造プロセスでの良好なポットライフが得られない。
【0025】
構成要素[B]の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、芳香族アミン化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンなどが挙げられる。
【0026】
なかでも、構成要素[B]の硬化剤として芳香族アミン硬化剤を用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。芳香族アミン化合物としては、例えば、3,3’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0027】
中でも、航空、宇宙機用途などの場合、耐熱性、弾性率に優れ、さらに線膨張係数および吸水による耐熱性の低下が小さい硬化物が得られる4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよび3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを用いることが好ましい。これらの芳香族アミン化合物は単独で用いてもよいし、適宜2種類以上混合して用いてもよい。また、他成分との混合時は粉体、液体いずれの形態でもよく、粉体と液体の芳香族アミン化合物を混合して用いても良い。
【0028】
本発明における構成要素[C]は、上記の式(a)で表される芳香族アミン化合物であり、式(a)中、XはC=O、S=O、O=P−OHから選ばれ、R
1〜R
4は、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、炭素数4以下の脂環式炭化水素基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれた少なくとも一つから選ばれる。構成要素[C]は構成要素[A]のエポキシ樹脂と構成要素[B]の硬化剤の反応の促進剤として用いられ、構成要素[C]の芳香族アミン化合物が構成要素[A]のエポキシ樹脂と反応することで反応熱が発生し、エポキシ樹脂組成物内部の温度が局所的に上昇する。この局所的な温度上昇により、構成要素[B]の硬化剤と構成要素[A]のエポキシ樹脂の反応が促進されるため、硬化反応が完了するまでに要する時間を短縮することが可能となる。また、構成要素[C]の芳香族アミン化合物は電子吸引性の官能基を有するため、アミンの求核性を適度に抑制し、プリプレグ製造プロセス温度での良好なポットライフが得られる。構成要素[C]の化合物以外の芳香族アミン化合物を硬化促進剤として用いた場合は、硬化時間の短縮は可能となるが、アミンの求核性が強すぎるため、プリプレグ製造プロセス温度での良好なポットライフが得られない。さらに、構成要素[C]の芳香族アミン化合物は剛直な化学構造を有するため、高い耐熱性を有するエポキシ樹脂硬化物が得られる。
【0029】
構成要素[C]の化合物において、式(a)のXがC=Oであるものとしては、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルケトン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルケトン、4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルケトン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルケトン、3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルケトン、3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルケトン、3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルケトン、3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルケトン、3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルケトン、3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルケトン、3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルケトンなどが挙げられる。
【0030】
構成要素[C]の化合物において、式(a)のXがS=Oであるものとしては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどが挙げられる。
【0031】
構成要素[C]の化合物において、式(a)のXがO=P−OHであるものとしては、4,4’−ジアミノジフェニルホスフィン酸、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルホスフィン酸、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノジフェニルホスフィン酸、3,3’−ジアミノジフェニルホスフィン酸、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルホスフィン酸、4,4’−ジアミノ−2,3’−ジメチルジフェニルホスフィン酸、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノ−5−メチルジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノ−2’−メチルジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノ−3’−メチルジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノ−5,2’−ジメチルジフェニルホスフィン酸、3,4’−ジアミノ−5,3’−ジメチルジフェニルホスフィン酸、3,3’−ジアミノ−5−メチルジフェニルホスフィン酸、3,3’−ジアミノ−5,5’−ジメチルジフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、次の(1)と(2)を同時に満たす、または、次の(I)と(II)を同時に満たすものである。
(1)(構成要素[B]に含まれる活性水素のモル数+構成要素[C]に含まれる活性水素のモル数)/構成要素[A]のエポキシ基のモル数=0.5〜1.5である。
(2)構成要素[C]のモル数/構成要素[B]のモル数=0.02〜5.0である。
(I)構成要素[C]の含有量が、構成要素[A]100質量部に対して、1〜25質量部である。
(II)構成要素[C]の含有量が、構成要素[B]100質量部に対して、1〜55質量部である。
(1)において、0.5以上1.5以下とすることで、優れた速硬化性と耐熱性が得られる。(2)において、0.02以上にすることにより樹脂組成物の硬化反応を促進する効果が得られ、5.0以下にすることにより樹脂組成物のポットライフの悪化を抑制することができる。また、(I)において、含有量を1質量部以上にすることにより樹脂組成物の硬化反応を促進する効果が得られ、25質量部以下にすることにより樹脂組成物のポットライフの悪化を抑制することができる。(II)において、含有量を1〜55質量部とすることで、硬化剤とエポキシ樹脂反応の促進が行われ、優れた速硬化性と耐熱性が得られる。
【0033】
ここで、構成要素[A]のエポキシ基のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[A]のエポキシ基のモル数=構成要素[A]の質量部数/構成要素[A]のエポキシ当量。
【0034】
構成要素[A]が2成分以上のエポキシ樹脂を含む場合は、各成分のエポキシ基のモル数の和となり、例として2成分を含む場合は、以下の通り計算する。
構成要素[A]のエポキシ基のモル数=構成要素[A]成分1の質量部数/構成要素[A]成分1のエポキシ当量+構成要素[A]成分2の質量部数/構成要素[A]成分2のエポキシ当量。
【0035】
さらに、構成要素[B]または[C]の活性水素のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[B]の活性水素のモル数=構成要素[B]の質量部数/構成要素[B]の活性水素当量
構成要素[C]の活性水素のモル数=構成要素[C]の質量部数/構成要素[C]の活性水素当量。
【0036】
また、構成要素[C]に含まれる活性水素のモル数/構成要素[A]のエポキシ基のモル数=0.05〜0.9であることが好ましい。0.05以上にすることにより樹脂組成物の硬化反応を促進する効果が得られ、0.9以下にすることにより樹脂組成物のポットライフの悪化を抑制することができる。
【0037】
ここで、構成要素[B]または[C]のモル数は以下の通り計算する。
構成要素[B]のモル数=構成要素[B]の質量部数/構成要素[B]の分子量
構成要素[C]のモル数=構成要素[C]の質量部数/構成要素[C]の分子量。
【0038】
本発明における構成要素[C]に加えて、エポキシ樹脂組成物の耐熱性と熱安定性を損ねない範囲で他の硬化促進剤と併用しても良い。他の硬化促進剤としては、例えば、カチオン重合開始剤、三級アミン、イミダゾール化合物、尿素化合物、ヒドラジド化合物などが挙げられる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、さらに構成要素[D]として熱可塑性樹脂を含有させることが好ましい。構成要素[D]の熱可塑性樹脂は、得られるプリプレグのタック性の制御、プリプレグを加熱硬化する時のマトリックス樹脂の流動性の制御および得られる繊維強化複合材料の耐熱性や弾性率を損なうことなく靭性を付与するために含有される。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなどを挙げることができ、これらのポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、適宜併用して用いてもよい。中でも、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルイミドは得られる繊維強化複合材料の耐熱性や力学物性を低下することなく靭性を付与することができるため、好ましく用いることができる。
【0040】
これらのポリアリールエーテル骨格で構成される熱可塑性樹脂の末端官能基としては、第1級アミン、第2級アミン、水酸基、カルボキシル基、チオール基、酸無水物やハロゲン基(塩素、臭素)などのものが使用できる。このうち、エポキシ樹脂との反応性が少ないハロゲン基の場合、保存安定性に優れたプリプレグを得ることができ、一方、ハロゲン基を除いた官能基の場合、エポキシ樹脂との高い反応性を有することからエポキシ樹脂と該熱可塑性樹脂の接着に優れた樹脂組成物を得ることができるため好ましい。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、80℃で2時間保持した時の粘度が、80℃における初期粘度の3.0倍以下であることが好ましく、より好ましくは2.0倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下である。ここで、80℃で2時間保持した時の増粘倍率は、80℃で1分間保持した時の粘度(80℃における初期粘度)η
*1、80℃で2時間保持した時の粘度η
*120を測定し、増粘倍率をη
*120÷η
*1より求める。ここで粘度とは、動的粘弾性測定装置(ARESレオメーター:TAインスツルメント社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、周波数0.5Hz、Gap1mmで測定を行った複素粘性率η
*のことを指す。
【0042】
80℃で保持した時の増粘倍率は、樹脂組成物の混練工程や、プリプレグの製造工程でのエポキシ樹脂組成物のポットライフの指標とすることができる。即ち、80℃で保持したときの増粘倍率が小さい程、ポットライフが良好ということになる。エポキシ樹脂組成物を80℃で2時間保持した時の増粘倍率が3.0倍以下であると、樹脂組成物の熱安定性が高く、プリプレグ製造工程において強化繊維への樹脂の含浸性が低下せず、成形物にボイドが生じにくい。
【0043】
航空宇宙用途や車両などの構造材料に適用する場合、エポキシ樹脂硬化物が高い耐熱性を有する必要がある。耐熱性は動的粘弾性測定によりガラス転移温度を測定することで評価できる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度が170℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上である。エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度が高いほど、より高い耐熱性が求められる部材への適用が可能となるため好ましい。
【0044】
本発明においては、熱可塑性樹脂を主成分とする粒子を含有させることも好適である。熱可塑性樹脂粒子を含有させることにより、繊維強化複合材料としたときに、繊維強化複合材料の強化繊維からなる層と層の間に形成される樹脂層(以降、「層間樹脂層」と表すこともある)の靱性が向上するため、耐衝撃性が向上する。
【0045】
熱可塑性樹脂粒子としては、エポキシ樹脂組成物に混合して用い得る熱可塑性樹脂を使用することができ、中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド6/12共重合体や特開平1−104624号公報の実施例1記載のエポキシ化合物にてセミIPN(高分子相互侵入網目構造)化されたポリアミド(セミIPNポリアミド)は特に良好なエポキシ樹脂との接着強度を与える。この熱可塑性樹脂粒子の形状としては、球状粒子でも非球状粒子でも、また多孔質粒子でもよいが、球状の方が樹脂の流動特性を低下させないため粘弾性に優れ、また応力集中の起点がなく、高い耐衝撃性を与えるという点で好ましい態様である。ポリアミド粒子の市販品としては、SP−500、SP−10、TR−1、TR−2、842P−48、842P−80(以上、東レ(株)製)、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD、2001EXD、2002D、3202D、3501D,3502D、(以上、アルケマ(株)製)等を使用することができる。これらのポリアミド粒子は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボン粒子、金属粉体といった無機フィラー等を含有させることができる。
【0047】
本発明のプリプレグは、上述したエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とし、この樹脂組成物を強化繊維と複合させたものである。強化繊維は、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を好ましく挙げることができるが、中でも炭素繊維が特に好ましい。
【0048】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上、東レ(株)製)などが挙げられる。
【0049】
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
【0050】
本発明のプリプレグは、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、マトリックス樹脂をアセトン、メチルエチルケトンおよびメタノールなどから選ばれる有機溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法、あるいは、マトリックス樹脂を、有機溶媒を用いずに加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法などの方法により、プリプレグを製造することができる。
【0051】
ウェット法では、強化繊維をマトリックス樹脂を含む液体に浸漬した後に引き上げ、オーブンなどを用いて有機溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。
【0052】
またホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を、直接、強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルム付きの離型紙シート(以降、「樹脂フィルム」と表すこともある)をまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側から樹脂フィルムを強化繊維側に重ね、加熱加圧することにより強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法などを用いることができる。
【0053】
本発明のプリプレグの製造方法としては、プリプレグ中に残留する有機溶媒が実質的に皆無となるため、有機溶媒を用いずにマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させるホットメルト法が好ましい。
【0054】
本発明のプリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が30〜2000g/m
2であることが好ましい。かかる強化繊維量が30g/m
2未満では、繊維強化複合材料成形の際に所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、作業が繁雑となることがある。一方で、強化繊維量が2000g/m
2を超えると、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向にある。
【0055】
本発明のプリプレグの繊維質量含有率は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、更に好ましくは40〜80質量%である。繊維質量含有率が30質量%未満では、樹脂の量が多すぎて、比強度と比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られず、また、繊維強化複合材料の成形の際、硬化時の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維質量含有率が90質量%を超えると、樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
【0056】
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱して樹脂を硬化させる方法を一例として製造することができる。ここで熱及び圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が採用される。
【0057】
さらに、プリプレグを用いずに、本発明のエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後、加熱硬化する方法、例えばハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法などの成形法によっても繊維強化複合材料を作製することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0059】
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)構成要素[A]:エポキシ樹脂
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER(登録商標)”825、三菱化学(株)製)エポキシ当量:175(g/eq.)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“EPICLON(登録商標)”830、DIC(株)製)エポキシ当量:172(g/eq.)
・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“アラルダイト(登録商標)”MY721、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:113(g/eq.)
・トリグリシジル−m−アミノフェノール(“アラルダイト(登録商標)”MY0600、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:106(g/eq.)
・トリグリシジル−p−アミノフェノール(“アラルダイト(登録商標)”MY0500、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:106(g/eq.)
・トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル(TACTIX742、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)エポキシ当量:160(g/eq.)。
【0060】
(2)構成要素[B]:示差走査熱量計により測定される発熱開始温度が、構成要素[C]の発熱開始温度より高い硬化剤
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS、和歌山精化工業(株)製) 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:175℃、活性水素当量:62(g/eq.)
・3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DAS、三井化学ファイン(株)製) 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:166℃、活性水素当量:62(g/eq.)。
【0061】
(3)構成要素[C]:式(a)で表される化合物
・4,4’−ジアミノジフェニルケトン 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:151℃、活性水素当量:53(g/eq.)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:152℃、活性水素当量:58(g/eq.)
・4,4’−ジアミノジフェニルホスフィン酸 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:155℃、活性水素当量:62(g/eq.)
・3,3’−ジアミノジフェニルケトン 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:143℃、活性水素当量:53(g/eq.)
・3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:143℃、活性水素当量:58(g/eq.)
・3,3’−ジアミノジフェニルホスフィン酸 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:146℃、活性水素当量:62(g/eq.)。
【0062】
(4)化合物X:構成要素[B]および構成要素[C]に含まれない化合物
・4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:121℃、活性水素当量:50(g/eq.)
・4,4’−ジアミノジフェニルメタン 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:118℃、活性水素当量:50(g/eq.)
・4,4’−ジアミノベンズアニリド 示差走査熱量計により測定される発熱開始温度:129℃、活性水素当量:57(g/eq.)。
【0063】
(5)構成要素[D]:熱可塑性樹脂
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、住友化学(株)社製)。
【0064】
<エポキシ樹脂組成物の作製方法および評価方法>
以下の方法にて各実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を測定した。
【0065】
(1)エポキシ樹脂組成物の作製
混練装置中に、表1〜5に記載の構成要素[A]に該当するエポキシ樹脂および構成要素[D]を投入し、加熱混練を行い、構成要素[D]成分を溶解させた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、表1〜5に記載の構成要素[B]と構成要素[C](ただし、比較例においては、構成要素[B]または構成要素[C]を加えない場合や、構成要素[C]の代わりに化合物Xを加える場合もある。)を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0066】
(2)エポキシ樹脂組成物を80℃で1分保持した時の粘度および2時間保持した時の粘度の測定方法
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置ARESレオメーター(TAインスツルメント社製)を用い、上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該エポキシ樹脂組成物をセット後、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で測定した。80℃で1分間保持した時の粘度η
*1、80℃で2時間保持した時の粘度η
*120を測定し、増粘倍率(ポットライフ)をη
*120÷η
*1より求めた。ポットライフの評価に関し、表1〜5において、増粘倍率が1.5倍以下をA、1.5倍超、2.0倍以下をB、2.0倍超、3.0倍以下をC、3.0倍超をDで表記した。
【0067】
(3)エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定方法
エポキシ樹脂組成物をモールドに注入した後、熱風乾燥機中で30℃から速度1.5℃/分で昇温し、180℃で2時間加熱硬化した後、30℃まで速度2.5℃/分で降温して厚さ2mmの樹脂硬化板を作製した。作製した樹脂硬化板から幅12.7mm、長さ55mmの試験片を切り出し、SACMA SRM18R−94に従い、DMA法によりガラス転移温度を求めた。貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点温度値をガラス転移温度とした。ここでは、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。耐熱性の評価に関し、表1〜5において、ガラス転移温度が190℃以上をA、180℃以上190℃未満をB、170℃以上180℃未満をC、170℃未満をDで表記した。
【0068】
(4)エポキシ樹脂組成物のゲルタイムの測定方法
キュラストメーターにより、回転トルクの経時変化からエポキシ樹脂組成物の硬化反応性を評価した。ここでは、Rubber Process Analyzer RPA2000(ALPHA TECHNOLOGIES社製)を用い、40℃から180℃まで1.7℃/minの速度で昇温し、180℃で2時間加熱した。ゲルタイムは、40℃で加熱開始時点からトルクが1dNmを超えるまでの時間とした。速硬化性の評価に関し、表1〜5において、ゲルタイムが80分以下をA、80分超、90分以下をB、90分超、95分以下をC、95分超をDで表記した。
【0069】
<実施例1〜6および比較例1>
構成要素[C]として、表1に記載の各種硬化促進剤を用いた結果、表4に記載の比較例1(構成要素[C]非含有)と比べ、増粘倍率は同等の値で、大幅なゲルタイムの短縮がなされ、優れた速硬化性を示した。ガラス転移温度に関しては、実施例1〜6とも比較例1に比べて低下はなく、190℃以上の高い値を示した。
【0070】
<実施例7〜15および比較例2〜10>
表1,2,4に示すように、種々のエポキシ樹脂を用いた結果、実施例7〜15では、4,4’−ジアミノジフェニルケトンを含有することにより、比較例2〜10(構成要素[C]非含有)に比べて、増粘倍率は同等の値で、大幅なゲルタイムの短縮がなされた。実施例7〜11において、1分子中にグリシジル基を3個以上含むエポキシ樹脂であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの含有量が増えることで、速硬化性、ポットライフへの悪影響なく、ガラス転移温度の向上が見られ、好ましい傾向を示した。
【0071】
<実施例16,17および比較例11,12>
表2,5に示すように、実施例16,17では、実施例1,11および比較例1,6の硬化剤を変更した結果、比較例11,12(構成要素[C]非含有)に比べて、ポットライフ、耐熱性を損なうことなく、ゲルタイムの短縮が見られた。実施例1,11から実施例16,17への硬化剤の変更により、ポットライフおよび耐熱性が低下する傾向が見られたが、実用上問題のない優れた値を示した。
【0072】
<実施例18〜32>
表2,3に示すように、実施例18〜21および実施例27〜32において構成要素[C]の含有量を変更した結果、含有量の増加により、ゲルタイムの短縮と共に増粘倍率が上昇する傾向が見られたが、実用上問題のない優れた特性を示した。
【0073】
<実施例33,34>
表3に示すように、硬化剤の含有量を変更した結果、含有量の増加に伴い、ゲルタイムが短縮される傾向を示した。
【0074】
<比較例13〜15>
表5に示すように、硬化促進剤として構成要素[C]に含まれない化合物Xを用いた結果、増粘倍率が高く、好ましくない特性であった。
【0075】
<比較例16〜18>
表5の比較例16に示すように、構成要素[A]100質量部に対し、構成要素[C]の含有量が1質量部未満であった結果、ゲルタイムの短縮効果が十分ではなく、好ましくない結果であった。比較例17,18に示すように、構成要素[A]100質量部に対し、構成要素[C]の含有量が25質量部より大きい場合、増粘倍率の上昇およびガラス転移温度の低下が大きく、好ましくない特性であった。
【0076】
<比較例19〜21>
表5の比較例19に示すように、(構成要素[B]に含まれる活性水素のモル数+構成要素[C]に含まれる活性水素のモル数)/(構成要素[A]のエポキシ基のモル数)が0.5より低い場合、耐熱性が低く、さらにゲルタイムの短縮効果も十分ではなく、好ましくない結果であった。また、比較例20に示すように、(構成要素[B]に含まれる活性水素のモル数+構成要素[C]に含まれる活性水素のモル数)/(構成要素[A]のエポキシ基のモル数)が1.5より大きい場合、増粘倍率の上昇およびガラス転移温度の低下が大きく、好ましくない特性であった。表6に示すように、構成要素[C]の含有量が大きい比較例21は、粘度上昇の割合が大きく、好ましくない特性であった。
【0077】
<比較例22〜24>
表6に示すように、構成要素[A]、[C]および[D]のみで構成されるエポキシ樹脂組成物を評価した結果、増粘倍率が高く、好ましくない結果であった。
【0078】
<比較例25〜27>
表6に示すように、構成要素[B]に含まれない化合物Xを硬化剤として用いた結果、増粘倍率が高く、好ましくない結果であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3-1】
【0082】
【表3-2】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
短時間で硬化可能な優れた硬化性と保存安定性および耐熱性に優れた繊維強化複合材料を製造するためのエポキシ樹脂組成物およびそれを用いたプリプレグ、繊維強化複合材料を提供する。少なくともエポキシ樹脂[A]、示差走査熱量計により測定される発熱開始温度が、構成要素[C]の発熱開始温度より高い硬化剤[B]、式(a)で表される化合物[C]を含み、各構成要素の配合割合が(1)と(2)を満たすエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いたプリプレグ、繊維強化複合材料である。