(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施形態に係る触覚提示装置及び振動装置を説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る触覚提示装置10及び振動装置20の斜視図である。
図2は、
図1に示す振動装置20の平面図である。
図2は、振動板21を透視した図である。
【0028】
触覚提示装置10は、タッチセンサ式のキーボードを構成している。触覚提示装置10は、制御部11、駆動部12、振動装置20、およびタッチパネル30を備えている。
【0029】
振動装置20とタッチパネル30とは、厚み方向に積層されている。タッチパネル30は、振動装置20に対して厚み方向の天面側に配置されている。タッチパネル30は、触覚提示装置10の天面に露出する複数のタッチセンサ31を備えている。複数のタッチセンサ31は、キーボードのキー配列に対応する位置に配している。
【0030】
各タッチセンサ31は、ユーザによるタッチ操作を検出すると、検出信号を制御部11に出力する。制御部11は、いずれかのタッチセンサ31から検出信号が入力されると、駆動部12に制御信号を出力する。駆動部12は、制御部11から制御信号が入力されると、振動装置20の圧電フィルム22に駆動電圧を印加する。
【0031】
振動装置20は、振動板21と圧電フィルム22とスペーサ70とスペーサ75と固定板40とを備えている。
【0032】
なお、圧電フィルム22は本発明の伸縮フィルムの一例に相当する。固定板40は本発明の接触部材の一例に相当する。
【0033】
振動板21は、弾性変形可能な材料で構成される。本実施形態において振動板21の材料は例えばFRP(Fiber Reinforced Plastic)である。
【0034】
なお、振動板21は、金属板、PET、PMMA、ポリカーボネイト(PC)、ガラスエポキシ基板、ガラス等の他の材料を用いてもよい。
【0035】
振動板21は、圧電フィルム22に対して厚み方向の天面側に配置されている。振動板21は、厚み方向から視て矩形状であり、長さ方向に沿う短辺と幅方向に沿う長辺とを有している。また、振動板21は、幅方向から視て、厚み方向の天面側に凸、厚み方向の底面側に凹に湾曲している。
【0036】
振動板21の天面には、接着剤等を介してタッチパネル30が接合されている。振動板21が幅方向から視て湾曲する平板状であるので、タッチパネル30も振動板21と同様に幅方向から視て湾曲する形状となっている。
【0037】
なお、振動装置20は、振動板21を備えず、タッチパネル30を振動板として備えても良い。この構成により振動装置20は、振動板21の厚み分、薄型化を図ることができる。また、この構成により振動装置20は、薄型化できるため、低い電圧で駆動することができる。また、この構成により振動装置20では、タッチパネル30と振動板21とが振動を繰り返すことによって、タッチパネル30と振動板21とを接合する粘着剤又は接着剤が剥がれることを防止できる。また、この構成により振動装置20は、粘着剤又は接着剤によるダンピング(振動減衰)を低減できる。そのため、この構成における振動装置20は、変位量の減少も抑えることができる。
【0038】
圧電フィルム22は、逆圧電効果を有している。圧電フィルム22は例えば、ここでは圧電材料からなるフィルムの両主面それぞれの全面に図示しない電極を設けて構成している。圧電フィルム22の圧電材料は、例えばキラル高分子であるL型ポリ乳酸(PLLA)や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であることが望ましい。
【0039】
なお、PLLAで構成される場合には、
図2に白抜きの矢印で示す主延伸方向に延伸処理が施されたフィルムから、主延伸方向に対して略45°の方向を長さ方向として圧電フィルム22を切り出すことで、圧電フィルム22に長さ方向に伸び縮みするような圧電性を持たせることができる。
【0040】
圧電フィルム22は、振動板21の長さ方向の両端に連結している。圧電フィルム22は、固定端24にて振動板21の底面に張られている。圧電フィルム22と振動板21とにおける長さ方向の両端が、固定端24となっている。すなわち、圧電フィルム22は、2つの固定端24の間に張り渡されている。
【0041】
このため、振動板21には圧電フィルム22から張力が伝わり、厚み方向に撓むように弾性変形している。これにより、振動板21と圧電フィルム22は、幅方向から視て弓状に構成された振動装置20を構成している。
【0042】
そして、スペーサ70の一部とスペーサ75の一部とは、接着剤等により固定板40の上に固定されている。固定板40は、触覚提示装置10の筐体(具体的には底板)に相当する。スペーサ70及びスペーサ75は、振動板21と圧電フィルム22との間に設けられている。これにより、スペーサ70及びスペーサ75は、振動板21と圧電フィルム22との間に所定の間隔の隙間を確保している。
【0043】
次に、
図2及び
図3を用いてスペーサ70の構成について説明する。
【0044】
図3は、
図2に示すS−S線で切断し、矢印の方向から観察した側面図である。なお、スペーサ70とスペーサ75との構成は同じであるため、スペーサ75の説明は省略する。
【0045】
スペーサ70は、例えば、金属、PET、ポリカーボネイト(PC)、ABS樹脂などからなる。
【0046】
スペーサ70は、
図3に示すように、基部25と複数の突起部76とを備えている。基部25は、圧電フィルム22側に設けられた幅方向に長尺な部位である。複数の突起部76は、基部25の天面から振動板21側へ突出する。スペーサ70の天面側に突起部76を設けることにより、振動板21とスペーサ70との接触面積を低減することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、スペーサ70において、第1接触部71Aの厚みと第1接触部71Bの厚みと第2接触部72の厚みと連結部73Aの厚みと連結部73Bの厚みとが異なるが、これに限るものではない。実施の際、スペーサ70において、第1接触部71Aの厚みと第1接触部71Bの厚みと第2接触部72の厚みと連結部73Aの厚みと連結部73Bの厚みとは同じでもよい。
【0048】
ただし、第1接触部71Aの厚みと第1接触部71Bの厚みと第2接触部72の厚みと連結部73Aの厚みと連結部73Bの厚みとが異なる場合、第1接触部71Aの剛性と第1接触部71Bの剛性と第2接触部72の剛性と連結部73Aの剛性と連結部73Bの剛性との差が生じる。そのため、スペーサ70及びスペーサ75では、連結部73A及び連結部73Bが屈曲していなくても良い。
【0049】
これにより、スペーサ70及びスペーサ75の真上に位置する振動板21の領域が指等に押された場合でも、振動装置20は、振動が大きく減衰することを防ぐことができる。なお、突起部76は、より好ましくは、タッチパネル30における、各タッチセンサ31の間のフレーム部分に対向する位置に設けるとよい。
【0050】
なお、振動板21には、スペーサ70及びスペーサ75との接触位置がノードとなるような共振モードが生じやすい。該共振モードの周波数は、振動板21を支持するスペーサ70、75の位置によって適宜の周波数に設定することができる。一般に、指への触覚フィードバックとして優れる(高感度である)振動の周波数は100Hz〜300Hzである。そのため、共振周波数が100Hzよりも低い振動装置20では、スペーサ70及びスペーサ75の長さ方向の位置を調整することによって、振動板21に生じる振動を100Hz〜300Hzの周波数とすることができる。
【0051】
スペーサ70は、
図2、
図3に示すように、固定板40に接触する第1接触部71Aと、固定板40に接触する第1接触部71Bと、圧電フィルム22に接触する第2接触部72と、第1接触部71A及び第2接触部72を連結する連結部73Aと、第1接触部71B及び第2接触部72を連結する連結部73Bと、を有する。スペーサ70は、第1接触部71A及び第1接触部71Bで、接着剤等により固定板40の上に固定されている。
【0052】
第2接触部72の下面は、圧電フィルム22の上面に接触する。第2接触部72の厚みは、圧電フィルム22が固定板40に接触しないよう、第1接触部71A及び第1接触部71Bの厚みより薄くなっている。
【0053】
次に、連結部73Aは、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲している。また、連結部73Bは、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲している。第1接触部71A及び第1接触部71Bの長尺方向と第2接触部72の長尺方向とは異なる直線上にある。
【0054】
なお、この実施形態では、連結部73A及び連結部73Bは、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲しているが、これに限るものではない。実施の際、連結部73A及び連結部73Bは、90°以外の角度、すなわち第2接触部72の長尺方向と交差する方向へ屈曲していてもよい。
【0055】
そのため、連結部73Aの剛性は、第1接触部71Aの剛性より低い。また、連結部73Aの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。同様に、連結部73Bの剛性は、第1接触部71Bの剛性より低い。また、連結部73Bの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。
【0056】
図4(A)(B)は、
図2に示すT−T線における断面図である。
図4(A)は、押圧力が印加されていない状態での振動態様を示す断面図である。
図4(A)の点線は、圧電フィルム22が収縮している時の振動装置20を示している。
図4(B)は、押圧力が印加されている状態での振動態様を示す断面図である。
【0057】
スペーサ70は、振動板21の下面と圧電フィルム22の上面とのそれぞれに接触している。スペーサ70の厚みは、スペーサ70を設けない場合の振動板21と圧電フィルム22との長さ方向の中央での間隔よりも、若干大きい。このため、圧電フィルム22が駆動していない時、スペーサ70が圧電フィルム22を厚み方向の下側に押し込み、圧電フィルム22はスペーサ70との接触位置で下側に凸に折れ曲がっている。
【0058】
圧電フィルム22に交流電圧が印加されて駆動すると、圧電フィルム22には長さ方向の伸縮が繰り返し生じる。すると、圧電フィルム22から振動板21に伝わる張力T1が周期的に変化する。これにより、張力T1における、固定端24の表面に垂直な方向の分力T2も周期的に変化する。すると、
図4(A)中に点線で示すように、振動板21の撓み量が周期的に変化する。
【0059】
すなわち、圧電フィルム22の収縮時には振動板21の長さ方向中央が上方に変位し、圧電フィルム22の伸長時には振動板21の長さ方向中央が下方に変位する。これにより、スペーサ70及びスペーサ75が振動板21と接触する状態を維持するように周期的に上下に変位し、圧電フィルム22が長さ方向中央で屈曲する角度が周期的に変化する。
【0060】
図4(B)は、タッチ操作等による押圧力が印加されている状態での振動装置20の振動態様を説明する側面図である。
【0061】
タッチ操作する指等からの押圧力T3が振動板21に印加されて振動板21が略平坦な形状まで押込まれる状態では、振動装置20の弾性力によって、押圧力T3に対する反力T4が指等に作用する。この状態では、振動板21とともにスペーサ70が下方に押込まれ、押圧力T3が印加されていない時よりも圧電フィルム22が大きく屈曲するようになる。
【0062】
すなわち、押圧力T3が振動板21に印加されて振動板21が略平坦な形状まで押込まれても、スペーサ70が振動板21と圧電フィルム22との間の隙間が潰れることを防ぎ、圧電フィルム22が両固定端24によって張られる状態が維持される。したがって、振動板21が平坦な状態であっても、張力T1の分力T2が、固定端24の表面に垂直な方向に作用する。
【0063】
このため、この状態で圧電フィルム22に交流電圧が印加されて駆動しても、圧電フィルム22から振動板21に伝わる張力T1およびその分力T2が周期的に大きくなり、振動板21が周期的に大きく撓もうとする。このことによって、振動板21を押込む指等に振動板21から伝わる反力T4に周期的な変動が生じる。したがって、触覚提示装置10および振動装置20は、タッチ操作を行うユーザに対して、触覚フィードバックを与えることができる。
【0064】
また、触覚提示装置10および振動装置20では、スペーサ70及びスペーサ75によって振動板21と圧電フィルム22との隙間が潰れることが無い。そのため、振動板21を薄く構成して振動板21の剛性を抑制することができ、振動板21に生じる撓み量を従来よりも大きくすることが可能である。
【0065】
また、以上の構成において、スペーサ70の第1接触部71A及び第1接触部71Bは、固定板40の上に固定されている。スペーサ75の第1接触部71A及び第1接触部71Bも、固定板40の上に固定されている。この構成では、圧電フィルム22が伸縮する時、圧電フィルム22に対して第2接触部72が滑らず、第2接触部72にも振動が伝わってしまう。
【0066】
しかし、連結部73Aの剛性が低いため、連結部73Aが振動によって変形し易い。そのため、振動が第2接触部72から連結部73Aを介して第1接触部71Aへ伝わり難い。同様に、連結部73Bの剛性が低いため、連結部73Bが振動によって変形し易い。そのため、振動が第2接触部72から連結部73Bを介して第1接触部71Bへ伝わり難い。
【0067】
よって、触覚提示装置10および振動装置20は、第1接触部71A及び第1接触部71Bが固定板40の上に固定されていても、振動特性が悪化することを抑制できる。したがって、触覚提示装置10および振動装置20は、スペーサ70及びスペーサ75を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0068】
次に、振動装置20の比較例に係る振動装置120の振動特性について説明する。
【0069】
図5は、
図1に示す振動装置20の比較例に係る振動装置120の平面図である。振動装置120が振動装置20と相違する点は、スペーサ170が連結部173A及び連結部173Bを有する点である。その他の構成については同じであるため、説明を省略する。スペーサ175の構成は、スペーサ170の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0070】
連結部173Aが連結部73Aと相違する点は、屈曲しておらず、太さも細くなっていない点である。連結部173Bが連結部73Bと相違する点は、屈曲しておらず、太さも細くなっていない点である。スペーサ170は、直線形状を有している。
【0071】
そのため、連結部173Aの剛性は、第1接触部71Aの剛性と同じである。また、連結部173Aの剛性は、第2接触部72の剛性と同じである。同様に、連結部173Bの剛性は、第1接触部71Bの剛性と同じである。また、連結部173Bの剛性は、第2接触部72の剛性と同じである。
【0072】
振動装置120では、圧電フィルム22が伸縮する時に圧電フィルム22に接触する第2接触部72が滑らず、第2接触部72に振動が伝わってしまう。そして、連結部173A、173Bの剛性が高いため、その振動が第2接触部72から連結部173A、173Bを介して第1接触部71A及び第1接触部71Bへ伝わり安い。一方、第1接触部71A及び第1接触部71Bが固定板40に固定されている。
【0073】
したがって、振動装置120では、スペーサ170及びスペーサ175によって、振動特性が大幅に悪化する。
【0074】
次に、本発明の第2の実施形態に係る触覚提示装置及び振動装置について説明する。
【0075】
図6は、第2の実施形態に係る振動装置220の平面図である。振動装置220が振動装置20と相違する点は、スペーサ270が連結部273A及び連結部273Bを有する点である。その他の構成については同じであるため、説明を省略する。スペーサ275の構成は、スペーサ270の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0076】
なお、スペーサ270自体が対照になるように、スペーサ275自体が対照になるように、且つスペーサ270及びスペーサ275が互いに対照になるように、連結部273A及び連結部273Bは配置されることが好ましい。連結部273A及び連結部273Bがこのように配置されることによって、振動装置220は、振動の偏りが発生することを抑制することができる。
【0077】
連結部273Aは、ジグザグ波形状を有し、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲している。第1接触部71Aの長尺方向と第2接触部72の長尺方向とは同じ直線上にある。
【0078】
また、連結部273Bは、ジグザグ波形状を有し、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲している。第1接触部71Bの長尺方向と第2接触部72の長尺方向とは同じ直線上にある。
【0079】
なお、ジグザグ波形状とは、複数の屈曲箇所がある形状を指す。ジグザグ波形状は、屈曲箇所が角になっている形状、又はミアンダ形状でもよい。
【0080】
そのため、連結部273Aの剛性は、第1接触部71Aの剛性より低い。また、連結部273Aの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。同様に、連結部273Bの剛性は、第1接触部71Bの剛性より低い。また、連結部273Bの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。
【0081】
この構成においても、圧電フィルム22が伸縮する時、圧電フィルム22に対して第2接触部72が滑らず、第2接触部72にも振動が伝わってしまう。しかし、この構成においても、連結部273A及び連結部273Bの剛性が低く、連結部273A及び連結部273Bが振動によって変形し易い。振動が第2接触部72から連結部273A及び連結部273Bを介して第1接触部71A及び第1接触部71Bへ伝わり難い。
【0082】
したがって、振動装置220と振動装置220を備える触覚提示装置とは、固定板40の上に固定されたスペーサ270及びスペーサ275を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0083】
また、第1接触部71Aの長尺方向と第1接触部71Bの長尺方向と第2接触部72の長尺方向とが同じ直線上にあるため、触覚提示装置10および振動装置220は、スペーサ270及びスペーサ275の配置位置を調整し易い。すなわち、触覚提示装置10および振動装置220は、振動板21に生じる振動の周波数を目的の周波数に調整し易い。
【0084】
なお、この実施形態では、連結部273A及び連結部273Bは、第2接触部72の長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲しているが、これに限るものではない。実施の際、連結部273A及び連結部273Bは、90°以外の角度、すなわち第2接触部72の長尺方向と交差する方向へ屈曲していてもよい。
【0085】
次に、本実施形態に係る振動装置220の振動特性と比較例に係る振動装置120の振動特性とを比較する。
【0086】
図7は、
図6に示す振動装置220の振動板21の変位量と、
図5に示す振動装置120の振動板21の変位量とを比較した図である。
図7は、正弦波200Vp−p(振幅100V)を振動装置220の圧電フィルム22と振動装置120の圧電フィルム22とに印加し、各振動板21の中心の変位をレーザー変位計(キーエンス製)で測定した結果を示している。
【0087】
実験より、振動装置120では、スペーサ170及びスペーサ175を固定板40上に固定することによって振動板21の中心の変位が146.5μmp−pから99.9μmp−pへ30%以上減少することが明らかとなった。すなわち、スペーサ170及びスペーサ175を固定板40上に固定することによって、振動装置120の振動特性が大幅に悪化することが明らかとなった。
【0088】
これに対して、振動装置220では、スペーサ270及びスペーサ275を固定板40上に固定することによって振動板21の中心の変位が146.5μmp−pから144.2μmp−pへと変わり、ほとんど低下しないことが明らかとなった。すなわち、振動装置220では、スペーサ270及びスペーサ275を固定板40上に固定しても、振動板21の中心の変位がほとんど低下せず、振動特性の悪化が抑制されることが明らかとなった。
【0089】
以上のような結果となった理由は、連結部273A及び連結部273Bの剛性が低く、振動が第2接触部72から連結部273A及び連結部273Bを介して第1接触部71A及び第1接触部71Bへ伝わり難いためであると考えられる。
【0090】
したがって、振動装置220と振動装置220を備える触覚提示装置とは、スペーサ270及びスペーサ275を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0091】
次に、本発明の第3の実施形態に係る触覚提示装置及び振動装置について説明する。
【0092】
図8は、第3の実施形態に係る振動装置320の平面図である。振動装置320が振動装置20と相違する点は、スペーサ370が連結部373A及び連結部373Bを有する点である。その他の構成については同じであるため、説明を省略する。スペーサ375の構成は、スペーサ370の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0093】
連結部373Aは、第1接触部71A及び第2接触部72より細い形状を有する。また、連結部373Bは、第1接触部71B及び第2接触部72より細い形状を有する。
【0094】
そのため、連結部373Aの剛性は、第1接触部71Aの剛性より低い。また、連結部373Aの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。同様に、連結部373Bの剛性は、第1接触部71Bの剛性より低い。また、連結部373Bの剛性は、第2接触部72の剛性より低い。
【0095】
この構成においても、圧電フィルム22が伸縮する時、圧電フィルム22に対して第2接触部72が滑らず、第2接触部72にも振動が伝わってしまう。しかし、この構成においても、連結部373A及び連結部373Bの剛性が低く、連結部373A及び連結部373Bが振動によって変形し易い。振動が第2接触部72から連結部373A、373Bを介して第1接触部71A及び第1接触部71Bへ伝わり難い。その結果、振動装置320は、振動の大きさを維持しながら固定板40と第1接触部71A及び第1接触部71Bとの接合箇所にかかる負荷を軽減することができる。
【0096】
したがって、振動装置320と振動装置320を備える触覚提示装置とは、固定板40の上に固定されたスペーサ370及びスペーサ375を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0097】
次に、本発明の第4の実施形態に係る触覚提示装置及び振動装置について説明する。
【0098】
図9は、第4の実施形態に係る振動装置420の平面図である。振動装置420が
図6に示す振動装置220と相違する点は、圧電フィルム421及び圧電フィルム422を備える点、スペーサ470及びスペーサ475を備える点である。その他の構成については同じであるため、説明を省略する。
【0099】
圧電フィルム421の幅は、
図9に示すように、圧電フィルム22の幅より短い。圧電フィルム421のその他の構成は圧電フィルム22の構成と同じである。圧電フィルム422の構成は、圧電フィルム421の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0100】
スペーサ470は、
図9に示すように、固定板40に接触する第1接触部71Aと、固定板40に接触する第1接触部71Bと、固定板40に接触する第1接触部71Cと、圧電フィルム421に接触する第2接触部472Aと、圧電フィルム422に接触する第2接触部472Bと、第1接触部71A及び第2接触部472Aを連結する連結部273Aと、第1接触部71B及び第2接触部472Bを連結する連結部273Bと、第1接触部71C及び第2接触部472Aを連結する連結部273Cと、第1接触部71C及び第2接触部472Bを連結する連結部273Dと、を有する。
【0101】
スペーサ470は、第1接触部71A、第1接触部71B及び第1接触部71Cで、接着剤等により固定板40の上に固定されている。
【0102】
第2接触部472Aの下面は、圧電フィルム421の上面に接触する。第2接触部472Bの下面は、圧電フィルム422の上面に接触する。第2接触部472A及び第2接触部472Bの厚みは、圧電フィルム421及び圧電フィルム422が固定板40に接触しないよう、第1接触部71A、第1接触部71B、及び第1接触部71Cの厚みより薄くなっている。
【0103】
連結部273Dの構成は、連結部273Aの構成と同じである。即ち、連結部273Dは、前述のジグザグ波形状を有する。連結部273Cの構成は、連結部273Bの構成と同じである。即ち、連結部273Cは、前述のジグザグ波形状を有する。ここで、ジグザグ波形状とは、複数の屈曲箇所がある形状を指す。ジグザグ波形状は、屈曲箇所が角になっている形状、又はミアンダ形状でもよい。
【0104】
そのため、連結部273Aの剛性は、第1接触部71Aの剛性より低い。また、連結部273Aの剛性は、第2接触部472Aの剛性より低い。同様に、連結部273Bの剛性は、第1接触部71Bの剛性より低い。また、連結部273Bの剛性は、第2接触部472Bの剛性より低い。同様に、連結部273Cの剛性は、第1接触部71Cの剛性より低い。また、連結部273Cの剛性は、第2接触部472Aの剛性より低い。同様に、連結部273Dの剛性は、第1接触部71Cの剛性より低い。また、連結部273Dの剛性は、第2接触部472Bの剛性より低い。
【0105】
なお、スペーサ475の構成は、スペーサ470の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0106】
この構成においても、圧電フィルム421及び圧電フィルム422が伸縮する時、圧電フィルム421及び圧電フィルム422に対して第2接触部472A及び第2接触部472Bが滑らず、第2接触部472A及び第2接触部472Bにも振動が伝わってしまう。
【0107】
しかし、この構成においても、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dの剛性が低く、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dが振動によって変形し易い。そのため、振動が第2接触部472Aから、連結部273A及び連結部273Cを介して、第1接触部71A及び第1接触部71Cへ伝わり難い。同様に、振動が第2接触部472Bから、連結部273B及び連結部273Dを介して、第1接触部71B及び第1接触部71Cへ伝わり難い。
【0108】
したがって、振動装置420と振動装置420を備える触覚提示装置とは、固定板40の上に固定されたスペーサ470及びスペーサ475を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0109】
また、第1接触部71Aの長尺方向と第1接触部71Bの長尺方向と第1接触部71Cの長尺方向と第2接触部472Aの長尺方向と第2接触部472Bの長尺方向とが同じ直線上にあるため、振動装置420は、スペーサ270及びスペーサ275の配置位置を調整し易い。すなわち、振動装置420と振動装置420を備える触覚提示装置とは、振動板21に生じる振動の周波数を目的の周波数に調整し易い。
【0110】
また、スペーサ470自体が対照になるように、スペーサ475自体が対照になるように、且つスペーサ470及びスペーサ475が互いに対照になるように、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dは配置されることが好ましい。連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dがこのように配置されることによって、振動装置420は、振動の偏りが発生することを抑制することができる。
【0111】
なお、この実施形態では、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dは、第2接触部472Aの長尺方向と直交する長さ方向へ屈曲しているが、これに限るものではない。実施の際、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dは、90°以外の角度、すなわち第2接触部472Aの長尺方向と交差する方向へ屈曲していてもよい。
【0112】
次に、本発明の第5の実施形態に係る触覚提示装置及び振動装置について説明する。
【0113】
図10は、第5の実施形態に係る振動装置520の平面図である。振動装置520が
図9に示す振動装置420と相違する点は、第1接触部71Cが2つの第1接触部71D及び第1接触部71Eに分離した点である。その他の構成については同じであるため、説明を省略する。
【0114】
この構成において、連結部273Cの剛性は、第1接触部71Dの剛性より低い。また、連結部273Dの剛性は、第1接触部71Eの剛性より低い。
【0115】
この構成においても、圧電フィルム421及び圧電フィルム422が伸縮する時、圧電フィルム421及び圧電フィルム422に対して第2接触部472A及び第2接触部472Bが滑らず、第2接触部472A及び第2接触部472Bにも振動が伝わってしまう。
【0116】
しかし、この構成においても、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dの剛性が低く、連結部273A、連結部273B、連結部273C及び連結部273Dが振動によって変形し易い。そのため、振動が第2接触部472Aから、連結部273A及び連結部273Cを介して、第1接触部71A及び第1接触部71Dへ伝わり難い。同様に、振動が第2接触部472Bから、連結部273B及び連結部273Dを介して、第1接触部71B及び第1接触部71Eへ伝わり難い。
【0117】
したがって、振動装置520と振動装置520を備える触覚提示装置とは、振動装置420と同様の効果を奏する。すなわち、振動装置520と振動装置520を備える触覚提示装置とは、固定板40の上に固定されたスペーサ570及びスペーサ575を備えていても、振動特性が悪化することを抑制できる。
【0118】
なお、前記実施形態において、振動装置20,振動装置220,振動装置320、振動装置420及び振動装置520は、触覚提示装置10に利用されているが、これに限るものではない。実施の際、振動装置20,振動装置220,振動装置320、振動装置420及び振動装置520は、例えば平面型スピーカなどに利用されてもよい。
【0119】
また、前記実施形態では、スペーサ70、スペーサ75、スペーサ270、スペーサ275、スペーサ370、スペーサ375、スペーサ470、スペーサ475、スペーサ570及びスペーサ575が、第1接触部71A及び第1接触部71Bで、接着剤等により固定板40の上に固定されているが、これに限るものではない。実施の際、例えばスペーサ70、スペーサ75、スペーサ270、スペーサ275、スペーサ370、スペーサ375、スペーサ470、スペーサ475、スペーサ570及びスペーサ575は、第1接触部71A及び第1接触部71Bで、固定板40の上に載置されているだけでもよい。
【0120】
また、前記実施形態では、連結部73A及び連結部73Bが屈曲することで剛性を低下させているが、これに限るものではない。実施の際、連結部を剛性の低い材料で形成することで、連結部の剛性が第1接触部および第2接触部の少なくともいずれか一方の剛性より低くてもよい。
【0121】
また、前記実施形態では、振動板21の両端と圧電フィルム22の両端とを固定端24として連結しているが、これに限るものではない。同様に、振動板21の両端と圧電フィルム421の両端と圧電フィルム422の両端とを固定端24として連結しているが、これに限るものではない。実施の際、例えば、振動板と圧電フィルムとを長さ方向の一端側でのみ直接連結させ、長さ方向の他端側は支持部材等を介して連結させてもよい。
【0122】
また、前記実施形態では、単層の圧電フィルム22を振動板21に張り渡すように構成しているが、これに限るものではない。同様に、単層の圧電フィルム421と単層の圧電フィルム422とを振動板21に張り渡すように構成しているが、これに限るものではない。実施の際、圧電フィルム22、圧電フィルム421、及び圧電フィルム422のそれぞれを別のフィルムに貼り付け、その別のフィルムを振動板21に張り渡すように構成してもよい。
【0123】
また、前記実施形態では、スペーサ70、スペーサ75、スペーサ270、スペーサ275、スペーサ370、スペーサ375、スペーサ470、スペーサ475、スペーサ570及びスペーサ575が基部25と突起部76とを有しているが、これに限るものではない。実施の際、例えば、スペーサ70を突起部76の無い形状としてもよい。また、スペーサ70の基部25は直方体状とは異なる形状であってもよい。
【0124】
また、前記実施形態において、伸縮フィルムの一例として圧電フィルム22、圧電フィルム421、及び圧電フィルム422を用いているが、これに限るものではない。実施の際、伸縮フィルムは例えば、電歪フィルム、エレクトレットフィルム、圧電セラミック、圧電粒子を高分子に分散させたコンポジットフィルム、または電気活性高分子フィルム等で構成することもできる。
【0125】
ここで、電気活性高分子フィルムとは、電気的駆動によって応力を発生するフィルム、または電気的駆動によって変形して変位を発生するフィルムである。具体的には、電歪フィルム、コンポジット材料(圧電セラミックスを樹脂モールドした材料)、電気駆動型エラストマー、または液晶エラストマー等がある。
【0126】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の範囲とを含む。