(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るナノカーボンの分離方法及び精製方法、並びに分散液について説明する。本実施形態において、ナノカーボン材料とは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノツイスト、グラフェン、フラーレンなどを含めた主に炭素により構成されている炭素材料を意味する。ナノカーボンの一例として、単層カーボンナノチューブを包含する分散液から半導体型を持つ単層カーボンナノチューブと、金属型を持つ単層カーボンナノチューブと、を分離する場合について詳述する。
【0013】
(1)単層カーボンナノチューブ
単層カーボンナノチューブは、チューブの直径、巻き方によって金属型と半導体型という2つの異なる性質に分かれることが知られている。現在知られている製造方法を用いて単層カーボンナノチューブを合成すると、金属的な性質を有する単層カーボンナノチューブ(以下、金属型の単層カーボンナノチューブと記す)と半導体的な性質を有する単層カーボンナノチューブ(以下、半導体型の単層カーボンナノチューブと記す)が統計的に1:2の割合で含まれる単層カーボンナノチューブの混合材料が得られる。
【0014】
なお、以下では、金属型の単層カーボンナノチューブと半導体型の単層カーボンナノチューブとが混合した単層カーボンナノチューブことを、単層カーボンナノチューブ混合物と記す。単層カーボンナノチューブ混合物は、金属型の単層カーボンナノチューブと半導体型の単層カーボンナノチューブとを含むものであれば特に制限されない。また本実施形態における単層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ単体であってもよいし、一部の炭素が任意の官能基で置換された単層カーボンナノチューブや、任意の官能基で修飾された単層カーボンナノチューブであってもよい。
以降では、単層カーボンナノチューブ混合物が分散媒に分散した分散液を、半導体型を持つ単層カーボンナノチューブと、金属型を持つ単層カーボンナノチューブと、に分離する一例について詳述する。
【0015】
(2)単層カーボンナノチューブ混合物の分散液
本実施形態における単層カーボンナノチューブ混合物の分散液は、単層カーボンナノチューブ混合物が分散媒に分散した液体である。分散液の分散媒には、水もしくは重水を用いることが好適である。しかし、単層カーボンナノチューブを分散させることができる分散媒であれば、有機溶媒、イオン液体などの分散媒を用いても良い。分散媒中に単層カーボンナノチューブ混合物を分散させる補助材料として、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、その他の分散補助剤などを用いてもよい。特に、非イオン性界面活性剤を用いることが好適である。非イオン性界面活性剤については後述する。分散液の調製方法についても後述する。
【0016】
次に、本実施形態において使用する分離装置について説明する。
図1は、本実施形態における分離装置である。この分離装置は、I字型構造を有する電気泳動槽10と、電気泳動槽10内の上部に配置された電極20と、電気泳動槽10内の下部に配置された電極30と、電気泳動槽10内に液体を注入する注入口40と、液体を電気泳動槽10から回収する回収口50と、を有する。
【0017】
電気泳動槽10は、液体を収容可能な空間を有する。電気泳動槽10内に分離対象である単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を注入し、カーボンナノチューブ混合物の分離を行う。電気泳動槽10の材質は、絶縁性の材質であればよい。例えば、電気泳動槽10の材質として、ガラス、石英、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0018】
電極20と電極30とに電圧を印加すると、単層カーボンナノチューブ混合物が、金属型の単層カーボンナノチューブと、半導体型のカーボンナノチューブと、に分離する。金属型の単層カーボンナノチューブは、陰極近傍に集まる。一方、半導体型の単層カーボンナノチューブは陽極近傍に集まる。このため、電極20及び電極30を、電気泳動槽10の上端部と下端部とに配置することが望ましい。電気泳動槽10の下部に陽極を配置し、電気泳動槽10の上部に陰極を配置することがより好ましい。電極30を陽極、電極20を陰極とした場合、電界Zが電気泳動槽10の下方から上方へ向かう。一方、電気泳動槽10の下部に配置された電極30を陰極、電気泳動槽10の上部に配置された電極20を陽極とした場合、電界Zが電気泳動槽10の上方から下方へ向かう。
ここで、上下とは、分離装置1を使用可能な状態で設置した場合での、重力方向の上を上、重力方向の下を下と示す。電極20、30の材料は、白金などを用いることができる。
【0019】
注入口40は、電気泳動槽10内に液体を注入するための開口である。本実施形態における注入口40は電気泳動槽10の上端に設けられた開口である。
回収口50は、液体を電気泳動槽10から回収するための開口である。回収口50は電気泳動槽10の下端に設けてもよい。回収口50を複数有する場合、それぞれの回収口は電極20、30の近傍に設けることが好ましい。分離された金属型の単層カーボンナノチューブは陰極近傍に移動し、半導体型の単層カーボンナノチューブは陽極近傍に移動するので、移動した単層カーボンナノチューブを効率的に回収することができる。
【0020】
図1に示す一例では注入口40と回収口50とを有する構成を示したが、分離装置1の構成はこれに限定されるものではない。例えば、注入口40は、回収口50を兼ねてもよい。
【0021】
次に、本実施形態に係る分離方法を説明する。
図2は、本実施形態における分離方法のフローチャートである。
【0022】
まず、第1のステップ(S1)では、互いにpHの異なる複数の液体を準備する。複数の液体のうち少なくとも1つは、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液である。pHの異なる複数の液体は、所定の溶質が所定の溶媒に含有された液体である。所定の溶質としては、例えば、界面活性剤を用いることができる。また、所定の溶媒としては、水、重水を用いることができる。溶質である界面活性剤の濃度を調整することによって、pHの調製ができる。例えば、溶媒に重水を、溶質として界面活性剤として非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])を用いることができる。この場合、室温(25℃)においてBrij700の1wt%水溶液は、Brij700の0.5wt%水溶液よりもpHが小さくなる。
次に、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を得る方法は特に限定されず、既知の方法を適用することができる。例えば、単層カーボンナノチューブ混合物と分散媒を混合し、超音波処理を行うことで単層カーボンナノチューブ混合物を分散媒に分散させる。または、機械的なせん断力により単層カーボンナノチューブを分散媒に分散させることもできる。分散液は、単層カーボンナノチューブ混合物と分散媒との他に界面活性剤等の分散補助剤を含んでもよい。
【0023】
次に、第2のステップ(S2)では、液体のpHが重力方向の下から上へ向かって増加するように、第1のステップで準備した液体を電気泳動槽10へ注入する。その際、液体が単層カーボンナノチューブを含むか否かに拘わらない。具体的には、準備した液体のうち、pHが最小の液体を電気泳動槽10へ注ぐ。次に、準備した液体のうち2番目にpHが大きい液体を電気泳動槽10へ注ぐ。以下、pHの小さい液体から順に電気泳動槽10へ注ぐ。これにより、電気泳動槽中に、液体のpHが重力方向の下から上へ向かって増加するpH勾配を形成することができる。
【0024】
第3のステップ(S3)では、電気泳動槽へ直流電圧を印加する。液体中に分散したカーボンナノチューブ混合物のうち金属型の単層カーボンナノチューブが陰極近傍に移動し、半導体型の単層カーボンナノチューブが陽極側に移動する。この結果、液体中に分散したカーボンナノチューブ混合物を金属型と半導体型とに分離することができる。非イオン性界面活性剤が溶解した液体を用いる場合、金属型の単層カーボンナノチューブは液体中で正電荷を帯び、半導体型の単層カーボンナノチューブは極めて弱い負電荷を持つ。また、電圧印加後には、半導体型の単層カーボンナノチューブは金属型の単層カーボンナノチューブに比べpHが大きくなる傾向にある。このpHの差によって生じる移動力と、電界と電荷とにより生じる電気泳動力と、の合力により単層カーボンナノチューブ混合物が金属型と半導体型とに分離される。
印加する電圧は、分散媒の組成及び単層カーボンナノチューブ混合物の電荷量により最適な値を決定する必要がある。水及び重水などを分散媒として用いた場合、最も離れた電極間に加える印加電圧は0Vより大きく、1000V以下(0〜1000V)の間の任意の値とすることが可能である。特に水・重水では電気分解の効果を抑えるため、0Vより大きく、120V以下(0〜120V)の範囲において電圧を印加することが望ましい。
【0025】
最後に、第4のステップ(S4)では、分離後の液体を回収する。電圧を印加した状態で、回収口50から回収を行う。なお、回収はそれぞれの試料を拡散混合しないならば、どのような手段を用いても良い。例えば、電圧の印加をやめ、静かにピペットにより1mL毎に吸い出す方法、分離流路に対して仕切り板を挿入し各ブロックの液体を回収する方法を用いてもよい。
【0026】
以上により単層カーボンナノチューブ混合物を、金属型の単層カーボンナノチューブと、半導体型の単層カーボンナノチューブと、に分離することができる。なお、第4のステップで得た回収液を用いて、第1のステップから第4のステップを繰り返し実行してもよい。繰り返し行うことにより、金属型の単層カーボンナノチューブおよび半導体型の単層カーボンナノチューブの純度を向上させることができる。
【0027】
なお、以上では単層カーボンナノチューブ混合物を、金属型の単層カーボンナノチューブと、半導体型の単層カーボンナノチューブと、に分離する一例について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、電気泳動槽10内で分離させた後、目的の性質を持つ単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
【0028】
回収した試料の分離効率は、顕微Raman分光分析法(Radial Breathing Mode(RBM)領域のRamanスペクトルの変化、BWF領域のRamanスペクトル形状の変化)、及び紫外可視近赤外吸光光度分析法(吸収スペクトルのピーク形状の変化)などの手法により評価することができる。また、単層カーボンナノチューブの電気的特性について評価することによっても分離効率を評価することが可能である。例えば、電界効果トランジスタを作製して、そのトランジスタ特性を測定することによって試料の評価を行うことができる。
【0029】
上記の説明では非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])を用いる例を説明した。しかし、非イオン性界面活性剤はこれに限定させるものではない。
非イオン性界面活性剤として、イオン化しない親水性部位とアルキル鎖など疎水性部位で構成されている非イオン性界面活性剤を1種類もしくは複数組み合わせて用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系に代表されるポリエチレングリコール構造を有する非イオン性界面活性剤や、アルキルグルコシド系非イオン性界面活性剤などを用いることができる。また、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)で規定される非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。例えば、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35[商品名])、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Brij97[商品名])、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56[商品名])、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(Brij76[商品名])、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij98[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])などを用いることができる。
【0030】
図3、
図4に分離装置1の変形例を示す。
図3に示す分離装置1Aは、I字型構造を有する電気泳動槽10と、電気泳動槽10内の上部に配置された電極20と、電気泳動槽10内の下部に配置された電極30と、注入口40と、電極20の近傍に設けられた回収口50と、電極30の近傍に設けられた回収口60と、を有する。回収口40は、電気泳動槽10の高さ方向半分より上側であって、回収口50よりも下側の位置に設けられる。
【0031】
図4に示す分離装置1Bは、U字型構造を有する。分離装置1Cの電気泳動槽10Aは、両端が上方に開口したU字型構造の電気泳動槽10Aを有する。電気泳動槽10Aの両端開口が、注入口40、回収口50となる。U字の一方に電極20を有し、反対側に電極30を有する。なお、一方の電極の高さ位置が、他方の電極の高さ位置よりも高いことが好ましい。陽極が下方に、陰極が上方になるように配置することがより好ましい。
【0032】
以上、単層カーボンナノチューブの金属型および半導体型分離に対して適用できる実施形態を説明したが、他のナノカーボン、すなわち多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、グラフェンなどにも適用できる。
【0033】
本実施形態に係る分離方法を用いることにより、性質の異なるナノカーボンの分離において、分離効率を向上させることができる。
また、本実施形態に係る分離方法を用いることにより、電気泳動槽内で分散液が安定となる。この結果、分離されたナノカーボンの純度を高めることができる。
【0034】
以下に実施形態を示す。以下の実施形態は例示であり、以下の実施形態に発明が限定されるものではない。
(実施形態1)
図5は、本実施形態に示す電気泳動条件の一例を示す概略図である。以下では、
図5を参照して説明する。
(1)分離用の液体の調製
分散媒として、水に、非イオン性界面活性剤であるBrij700を0.25wt%溶解した水溶液を準備した。この分散媒に対して、単層カーボンナノチューブ混合物(eDIPS単層カーボンナノチューブ)を単分散させた。単分散させた液体に対して、ホーン型超音波破砕機(出力約300W、30分間)による超音波分散処理を行った。その後、超遠心分離操作を行い、上澄み50%を分散液(以下、CNT分散液と記す)として得た。
また、水に非イオン性界面活性剤であるBrij700を2wt%溶解した水溶液(以下、Brij2wt%水溶液と記す)と、水を用意した。
液体のpHは、Brij2wt%水溶液が最も小さく(pH4〜4.5)、次いでCNT分散液(pH6〜7)であった。
【0035】
(2)液体の注入
調製した液体を、
図5に示す分離装置100の電気泳動槽101に注入した。まず、Brij2wt%水溶液を電気泳動槽101内に注いだ。注いだBrij2wt%水溶液によりBrij2wt%層104が形成された。次いで、Brij2wt%層104の上にCNT分散液105層が積層するように、CNT分散液を分離装置100の電気泳動槽101に静かに注入した。以上により、電気泳動槽101内の液体に、重力方向下から上に向かって増加するpH勾配を形成した。
【0036】
(3)分離操作
分離装置100の下側の電極103(陽極)と上側の電極102(陰極)間に直流電圧(30V)を印加した。
電圧印加終了後、電気泳動槽101における層の形成について確認を行った。分離操作前後の電気泳動槽101の写真を
図6に示す。終状態(最も右側の写真)では、金属型単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(301)と透明な領域(302)、半導体型単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(303)の3層を形成した状態となった。
【0037】
電圧印加終了後、電気泳動槽101の上部より約1mL毎に15フラクションとなるよう回収した。各フラクションは電気泳動槽101の陽極側(下部)から#1、#2、…、#15とした。得られたフラクションについて、pHの測定を行なった。
【0038】
図7は、分離後試料のpH分布を示すグラフである。
図6において、横軸はフラクション、縦軸はpHである。
図7に示すように、フラクション#1からフラクション#15にかけてpHが酸性からアルカリ性へとpHの増加が認められた。電気泳動槽101の陽極側(下部)のフラクション#1〜9においては、pHが5以下であり酸性を示した。フラクション#11〜13でpHが6〜7であった。電気泳動槽101の陰極側(上部)のフラクション#14、15においては、pHが10〜11でありアルカリ性を示した。
【0039】
以下では、顕微Ramanスペクトル分析法と吸光光度分析法とを用い、各分離試料における半導体型・金属型の分離傾向を調べた結果について説明する。
図8は、分離前後の試料におけるRamanスペクトルである。
図8おいて、左側のグラフは波数が100〜300cm
−1の範囲の結果を、右側のグラフは波数が1200〜1680cm
−1の範囲の結果を、それぞれ表わしている。励起光としては514nmを用いた。
【0040】
RBM領域のRamanスペクトルは、ナノチューブの直径が振動するモードであり、100−300cm
−1の低波数領域にあらわれる。
G−bandのRamanスペクトルは、1590cm
−1付近に観測され、グラファイトの物質に共通してあらわれるスペクトルである。グラファイトの場合には、1585cm
−1付近に観測されるが、カーボンナノチューブの場合にはG−bandが2つに分裂し、G+とG−に分裂する。したがって、G−bandが2つのピークをもつように見えればナノチューブがあると判断できる。また、金属型ナノチューブの場合には、半導体型ナノチューブに比べて、G−の振動数が1550cm
−1と大きくずれる。
D−bandのRamanスペクトルは、1350cm
−1付近に観測され、欠陥に起因するスペクトルである。
ゆえに、
図7の左側のグラフからは、RBM(ラジアルブリージングモード)領域のRamanスペクトルが、
図7の右側のグラフからは、G−bandのRamanスペクトル、及びD−bandのRamanスペクトルが、それぞれ読み取ることができる。
【0041】
図8において、符号pristineは、分離前のRamanスペクトルであり、符号F03(フラクション#3)と符号F04(フラクッション#4)は、陽極側(F03、F04)における分離後のRamanスペクトルである。
また
図8において、符号Sは半導体型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが観測される領域であり、符号Mは金属型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが観測される領域であることを表わしている。
図8から、電気泳動槽101に、液体のpHが重力方向の下から上へ向かって増加するように積層して注入した例では、陽極側(F03、F04)において、符号Sの領域に強いピークが観測された。この結果から、陽極側(F03、F04)では、半導体型単層カーボンナノチューブの分離が高純度化されていることが確認された。
図8のグラフ上方に配置した表に示すとおり、その純度は、98.39%(F03)、97.93%(F04)であった。
【0042】
図9は、分離前後の試料における吸光度である。
図9(A)に示す
吸収スペクトルのグラフは、横軸が波長、縦軸が吸光度である。
図9(A)のグラフには、3つの吸光度、すなわち分離前(pristine)の吸光度と、分離後(フラクション#2:F02、フラクション#12:F12)の吸光度が掲載されている。下から順に、F02、pristine、F12の吸光度である。
図9(A)のグラフから、以下の点が明らかとなった。
分離後試料F02の
吸収スペクトルには、一点鎖線による□囲みの領域Sにおいて、半導体型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが観測される。
分離後試料F12の
吸収スペクトルには、一点鎖線による□囲みの領域Mにおいて、金属型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが観測される。
以上の結果より、陰極側(metal)に位置するフラクション#12においては金属型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが高く、陽極側(semicon)に位置するフラクション#2においては半導体型単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークが高くなることが分かった。
【0043】
図9(B)に示すグラフは、各フラクション(#1〜15)における、310nm、503nm、725nm励起時の吸光度である。◇印は310nm励起時の吸光度であり、○印は725nm励起時の吸光度を503nm励起時の吸光度で除した数値である。
各フラクション#1、・・・、#15における310nm励起時の吸光度は、フラクション#2〜#6(半導体型単層カーボンナノチューブ)、フラクション#10〜#15(金属型単層カーボンナノチューブ)において、それぞれピークが認められることから、分離が高純度化されていることが確認できた。
【0044】
図10は、分離操作時の泳動電流の変化を示すグラフである。
図10より、本実施形態においては、泳動電流が時間の経過とともに安定的に漸減していることが分かる。このことから、電気泳動槽101内では対流が抑制された状態で分離が進行していることが推察される。
【0045】
図11は、溶液の界面活性剤の濃度とpHの関係を示すグラフである。
図11は、界面活性剤の濃度を変えることにより、分散液のpHを制御できることを示している。
本発明においては、電気泳動槽101の下方から上方へ向けて、分散液が小さいpHから大きいpHとなるように、電気泳動槽101内にpHの異なる分散液を導入する。これにより、本発明によれば、半導体型・金属型の分離速度を向上させながら上述した評価方法による純度が90%以上となる、半導体型単層カーボンナノチューブを精製できることが確認された。
金属型と半導体型のナノカーボンの分離効率と分離速度をさらに向上させる、ナノカーボンの分離方法、カーボンナノチューブの精製方法及び分散液を提供する。ナノカーボンの分離方法は、ナノカーボンが分散した分散液を用意する工程と、液体のpHが重力方向の下から上へ向かって増加するように、電気泳動槽へ分散液を含む液体を注入する工程と、電気泳動槽の上部と下部とに配置された電極に直流電流を印加する工程と、を有する。