特許第6237970号(P6237970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6237970
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20171120BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60C11/03 300E
   B60C11/03 200A
   B60C11/13 A
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-540809(P2017-540809)
(86)(22)【出願日】2017年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2017013095
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-70353(P2016-70353)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】元満 隆昌
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−213841(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002507(WO,A1)
【文献】 特開平2−299909(JP,A)
【文献】 特開2013−248927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドパターン付き重荷重用空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道線を横切るようにタイヤ赤道線を基準としたタイヤ幅方向の第1の側および第2の側の半トレッド領域に、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した向きに延びて両端を有する直線形状のセンターラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端がタイヤ幅方向の両側にある接地端に開口するショルダーラグ溝であって、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、前記センターラグ溝の端のタイヤ幅方向の位置よりも外側にあり、かつ、タイヤ周方向において、前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝の間に1つずつ設けられたショルダーラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれに設けられ、前記センターラグ溝の端と、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続するように、タイヤ幅方向の外側に湾曲あるいは屈曲した第1溝曲がり部とタイヤ幅方向の内側に湾曲あるいは屈曲した第2溝曲がり部とが配置され、前記第1溝曲がり部で前記ショルダーラグ溝が開口し、前記第2溝曲がり部で前記センターラグ溝が開口し、タイヤ周方向にわたって波形状に形成された一対の周方向主溝と、
前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣り合う一対の隣接センターラグ溝と前記一対の周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、
を含むトレッドパターンを備え、
前記センターラグ溝及び前記周方向主溝の溝幅は、前記ショルダーラグ溝より狭く、
前記センターブロックのそれぞれの領域には、前記周方向主溝の1つと、前記隣接センターラグ溝の1つとに開口し、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い、屈曲部のない曲線状の第1細溝が2つ設けられている、ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記2つの第1細溝は、互いに異なる周方向主溝に開口する、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記2つの第1細溝が前記周方向主溝に開口する前記周方向主溝の部分は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の同じ側に傾斜している、請求項1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記2つの第1細溝は、互いに異なる前記隣接センターラグ溝に開口する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1細溝のそれぞれが開口する前記周方向主溝の部分は、前記第1溝曲がり部の1つである第1溝曲がり部Aと、前記第2溝曲がり部の1つである第2溝曲がり部Bとの間の部分であり、
前記第1溝曲がり部Aは、前記第1細溝のそれぞれが開口する隣接センターラグ溝が前記周方向主溝の1つに開口する前記第2溝曲がり部の1つに対してタイヤ周方向の一方の方向に隣り合う溝曲がり部であり、
前記第2溝曲がり部Bは、前記第1溝曲がり部Aに対してさらに前記一方の方向に隣り合う溝曲がり部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記周方向主溝の最大溝深さは、前記センターラグ溝の最大溝深さよりも浅く、前記センターラグ溝の最大溝深さは、前記ショルダーラグ溝の最大溝深さよりも浅い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1細溝の最大溝深さをD1とし、前記周方向主溝の最大溝深さをD2としたとき、D1/D2は0.2以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1細溝のそれぞれの溝に沿った長さをL1とし、前記センターブロックのタイヤ周方向に沿った長さをL2としたとき、L1/L2は0.5以上1.0以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記周方向主溝のそれぞれは、溝が部分的に浅くなった底上げ部を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記底上げ部において最も浅い溝深さをD3とし、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、D3/Tは0.05以下である、請求項9に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記センターブロックのうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接センターブロックの領域の一方に設けられる前記第1細溝の1つと、他方に設けられる前記第1細溝の1つは、前記センターラグ溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記センターラグ溝の1つの同じ位置で開口する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ショルダーラグ溝のうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接ショルダーラグ溝の間に設けられるタイヤ幅方向の両側のショルダーブロックの領域には、前記ショルダーブロックの領域内で閉塞し、前記周方向主溝の1つに開口する、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い第2細溝が設けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記第2細溝は、前記第1細溝と、前記周方向主溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記周方向主溝の1つの同じ位置で開口する、請求項12に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記第2細溝の溝に沿った長さをL3とし、前記ショルダーブロックのタイヤ幅方向の長さをWsとしたとき、L3/Wsは、0.3以上0.8以下である、請求項12または13に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記センターブロックのうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接センターブロックの領域にそれぞれに設けられる前記第1細溝の1つは、前記センターラグ溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記センターラグ溝の1つの同じ位置で開口し、
前記ショルダーラグ溝のうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接ショルダーラグ溝の間に設けられるタイヤ幅方向の両側のショルダーブロックの領域には、前記ショルダーブロック内で閉塞し、前記周方向主溝の1つに開口する、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い第2細溝が設けられ、
前記隣接センターブロックの領域に設けられる前記第1細溝と前記第2細溝が組となって、前記両側のショルダーブロックの領域の間を延びる1つの連続細溝を形成し、
前記連続細溝の溝に沿った全長をL4とし、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、L4/Tは0.5以上1.1以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項16】
前記周方向主溝及び前記センターラグ溝の溝幅は、7mm以上20mm以下である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項17】
建設用車両または産業用車両に装着される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドパターン付き重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の重荷重用空気入りタイヤは、種々の性能の向上が求められ、この性能向上を実現するように、トレッドパターンは工夫されている。重荷重用タイヤでは、走行中の発熱を抑制する耐発熱性と、悪路走行に対する耐摩耗性を向上させることが好ましい。
【0003】
重荷重用空気入りタイヤにおいて、ブロック剛性の低下による耐摩耗性の悪化をさせることなく、接地面内の泥はけ性を向上させる技術が知られている(特許文献1)。
当該重荷重用空気入りタイヤは、トレッド踏面に、トレッド周方向に連続して延びる二本以上の周溝と、トレッド幅方向に互いに隣接する該周溝のそれぞれに開口する横断溝とで区画されるブロックを有する。前記ブロックに、該ブロックに隣接する前記周溝の溝深さより浅い平均溝深さを有する一本以上の浅溝を設ける。該浅溝の前記平均溝深さは、前記周溝の溝深さの20%より大きく、かつ、該周溝の溝深さの80%未満である。さらに、該浅溝の少なくとも一本は、該ブロックに隣接する前記周溝及び前記横断溝の少なくとも一方に開口する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/002507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記重荷重用空気入りタイヤでは、耐摩耗性の悪化をさせることなく、接地面内の泥はけ性を向上させることはできるが、走行中の発熱に対する耐発熱性と、悪路走行に対する耐摩耗性を向上させることはできない。
【0006】
そこで、本発明は、走行中の発熱を抑制する耐発熱性と、悪路走行に対する耐摩耗性を向上する重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、トレッドパターン付き重荷重用空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道線を横切るようにタイヤ赤道線を基準としたタイヤ幅方向の第1の側および第2の側の半トレッド領域に、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜した向きに延びて両端を有する直線形状のセンターラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端がタイヤ幅方向の両側にある接地端に開口するショルダーラグ溝であって、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、前記センターラグ溝の端のタイヤ幅方向の位置よりも外側にあり、かつ、タイヤ周方向において、前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝の間に1つずつ設けられたショルダーラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれに設けられ、前記センターラグ溝の端と、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続するように、タイヤ幅方向の外側に湾曲あるいは屈曲した第1溝曲がり部とタイヤ幅方向の内側に湾曲あるいは屈曲した第2溝曲がり部とが配置され、前記第1溝曲がり部で前記ショルダーラグ溝が開口し、前記第2溝曲がり部で前記センターラグ溝が開口し、タイヤ周方向にわたって波形状に形成された一対の周方向主溝と、
前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣り合う一対の隣接センターラグ溝と前記一対の周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、
を含むトレッドパターンを備える。
前記センターラグ溝及び前記周方向主溝の溝幅は、前記ショルダーラグ溝より狭く、
前記センターブロックのそれぞれの領域には、前記周方向主溝の1つと、前記隣接センターラグ溝の1つとに開口し、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い、屈曲部のない曲線状の第1細溝が2つ設けられている。
【0008】
前記2つの第1細溝は、互いに異なる周方向主溝に開口する、ことが好ましい。
【0009】
前記2つの第1細溝が前記周方向主溝に開口する前記周方向主溝の部分は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の同じ側に傾斜している、ことが好ましい。
【0010】
前記2つの第1細溝は、互いに異なる前記隣接センターラグ溝に開口する、ことが好ましい。
【0011】
前記第1細溝のそれぞれが開口する前記周方向主溝の部分は、前記第1溝曲がり部の1つである第1溝曲がり部Aと、前記第2溝曲がり部の1つである第2溝曲がり部Bとの間の部分であり、
前記第1溝曲がり部Aは、前記第1細溝のそれぞれが開口する隣接センターラグ溝が前記周方向主溝の1つに開口する前記第2溝曲がり部の1つに対してタイヤ周方向の一方の方向に隣り合う溝曲がり部である。
このとき、前記第2溝曲がり部Bは、前記第1溝曲がり部Aに対してさらに前記一方の方向に隣り合う溝曲がり部である、ことが好ましい。
【0012】
前記周方向主溝の最大溝深さは、前記センターラグ溝の最大溝深さよりも浅く、前記センターラグ溝の最大溝深さは、前記ショルダーラグ溝の最大溝深さよりも浅い、ことが好ましい。
【0013】
前記第1細溝の最大溝深さをD1とし、前記周方向主溝の最大溝深さをD2としたとき、D1/D2は0.2以下である、ことが好ましい。
【0014】
前記第1細溝のそれぞれの溝に沿った長さをL1とし、前記センターブロックのタイヤ周方向に沿った長さをL2としたとき、L1/L2は0.5以上1.0以下である、ことが好ましい。
【0015】
前記周方向主溝のそれぞれは、溝が部分的に浅くなった底上げ部を備える、ことが好ましい。
【0016】
このとき、前記底上げ部において最も浅い溝深さをD3とし、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、D3/Tは0.05以下である、ことが好ましい。
【0017】
前記センターブロックのうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接センターブロックの領域の一方に設けられる前記第1細溝の1つと、他方に設けられる前記第1細溝の1つは、前記センターラグ溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記センターラグ溝の1つの同じ位置で開口する、ことが好ましい。
【0018】
前記ショルダーラグ溝のうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接ショルダーラグ溝の間に設けられるタイヤ幅方向の両側のショルダーブロックの領域には、前記ショルダーブロックの領域内で閉塞し、前記周方向主溝の1つに開口する、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い第2細溝が設けられている、ことが好ましい。
【0019】
このとき、前記第2細溝は、前記第1細溝と、前記周方向主溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記周方向主溝の1つの同じ位置で開口する、ことが好ましい。
【0020】
さらに、このとき、前記第2細溝の溝に沿った長さをL3とし、前記ショルダーブロックのタイヤ幅方向の長さをWsとしたとき、L3/Wsは、0.3以上0.8以下である、ことが好ましい。
【0021】
また、前記センターブロックのうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接センターブロックの領域にそれぞれに設けられる前記第1細溝の1つは、前記センターラグ溝の1つを挟んで互いに連続して延びるように、前記センターラグ溝の1つの同じ位置で開口し、
前記ショルダーラグ溝のうち、タイヤ周方向に隣り合う隣接ショルダーラグ溝の間に設けられるタイヤ幅方向の両側のショルダーブロックの領域には、前記ショルダーブロック内で閉塞し、前記周方向主溝の1つに開口する、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い第2細溝が設けられ、
前記隣接センターブロックの領域に設けられる前記第1細溝と前記第2細溝が組となって、前記両側のショルダーブロックの領域の間を延びる1つの連続細溝を形成している。
このとき、前記連続細溝の溝に沿った全長をL4とし、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、L4/Tは0.5以上1.1以下である、ことが好ましい。
【0022】
前記周方向主溝及び前記センターラグ溝の溝幅は、7mm以上20mm以下である、ことが好ましい。
【0023】
前記重荷重用空気入りタイヤは、建設用車両または産業用車両に装着される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
上述の態様の重荷重用空気入りタイヤによれば、走行中の発熱を抑制する耐発熱性と、悪路走行に対する耐摩耗性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのプロファイル断面の一例を示す図である。
図2】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのトレッドパターンを平面展開視した図である。
図3】(a)〜(e)は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤの摩耗進展に伴うトレッドパターンの変化を説明する図である。
図4】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのトレッドパターンの各寸法を説明する図である。
図5】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤの周方向主溝の底上げ部を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の重荷重用空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以降、タイヤともいう)1のタイヤ回転軸を含み、タイヤ径方向を含む平面でタイヤ1を切断したときのタイヤ1のプロファイル断面の一例を示す図である。
【0027】
本明細書でいう重荷重用空気入りタイヤとは、JATMA(日本自動車タイヤ協会規格) YEAR BOOK 2014のC章に記載されるタイヤの他に、D章に記載される1種(ダンプトラック、スクレーバ)用タイヤ、2種(グレーダ)用タイヤ、3種(ショベルローダ等)用タイヤ、4種(タイヤローラ)用タイヤ、モビールクレーン(トラッククレーン、ホイールクレーン)用タイヤ、あるいはTRA 2013 YEAR BOOKのSECTION 4 あるいは、SECTION 6に記載される車両用タイヤをいう。
【0028】
本明細書では、各方向及び側を以下のように定義する。
タイヤ幅方向は、タイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、比較する位置に対して、タイヤ赤道面を表すタイヤ赤道線CLから離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、比較する位置に対して、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道線CLに近づく側である。タイヤ周方向は、タイヤの回転軸を回転の中心としてタイヤが回転する方向である。タイヤ周方向は、互いに方向の異なる第1の方向と第2の方向を備える。タイヤ径方向は、タイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、比較する位置に対して、タイヤ径方向に沿って前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、比較する位置に対して、タイヤ径方向に沿って前記回転軸に近づく側をいう。
【0029】
(タイヤ構造)
タイヤ1は、構造体として、カーカスプライ3と、ベルト部4と、一対のビードコア5とを有し、これらの構造体の周りに、トレッド部6、サイド部7、ビードフィラー8、インナーライナ9等の各ゴム層を有する。
【0030】
ベルト部4は、一対の第1の交差ベルト層31、一対の第2の交差ベルト層33、および一対の第3の交差ベルト層35と、第2の交差ベルト層33のベルト層間に配されたシート状ゴム37とを含む。第1の交差ベルト層31、第2の交差ベルト層33、および第3の交差ベルト層35はそれぞれ、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが互いに逆向きに傾斜した一対のベルト層であり、タイヤ径方向内側から外側にこの順で配されている。
トレッド部6は、以下に説明するようにトレッドパターン10を備えている。
このようなタイヤ1の構成は、一例であり、タイヤ1は、これ以外の公知の構成を備えてもよい。
【0031】
(トレッドパターン)
トレッド部6は、図2に示されるトレッドパターン10を備えている。図2は、タイヤ1のトレッドパターン10を平面展開した図である。なお、図2において、上下方向はタイヤ周方向であり、左右方向はタイヤ幅方向である。トレッドパターン10のタイヤの回転方向および車両装着時のタイヤ幅方向の向きは、特に指定されない。
【0032】
トレッドパターン10は、センターラグ溝11と、ショルダーラグ溝13と、一対の周方向主溝15と、センターブロック23と、ショルダーブロック27と、を含んでいる。
【0033】
センターラグ溝11は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。センターラグ溝11は、タイヤ赤道線CLを横切るようにタイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側(第1の側および第2の側)の半トレッド領域Ta,Tbに、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜した向きに延びて両端11a,11aを有する。センターラグ溝11は、一対の周方向主溝15の後述する第2溝曲がり部15b同士を接続する。後述するように一対の周方向主溝15はタイヤ周方向における位相が互いに異なって、同じ周期で波形状に延びていることから、センターラグ溝11は、タイヤ幅方向に対し傾斜して延びている。センターラグ溝11は、直線形状の溝である。センターラグ溝11の溝幅は、ショルダーラグ溝13の溝幅よりも狭い。
【0034】
ショルダーラグ溝13は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれに、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。ショルダーラグ溝13は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向の両側の接地端10a,10bのうち近接する方の接地端に開口する。
ここで、接地端10a,10bは以下のように定められる。接地端10a,10bは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重の100%を負荷荷重とした条件において水平面に接地させたときの接地面のタイヤ幅方向端部である。なお、ここでいう正規リムとは、JATMAに規定される「測定リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。なお、接地端10a,10bのタイヤ幅方向位置は、後述するトレッド幅の両端のタイヤ幅方向位置と一致している。
【0035】
タイヤ幅方向の両側に位置するショルダーラグ溝13において、一方の半トレッド領域に配置された1つのショルダーラグ溝13のタイヤ周方向の位置は、他方の半トレッド領域に配置された、隣接する2つのショルダーラグ溝13のタイヤ周方向の位置の間にある。
さらに、ショルダーラグ溝13は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれにおいて、ショルダーラグ溝13が有するタイヤ幅方向内側の端13aのタイヤ幅方向の位置が、センターラグ溝11の端11aのタイヤ幅方向の位置よりもタイヤ幅方向の外側にあり、かつ、ショルダーラグ溝13は、タイヤ周方向において、センターラグ溝11のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝11の間に位置するショルダー領域に1つずつ設けられている。これにより、後述する周方向主溝15は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれにおいて、センターラグ溝11の端11aとショルダーラグ溝13のタイヤ幅方向の内側の端13aを交互に接続して波形状を成す。ショルダーラグ溝13は、図2において、溝が延びる方向に溝幅が変化しているが、一定であってもよい。
【0036】
周方向主溝15は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれに設けられて、対をなしている。周方向主溝15は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれにおいて、センターラグ溝11の端11aと、ショルダーラグ溝13のタイヤ幅方向内側の端13aを交互に接続するように、タイヤ幅方向の外側に湾曲あるいは屈曲した第1溝曲がり部15aと、タイヤ幅方向の内側に湾曲あるいは屈曲した第2溝曲がり部15bとが配置され、タイヤ周方向の全周にわたって波形状に形成されている。これにより、周方向主溝15は、タイヤ幅方向の外側に凸状をなして曲がる第1溝曲がり部15aでショルダーラグ溝13と接続し、タイヤ幅方向の内側に凸状をなして曲がる第2溝曲がり部15bでセンターラグ溝11と接続する。溝が波形状であるとは、溝が蛇行する形状をいう。周方向主溝15は、第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15bをタイヤ周上に複数有し、これらを交互に接続して波形状をなすよう蛇行しながらタイヤ周方向に延びる。
【0037】
第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15b(以下、総称して言うとき、溝曲がり部という)は、屈曲形状であってもよく、丸まった湾曲形状であってもよく、屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものであってもよい。湾曲形状には、屈曲形状の頂部を例えば曲率半径を定めて丸めた形状も含まれる。屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものとは、溝曲がり部の頂部から一方の側が直線状に延びるとともに、頂部から他方の側が湾曲して延びたものをいう。溝曲がり部には、屈曲形状、湾曲形状、これらの組み合わせのうち、互いに同じ形状のものが用いられてもよく、互いに異なる種類の形状のものが用いられてもよい。また、周方向主溝15のうち溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。溝曲がり部と溝曲がり部以外の部分がともに湾曲形状である場合、2つの湾曲形状は同じ曲率半径の湾曲形状であってもよい。
【0038】
周方向主溝15は、図2において、互いに同じ周期でかつタイヤ周方向に位相がずれて波形状に延びている。具体的に、第2溝曲がり部15bのタイヤ周方向の位置は、反対側の半トレッド領域の第2溝曲がり部15bに対してタイヤ周方向に位置ずれしている。なお、周方向主溝15は、互いに同じ周期でかつタイヤ周方向に位相が一致して波形状に延びていてもよく、また、互いに異なる周期で波形状に延びていてもよい。
周方向主溝15の溝幅は、ショルダーラグ溝13よりも溝幅が狭い。このため、走行時のセンターブロック23の接地圧が緩和され、タイヤ1の摩耗寿命が延びる。
【0039】
センターブロック23は、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝11,11と周方向主溝15によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されている。センターブロック23において、タイヤ赤道線CLが通過する。センターブロック23は、センターラグ溝11がタイヤ幅方向に対して傾斜していることで、タイヤ幅方向に対して傾斜した異方性形状を有している。
【0040】
ショルダーブロック27は、半トレッド領域Ta,Tbのそれぞれにおいて、ショルダーラグ溝13のうちタイヤ周方向に隣り合う一対の隣接ショルダーラグ溝13、周方向主溝15、および、トレッド部6のタイヤ幅方向の端(接地端)10a,10b、によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されている。ショルダーブロック27は、図2に示される例において、センターブロック23がタイヤ赤道線CLに対して傾斜する側と異なる側に傾斜している。
【0041】
本実施形態のトレッドパターン10は、以上の基本的な形態に加え、さらに、センターブロック23のそれぞれの領域には、周方向主溝15のいずれか1つと、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝11,11の1つとに開口し、溝幅がショルダーラグ溝13より狭い、屈曲部のない曲線状の2つの第1細溝28a,28bが設けられている。屈曲部のない曲線とは、溝幅の中心位置の、溝に沿った形状曲線に関して、曲率半径が100mm以上の曲線、あるいはそのような複数の曲線を組み合わせてなる曲線を意味する。第1細溝28a,28bの曲線形状は、溝の延在方向に対して右あるいは左の一方の側のみに向かって凸形状となっていることが好ましい。図2に示す例では、第1細溝28aの曲線形状は、図2の紙面右から左の側に溝の延在方向に沿って進む時、第1細溝28aの左側に向かって凸形状を成し、第1細溝28bの曲線形状は、図2の紙面右から左の側に溝の延在方向に沿って進む時、第1細溝28bの右側に向かって凸形状を成している。第1細溝28a,28bは、図2に示す例のように、互いに離間していること、すなわち、互いに交差又は接触していないことが好ましいが、一実施形態によれば、互いに交差又は接触していてもよい。
【0042】
センターブロック23のそれぞれの領域に、屈曲部のない曲線状の2つの第1細溝28a,28bが設けられるので、センターブロック23の広い領域で発生した熱を第1細溝28a,28bを流れる空気により外部に排出することができ、耐発熱性を向上させることができる。しかも、第1細溝28a,28bは、周方向主溝15のいずれか1つと、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝11,11の1つとに開口するので、センターブロック23で発生した熱を外部に排出する空気による放熱性がよりいっそう向上する。また、周方向主溝15は波形状であるので、溝壁面の表面積が増加し、センターブロック23で発生した熱を、周方向主溝15を流れる空気により外部に排出する放熱性が向上して、耐発熱性が向上する。
【0043】
また、第1細溝28a,28bがセンターブロック23の領域に設けられていることで、トレッド部6のタイヤ幅方向においてブロック剛性が均一に近づくため、摩耗の核の形成を抑えて耐摩耗性を向上させることができる。しかも、第1細溝28a,28bは、屈曲部のない曲線状であるので、センターブロック23の領域に応力集中するような屈曲部分が存在せず、摩耗の核の形成を抑えるので、早期摩耗を抑制し、耐摩耗性を向上させることができる。また、センターラグ溝11が直線形状であるので、センターラグ溝11が曲線形状あるいは屈曲形状である場合と比べ、センターブロック23のブロック剛性が局部的に低下する部分がなく、センターブロック23の領域におけるブロック剛性が均一に近づくため、摩耗の核の形成を抑えて耐摩耗性を向上させることができる。また、センターラグ溝11の溝幅は、ショルダーラグ溝13の溝幅よりも狭いため、地面と接触するセンターブロック23の接地面を広くすることができ、接地圧の上昇が緩和され、耐摩耗性が向上する。
【0044】
第1細溝28a,28bは、図2に示すように、互いに異なる周方向主溝15,15に開口することが好ましい。これにより、第1細溝28a,28bを流れる空気は、互いに異なる周方向主溝15,15に流れるので、放熱性をよりいっそう向上させ、耐発熱性を向上させることができる。
【0045】
第1細溝28a,28bが周方向主溝15,15に開口する周方向主溝15,15の部分は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の同じ側に傾斜していることが好ましい。図2に示す例では、第1細溝28a,28bが周方向主溝15,15に開口する部分は、いずれも図2の紙面上方向に対して右上方向に傾斜している。
【0046】
さらに、2つの第1細溝28a,28bは、互いに異なる隣接するセンターラグ溝11に開口することが好ましい。図2に示す例では、第1細溝28aは、センターブロック23に対して図2の紙面上側で接するセンターラグ溝11に開口し、第1細溝28bは、センターブロック23に対して図2の紙面下側で接するセンターラグ溝11に開口している。これにより、第1細溝28a,28bを流れる空気は、互いに異なるセンターラグ溝11に流れるので、放熱性をよりいっそう向上させ、耐発熱性を向上させることができる。
【0047】
第1細溝28a,28bのそれぞれが開口する周方向主溝15,15の部分は、第1溝曲がり部の1つである第1溝曲がり部15a(第1溝曲がり部A)と、第2溝曲がり部の1つである第2溝曲がり部15b(第2溝曲がり部B)との間の部分であることが好ましい。ここで、第1溝曲がり部15aは、第1細溝28a,28bのそれぞれが開口する隣接センターラグ溝11,11が周方向主溝15の1つに開口する第2溝曲がり部15b1(ここでの説明のために、図2において符号15b1で表す)に対してタイヤ周方向の一方の方向(図2において、半トレッド領域Taにおける下方、半トレッド領域Tbにおける上方)に隣り合う溝曲がり部であり、第2溝曲がり部15bは、その第1溝曲がり部15aに対してさらに前記一方の方向に隣り合う溝曲がり部である。いいかえると、第1細溝28a,28bのそれぞれが開口する周方向主溝15,15の部分は、センターブロック23と接する2つの第2溝曲がり部のうち、第1細溝28a,28bのそれぞれが開口する隣接センターラグ溝11が周方向主溝15に開口する第2溝曲がり部15b1と異なる第2溝曲がり部15bと、第1の溝曲がり部15aとの間の部分である。
【0048】
周方向主溝15の最大溝深さは、センターラグ溝11の最大溝深さよりも浅く、センターラグ溝11の最大溝深さは、ショルダーラグ溝13の最大溝深さよりも浅いことが好ましい。これにより、摩耗の進展によって、トレッドパターンは、図3(a)〜(e)に示すような形態に変化する。図3(a)〜(e)は、本実施形態の空気入りタイヤの摩耗進展に伴うトレッドパターンの変化を説明する図である。摩耗初期〜中期段階(図3(a)〜(b)に示す形態)では、センターラグ溝11が周方向主溝15と連通しているので、センターブロック23の空気による放熱を維持することができる。また、図3(d)に示すように、摩耗末期においても、センターラグ溝11が残存しているので、悪路路面におけるトラクション性能を発揮させることができる。
【0049】
また、第1細溝28a,28bの最大溝深さをD1とし、周方向主溝15の最大溝深さをD2としたとき、D1/D2は0.2以下であることが好ましい。D1/D2を0.2より大きくすると、センターブロック23のブロック剛性が低下して耐摩耗性が低下する場合がある。また、D1/D2は0.05以上であることが、第1細溝28a,28bを流れる空気による放熱を機能させる点から好ましい。なお、図1では、D1及びD2の溝深さを、誇張したD1/D2の比で表している。
【0050】
図4に示すように、第1細溝28a,28bのそれぞれの溝に沿った長さをL1とし、センターブロック23のタイヤ周方向に沿った長さをL2としたとき、L1/L2は0.5以上1.0以下であることが好ましい。図4は、トレッドパターン10の要素の各寸法を説明する図である。L1/L2が0.5より小さい場合、第1細溝28a,28bを流れる空気がセンターブロック23の放熱を担う程度が小さくなり、十分な放熱性を得ることはできず、耐発熱性が向上しない場合がある。L1/L2が1.0より大きい場合、2つの第1細溝28a,28bで区画されるセンターブロック23の小ブロック要素のブロック剛性が低下して、耐摩耗性が向上しない場合がある。
【0051】
また、図2に示すように、タイヤ周方向に隣り合う隣接センターブロック23,23の領域の一方に設けられる第1細溝28aと、他方に設けられる第1細溝28bとは、センターラグ溝11を挟んで互いに連続して延びるように、センターラグ溝11の延在方向の同じ位置で開口することが好ましい。これにより、第1細溝28a,28bを空気が円滑に流れることができ、センターブロック23の放熱性を向上させることができる。
【0052】
タイヤ周方向に隣り合う隣接ショルダーラグ溝13,13の間に設けられるタイヤ幅方向の両側のショルダーブロック27の領域には、ショルダーブロック27の領域内で閉塞し、周方向主溝15に開口する第2細溝30a、30bが設けられていることが好ましい。第2細溝30a,30bは、溝幅がショルダーラグ溝13より狭い。この第2細溝30a,30bにより、ショルダーブロック27の放熱性が向上する。
このとき、第2細溝30a,30bは、第1細溝28a,28bとともに、周方向主溝15を挟んで互いに連続して延びるように、周方向主溝15の延在方向の同じ位置で開口することが好ましい。これにより、溝を空気が滑らかに流れるので、ショルダーブロック27の放熱性が向上する。
【0053】
図4に示すように、第2細溝30a,30bの溝に沿った長さをL3とし、ショルダーブロック27のタイヤ幅方向の長さ(ショルダーブロック27のタイヤ幅方向の最内側の端から接地端10a,10bまでのタイヤ幅方向の長さ)をWsとしたとき、L3/Wsは、0.3以上0.8以下であることが好ましい。L3/Wsが0.3より小さい場合、溝壁面の表面積が減少し、ショルダーブロック27の放熱性は低下しやすくなる。L3/Wsが0.8より大きい場合、第2細溝30a,30bが長くなり、ショルダーブロック27のブロック剛性が低下し、耐摩耗性が低下しやすくなる。
【0054】
第1細溝28a,28bのぞれぞれは、センターラグ溝11を挟んで互いに連続して延びるように、センターラグ溝11の延在方向の同じ位置で開口し、タイヤ周方向に隣接するセンターブロック23,23の領域に設けられる第1細溝28a,28bと、ショルダーブロック27の領域に設けられる第2細溝30a,30bとが組となって、両側のショルダーブロック27,27の領域の間を延びる1つの連続細溝を形成することが好ましい。このとき、この連続細溝の溝に沿った全長をL4とし、トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、L4/Tは0.5以上1.1以下であることが好ましい。トレッド幅Tは、タイヤ幅方向の両側の接地端10a,10b間の湾曲するトレッド部6の外形形状に沿ったペリフェリ長をいう。L4/Tが0.5より小さい場合、溝壁面の表面積が減少し、センターブロック23及びショルダーブロック27の放熱性は低下しやすくなる。L4/Tが1.1より大きい場合、第1細溝28a,28b及び第2細溝30a,30bが長くなり、センターブロック23及びショルダーブロック27のブロック剛性が低下し、耐摩耗性が低下しやすくなる。全長L4には、第1細溝28a,28b及び第2細溝30a,30bが交差するセンターラグ溝11、周方向主溝15の溝幅分の長さは含まれない。
【0055】
また、トレッドパターン10は、図5に示されるように、周方向主溝15のそれぞれにおいて、溝が部分的に浅くなった底上げ部15cを備えることが好ましい。図5は、周方向主溝15の底上げ部を説明する断面図である。図5は、図2に示す第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15b間の部分を、周方向主溝15の延びる方向に沿ってタイヤ径方向を含む平面で切断したときの断面を示す。
【0056】
底上げ部15cは、第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15bに形成されている。このように、周方向主溝15が、センターラグ溝11またはショルダーラグ溝13と接続する部分において底上げされていることによって、センターブロック23の第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15b近傍の領域のブロック剛性が向上する。これにより、耐摩耗性が向上する。一方、第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15bの間の領域は、溝深さが深いため、ブロックの冷却効果が大きくなり、放熱性が向上し、耐発熱性が向上する。
【0057】
底上げ部15cは、図5に示されるように一定の溝深さD3を有していてもよく、異なる溝深さを有していてもよい。溝深さD3は、底上げ部15cにおける最も浅い溝深さであり、周方向主溝15の最小溝深さである。異なる溝深さを有する底上げ部としては、例えば、溝底が溝深さ方向に段差を有することで2以上の異なる溝深さを有しているもの、溝が延びる方向に溝深さが連続的に変化しているものが挙げられる。周方向主溝15の延在方向に沿った底上げ部15cの合計の長さは、特に制限されないが、タイヤ幅方向の最も外側に位置する第1溝曲がり部15aの端と、タイヤ幅方向の最も内側に位置する第2溝曲がり部15bの端との間を延びる周方向主溝15の部分の長さのうち、当該部分の両端を含み、かつ、当該部分の溝長さのうちの、例えば計30〜70%の長さの領域に形成される。
【0058】
底上げ部15cは、図5に示される例において、第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15bに形成されているが、周方向主溝15の波形状をなす直線状部分のそれぞれに形成されていてもよい。耐摩耗性を向上させる点から、底上げ部15cは、第1溝曲がり部15aおよび第2溝曲がり部15bに形成されていることが好ましい。
【0059】
本実施形態のタイヤ1は、さらに、底上げ部15cにおける最も浅い溝深さD3及びトレッド部6のタイヤ幅方向のトレッド幅Tに関して、比D3/Tは0.01以上0.05以下であることが好ましい。比D3/Tが0.05以下であることにより、センターブロック23とショルダーブロック27が支えあってブロック剛性が適度な大きさになることで、偏摩耗による早期摩耗の発生を抑えることができる。また、比D3/Tが0.01以上であることにより、良好な耐発熱性を得るのに必要な溝体積を確保することができる。比D3/Tは、より好ましくは、0.048以下である。
【0060】
トレッドパターン10において、周方向主溝15およびセンターラグ溝11の溝幅はそれぞれ7mm以上20mm以下であることが好ましい。これにより、耐発熱性および耐摩耗性をより向上することができる。周方向主溝15およびセンターラグ溝11の溝幅の大きさは、例えば18mmである。なお、周方向主溝15およびセンターラグ溝11の溝幅が上記範囲にあると、タイヤ1がオフロードタイヤとして用いられる場合に好適である。
【0061】
本実施形態のタイヤ1は、建設用車両または産業用車両に装着される場合に好適である。建設用車両または産業用車両は、例えば、JATMAに記載されるダンプトラック、スクレーバ、グレーダ、ショベルローダ、タイヤローラ、ホイールクレーン、トラッククレーン、または、TRAに規定される「COMPACTOR」、「EARTHMOVING」、「GRADER」、「LOADER AND DOZER」等の車両を含む。
【0062】
(実施例、比較例)
本実施形態のタイヤの効果を調べるために、トレッドパターンの異なるタイヤを種々試作し、耐摩耗性と耐発熱性を調べた。試作したタイヤは、33.00R51である。リムサイズ51×24−5.0(TRA規定リム)に装着し、700kPa(TRA規定空気圧)を、空気圧とした。
耐摩耗性については、150トン用ダンプトラックを用いて、同じ悪路(オフロード)路面の走行を速度50km/時で3000時間行ない、センターブロック23周りの摩耗量を測定して、耐摩耗性を評価した。耐摩耗性の評価では、摩耗量の逆数を、比較例を基準(指数100)として指数化した。耐摩耗性の指数が高いほど、耐摩耗性が高いことを意味する。
一方、耐発熱性については、TRAの規格荷重(38750kgf)の110%を負荷荷重として、室内ドラムで速度5km/時から、12時間ごとに速度を1km/時ずつ増加させて、タイヤが熱により破壊されるまでの走行時間を測定した。したがって、耐発熱性は、溝内の空気の流れによる放熱性の効果も含んでいる。耐発熱性の評価では、測定した走行時間を、比較例を基準(指数100)として指数化した。耐発熱性の指数が高いほど、耐発熱性が高いことを意味する。
【0063】
試作したタイヤは、比較例と、実施例1〜27である。
実施例1〜27は、図2に示すトレッドパターン10を基準として、各表に記載の仕様に合わせて変更したトレッドパターンである。比較例は、図2に示すトレッドパターン10において、第1細溝28a,28b及び第2細溝30a,30bを有しないトレッドパターンである。また、比較例及び実施例1〜9において、周方向主溝には底上げ部を設けず、その溝深さは一定の溝深さとした。実施例1〜27及び比較例の溝幅、溝深さ、及び溝長さの寸法は、各仕様で制限されない限り、同じ値に揃えた。
【0064】
表1〜6は、比較例及び実施例1〜27の各仕様とその評価結果を示す。
表中の“第1細溝同士は連続形状か否か?”は、タイヤ周方向に隣接する隣接センターブロック23の領域の一方に設けられる第1細溝28aと、他方に設けられる第1細溝28bが、1つの連続形状の細溝を形成するように、第1細溝28aと第1細溝28bは、隣接センターブロック23,23の間にあるセンターラグ溝11の延在方向の同じ位置で開口しているか否かを意味する。表中の“第1細溝は第2細溝と連続形状か否か?”は、第1細溝28a、28bと第2細溝30a、30bが、1つの連続形状の細溝を形成するように、周方向主溝15の延在方向の同じ位置で開口しているか否かを意味する。“連続形状”でない場合、開口の位置は、第1細溝28a,28b及び第2細溝30a,30bの溝幅のそれぞれの長さの2倍の距離位置ずれしている。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
表1より、センターブロック23の領域に、第1細溝28a,28bを設けることにより、耐摩耗性及び耐発熱性が向上することがわかる。また、表1の実施例1〜4より、D1/D2は、0.2以下であることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上、特に耐摩耗性の向上の点から好ましいことがわかる。
表2より、L1/L2は0.5〜1.0であることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上の点から好ましいことがわかる。
表3より、D3/Tは0.05以下、好ましくは0.048以下であることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上、特に耐摩耗性の向上の点から好ましいことがわかる。
表4より、L3/Wsは0.3〜0.8であることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上、特に耐摩耗性の向上の点から好ましいことがわかる。
表5より、ショルダーブロック27の領域に、第2細溝30a,30bが設けられること、さらに、第1細溝28a,28b同士を連続形状の細溝とすることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上、特に耐摩耗性の向上の点から好ましいことがわかる。
表5の実施例21及び表6の実施例22の比較より、第1細溝28a,28bと第2細溝30a,30bを1つの連続形状の細溝とすることが、耐発熱性の向上の点から好ましいことがわかる。
表6より、L4/Tは0.5〜1.1であることが、耐摩耗性及び耐発熱性の向上の点から好ましいことがわかる。
【0072】
以上、本発明の重荷重用空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明の重荷重用空気入りタイヤは上記実施形態あるいは実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
1 重荷重用空気入りタイヤ
3 カーカスプライ
4 ベルト部
5 ビードコア
6 トレッド部
7 サイド部
8 ビードフィラー
9 インナーライナ
10 トレッドパターン
10a,10b 接地端
11 センターラグ溝
11a 端
13 ショルダーラグ溝
13a 端
15 周方向主溝
15a 第1溝曲がり部
15b 第2溝曲がり部
15c 底上げ部
23 センターブロック
27 ショルダーブロック
28a,28b 第1細溝
30a,30b 第2細溝
31 第1の交差ベルト層
33 第2の交差ベルト層
35 第3の交差ベルト層
37 シート状ゴム
【要約】
走行中の発熱を抑制する耐発熱性と、悪路走行に対する耐摩耗性を向上する重荷重用空気入りタイヤを提供する。重荷重用空気入りタイヤのトレッドパターンは、一対の波形状の周方向主溝と、周方向主溝の外側に凸となる第1溝曲がり部に接続し、接地端までタイヤ幅方向に延びるショルダーラグ溝と、周方向主溝の内側に凸となる第2溝曲がり部間を接続するセンターラグ溝と、センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣り合う一対の隣接センターラグ溝と周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、を備える。前記センターラグ溝及び前記周方向主溝の溝幅は、前記ショルダーラグ溝より狭く、前記センターブロックのそれぞれの領域には、前記周方向主溝の1つと、前記隣接センターラグ溝の1つとに開口し、溝幅が前記ショルダーラグ溝より狭い、屈曲部のない曲線状の第1細溝が2つ設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5