(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動電極板は、前記振動電極板に形成したスリットによって、前記第1センシング部を構成する領域と前記第2センシング部を構成する領域に分割されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記固定電極板は、前記基板の上方から見て、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域と重なり合わない位置に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記振動電極板は、前記空洞の上面開口の縁よりも前記空洞の内側へずれた位置で、前記第1センシング部を構成する領域と前記第2センシング部を構成する領域に分割されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記振動電極板の、前記第1センシング部を構成する領域と前記第2センシング部を構成する領域とが、部分的に連続していることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域は、基板の上面に設けられた固定部によって外周縁下面を支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域の面積は、前記振動電極板の前記第1センシング部を構成する領域の面積よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域は、比較的面積の大きな領域と比較的面積の小さな領域にさらに分割されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
前記回路部は、前記第1センシング部の出力信号又は前記第2センシング部の出力信号のうちいずれか一方の出力信号の位相を反転させる位相反転用回路を備えていることを特徴とする、請求項12に記載のマイクロフォン。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などに搭載される小型のマイクロフォンとしては、これまではエレクトレット・コンデンサマイク(Electret Condenser Microphone)が広く使用されてきた。しかし、エレクトレット・コンデンサマイクは熱に弱く、また、デジタル化への対応、小型化、高機能・多機能化、省電力といった点で、MEMSマイクロフォンに劣る。そのため、現在では、MEMSマイクロフォンが普及しつつある。
【0003】
MEMSマイクロフォンは、音響振動を検出して電気信号(検出信号)に変換する音響センサ(音響トランスデューサ)と、該音響センサに電圧を印加する駆動回路と、音響センサからの検出信号に対し増幅などの信号処理を行って外部に出力する信号処理回路とを備えている。MEMSマイクロフォンに用いられる音響センサは、MEMS技術を利用して製造された静電容量型の音響センサである。また、上記駆動回路および上記信号処理回路は、半導体製造技術を利用してASIC(Application Specific Integrated Circuit)として一体に製造される。
【0004】
近時、マイクロフォンは、小さな音圧から大きな音圧までの音を高感度で検出することが求められている。一般に、マイクロフォンの最大入力音圧は、高調波歪み率(Total Harmonic Distortion)によって制限される。これは、大きな音圧の音をマイクロフォンで検出しようとすると、出力信号に高調波歪みが発生し、音質や精度を損ねてしまうためである。よって、高調波歪み率を小さくすることができれば、最大入力音圧を大きくしてマイクロフォンの検出音圧域(以下、ダイナミックレンジという。)を広くすることができる。
【0005】
しかしながら、一般的なマイクロフォンでは、音響振動の検出感度向上と高調波歪み率の低減とがトレードオフの関係にある。このため、小音量(小音圧)の音を検出することのできる高感度のマイクロフォンでは、大音量の音が入ってきたときに出力信号の高調波歪み率が大きくなり、そのために最大検出音圧が制限される。これは、高感度のマイクロフォンは出力信号が大きくなり、高調波歪みが発生し易いからである。反対に、出力信号の高調波歪みを低減することによって最大検出音圧を大きくしようとすると、マイクロフォンの感度が悪くなり、小音量の音を高品質で検出することが困難になる。この結果、一般的なマイクロフォンでは、小音量(小音圧)から大音量(大音圧)の音まで広いダイナミックレンジを持たせることが困難であった。
【0006】
このような技術的背景のもとで、広いダイナミックレンジを有するマイクロフォンを実現する方法として、検出感度の異なる複数の音響センサを利用したマイクロフォンが検討されている。このようなマイクロフォンとしては、たとえば特許文献1−4に開示されたものがある。
【0007】
特許文献1、2には、複数の音響センサを設け、複数の音響センサからの複数の信号を、音圧に応じて切り替える、或いは融合させるマイクロフォンが開示されている。このようなマイクロフォンでは、たとえば検出可能な音圧レベル(SPL)が約30dB−115dBである高感度の音響センサと、検出可能な音圧レベルが約60dB−140dBである低感度の音響センサとを切り替えて利用することにより、検出可能な音圧レベルが約30dB−140dBであるマイクロフォンを構成できる。また、特許文献3、4には、1つのチップに、独立した複数の音響センサを形成したものが開示されている。
【0008】
図1Aは、特許文献1の高感度の音響センサにおける高調波歪み率と音圧との関係を示す。
図1Bは、特許文献1の低感度の音響センサにおける高調波歪み率と音圧との関係を示す。また、
図2は、特許文献1の高感度の音響センサと低感度の音響センサにおけるダイアフラムの平均変位量と音圧との関係を示す。いま、許容される高調波歪み率が20%であるとすれば、高感度の音響センサの最大検出音圧は約115dBとなる。また、高感度の音響センサでは、音圧が約30dBよりも小さくなるとS/N比が劣化するので、その最小検出音圧は約30dBとなる。よって、高感度の音響センサのダイナミックレンジは、
図1Aに示すように、約30dB−115dBとなる。同様に、許容される高調波歪み率が20%であるとすれば、低感度の音響センサの最大検出音圧は約140dBとなる。また、低感度の音響センサは高感度の音響センサよりもダイアフラムの面積が小さく、
図2に示すようにダイアフラムの平均変位量も高感度の音響センサより小さい。よって、低感度の音響センサの最小検出音圧は、高感度の音響センサよりも大きくなり、約60dBとなる。その結果、低感度の音響センサのダイナミックレンジは、
図1Bに示すように、約60dB−140dBとなる。このような高感度の音響センサと低感度の音響センサを組み合わせると、検出可能な音圧域は、
図1Cに示すように、約30dB−140dBというように広くなる。
【0009】
なお、高調波歪み率とは、以下のように定義される。
図3Aに実線で示す波形は、基本となる周波数f1の正弦波形である。この基本正弦波形をフーリエ変換すると、周波数f1の位置のみにスペクトル成分が現れる。
図3Aの基本正弦波形が何らかの原因で
図3Aに破線で示す波形のように歪んだとする。この歪み波形をフーリエ変換したとき、
図3Bのような周波数スペクトルが得られたとする。すなわち、歪み波形が周波数f1、f2、…、f5にそれぞれV1、V2、…、V5のFFT強度(高速フーリエ変換強度)を有しているとする。このとき、当該歪み波形の高調波歪み率THDは、次の数式1で定義される。
【数1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1−4に記載されたマイクロフォンにおいては、複数の音響センサが別々のチップに形成されている場合であっても、複数の音響センサが1つのチップ(基板)に一体に形成されている場合であっても、各音響センサは互いに独立したコンデンサ構造を有している。そのため、これらのマイクロフォンでは、音響特性にバラツキおよびミスマッチングが発生することになる。ここで、音響特性のバラツキとは、チップ間における音響センサどうしの音響特性のズレをいう。また、音響特性のミスマッチングとは、同一チップ内における複数の音響センサどうしの音響特性のズレをいう。
【0012】
具体的に言えば、各音響センサが別々のチップに形成されている場合では、作製されるダイアフラムの反りや厚みのバラツキなどのため、検出感度に関するチップ間のバラツキが発生する。その結果、音響センサ間の検出感度の差に関するチップ間のバラツキが大きくなる。また、独立した各音響センサが共通のチップに一体に形成されている場合でも、MEMS技術を用いて各音響センサのコンデンサ構造を作製する際に、ダイアフラムと固定電極との間のギャップ距離にバラツキが生じやすい。さらに、バックチャンバおよびベントホールが個別に形成されることになるので、該バックチャンバおよびベントホールによって影響を受ける周波数特性、位相などの音響特性にチップ内のミスマッチングが発生することになる。
【0013】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、感度の異なる複数のセンシング部を一体に形成することによってダイナミックレンジが広くてセンシング部間でのミスマッチングも小さく、さらに小型化とノイズ低減が可能な静電容量型センサ及び音響センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る静電容量型センサは、少なくとも上面で開口した空洞を有する基板と、前記空洞の上面を覆うようにして前記基板の上方に形成された振動電極板と、前記振動電極板を覆うようにして前記基板の上方に形成されたバックプレートと、前記バックプレートに設けた固定電極板とを備えた静電容量型センサにおいて、前記振動電極板は、前記空洞の上方に位置する領域と前記基板の上面の上方に位置する領域に分割されており、前記振動電極板の前記空洞の上方に位置する領域と前記固定電極板によって第1センシング部が形成され、
前記基板の上面は導電化処理され、前記振動電極板の前記基板の上面の上方に位置する領域と前記基板の上面によって第2センシング部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
前記振動電極板の、前記第1センシング部を構成する領域(すなわち、前記空洞の上方に位置する領域)と前記第2センシング部を構成する領域(すなわち、前記基板の上面の上方に位置する領域)は、たとえば振動電極板に形成したスリットによって分割される。また、前記基板の上面を第2センシング部の電極とするためには、前記基板の上面をイオン注入などによって導電化処理してもよく、あるいは、前記基板の上面に、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域と対向させて基板電極を形成してもよい。
【0016】
本発明の静電容量型センサによれば、振動電極板が分離されているので、振動電極板および固定電極板の間に複数のセンシング部(可変コンデンサ構造)が形成される。したがって、分離された各センシング部からそれぞれ電気信号が出力され、音響振動などの圧力変化を複数の電気信号に変換して出力することができる。このような静電容量型センサによれば、たとえば振動電極板毎に面積を異ならせたり、振動電極板毎に変位量を異ならせたりすることにより、各センシング部の検知域や感度を異ならせることができ、信号を切り替えたり組み合わせたりすることによって感度を低下させることなく検知域を広げることができる。
【0017】
また、上記複数のセンシング部は、同時に作製された振動電極板又は固定電極板を分離して形成されているので、別々に作製されていて互いに独立した複数のセンシング部を有する従来技術に比べて、各センシング部どうしの特性バラツキが小さくなる。その結果、各センシング部どうしの検出感度の差に起因する特性バラツキを小さくすることができる。また、各センシング部は、振動電極板と固定電極板を共用しているので、周波数特性、位相などの特性に関するミスマッチングを低減することができる。
【0018】
また、本発明の静電容量型センサにおいては、第2センシング部が第1センシング部を囲むように配置されているので、第1センシング部と第2センシング部を左右に並べて配置した場合と比較して、静電容量型センサを小型化することができる。
【0019】
本発明に係る静電容量型センサのある実施態様は、前記固定電極板が、前記基板の上方から見て、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域と重なり合わない位置に形成されていることを特徴とする。かかる実施態様によれば、固定電極板と前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域との間の寄生容量を低減できる。
【0020】
本発明に係る静電容量型センサの別な実施態様は、前記振動電極板が、前記空洞の上面開口の縁よりも前記空洞の内側へずれた位置で、前記第1センシング部を構成する領域と前記第2センシング部を構成する領域に分割されていることを特徴とする。かかる実施態様によれば、振動電極板の第1センシング部を構成する領域と基板の上面との間の寄生容量を低減できる。また、前記第1センシング部を構成する領域と基板上面との間の空気分子のブラウン運動の影響を受けにくくなるため、第1センシング部の信号のノイズが低減する。
【0021】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記振動電極板の、前記第1センシング部を構成する領域と前記第2センシング部を構成する領域とが、部分的に連続している。かかる実施態様では、第1センシング部と第2センシング部が電気的に接続されているので、静電容量型センサの電気配線が簡略になる。また、第1センシング部と第2センシング部がつながった箇所で振動電極板を固定部で支持すれば、第1センシング部と第2センシング部を一度に支持させることができる。
【0022】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域が、基板の上面に設けられた固定部によって外周縁下面を支持されている。かかる実施態様によれば、第2センシング部をしっかりと支持することができるので、振動電極板の第1センシング部を構成する領域と第2センシング部を構成する領域との振動の独立性を保つことができ、第1センシング部と第2センシング部の信号の干渉を防ぐことができる。
【0023】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域の面積は、前記振動電極板の前記第1センシング部を構成する領域の面積よりも小さくなっている。かかる実施態様によれば、第1センシング部は高感度のセンシング部となり、第2センシング部は低感度のセンシング部となる。
【0024】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記振動電極板の前記第2センシング部を構成する領域が、比較的面積の大きな領域と比較的面積の小さな領域にさらに分割されている。かかる実施態様によれば、静電容量型センサのダイナミックレンジをさらに広げることができる。
【0025】
本発明に係る音響センサは、本発明に係る静電容量型センサを利用した音響センサであって、前記バックプレート及び前記固定電極板には、音響振動を通過させるための複数個の孔が形成され、前記第1センシング部と前記第2センシングからそれぞれ感度の異なる信号を出力することを特徴とする。
【0026】
薄膜を共有化し、電極を分割して複数のセンシング部を有する音響センサでは、大きな音圧の音響振動が加わった場合には、感度の高い第1センシング部で振動電極板がバックプレートに衝突して歪み振動が発生しやすい。しかし、本発明の音響センサの第2センシング部はバックプレートの歪み振動の影響を受けにくい構造となっているので、高感度側で発生した歪み振動によって低感度側の第2センシング部の高調波歪みが大きくなるのを防ぐことができ、音響センサのダイナミックレンジが狭くなるのを防ぐことができる。
【0027】
本発明に係るマイクロフォンは、本発明に係る音響センサと、前記音響センサからの信号を増幅して外部に出力する回路部とを備えたことを特徴とする。本発明のマイクロフォンでは、高感度側で発生した歪み振動によって低感度側のセンシング部の高調波歪みが大きくなるのを防ぐことができ、マイクロフォンのダイナミックレンジが狭くなるのを防ぐことができる。
【0028】
本発明に係るマイクロフォンのある実施態様は、前記回路部が、前記第1センシング部の出力信号又は前記第2センシング部の出力信号のうちいずれか一方の出力信号の位相を反転させる位相反転用回路を備えている。本発明のような構造の音響センサ(静電容量型センサ)では、第1センシング部から出力される信号と第2センシング部から出力される信号とでは、信号の位相が反転している。しかし、かかる実施態様では、位相反転用回路で第1センシング部の出力信号と第2センシング部の出力信号のうち一方の出力信号の位相を反転させることができるので、回路部においては第1センシング部の出力信号と第2センシング部の出力信号との位相を揃えて取り扱うことができる。
【0029】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1Aは、特許文献1の高感度の音響センサにおける高調波歪み率と音圧との関係を示す図である。
図1Bは、特許文献1の低感度の音響センサにおける高調波歪み率と音圧との関係を示す図である。
図1Cは、特許文献1の高感度の音響センサと低感度の音響センサを組み合わせた場合における、高調波歪み率と音圧との関係を示す図である。
【
図2】
図2は、特許文献1の高感度の音響センサと低感度の音響センサにおけるダイアフラムの平均変位量と音圧との関係を示す図である。
【
図3】
図3Aは、基本波形と歪みを含んだ波形を示す図である。
図3Bは、
図3Aに示す波形の周波数スペクトル図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1による音響センサの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1による音響センサの断面図である。
【
図6】
図6Aは、本発明の実施形態1による音響センサからバックプレートを除いた状態を示す平面図である。
図6Bは、本発明の実施形態1による音響センサからバックプレートと固定電極板を除いた状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第2ダイアフラムと対向する位置にも固定電極板を設けた比較例を示す概略断面図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の実施形態1による音響センサと信号処理回路をケーシング内に納めたマイクロフォンの一部破断した平面図である。
図8Bは、当該マイクロフォンの縦断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態1によるマイクロフォンの回路図である。
【
図11】
図11は、参考例の音響センサにおいて、高感度側のダイアフラムがバックプレートに衝突した様子を示す概略断面図である。
【
図12】
図12Aは、
図11の音響センサにおいて、高感度側のダイアフラムがバックプレートに衝突したときの高感度側のバックプレートに発生する振動を示す図である。
図12Bは、
図11の音響センサにおいて、高感度側のダイアフラムがバックプレートに衝突したときの低感度側のバックプレートに伝搬する振動を示す図である。
図12Cは、低感度側のダイアフラムの振動を示す図である。
図12Dは、
図11の音響センサにおいて、高感度側のダイアフラムがバックプレートに衝突したときの高感度側のダイアフラムと固定電極板との間のギャップの変化を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態1による音響センサにおいて、高感度(小音量)側のダイアフラムがバックプレートに衝突した様子を示す概略断面図である。
【
図15】
図15は、アンカーのさらに異なる配置例を示す平面図である。
【
図16】
図16は、基板電極からなる導電層を備えた音響センサの一部を示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態2による音響センサからバックプレートを除いた状態を示す平面図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態3による音響センサからバックプレートを除いた状態を示す平面図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態4による音響センサからバックプレートを除いた状態を示す平面図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態5による音響センサからバックプレートを除いた状態を示す平面図である。
【
図21】
図21A及び
図21Bは、実施形態5の音響センサにおける、アンカーの異なる配置例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。特に、以下においては音響センサ及びマイクロフォンを例にとって説明するが、本発明は音響センサ以外に、圧力センサなどの静電容量型センサにも適用できるものである。
【0032】
(実施形態1の構成)
以下、
図4−6を参照して本発明の実施形態1による音響センサの構造を説明する。
図4は、本発明の実施形態1による音響センサ11の分解斜視図である。
図5は、音響センサ11の断面図であって、併せてその一部を拡大して表している。
図6Aは、バックプレート18を除いた音響センサ11の平面図であって、シリコン基板12(基板)の上方でダイアフラム13(振動電極板)と固定電極板19が重なった様子を表している。
図6Bは、バックプレート18と固定電極板19を除いた音響センサ11の平面図であって、シリコン基板12の上面におけるダイアフラム13の配置を表している。
【0033】
この音響センサ11は、MEMS技術を利用して作製された静電容量型素子である。
図4及び
図5に示すように、この音響センサ11は、シリコン基板12(基板)の上面にアンカー16(固定部)を介してダイアフラム13を設け、ダイアフラム13の上方に微小なエアギャップ20(空隙)を介して天蓋部14を配し、シリコン基板12の上面に固定したものである。
【0034】
単結晶シリコンからなるシリコン基板12には、表面から裏面に貫通したチャンバ15(空洞)が開口されている。図示のチャンバ15は、(100)面シリコン基板の(111)面及び(111)面と等価な面によって形成された傾斜面で壁面が構成されているが、チャンバ15の壁面は垂直面であってもよい。また、シリコン基板12の上面は、イオン注入により導電性を付与されており、導電層21となっている。導電層21は、バックプレート18の上面に設けられた電極パッド33に接続される。
【0035】
このようにシリコン基板12の上面にイオン注入により導電層21を形成し、後述の第2音響センシング部23bのための基板側電極として使用すれば、シリコン基板12の上面に金属膜による配線パターンを形成する場合のように配線の取り回しが不要になり、音響センサ11の作製のためのプロセスを簡便にできる。
【0036】
ダイアフラム13は、チャンバ15の上面開口を覆うようにしてシリコン基板12の上面に配置されている。
図4及び
図6Bに示すように、ダイアフラム13は、略矩形状に形成されている。ダイアフラム13は、導電性を有するポリシリコン薄膜によって形成されていてダイアフラム13自体が振動電極板となっている。ダイアフラム13は、同時かつ一体に作製された後、その外周の各辺とほぼ平行に延びたスリット17によって2つの領域に分割されている。ただし、ダイアフラム13はスリット17によって完全に2分割されているのではなく、スリット17の端部付近(ダイアフラム13のコーナー部)で機械的及び電気的につながっている。以下においては、スリット17によって分割された2つの領域のうち、中央部に位置する面積の大きな略矩形領域を第1ダイアフラム13a(振動電極板の第1センシング部を構成する領域)と呼び、第1ダイアフラム13aを囲むように形成された領域を第2ダイアフラム13b(振動電極板の第2センシング部を構成する領域)と呼ぶ。
【0037】
第1ダイアフラム13aと第2ダイアフラム13bどうし、あるいは各辺の第2ダイアフラム13bどうしを機械的及び電気的に完全に分離しておくことも可能であるが、その場合には各部分をそれぞれアンカーで支持しなければならず、また各部分を配線パターンによって結線しなければならない。そのため、本実施形態では、第1ダイアフラム13aと第2ダイアフラム13bをスリット17で分離しつつ、コーナー部でつながった状態としており、それによって支持構造を簡単にし、配線パターンによる結線を不要にしている。
【0038】
ダイアフラム13、すなわち第1ダイアフラム13a及び第2ダイアフラム13bは、シリコン基板12の上面で、各コーナー部に設けられた脚片26をアンカー16によって支持されており、チャンバ15の上面開口及びシリコン基板12の上面から浮かせて支持されている。また、ダイアフラム13からは引出配線27が引き出されており、引出配線27はバックプレート18の上面に設けられた電極パッド31に接続される。
【0039】
図5に示すように、天蓋部14は、SiNからなるバックプレート18の下面にポリシリコンからなる固定電極板19を設けたものである。天蓋部14は、ドーム状に形成されていてその下に空洞部分を有しており、その空洞部分でダイアフラム13を覆っている。天蓋部14の下面(すなわち、固定電極板19の下面)とダイアフラム13の上面との間には微小なエアギャップ20(空隙)が形成されている。固定電極板19からは引出配線28が引き出されており、引出配線28はバックプレート18の上面に設けられた電極パッド32に接続されている。
【0040】
天蓋部14(すなわち、バックプレート18と固定電極板19)には、上面から下面に貫通するようにして、音響振動を通過させるためのアコースティックホール24(音響孔)が多数穿孔されている。
図4及び
図6Aに示すように、アコースティックホール24は、規則的に配列されている。図示例では、アコースティックホール24は、互いに120°の角度を成す3方向に沿って三角形状に配列されているが、矩形状や同心円状などに配置されていてもよい。
【0041】
この音響センサ11にあっては、固定電極板19と第1ダイアフラム13aはエアギャップ20を挟んでコンデンサ構造を構成しており、第1音響センシング部23a(第1センシング部)となっている。同様に、第2ダイアフラム13bとシリコン基板12の表面(導電層21)はエアギャップ22を挟んでコンデンサ構造を構成しており、第2音響センシング部23b(第2センシング部)となっている。
【0042】
ここで、固定電極板19は、
図5及び
図6Aに示すように、第1ダイアフラム13aと対向する領域に設けられており、シリコン基板12の上面に垂直な方向から見たとき、固定電極板19が第2ダイアフラム13bと重ならないように配置されている。
図7に示す比較例のように、第2ダイアフラム13bと対向する位置にも固定電極板19を設けた場合には、固定電極板19と第2ダイアフラム13bの間に寄生容量Csが発生し、第1音響センシング部23aの信号と第2音響センシング部23bの信号が干渉する。これに対し、本実施形態のように固定電極板19を第1ダイアフラム13aと対向する位置にのみ設けるようにすれば、固定電極板19と第2ダイアフラム13bの間の寄生容量を低減し、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bの信号どうしが干渉するのを防ぐことができる。
【0043】
また、
図5及び
図6Bに示すように、スリット17は、その両端部を除いては、チャンバ15の上面開口の縁よりもチャンバ15の内側へずらせてある。
【0044】
(実施形態1の動作)
音響センサ11においては、音響振動がチャンバ15(フロントチャンバ)に入ると、薄膜である各ダイアフラム13a、13bが音響振動によって同じ位相で振動する。各ダイアフラム13a、13bが振動すると、各音響センシング部23a、23bの静電容量が変化する。この結果、第1音響センシング部23aにおいては、第1ダイアフラム13aが感知している音響振動(音圧の変化)が第1ダイアフラム13aと固定電極板19の間の静電容量の変化となり、電気的な信号として出力される。また、第2音響センシング部23bにおいては、第2ダイアフラム13bが感知している音響振動(音圧の変化)が第2ダイアフラム13bとシリコン基板12の導電層21の間の静電容量の変化となり、電気的な信号として出力される。また、異なる使用形態、すなわちチャンバ15をバックチャンバとする使用形態の場合には、音響振動がアコースティックホール24を通過して天蓋部14内のエアギャップ20に入り、薄膜である各ダイアフラム13a、13bを振動させる。
【0045】
また、第2ダイアフラム13bの面積は第1ダイアフラム13aの面積よりも小さくなっているので、第2音響センシング部23bは中音量〜大音量までの音圧域用の低感度の音響センサとなっており、第1音響センシング部23aは小音量〜中音量までの音圧域用の高感度の音響センサとなっている。したがって、両音響センシング部23a、23bをハイブリッド化して後述の処理回路によって信号を出力させることにより音響センサ11のダイナミックレンジを広げることができる。たとえば、第1音響センシング部23aのダイナミックレンジを約30−120dBとし、第2音響センシング部23bのダイナミックレンジを約50−140dBとすれば、両音響センシング部23a、23bを組み合わせることでダイナミックレンジを約30−140dBに広げることができる。また、音響センサ11の出力を小音量〜中音量までの第1音響センシング部23aと中音量〜大音量までの第2音響センシング部23bで切り替えるようにしてあれば、第1音響センシング部23aの出力を大音量では使用しないようにできる。その結果、第1音響センシング部23aは大きな音圧域で高調波歪みが大きくなっても、音響センサ11から出力されないので音響センサ11の性能に影響を与えない。結果的に、第1音響センシング部23aの小音量に対する感度を高くすることができる。
【0046】
さらに、この音響センサ11では、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bが同一基板上に形成されている。しかも、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bは、同時かつ一体に作製されたダイアフラム13をスリット17で分割した第1ダイアフラム13a及び第2ダイアフラム13bを用いている。すなわち、本来1つのセンシング部となるものを2つに分割して第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bをハイブリッド化している。そのため、1つの基板に独立した2つのセンシング部を設けた従来例や別々の基板にそれぞれセンシング部を設けた従来例に比較して、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bは、検出感度に関するバラツキが類似することになる。その結果、両音響センシング部23a、23b間の検出感度バラツキを小さくできる。また、両音響センシング部23a、23bは、ダイアフラムを共用しているので、周波数特性、位相などの音響特性に関するミスマッチングを抑制することができる。
【0047】
(マイクロフォンへの応用)
図8Aは、実施形態1の音響センサ11を内蔵したマイクロフォン41の一部破断した平面図であって、カバー43の上面を除去して内部を表している。
図8Bは、当該マイクロフォン41の縦断面図である。
【0048】
このマイクロフォン41は、回路基板42とカバー43からなるパッケージ内に音響センサ11と回路部である信号処理回路44(ASIC)とを内蔵したものである。音響センサ11と信号処理回路44は、回路基板42の上面に実装されている。回路基板42には、音響センサ11内に音響振動を導き入れるための音導入孔45が開口されている。音響センサ11は、チャンバ15の下面開口を音導入孔45に合わせ、音導入孔45を覆うようにして回路基板42の上面に実装されている。したがって、音響センサ11のチャンバ15がフロントチャンバとなっており、パッケージ内の空間がバックチャンバとなっている。
【0049】
音響センサ11の電極パッド31、32及び33は、それぞれボンディングワイヤ46によって信号処理回路44の各パッド47に接続されている。回路基板42の下面にはマイクロフォン41を外部と電気的接続するための端子48が複数個設けられ、回路基板42の上面には端子48と導通した各電極部49が設けられている。回路基板42に実装された信号処理回路44の各パッド50は、それぞれボンディングワイヤ51によって電極部49に接続されている。なお、信号処理回路44のパッド50は、音響センサ11へ電源を供給する機能や、音響センサ11の容量変化信号を外部へ出力する機能を有するものである。
【0050】
回路基板42の上面には、音響センサ11及び信号処理回路44を覆うようにしてカバー43が取り付けられる。パッケージは電磁シールドの機能を有しており、外部からの電気的な外乱や機械的な衝撃から音響センサ11や信号処理回路44を保護している。
【0051】
こうして、音導入孔45からチャンバ15内に入った音響振動は、音響センサ11によって検出され、信号処理回路44によって増幅及び信号処理された後に出力される。このマイクロフォン41では、パッケージ内の空間をバックチャンバとしているので、バックチャンバの容積を大きくでき、マイクロフォン41を高感度化することができる。
【0052】
なお、このマイクロフォン41においては、パッケージ内に音響振動を導き入れるための音導入孔45をカバー43の上面に開口していてもよい。この場合には、音響センサ11のチャンバ15がバックチャンバとなり、パッケージ内の空間がフロントチャンバとなる。
【0053】
図9は、
図8に示すMEMSマイクロフォン41の回路図である。
図9に示すように、音響センサ11は、音響振動によって容量が変化する高感度側の第1音響センシング部23aと低感度側の第2音響センシング部23bを備えている。
【0054】
また、信号処理回路44は、チャージポンプ52、低感度用アンプ53、高感度用アンプ54、ΣΔ(ΔΣ)型ADC(Analog-to-Digital Converter)55、56、基準電圧発生器57、バッファ58、および位相反転用回路59を備える構成である。
【0055】
チャージポンプ52は、第1音響センシング部23a及び第2音響センシング部23bに高電圧HVを印加しており、第2音響センシング部23bから出力された電気信号は低感度用アンプ53によって増幅され、また第1音響センシング部23aから出力された電気信号は高感度用アンプ54によって増幅される。もっとも、第1音響センシング部23aは第1ダイアフラム13aの上面と固定電極板19の間の静電容量を出力し、第2音響センシング部23bは第2ダイアフラム13bの下面と導電層21の間の静電容量を出力している。そのため第1音響センシング部23aのエアギャップ20が狭く(広く)なった場合には、第2音響センシング部23bのエアギャップ22は広く(狭く)なり、第1音響センシング部23aの出力と第2音響センシング部23bの出力は位相が反転している(位相が180°ずれている)。そのため、第2音響センシング部23bの出力は、位相反転用回路59によって位相を反転させ、第1音響センシング部23aの出力との位相差をなくした状態で低感度用アンプ53へ入力している。もちろん、位相反転用回路59は、第1音響センシング部23aと高感度用アンプ54の間に挿入していてもよい。
【0056】
低感度用アンプ53で増幅された信号は、ΣΔ型ADC55においてデジタル信号に変換される。同様に、高感度用アンプ54で増幅された信号は、ΣΔ型ADC56においてデジタル信号に変換される。ΣΔ型ADC55、56において変換されたデジタル信号は、バッファ58を介してPDM(パルス密度変調)信号として1つのデータ線上で外部に出力される。図示しないが、1つのデータ線上に混載したデジタル信号を、信号の強度に応じて選択することにより、音圧に応じて第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bが自動的に切り替えられる。
【0057】
なお、
図9の例では、ΣΔ型ADC55、56にて変換された2つのデジタル信号を混載して、1つのデータ線上に出力しているが、上記2つのデジタル信号を別々のデータ線上に出力してもよい。
【0058】
さらに、音響センサ11のような構造によれば、音響センサ11を小型化することができる。2つの音響センシング部をハイブリッド化してダイナミックレンジを広げるとともに、音響センシング部どうしのミスマッチングなどを小さくした音響センサとしては、本発明の出願人は
図10のような構造のものを提案している(たとえば、特願2012−125526)。
図10の音響センサ61(参考例)では、シリコン基板62の上面に設けたダイアフラム64をスリット63によって左右に分割し、面積の大きな第1ダイアフラム64aと面積の小さな第2ダイアフラム64bを形成している。第1ダイアフラム64aの上方には、第1ダイアフラム64aと対向させて面積の大きな固定電極板65aを設け、第1ダイアフラム64aと固定電極板65aによって高感度用の第1音響センシング部66aを構成している。同様に、第2ダイアフラム64bの上方には、第2ダイアフラム64bと対向させて面積の小さな固定電極板65bを設け、第2ダイアフラム64bと固定電極板65bによって低感度用の第2音響センシング部66bを構成している。このような音響センサ61では、第1音響センシング部66aと第2音響センシング部66bが左右に並んでいるので、上方から見たサイズが大きくなり、配線基板などへ実装するさいの占有面積が大きくなる。
【0059】
これに対し、本実施形態の音響センサ11では、中心部と外周部に第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bを構成しているので、単一の音響センシング部を有する従来からの音響センサとほとんどサイズが変わらない。よって、本実施形態の音響センサ11によれば、参考例の音響センサ61に比べてセンササイズを小型化することができる。
【0060】
また、
図10のような音響センサ61では、高感度側(小音量側)の第1音響センシング部66aと低感度側(大音量側)の第2音響センシング部66bとの干渉によって低感度側の音響センサの高調波歪みが大きくなり、その結果、音響センサの最大検出音圧が低下してダイナミックレンジが狭くなるおそれがある。本発明の実施形態1による音響センサ11によれば、このような高調波歪みの増大を防ぐことができる。この理由は次の通りである。
【0061】
まず、音響センサ61の場合を説明する。高感度側の第1ダイアフラム64aは、低感度側の第2ダイアフラム64bよりも面積が大きくて柔軟である。そのため、音響センサ61に大音圧の音響振動が加わった場合には、
図11に示すように、第1ダイアフラム64aがバックプレート67aに衝突することがある。
図11は、音響センサ61において、大音圧により第1ダイアフラム64aがバックプレート67aに衝突した様子を示す。
【0062】
図11のように第1ダイアフラム64aがバックプレート67aに衝突すると、その衝撃によってバックプレート67aの振動が歪み、
図12Aのような歪み振動を生じる。なお、バックプレートもダイアフラムと同様に音響振動によって振動するが、バックプレートの振幅はダイアフラムの振幅の1/100程度であるので、
図12には音響振動は表していない。バックプレート67aで発生した歪み振動は、バックプレート67bへ伝達するので、第1ダイアフラム64aの衝突によってバックプレート67bにも
図12Bのような歪み振動が生じる。一方、第2ダイアフラム64bは第1ダイアフラム64aに比べて変位が小さいので、バックプレート67bに衝突せず、たとえば
図12Cのような正弦波振動をしている。この第2ダイアフラム64bの正弦波振動にバックプレート67bの歪み振動が加わると、第2音響センシング部66bにおけるバックプレート67bと第2ダイアフラム64bの間のギャップ距離は
図12Dのように変化することになる。この結果、第2音響センシング部66bからの出力信号が歪み、第2音響センシング部66bの高調波歪み率が悪化する。このため、音響センサ61では、第1音響センシング部側で発生した歪み振動が第2音響センシング部側へ伝わらないようにするための構成が必要となる。
【0063】
これに対し、実施形態1の音響センサ11の場合には、
図13に示すように、大音圧によって第1ダイアフラム13aがバックプレート18に衝突して歪み振動が発生しても、その歪み振動は第2音響センシング部23bに影響を及ぼしにくく、第2音響センシング部23bの高調波歪み率が悪化しにくくなる。すなわち、第2音響センシング部23bは、バックプレート18や固定電極板19を構成要素としていないので、第2音響センシング部23bの出力はバックプレート18の歪み振動によって影響を受けない。この結果、第1音響センシング部23aにおける歪み振動によって音響センサ11のダイナミックレンジが狭くなることを防止できる。
【0064】
実施形態1の音響センサ11では、
図5に示すように、スリット17は、その両端部を除いては、チャンバ15の上面開口の縁よりもチャンバ15の内側へずらせてある。この結果、シリコン基板12の上面に垂直な方向から見たとき、第1ダイアフラム13aがシリコン基板12の上面(導電層21)と重なり合うことがなく、第1ダイアフラム13aと導電層21の間の寄生容量を低減することができ、第1音響センシング部23aの信号干渉を低減することができる。
【0065】
また、ダイアフラム13とシリコン基板12の上面との間には空気が捕捉されているので、ここに捕捉された空気分子のブラウン運動が音響ノイズの原因となることがある。しかし、実施形態1の音響センサ11では、第1ダイアフラム13aと第2ダイアフラム13bの間にスリット17を設け、しかも、スリット17をチャンバ15の上面開口の縁よりもチャンバ15の内側へずらせてある。このため、第1ダイアフラム13aとシリコン基板12の上面との間に捕捉される空気を無くすことができ、ここに捕捉された空気分子による音響ノイズの影響を受けないので、第1音響センシング部23aの音響ノイズを低減することができる。
【0066】
(アンカーの異なる配置例)
上記実施形態1では、ダイアフラム13はコーナー部に設けた脚片26をアンカー16で支持しているが、ダイアフラム13の支持構造は
図14A、
図14B及び
図15に示すように種々の形態が考えられる。
【0067】
図14Aは、第2ダイアフラム13bの各辺において、それぞれの外周縁にアンカー16を付加したものである。
図14Bは、第2ダイアフラム13bの外周縁全体にアンカー16を設けたものである。
図15は、第2ダイアフラム13bの外周縁に沿って飛び飛びにアンカー16を設けたものである。これらの変形例によれば、アンカー16によってダイアフラム13、特に第2ダイアフラム13bをしっかりと支持することができるので、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bの振動の独立性を保つことができ、信号の干渉を相互に防ぐことができる。
【0068】
(導電層の異なる構造)
また、シリコン基板12の表面の導電層21は、
図16に示すように、シリコン基板12の上面で金属薄膜をパターニングすることにより形成された基板電極であってもよい。このような変形例では、金属薄膜のパターニング領域によって導電層21の面積が決まるので、導電層21の面積のばらつきが小さくなる。
【0069】
(実施形態2)
図17は、本発明の実施形態2による音響センサ71の、バックプレートを除いた状態での概略平面図である。この実施形態では、第1ダイアフラム13aと、各辺の4つの第2ダイアフラム13bとがスリット17によって互いに完全に分離されている。そして、第1ダイアフラム13aは、第1ダイアフラム13aから引き出された引出配線27aにより、バックプレート上の電極パッド31aに接続されている。また、4つの第2ダイアフラム13bは、それぞれ引出配線27bが引き出されており、各引出配線27bは配線72によってバックプレート上の電極パッド31bに接続されている。
【0070】
かかる実施形態によれば、第1音響センシング部23aの第1ダイアフラム13aの電気配線と第2音響センシング部23bの第2ダイアフラム13bの電気配線を別々に独立して行うことができるので、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bの間の寄生容量を低減し、互いに信号が干渉しにくくできる。
【0071】
(実施形態3)
図18は、本発明の実施形態3による音響センサ74の、バックプレートを除いた状態での概略平面図である。この実施形態では、第1ダイアフラム13aと第2ダイアフラム13bとがスリット17によって互いに完全に分離されている。一方、各辺の第2ダイアフラム13bどうしはダイアフラム13のコーナー部分において機械的にも電気的にもつながっている。そして、第1ダイアフラム13aは、第1ダイアフラム13aから引き出された引出配線27aにより、バックプレート上の電極パッド31aに接続されている。また、第2ダイアフラム13bは、第2ダイアフラム13bから引き出された引出配線27bにより、バックプレート上の電極パッド31bに接続されている。
【0072】
かかる実施形態によれば、第1音響センシング部23aの第1ダイアフラム13aの電気配線と第2音響センシング部23bの第2ダイアフラム13bの電気配線を別々に独立して行うことができるので、第1音響センシング部23aと第2音響センシング部23bの間の寄生容量を低減し、互いに信号が干渉しにくくできる。しかも、各辺の第2ダイアフラム13bどうしを接続する必要がないので、配線を簡素化することができる。
【0073】
(実施形態4)
図19は、本発明の実施形態4による音響センサ76の、バックプレートを除いた状態での概略平面図である。この実施形態では、第1ダイアフラム13aと、各辺の4つの第2ダイアフラム13bとがスリット17によって互いに完全に分離されている。4つの第2ダイアフラム13bのうちのいずれか2つの第2ダイアフラム13ba、13bbは、一方の第2ダイアフラム13bbの面積が他方の第2ダイアフラム13baの面積よりも大きくなっている。しかして、第1ダイアフラム13aと固定電極板19の間の静電容量によって小音量(高感度)用の第1音響センシング部23a(第1センシング部)が構成されている。また、第2ダイアフラム13bbとシリコン基板12の上面の間の静電容量によって中音量(中感度)用の第2音響センシング部23c(第2センシング部)が構成され、第2ダイアフラム13baとシリコン基板12の上面の間の静電容量によって大音量(低感度)用の第2音響センシング部23b(第2センシング部)が構成されている。そして、第1ダイアフラム13aは、第1ダイアフラム13aから引き出された引出配線27aにより、バックプレート上の電極パッド31aに接続されている。第2ダイアフラム13bbは、引出配線27bbによってバックプレート上の電極パッド31bbに接続されている。第2ダイアフラム13baは、引出配線27baによってバックプレート上の電極パッド31baに接続されている。また、固定電極板19は、引出配線28によってバックプレート上の電極パッド32に接続され、シリコン基板12の上面(導電層21)は電極パッド33に接続されている。
【0074】
かかる実施形態によれば、小音量用の第1音響センシング部23aと、中音量用の第2音響センシング部23cと、大音量用の第2音響センシング部23bが構成されているので、音響センサ76の音圧レンジ(ダイナミックレンジ)をさらに広げることが可能になる。
【0075】
(実施形態5)
図20は、本発明の実施形態5による音響センサ81の、バックプレートを除いた状態での概略平面図である。この実施形態では、円形のダイアフラム13をスリット17によって外周側に位置する円弧状の第2ダイアフラム13bと、その内側に位置する円形状の第1ダイアフラム13aに分割している。また、バックチャンバの下面には、第1ダイアフラム13aと対向させるようにして固定電極板19が形成されている。
【0076】
第1ダイアフラム13aは、引出配線27aをシリコン基板12などで固定されることにより、チャンバ15の上方で片持ち状に支持されている。そして、第1ダイアフラム13aと固定電極板19によって小音量用の第1音響センシング部23aが構成されている。
【0077】
第2ダイアフラム13bは、第2ダイアフラム13bの下面外周部を略円弧状のアンカー16によって支持されている。そして、第2ダイアフラム13bとシリコン基板12の導電層21によって大音量用の第2音響センシング部23bが構成されている。
【0078】
なお、アンカー16は、
図21Aに示すように、第2ダイアフラム13bの下面外周部に沿って飛び飛びに設けられていてもよい。
【0079】
また、
図21Bに示すように、シリコン基板12の上面の一部を円形のチャンバ15内へ向けて張り出させておき、この上に半月状のアンカー82を設け、第1ダイアフラム13aの端をアンカー82で片持ち状に支持してもよい。このようなアンカー82を用いれば、第1ダイアフラム13aの強度を向上させることができる。
【0080】
以上においては、音響センサ及び該音響センサを用いたマイクロフォンについて説明したが、本発明は圧力センサなどの音響センサ以外の静電容量センサについても適用することができる。