【実施例】
【0027】
まず、
図1を参照して、本実施例に係る位置制御装置2(本願請求項の「位置制御装置」の一例)を備える抗体チップ生産システム1(本願請求項の「抗体チップ生産システム」の一例)が生産する抗体チップ3の概要について述べる。
図1は、本願発明に係る抗体チップ生産システム1が生産する抗体チップ3の概要を示す図である。
【0028】
抗体チップ3は、カバー層5とガラス基板7を備える。カバー層5は、樹脂であるPDMSからなる流路形成層9とシリコンゲルからなる自己修復層11(本願請求項の「自己修復体」の一例)とを有する。自己修復層11は、流路形成層9に形成された複数の開口である注入口13(本願請求項の「注入口」の一例)及び回収口14(本願請求項の「回収口」の一例)に蓋をしている。注入口13又は回収口14を鉛直上方に延長した自己修復層11内の空間15は、外力がなければふさがっている。流路形成層9には、注入口13及び回収口14を接続する流路17が形成されている。この流路17は、ガラス基板7と流路形成層9の下面(ガラス基板7に接する面)の凹みとが形成する部分を有する。流路17は、当該部分に、ガラス基板7上に金等の金属が膜状に蒸着された抗体固定部19を有する。流路17に抗体液が流入されると、抗体固定部19に抗体が固定される。
【0029】
なお、
図1の自己修復層11の表面には、流路形成層9の注入口13及び回収口14に対応する箇所が破線で示されているが、自己修復層11の表面が開口しているわけではない。
【0030】
以下、
図2を参照して抗体チップ生産システム1の概要を説明する。
図2は、本願発明に係る位置制御装置2を備える抗体チップ生産システム1の概要を示すブロック図である。
【0031】
抗体チップ生産システム1は、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップ3を生産する。抗体チップ生産システム1は、位置制御装置2及び流体移送部41(本願請求項の「流体移送部」の一例)を備える。位置制御装置2は、注入器31(本願請求項の「注入器」の一例)と、回収器32(本願請求項の「回収器」の一例)と、ステージ33と、配置決定部35(本願請求項の「配置決定手段」の一例)と、ガイド37と、分離部39(本願請求項の「弾性体」の一例)と、と、制御部43とを備える。注入器31は、針45(本願請求項の「針」の一例)を有する。針45は、中空となっている。この針内部の中空の部分(以下、「針流路47」と表記する。本願請求項の「針流路」の一例である。)は、抗体液の流路となる。回収器32も、針46と、針流路48とを有する。制御部43は、移動制御部49(本願請求項の「移動制御部」の一例)と、速度制御部51(本願請求項の「速度制御部」の一例)と、判定部53(本願請求項の「判定部」の一例)とを有する。
【0032】
注入器31は、抗体を含む抗体液をチップの注入口13から注入する。針45は、自己修復層11を貫通し、注入口13に挿入される。同様に、針46は、自己修復層11を貫通し、回収口14に挿入される。ステージ33は、チップを安定に置くためのものである。配置決定部35は、ステージ33上のチップの配置場所を決定する。ガイド37は、少なくともカバー層5を通過させる一方、ステージ33を通過させないものである。分離部39は、注入器31と抗体チップ3とを分離させるためのものである。流体移送部41は、注入口13に挿入された注入器31を介して、所定量の抗体液を注入口13からチップに注入する。制御部43は、ステージ33の移動等を制御する。移動制御部49は、注入口13の位置及び/又は注入器31の位置を制御して、注入器31を注入口13に挿入させる。速度制御部51は、移動制御部49が注入器31と注入口13との距離を変化させる速度を制御する。判定部53は、注入器31と注入口13との距離が一定値以下であるか否かを判定する。
【0033】
続いて、
図3及び
図4を参照して、抗体チップ生産システム1を用いた本願発明の実施例に係る抗体チップ生産方法について説明する。
図3は、チップに抗体液を均一かつ精確に注入するための注入機構の概要を説明する図である。
図4は、本願発明の実施例に係る抗体チップ生産方法の生産フローの概要を説明する図である。
【0034】
図3を参照して、まず、チップが、表面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等によりフッ素加工されたステージ33の上に置かれる(
図4のステップST001)。ここで、ステージ33にはチップを置くべき場所がマークしてある。このマークは、配置決定部35の一例である。
【0035】
続いて、移動制御部49がステージ33を制御して、注入器31の針45が流路形成層9の注入口13に挿入されるようにステージ33を移動させる(ステップST002)。このとき、針45は、自己修復層11を貫通する。
【0036】
ここで、
図5を参照して、注入器31の針45を確実に注入口13に挿入する機構について説明する。
図5は、本願発明の実施例に係る位置制御装置2を用いた、チップ位置を微調整する機構の概要を説明する図である。
【0037】
チップをステージ33上に置いた際、置き場所の多少のずれにより、針45がきれいに注入口13に入らない場合も考えられる。しかし、ガイド37が大まかにカバー層の位置合わせを可能とする。しかも、ステージ33の少なくともガラス基板7と接する面がフッ素加工されているため、ステージ33とチップとの静止摩擦力は小さい。そのため、ガイド37に接触した際にチップがステージ33で滑ることにより、チップは自動的に大まかな位置合わせが行われる。しかも、
図5に示すように、針45の先端はテーパ形状(本願請求項に記載の「テーパ形状」の一例)である。このテーパ形状は、針45の先端がチップに接触した際にチップに及ぼす水平成分の力(ステージ33に平行な方向成分の力)が、チップとステージ33との間の静止摩擦力を上回るように設計される。そのため、PDMSでできた流路形成層9の注入口13に差し込まれる際にさらに位置の微調整が自動的に行われる。結果として、針45が自動的に精確に注入口13に挿入される(自動調針)。
【0038】
速度制御部51は、チップと注入器31とが離れている間は、作動時間短縮のためにステージ33を速く移動させる。しかし、判定部53がチップと注入器31との距離が所定値以下であると判定した場合、速度制御部51は、ステージ33の移動速度を低下させる。これにより、針45の抜き差しの際の衝撃を緩和し、注入器31やチップからの抗体液等の漏れを防ぐことが可能となる。また、チップがガイド37や注入器31と接触した際に、ステージ33で滑ることが容易となる。
【0039】
さらに、流体移送部41は、注入器31を介して抗体液をチップに注入する(ステップST003)。ここで、
図3に示すように、抗体チップ生産システム1は、複数の注入口13
1、13
2、13
3、13
4(以下、まとめて「注入口13」と表記することがある)に対応して、注入器31
1、31
2、31
3、31
4(以下、まとめて「注入器31」と表記することがある)を備える。同様に、複数の回収口14
1、14
2、14
3、14
4(以下、まとめて「回収口14」と表記することがある)に対応して、回収器32
1、32
2、32
3、32
4(以下、まとめて「回収器32」と表記することがある)を備える。注入器31
1を介して注入口13
1から注入された抗体液は、回収口14
1から回収器32
1を経由し、さらに注入器31
2を介して注入口13
2から再度チップに注入される。同様に、抗体液は、流路形成層9内の複数の流路、複数の注入口、複数の注入器、複数の回収口、複数の回収器を経由して、最終的に回収口14
4から回収器32
4を経由して抗体チップ生産システム1に回収される。このように、チップ内の流路を全体で1つの流路とすることにより、詰まりの有無を見分けることが容易となる。最終的な出口である回収器32
4から液体が流れてくるかどうかだけを確認すればよいからである。
【0040】
このようにして抗体チップ3が生産された後、移動制御部49は、ステージ33を注入器31から遠ざける。これにより、注入器31と注入口13とが分離される(ステップST004)。
【0041】
ここで、自己修復層11が針45を締め付けるため、抗体チップ3がステージ33から遊離して注入器31に残ってしまう可能性がある。そこで、抗体チップ生産システム1は、抗体チップ3と注入器31とを確実に分離するため、分離部39
1及び39
2(以下、まとめて「分離部39」と表記することがある)を備える。弾性体を含む分離部39は、ステージ33が注入器31に近接した際に、ガラス基板7に接触して押し込まれる。このとき、分離部39は、弾性エネルギーを蓄積する。一方、ステージ33が注入器31から離れると、分離部39を押し込んでいた力が弱くなり、分離部39がガラス基板7をステージ33側に押し返す弾性力が相対的に強まる。そのため、抗体チップ3は、針45から強制的に分離される。
【0042】
針45が自己修復層11から抜けた後は、針45が自己修復層11に空けた穴がふさがる。このため、抗体チップ3内に固定化された抗体は、外部の空気に触れてダメージを受けることがなく、さらに封止をするステップを省くことが可能となる。
【0043】
なお、ステップST001において、チップをステージ上に置く方法は、人手により置くものでもよいし、自動化されてもよい。
【0044】
また、自己修復層11は、シリコンゴムのような弾性材料からなるものであってもよいし、他の自己修復機能を有する材料からなるものであってもよい。さらに、自己修復層11は、なくてもよい。ただし、この場合、抗体をチップに固定化させたのちに抗体がダメージを受けないように生産された抗体チップを封止することが望ましい。