特許第6237984号(P6237984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237984位置制御装置、位置制御方法、抗体チップ生産方法、プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237984
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】位置制御装置、位置制御方法、抗体チップ生産方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20171120BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01N33/53 D
   G01N37/00 102
   G01N35/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-141651(P2013-141651)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-14528(P2015-14528A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 金市
(72)【発明者】
【氏名】寺本 要一
(72)【発明者】
【氏名】阪本 一平
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/161894(WO,A1)
【文献】 特表2009−543616(JP,A)
【文献】 特開2005−189034(JP,A)
【文献】 実開昭61−50626(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 35/00
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産システムにおける位置制御装置であって、
前記チップが置かれるステージと、
前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、
前記ステージの上の前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、
前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させる移動制御部と
前記移動制御部が前記注入器と前記注入口とを近接させる際に、前記チップに上方から接触して押し込まれて弾性エネルギーを蓄積する弾性体を備え
前記注入器の前記注入口に挿入される先端は、テーパ形状であり、
前記注入器が前記ステージに上方から近接した際に、
前記注入器の前記テーパ形状の部分は、前記チップに接触すると、前記チップに対して、前記チップと前記ステージとの間の静止摩擦力を上回る水平成分の力を生じて、前記チップが前記ステージの上で滑るとともに、
前記弾性体は、前記チップに上方から接触して前記チップを前記ステージに押す、位置制御装置。
【請求項2】
前記注入口の上面と前記注入器の下端との距離は、前記チップが前記弾性体に接触する位置と前記弾性体が前記チップに接触する位置との間の距離よりも短い、請求項1記載の位置制御装置。
【請求項3】
前記ステージは、少なくとも前記チップが置かれる面がフッ素加工されたものである、請求項1又は2に記載の位置制御装置。
【請求項4】
前記移動制御部が前記注入器と前記注入口との距離を変化させる速度を制御する速度制御部と、
前記速度制御部に速度を変化させるか否かを判定する判定部とをさらに備え、
前記判定部が前記注入器と前記注入口との距離が一定値以下であると判定した場合に、前記速度制御部は、前記一定値よりも離れた場合よりも前記注入器と前記注入口との距離を変化させる速度を低下させることにより、前記チップが前記ステージの上で滑ることを容易にする、請求項1から3のいずれかに記載の位置制御装置。
【請求項5】
前記注入口は、自己修復体で蓋をされており、
前記注入器は、前記自己修復体を貫通する針を有し、
前記針は、前記抗体液が流れる針流路を有し、
前記抗体液は、前記針流路を通って前記注入口から注入され、
前記自己修復体は、前記針を抜いた状態では前記針が刺さっていた穴が塞がるものであり、
前記弾性体は、前記自己修復体と前記針との間の摩擦力に逆らって強制的に前記針を前記注入口及び前記自己修復体から引き抜く、請求項1からのいずれかに記載の位置制御装置。
【請求項6】
前記注入器として、互いに別々の前記注入口に挿入される第1注入器及び第2注入器と、
前記抗体液を前記チップの回収口から回収する回収器とを備え、
前記第1注入器が挿入される第1注入口及び前記回収器が挿入される前記回収口は、前記チップの内部で流路で接続されており、
前記第2注入器が挿入される第2注入口は、前記第1注入口とも前記回収口とも前記チップの内部で接続されておらず、
前記回収口と前記第2注入口は、前記回収器及び前記第2注入器を介して前記チップの外部の流路で接続されており、
前記第1注入器を介して前記第1注入口から注入された抗体液が、前記回収口を経由して前記外部の流路を通って前記第2注入口に注入される、請求項1から5のいずれかに記載の位置制御装置。
【請求項7】
チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産システムにおける位置制御方法であって、
前記抗体チップ生産システムは、
前記チップが置かれるステージと、
前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、
前記ステージの上の前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、
前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御する移動制御部と、
前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させる移動制御部と、
前記移動制御部が前記注入器と前記注入口とを近接させる際に、前記チップに上方から接触して押し込まれて弾性エネルギーを蓄積する弾性体を備え、
前記注入器の前記注入口に挿入される先端は、テーパ形状であり、
前記移動制御部が前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して前記注入器が前記ステージに上方から近接した際に、
前記注入器の前記テーパ形状の部分は、前記チップに接触すると、前記チップに対して、前記チップと前記ステージとの間の静止摩擦力を上回る水平成分の力を生じて、前記チップが前記ステージの上で滑るとともに、
前記弾性体は、前記チップの上方から接触して前記チップを前記ステージに押す、位置制御方法。
【請求項8】
チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産装置を用いる抗体チップ生産方法であって、
前記抗体チップ生産装置は、
前記チップが置かれるステージと、
前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、
前記ステージの上の前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、
前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御する移動制御部と、
前記移動制御部が前記注入器と前記注入口とを近接させる際に、前記チップに上方から接触して押し込まれて弾性エネルギーを蓄積する弾性体と、
前記注入器を介して前記注入口から所定量の前記抗体液を前記チップに注入する流体移送部と、
前記流体移送部を制御する流体移送制御部とを備え、
前記注入器の前記注入口に挿入される先端は、テーパ形状であり、
前記移動制御部が、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させる挿入ステップと
前記流体移送制御部が、前記流体移送部を制御して、前記抗体液を前記チップに注入させる注入ステップと
前記移動制御部が、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器と前記注入口とを分離させる分離ステップを含み
前記挿入ステップにおいて、移動制御部が前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して前記注入器が前記ステージに上方から近接した際に、
前記注入器の前記テーパ形状の部分は、前記チップに接触すると、前記チップに対して、前記チップと前記ステージとの間の静止摩擦力を上回る水平成分の力を生じて、前記チップが前記ステージの上で滑るとともに、
前記弾性体は、前記チップの上方から接触して前記チップを前記ステージに押す、抗体チップ生産方法。
【請求項9】
コンピュータに請求項7記載の位置制御方法又は請求項8記載の抗体チップ生産方法を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置制御装置、位置制御方法、抗体チップ生産方法、プログラム及び記録媒体に関し、特に、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産システムにおける位置制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等に有害成分の混入の有無を検査する際、有害成分と特異的に反応する抗体が固定化された抗体チップが一般に用いられている。検査対象である検体に抗原が含まれていれば、抗体チップの抗体と抗原抗体反応が生じ、検査によって陽性と判定される。
【0003】
発明者らは、寿命の長い抗体チップを生産する生産装置等を研究開発してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/158759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抗体液注入の自動化について改良の余地があり、さらに均一かつ精確に抗体液をチップに注入することが求められていた。
【0006】
ゆえに、本発明は、チップの内部に均一かつ精確に抗体を付着させることを可能とする抗体チップ生産システムにおける位置制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産システムにおける位置制御装置であって、前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、前記注入口と前記注入器との位置関係が所定の位置関係となるように前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させる移動制御部とを備える、位置制御装置である。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点の位置制御装置であって、前記注入器の前記注入口に挿入される先端は、テーパ形状であり、前記チップは、前記先端が前記チップに挿入される際に前記テーパ形状に合わせて前記配置場所で滑るものである。
【0009】
本発明の第3の観点は、第2の観点の位置制御装置であって、前記移動制御部が前記注入器と前記注入口との距離を変化させる速度を制御する速度制御部と、前記速度制御部に速度を変化させるか否かを判定する判定部とをさらに備え、前記判定部が前記注入器と前記注入口との距離が一定値以下であると判定した場合に、前記速度制御部は、前記注入器と前記注入口との距離を変化させる速度を減少させる。
【0010】
本発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の位置制御装置であって、前記注入口は、自己修復体で蓋をされており、前記注入器は、前記自己修復体を貫通する針を有し、前記針は、前記抗体液が流れる針流路を有し、前記抗体液は、前記針流路を通って前記注入口から注入され、前記自己修復体は、前記針を抜いた状態では前記針が刺さっていた穴が塞がるものである。
【0011】
本発明の第5の観点は、第4の観点の位置制御装置であって、前記移動制御部が前記注入器と前記注入口とを近接させる際に弾性エネルギーを蓄積する弾性体をさらに備え、前記弾性体は、前記自己修復体と前記針との間の摩擦力に逆らって強制的に前記針を前記注入口及び前記自己修復体から引き抜く。
【0012】
本発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の位置制御装置であって、前記注入器として、互いに別々の前記注入口に挿入される第1注入器及び第2注入器と、前記抗体液を前記チップの回収口から回収する回収器とを備え、前記第1注入器が挿入される第1注入口及び前記回収器が挿入される前記回収口は、前記チップの内部で流路で接続されており、前記第2注入器が挿入される第2注入口は、前記第1注入口とも前記回収口とも前記チップの内部で接続されておらず、前記回収口と前記第2注入口は、前記回収器及び前記第2注入器を介して前記チップの外部の流路で接続されており、前記第1注入器を介して前記第1注入口から注入された抗体液が、前記回収口を経由して前記外部の流路を通って前記第2注入口に注入される。
【0013】
本発明の第7の観点は、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産システムにおける位置制御方法であって、前記抗体チップ生産システムは、前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、前記注入口及び前記注入器とが所定の位置関係となるように前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御する移動制御部とを備え、前記移動制御部が、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させる、位置制御方法である。
【0014】
本発明の第8の観点は、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップを生産する抗体チップ生産装置を用いる抗体チップ生産方法であって、前記抗体チップ生産装置は、前記抗体を含む抗体液を前記チップの注入口から注入する注入器と、前記チップの配置場所を決定する配置決定手段と、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御する移動制御部と、前記注入器を介して前記注入口から所定量の前記抗体液を前記チップに注入する流体移送部と、前記流体移送部を制御する流体移送制御部とを備え、前記移動制御部が、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器を前記注入口に挿入させ、前記流体移送制御部が、前記流体移送部を制御して、前記抗体液を前記チップに注入させ、前記移動制御部が、前記注入口の位置及び/又は前記注入器の位置を制御して、前記注入器と前記注入口とを分離させる、抗体チップ生産方法である。
【0015】
本発明の第9の観点は、コンピュータに第7の観点の位置制御方法又は第8の観点の抗体チップ生産方法を実行させるためのプログラムである。
【0016】
本発明の第10の観点は、第9の観点のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0017】
なお、上記において、「前記注入口と前記注入器との位置関係が所定の位置関係となるように前記チップの配置場所を決定する」とは、前記注入器に対応した位置に前記注入口が位置するように前記チップの配置場所を決定することを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の各観点によれば、配置決定手段及び移動制御部が注入器を精確にチップの内部に注入させ、流体移送部が所定量の抗体液をチップに注入する。そのため、均一かつ精確にチップに抗体を固定化することを可能とする位置制御装置を提供できる。また、注入器をチップの内部に挿入させるため、空気によるダメージを受けやすい抗体液をチップの外部にさらさずに抗体チップを生産することが可能となる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、仮にチップの配置場所がわずかにずれていたとしても、注入器の先端が注入口に挿入される際に、チップが注入口に適切に挿入されるべくチップが配置場所で滑る。これにより、特別な制御装置を用いずに位置を微調整することが可能となる。その結果、抗体液注入の自動化がさらに容易となる。
【0020】
本発明の第3の観点によれば、注入器を自己修復体にゆっくり刺したり、自己修復体からゆっくり抜いたりすることが可能となる。このため、注入器やチップ内の抗体液等の液体が漏れることなく注入器を抜き差しすることが容易となる。特に、第2の観点のようなチップの位置の微調整は、注入器をゆっくり挿入することでさらに容易となる。
【0021】
本発明の第4の観点によれば、針流路を通ってチップに抗体液が注入される前後は、注入口は自己修復体で蓋をされている。そのため、空気との接触からダメージを受けやすい抗体液を空気にさらさずにチップに注入することが容易となる。これにより、抗体チップを封止するステップを省くことも可能となる。
【0022】
本発明の第5の観点によれば、注入後に抗体チップの自己修復体が注入器の針を締め付けていても、弾性体が強制的に針をチップから引き抜く。そのため、抗体液の注入後に、抗体チップを注入器から確実に分離することが容易となる。
【0023】
本発明の第6の観点によれば、複数の注入口を有するチップに抗体を固定化する際、チップ内の複数の流路をチップの外部の流路で接続する。これにより、チップ内の複数の流路における目詰まりの有無を見分けるために目視すべき箇所を減らすことが可能となり、目詰まりの有無を判断することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願発明に係る位置制御装置を備える抗体チップ生産システム1が生産する抗体チップ3の概要を示す図である。
図2】本願発明に係る位置制御装置を備える抗体チップ生産システム1の概要を示すブロック図である。
図3】チップに抗体液を均一かつ精確に注入するための注入機構の概要を説明する図である。
図4】本願発明の実施例に係る抗体チップ生産方法の生産フローの概要を説明する図である。
図5】本願発明の実施例に係る位置制御装置を用いた、チップ位置を微調整する機構の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
なお、以下では、抗体が固定されているチップを「抗体チップ」(本願請求項の「抗体チップ」の一例)と表記し、抗体が固定されていない「チップ」(本願請求項の「チップ」の一例)と区別する。
【実施例】
【0027】
まず、図1を参照して、本実施例に係る位置制御装置2(本願請求項の「位置制御装置」の一例)を備える抗体チップ生産システム1(本願請求項の「抗体チップ生産システム」の一例)が生産する抗体チップ3の概要について述べる。図1は、本願発明に係る抗体チップ生産システム1が生産する抗体チップ3の概要を示す図である。
【0028】
抗体チップ3は、カバー層5とガラス基板7を備える。カバー層5は、樹脂であるPDMSからなる流路形成層9とシリコンゲルからなる自己修復層11(本願請求項の「自己修復体」の一例)とを有する。自己修復層11は、流路形成層9に形成された複数の開口である注入口13(本願請求項の「注入口」の一例)及び回収口14(本願請求項の「回収口」の一例)に蓋をしている。注入口13又は回収口14を鉛直上方に延長した自己修復層11内の空間15は、外力がなければふさがっている。流路形成層9には、注入口13及び回収口14を接続する流路17が形成されている。この流路17は、ガラス基板7と流路形成層9の下面(ガラス基板7に接する面)の凹みとが形成する部分を有する。流路17は、当該部分に、ガラス基板7上に金等の金属が膜状に蒸着された抗体固定部19を有する。流路17に抗体液が流入されると、抗体固定部19に抗体が固定される。
【0029】
なお、図1の自己修復層11の表面には、流路形成層9の注入口13及び回収口14に対応する箇所が破線で示されているが、自己修復層11の表面が開口しているわけではない。
【0030】
以下、図2を参照して抗体チップ生産システム1の概要を説明する。図2は、本願発明に係る位置制御装置2を備える抗体チップ生産システム1の概要を示すブロック図である。
【0031】
抗体チップ生産システム1は、チップの内部に抗体を固定化して抗体チップ3を生産する。抗体チップ生産システム1は、位置制御装置2及び流体移送部41(本願請求項の「流体移送部」の一例)を備える。位置制御装置2は、注入器31(本願請求項の「注入器」の一例)と、回収器32(本願請求項の「回収器」の一例)と、ステージ33と、配置決定部35(本願請求項の「配置決定手段」の一例)と、ガイド37と、分離部39(本願請求項の「弾性体」の一例)と、と、制御部43とを備える。注入器31は、針45(本願請求項の「針」の一例)を有する。針45は、中空となっている。この針内部の中空の部分(以下、「針流路47」と表記する。本願請求項の「針流路」の一例である。)は、抗体液の流路となる。回収器32も、針46と、針流路48とを有する。制御部43は、移動制御部49(本願請求項の「移動制御部」の一例)と、速度制御部51(本願請求項の「速度制御部」の一例)と、判定部53(本願請求項の「判定部」の一例)とを有する。
【0032】
注入器31は、抗体を含む抗体液をチップの注入口13から注入する。針45は、自己修復層11を貫通し、注入口13に挿入される。同様に、針46は、自己修復層11を貫通し、回収口14に挿入される。ステージ33は、チップを安定に置くためのものである。配置決定部35は、ステージ33上のチップの配置場所を決定する。ガイド37は、少なくともカバー層5を通過させる一方、ステージ33を通過させないものである。分離部39は、注入器31と抗体チップ3とを分離させるためのものである。流体移送部41は、注入口13に挿入された注入器31を介して、所定量の抗体液を注入口13からチップに注入する。制御部43は、ステージ33の移動等を制御する。移動制御部49は、注入口13の位置及び/又は注入器31の位置を制御して、注入器31を注入口13に挿入させる。速度制御部51は、移動制御部49が注入器31と注入口13との距離を変化させる速度を制御する。判定部53は、注入器31と注入口13との距離が一定値以下であるか否かを判定する。
【0033】
続いて、図3及び図4を参照して、抗体チップ生産システム1を用いた本願発明の実施例に係る抗体チップ生産方法について説明する。図3は、チップに抗体液を均一かつ精確に注入するための注入機構の概要を説明する図である。図4は、本願発明の実施例に係る抗体チップ生産方法の生産フローの概要を説明する図である。
【0034】
図3を参照して、まず、チップが、表面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等によりフッ素加工されたステージ33の上に置かれる(図4のステップST001)。ここで、ステージ33にはチップを置くべき場所がマークしてある。このマークは、配置決定部35の一例である。
【0035】
続いて、移動制御部49がステージ33を制御して、注入器31の針45が流路形成層9の注入口13に挿入されるようにステージ33を移動させる(ステップST002)。このとき、針45は、自己修復層11を貫通する。
【0036】
ここで、図5を参照して、注入器31の針45を確実に注入口13に挿入する機構について説明する。図5は、本願発明の実施例に係る位置制御装置2を用いた、チップ位置を微調整する機構の概要を説明する図である。
【0037】
チップをステージ33上に置いた際、置き場所の多少のずれにより、針45がきれいに注入口13に入らない場合も考えられる。しかし、ガイド37が大まかにカバー層の位置合わせを可能とする。しかも、ステージ33の少なくともガラス基板7と接する面がフッ素加工されているため、ステージ33とチップとの静止摩擦力は小さい。そのため、ガイド37に接触した際にチップがステージ33で滑ることにより、チップは自動的に大まかな位置合わせが行われる。しかも、図5に示すように、針45の先端はテーパ形状(本願請求項に記載の「テーパ形状」の一例)である。このテーパ形状は、針45の先端がチップに接触した際にチップに及ぼす水平成分の力(ステージ33に平行な方向成分の力)が、チップとステージ33との間の静止摩擦力を上回るように設計される。そのため、PDMSでできた流路形成層9の注入口13に差し込まれる際にさらに位置の微調整が自動的に行われる。結果として、針45が自動的に精確に注入口13に挿入される(自動調針)。
【0038】
速度制御部51は、チップと注入器31とが離れている間は、作動時間短縮のためにステージ33を速く移動させる。しかし、判定部53がチップと注入器31との距離が所定値以下であると判定した場合、速度制御部51は、ステージ33の移動速度を低下させる。これにより、針45の抜き差しの際の衝撃を緩和し、注入器31やチップからの抗体液等の漏れを防ぐことが可能となる。また、チップがガイド37や注入器31と接触した際に、ステージ33で滑ることが容易となる。
【0039】
さらに、流体移送部41は、注入器31を介して抗体液をチップに注入する(ステップST003)。ここで、図3に示すように、抗体チップ生産システム1は、複数の注入口13、13、13、13(以下、まとめて「注入口13」と表記することがある)に対応して、注入器31、31、31、31(以下、まとめて「注入器31」と表記することがある)を備える。同様に、複数の回収口14、14、14、14(以下、まとめて「回収口14」と表記することがある)に対応して、回収器32、32、32、32(以下、まとめて「回収器32」と表記することがある)を備える。注入器31を介して注入口13から注入された抗体液は、回収口14から回収器32を経由し、さらに注入器31を介して注入口13から再度チップに注入される。同様に、抗体液は、流路形成層9内の複数の流路、複数の注入口、複数の注入器、複数の回収口、複数の回収器を経由して、最終的に回収口14から回収器32を経由して抗体チップ生産システム1に回収される。このように、チップ内の流路を全体で1つの流路とすることにより、詰まりの有無を見分けることが容易となる。最終的な出口である回収器32から液体が流れてくるかどうかだけを確認すればよいからである。
【0040】
このようにして抗体チップ3が生産された後、移動制御部49は、ステージ33を注入器31から遠ざける。これにより、注入器31と注入口13とが分離される(ステップST004)。
【0041】
ここで、自己修復層11が針45を締め付けるため、抗体チップ3がステージ33から遊離して注入器31に残ってしまう可能性がある。そこで、抗体チップ生産システム1は、抗体チップ3と注入器31とを確実に分離するため、分離部39及び39(以下、まとめて「分離部39」と表記することがある)を備える。弾性体を含む分離部39は、ステージ33が注入器31に近接した際に、ガラス基板7に接触して押し込まれる。このとき、分離部39は、弾性エネルギーを蓄積する。一方、ステージ33が注入器31から離れると、分離部39を押し込んでいた力が弱くなり、分離部39がガラス基板7をステージ33側に押し返す弾性力が相対的に強まる。そのため、抗体チップ3は、針45から強制的に分離される。
【0042】
針45が自己修復層11から抜けた後は、針45が自己修復層11に空けた穴がふさがる。このため、抗体チップ3内に固定化された抗体は、外部の空気に触れてダメージを受けることがなく、さらに封止をするステップを省くことが可能となる。
【0043】
なお、ステップST001において、チップをステージ上に置く方法は、人手により置くものでもよいし、自動化されてもよい。
【0044】
また、自己修復層11は、シリコンゴムのような弾性材料からなるものであってもよいし、他の自己修復機能を有する材料からなるものであってもよい。さらに、自己修復層11は、なくてもよい。ただし、この場合、抗体をチップに固定化させたのちに抗体がダメージを受けないように生産された抗体チップを封止することが望ましい。
【符号の説明】
【0045】
1・・・抗体チップ生産システム、2・・・位置制御装置、3・・・抗体チップ、5・・・カバー層、9・・・流路形成層、11・・・自己修復層、13・・・注入口、14・・・回収口、17・・・流路、19・・・抗体固定部、31・・・注入器、32・・・回収器、33・・・ステージ、35・・・配置決定部、37・・・ガイド、39・・・分離部、41・・・流体移送部、43・・・制御部、45及び46・・・針、47及び48・・・針流路、49・・・移動制御部、51・・・速度制御部、53・・・判定部
図1
図2
図3
図4
図5