(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238001
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両のシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
B60R22/46
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-259311(P2013-259311)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-116834(P2015-116834A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】荘司 馨
(72)【発明者】
【氏名】荻野 貴士
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮之
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−038982(JP,A)
【文献】
米国特許第05924730(US,A)
【文献】
米国特許第06109697(US,A)
【文献】
実開昭50−083718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア部材とピラー部材とを有する車体の前記フロア部材に設けられたアンカ部と、
前記アンカ部に結合されるとともにシートベルトの先端部と連結して設けられ、所定以上の衝撃力が車体に加わると、前記シートベルトを引き込むラッププリテンショナと、を備え、
前記アンカ部は、前記フロア部材に結合される取付ブラケットを含み、
前記取付ブラケットは、L字状をなし、外面が前記フロア部材に当接する底面と外面が前記ピラー部材側を向く立面とからなり、
前記立面と前記ラッププリテンショナとが結合され、前記底面と前記フロア部材とが結合されてなることを特徴とする車両のシートベルト装置。
【請求項2】
前記底面は、その全体に亘って断面ハット状をなすことを特徴とする、請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項3】
前記アンカ部は、前記フロア部材のうち前記ピラー部材の近傍に位置して設けられてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項4】
前記ラッププリテンショナは、
ピストンを収容したシリンダと、一端部が前記ピストンに連結されるとともに他端部が前記シートベルトの先端部に連結されたワイヤ部材と、所定以上の衝撃力が車体に加わると該ワイヤ部材を前記シリンダ内に引き込むよう前記ピストンを作動させる作動手段と、前記シリンダの前記ワイヤ部材側の端部に設けられた固定部とを備え、
前記シリンダが前記ピラー部材に沿って延びるような姿勢を有して、前記固定部が前記アンカ部に結合されてなることを特徴とする、請求項3に記載の車両のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッププリテンショナを有して構成される車両のシートベルト装置に係り、詳しくはラッププリテンショナの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、シートに着座した乗員を拘束するべくシートベルト装置が設けられている。シートベルト装置としては、リトラクタをピラー部材に設け、リトラクタから引き出されるシートベルトの先端部を例えばピラー部材下部に設けたアンカ部に固定し、シートベルトの中間位置に設けたタングをシート脇のバックルへ差し込んで接続することで、ラップベルト部分で乗員の腰部を、ショルダベルト部分で乗員の肩部をフロントシートに拘束する構成の三点式シートベルト装置が一般的である。
【0003】
そして、近年、シートベルト装置において、安全性を一層高めるために、アンカ部とシートベルトの先端部との間にラッププリテンショナと呼ばれる装置を介装することが知られている。
ラッププリテンショナは、所定以上の衝撃力が加わると、シートベルトを先端側から引き込んで、シートに着座している乗員をさらに抑え付ける働きをもつ装置である。具体的には、ラッププリテンショナは、一般に火薬などのガス発生剤、点火部やピストンを備えたシリンダ、同シリンダの一端側にピストンとつながる中継部材を有している。そして、シリンダの一端側を固定し、中継部材の先端部をシートベルトの先端部に接続することより、シリンダ内部でガスを発生させたときに生ずるピストンの変位をシートベルトに伝えて、シートベルトを引き込む構造としている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−359028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートベルトの先端部を固定するアンカ部は、ピラー部材下部のシル部材の剛性が高いことから、当該シル部材に設けるのが一般的であり、ラッププリテンショナについても、上記特許文献1に示すように、シル部材に固定するようにしている。
しかしながら、ピックアップトラック等、車体下部にフレームを有した車体構造からなる車両にあっては、シル部材を有していないことが多く、この場合、ラッププリテンショナの固定位置が問題となる。
【0006】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シル部材を有していない車両であっても、ラッププリテンショナを確実に車体に固定可能な車両のシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の車両のシートベルト装置は、
フロア部材とピラー部材とを有する車体の
前記フロア部材に設けられたアンカ部と、前記アンカ部に結合されるとともにシートベルトの先端部と連結して設けられ、所定以上の衝撃力が車体に加わると、前記シートベルトを引き込むラッププリテンショナと、を備え
、前記アンカ部は、前記フロア部材に結合される取付ブラケットを含み、前記取付ブラケットは、L字状をなし、外面が前記フロア部材に当接する底面と外面が前記ピラー部材側を向く立面とからなり、前記立面と前記ラッププリテンショナとが結合され、前記底面と前記フロア部材とが結合されてなる。
請求項2の車両のシートベルト装置では、請求項1において、
前記底面は、その全体に亘って断面ハット状をなす。
【0008】
請求項3の車両のシートベルト装置では、請求項1または2において、前記アンカ部は、前記フロア部材のうち車体のピラー部材の近傍に位置して設けられてなる。
請求項4の車両のシートベルト装置では、請求項3において、前記ラッププリテンショナは、ピストンを収容したシリンダと、一端部が前記ピストンに連結されるとともに他端部が前記シートベルトの先端部に連結されたワイヤ部材と、所定以上の衝撃力が車体に加わると該ワイヤ部材を前記シリンダ内に引き込むよう前記ピストンを作動させる作動手段と、前記シリンダの前記ワイヤ部材側の端部に設けられた固定部とを備え、前記シリンダが前記ピラー部材に沿って延びるような姿勢を有して、前記固定部が前記アンカ部に結合されてなる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の車両のシートベルト装置によれば、シートベルトを引き込むラッププリテンショナを車体のフロア部材に設けられたアンカ部に連結するようにしたので、車体としてシル部材を有さない車両であっても、ラッププリテンショナを確実に車体に固定することができ
、且つ、ラッププリテンショナをフロア部材に結合されて立面を有する取付ブラケットの当該立面に結合するので、ラッププリテンショナを取付ブラケットを介して自在にフロア部材に固定することができる。
請求項2の車両のシートベルト装置によれば、
取付ブラケットの底面は全体に亘って断面ハット状をなすので剛性が高められ、ラッププリテンショナを取付ブラケットを介して強固にフロア部材に固定することができる。
【0010】
請求項3の車両のシートベルト装置によれば、アンカ部はフロア部材のうち車体のピラー部材の近傍に位置して設けられているので、ラッププリテンショナが乗員の車両への乗降時において乗員の邪魔にならないようにできる。
請求項4の車両のシートベルト装置によれば、シリンダを備えたラッププリテンショナにおいて、シリンダがピラー部材に沿って延びるような姿勢を有してラッププリテンショナの固定部をアンカ部に結合するので、ラッププリテンショナのシリンダが乗員の車両への乗降時において乗員の邪魔にならないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両のシートベルト装置におけるラッププリテンショナの取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両のシートベルト装置の一実施形態を
図1、
図2に基づいて説明する。
本発明に係る車両のシートベルト装置が適用される車両は、例えば、車体の下部にフレームを有するとともに、フロントシートとリヤシートとを有し、車体側面にセンターピラーを挟んでフロントドアとリヤドアとを有したピックアップトラックである。
【0013】
図1は、車両に設けられたフロントシート用の三点式シートベルト装置の主要部、即ち車体部材であるセンターピラー(ピラー部材)2の下部に設けられたリトラクタ10とラッププリテンショナ20の取付構造を示す斜視図である。なお、ここでは、便宜上、車体部材を覆うトリム部品は省略してある。
同図に示すように、センターピラー2は、センターピラーアウタ2aとセンターピラーインナ2bとを溶接接合して構成されており、リトラクタ10は、センターピラーインナ2bの下部開口部3からセンターピラー2内に収納され、センターピラーインナ2bにボルト4、5で固定されている。
【0014】
リトラクタ10とラッププリテンショナ20とはシートベルト12で連結されており、これによりシートベルト12がフロントシートに着座した乗員をフロントシート拘束可能となる。なお、車両のシートベルト装置の基本機能及びリトラクタ10の構成の詳細については公知であり、ここでは説明を省略する。
ところで、当該車両では、車体の下部にフレームを有していることから、車体の側面下部にはシル部材を有しておらず、同図に示すように、センターピラー2は、下端部にて直接フロアパネル(フロア部材)6に溶接接合されている。このように、車体がシル部材を有していないと、ラッププリテンショナ20については従来のように剛性の高いシル部材に固定することができない。
【0015】
そこで、本発明に係る車両のシートベルト装置では、フロアパネル6にラッププリテンショナ20を固定するようにしており、以下、ラッププリテンショナ20の構成及びラッププリテンショナ20のフロアパネル6への取付構造について説明する。
ラッププリテンショナ20は、所定以上の衝撃力が加わると、シートベルト12を先端側から引き込むように作動するインフレータ式の機器として構成されている。
【0016】
詳しくは、ラッププリテンショナ20は、細長のシリンダ22と、同シリンダ22内に収容されたピストン及び火薬などのガス発生剤(作動手段)(共に図示せず)と、ガス発生剤に点火する点火部(作動手段)24と、シリンダ22の一端部から前方へ突き出るように設けられ、中央に固定孔27(
図2参照)を有する板形のフレーム部(固定部)26と、フレーム部26の固定孔27の周りに略半周に渡り形成されたワイヤ挿通路28と、このワイヤ挿通路28内に変位可能に挿通されたワイヤ部材30とを有している。ワイヤ部材30の一端部は、シリンダ22内のピストンに連結されており、ワイヤ部材30の他端部は、ベルト接続具32を介してシートベルト12の先端部に連結されている。また、ワイヤ部材30及びベルト接続具32はカバー部材34で覆われている。
【0017】
そして、フロアパネル6には、センターピラー2の近傍に位置して、ラッププリテンショナ20をフロアパネル6に取り付けるためのラッププリテンショナ取付ブラケット(以下、単に取付ブラケット)40がボルト50によって結合されている。これにより、取付ブラケット40を含んで、ラッププリテンショナ20をフロアパネル6に固定するアンカ部が構成されている。
【0018】
図2に示すように、取付ブラケット40は、L字状に屈曲して、外面がフロアパネル6に当接する底面41と外面がセンターピラー2側を向く立面42とからなり、底面41が断面ハット状にして中央に貫通孔44の穿設された凹部43を有し、立面42が中央にラッププリテンショナ20を結合するための貫通孔45を有するとともに外面の貫通孔45の周りにウェルドナット46を有して構成されている。
【0019】
図2に示すように、フロアパネル6には貫通孔7が穿設されており、フロアパネル6の背面には、貫通孔9を貫通孔7に合わせるようにしてフロアパネル6よりも厚板のリーンフォース8が補強部材として溶接接合されており、リーンフォース8の貫通孔9周りにはウェルドナット9aが設けられている。
これより、取付ブラケット40は、ボルト50が貫通孔44及び貫通孔7、9を貫通してウェルドナット9aに螺合されることで、フロアパネル6に結合されている。
【0020】
そして、上記のように構成されたラッププリテンショナ20は、シリンダ22がセンターピラー2に沿いフロアパネル6に対し略垂直となり、ワイヤ挿通路28端から導出するワイヤ部材30が車両の斜め前上方へ延びるような姿勢を有して、ボルト60がフレーム部26の固定孔27、スペーサ62及び取付ブラケット40の貫通孔45を貫通してウェルドナット46に螺合されることで、取付ブラケット40に結合されている。
【0021】
このように、ラッププリテンショナ20は、シル部材を有さない車体においても、取付ブラケット40を介してフロアパネル6に強固に固定されている。
そして、ラッププリテンショナ20がフロアパネル6に固定された場合であっても、ラッププリテンショナ20により、衝突などにより車両に所定以上の衝撃力が加わると、シリンダ22の内部でガスが発生し、このガスの膨張でピストンが変位し、このピストンの変位がワイヤ部材30およびベルト接続具32を介してシートベルト12へ伝達され、シートベルト12を引き込む。これにより、フロントシートに着座している乗員は、シートベルト12によってフロントシートに抑え付けられる。
【0022】
以上、説明したように、本発明に係る車両のシートベルト装置によれば、ラッププリテンショナ20を取付ブラケット40を介してフロアパネル6に固定するようにしているので、シル部材を有さない車体においても、ラッププリテンショナ20を確実に車体に固定することができる。
特に、アンカ部に取付ブラケット40を設けたことで、取付ブラケット40を介してラッププリテンショナ20を所望の姿勢にして自在にフロアパネル6に固定することができる。
【0023】
この場合において、取付ブラケット40はセンターピラー2の近傍に位置してフロアパネル6に結合されており、また、ラッププリテンショナ20のシリンダ22をセンターピラー2に沿いフロアパネル6に対し略垂直となるよう配設するので、乗員の車両への乗降時において、シリンダ22ひいてはラッププリテンショナ20が乗員の乗降の邪魔にならないようにできる。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。
例えば、上記実施形態では、フロントシート用の三点式シートベルト装置を例に説明したが、シートベルト装置はフロントシート用に限られずリヤシート用であってもよく、三点式シートベルト装置に限られず二点式シートベルト装置や四点式シートベルト装置であってもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、フロントシートとリヤシートとを有したピックアップトラックを例に説明したが、これに限られるものではなく、シル部材を有さない車両であれば、例えばリヤシートを有さずにリトラクタ10がリヤピラー内に収納されるような車両であってもよく、この場合であっても、上記同様にラッププリテンショナ20をリヤピラーの近傍でフロアパネルに固定することで、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
2 センターピラー(ピラー部材)
6 フロアパネル(フロア部材)
8 リーンフォース
10 リトラクタ
12 シートベルト
20 ラッププリテンショナ
22 シリンダ
26 フレーム部(固定部)
27 固定孔
40 ラッププリテンショナ取付ブラケット(アンカ部)